説明

免疫グロブリン画分

本発明は、ヒト免疫グロブリン製剤の画分を含む新規医薬組成物、これらの組成物の新規応用、及び前記組成物を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト免疫グロブリン製剤の画分を含む新規医薬組成物、これら組成物の新規な応用、及び前記組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静注用免疫グロブリン(IVIG)製剤は、数千の健康なドナーのプールされた血漿(現在のプールサイズは1,000から60,000の範囲である)から由来するものであり、ドナー集団の累積の抗原経験を反映している免疫抗体及び自然抗体(NAbs)の両者を含有している。IVIGは、それ故、病原体及び外部抗原、更に自己抗原と反応するNAbsを対象とする、いわゆる「免疫抗体」の広範囲の特異性を含んでいる。NAbsは、人為的な免疫化が存在しない場合、及び外部抗原への曝露とは無関係に発生するものと定義されている(1)。実際、自己抗原に対する抗体の長い一覧表が検出されており、そしてIVIG製剤からアフィニティクロマトグラフィーによって精製されてさえいる。これらのNAbsは、しばしば、多反応性であり、病原体に結合することができ、老化した又は改変した分子や細胞を標識付けし循環から除去することによって、免疫恒常性を保持するのに重要である(2)。更に、これらNAbsは、自己に対する寛容を保持するために必須の、免疫学的小人と称されている、保存されている免疫優勢抗原のサブセットを認識することが提案されている(3)。しかしながら、これらの抗体のより精密な特徴付け、それらの性状及びIVIGの小画分におけるそれらの潜在的な存在は、関連する標的抗原及び抗体についての知識の不足により、部分的にしか解明されていない。
【0003】
IVIGの現在の治療応用は、2つの主要なカテゴリーを対象としている:i)一次及び二次抗体欠乏における抗体の交換(4)、ii)全身性炎症及び自己免疫疾患の患者における免疫調節(2、5)である。IVIGは、抗体欠乏症及びある種の自己免疫疾患及び炎症性疾患[例えば、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、ギラン・バレー症候群(GBS)、川崎病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)]において臨床効果を示しているけれども、統計的に有意な対照臨床試験がしばしば欠如しているため、その他の自己免疫状態や全身性炎症性疾患において、未確認の/疑わしい多くの例がある。
【0004】
IVIGの作用様式は、Fc受容体の発現及び機能の調節、補体活性化とサイトカインネットワークの障害、多くの異なった細胞型における活性化、分化及びエフェクター機能の調節を含む複雑なものである。イディオタイプ・ネットワークは、顕在的な自己免疫疾患を最終的に導くアンバランスを有している免疫恒常性に含まれる、必須のネットワークとして提案されている。IVIGの現在の治療指標の多くは、病的自己免疫抗体を平衡させる、中和する又は遮断することであり、それ故健康なイディオタイプ・ネットワークを回復することを基本としている(6、7)。最近の報告は、又、単球、樹枝状細胞、内皮並びにT及びBリンパ球の両者に対する直接的効果を示している。この複雑さは、健常者における恒常性の維持における循環抗体の必須の機能に反映している(2、8)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
年齢に伴う免疫反応性の低下、いわゆる免疫老化を明らかにした文献に多くの報告がある(9)。しかしながら、加齢に伴う外部抗原に対するIgG抗体レパトアの年齢依存的な多様性に比較して、自己抗原と反応する自然のIgG抗体の生涯にわたる安定性があるようである(10)。
【0006】
IVIGは、正常なヒト血清のIgG分子及び微量のIgAに相当するIgGイソ型分
布を有する未処理のIgG分子から成りたっている。処方によって、IVIG製剤は、不定量の単量体IgG及び二量体IgGを含有している。単量体は、単量体IgG(およその分子量150,000)を表し、一方、二量体は、以前のデータでは、古典的なイディオタイプ・抗イディオタイプ対として定置させることができる、2IgG分子を表している。
【0007】
欧州公開特許公報第1394183号は、リガンド、例えば、固体支持体に結合した免疫グロブリン以外のヒト血清中に存在するタンパク質の混合物、に対するアフィニティクロマトグラフィーを使用して、IVIG製剤から自己抗体を精製する方法を開示している。
【0008】
米国特許第6,231,856は、抗体に基づく自己免疫疾患の治療のための、実質的に精製され、濃縮された抗イディオタイプ抗体、又はそれらの抗原結合断片を含むヒト抗体組成物を開示している。抗体組成物は、アフィニティクロマトグラフィーによって得られる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、ヒト免疫グロブリン製剤のサイズ分別は、異なった性質を有する、二量体抗体の画分及び単量体抗体の画分を与えることが見出された。二量体画分は、抗原、例えば自己抗原及び/又は外部抗原に対する反応性の増加を示している。更に、二量体画分は、標的抗原に対して高い親和性を有する抗体を含有しており、それ故、高い生物活性、例えば抗細菌活性、抗トキシン活性又は抗ウイルス活性の場合における中和活性、を有しているであろう。これとは対照的に、単量体画分は、低い親和性抗体、例えば自然抗体、即ち、高親和性抗体を発生する基礎的なレパトアを含有しているであろう。
【0010】
第一の態様において、本発明は、異種ヒトドナー集団からのヒト抗体の画分又はその抗原結合断片を含む医薬組成物であって、前記画分が二量体ヒト抗体に由来するものである医薬組成物に関する。
【0011】
