免疫複合体の精製
非複合抗体および非複合作用物質から抗体-作用物質複合体を精製するための方法が開示される。いくつかの態様において、本方法には複合体、非複合抗体、および非複合作用物質が該成分の混合物から混合モードクロマトグラフィー支持体に結合できる条件を適用することを含む。その後、少なくとも複合体の過半数が支持体に結合したままである一方で、非複合抗体および非複合作用物質が支持体から実質的に除去されるように支持体を緩衝液に接触させる。最後に、複合体は支持体から溶出され、これにより非複合抗体および非複合作用物質から抗体-作用物質複合体が精製される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本特許出願は、2009年4月29日出願の米国仮特許出願第61/173,896号に優先権の利益を主張し、これは参照により、すべての目的のために組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
科学および医学文献において、様々な種類の免疫複合体が記載され、使用されてきた。例えば、抗体および蛍光もしくは他の種類の検出可能な標識の複合体は、診断および他の研究分野で広く多岐にわたる用途を有する。抗体および毒素、放射性同位体、もしくは他の生物活性化合物の複合体は、多岐にわたる治療用途を有する。
【0003】
免疫複合体の生成は、抗体を他の作用物質に連結することを含み得る。そのような反応は100%効率的なわけではなく、したがって反応は通常、所望の免疫複合体の他にある程度の量の非複合成分、すなわち非複合抗体および1つ以上の非複合作用物質(非複合標識、非複合毒素等)の産生をもたらす。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、非複合抗体および非複合作用物質から抗体-作用物質複合体を精製するための方法を提供する。いくつかの態様において、本方法には以下の工程が含まれる:
(a) 複合体、非複合抗体、および非複合作用物質が混合モードクロマトグラフィー支持体に結合できる条件下で、複合体、非複合抗体、および非複合作用物質の混合物を支持体に接触させる工程;
(b) 少なくとも複合体の過半数が支持体に結合したままである一方で、非複合抗体および非複合作用物質が支持体から実質的に除去されるように支持体を緩衝液に接触させる工程;および、その後
(c) 複合体を支持体から溶出させ、これにより非複合抗体および非複合作用物質から抗体-作用物質複合体を精製する工程。
【0005】
いくつかの態様において、工程(b)の緩衝液は工程(a)の混合物に比べてより高い塩濃度を含む。いくつかの態様において、塩濃度は0.5および4Mの間である。いくつかの態様において、塩はNaClである。
【0006】
いくつかの態様において、工程(c)では工程(b)の濃度に比べて緩衝液の濃度を増加させることを含む。いくつかの態様において、工程(c)では工程(b)の塩濃度に比べて塩濃度を減少させることを含む。
【0007】
いくつかの態様において、工程(a)の混合物のpHは約pH 5.5およびpH 8.5の間である(例えば5.5〜8.5、5.5〜7、5.5〜6.5、6〜7、6〜8等)。
【0008】
いくつかの態様において、工程(b)の緩衝液のpHは約pH 5.5およびpH 8.5の間である(例えば5.5〜8.5、5.5〜7、5.5〜6.5、6〜7、6〜8等)。
【0009】
いくつかの態様において、溶出の工程はpHが約pH 5.5およびpH 11の間である(例えば5.5〜8.5、5.5〜7、5.5〜6.5、6〜7、6〜8等)溶出緩衝液に支持体を接触させることを含む。
【0010】
いくつかの態様において、緩衝液はリン酸緩衝液である。
【0011】
いくつかの態様において、作用物質は標識、ホルモン、細胞毒性物質、および放射性同位体からなる群より選択される。いくつかの態様において、標識は蛍光標識である。いくつかの態様において、蛍光標識はフィコエリスリンである。
【0012】
いくつかの態様において、混合モード支持体はセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)もしくはセラミックフルオロアパタイト(CFT)を含む。いくつかの態様において、CHTはハイドロキシアパタイトCHTタイプI、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、40ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、80ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、40ミクロン;およびハイドロキシアパタイトCHTタイプII、80ミクロンからなる群より選択される。いくつかの態様において、CFTはCFTタイプI、40ミクロンおよびCFTタイプII、40ミクロンからなる群より選択される。
【0013】
本発明は、混合モードクロマトグラフィー支持体に接触した複合体、非複合抗体、および非複合作用物質の混合物も提供する。いくつかの態様において、複合体、非複合抗体、および非複合作用物質が支持体に結合できる条件下で混合物を接触させる。
【0014】
いくつかの態様において、作用物質は標識、ホルモン、細胞毒性物質、および放射性同位体からなる群より選択される。いくつかの態様において、標識は蛍光標識である。いくつかの態様において、蛍光標識はフィコエリスリンである。
【0015】
