免疫刺激性複合体
【課題】 免疫刺激性オリゴヌクレオチドを、安全でトランスフェクション効果の高い材料と複合体化し、抗原提示細胞に対して優れた免疫刺激効果を奏する免疫刺激剤として提供する。
【解決手段】 免疫刺激性オリゴヌクレオチドを長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を有するβ-1,3-グルカン(例えば、パン酵母壁から抽出されたザイモサン)と複合体化し、免疫刺激剤として投与することにより、サイトカイン類の産生量を顕著に増大させることができる。
【解決手段】 免疫刺激性オリゴヌクレオチドを長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を有するβ-1,3-グルカン(例えば、パン酵母壁から抽出されたザイモサン)と複合体化し、免疫刺激剤として投与することにより、サイトカイン類の産生量を顕著に増大させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫刺激剤(Immunostimulant:免疫賦活剤または免疫促進剤などとも呼ばれる)の技術分野に属し、特に、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを、天然の多糖類の一種と複合体化することにより得られる、安全で、薬効の高い免疫刺激性複合体を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫応答の刺激活性を有するオリゴヌクレオチド(以下、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、免疫刺激性核酸または免疫刺激性DNAと記述することがある)は、1984年にTokunagaらによりBCGの抗腫瘍性成分を検索する過程で発見された。そして、その活性化作用がシトシン・グアニン
ジヌクレオチド(5'-CpG-3':所謂CpG配列)を含む特定の塩基配列に起因するものであることが明らかにされた。
【非特許文献1】Tokunaga,T.,et al., J. Natl. Cancer Inst., 72, 955(1984)
【非特許文献2】Tokunaga,T.,et al., J. Natl. Cancer Res., 79, 682(1988)
【0003】
脊椎動物または植物以外のCpG配列をもつゲノムDNAにも同様の活性が認められている。免疫刺激活性にはCpGコアの前後の配列も重要と考えられ、特に、メチル化されてないCpGを有し、その前後に置換プリン(Pu)と置換ピリミジン(Py)が配列した5'-PuPuCpGPyPy-3'が、代表的な非メチル化CpGモチーフとしてコンセンサスを得ている。
【非特許文献3】Krieg, A., etal., Nature, 374, 576(1995)
【0004】
ここで、非メチル化CpGモチーフとは、よく知られているように、少なくとも1つのシトシン(C)−グアニン(G)配列を含む短いヌクレオチド配列(一般的には4〜10個のヌクレオチドから成る配列)であって、該シトシン−グアニン配列におけるシトシンの5位がメチル化されていないものを指称する。なお、以下の説明において、CpGとは、特にことわらなり限り非メチル化CpGを意味する。
【0005】
有用なCpGモチーフ(ヘキサマー)の例を以下に記載する(ただし、A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン、U:ウラシル)。
AACGTT、AGCGTT、GACGTT、GGCGTT、AACGTC、AGCGTC、GACGTC、GGCGTC、AACGCC、AGCGCC、GACGCC、GGCGCC、AACGCT、AGCGCT、GACGCT、およびGGCGCT
これらの配列を含む8〜100個程度で構成されるオリゴヌクレオチドが免疫刺激活性を有するものである。
【特許文献1】特表2001−503254
【0006】
以下の配列は、NK細胞の活性化に有効と報告されたCpGモチーフを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドの例である(下線部分がCpGモチーフを示し、また、大文字はチオール化DNAを表わす)。
【非特許文献4】伊保澄子、山本三郎、AnnualReview免疫2001,137-146(2002)accgataccggtgccggtgacggcaccacg accgatagcgctgccggtgacggcaccacg accgatgacgtcgccggtgacggcaccacg accgattcgcgagccggtgacggcaccacg ggggggggggggcgatcggggggggggggggggggggggggacgatcgtcggggggggggggggggggggggaacgttggggggggggggGAGAACGCTCGACCTTCGATTCCATGACGTTCCTGATGCTTCTCCCAGCGTGCGCCATGGggtcaacgttgaGGGGGg
【0007】
CpGモチーフ以外にも、免疫刺激性核酸として知られている幾つかの配列がある。例記すると、5'TTTT3'のようにチミジンに富むTリッチ核酸、5'GGGG3'のようにグアニジンに富むGリッチ核酸、チミジンとグアニジンの両方に富むT Gリッチ核酸、シチジンに富むCリッチ核酸などが非CpG免疫刺激性核酸として最近注目されている。
【特許文献2】特表平08−500738
【特許文献3】特表2002−512599
【特許文献4】特表2003−510282
【特許文献5】特表2003−510290
【0008】
これらの免疫刺激性核酸の免疫系細胞に対する効果の大きな特徴は、抗原提示細胞を活性化することである。マウスやヒトの単球、マクロファージ、樹状細胞などに直接作用して、IL-6、TNF-α、IL-12、IFNα/β、IL-18、一酸化窒素などの免疫力増強作用をもつサイトカインを産生させる。
免疫性疾患に対する治療用の核酸ならびにDNAワクチンの組成物に関する特許出願が、最近、増えており、例えば、ザ ユニバーシティ オブ アイオワ リサーチ ファウンデーションの出願によるものは、ウイルス、細菌、真菌または寄生体の感染によって引き起こされる免疫系不全や、ガンにかかっているヒトや動物の処置、リポ多糖やエンドトキシンの暴露から生ずる気流の急性減少を起こした被験体のための治療的使用などのため、またはアジュバント用に多数のCpGモチーフ系の配列を提案している(特許文献6〜8)。また、CpGモチーフをDNAワクチンに使用する特許の出願で、魚介類に対するものも認められる(特許文献9)。同様に、動物のパルボウイルスの感染予防の目的のためのものもある(特許文献10)。さらに、特許文献1、11および12などにも、免疫刺激活性を有する類似の配列が多数記載されている。
【特許文献6】特表平10−506265
【特許文献7】特表2001−503267
【特許文献8】特表2001−513776
【特許文献9】特開平9−285291
【特許文献10】特表2000−509976
【特許文献11】特表2002−517156
【特許文献12】特表2002−526425
【0009】
アンチセンスDNAを用いる遺伝子治療の場合と同様に、免疫刺激性オリゴヌクレオチドのリン酸バックボーンは、ヌクレアーゼ耐性化のために、ホスホジエステル結合の部分がホスホロチオエート結合に修飾されている例が多い。また、免疫刺激性オリゴヌクレオチドの細胞との親和性を高める目的でリポソーム、カチオン脂質、コレステロールなどのトランスフェクション剤を併用する例も多く見られる。
遺伝子治療の際のアンチセンスDNAのトランスフェクション剤としては、当初、レトロウイルスまたはアデノウイルスがin vitroで極めて見込みのある結果を与えたが、これら天然由来のウイルスの炎症性、免疫原的性質、ならびに突然変異誘発および細胞ゲノム中への組み込みの危険性が原因して、これらのin vivoにおける使用は制限されている。
【非特許文献5】Mulligan,Science, 260, 926-932(1993)
【非特許文献6】Miller,Nature, 357, 455-460(1992)
【非特許文献7】Crystal,Science, 270, 404-410(1995)
【0010】
天然由来の遺伝子のトランスフェクション剤の代替物として、ウイルス系よりも取り扱いが簡単であるのみならず、細胞へDNAを確実に効率良く集中させることが可能な人工材料の非ウイルス系キャリアーの使用が提示された。
【非特許文献8】Tomlinson andRolland, J. Contr. Rel., 39, 357-372(1996)
【0011】
現在、非ウイルス性の人工キャリアーとしてよく検討されているのはポリエチレンイミン(PEI)である。多数の異なった付着細胞および浮遊細胞ライン中では、3次元的分岐構造のカチオンポリマーであるPEIは、ある場合には平均以上のトランスフェクション率を引き起こす結果になった。
【非特許文献9】Boussif etal., Gene Therapy, 3, 1074-1080(1996)
【0012】
また、PEIと同様、窒素を含む置換基で修飾された、種々のカチオン性ポリマー、カチオン性脂質などが遺伝子キャリアー、トランスフェクション剤、薬物担体などという名称で、最近、多数の特許が出願されるようになってきた。
しかしながら、PEIのようなカチオン性ポリマーの安全性についてはほとんど確認されていないのが現状である。カチオン性を付与するには、通常、アミノ基の存在が不可欠であるが、アミノ基を有する物質は生理活性が高く、体内毒性等の危険性が考えられる。事実、今まで検討されたいかなるカチオン性ポリマーも未だ実用に供されておらず、医薬品添加物辞典等に記載されていない。
【非特許文献10】医薬品添加物辞典、日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社
【0013】
一方、筋肉内注射製剤の臨床薬として実際に使用されている多糖類に、β-1,3-グルカンが存在する。この多糖は天然では三重螺旋構造をとっていることが古くから知られている(非特許文献11)。さらに、この多糖は、既に生体内での安全性が確認されており、婦人科癌に対する免疫増強法の筋肉内注射薬として20年以上の使用実績がある(非特許文献12および13)
