説明

免疫測定用試薬

【課題】 免疫測定法に一般に必要とされる洗浄工程を省略し得る、迅速で簡便な免疫測定法のための試薬を提供すること及び細胞内の外来性抗原を可視化することが可能な免疫測定用試薬を提供すること。
【解決手段】 免疫測定用試薬は、抗体と、該抗体に結合した第一の蛍光物質と、前記抗体と抗原抗体反応する抗原と、該抗原に結合した第2の蛍光物質を含む免疫測定用試薬であって、前記抗体と、前記抗原は各々独立した分子であるか又は互いに連結して一分子を構成しており、前記抗体と前記抗原との間で抗原抗体反応が起きた場合に、前記第1及び第2の蛍光物質間で蛍光共鳴エネルギー転移が起こる。細胞内に存在する被検物質のイメージング方法は、上記本発明の免疫測定用試薬を、細胞内に含まれる前記抗原と競合する被検物質と接触させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を利用した、競合型の免疫測定用試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎研究や臨床検査などにおいて、タンパク質を検出する方法として、そのタンパク質に対する抗体を用いた免疫測定方法が広く用いられている。例えばELISA法は、目的タンパク質を高感度で定量することができる方法として、基礎研究や臨床検査、環境調査等に広く用いられている。ウエスタンブロット法は、電気泳動の優れた分離能と抗原抗体反応の高い特異性を組み合わせて、タンパク質混合物から特定のタンパク質を検出する手法であり、主に基礎研究で利用されている。また、組織標本試料に対して標識抗体を作用させることにより、組織内あるいは細胞内における目的タンパク質の局在を観察することもできる。
【0003】
しかしながら、これらの免疫化学的方法では、抗体の結合及びその後の洗浄などの煩雑な作業が必要である。
【0004】
一方、生体内におけるタンパク質の動態観察方法としては、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein; GFP)に代表される種々の蛍光タンパク質を用いた方法が知られている。これらの蛍光タンパク質は、遺伝子操作により生体中で発現させることができるため、内在性タンパク質の組織内や細胞内の局在、及びその動態を観察するのに有用である。
【0005】
しかしながら、こうした蛍光タンパク質を利用した方法では、生細胞中において目的タンパク質をあらかじめ蛍光タンパク質と融合させた形態で発現させなければならず、細胞内の外来抗原を可視化することはできない。
【0006】
【非特許文献1】Science. 1999 Oct 29;286(5441):952-4., TCR-Mediated internalization of peptide-MHC complexes acquired by T cells. Huang JF, Yang Y, Sepulveda H, Shi W, Hwang I, Peterson PA, Jackson MR, Sprent J, Cai Z.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の目的は、免疫測定法に一般に必要とされる洗浄工程を省略し得る、迅速で簡便な免疫測定法のための試薬を提供することである。さらに、本願発明のもう1つの目的は、細胞内の外来性抗原を可視化することが可能な免疫測定用試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、免疫測定に用いる抗体又はその抗原結合性断片と、測定対象である抗原とのそれぞれに、互いにFRETを起こす蛍光物質をそれぞれ結合させて共存させたものを免疫測定用試薬として用い、これを検体と接触させることにより、免疫測定法に一般に必要とされる結合や洗浄の工程を省略することができることを見出した。また、前記抗体又はその抗原結合性断片と前記抗原をリンカーを介して結合させるとともに、蛍光物質として蛍光タンパク質を用いて、構成要素全体を一分子の融合タンパク質として作製することにより、細胞内において外来抗原を可視化することが可能であることを見出し、本願発明を完成した。
【0009】
すなわち、本願発明は、抗体又はその抗原結合性断片と、該抗体又はその抗原結合性断片に結合した第一の蛍光物質と、前記抗体又はその抗原結合性断片と抗原抗体反応する抗原と、該抗原に結合した第2の蛍光物質を含む免疫測定用試薬であって、前記抗体又はその抗原結合性断片と、前記抗原は各々独立した分子であるか又は互いに連結して一分子を構成しており、前記抗体又はその抗原結合性断片と前記抗原との間で抗原抗体反応が起きた場合に、前記第1及び第2の蛍光物質間で蛍光共鳴エネルギー転移が起こる免疫測定用試薬を提供する。