更なる態様において、本発明は、異種ヒトドナー集団からのヒト抗体の画分又はその抗原結合断片を含む医薬組成物であって、前記画分が単量体ヒト抗体に由来するものである医薬組成物に関する。
【0012】
画分は、複数のドナーからのポリクローナルヒト抗体製剤を含むいかなる製剤から得られてもよい。好ましくは、画分は、IVIG製剤から得られる。
【0013】
これに関連して、IVIG製剤は、複数の、例えば1,000〜100,000人の血液ドナーのプールされた血漿に由来するであろうヒト免疫グロブリン製剤である。抗体の抗原結合断片は、公知の方法によって、例えばタンパク分解消化によって得ることができる。好ましい抗体断片は、Fab断片又はF(ab’)2断片である。
【0014】
単量体又は二量体画分は、ヒト抗体製剤のサイズ分別によって得ることができる。サイズ分別は、サイズ排除分離、ゲルろ過、限外ろ過、透析ろ過及び/又はその他のゲル又は膜分離法を含んでよい。単量体画分は、約150kDaの見かけの分子量を有する抗体単量体を回収することによって得ることができ、そして二量体画分は、約300kDaの見かけの分子量を有する抗体二量体を回収することによって得ることができる。
【0015】
好ましくは、サイズ分別は、サイズ排除クロマトグラフィー、例えば、スーパーロース6又はセファクリルS−300カラムを含む。
【0016】
サイズ分別によって得られる単量体画分及び二量体画分の純度は、分析用HPLC、例えばTSK−G3000SWXLカラムでのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0017】
二量体抗体画分の純度は、分析用HPLCによって測定されるように、通常少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、そしてより好ましくは少なくとも85%であり、分析は、好ましくは、サイズ分別後直ちに行われる。
【0018】
単量体抗体画分の純度は、分析用HPLCによって測定されるように、通常少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、そしてより好ましくは少なくとも95%であり、分析は、好ましくは、サイズ分別後直ちに行われる。
【0019】
二量体抗体画分は、破傷風トキソイド及び/又は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)及び/又は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のトキシンA及び/又は赤血球細胞ゴーストのような自己抗原及び/又はHep−2上皮細胞のような外部抗原に対する反応性の増加によって、好ましくは特徴付けられる。より詳しくは、二量体画分は、未分別IVIG製剤と比較して、実施例の項で測定されるように、破傷風トキソイド及び/又は呼吸器合胞体ウイルスに対して少なくとも2倍増加した比活性を有することができる。更に、S.pyogenesのM毒性タンパク質及び/又はHep−2上皮細胞、特に、実施例の項で測定されるように、未分別のIVIG製剤と比較して、細胞内抗原に対して少なくとも2倍増大した反応性を有することができる。
【0020】
二量体抗体画分の医薬組成物は、二量体の形態、又は解離した若しくは(再)単量体化した形態での抗体を含んでいてもよい。好ましくは、抗体は、解離した又は(再)単量体化した形態であり、そこでは二量体の含量は10%又はそれ以下、より好ましくは5%又はそれ以下である。単量体化は、酸性pH、例えば約3から約5、好ましくは約3.5から約4.5、より好ましくは約4.0の範囲のpHに調節することによって実施することができる。pHは、いずれの薬学的に許容される酸性緩衝剤、例えば酢酸によって調節することができる。二量体抗体の単量体化製剤は、好ましくは、動的に安定であり、実質的に、実施例の項で測定されるような上記で指摘した貯蔵及び使用条件下において、二量体に再変換しない。
【0021】
二量体画分は、単量体画分よりも、より高い比活性を有する抗体を含有している。それ故、この画分は、好ましくは、例えば、ウイルス、細菌、真菌、原虫及び/又は寄生虫感染の病原体による感染に対する薬剤の製造のために使用される。特に好ましいのは、急性感染の治療のための二量体画分の使用である。
【0022】
二量体画分の更に好ましい応用は、自己免疫疾患に対する、例えば、及び/又は自己免疫恒常性の維持のための、薬剤の製造である。二量体画分は、内部均衡を維持するために重要である、イディオタイプ及び抗イディオタイプ抗体を含有する。二量体は、自己免疫疾患に導く自己反応性クローンのクローン性増殖を回避するために、対応する抗イディオタイプ抗体による制御下に維持されている、生理的自己反応性を示す。例えば、未分別IVIG又は単量体画分のいずれかと比較して、単量体化二量体画分は、実施例の項において測定されるように、シェーグレン症候群の標的抗体の1つである、ムスカリン3受容体(M3R)のループ2に対して増加した活性を示す。この活性は、二量体画分中のイディオタイプ及び抗イディオタイプ抗体が単量体化される場合のみに現れる。
【0023】
高い比活性の故に、二量体画分は低投与量で投与してもよく、その結果高い適合性と低い副作用をもたらす。好ましくは、本発明のこの実施態様において、製剤は、望ましくない副作用の原因となることなく治療効果を得るのに充分な投与量で投与される。
【0024】
他方、単量体画分は、抗イディオタイプ抗体がない免疫抗体及び自然抗体の両者を含んでおり、病んでいる免疫系を維持し、元気付けるのに特に有益である。好ましい応用は、小児、高齢者又は免疫不全の人々、例えば、免疫系が衰える障害に罹患している、又は免疫系を弱める治療を受けている人々への投与である。特に好ましいのは、老化防止及び/又は若返り療法に対する投与である。又、驚くべきことに、単量体画分は、微生物の多糖類に対して、特にPseudomonas aeruginosaの異なった血清型の多糖類に対して、増大した反応性を有していることが見出された。