いくつかの態様において、混合モード支持体はセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)もしくはセラミックフルオロアパタイト(CFT)を含む。いくつかの態様において、CHTはハイドロキシアパタイトCHTタイプI、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、40ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、80ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、40ミクロン;およびハイドロキシアパタイトCHTタイプII、80ミクロンからなる群より選択される。いくつかの態様において、CFTはCFTタイプI、40ミクロンおよびCFTタイプII、40ミクロンからなる群より選択される。
【0016】
定義
「抗体」は、免疫グロブリン、その複合もしくは断片の形態を指す。この用語は天然、もしくはヒト化、ヒト、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異、移植、およびインビトロ生成抗体等の遺伝子操作された形態を含む、ヒトまたは他の哺乳動物細胞株に由来するクラスIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMのポリクローナルまたはモノクローナル抗体を含んでもよいが、それらに限定されない。「抗体」は免疫グロブリン部分を含む融合タンパク質を含むが、それに限定されない複合の形態も含んでよい。「抗体」はFab、F(ab')2、Fv、scFv、Fd、dAb、Fcおよび他の組成物等の抗体断片も、それらが抗原結合機能を保持していようがいまいが含んでよい。
【0017】
「混合モードクロマトグラフィー支持体」は、2つ以上の化学的機構の組合せを実質的に含むクロマトグラフィーの固相を指す。混合モード支持体と組み合わせることのできる化学的機構の例は、陽イオン交換、陰イオン交換、疎水性相互作用、親水性相互作用、水素結合、π-π結合、および金属親和性を含むが、それらに限定されない。固相は多孔性粒子、非多孔性粒子、膜、もしくはモノリスであり得る。混合モードクロマトグラフィーはときどき「マルチモード」クロマトグラフィーと呼ばれる。
【0018】
「ハイドロキシアパタイト」は、構造式Ca10(PO4)6(OH)2のリン酸カルシウムの不溶性水酸化鉱物を含む混合モード支持体を指す。その相互作用の主要なモードはホスホリル陽イオン交換およびカルシウム金属親和性である。ハイドロキシアパタイトは、セラミック、結晶および複合の形態を含むが、それらに限定されない様々な形態で市販されている。複合の形態はアガロースもしくは他のビーズの孔の中に封入されたハイドロキシアパタイト微結晶を含む。
【0019】
「フルオロアパタイト」は、構造式Ca10(PO4)6F2のリン酸カルシウムの不溶性フッ化鉱物を含む混合モード支持体を指す。その相互作用の主要なモードはホスホリル陽イオン交換およびカルシウム金属親和性である。フルオロアパタイトは、セラミックおよび結晶複合の形態を含むが、それらに限定されない様々な形態で市販されている。
【0020】
「セラミック」ハイドロキシアパタイト(CHT)もしくは「セラミック」フルオロアパタイト(CFT)は、クロマトグラフィーへの適用に適した安定なセラミック微小球を製造するために、ナノ結晶を粒子に凝集させて高温で融合させた各鉱物の形態を指す。セラミックハイドロキシアパタイトの市販例はCHTタイプIおよびCHTタイプIIを含むが、それらに限定されない。フルオロアパタイトの市販例はCFTタイプIおよびCFTタイプIIを含むが、それらに限定されない。指定がなければ、CHTおよびCFTは約10、20、40、および80ミクロンを含むが、それらに限定されない任意の平均直径を有するほぼ球状の粒子を指す。ハイドロキシアパタイトもしくはフルオロアパタイトの選択、タイプ、および平均粒径は当業者によって決定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】精製GAH-PEのCFT精製。平衡化緩衝液:10mM NaPO4、pH 7。溶出緩衝液:平衡化緩衝液に2M NaClを追加。勾配:20カラム体積を超えて0から100%B。
【図2】精製GAH-PEのCHT精製。平衡化緩衝液:10mM NaPO4、pH 7。
【図3】GAHのCFT精製。平衡化緩衝液:10mM NaPO4、pH 7。
【図4】GAHのCHT精製。平衡化緩衝液:10mM NaPO4、pH 7。
【図5】複合反応混合物中のGAH-PEのCFT精製。平衡化緩衝液:10mM NaPO4、pH 7。
【図6】図5におけるCFTフロースルーピークおよび溶出ピークのHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図7】2mM NaPO4、50mM MES、pH 7に交換した反応混合物中のGAH-PEのCFT精製。平衡化緩衝液:2mM NaPO4、50mM MES、pH 7。溶出緩衝液:平衡化緩衝液に2M NaClを追加。勾配:20カラム体積を超えて0から100%B。
【図8】図7におけるCFT試料のHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図9】5mM NaPO4、50mM MES、pH 7に交換した反応混合物中のGAH-PEのCFT精製。
【図10】図9におけるCFT試料のHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図11】10mM NaPO4、pH 6に交換した反応混合物中のGAH-PEのCFT精製。