【非特許文献11】Theresa M.McIntire and David A. Brant, J. Am. Chem. Soc., 120, 6909(1998)
【非特許文献12】清水, 陳, 荷見, 増淵, Biotherapy, 4,1390(1990)
【非特許文献13】長谷川,Oncology and Chemotherapy, 8, 225(1992)
【0014】
このようなβ-1,3-グルカンを、DNA等の生体材料とコンジュゲートし、遺伝子キャリアーに使用できることが知られている。この先行技術には、天然のβ-1,3-グルカン、すなわち、三重螺旋構造を有するβ-1,3-グルカンをそのまま使用し、これと生化学活性のある材料を、共有結合を介して、β-1,3-グルカン/生体材料のコンジュゲートを製造する方法が述ベられている。
【特許文献13】PCT/US95/14800(WO 96/14873)
【0015】
また、最近、本発明者らにより、β-1,3-グルコシド結合を主鎖とする多糖類が、人工的に処理されることで、各種の核酸と新しいタイブの複合体を形成することが見出された。
【特許文献14】PCT/JP00/07875 (WO 01/34207)
【特許文献15】PCT/JP02/0222 (WO 02/072152)
【非特許文献14】櫻井, 新海, J. Am. Chem. Soc., 122, 4520(2000)
【非特許文献15】Chem. Lett.,1242(2000)
【0016】
β-1,3-グルカンに免疫刺激活性があることは従来から知られており、アジュバントとしてワクチンまたは免疫刺激性核酸に添加される例が報告されている(特許文献16および17)。
【特許文献16】特表平9−504000
【特許文献17】特表2001−504000
【0017】
CpGモチーフおよびβ-1,3-グルカンは、夫々単独で使用した場合の免疫刺激効果はそれほど顕著に現れるものではない。しかし、本発明者らは、シゾフィランのような特定のβ-1,3-グルカンをCpGモチーフのような免疫刺激剤オリゴヌクレオチドと組み合せ、両者を特定の条件で処理することにより安定な複合体を形成させ、それを抗原提示細胞に投与することで、免疫に関わるサイトカインの産生量を相乗的に増加できることを見出した(特許文献18)。この複合体は、免疫刺激剤として有用であるが、免疫刺激作用などにおいて更なる向上がなされることは勿論望ましい。
【特許文献18】PCT/JP2004/006793
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、安全な材料を用い、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと組み合わせることによって、抗原提示細胞に対して優れた免疫刺激効果を奏する免疫刺激剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らによる上記特許文献18に開示された発明は、天然から入手できる安全な多糖であるβ-1,3-グルカンと免疫刺激性オリゴヌクレオチドとの複合体から成る新しいタイプの免疫刺激剤に関するものである。ここで、該免疫刺激剤において実際に用いられるβ-1,3-グルカンは、専ら、シゾフィランに代表される短鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を有するか、そのような側鎖を有しないβ-1,3-グルカンであった。これは、核酸との複合体は、β-1,3-グルカンの側鎖の置換割合を少なくするほどより安定であるという事実も知られており(特許文献19)、長鎖のβ-1,6-グルコシド結合分岐を有するβ−グルカンが短い側鎖のβ-1,3-グルカンと同様に免疫刺激性核酸と複合体化しうるのか、また、得られたものが免疫刺激の効果を十分に発揮しうるのかに関しては全く知見がなく、寧ろ否定的であると考えられていたからである。
【特許文献19】特開2004−331758
【0020】
しかしながら、本発明者が研究を重ねた結果、驚くべきことに、免疫刺激性ヌクレオチドと組み合せて用いると、長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を持つβ-1,3-グルカンの方が、短鎖のβ-1,6-結合側鎖またはそのような側鎖を有しないβ-1,3-グルカンに比べて、免疫刺激効果の著しく向上した複合体を形成することが見出された。
かくして、本発明は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと、長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を有するβ-1,3-グルカンとから成る免疫刺激性複合体を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の複合体を抗原提示細胞に投与することにより、免疫力増強に有効なサイトカインの産生量を飛躍的に増大させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
よく知られているように、β-1,3-グルカンとはβ-1,3-グルコシド結合を主鎖とする多糖類の総称である。β-1,3-グルカンとしては、従来より、側鎖を持たないカードラン、β-1,6-グルコシド結合により主鎖に結合した側鎖のグルコース残基の数(長さ)が1個のシゾフィラン(ソニフィラン:SPGと略記される)、グリフォラン、レンチナンなどが茸類から抽出されている。本発明者らによる前記特許文献18において開示した免疫刺激性複合体において用いているβ-1,3-グルカンは、専ら、このように側鎖を有しないか、または短鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖をもつものであった。
【0023】
一方、パン酵母(Saccharomyces
cerevisiae)やカンジダ菌(Candida albicans)の細胞壁から抽出されるβ-グルカンは、比較的長いβ-1,6-グルコシド結合の側鎖が主鎖のβ-1,3-グルカンに結合していることが知られている。このタイプのβ-グルカンは分子量が約100万を超え、粒子状に凝集しており、溶媒に溶けにくく、また、側鎖の中に更に分岐の存在するものもある(非特許文献16〜19)。その構造に関して、パン酵母やカンジダ菌由来のものから抽出されたフラクションにはβ-1,6-グルコシド結合側鎖中のグルコース残基数が10〜50個程度と報告されている(非特許文献16、20、21)。パン酵母壁から抽出・精製されたものはZymosan(ザイモサンまたはザイモザン)と呼ばれ、以前より免疫研究用の試薬として販売され多用されている。その他にも長鎖のβ-1,6-結合を有するβ-グルカンとしてアガリクス(Agaricus blaziriensis)由来のものもあるが、その場合は、β-1,6-結合が主鎖でβ-1,3-結合が側鎖と言われている。
【非特許文献16】大野尚仁、DOJINNews No.114、1-10(2005)
【非特許文献17】UnderhillDM, Ozinsky A, Hajjar AM, Stevens A, Wilson CB, Bassetti M, Aderem A, Nature, 401,811-815(1999)
【非特許文献18】宿前利郎、YAKUGAKUZASSHI, 120(5),413-431(2000)
【非特許文献19】大野尚仁、日本細菌学雑誌、55(3)、527-537(2000)
【非特許文献20】Ohno N., Miura T., Miura N.N.,Adachi Y., Yadomae T., Carbohydrate Polymers, 44, 339-349(2001)
【非特許文献21】Ohno N.,Uchiyama M., Tsuzuki A., Tokunaka K., Miura N.N., Adachi Y., Aizawa M.W.,Tamura H., Tanaka S., Yadomae T., Carbohydrate Res., 316, 161-172(1999)
【0024】
本発明の免疫刺激性複合体を構成する多糖は、上述の各種文献にも記載されているように長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を持つβ-1,3-グルカンであり、図1に示す基本構造を有するものである(非特許文献17参照)。なお、この図1の構造式は、側鎖にβ-1,6-グルコシド結合鎖のみを含む単純な場合であるが、側鎖の一部にβ-1,3-分岐を有するものも本発明のβ-1,3-グルカンに含まれるものとする。かくして、本発明は、PCT/JP2004/006793(特許文献18)に開示されている免疫刺激性複合体の発明に対して選択発明としての意義を有するものである。
【0025】
本発明において長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖とは、その側鎖を構成するグルコース残基の数が平均4個以上であるような長さを有する側鎖であり、好ましくは、当該グルコース残基の数が平均10個以上、一般に平均10〜50個有するものを指称する。
【0026】
本発明の免疫刺激性複合体を構成する主剤として用いる免疫刺激性オリゴヌクレオチドとは、免疫応答を刺激し免疫力の増強に活性を有するオリゴヌクレオチドであり、前記文献に記載されているような各種のオリゴヌクレオチドが例示されるが、それらに限定されるものではない。本発明において対象となる免疫刺激性オリゴヌクレオチドとしては、各種の非メチル化CpGモチーフを含むものが好適に使用される。また、同様に例示した、非CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチド(非メチル化CpGモチーフ以外の免疫刺激性オリゴヌクレオチド)も使用することができる。非CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、単独またはCpGモチーフと組み合わせて使用される。投与されるこれらのオリゴヌクレオチドはマクロファージなどの免疫細胞に作用し、サイトカインの産出等を介して免疫力を高める効果がある。
【0027】