【0025】
それ故、本発明の別の態様は、Pseudomonas aeruginosaによる感染の治療に優先的である、感染微生物に対する薬剤の製造のための、単量体画分の使用である。
【0026】
単量体製剤の二量体含量は、治療群に対して副作用を避けるために、7%、好ましくは2.5%、そしてより好ましくは1%の最大量に、好ましくは限定される。
【0027】
なお更なる本発明の態様は、異種ヒトドナー集団からのヒト抗体の画分又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を製造する方法であって:
(a)異種ドナー集団からのヒト抗体製剤をサイズ分別にかけ;
(b)二量体抗体の画分を回収し、そして場合により二量体抗体を単量体化し;
(c)単量体抗体の画分を回収する;
ことを含む方法である。
【0028】
単量体画分は、サイズ分別手順において約150kDaの分子量を有することで特徴付けられる。二量体画分は、サイズ分別手順において約300kDaの分子量を有することで特徴付けられる。
【0029】
更に、本発明は、以下の実施例によって、より詳細に説明されるであろう。
【0030】
〔図1〕IVIG製剤のクロマトグラフィー及び分別の最適化
12% Sandoglobulin(SAGL)製剤について、異なった流速(FR)、異なったバッファー系を使用し、負荷容積を変化させて、種々のカラムを上記のようにして試験した。単量体、二量体及び会合体の内容について、分析用HPLCによって画分を採取し、分析した。
【0031】
〔図2〕IVIG製剤の分取分別
セファクリルS−300カラム(サイズ26/60)をPBS/0.92%アジドで平衡化し、続いて12% Sandoglobulin(SAGL)製剤(500ml)を適用した。カラムを流速1.2ml/分で運転し、上記したように画分1〜4を採取し、単量体、二量体及び会合体の内容を分析用HPLCによって分析した。このカラムは、単量体画分及び二量体画分の調製に対し、実験室規模への拡大を可能にした。
【0032】
〔図3〕分析用HPLCにおけるIVIG及び分離した単量体画分及び二量体画分の概要
分析用HPLCを、異なった画分中の二量体、単量体及び会合体の比率の分析に使用した:即ち、SAGL12%製剤から新しく溶解したIVIG;セファクリルS−300カラムで単離した単量体画分及び二量体画分である。破線は、分離していないSAGLに見出された二量体及び単量体を示す。
【0033】
〔図4〕分離した二量体画分の動力学
分離した二量体画分を室温に保持し、単量体への解離に関して二量体画分の安定性を観察するため、48時間の最大の時間帯にわたる間隔(範囲は0〜24時間で示す)で分析
した。実線は二量体画分中の二量体の比率を表し、破線は二量体画分中の単量体の比率を表す。
【0034】
〔図5〕IVIG中の単量体及び二量体のサイズ排除分離のフローチャート
【0035】
〔図6〕単量体化二量体画分調製のための最適pH条件
二量体画分及び単量体画分を採取し、pH2.6〜7のクエン酸リン酸バッファー又は10mM酢酸バッファー、pH4のいずれかを使用して、pH4〜7の範囲で、24時間、4℃にて透析した。透析は、分子量12,000〜14,000のカットオフ値(MWCO)を有するSpectra/Por 4 Dialysis Membranes(Spectrum Laboratories, Rancho Dominguez, California)又はMWCO8,000を有するMini Dialysis Kit (Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)を使用して実施した。分析用HPLCを透析後直ぐに実施した。パネルA、B、C:透析した二量体画分のHPLCの概要図を示す:二量体pH4(A)、二量体pH5(B)及び二量体pH7(C):パネルD、E、F:透析した単量体画分のHPLCの概要図を示す:単量体pH4(D)、単量体pH5(E)及び単量体pH7(F)。
【0036】
〔図7〕分離した単量体画分及び二量体画分の2D−PAGE分析
2次元ポリアクリルアミド電気泳動を、2D-Electrophoresis, Principles and Methods
(Amersham Biosciences)に既に記載されたようにして実施した。要約すると、総IVIG、単量体及び二量体免疫グロブリン(Ig)画分(4μg)を、8M尿素、2%CHAPS、0.002%ブロムフェノールブルー、DTT(0.65mM)及びIPGバッファー0.5%をそれぞれ含有する再水和バッファー(125μl)に希釈した。IPG細片、pH3〜10(Amersham Biosciences)7cmを一夜再水和し、細片の指示書(ステップ1:一定電圧300V/60分、ステップ2:1000V/30分まで勾配、ステップ3:5000V/90分まで勾配、ステップ4:一定電圧5000V/15分)に従って、IPGphorユニット(Amersham Biosciences)に焦点を合わせた。焦点をあてたストリップは、50mMトリスHCl、pH8.8、6M尿素、30%(v/v)グリセリン、2%(v/v)SDS、0.002%(v/v)ブロムフェノールブルー及びDTT10mg/ml(1次平衡化)又はヨードアセトアミド25mg/ml(2次平衡化)のいずれかを含有する平衡バッファー中で、15分間の2つのステップで平衡化した。分子量分離のために、細片を、2.5mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Merck)、25mMグリシン(Merck)、0.01%SDS(w/v)(Flucka)を含有するドデシル硫酸ナトリウム(SDS)流動バッファー中ですすぎ、12%ポリアクリルアミドゲル上に置いた。続いて、細片を4%ポリアクリルアミド積層ゲルで重層し、2次元目を、100Vの定電圧でおよそ90分間MiniProtean電気泳動函(BioRad)で泳動した。銀染色を、PlusOne銀染色キット(Amersham Biosciences)を使用して実施した。