【図12】図11におけるCFT試料のHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図13】CFTにおける高塩洗浄の間に洗浄液にMESを添加することのpH低下への影響。
【図14】2mM NaPO4、50mM MES、pH 6に交換した反応混合物中のGAH-PEのCFT精製。
【図15】図14におけるCFT試料のHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図16】2mM NaPO4、50mM MES、pH 6に交換した反応混合物中のGAH-PEの更新されたCFT精製。
【図17】図16におけるCFT試料のHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図18】CFT試料のSDS-PAGEおよびFlamingo染色。レーン1:分子量マーカー;レーン2:CFT添加物;レーン3:添加フロースルー;レーン4:高塩洗浄;レーン5:ストリップ(Strip);レーン6:1N NaOHによるサニタイゼーション(Sanitization)、レーン7:溶出プール;レーン8:精製GAH-PE標準物質;レーン9:分子量マーカー;レーン10:CFT添加物;レーン11:添加フロースルー;レーン12:高塩洗浄;レーン13:ストリップ;レーン14:1N NaOHによるサニタイゼーション、レーン15:溶出プール;レーン16:精製GAH-PE標準物質。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
I.序論
本発明は、免疫複合体および非複合反応物が支持体に結合されており、その後非複合反応物が支持体から洗浄され、続いて免疫複合体が支持体から溶出され、これにより非複合反応物から免疫複合体を精製する過程において混合モード支持体上で免疫複合体を精製できるという発見に一部関連する。
【0023】
II.免疫複合体
任意の免疫複合体、すなわち他の作用物質に共有結合した1つ以上の抗体もしくはその断片が本発明の方法によって精製できると考えられている。
【0024】
A.抗体
本発明において、天然、合成、もしくは組換えの供給源からの未精製または部分的に精製された抗体を含む任意の抗体調製物を使用できる。未精製の抗体調製物は、血漿、血清、腹水、乳、植物抽出物、細菌溶解物、酵母溶解物、もしくは細胞馴化培地を含むが、それらに限定されない様々な供給源から得ることができる。部分的に精製された調製物は、少なくとも1回のクロマトグラフィー、沈殿、他の分画工程、もしくは上記の任意の組合せによって処理された未精製調製物から得ることができる。いくつかの態様において、本明細書に記載の精製の前に、抗体はプロテインA親和性によって精製されており、もしくは精製されていない。
【0025】
抗体もしくはその断片は、ヒト、マウス、ヤギ、ウサギ、ブタ、ウシ、およびラットを含むが、それらに限定されない任意の抗体産生動物から得ることができる。抗体はモノクローナルもしくはポリクローナルであり得る。いくつかの態様において、抗体は単鎖抗体もしくはキメラ抗体である(ヒト化抗体を含むが、それに限定されない)。
【0026】
抗体は、本質的に所望のとおりの任意のエピトープを標的にできる。いくつかの場合において、抗体は腫瘍細胞等の標的細胞抗原を特異的に認識する。いくつかの態様において、抗体は異なる種からの抗体を認識する(例えば診断測定法における使用のため)。
【0027】
B.作用物質/複合パートナー
広く多岐にわたる作用物質を抗体に連結できる。作用物質はタンパク質(例えば生物活性タンパク質、治療タンパク質、ホルモン、細胞毒性物質、毒性タンパク質、検出可能なタンパク質等)、核酸、小分子(例えば小分子治療薬、診断薬、例えば標識、もしくは毒素)、光増感剤(ポルフィリンおよびハイドロポルフィリンを含むが、それらに限定されない)、および放射性同位体を含み得る。本質的には、抗体によって標的となる任意の作用物質が抗体と複合され得る。
【0028】
本明細書で使用される「細胞毒性物質」は、細胞の死をもたらし、細胞死を誘導し、もしくは細胞の生存率を減少させる任意の化合物を指す。適切な細胞毒性物質は、リシンA鎖、メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体、タキソイド、CC-1065およびCC-1065類似体、ならびにドラスタチンおよびドラスタチン類似体を含むが、それらに限定されない。メイタンシノイドは微小管の形成を阻害する化合物で、哺乳動物細胞に対する毒性が高い。適切なメイタンシノール類似体の例には、修飾芳香環を有するものおよび他の位置が修飾されたものが含まれる。そのようなメイタンシノイドは、例えば米国特許第4,256,746号、第4,294,757号、第4,307,016号、第4,313,946号、第4,315,929号、第4,322,348号、第4,331,598号、第4,361,650号、第4,362,663号、第4,364,866号、第4,424,219号、第4,371,533号、第4,450,254号、第5,475,092号、第5,585,499号、第5,846,545号、および第6,333,410号に記載されている。
【0029】