また、本発明は、前記抗原と競合する被検物質を含み得る被検試料に、前記本発明の免疫測定用試薬を接触させる工程を含み、その際の該免疫測定用試薬の蛍光共鳴エネルギー転移の効率の変化を指標として、前記被検試料中の前記被検物質を測定する方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の免疫測定用試薬を、細胞内に含まれる前記抗原と競合する被検物質と接触させることを含む、細胞内に存在する被検物質のイメージング方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、抗原抗体反応を用いた免疫測定法の感度の高さを保持しながらも、そのような免疫測定法の際に一般的に必要とされる、洗浄工程を不要にした、迅速且つ簡便な免疫測定法を可能にする免疫測定用試薬が提供された。さらに、本発明により、これまで不可能であった、生細胞内における外来抗原を抗体特異性を利用して可視化できる免疫測定用試薬が初めて提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の免疫測定用試薬は、抗体又はその抗原結合性断片と、該抗体又はその抗原結合性断片と抗原抗体反応する抗原とのそれぞれに、互いにFRETを起こす蛍光物質を結合させたものを含む。該抗体又はその抗原結合性断片と該抗原は、各々独立した分子であってもよく(二分子系試薬)、また、適切なリンカーを介して結合させ一分子として構築したものであってもよい(一分子系試薬)。いずれの場合でも、該抗体又はその抗原結合性断片と該抗原との間に抗原抗体反応による結合が生じている状態では、それぞれに結合した蛍光物質間でFRETが生じる。一方、該抗原と競合する物質(被検物質)がさらに存在する状態では、前記抗体又はその抗原結合性断片のうち、被検物質と抗原抗体反応して結合するものも生じる。被検物質は蛍光標識されていないので、前記抗体又はその抗原結合性断片のうち被検物質と結合したものはFRETを生じない。そして、前記抗体又はその抗原結合性断片のうち被検物質と結合するものの割合は、被検試料中の被検物質の量が多いほど大きくなる。このため、本発明の免疫測定試薬を被検試料と接触させた際に、FRETの効率がどのように変化するかを観察することにより、被検試料中の被検物質の有無やその存在量を測定することができる。なお、「測定」には検出と定量の両者が包含される。
【0012】
本発明で用いる抗体又はその抗原結合性断片(以下、「抗体等」ということがある)は、抗体分子そのもの及び対応する抗原との結合性を有した、Fab断片やF(ab')2断片のような抗体断片(本明細書において「抗原結合性断片」という)を包含する。さらに、抗原結合性断片は、例えば抗体のL鎖及びH鎖それぞれの可変領域をつないで構築した、ScFV (single chain Fragment of variable region)等の人工的な一本鎖抗体をも包含する。一本鎖抗体は、大腸菌などの原核細胞や植物細胞などの哺乳動物以外の細胞中でも発現できるため好ましい。なお、ScFVのような一本鎖抗体の作製方法自体は周知であり、下記実施例にも記載されている。本発明に用いる抗体又はその抗原結合性断片は、後述する抗原との抗原抗体反応による結合性を保持したものであればよく、必ずしも該抗原を免疫原として得られる抗体やその抗原結合性断片に限定されるものではない。なお、本発明の免疫測定用試薬は、競合法に基づく免疫測定を行うものであるから、用いる抗体等は、被検物質とも抗原抗体反応するものである。
【0013】
本発明で用いる抗原は、上記した抗体又はその抗原結合性断片と抗原抗体反応するものであり、該抗体の産生を誘起する免疫原として用いることができる抗原分子そのもの、抗原決定基を保持した抗原断片、及び免疫原性を有しないハプテンを包含する。さらに、本発明に用いられる抗原は、対応する抗体への抗原抗体反応による結合性を保持したものであればよく、必ずしも前記抗体の産生を誘起する免疫原やその断片に限定されるものではなく、前記抗体又はその抗原結合性断片と交差反応するものであってもよい。
【0014】
本発明で用いる第1及び第2の蛍光色素は、相互にFRETを起こす蛍光色素である。FRETは、励起波長が異なる2つの蛍光色素(ドナー及びアクセプター)間で励起エネルギーが移動する現象である。ドナーの励起波長の光を照射した場合、ドナーとアクセプターが近距離にあるときはFRETが起こり、ドナーの蛍光は減少してアクセプターの蛍光が増大するが、両者が離れるとFRETが起こらなくなり、ドナーの蛍光が増大してアクセプターの蛍光が減少する。従って、ドナーの励起波長の光を照射した場合に生じる蛍光を観察することにより、ドナーとアクセプター間の距離を知ることができる。FRET自体は周知であり、FRETのためのドナー及びアクセプターも種々市販されている。ドナー及びアクセプターとしては、両者間にFRETが起こる組み合わせであれば、いずれの組み合わせでも利用可能であり、文献等の情報に基づき、又は市販品から自由に選択できる。生細胞中で利用する場合には細胞毒性の低いものが望ましく、CFP(cyan fluorescent protein)、YFP(yellow fluorescent protein)、GFP、BFP(blue fluorescent protein)、並びにこれらの改変体のような蛍光タンパク質を好ましく用いることができる。なお、CFP-YFP間のFRETやGFP-BFP間、並びにこれらの改変体間のFRETは広く知られており、これらの蛍光タンパク質は市販もされている。蛍光タンパク質を用いれば、標識する抗体等と連結させて一分子の融合タンパク質として生産でき、生細胞中で用いる場合には該融合タンパク質をコードする遺伝子を導入すればよいため、生細胞中で利用する場合には蛍光タンパク質が便利である。これらの蛍光タンパク質をコードする核酸も周知であり、それらを含むベクターも種々市販もされているので、所望のポリペプチドに蛍光タンパク質を融合させた蛍光標識タンパク質は、それらの市販のベクターを利用して容易に調製することができる。なお、抗体等と、抗原のどちらにドナーを結合してもよい。