本発明で使用するオリゴヌクレオチドのリン酸バックボーンは、ヌクレアーゼ耐性を増すために、主鎖のホスホジエステル結合の部分をホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾したものが、通常、用いられるが、ホスホジエステル結合が一部または全部保持されたものでも差し支えない。
【0028】
CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドをβ-グルカンと組み合わせて本発明の複合体をスムーズに調製するために、用いるDNAに予めpoly(dA)のテールを付加しておくことが望ましい。
【0029】
もう一つの主剤であるβ-1,3-グルカンの好適な例としては、入手の容易な点から、パン酵母壁からの抽出物であるザイモサン(Zymosan:以下、Zymと略記とすることもある)が挙げられる。この抽出物は、上述したような長鎖の側鎖をもつβ-1,3-グルカン55〜60%程度の他、マンナンなどの糖類、タンパク質、キチン質、糖脂質、灰分などを含む混合物である。抽出物からタンパク等の共雑物を出来るだけ除去し・精製されたものが試薬として入手でき、さらに次亜塩素酸塩処理などの化学処理を加えた精製品もある。但し、精製品のみならず、長鎖の側鎖をもつβ-1,3-グルカンを上記程度に含有するものであれば、抽出混合物も使用可能である。ザイモサンの他、前述のカンジダ細胞壁から抽出されるもの等も使用可能である。
【0030】
免疫性刺激オリゴヌクレオチドと長側鎖のβ-1,3-グルカンの複合体を調製するには、本発明者らによる特許文献15に詳細に記述されている、シゾフィランのような短側鎖のβ-1,3-グルカンと核酸との複合体を調製する方法に準じて行うことができる。ただし、水性溶媒には難溶であり、高度に自己複合体化している長側鎖β-1,3-グルカンのランダムコイル状への解離をアルカリ水溶液によって行う方法はあまり有効でなく、非プロトン性極性溶媒を用いる方法が好適である。すなわち、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような極性溶媒に試料のβ-グルカンを溶解してランダムコイルに解いた後、同様にDMSOに溶解した核酸を加え、さらに水を混合することによって、免疫性刺激性オリゴヌクレオチドと長側鎖β-1,3-グルカンとから成る、ハイブリッド状の複合体が形成される。
【0031】
オリゴヌクレオチドと多糖との複合体形成の確認は円偏光二色性(CD)スペクトルの測定で行うことができる。そして、複合体化に伴うCDスペクトルの挙動は、ザイモサンのような長側鎖のβ-1,3-グルカンを用いた場合とシゾフィラン(SPG)のような短側鎖のβ-1,3-グルカンを用いた場合とでは違っている。例えば、Zym/CpGDNA複合体のコンフォメーションはSPG/CpGDNA複合体のコンフォメーションと異なる結果が得られている(後述の実施例および比較例参照)。
【0032】
また、SPGに代表される短い側鎖をもつβ-1,3-グルカンを用いた場合のオリゴヌクレチドと形成する複合体はβ-グルカン2本と核酸1本とから成る3重らせん状の複合体であることが判明している。これに対して、長い側鎖のβ-1,3-グルカンとオリゴヌクレオチドとから成る複合体の構造は、原料自身が複雑な混合物であることに加え、両原料物質の配合比率や熟成条件などの変動により定まった構造のものではなく、比較的幅広くとることができる。そして、その変動は免疫力増強の目的に使用する場合に、特に支障となることはなく、その変動に応じて免疫刺激機能を変化させることができる点において有利である。
【0033】
本発明に従う安定な複合体を得るための長側鎖β-1,3-グルカン/免疫刺激性オリゴヌクレオチドの至適配合比率は重量比で約2〜6倍程度、熟成の温度と時間は4〜5℃で2日以上が好ましい。調製した複合体は水に溶け、取扱いが容易である。抗原提示細胞に投与した場合のサイトカインの産生量は、複合体を形成しない場合に対しては大幅に増大し、かつ、SPGと複合体化した場合に比べても顕著に増大する結果が得られている(後述の実施例参照)。これは、SPGと複合体化する場合と複合体の構造が相違することに因るのかも知れない。
以下、長側鎖β-1,3-グルカンとしてザイモサンを用いる場合の実施例に沿って、本発明の特徴を更に具体的に示すが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
ザイモサン(Zym)とオリゴヌクレオチド(poly(dA))の円偏光二色性(CD)による複合体化観察
<ザイモサンの分析>
本実施例で用いたザイモサンはSaccharomyces
cerevisiaeの細胞壁から得られた粒状物で、GPCによる分子量は100万以上、元素分析の重量比はC/H/N=42.3/7.0/2.30であった(InvivoGen社より入手)。さらに、非特許文献20、21および22を参考に、ジメチルスルホキシド(DMSO)法で可溶化した試料をZymolyase消化することによって主鎖のβ-1,3-鎖を除去し、これをTOF-MS(アプライドバイオシステムズ・Mariner ESI-TOF使用)にて分析したところ、側鎖の平均分子量約3000(重合度換算による側鎖のグルコース数:約15)であった。
【0035】
入手したザイモサンはDMSOに溶解してサンプル調製に用いた。DNAはAmersham Biosciencesより入手したPolydeoxyadenylic Acid (poly(dA))を同様にDMSOに溶解して用いた。サンプル調製条件は、NaClaq 150mM、Poly(dA) 12.5μg/ml、およびTris 30mMを固定し、Zymを0〜90μg/ml(Vw=0.90)まで変えたサンプルを用意し、3日間5℃にて保存した後、CD測定を行った。測定用サンプルの薬剤比率を表1に示した。
【0036】
【表1】
【0037】
測定で得られたCDスペクトルを重ね書きした結果を図2Aに示した。poly(dA)の濃度を一定(12.5μg/ml)にして、Zymの濃度を少しずつ増やしていくと260nm付近のスペクトル強度が顕著に増大する。このことはZymがpoly(dA)と複合体化することによってDNAのコンフォーメーションが変化することを示している。そして260nmにおけるCD強度はZym/poly(dA)重量比が4〜6倍付近(Zym量で60〜90μg)で最大となることが認められた(図2B)。
【実施例2】
【0038】
ザイモサン(Zym)またはシゾフィラン(SPG)とオリゴヌクレオチド(poly(dA))との複合体形成における経時変化の円偏光二色性(CD)観察(比較例1を含む)
DMSOに一定量溶解したザイモサンとdA40mer(北海道システムサイエンス社より入手)、ならびにNaClaqおよびTrisを配合した試料液を調製した(表2参照)。比較のためZymの代わりにシゾフィラン(SPG)を用いたものも用意した。試料液は5℃で保存したが、混合直後より適当な時間間隔でCD測定を行った。
【0039】
【表2】
【0040】
比較例のSPGを用いてDNA(poly(dA))と複合体を形成させる場合、図4Aおよび図4Bに見られるように熟成時間の経過とともに250 nm付近のCD値は上昇し、264nm付近のCD値は逆に低下する。この変化はSPGと複合体を形成することによってDNAのコンフォメーションがC2’-endのAnti型からsyn型へ変化することによるものと解析される(非特許文献22)。
一方、本発明のZymを用いた場合のCDの変化を見ると、図3Aおよび図3Bに示すように、251 nm付近のCD値は一旦は上昇するが、途中から逆に低下すること、および262nm付近のCD値は上昇するという、SPGの場合と異なる現象が認められた。この結果は、ザイモサンと複合体を形成する場合のDNAのコンフォメーションは、C2’-endのAnti型からC3’- end型へ変化することによるものと解釈される。なお、図3Bと図4Bの結果から、ザイモサンの複合体が安定化する時間はSPGの場合の70〜80時間に比べると、50時間程度と短くてすむことも判明した。
【非特許文献22】Mizu, M.,Koumoto, K., Kimura, T., Sakurai, K., and Shinkai, S., Polymer J., 35 (9),714-720(2003)
【実施例3】
【0041】
ザイモサン(Zym)とCpG-dA40(CpG)の円偏光二色性(CD)による複合体形成の観察
DNAとしてホスホロチオエート化したCpG DNAの3’末端に40merのdAを付加した核酸(配列番号1:CpG-dA40と略記)を用い、実施例2と同様の条件でZymによる複合体化を行い、CD測定を測定した。測定用サンプルの薬剤比率を表2に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
サンプル調製直後のCD測定結果を図5Aに、3日後に測定した結果を図5Bに示す。その結果、実施例2のpoly(dA)で認められた現象と同様なコンフォメーションの変化が起こることが、260nm付近のCD値の経時変化から確かめられる。
【実施例4】
【0044】
ザイモサン(Zym)とCpGDNAのゲル電気泳動による複合体化観察(比較例2を含む)
CpGDNAとして配列番号1で示すCpG-dA40を用い、ザイモサンとの複合体(Zym/CpGDNA)をゲル電気泳動で調べた。比較例として、CpGDNAのみおよびザイモサンの代わりにシゾフィラン(SPG)で複合体化したサンプル(SPG/CpGDNA)も用いた。サンプルの調合条件は表4に示す。3日間5℃で保存した後、20Vで3hゲル電気泳動を行った。ゲルは3%DMSOを含む2wt%アガロースゲル、緩衝液には3%DMSOを含むTAE Bufferを用いた。
【0045】
【表4】
【0046】
図6の電気泳動の結果から、レーン2のCpG DNAのみを泳動したバンドと比べて、レーン3,4の多糖と熟成させた試料を泳動したバンドでは高分子量側にシフトしていることから、CpG DNAはZymおよびSPGと複合体を形成しているということがわかる。また、Zym/CpG DNA複合体の方がSPG/CpG
DNA複合体より分子量が大きいことも認められた。
【実施例5】
【0047】
Zym/CpGDNA複合体のサイトカイン産生量測定(1)(比較例3を含む)