【0037】
〔図8〕IVIG画分におけるS.pyogenesのM5タンパク質に対する反応性
ELISA:
抗原(組換えヒトMタンパク質:M1、M3、M5、M6、M19)10μg/mlで被覆。ブロッキング:PBS/カゼイン2時間37℃。第1抗体(IVIG:TO/IVIG、pH4.0/二量体/単量体)10、100及び1000μg/ml:37℃で4時間。第2抗体:AP004(結合部位)ヒツジ抗ヒトIgGペルオキシダーゼ、1/1000(2時間、37℃)。結果は、全ての他のMタンパク質を代表する、M5について示す。
【0038】
〔図9〕外部抗原に対する二量体画分の微差活性。二量体画分の増大した活性は、結合の親和性の増大と相関している
破傷風トキソイド及びM1タンパク質に対する親和性測定。異なったIVIG製剤の親
和性を、IAsysキュベットシステムを使用してオンラインモニタリングによって評価した。キュベットを、Streptococcus pyogenes (S. pyogenes)由来の組換えM1タンパク質又は破傷風トキソイドのいずれか(5μg)で固定化した。会合を測定するため、IVIG製剤をPBS/0.05%Tween20中異なった濃度に希釈し、試料50μlでキュベットに加えた。抗体の解離をモニターするために、キュベットを50μlのPBS/0.05%Tween20で3回洗滌した。再生のために、キュベットを20mM・HCl(40μl)で2分間、及びPBS/0.05%Tween20(45μl)で3回連続的に洗滌した。KDは、IVIG、単量体又は二量体の各濃度に対して得られたKon値を、FASTplot及びGraftプログラムを使用して、プロットすることによって計算した。
ELISA:
IVIG、単量体画分及び二量体画分は、破傷風トキソイド、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)及びH.influenzae B用の市販キットを使用して分析し、結果は、標準曲線から計算した免疫グロブリン(Ig)単位/gに従って表現した。M1タンパク質に対する活性を、図7に記載したようにして測定した。
【0039】
〔図10〕二量体は、HEp−2細胞を使用した機能的中和アッセイにおいてRSVに対する増大した中和活性を示す
異なったIVIG製剤(IVIGtotalはpH7及びpH4、単量体はpH4、そして二量体はpH4における)の中和作用は、1.5mg/mlに予備希釈し、96ウエルプレート(Becton Dickinson, Meylan Cedex, FR)に2倍連続希釈した。RSV Long画分(1/2 105TCID50/ml)(50μl)を各ウエルに加えた後、抗体−ウイルス混合物を室温で1時間インキュベートした(パラフィンにてシールして振盪機で)。全ての希釈を、全成分を補充したDMEMで行った。アッセイに必要なウイルス量は、3日後に100%細胞死となるRSV粒子の量(500TCID50/ml)として、前もって定義された。HEp−2細胞(ATCC CCL23)を96ウエルプレート(Becton Dickinson, Meylan Cedex, FR)において培養し、20,000細胞/ウエルまで増殖した。その後、培地を取り除き、前もってインキュベートした抗体−ウイルス混合物をHEp−2細胞に転移し、加湿環境下で37℃にて、およそ72時間インキュベートした。
【0040】
細胞培地をHEp−2細胞から除き、細胞をPBS、pH7.4で2回洗滌した。細胞を、メタノール−アセトン(1:1の割合、4℃に予備冷却)で、4℃にて10分間固定した。細胞をPBS、pH7.4で再び洗滌した。それらをモノクローナルマウス抗RSV・FITC標識抗体(Chemicon Europe LTD., Southampton, UK)(50μl/ウエル)で覆った。標識抗体を、暗所で、37℃にて1時間インキュベートした。過剰の抗体をPBS、pH7.4で2回、蒸留水で1回洗滌除去した。染色した後、蛍光封入液(fluorescence mounting fluid: Chemicon Europe LTD., Southampton, UK)1滴を加え、感染を蛍光顕微鏡(Nikon, Eclipse TE300, Egg/ZH, CH)下、倍率20倍で可視化した。画像は画像解析ソフトウエア(ACT-1, Nikon, Egg/ZH, CH)を使用して、デジタルカメラ(Nikon, Digital Camera DXM1200, Egg/ZH, CH)で取り込んだ。
【0041】
〔図11〕二量体は、シェーグレン症候群の標的抗原であるムスカリン3受容体のループ2ペプチドに対して増大した活性を示す
IVIG製剤(IVIGtotalはpH7及びpH4、単量体はpH4、そして二量体はpH4において)は、M3Rのループ2を表す合成ペプチドを使用してELISAで(図8で既に記載したように)比較した。
【0042】
〔図12〕二量体は、細胞外自己抗原と比較すると細胞内自己抗原に対し選択的に増大した活性を示す
濃度100μg/mlで使用したpH4における単量体及び二量体を、10μg/ml
で被覆した細胞内及び細胞外タンパク質を表す抗原を使用して(図8に既に記載したようにして)ELISAで比較した。
【0043】
〔図13〕単量体は、Pseudomonas aeruginosaの種々のリポ多糖類血清型(IATS)に対して選択的な反応性を示すが、トキシンAについてはその逆であることが見出された