【0015】
蛍光色素を抗体等又は抗原に標識する方法は、用いる蛍光色素の種類によって適宜選択される。蛍光色素が非ペプチド性の化合物である場合には、抗体のチオール基やアミノ基にマレイミドなどの還元基をつけて化学修飾する等の公知の方法により標識できる。蛍光色素が蛍光タンパク質などのペプチド性の化合物である場合には、上記したとおり、抗体等又は抗原との融合タンパク質として生産することができる。融合タンパク質の作製方法は、下記実施例にも記載されているが、それに限定されず、公知のいかなる方法を用いても作製することができる。なお、第1及び第2の蛍光色素は、上記抗体等と抗原とが抗原抗体反応により結合した際にFRETが起きる位置に結合する。蛍光色素を抗体等又は抗原は、直接結合してもよいしリンカー(スペーサー)を介して結合してもよい。このようなリンカー(スペーサー)を用いることにより、上記抗体等と抗原とが抗原抗体反応により結合した際にFRETが起きるように、蛍光色素の位置を適宜調節することも可能である。
【0016】
本発明の免疫測定試薬では、上記抗体等と抗原とがそれぞれ別個の分子を構成し、使用時にこれらを混合して用いてもよいが、上記抗体等と抗原を、リンカーを介して結合させて一分子としてもよい。蛍光色素として蛍光タンパク質を用いれば、本発明の免疫測定用試薬の構成要素全てを一分子のタンパク質として生産することができる。一分子系の免疫測定用試薬とすることにより、使用時に2つの試薬成分を混合する必要がなく、また、これをコードする核酸を生細胞中で発現させることで、ドナーとアクセプターを等量発現できるので、バックグラウンドを抑えることもでき、生細胞中で本発明の免疫測定用試薬を用いる際には非常に有利である。
【0017】
一分子系試薬の場合のリンカーは、抗体等及び抗原が、リンカー部分の折り畳みによって分子内で抗原抗体反応による結合を形成できるだけの距離を保持するものであればよく、その構造は何ら限定されるものではない。通常、3残基〜200残基程度、好ましくは7残基〜30残基程度のアミノ酸から成るポリペプチド鎖であれば、抗体等と抗原の間の距離を適切に保ち、分子内での抗原抗体反応を可能にする。また、リンカー内での又はリンカーと分子内の他の部位との非特異的な結合を防ぎ、抗体等と抗原の間の抗原抗体反応に影響しないよう、側鎖の少ないアミノ酸から成るリンカーが好ましく、中でもグリシンのように側鎖のないアミノ酸を主成分としたリンカーが好ましい。
【0018】
本発明の一分子系免疫測定試薬の好ましい態様を図1に示す。図1の一分子系試薬は、互いにFRETを起こす二種類の蛍光タンパク質(図中、YFP及びCFP)、並びに、リンカーを介して連結した抗体部位(図中、ScFv)及び抗原部位(図中、「抗原」)から成る、一分子の融合タンパク質である。図1中では、抗原部位に連結している蛍光タンパク質がFRETドナー、抗体部位に連結している蛍光タンパク質がFRETアクセプターである。該融合タンパク質は、通常の状態では、リンカー部位で折り畳まれ、抗体部位と抗原部位との間で抗原抗体反応による結合を生じており、その結果、二つの蛍光タンパク質が近傍に存在することとなり、FRETが起きてアクセプター蛍光が観察される(図1上段)。しかし、系内に遊離の抗原(被検物質)が存在すると(図1下段)、その被検物質が抗原部位と競合的に抗体部位に結合するため、抗原の量に応じて抗体部位と抗原部位との間の抗原抗体反応が解消される。よってFRETが解消し、アクセプターの蛍光は減少してドナーの蛍光が増大する。この蛍光強度の変化により、抗体と抗原ダミーの結合を定量的に分析できる。
【0019】
本発明の免疫測定用試薬を用いた測定は、該免疫測定用試薬を被検試料と接触させた後、FRETドナーの励起波長の光を照射し、それにより生じる蛍光の波長を測定することにより行う。免疫測定用試薬と被検試料との接触時間は、特に限定されないが、通常、5分〜120分程度がよい。また、使用する試薬の濃度は、予想される被検物質濃度等に応じて適宜設定することができるが、通常、1fM〜1mM程度である。
【0020】