表5に示す組成のサンプルを調製した。使用したDNAは、本発明で用いるCpGモチーフ含有の配列番号1に記載したCpG DNAおよび比較例として用いるCpGモチーフを含まない配列番号2に記載のnon-CpG DNAで、いずれもリン酸バックボーンがS-オリゴ型のものである。複合体のもう一つの成分である多糖には、本発明のザイモサン(Zym)を用いた。比較例として、複合体の構成物質であるDNAのみ(CpG DNAおよびnon-CpG DNA)、Zymのみ並びにコントロール(生理食塩水)のサンプルも調製した。
【0048】
【表5】
【0049】
サイトカイン産生量を測定する方法としてELISA法(Enzyme Linked Immuno Sorbent Assay:酵素免疫測定法)を用いた。あらかじめ抗体がついているプレートに、サンプルを加え、サンプル中のサイトカインが抗原となり、抗原抗体反応が起こる。次に、抗体に酵素を修飾したものを加え、再度、抗原抗体反応を起こす。そして、最後に、酵素に対応した基質を加えることで、酵素基質反応が起こるために発色し、その吸光度を分光光度計で測定するものである。Cell lineにはマウス由来のマクロファージ様細胞:J774A.1(BALB/c
macrophage, mouse):DMEM+Penicillin−Streptomycin+10%FBSを用い、細胞数を測定した後、最終細胞濃度が1.0×106cells/mlになるように細胞を調整し、96wellマイクロプレートに100μlずつ添加(細胞数:1.0×105cells/well)した。20時間、37℃、5%CO2で培養し、各濃度に調整したサンプル溶液をそれぞれ10μl添加、懸濁し、Controlには生理食塩水10μlを添加した。48時間、37℃、5%CO2で培養し、Mouse Total IL-12/IL-6 ELISA Kit(ENDOGEN)とMouse TNF-α ELISA Kit
(BIOSOURCE)を用い、マイクロプレートリーダーで吸光度(450nm、570nm)を測定することにより、サイトカイン(IL-12、IL-6およびTNF-α)の産生量を算出した。その結果を図7A〜図7Cに示した。
【0050】
いずれの結果からもCpG DNAにザイモサンを複合体化させて投与した場合にサイトカイン類の産生量が高い結果が得られ、複合体化させずに単に混合して投与した場合、CpG DNAまたは ザイモサンの単独投与の場合、およびnon-CpG DNAとザイモサンの複合体の場合のサイトカイン類の産生量はわずかであった。
【実施例6】
【0051】
Zym/CpGDNA複合体のサイトカイン産生量測定(2)(比較例4を含む)
表6に示す組成のサンプルを調製した。DNAは本発明の配列番号1に示したCpG DNAで、天然のO-オリゴ型のものとS-オリゴ型のものを用いた。また、比較例として、CpGモチーフを含まない配列番号2に記載のnon-CpG DNAを同様に用いた。複合体を形成させるもう一つの成分には、本発明のザイモサン(Zym)と比較例としてのシゾフィラン(SPG)を用いた。サイトカイン類の産生量の測定方法は実施例4の場合と同じである。
【0052】
【表6】
【0053】
サイトカイン類の産生量の測定結果を図8Aおよび図8Bに示した。灰色の柱がSPGとDNAの複合体、黒色の柱がZymとDNAの複合体で、DNA単独投与は白抜き、生理食塩水投与のcontrolは縦縞の柱で示した。DNAなしと示しているものは、多糖のみ(ZymまたはSPGを単独で投与した場合)の結果である。
【0054】
図8AのIL-12産生量において、DNAなし、CpG DNA単独投与、non CpG DNAでは、IL-12産生がほとんど見られなかったが、S-oligo型CpG DNAとZymまたはSPGを複合化させることによって、IL-12産生量が10倍以上増加していた。また、S-oligo型CpG DNA単独投与とZymとの複合体投与を比較すると、Zym使用の場合に20倍程度増強されていた。O-oligo型ではCpG DNAとZymまたはSPGを複合体化させることにより、DNAなしの場合と比較して10倍以上、CpG DNA単独投与に比べても2〜5倍程度増加していた。そして、Zymを使う場合のCpG DNAとの複合体は、SPGを使う場合に比べて約2倍の産生量が認められた。
【0055】
図8Bに示したIL-6の産生量においてもIL-12と同様の傾向が認められ、ZymとCpGDNAの複合体はSPGの場合に比較して約2倍量となる結果が得られた。
【実施例7】
【0056】
β-1,6-グルコシド結合側鎖長のサイトカイン産生量に及ぼす影響(比較例5を含む)
実施例1から6で用いたザイモサンをDMSO法で可溶化した後、Streptomyces rochei DB-34の液体培養上清より調製されたβ-1,6-グルカナーゼとβ-1,3-グルカナーゼ活性を主体とする酵母細胞壁溶解用複合酵素剤(Westase:タカラバイオ(株)より入手)で5分間処理した。反応条件は、複合酵素剤をMcIlvain Bufferに10 マイクロg/ml溶解し、37℃、pH6.0であった。得られた、反応物をアセトン中に再沈した試料番号ZY1を得た。この試料のGPCによる分子量は50万であり、元素分析の結果、C/H/N=43/6.5/0.7であった。さらに、DMSO法で可溶化した試料をZymolyase消化してβ-1,3-鎖を除去し、これをTOF-MSにて分析したところ、平均分子量約2000(重合度換算での側鎖グルコース数:約10)であった。複合酵素剤による処理を30分行った試料ZY2では、分子量は25万であり、元素分析の結果、C/H/N=43/6.5/0.4であった。さらに、Zymolyase消化した試料のTOF-MSから、平均分子量約500(重合度換算での側鎖グルコース数:約2.5)であった。
上で得られた。ZY1とZY2について、実施例6に示す、サイトカイン産生量を測定したところ、ZY1はZymと同程度であったが、ZY2はSPG並みであり、側鎖のβ-1,6-グルコシド結合の長さが短くなると効果が低下することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと天然多糖類の一種である長鎖のβ-1,6-グルコシド結合を持つβ-1,3-グルカンとを複合体化して用いることにより、単独で使用する場合に比べて飛躍的に高い免疫増強作用を有する免疫刺激剤として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ザイモサン(Zym)の基本構造。
【図2A】ザイモサン量可変時のpoly(dA)の円偏光二色性(CD)スペクトル変化(実施例1)。
【図2B】262nmにおけるpoly(dA)のCD強度とZym量の関係(実施例1)。
【図3A】Zymとpoly(dA)の複合体形成時のCDスペクトルの経時変化(実施例2)。
【図3B】Zymとpoly(dA)の複合体形成時の251nmおよび252nmのCD強度変化(実施例2)。
【図4A】Zymとpoly(dA)の複合体形成時のCDスペクトルの経時変化(比較例1)。
【図4B】Zymとpoly(dA)の複合体形成時の251nmおよび252nmのCD強度変化(比較例1)。
【図5A】ZymとCpGの複合体形成時のCDスペクトル(実施例3)。
【図5B】ZymとCpGの複合体の3日経過後のCDスペクトル(実施例3)。
【図6】複合体化していないCpG DNA(2)、本発明に従うザイモサン(Zym)と複合体化したCpG DNA(3)、および比較例のシゾフィラン(SPG)と複合体化したCpG DNA(4)のアガロースゲル電気泳動パターン(実施例4および比較例2)。
【図7A】S-オリゴ型CpG DNAまたはnon-CpG DNAとザイモサン(実施例)とを、複合体化して投与した場合および混合直後に投与した場合ならびに単独投与した場合の、サイトカインIL-12の産生量(1)(実施例5および比較例3)。
【図7B】S-オリゴ型CpG DNAまたはnon-CpG DNAとザイモサン(実施例)とを、複合体化して投与した場合および混合直後に投与した場合ならびに単独投与した場合の、サイトカインIL-6の産生量(1)(実施例5および比較例3)。
【図7C】S-オリゴ型CpG DNAまたはnon-CpG DNAとザイモサン(実施例)とを、複合体化して投与した場合および混合直後に投与した場合ならびに単独投与した場合の、サイトカインTNF-αの産生量(1)(実施例5および比較例3)。
【図8A】天然型O-、S-オリゴ型CpG DNAまたはnon-CpG DNAと、SPG(比較例)またはザイモサン(実施例)とを複合体化した免疫刺激剤を用いた場合のサイトカインIL-12の産生量(2)(実施例6および比較例4)。
【図8B】天然型O-、S-オリゴ型CpG DNAまたはnon-CpG DNAと、SPG(比較例)またはザイモサン(実施例)とを複合体化した免疫刺激剤を用いた場合のサイトカインIL-6の産生量(2)(実施例6および比較例4)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫刺激剤(Immunostimulant:免疫賦活剤または免疫促進剤などとも呼ばれる)の技術分野に属し、特に、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを、天然の多糖類の一種と複合体化することにより得られる、安全で、薬効の高い免疫刺激性複合体を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫応答の刺激活性を有するオリゴヌクレオチド(以下、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、免疫刺激性核酸または免疫刺激性DNAと記述することがある)は、1984年にTokunagaらによりBCGの抗腫瘍性成分を検索する過程で発見された。そして、その活性化作用がシトシン・グアニン
ジヌクレオチド(5'-CpG-3':所謂CpG配列)を含む特定の塩基配列に起因するものであることが明らかにされた。
【非特許文献1】Tokunaga,T.,et al., J. Natl. Cancer Inst., 72, 955(1984)
【非特許文献2】Tokunaga,T.,et al., J. Natl. Cancer Res., 79, 682(1988)
【0003】
脊椎動物または植物以外のCpG配列をもつゲノムDNAにも同様の活性が認められている。免疫刺激活性にはCpGコアの前後の配列も重要と考えられ、特に、メチル化されてないCpGを有し、その前後に置換プリン(Pu)と置換ピリミジン(Py)が配列した5'-PuPuCpGPyPy-3'が、代表的な非メチル化CpGモチーフとしてコンセンサスを得ている。