Pseudomonas aeruginosaのLPS血清型(International Antigen Typing System)及びトキシンAを標準ELISAによって評価した。各プレートは、標準抗体製剤(8価Pseudomonas aeruginosaのO−多糖類トキシンA共役ワクチンで免役した9個人のプールした血漿)、対照血漿及び試験試料(単量体及び二量体)の連続希釈物を含有した。標準抗体は、対照血漿及び試験試料における抗LPS又は抗トキシンAIgG抗体濃度を定量するための基準として使用した。
【0044】
〔図14〕二量体は、HEp−2細胞における細胞骨格タンパク質免疫蛍光に対して増大した活性を示す
免疫組織学のために、IVIG、単量体及び二量体Ig画分(50μl)を診断用ANA(HEp−2アクチン)スライド(INOVA Diagnostics, Inc., San Diego, US)上で、200μg/mlで30分間インキュベートし、続いて、PBSで5分間洗滌工程を行った。その後、FITC標識抗ヒトIgG複合体(INOVA Diagnostics, Inc., San Diego, US)を20分間インキュベートし、次いで、別に5分間PBSで洗滌した。画像は、ACT−1ソフトウエア(Nikon)を採用し、蛍光顕微鏡(Nikon E600, Eclipse)を用いて倍率400倍で得た。
【0045】
〔図15〕二量体は、HepG2細胞において増大した自己反応性を示す
HepG2(肝癌)細胞を、10%FCSを補充したDMEM培地でコンフルエントになるまで増殖させた。細胞をトリプシン処理し、溶解前にPBSで2回洗滌した。細胞タンパク質をトリクロロ酢酸沈殿に処して、図7で前に記載したのと同じ手順を使用して引続き2D−PAGEを行うようにした。得られた2次元ゲル(銀染色、図1.aを参照)は、ニトロセルロースに転写し、0.15%カゼイン含有PBSでブロックし、単量体IgG画分(図1.b)又は二量体IgG画分(図1.c)を10μg/mlで4℃にて、一夜インキュベートした。展開は、アルカリ性ホスファターゼ共役ヤギ抗ヒトIgG抗体をPBS−カゼイン(0.15%)中で1:1,000で、アルカリ性ホスファターゼ展開キット(BioRad Inc.)を使用して行った。
【0046】
〔図16〕二量体は、異なった動物種からの上皮細胞の細胞内タンパク質に対して増大した活性を示す
サル(COS−7)、ヒト(HEP−G2、HEp−2)及びハムスター(CHO)からの上皮細胞のFACS分析。ラット好塩基球性白血病細胞野生型(RBLwt)を、対照の非上皮細胞として使用した(FACS分析結果は示していない)。
フローサイトメトリーのために、全ての接着細胞を、PBS−EDTA0.03%(w/v)で剥離し、PBS−カゼイン0.15%(w/v)(Sigma, Buchs, Switzerland)中1%(v/v)パラホルムアルデヒドで固定し、PBS−カゼイン0.15%(w/v)中0.3%サポニン(Sigma, Buchs, Switzerland)で透過性化した。間接染色を2回多段階手法で実施した:(1)非透過性化細胞又は透過性化細胞を、それぞれ、PBS−カゼイン0.15%(w/v)又はPBS−カゼイン0.15%/サポニン0.3%(両者、w/v)のいずれかで、IVIg、単量体又は二量体Ig画分(50μg)と20分間インキュベーション。(2)イソ型特異性FITC標識ヒツジ抗ヒトIgG−FC(PFO04、The Binding Site、Birmingham)と20分間インキュベーション。両インキュベーション共PBSで2回の5分間洗滌工程が続けられた。フローサイトメトリーデータ獲得は、Cell Quest Proソフトウエアを使用したFACS Calibur装置(両者共Becton-Dickinson)で行われ、その後のデータ解析には、Win MDIソフトウエア((C)Joseph Trotter)
を採用した。
【0047】
【表1】

【0048】
イムノドット:
抗原10ng、100ng及び500ngの風乾ドット。ブロッキング:トップブロック、1.5時間、室温(RT)。第1抗体(二量体/単量体)10μg/ml、100μg/ml及び500μg/ml:一夜4℃。第2抗体:AP004(結合部位)ヒツジ抗ヒトIgGペルオキシダーゼ(2時間、RT)。
反応性:
+:抗原ドット10ngに対して免疫グロブリン製剤100μg/mlで強い反応。
+/−:抗原ドット500ngに対して免疫グロブリン製剤500μg/mlで弱い反応。
−:抗原ドット500ngに対して免疫グロブリン製剤500μg/mlで反応性なし。
【0049】
ELISA:
抗原10μg/ml、1μg/mlで被覆。PBS/カゼインで2時間、37℃でブロッキング。第1抗体(二量体/単量体)10μg/ml、100μg/ml及び1000μg/ml:4時間、37℃。第2抗体:AP004(結合部位)ヒツジ抗ヒトIgGペルオキシダーゼ、1/1000(2時間、37℃)。
反応性:
抗原10μg/mlで免疫グロブリン画分100μg/mlと反応性を比較。++:二量体シグナルが単量体よりも少なくとも対数倍検出される。+:バックグランドを越えた明らかなシグナル。+/−:弱いシグナルであるが、なおバックグランドより上。−:シグナルなし。
【実施例】
【0050】
本発明者らは、IVIG製剤中に見出された単量体画分及び二量体画分の微差反応性を調べた。本発明者らは凍結乾燥製剤を使用し、これを臨床においてインビボで使用するための指示書に従って溶解した。このIVIG、SAGL(サンドグロブリンの短縮形)とも呼ばれている、を一定量とり、更なる実験用として20℃で貯蔵した。このIVIGを、全ての更なるアッセイにおける標準品として使用し、単量体画分及び二量体画分の分離のための条件確立に使用した。本発明者らの結果は、種々の技術を用いて確認されている、自己抗原及び外部抗原の両者に対するこれらの画分の微差反応性パターンを示唆している。
【0051】
1)IVIGの単量体画分及び二量体画分の単離:
分別を最適化するため、本発明者らは、いくつかの異なったカラムの型(セファクリル、スーパーロース、レプロシル)及び異なった条件(バッファー、流速、カラムのサイズ)を試験した。セファクリルS−300という半分取HPLCシステムは、分別において、良好なピーク分離、高純度の画分、短いランタイム及び高タンパク質濃度の組合せをもたらした(図1及び2を参照)。分離された画分は、図3に示すように、HPLCによって直ちに分析された。以前の報告と一致して、本発明者らは、二量体が、バッファー、pH、温度、タンパク質濃度及び貯留時間によって影響される動的不安定性(即ち、単量体形に戻る傾向)を示すことを観察した。図4は、室温で貯蔵された場合の、分離された二量体画分の崩壊の動力学を示す。数時間のうちに、より安定な二量体集団に減少する二量体IgGは、もとの二量体の20から30%の範囲になる。一般的に、二量体の形成はゆっくりであるが、それらの崩壊はより速い。対照的に、単量体画分は、何週間にもわたって安定であり、二量体を再形成しない。
【0052】
2)解離した二量体製剤の製造:
動的に安定であり、注射した際に二量体のインビボ解離を模倣するような二量体画分を製造するために、解離した二量体画分で、その単量体成分に効率的に変換されるものを使用した。至適pH条件を、4から7の範囲のpHのバッファーに対して二量体と単量体(対照のため)の両者を透析することによって試験した。透析に続いて、直ちに透析画分をHPLC分析した。図6に示すように、二量体の解離に至適なpHは、pH4(残りの二量体含量は10%未満に減少した)であるが、pH5及び7で透析すると、残留する二量体含量は、それぞれ、39.41%及び55.19%であった。単量体画分は、試験した全てのpH条件で著しく安定である。このことは、二量体画分がサイズ排除によって分離され、その後の処理(本発明者らによる、例えば、pH4.0の酢酸中への透析を使った)により二量体IgGは単量体に変換されたことを意味している。これには、pH4.0で10mMの酢酸中への透析が、最低24時間必要であった。その後、この解離した二量体製剤は、5%未満の二量体を含有しており、動的に安定性を維持しており、貯蔵及び使用のために定められた条件下では二量体に再変換しない。更に、解離した二量体をPBSバッファー中でpH7.4に中和しても、室温において24時間まで貯蔵した後でも、二量体の含有率に影響しなかった。このように、反応性を評価するために使用されるアッセイ条件の間、解離した二量体は解離したまま残っていることになる。単量体と二量体を等しく比較するために、単量体には同じ処理を施し、同じバッファー系で比較した。使用した種々の画分の分離及び製剤についての、最適なフローチャートの例を図5に示す。
【0053】
3)単量体及び解離した二量体製剤の特徴付け
両画分は、2次元ゲル電気泳動において重鎖及び軽鎖についての予期された総合的な型を明らかに示した。二量体画分は、より酸性領域へ拡張したより広い等電点分布の傾向を示した(図7)。比較イソタイプ分析では、二量体画分において、IgG1、2、4及び幾分増加したIgG3の等しい分布を示した。
【0054】
4)単量体及び解離した二量体製剤の微差反応性
ある範囲の異なったアッセイにおける外部抗原及び自己/自己抗原の両者に対する反応性を調べた。要約すると、二量体画分は、自己抗原及び外部抗原の両者のある種の抗原に対して、増大した反応性を示す。ある場合には、反応の親和性を測定したが、二量体において明らかに増大していた。単量体又は二量体のいずれかにのみ反応性が存在する抗原特異性は見出せなかった。検出可能な抗体反応性が、単量体又は二量体のいずれにも検出さ
れない抗原がある。
【0055】
図8は、Streptococcus pyogenesのヒト組換えM5タンパク質(毒性因子)を用いたELISAからの結果を示す。二量体は、単量体若しくはTO(調製され、時間ゼロで凍結されたIVIG)と定義されたIVIG製剤、又はpH4.0と定義されたIVIG(二量体と同じバッファー中に透析したIVIG)のいずれと比較しても、明らかに増強された反応を示す。
【0056】
図9は、破傷風トキソイド、S.pyogenesのM1、RSV及びH.influenzae Bの外部抗原に対する結果を示す。二量体は、明らかに増強された反応を示しており、それは、両画分において同じ反応性を示すH.influenzae Bを除いて、親和性測定によって確認された。
【0057】
図10は、単量体に比較して二量体における増大した抗RSV活性を示す。pH7及びpH4での分離していないIVIGの、pH4での単量体の、及びpH4での二量体の中和作用を評価した。これら4つのIVIG画分を滴定し、HEp−2細胞の>90%が感染から防御されるIgG濃度を決定した。HEp−2細胞のRSV感染の検出は、免疫蛍光染色によってはっきりと示された(図10)。試験されたIVIG画分によって変化する用量依存性が明瞭に見られた。中和活性における最も著しい相異は、pH4での単量体と二量体の比較で見られた。二量体(46.8μg/ml)よりもより多くの単量体(187μg/ml)が、同じ量のRSV粒子を100%中和するのに必要とされた。
【0058】
図11は、シェーグレン症候群の標的抗原の1つであるM3Rペプチドに対して、単量体に比較して二量体において、活性が増大していることを示す。M3Rに対する自己抗体が、IVIG製剤に、より詳しくは解離した二量体に存在しており、正常な生理条件下で、そのような自己抗体の抗イディオタイプ制御の存在を示唆している。
【0059】
図12は、細胞外自己抗原と比較した細胞内コンパートメントに存在する自己抗原に対する、二量体の優勢な反応性を示している。
【0060】
図13は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の種々のリポ多糖体血清型(IATS分類によって表される)に対する単量体の明らかに増大した活性を示す。相対的に、二量体は、タンパク質、トキシンAに対して増大した活性を示した。
【0061】