上記の通り、本発明の免疫測定試薬を用いた免疫測定により測定される被検物質は、上記抗体等と抗原抗体反応するものである。すなわち、上記した抗体等としては、所望の被検物質と抗原抗体反応する抗体等を採用する。また、上記抗原は、被検物質と同一の物質であってもよいし、上記抗体等と抗原抗体反応するもの(すなわち、同一又は類似のエピトープを有するもの)であれば被検物質と異なる物質であってもよい。被検試料中に被検物質が存在すると、該被検物質が本発明の免疫測定用試薬中の抗原と競合し、本発明の免疫測定用試薬中の抗体等のうち、被検物質と抗原抗体反応して結合するものも生じる。そして、該抗体等のうち、被検物質と抗原抗体反応して結合するものの割合は、被検試料中の被検物質の量が多くなるほど大きくなる。一方、抗体等が被検物質と結合した場合には、試薬中の抗原は抗体等と結合できなくなり、また、被検物質には蛍光色素が結合されていないので、FRETは起きなくなる。したがって、被検試料の蛍光を測定することにより、被検物質を検出又は定量することができる。
【0021】
また、生細胞中で本発明の免疫測定用試薬を発現させ、該細胞にFRETドナーの励起波長の光を照射し、適切なフィルターを装着した蛍光顕微鏡で観察することにより、生細胞中における目的物質の局在等を観察することができる。すなわち、本発明は、本発明の免疫測定用試薬を、細胞内に含まれる前記抗原と競合する被検物質と接触させることを含む、細胞内に存在する被検物質のイメージング方法をも提供するものである。この場合には、蛍光タンパク質との融合タンパク質として構築した一分子系試薬又は二分子系試薬を生細胞中で発現させる必要があるが、一分子系試薬を用いれば、免疫測定用試薬の全ての構成要素を一遺伝子から発現させることができるため、原理的にドナーとアクセプターを等量ずつ発現させることが可能であり、バックグラウンドを抑えることができ、また、操作も二分子系の場合よりも簡単であるので好ましい。生細胞中で発現した本発明の免疫測定用試薬は、細胞内で被検物質と出会うと、被検物質と抗原が競合し、被検物質と結合する抗体等も生じ、抗体等が被検物質と結合した場合には、FRETドナーとアクセプター間の距離が増大する。そのため、ドナーの励起波長の光を照射して観察すると、被検物質がほとんどない部位ではアクセプターの蛍光が観察されるが、目的抗原が多く存在する部位では主にドナーの蛍光が観察される。例えば、ドナーとしてCFP、アクセプターとしてYFPを用いた場合には、被検物質がほとんどない部位ではYFPによる黄色〜黄緑色の蛍光が観察され、被検物質が多く存在する部位ではCFPによる青色の蛍光が観察される。
【0022】
以下、実施例に基づき、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
二分子系試薬の構築及び競合試験(その1)
(1) 蛍光標識抗体の作製
抗体として、FLAGペプチド(CAAADRDYKDDDDK)に対する市販のモノクローナル抗体を用いた。これに市販の蛍光色素であるCy3を結合した。これは、市販のCy3 ab labeling kit(Amersham社製)と市販の抗FLAGモノクローナル抗体(SIGMA社製)を用いて次のようにして行なった。まず、抗体1mgを1 mlの50 mM PBS (pH 7.4) に溶解してキットに付属されたカップリングバッファーのバイアルに入れ、10回上下に振って付属のCy3が入ったバイアルに移した。そして10分毎に穏やかにバイアルを振りながら、30分室温で反応させた。
【0024】
ラベリングを行っている間に付属のカラムの溶媒をエリューションバッファーで置換し、上記の反応物をいれた。そして再びバッファーをカラムの上からそそぎながら反応物と未反応の色素をサイズ排除カラムで精製し、反応物を回収した。
【0025】
(2) 蛍光標識抗原の作製
上記FLAGペプチドのN末端にAAACを付加したFLAGreverseペプチドを化学合成した。これに市販の蛍光色素であるAlexa flour 568 maleimide (Molecular Probes社製)を結合した。この蛍光色素は、マレイミド基を有しているので、FLAGreverseの末端のシステインに容易に結合する。50 mM Tris-HCl (pH 8.0)にHClを加えてpHを7.0に調製したものにFLAGreverseペプチド0.1mgを終濃度100μMに加えた。これに色素を1mg加えて2h室温でおだやかに攪拌しながら反応させた。得られた標識抗原は、HPLCで精製した。
【0026】
(3) 競合試験
抗体に標識したCy3がFRETのドナーであり、抗原に標識したAlexa flour 568がアクセプターである。Cy3の最大蛍光波長は580nm、Alexa flour 568の最大蛍光波長は606nmである。標識抗体について、プレートリーダーで吸光度と蛍光強度を測定して濃度と最大吸光波長および最大蛍光波長を算出した。HPLCで精製した標識抗原もフラクションを凍結乾燥して溶媒を完全に昇華し、PBSにふたたび溶解して、その吸光度と蛍光強度を測定して濃度と最大吸光度(Amax)と最大蛍光強度(Fmax)を算出した。算出した濃度より、100μlのPBS中にドナー濃度、アクセプター濃度共に0.1μMになるように溶液調整した。一晩4℃で遮光してインキュベートし、プレートリーダーによって490 nmで励起し、495 nmのカットオフフィルターを用いて蛍光スペクトル測定を行った。
【0027】
100μlのPBS中にドナー濃度、アクセプター濃度共に0.1μMになるように上記標識抗体及び標識抗原を含む溶液に、蛍光標識していない抗原であるFLAGreverse単体を0,0.25,1,4,10,25μMになるように加えた。一晩4℃で遮光してインキュベートし、プレートリーダーで490 nm励起し、495 nmでカットオフフィルターをかけて蛍光スペクトル測定を行った。