【非特許文献3】Krieg, A., etal., Nature, 374, 576(1995)
【0004】
ここで、非メチル化CpGモチーフとは、よく知られているように、少なくとも1つのシトシン(C)−グアニン(G)配列を含む短いヌクレオチド配列(一般的には4〜10個のヌクレオチドから成る配列)であって、該シトシン−グアニン配列におけるシトシンの5位がメチル化されていないものを指称する。なお、以下の説明において、CpGとは、特にことわらなり限り非メチル化CpGを意味する。
【0005】
有用なCpGモチーフ(ヘキサマー)の例を以下に記載する(ただし、A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン、U:ウラシル)。
AACGTT、AGCGTT、GACGTT、GGCGTT、AACGTC、AGCGTC、GACGTC、GGCGTC、AACGCC、AGCGCC、GACGCC、GGCGCC、AACGCT、AGCGCT、GACGCT、およびGGCGCT
これらの配列を含む8〜100個程度で構成されるオリゴヌクレオチドが免疫刺激活性を有するものである。
【特許文献1】特表2001−503254
【0006】
以下の配列は、NK細胞の活性化に有効と報告されたCpGモチーフを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドの例である(下線部分がCpGモチーフを示し、また、大文字はチオール化DNAを表わす)。
【非特許文献4】伊保澄子、山本三郎、AnnualReview免疫2001,137-146(2002)accgataccggtgccggtgacggcaccacg accgatagcgctgccggtgacggcaccacg accgatgacgtcgccggtgacggcaccacg accgattcgcgagccggtgacggcaccacg ggggggggggggcgatcggggggggggggggggggggggggacgatcgtcggggggggggggggggggggggaacgttggggggggggggGAGAACGCTCGACCTTCGATTCCATGACGTTCCTGATGCTTCTCCCAGCGTGCGCCATGGggtcaacgttgaGGGGGg
【0007】
CpGモチーフ以外にも、免疫刺激性核酸として知られている幾つかの配列がある。例記すると、5'TTTT3'のようにチミジンに富むTリッチ核酸、5'GGGG3'のようにグアニジンに富むGリッチ核酸、チミジンとグアニジンの両方に富むT Gリッチ核酸、シチジンに富むCリッチ核酸などが非CpG免疫刺激性核酸として最近注目されている。
【特許文献2】特表平08−500738
【特許文献3】特表2002−512599
【特許文献4】特表2003−510282
【特許文献5】特表2003−510290
【0008】
これらの免疫刺激性核酸の免疫系細胞に対する効果の大きな特徴は、抗原提示細胞を活性化することである。マウスやヒトの単球、マクロファージ、樹状細胞などに直接作用して、IL-6、TNF-α、IL-12、IFNα/β、IL-18、一酸化窒素などの免疫力増強作用をもつサイトカインを産生させる。
免疫性疾患に対する治療用の核酸ならびにDNAワクチンの組成物に関する特許出願が、最近、増えており、例えば、ザ ユニバーシティ オブ アイオワ リサーチ ファウンデーションの出願によるものは、ウイルス、細菌、真菌または寄生体の感染によって引き起こされる免疫系不全や、ガンにかかっているヒトや動物の処置、リポ多糖やエンドトキシンの暴露から生ずる気流の急性減少を起こした被験体のための治療的使用などのため、またはアジュバント用に多数のCpGモチーフ系の配列を提案している(特許文献6〜8)。また、CpGモチーフをDNAワクチンに使用する特許の出願で、魚介類に対するものも認められる(特許文献9)。同様に、動物のパルボウイルスの感染予防の目的のためのものもある(特許文献10)。さらに、特許文献1、11および12などにも、免疫刺激活性を有する類似の配列が多数記載されている。
【特許文献6】特表平10−506265
【特許文献7】特表2001−503267
【特許文献8】特表2001−513776
【特許文献9】特開平9−285291
【特許文献10】特表2000−509976
【特許文献11】特表2002−517156
【特許文献12】特表2002−526425
【0009】
アンチセンスDNAを用いる遺伝子治療の場合と同様に、免疫刺激性オリゴヌクレオチドのリン酸バックボーンは、ヌクレアーゼ耐性化のために、ホスホジエステル結合の部分がホスホロチオエート結合に修飾されている例が多い。また、免疫刺激性オリゴヌクレオチドの細胞との親和性を高める目的でリポソーム、カチオン脂質、コレステロールなどのトランスフェクション剤を併用する例も多く見られる。
遺伝子治療の際のアンチセンスDNAのトランスフェクション剤としては、当初、レトロウイルスまたはアデノウイルスがin vitroで極めて見込みのある結果を与えたが、これら天然由来のウイルスの炎症性、免疫原的性質、ならびに突然変異誘発および細胞ゲノム中への組み込みの危険性が原因して、これらのin vivoにおける使用は制限されている。
【非特許文献5】Mulligan,Science, 260, 926-932(1993)
【非特許文献6】Miller,Nature, 357, 455-460(1992)
【非特許文献7】Crystal,Science, 270, 404-410(1995)
【0010】
天然由来の遺伝子のトランスフェクション剤の代替物として、ウイルス系よりも取り扱いが簡単であるのみならず、細胞へDNAを確実に効率良く集中させることが可能な人工材料の非ウイルス系キャリアーの使用が提示された。
【非特許文献8】Tomlinson andRolland, J. Contr. Rel., 39, 357-372(1996)
【0011】
現在、非ウイルス性の人工キャリアーとしてよく検討されているのはポリエチレンイミン(PEI)である。多数の異なった付着細胞および浮遊細胞ライン中では、3次元的分岐構造のカチオンポリマーであるPEIは、ある場合には平均以上のトランスフェクション率を引き起こす結果になった。
【非特許文献9】Boussif etal., Gene Therapy, 3, 1074-1080(1996)
【0012】
また、PEIと同様、窒素を含む置換基で修飾された、種々のカチオン性ポリマー、カチオン性脂質などが遺伝子キャリアー、トランスフェクション剤、薬物担体などという名称で、最近、多数の特許が出願されるようになってきた。
しかしながら、PEIのようなカチオン性ポリマーの安全性についてはほとんど確認されていないのが現状である。カチオン性を付与するには、通常、アミノ基の存在が不可欠であるが、アミノ基を有する物質は生理活性が高く、体内毒性等の危険性が考えられる。事実、今まで検討されたいかなるカチオン性ポリマーも未だ実用に供されておらず、医薬品添加物辞典等に記載されていない。
【非特許文献10】医薬品添加物辞典、日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社
【0013】
一方、筋肉内注射製剤の臨床薬として実際に使用されている多糖類に、β-1,3-グルカンが存在する。この多糖は天然では三重螺旋構造をとっていることが古くから知られている(非特許文献11)。さらに、この多糖は、既に生体内での安全性が確認されており、婦人科癌に対する免疫増強法の筋肉内注射薬として20年以上の使用実績がある(非特許文献12および13)
【非特許文献11】Theresa M.McIntire and David A. Brant, J. Am. Chem. Soc., 120, 6909(1998)
【非特許文献12】清水, 陳, 荷見, 増淵, Biotherapy, 4,1390(1990)
【非特許文献13】長谷川,Oncology and Chemotherapy, 8, 225(1992)
【0014】
このようなβ-1,3-グルカンを、DNA等の生体材料とコンジュゲートし、遺伝子キャリアーに使用できることが知られている。この先行技術には、天然のβ-1,3-グルカン、すなわち、三重螺旋構造を有するβ-1,3-グルカンをそのまま使用し、これと生化学活性のある材料を、共有結合を介して、β-1,3-グルカン/生体材料のコンジュゲートを製造する方法が述ベられている。
【特許文献13】PCT/US95/14800(WO 96/14873)
【0015】
また、最近、本発明者らにより、β-1,3-グルコシド結合を主鎖とする多糖類が、人工的に処理されることで、各種の核酸と新しいタイブの複合体を形成することが見出された。
【特許文献14】PCT/JP00/07875 (WO 01/34207)
【特許文献15】PCT/JP02/0222 (WO 02/072152)
【非特許文献14】櫻井, 新海, J. Am. Chem. Soc., 122, 4520(2000)
【非特許文献15】Chem. Lett.,1242(2000)
【0016】
β-1,3-グルカンに免疫刺激活性があることは従来から知られており、アジュバントとしてワクチンまたは免疫刺激性核酸に添加される例が報告されている(特許文献16および17)。
【特許文献16】特表平9−504000
【特許文献17】特表2001−504000
【0017】
CpGモチーフおよびβ-1,3-グルカンは、夫々単独で使用した場合の免疫刺激効果はそれほど顕著に現れるものではない。しかし、本発明者らは、シゾフィランのような特定のβ-1,3-グルカンをCpGモチーフのような免疫刺激剤オリゴヌクレオチドと組み合せ、両者を特定の条件で処理することにより安定な複合体を形成させ、それを抗原提示細胞に投与することで、免疫に関わるサイトカインの産生量を相乗的に増加できることを見出した(特許文献18)。この複合体は、免疫刺激剤として有用であるが、免疫刺激作用などにおいて更なる向上がなされることは勿論望ましい。
【特許文献18】PCT/JP2004/006793