図14は、免疫組織学的解析にHEp−2細胞を使用した結果を示す。これらの細胞は、一連の核抗原、リボソーム抗原及びミトコンドリア関連抗原と反応する種々の自己免疫疾患において見出される自己抗体を検出するために、臨床検査室によって通常使用されている。反応性の病原的型は見られなかった。代わりに、高い倍率において細胞の細胞骨格成分のようにみえる、二量体画分の著しい活性があった。
【0062】
図15は、HEp−2(上皮)細胞において免疫蛍光によって前に観察された結果を確認したものである。この図は、単量体画分又は二量体画分のいずれかを使用し、HepG2細胞のプロテオームの2次元解析に続くウエスタンブロッティングを示す。単量体画分に比較して二量体画分において自己反応性の増大が見られる。反応性におけるこの増大は、スポット採取と質量分析法によって定量された、自己抗原の限られた明確な免疫優性サブセットによるものである。
【0063】
図16は、異なった型の上皮細胞についてのFACS分析の結果を示す。細胞は、処理されたか、即ち、膜染色と細胞内染色のそれぞれの間の識別を可能にするように透過性にされたか、又は処理されなかったかのいずれかであった。二量体は、処理された全ての上皮細胞に対して増大した細胞内反応性を示す。バックグランドを越える顕著な染色は、非
透過性細胞については見られなかった。このことは、試験した全ての画分について、膜タンパク質との反応性が欠けていることを示している。対照的に、対照の非上皮細胞系(形状は示していない)として使用した非処理RBL細胞は、全ての画分によって均等に染色されたことを示した。このことは、多分、Fc−γ受容体との相互作用を表している。
【0064】
表1は、それぞれの抗原が固定化され、ある濃度範囲の単量体、二量体及び対照としてのIVIG出発製剤と反応することを可能にした、ELISAとイムノドットアッセイの両者による累積データを表す。比較に便利なように、単量体と二量体は、単純な反応性の等級(++から−)で比較した。微差反応性が、単量体と二量体の間で明らかに見られた。ある種の自己抗原、例えばミオシン及びホスホリラーゼBは、単量体と反応するが、二量体とも増大した反応性を示すように見える。
【0065】
要約
上記の結果に基づいて、二量体画分は、より成熟した抗体レパトアを含有し、細胞内自己抗原に対して顕著な活性を示す。対照的に、免疫固体及び自然抗体の両者からなる単量体画分は、ある種の多糖類抗原と優先的に反応するようである。
【0066】
二量体画分は高親和性抗体を含有し、それ故、この画分は、又、例えば抗細菌抗体、抗トキシン抗体又は抗ウイルス抗体の場合における中和活性について、生物学的により活性であろう。それ故、二量体画分は、ある種の抗原に対して高い比活性を有するIVIGの亜画分を意味する。このことは、又、免疫系は恒常性を維持するためにネガティブフィードバック又はダウンレギュレーションによって産生される高親和性抗体に応答しなければならないから、この画分に抗イディオタイプ抗体が存在することを明らかにしていることになる。
【0067】
単量体画分は、自然抗体、即ち、高親和性抗体が発生しなければならない基本的なレパトアを提供する、低親和性抗体を含有している。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】IVIG製剤のクロマトグラフィー及び分別の最適化を示す。
【図2】IVIG製剤の分取分別を示す。
【図3】分析用HPLCにおけるIVIG及び分離した単量体画分及び二量体画分の概要を示す。
【図4】分離した二量体画分の動力学を示す。
【図5】IVIG中の単量体及び二量体のサイズ排除分離のフローチャートを示す。
【図6】単量体化二量体画分調製のための最適pH条件を示す。
【図7】分離した単量体画分及び二量体画分の2D−PAGE分析を示す。
【図8】IVIG画分におけるS.pyogenesのM5タンパク質に対する反応性を示す。
【図9】外部抗原に対する二量体画分の微差活性。二量体画分の増大した活性は、結合の親和性の増大と相関しているを示す。
【図10】二量体は、Hp−2細胞を使用した機能的中和アッセイにおいてRSVに対する増大した中和活性を示す。
【図11】二量体は、シェーグレン症候群の標的抗原であるムスカリン3受容体のループ2ペプチドに対して増大した活性を示す。
【図12】二量体は、細胞外自己抗原と比較すると細胞内自己抗原に対し選択的に増大した活性を示す。
【図13】単量体は、Pseudomonas aeruginosaの種々のリポ多糖類血清型(IATS)に対して選択的な反応性を示すが、トキシンAについてはその逆であることが見出された。
【図14】二量体は、HEp−2細胞における細胞骨格タンパク質免疫蛍光に対して増大した活性を示す。
【図15】二量体は、HepG2細胞において増大した自己反応性を示す。
【図16】二量体は、異なった動物種からの上皮細胞の細胞内タンパク質に対して増大した活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種ヒトドナー集団からのヒト抗体の画分又はその抗原結合断片を含み、該画分が二量体ヒト抗体から由来するものである医薬組成物。
【請求項2】
ヒト抗体の画分が、ポリクローナルヒト免疫グロブリン製剤からの二量体抗体の画分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヒト抗体の画分が、静脈内投与ポリクローナルヒト免疫グロブリン製剤(IVIG)からの二量体抗体の画分である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
二量体抗体の純度が、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、そしてより好ましくは少なくとも85%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ヒト抗体が、非分別免疫グロブリン製剤を越えて少なくとも2倍の反応性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