【0028】
測定結果を図2に示す。図2中、横軸は、未標識の抗原(FLAGreverse単体)の濃度の対数であり、縦軸は、以下の式により算出されるR'である。図2に示されるようにR'は、添加した未標識抗原の濃度が4μM以上の濃度域においては、濃度依存的に変化しているので、本実施例で作成した二分子系の免疫測定試薬により、所定の濃度域における免疫測定が可能であることが明らかになった。
R=Fmax(acceptor)/Fmax(Donnor)
R0=エピトープを加えなかったときのR
R'=R/R0
【実施例2】
【0029】
二分子系試薬の構築及び競合試験(その2)
(1) 抗FLAGペプチドScFvの作製
4E11(Flagペプチド認識抗体産生細胞、ATCC番号:HB-9259)mRNAから逆転写を行ったcDNAを鋳型としたPCRにより、抗体H鎖及びL鎖を特異的に増幅した(H鎖増幅用プライマーとして、H-Xbal:ATCGTCTAGA、H-HindIII:ATCGTTCGAA;L鎖増幅用プライマーとして、L-SphI:ATCGGCATGC、L-HindIII: ATCGTTCGAA)。反応は、ex Taqポリメラーゼ(タカラバイオ)を用いて、98℃10秒−58℃〜65℃(グラジエント)30秒−72℃1分を30サイクル後、72℃10分を行なった。ゲル電気泳動後目的断片を回収し、H鎖及びL鎖断片をXbaI処理後、ex Taq ligation kit(タカラバイオ)を用いてライゲーションし、ScFv断片を得た。得られたScFv断片を鋳型として、プライマーL-HindIII:ATCGTTCGAA及びH-HindIII:ATCGTTCGAAを用いてPCRを行い(98℃10秒−60℃30秒−72℃1分を30サイクル後、72℃10分)、増幅断片をゲル電気泳動後回収し、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen)を用いて、添付のプロトコールに従いクローニングした。クローニング産物をコンピテントセル(One shot TOP10 (Invitrogen))にヒートショック法(42℃30秒)でトランスフェクトし、コンピテントセル添付のマニュアルに従い前培養した。培養後、40 μlの40 mg/ml X-galと40 μlの100 mM IPTGを塗ったアンピシリン含有LB寒天培地の表面に培養液50 μlを塗布して培養し、翌日、青白のコロニーのうちから白色の単独コロニーを選んで更に培養し、プラスミドを回収した。
【0030】
(2) ScFvの蛍光タンパク質発現用ベクターへのインサート
前記のプラスミドをHindIIIで処理し,ScFv断片を泳動ゲルより回収した。蛍光タンパク質であるYFPをコードする領域を含む、市販の蛍光タンパク質ベクターpEYFP-N1(Clontech)もHindIIIで処理し、その後SAP(Takara. #2660A)処理をした。ベクター、インサート比は1:5で50 ngの系で16℃、30分反応を行った。ライゲーション産物をOne shot TOP10 competent cellにheat shock法(42℃、30秒)を用いてトランスフェクトし、SOC培地250μlを加え1時間振盪培養した(37℃、250 rpm)。培養終了後、カナマイシン含有LB寒天培地の表面に培養液50μlを全体が均一になるように塗布し、培養を行った。青白のコロニーのうちから白色の単独コロニーを選んで更に培養し、プラスミドを回収した。
【0031】
(3) 細胞内発現
上記(2)で構築したプラスミドを、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて293FT細胞(Invitrogen)にトランスフェクトした。24ウェルプレートを用いて、各ウェルに0.8μgのプラスミドと293FT細胞を加えてインキュベートすることにより、ScFv-YFP融合タンパク質を293FT細胞中で発現させた。発現を蛍光顕微鏡観察で確認し、培養細胞の一部をM-PER ( pierce) で溶解して遠沈した後,上精の溶媒を30KMWcutのフィルターを用いてPBSに置換して、ScFv-YFP融合タンパク質溶液を得た。
【0032】
(4) 蛍光標識抗原
蛍光標識抗原は実施例1と同じものを用いた。
【0033】
(5) 競合試験
競合試験は実施例1と同様にして行なった。結果を図3に示す。なお、添加した未標識の抗原濃度が25μM以上の場合には、抗原濃度が高すぎて濃度依存性がえられなかったため、図3は、未標識抗原濃度が10μM以下の濃度域の結果のみを示している。
【0034】
図3に示されるように、添加した未標識抗原濃度が10μM以下の濃度域ではR'が濃度依存的に変化しているので、本実施例で作成した二分子系の免疫測定試薬により、所定の濃度域における免疫測定が可能であることが明らかになった。
【実施例3】
【0035】
一分子系プローブの構築及び競合試験