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、安全な材料を用い、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと組み合わせることによって、抗原提示細胞に対して優れた免疫刺激効果を奏する免疫刺激剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らによる上記特許文献18に開示された発明は、天然から入手できる安全な多糖であるβ-1,3-グルカンと免疫刺激性オリゴヌクレオチドとの複合体から成る新しいタイプの免疫刺激剤に関するものである。ここで、該免疫刺激剤において実際に用いられるβ-1,3-グルカンは、専ら、シゾフィランに代表される短鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を有するか、そのような側鎖を有しないβ-1,3-グルカンであった。これは、核酸との複合体は、β-1,3-グルカンの側鎖の置換割合を少なくするほどより安定であるという事実も知られており(特許文献19)、長鎖のβ-1,6-グルコシド結合分岐を有するβ−グルカンが短い側鎖のβ-1,3-グルカンと同様に免疫刺激性核酸と複合体化しうるのか、また、得られたものが免疫刺激の効果を十分に発揮しうるのかに関しては全く知見がなく、寧ろ否定的であると考えられていたからである。
【特許文献19】特開2004−331758
【0020】
しかしながら、本発明者が研究を重ねた結果、驚くべきことに、免疫刺激性ヌクレオチドと組み合せて用いると、長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を持つβ-1,3-グルカンの方が、短鎖のβ-1,6-結合側鎖またはそのような側鎖を有しないβ-1,3-グルカンに比べて、免疫刺激効果の著しく向上した複合体を形成することが見出された。
かくして、本発明は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと、長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を有するβ-1,3-グルカンとから成る免疫刺激性複合体を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の複合体を抗原提示細胞に投与することにより、免疫力増強に有効なサイトカインの産生量を飛躍的に増大させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
よく知られているように、β-1,3-グルカンとはβ-1,3-グルコシド結合を主鎖とする多糖類の総称である。β-1,3-グルカンとしては、従来より、側鎖を持たないカードラン、β-1,6-グルコシド結合により主鎖に結合した側鎖のグルコース残基の数(長さ)が1個のシゾフィラン(ソニフィラン:SPGと略記される)、グリフォラン、レンチナンなどが茸類から抽出されている。本発明者らによる前記特許文献18において開示した免疫刺激性複合体において用いているβ-1,3-グルカンは、専ら、このように側鎖を有しないか、または短鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖をもつものであった。
【0023】
一方、パン酵母(Saccharomyces
cerevisiae)やカンジダ菌(Candida albicans)の細胞壁から抽出されるβ-グルカンは、比較的長いβ-1,6-グルコシド結合の側鎖が主鎖のβ-1,3-グルカンに結合していることが知られている。このタイプのβ-グルカンは分子量が約100万を超え、粒子状に凝集しており、溶媒に溶けにくく、また、側鎖の中に更に分岐の存在するものもある(非特許文献16〜19)。その構造に関して、パン酵母やカンジダ菌由来のものから抽出されたフラクションにはβ-1,6-グルコシド結合側鎖中のグルコース残基数が10〜50個程度と報告されている(非特許文献16、20、21)。パン酵母壁から抽出・精製されたものはZymosan(ザイモサンまたはザイモザン)と呼ばれ、以前より免疫研究用の試薬として販売され多用されている。その他にも長鎖のβ-1,6-結合を有するβ-グルカンとしてアガリクス(Agaricus blaziriensis)由来のものもあるが、その場合は、β-1,6-結合が主鎖でβ-1,3-結合が側鎖と言われている。
【非特許文献16】大野尚仁、DOJINNews No.114、1-10(2005)
【非特許文献17】UnderhillDM, Ozinsky A, Hajjar AM, Stevens A, Wilson CB, Bassetti M, Aderem A, Nature, 401,811-815(1999)
【非特許文献18】宿前利郎、YAKUGAKUZASSHI, 120(5),413-431(2000)
【非特許文献19】大野尚仁、日本細菌学雑誌、55(3)、527-537(2000)
【非特許文献20】Ohno N., Miura T., Miura N.N.,Adachi Y., Yadomae T., Carbohydrate Polymers, 44, 339-349(2001)
【非特許文献21】Ohno N.,Uchiyama M., Tsuzuki A., Tokunaka K., Miura N.N., Adachi Y., Aizawa M.W.,Tamura H., Tanaka S., Yadomae T., Carbohydrate Res., 316, 161-172(1999)
【0024】
本発明の免疫刺激性複合体を構成する多糖は、上述の各種文献にも記載されているように長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を持つβ-1,3-グルカンであり、図1に示す基本構造を有するものである(非特許文献17参照)。なお、この図1の構造式は、側鎖にβ-1,6-グルコシド結合鎖のみを含む単純な場合であるが、側鎖の一部にβ-1,3-分岐を有するものも本発明のβ-1,3-グルカンに含まれるものとする。かくして、本発明は、PCT/JP2004/006793(特許文献18)に開示されている免疫刺激性複合体の発明に対して選択発明としての意義を有するものである。
【0025】
本発明において長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖とは、その側鎖を構成するグルコース残基の数が平均4個以上であるような長さを有する側鎖であり、好ましくは、当該グルコース残基の数が平均10個以上、一般に平均10〜50個有するものを指称する。
【0026】
本発明の免疫刺激性複合体を構成する主剤として用いる免疫刺激性オリゴヌクレオチドとは、免疫応答を刺激し免疫力の増強に活性を有するオリゴヌクレオチドであり、前記文献に記載されているような各種のオリゴヌクレオチドが例示されるが、それらに限定されるものではない。本発明において対象となる免疫刺激性オリゴヌクレオチドとしては、各種の非メチル化CpGモチーフを含むものが好適に使用される。また、同様に例示した、非CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチド(非メチル化CpGモチーフ以外の免疫刺激性オリゴヌクレオチド)も使用することができる。非CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、単独またはCpGモチーフと組み合わせて使用される。投与されるこれらのオリゴヌクレオチドはマクロファージなどの免疫細胞に作用し、サイトカインの産出等を介して免疫力を高める効果がある。
【0027】
本発明で使用するオリゴヌクレオチドのリン酸バックボーンは、ヌクレアーゼ耐性を増すために、主鎖のホスホジエステル結合の部分をホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾したものが、通常、用いられるが、ホスホジエステル結合が一部または全部保持されたものでも差し支えない。
【0028】
CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドをβ-グルカンと組み合わせて本発明の複合体をスムーズに調製するために、用いるDNAに予めpoly(dA)のテールを付加しておくことが望ましい。
【0029】
もう一つの主剤であるβ-1,3-グルカンの好適な例としては、入手の容易な点から、パン酵母壁からの抽出物であるザイモサン(Zymosan:以下、Zymと略記とすることもある)が挙げられる。この抽出物は、上述したような長鎖の側鎖をもつβ-1,3-グルカン55〜60%程度の他、マンナンなどの糖類、タンパク質、キチン質、糖脂質、灰分などを含む混合物である。抽出物からタンパク等の共雑物を出来るだけ除去し・精製されたものが試薬として入手でき、さらに次亜塩素酸塩処理などの化学処理を加えた精製品もある。但し、精製品のみならず、長鎖の側鎖をもつβ-1,3-グルカンを上記程度に含有するものであれば、抽出混合物も使用可能である。ザイモサンの他、前述のカンジダ細胞壁から抽出されるもの等も使用可能である。
【0030】
免疫性刺激オリゴヌクレオチドと長側鎖のβ-1,3-グルカンの複合体を調製するには、本発明者らによる特許文献15に詳細に記述されている、シゾフィランのような短側鎖のβ-1,3-グルカンと核酸との複合体を調製する方法に準じて行うことができる。ただし、水性溶媒には難溶であり、高度に自己複合体化している長側鎖β-1,3-グルカンのランダムコイル状への解離をアルカリ水溶液によって行う方法はあまり有効でなく、非プロトン性極性溶媒を用いる方法が好適である。すなわち、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような極性溶媒に試料のβ-グルカンを溶解してランダムコイルに解いた後、同様にDMSOに溶解した核酸を加え、さらに水を混合することによって、免疫性刺激性オリゴヌクレオチドと長側鎖β-1,3-グルカンとから成る、ハイブリッド状の複合体が形成される。
【0031】
オリゴヌクレオチドと多糖との複合体形成の確認は円偏光二色性(CD)スペクトルの測定で行うことができる。そして、複合体化に伴うCDスペクトルの挙動は、ザイモサンのような長側鎖のβ-1,3-グルカンを用いた場合とシゾフィラン(SPG)のような短側鎖のβ-1,3-グルカンを用いた場合とでは違っている。例えば、Zym/CpGDNA複合体のコンフォメーションはSPG/CpGDNA複合体のコンフォメーションと異なる結果が得られている(後述の実施例および比較例参照)。