ヒト抗体の二量体画分が、異種ドナー集団からのヒト抗体製剤をサイズ分別し、そして約300kDaの見かけの分子量を有する抗体二量体を回収することによって得られる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
サイズ分別が、サイズ排除、分離、ゲルろ過、限外濾過及び/又はその他のゲル又は膜分離法を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
二量体抗体又は抗体断片が、解離した形態又は単量体化した形態で存在している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
感染症、例えば、ウイルス、細菌、真菌、原虫又は寄生虫感染、に対する薬剤の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
感染が急性感染である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
自己免疫疾患に対する薬剤の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
シェーグレン症候群に対する薬剤の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
自己免疫疾患に対する薬剤が、自己免疫恒常性の維持及び/又は回復のための薬剤である、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
異種ヒトドナー集団からのヒト抗体の画分又はその抗原結合断片を含み、該画分が単量体ヒト抗体に由来するものである医薬組成物。
【請求項15】
ヒト抗体の画分が、ポリクローナルヒト免疫グロブリン製剤からの単量体抗体の画分である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ヒト抗体の画分が、静脈内投与ポリクローナルヒト免疫グロブリン製剤(IVIG)からの単量体抗体の画分である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
単量体抗体の純度が、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、そしてより好ましくは少なくとも93%である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
単量体ヒト抗体の画分が、異種ドナー集団からのヒト抗体製剤をサイズ分別し、そして約150kDaの見かけの分子量を有する抗体単量体を回収することによって得られる、請求項14〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
サイズ分別が、サイズ排除分離、ゲルろ過、限外濾過及び/又はその他のゲル又は膜分離法を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
免疫恒常性の維持のための薬剤を製造するための、請求項14〜19のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項21】
免疫恒常性の維持のための薬剤が、小児、高齢者、又は免疫不全者、例えば、免疫系に影響を及ぼす障害に罹患している又は免疫系に影響を及ぼす治療を受けている人に投与するための薬剤である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
免疫恒常性の維持のための薬剤が老化防止又は若返り治療用の薬剤である、請求項20又は21に記載の使用。
【請求項23】
感染症、例えば、ウイルス、細菌、真菌、原虫又は寄生虫感染、に対する薬剤の製造のための、請求項14〜19のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
緑膿菌の血清型に起因する感染症の治療用の薬剤を製造するための、請求項14〜19のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項25】
異種ヒトドナー集団からのヒト抗体の画分又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を製造する方法であって、
(a)異種ドナー集団からのヒト抗体製剤をサイズ分別にかけ、
(b)二量体抗体の画分を回収し、そして場合により二量体抗体を単量体化し、そして
(c)単量体抗体の画分を回収する
ことを含む上記方法。
【請求項26】
単量体ヒト抗体の画分が約150kDaの見かけの分子量を有し、そして二量体抗体の画分が約300kDaの見かけの分子量を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
画分(b)及び(c)が異なった薬物応用のための薬剤の製造用に使用される、請求項25又は26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2008−518887(P2008−518887A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538332(P2007−538332)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011494
【国際公開番号】WO2006/048174
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(501091604)ツェー・エス・エル・ベーリング・アクチエンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】