図1に示す構造を有する一分子系のプローブを構築した。抗原としてはFLAGペプチド(MDKYDDDDK、図1中「抗原」と記載)、抗体等としてはFLAGペプチドに対する一本鎖抗体(single chain Fragment of variable region; ScFv)、蛍光色素としてはシアン蛍光タンパク質(CFP)をドナー、黄色蛍光タンパク質(YFP)をアクセプターとして用い、FLAGペプチドをアクセプターと、ScFvをドナーと連結させて、さらにScFvと
FLAGペプチドをリンカーで結合した。以下、詳述する。
【0036】
1. ScFvの作製
1) 抗FLAG抗体cDNAの調製
抗FLAG抗体を生産するB細胞ハイブリドーマである4E11細胞(ATCC Cat.No.HB9259)1.2×106個より、SV Total Isolation System(Promega)を用いて総RNAを抽出した。抽出後ただちに、TAKARA RNA PCR Kit (AMV)(宝酒造)とoligo-dTプライマーを用いて、逆転写によって総RNAからcDNAを得た。
【0037】
2) Fab領域の増幅
PCRにより、得られたcDNAからFab領域をコードする遺伝子を特異的に増幅した。抗体H鎖の増幅には表1のプライマー1及び2を、抗体L鎖の増幅には表1のプライマー3及び4を使用した。反応条件は次の通り;95℃5分、95℃1分、63℃1分、72℃2分の後、95℃1分−55℃1分−72℃2分を25サイクル、次いで72℃10分。泳動後、目的とする約700Kbの断片を常法によりゲルから回収し、pCR2.1-TOPO(Invitrogen)を用いて添付のマニュアルに従ってクローニングし、塩基配列を確認した。
【0038】
3) 可変領域の増幅
前記PCR産物から更に可変領域のみを得るため、H鎖用、L鎖用のプライマーをそれぞれ次の通り設計し、増幅を行った。H鎖用センスプライマー;5'-GGC T^C TAG ^AGC GTA ATA GGT CCG ATT TCT GGC-3' (プライマー5、XbaIサイト付加。なお、配列中の「^」は制限酵素で切断される部位を表す(アンチセンス鎖の切断される部位も表示))、H鎖用アンチセンスプライマー;5'-A CGT A^AG CT^T ATG CTT AAG GCC CAA CCG GCC 3' (プライマー6、HindIIIサイト付加)、L鎖用センスプライマー;5'-ACG TA^A GCT^ TTA TTT CCA GCT TGG TCC CCC-3' (プライマー7、HindIIIサイト付加)、L鎖用アンチセンスプライマー;5'-T^ CTA G^AG GGT GGC GGT GGC TCG GGC GGT GGT GGG TCG GGT GGC G GC GGA TCT TCC GCT AGC GGG GAC ATT GTG-3' (プライマー8、XbaIサイト及び(GGGGS)3のリンカーを付加)。増幅はグラジエントPCRにより行った。反応条件は次の通り;98℃10秒−60〜70℃30秒−72℃1分を30サイクル、次いで72℃10分。グラジエントPCRの各カラムの温度は60.0℃, 60.3℃, 60.8℃, 61.7℃, 62.9℃, 64.3℃, 66.0℃, 67.5℃, 68.5℃, 69.3℃, 69.8℃, 70.0℃とした。アガロースゲル電気泳動の結果、350Kb付近にH鎖可変領域断片、400Kb付近にL鎖可変領域断片が認められた。各断片をゲルから回収した。
【0039】
4) H鎖可変領域断片とL鎖可変領域断片のライゲーション
前記の各断片をXbaIで37℃、1時間反応し、各処理断片を泳動してゲルから回収した。H鎖可変領域断片0.78pmol、L鎖可変領域断片0.69 pmolを、20μlの系でライゲーション反応した。反応は16℃、一昼夜行なった。反応後ただちに、ライゲーションサンプルを鋳型として、プライマー6と7を用いてPCRを行った(98℃10秒−60℃30秒−72℃1分を30サイクル後、72℃10分)。PCR終了後ただちにゲル電気泳動及び断片の回収を行い、常法によりTAクローニングした。クローニング産物をコンピテントセル(One shot TOP10 (Invitrogen))にヒートショック法(42℃30秒)でトランスフェクトし、コンピテントセル添付のマニュアルに従い前培養した。培養後、40 μlの40 mg/ml X-galと40 μlの100 mM IPTGを塗ったアンピシリン含有LB寒天培地の表面に培養液50 μlを塗布して培養し、翌日、青白のコロニーのうちから白色の単独コロニーを選んで更に培養し、プラスミドを回収した。挿入断片の配列を決定して、目的断片の存在、すなわち、H鎖可変領域を上流、L鎖可変領域を下流とし、(GGGGS)3のリンカーを介して結合している断片の存在を確認した。
【0040】
5) 結合能評価