【0032】
また、SPGに代表される短い側鎖をもつβ-1,3-グルカンを用いた場合のオリゴヌクレチドと形成する複合体はβ-グルカン2本と核酸1本とから成る3重らせん状の複合体であることが判明している。これに対して、長い側鎖のβ-1,3-グルカンとオリゴヌクレオチドとから成る複合体の構造は、原料自身が複雑な混合物であることに加え、両原料物質の配合比率や熟成条件などの変動により定まった構造のものではなく、比較的幅広くとることができる。そして、その変動は免疫力増強の目的に使用する場合に、特に支障となることはなく、その変動に応じて免疫刺激機能を変化させることができる点において有利である。
【0033】
本発明に従う安定な複合体を得るための長側鎖β-1,3-グルカン/免疫刺激性オリゴヌクレオチドの至適配合比率は重量比で約2〜6倍程度、熟成の温度と時間は4〜5℃で2日以上が好ましい。調製した複合体は水に溶け、取扱いが容易である。抗原提示細胞に投与した場合のサイトカインの産生量は、複合体を形成しない場合に対しては大幅に増大し、かつ、SPGと複合体化した場合に比べても顕著に増大する結果が得られている(後述の実施例参照)。これは、SPGと複合体化する場合と複合体の構造が相違することに因るのかも知れない。
以下、長側鎖β-1,3-グルカンとしてザイモサンを用いる場合の実施例に沿って、本発明の特徴を更に具体的に示すが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
ザイモサン(Zym)とオリゴヌクレオチド(poly(dA))の円偏光二色性(CD)による複合体化観察
<ザイモサンの分析>
本実施例で用いたザイモサンはSaccharomyces
cerevisiaeの細胞壁から得られた粒状物で、GPCによる分子量は100万以上、元素分析の重量比はC/H/N=42.3/7.0/2.30であった(InvivoGen社より入手)。さらに、非特許文献20、21および22を参考に、ジメチルスルホキシド(DMSO)法で可溶化した試料をZymolyase消化することによって主鎖のβ-1,3-鎖を除去し、これをTOF-MS(アプライドバイオシステムズ・Mariner ESI-TOF使用)にて分析したところ、側鎖の平均分子量約3000(重合度換算による側鎖のグルコース数:約15)であった。
【0035】
入手したザイモサンはDMSOに溶解してサンプル調製に用いた。DNAはAmersham Biosciencesより入手したPolydeoxyadenylic Acid (poly(dA))を同様にDMSOに溶解して用いた。サンプル調製条件は、NaClaq 150mM、Poly(dA) 12.5μg/ml、およびTris 30mMを固定し、Zymを0〜90μg/ml(Vw=0.90)まで変えたサンプルを用意し、3日間5℃にて保存した後、CD測定を行った。測定用サンプルの薬剤比率を表1に示した。
【0036】
【表1】
【0037】
測定で得られたCDスペクトルを重ね書きした結果を図2Aに示した。poly(dA)の濃度を一定(12.5μg/ml)にして、Zymの濃度を少しずつ増やしていくと260nm付近のスペクトル強度が顕著に増大する。このことはZymがpoly(dA)と複合体化することによってDNAのコンフォーメーションが変化することを示している。そして260nmにおけるCD強度はZym/poly(dA)重量比が4〜6倍付近(Zym量で60〜90μg)で最大となることが認められた(図2B)。
【実施例2】
【0038】
ザイモサン(Zym)またはシゾフィラン(SPG)とオリゴヌクレオチド(poly(dA))との複合体形成における経時変化の円偏光二色性(CD)観察(比較例1を含む)
DMSOに一定量溶解したザイモサンとdA40mer(北海道システムサイエンス社より入手)、ならびにNaClaqおよびTrisを配合した試料液を調製した(表2参照)。比較のためZymの代わりにシゾフィラン(SPG)を用いたものも用意した。試料液は5℃で保存したが、混合直後より適当な時間間隔でCD測定を行った。
【0039】
【表2】
【0040】
比較例のSPGを用いてDNA(poly(dA))と複合体を形成させる場合、図4Aおよび図4Bに見られるように熟成時間の経過とともに250 nm付近のCD値は上昇し、264nm付近のCD値は逆に低下する。この変化はSPGと複合体を形成することによってDNAのコンフォメーションがC2’-endのAnti型からsyn型へ変化することによるものと解析される(非特許文献22)。
一方、本発明のZymを用いた場合のCDの変化を見ると、図3Aおよび図3Bに示すように、251 nm付近のCD値は一旦は上昇するが、途中から逆に低下すること、および262nm付近のCD値は上昇するという、SPGの場合と異なる現象が認められた。この結果は、ザイモサンと複合体を形成する場合のDNAのコンフォメーションは、C2’-endのAnti型からC3’- end型へ変化することによるものと解釈される。なお、図3Bと図4Bの結果から、ザイモサンの複合体が安定化する時間はSPGの場合の70〜80時間に比べると、50時間程度と短くてすむことも判明した。
【非特許文献22】Mizu, M.,Koumoto, K., Kimura, T., Sakurai, K., and Shinkai, S., Polymer J., 35 (9),714-720(2003)
【実施例3】
【0041】
ザイモサン(Zym)とCpG-dA40(CpG)の円偏光二色性(CD)による複合体形成の観察
DNAとしてホスホロチオエート化したCpG DNAの3’末端に40merのdAを付加した核酸(配列番号1:CpG-dA40と略記)を用い、実施例2と同様の条件でZymによる複合体化を行い、CD測定を測定した。測定用サンプルの薬剤比率を表2に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
サンプル調製直後のCD測定結果を図5Aに、3日後に測定した結果を図5Bに示す。その結果、実施例2のpoly(dA)で認められた現象と同様なコンフォメーションの変化が起こることが、260nm付近のCD値の経時変化から確かめられる。
【実施例4】
【0044】
ザイモサン(Zym)とCpGDNAのゲル電気泳動による複合体化観察(比較例2を含む)
CpGDNAとして配列番号1で示すCpG-dA40を用い、ザイモサンとの複合体(Zym/CpGDNA)をゲル電気泳動で調べた。比較例として、CpGDNAのみおよびザイモサンの代わりにシゾフィラン(SPG)で複合体化したサンプル(SPG/CpGDNA)も用いた。サンプルの調合条件は表4に示す。3日間5℃で保存した後、20Vで3hゲル電気泳動を行った。ゲルは3%DMSOを含む2wt%アガロースゲル、緩衝液には3%DMSOを含むTAE Bufferを用いた。
【0045】
【表4】
【0046】
図6の電気泳動の結果から、レーン2のCpG DNAのみを泳動したバンドと比べて、レーン3,4の多糖と熟成させた試料を泳動したバンドでは高分子量側にシフトしていることから、CpG DNAはZymおよびSPGと複合体を形成しているということがわかる。また、Zym/CpG DNA複合体の方がSPG/CpG
DNA複合体より分子量が大きいことも認められた。
【実施例5】
【0047】
Zym/CpGDNA複合体のサイトカイン産生量測定(1)(比較例3を含む)
表5に示す組成のサンプルを調製した。使用したDNAは、本発明で用いるCpGモチーフ含有の配列番号1に記載したCpG DNAおよび比較例として用いるCpGモチーフを含まない配列番号2に記載のnon-CpG DNAで、いずれもリン酸バックボーンがS-オリゴ型のものである。複合体のもう一つの成分である多糖には、本発明のザイモサン(Zym)を用いた。比較例として、複合体の構成物質であるDNAのみ(CpG DNAおよびnon-CpG DNA)、Zymのみ並びにコントロール(生理食塩水)のサンプルも調製した。
【0048】
【表5】
【0049】
サイトカイン産生量を測定する方法としてELISA法(Enzyme Linked Immuno Sorbent Assay:酵素免疫測定法)を用いた。あらかじめ抗体がついているプレートに、サンプルを加え、サンプル中のサイトカインが抗原となり、抗原抗体反応が起こる。次に、抗体に酵素を修飾したものを加え、再度、抗原抗体反応を起こす。そして、最後に、酵素に対応した基質を加えることで、酵素基質反応が起こるために発色し、その吸光度を分光光度計で測定するものである。Cell lineにはマウス由来のマクロファージ様細胞:J774A.1(BALB/c
macrophage, mouse):DMEM+Penicillin−Streptomycin+10%FBSを用い、細胞数を測定した後、最終細胞濃度が1.0×106cells/mlになるように細胞を調整し、96wellマイクロプレートに100μlずつ添加(細胞数:1.0×105cells/well)した。20時間、37℃、5%CO2で培養し、各濃度に調整したサンプル溶液をそれぞれ10μl添加、懸濁し、Controlには生理食塩水10μlを添加した。48時間、37℃、5%CO2で培養し、Mouse Total IL-12/IL-6 ELISA Kit(ENDOGEN)とMouse TNF-α ELISA Kit
(BIOSOURCE)を用い、マイクロプレートリーダーで吸光度(450nm、570nm)を測定することにより、サイトカイン(IL-12、IL-6およびTNF-α)の産生量を算出した。その結果を図7A〜図7Cに示した。
【0050】
いずれの結果からもCpG DNAにザイモサンを複合体化させて投与した場合にサイトカイン類の産生量が高い結果が得られ、複合体化させずに単に混合して投与した場合、CpG DNAまたは ザイモサンの単独投与の場合、およびnon-CpG DNAとザイモサンの複合体の場合のサイトカイン類の産生量はわずかであった。
【実施例6】
【0051】
Zym/CpGDNA複合体のサイトカイン産生量測定(2)(比較例4を含む)
表6に示す組成のサンプルを調製した。DNAは本発明の配列番号1に示したCpG DNAで、天然のO-オリゴ型のものとS-オリゴ型のものを用いた。また、比較例として、CpGモチーフを含まない配列番号2に記載のnon-CpG DNAを同様に用いた。複合体を形成させるもう一つの成分には、本発明のザイモサン(Zym)と比較例としてのシゾフィラン(SPG)を用いた。サイトカイン類の産生量の測定方法は実施例4の場合と同じである。