結合能の確認をELISAにより確認した。ELISA用96ウェルプレートに50 mM炭酸水素塩緩衝液(pH 9.6) に溶媒置換した回収物50μlを一晩結合させた。このとき回収物の濃度は濃縮した原液,10倍希釈,100倍希釈,1000倍希釈の4種類用意した。翌日各ウェルを200μlのTween20含有リン酸緩衝液(PBS-T)で3回洗浄し,1%ウシ血清アルブミン(BSA)含有PBSで2時間、室温にてブロッキングした後,100倍希釈した100μlのビオチン化FLAGをウェルに加えて2時間,4℃でインキュベートした。その後各ウェルを200μlのPBS-Tで3回洗浄し,1000倍希釈のアルカリフォスファターゼ標識アビジンを50μl加えて,30 分,4℃でインキュベートし,最後にp-ニトロフェニルフォスフェートを50μl加えて1時間室温でインキュベートして、プレートリーダーで吸光度を測定した。その結果、十分な結合能を有することが確認された。
【0041】
2. 分子内競合FRETプローブの作製
1) 分子内競合FRETプローブ遺伝子の構築(KCS-03)
ScFvは、上記1.4)のベクターをHindIII処理して得た。該ScFvをpECFP-N1ベクター(Clontech)のHindIIIサイトにライゲーションした。ライゲーション後のプラスミドベクターは、1.4)の記載に準じてコンピテントセルにトランスフェクトし、カナマイシン含有LB寒天培地を用いて、青白判定を行い、培養、抽出を行って所望のプラスミドを得た。該プラスミド中のScFvの存在を、配列決定を行って確認した。
【0042】
YFP遺伝子は、pEYFP-N1ベクター(Clontech)を鋳型として、表1のプライマー9及び10を用いてPCRを行なうことにより得た(98℃10秒−66℃30秒−72℃1分を30サイクル後、72℃10分)。700bp付近の目的バンドを泳動ゲルより回収し、BglII、SacI処理後、前記のScFv導入pECFP-N1ベクターに、上記に準じてライゲーションした。
【0043】
FLAGペプチドは、次の通りに調製した;FLAGペプチドをコードする配列にBamH I と相補的な粘着末端が露出するように、FLAGペプチド断片に相当するDNAとして、5'-gat ccg atg gac tac aag gat gac gat gac aag gga tcc cgg-3'および5'-g atc ccg gga tcc ctt gtc atc gtc atc ctt gta gtc cat cg-3’を合成し、これら各10μl (100pmol/μl)ずつを30℃、30分反応させ、二重鎖を形成させた。該断片を、前記のScFv/YFP導入pECFP-N1ベクタープラスミドのBamHIサイトにライゲーションし、分子内競合FRETプローブ遺伝子を構築した(図4、KCS-01)。なお、図4中、「MCS」は、ベクターのマルチクローニングサイトであり、リンカーとして機能する。MCSの塩基配列は、次の通りである(配列番号42)。g cta gcg cta ccg gac tca gat ctc gag ctc aag ctt cga att ctg cag tcg acg gta ccg cgg gcc cgg gat cca ccg gtc gcc acc atg gtg
【0044】
次に、このようにして得られたKCS-01のMCSをHindIII及びBamHIで切り出し、この間に5'-A ATT CTG ATG GGT GGC GGT GGC TCG GGC GGT GGT GGG TCG GGT GGC GGC GGA TCT G-3'の配列を有するリンカーを挿入した。また、KSC-01をSacIで切断し、YFPとScFv領域の間に5'-AA TTC AGA TCC GCC GCC ACC CGA CCC ACC ACC GCC CGA GCC ACC GCC ACC CAT CAG-5'という配列のリンカーを導入した(図4、KCS-03)。
【0045】
なお、本実験で用いたプライマーは以下の表1の通りである。
【0046】
【表1】

【0047】
3. 細胞内発現
上記2.で構築したKCS-03をコードするプラスミドを、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて293FT細胞(Invitrogen)にトランスフェクトした。24ウェルプレートを用いて、各ウェルに0.8μgのプラスミドと293FT細胞を加えてインキュベートすることにより、各FRETプローブ及び対照タンパク質を293FT細胞中で発現させた。倒立型蛍光顕微鏡を用いて、該細胞の蛍光画像の観察を行った。その結果、全ての細胞でCFP及びYFPが発現していることが確認された。
【0048】
4. 競合試験
トランスフェクションの24時間後、細胞をトリプシンEDTAで処理し10cmシャーレ3枚に植えついだ。さらに24時間後、細胞をM-PER (Piece) によって破砕し、プロトコルに従いタンパク質溶液を3mlずつ得た。Amicon ultra (100,000 MWCO, Millipore)を4000rpmで40分遠心して、該タンパク質溶液を約15倍濃縮した。
【0049】
各濃縮タンパク質溶液を20μlずつセルにわけ、溶液量40μlの系で384ウェルのプレートを用いて、蛍光プレートリーダー(Molecular Devices SPECTRA max GEMIN 1xs-K/R)を用いて測定した。FLAGペプチド(SIGMA Genosysにて受託合成)を1x104から1x10-3M加えて30分培養したもの、及びペプチドを含まないサンプル(ブランク)を測定した。結果を図5に示す。
【0050】
図5より、ブランク(FLAGペプチド添加せず)と比較してFLAGペプチドを1x10-3M加えた場合にYFPの蛍光(529 nm)が減少しており、FRETが解消していることがわかった。よって、これを用いれば競合法により免疫測定が可能であることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の免疫測定用試薬は、外来性タンパク質の可視化を可能にするものであり、特に、タンパク質の機能解析などの基礎研究に有用である。また、本発明の競合型FRETプローブは、ELISA法などのような従来の抗原抗体反応を用いたアッセイで一般的に必要とされる結合と洗浄の作業は不要なので、迅速な測定が可能となり、臨床検査や環境測定などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例で構築した一分子系免疫測定試薬の構造の概略図である。
【図2】本発明の実施例において測定した、二分子系試薬を用いた免疫測定における検量線を示す図である。
【図3】本発明の実施例において測定した、別の二分子系試薬を用いた免疫測定における検量線を示す図である。
【図4】本発明の実施例において作成した一分子系免疫測定試薬をコードする核酸の遺伝子地図である。
【図5】本発明の実施例で作成した、一分子系試薬KCS-03をFLAGペプチドと接触させて競合させた場合の、反応混合物の蛍光スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体又はその抗原結合性断片と、該抗体又はその抗原結合性断片に結合した第一の蛍光物質と、前記抗体又はその抗原結合性断片と抗原抗体反応する抗原と、該抗原に結合した第2の蛍光物質を含む免疫測定用試薬であって、前記抗体又はその抗原結合性断片と、前記抗原は各々独立した分子であるか又は互いに連結して一分子を構成しており、前記抗体又はその抗原結合性断片と前記抗原との間で抗原抗体反応が起きた場合に、前記第1及び第2の蛍光物質間で蛍光共鳴エネルギー転移が起こる免疫測定用試薬。
【請求項2】
前記抗体又はその抗原結合性断片と、前記抗原が各々独立した分子である請求項1記載の免疫測定用試薬。
【請求項3】
前記抗体又はその抗原結合性断片と、前記抗原がリンカーを介して結合することにより一分子として構成される請求項1記載の免疫測定用試薬。
【請求項4】
前記抗体若しくはその抗原結合性断片が一本鎖抗体である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の免疫測定用試薬。
【請求項5】
前記第1及び/又は第2の蛍光物質が蛍光タンパク質である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の免疫測定用試薬。
【請求項6】
前記第1及び/又は第2の蛍光タンパク質が、前記抗体若しくはその抗原結合性断片、及び/又は前記抗原との融合タンパク質の形態にある請求項5記載の免疫測定用試薬。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合性断片と、前記抗原がリンカーを介して結合して1分子を構成しており、前記第1及び第2の蛍光物質が第1及び第2の蛍光タンパク質であり、前記抗体又はその抗原結合性断片、前記第1の蛍光タンパク質、前記リンカー、前記抗原及び前記第2の蛍光タンパク質が融合タンパク質の形態にある請求項6記載の免疫測定用試薬。
【請求項8】
請求項6又は7記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項9】
請求項8記載の核酸を含み、該核酸を宿主細胞内で発現できるベクター。
【請求項10】
前記抗原と競合する被検物質を含み得る被検試料に、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の免疫測定用試薬を接触させる工程を含み、その際の該免疫測定用試薬の蛍光共鳴エネルギー転移の効率の変化を指標として、前記被検試料中の前記被検物質を測定する方法。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の免疫測定用試薬を、細胞内に含まれる前記抗原と競合する被検物質と接触させることを含む、細胞内に存在する被検物質のイメージング方法。
【請求項12】
請求項9記載のベクターを導入した細胞内において請求項8記載の核酸を発現させ、生成した免疫測定用試薬を細胞内に含まれる前記抗原と競合する被検物質と接触させることを含む、請求項11記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−40834(P2007−40834A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225577(P2005−225577)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】