【0052】
【表6】
【0053】
サイトカイン類の産生量の測定結果を図8Aおよび図8Bに示した。灰色の柱がSPGとDNAの複合体、黒色の柱がZymとDNAの複合体で、DNA単独投与は白抜き、生理食塩水投与のcontrolは縦縞の柱で示した。DNAなしと示しているものは、多糖のみ(ZymまたはSPGを単独で投与した場合)の結果である。
【0054】
図8AのIL-12産生量において、DNAなし、CpG DNA単独投与、non CpG DNAでは、IL-12産生がほとんど見られなかったが、S-oligo型CpG DNAとZymまたはSPGを複合化させることによって、IL-12産生量が10倍以上増加していた。また、S-oligo型CpG DNA単独投与とZymとの複合体投与を比較すると、Zym使用の場合に20倍程度増強されていた。O-oligo型ではCpG DNAとZymまたはSPGを複合体化させることにより、DNAなしの場合と比較して10倍以上、CpG DNA単独投与に比べても2〜5倍程度増加していた。そして、Zymを使う場合のCpG DNAとの複合体は、SPGを使う場合に比べて約2倍の産生量が認められた。
【0055】
図8Bに示したIL-6の産生量においてもIL-12と同様の傾向が認められ、ZymとCpGDNAの複合体はSPGの場合に比較して約2倍量となる結果が得られた。
【実施例7】
【0056】
β-1,6-グルコシド結合側鎖長のサイトカイン産生量に及ぼす影響(比較例5を含む)
実施例1から6で用いたザイモサンをDMSO法で可溶化した後、Streptomyces rochei DB-34の液体培養上清より調製されたβ-1,6-グルカナーゼとβ-1,3-グルカナーゼ活性を主体とする酵母細胞壁溶解用複合酵素剤(Westase:タカラバイオ(株)より入手)で5分間処理した。反応条件は、複合酵素剤をMcIlvain Bufferに10 マイクロg/ml溶解し、37℃、pH6.0であった。得られた、反応物をアセトン中に再沈した試料番号ZY1を得た。この試料のGPCによる分子量は50万であり、元素分析の結果、C/H/N=43/6.5/0.7であった。さらに、DMSO法で可溶化した試料をZymolyase消化してβ-1,3-鎖を除去し、これをTOF-MSにて分析したところ、平均分子量約2000(重合度換算での側鎖グルコース数:約10)であった。複合酵素剤による処理を30分行った試料ZY2では、分子量は25万であり、元素分析の結果、C/H/N=43/6.5/0.4であった。さらに、Zymolyase消化した試料のTOF-MSから、平均分子量約500(重合度換算での側鎖グルコース数:約2.5)であった。
上で得られた。ZY1とZY2について、実施例6に示す、サイトカイン産生量を測定したところ、ZY1はZymと同程度であったが、ZY2はSPG並みであり、側鎖のβ-1,6-グルコシド結合の長さが短くなると効果が低下することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと天然多糖類の一種である長鎖のβ-1,6-グルコシド結合を持つβ-1,3-グルカンとを複合体化して用いることにより、単独で使用する場合に比べて飛躍的に高い免疫増強作用を有する免疫刺激剤として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ザイモサン(Zym)の基本構造。
【図2A】ザイモサン量可変時のpoly(dA)の円偏光二色性(CD)スペクトル変化(実施例1)。
【図2B】262nmにおけるpoly(dA)のCD強度とZym量の関係(実施例1)。
【図3A】Zymとpoly(dA)の複合体形成時のCDスペクトルの経時変化(実施例2)。
【図3B】Zymとpoly(dA)の複合体形成時の251nmおよび252nmのCD強度変化(実施例2)。
【図4A】Zymとpoly(dA)の複合体形成時のCDスペクトルの経時変化(比較例1)。
【図4B】Zymとpoly(dA)の複合体形成時の251nmおよび252nmのCD強度変化(比較例1)。
【図5A】ZymとCpGの複合体形成時のCDスペクトル(実施例3)。
【図5B】ZymとCpGの複合体の3日経過後のCDスペクトル(実施例3)。
【図6】複合体化していないCpG DNA(2)、本発明に従うザイモサン(Zym)と複合体化したCpG DNA(3)、および比較例のシゾフィラン(SPG)と複合体化したCpG DNA(4)のアガロースゲル電気泳動パターン(実施例4および比較例2)。
【図7A】S-オリゴ型CpG DNAまたはnon-CpG DNAとザイモサン(実施例)とを、複合体化して投与した場合および混合直後に投与した場合ならびに単独投与した場合の、サイトカインIL-12の産生量(1)(実施例5および比較例3)。
【図7B】S-オリゴ型CpG DNAまたはnon-CpG DNAとザイモサン(実施例)とを、複合体化して投与した場合および混合直後に投与した場合ならびに単独投与した場合の、サイトカインIL-6の産生量(1)(実施例5および比較例3)。
【図7C】S-オリゴ型CpG DNAまたはnon-CpG DNAとザイモサン(実施例)とを、複合体化して投与した場合および混合直後に投与した場合ならびに単独投与した場合の、サイトカインTNF-αの産生量(1)(実施例5および比較例3)。
【図8A】天然型O-、S-オリゴ型CpG DNAまたはnon-CpG DNAと、SPG(比較例)またはザイモサン(実施例)とを複合体化した免疫刺激剤を用いた場合のサイトカインIL-12の産生量(2)(実施例6および比較例4)。
【図8B】天然型O-、S-オリゴ型CpG DNAまたはnon-CpG DNAと、SPG(比較例)またはザイモサン(実施例)とを複合体化した免疫刺激剤を用いた場合のサイトカインIL-6の産生量(2)(実施例6および比較例4)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドと、長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を有するβ-1,3-グルカンとから成ることを特徴とする免疫刺激性複合体。
【請求項2】
β-1,6-グルコシド結合側鎖のグルコース数が平均10個以上であることを特徴とする請求項1の複合体。
【請求項3】
β-1,6-グルコシド結合側鎖のグルコース数が平均10〜50個であることを特徴とする請求項2の複合体。
【請求項4】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドが非メチル化CpGモチーフを含むことを特徴とする請求項1〜3の複合体。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドのリン酸バックボーンがホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾されていることを特徴とする請求項1〜4の複合体。
【請求項6】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドがCpGモチーフにpoly(dA)を結合させたものであることを特徴とする請求項1〜5の複合体。
【請求項7】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドと請求項1のβ-1,3-グルカンとを非プロトン性極性溶媒中で混合した後、水を作用させることによる請求項1〜6の複合体を製造する方法。
【請求項8】
非プロトン性極性溶媒としてジメチルスルホキシドを用いることを特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】
請求項1〜6の複合体を免疫刺激用途に使用する方法。
【請求項1】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドと、長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を有するβ-1,3-グルカンとから成ることを特徴とする免疫刺激性複合体。
【請求項2】
β-1,6-グルコシド結合側鎖のグルコース数が平均10個以上であることを特徴とする請求項1の複合体。
【請求項3】
β-1,6-グルコシド結合側鎖のグルコース数が平均10〜50個であることを特徴とする請求項2の複合体。
【請求項4】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドが非メチル化CpGモチーフを含むことを特徴とする請求項1〜3の複合体。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドのリン酸バックボーンがホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾されていることを特徴とする請求項1〜4の複合体。
【請求項6】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドがCpGモチーフにpoly(dA)を結合させたものであることを特徴とする請求項1〜5の複合体。
【請求項7】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドと請求項1のβ-1,3-グルカンとを非プロトン性極性溶媒中で混合した後、水を作用させることによる請求項1〜6の複合体を製造する方法。
【請求項8】
非プロトン性極性溶媒としてジメチルスルホキシドを用いることを特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】
請求項1〜6の複合体を免疫刺激用途に使用する方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図6】
【公開番号】特開2007−70307(P2007−70307A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261634(P2005−261634)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]