いくつかの態様において、作用物質は検出可能な標識である。1つの局面において、本発明の抗体は反応性部分、活性化部分、もしくは反応性システインチオール基を通して任意の標識部分と複合していてよい(Singh et al (2002) Anal. Biochem. 304: 147-15; Harlow E. and Lane, D. (1999) Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; Lundblad R. L. (1991) Chemical Reagents for Protein Modification, 2nd ed. CRC Press, Boca Raton, Fla.)。付加された標識は次のように機能する可能性がある:(i)検出可能な信号を提供する;(ii)第一もしくは第二の標識によって提供される検出可能な信号を修飾するために、例えばFRET(fluorescence resonance energy transfer)を起こさせるために、第二の標識と相互作用する;(iii)抗原もしくはリガンドとの相互作用を安定化させ、または結合親和性を増加させる;(iv)移動度、例えば電荷、疎水性、形状、もしくは他の物理的パラメーターによって電気泳動の移動度または細胞透過性に影響を与える、または(v)リガンド親和性、抗体/抗原結合、もしくはイオン結合型錯体の形成を調節するために捕獲部分を提供する。
【0030】
通常、以下の区分に分類し得る多数の標識を利用できる:
【0031】
3H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、68Ga、86Y、99Tc、111In、123I、124I、125I、131I、133Xe、177Lu、211At、もしくは213Bi等の放射性同位体(放射性核種)。放射性同位体で標識された抗体は、例えば標的画像法において有用である。抗体は放射性同位体金属に結合、キレート化、もしくはそうでなければ錯体形成するリガンド試薬で標識できる。例えばCurrent Protocols in Immunology, Volumes 1 and 2, Coligen et al, Ed. Wiley-Interscience, New York, N.Y., Pubs. (1991)、Chelating ligands which may complex a metal ion include DOTA, DOTP, DOTMA, DTPA and TETA (Macrocyclics, Dallas, Tex.)を参照。
【0032】
さらなる標識は、例えば希土類キレート(ユーロピウムキレート)、FITC、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセインを含むフルオレセイン型;TAMRAを含むローダミン型;ダンシル;リサミン;シアニン;フィコエリスリン;テキサスレッド;およびそれらの類似体等の蛍光標識を含む。蛍光色素および蛍光標識試薬は、Invitrogen/Molecular Probes (Eugene, Oreg.)およびPierce Biotechnology, Inc. (Rockford, Ill.)から市販されているものを含む。
【0033】
さらなる標識は、例えば様々な酵素-基質標識も含み得る。いくつかの態様において、酵素は様々な技術を用いて測定できる発色基質の化学的変質を触媒する。例えば、酵素は基質における色の変化を触媒してもよく、それは分光光度法で測定できる。あるいは、酵素は基質の蛍光もしくは化学発光を変質させてもよい。蛍光の変化を定量するための技術は上述されている。化学発光基質は化学反応によって電子的に励起され、その後(例えばケミルミノメーター(chemiluminometer)を用いて)測定可能な光を放出するか、もしくは蛍光アクセプターにエネルギーを供与してもよい。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えばホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)等のペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸脱水素酵素)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ等)ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ等が含まれる。酵素を抗体に複合させるための技術は、例えばO'Sullivan et al (1981) "Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay", in Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic Press, New York, 73:147-166に記載されている。
【0034】
C.リンカー
広く多岐にわたるリンカー科学技術が公知であり、免疫複合体を形成するために、本明細書に記載されているように抗体を作用物質に連結するのに使用できる。例えば、リンカー試薬が抗体の標的特性の保持を提供する限り、そして任意で、抗体に連結された作用物質の活性を妨げない限り、任意の適切な二官能性架橋試薬を本発明に関連して使用できる。いくつかの態様において、リンカー分子は(上述したように)化学結合を通して薬剤を抗体に結び付け、薬剤および抗体は互いに化学的に連結される(例えば共有結合する)。いくつかの態様において、連結試薬は開裂可能なリンカーである。適切な開裂可能なリンカーの例には、ジスルフィドリンカー、酸解離性リンカー、光解離性リンカー、ペプチダーゼ解離性リンカー、およびエステラーゼ解離性リンカーが含まれる。ジスルフィド含有リンカーはジスルフィド交換を通して開裂可能なリンカーで、これは生理的条件下で起こり得る。酸解離性リンカーは酸性pHで開裂可能なリンカーである。例えば、エンドソームおよびリソソーム等の特定の細胞内区分は酸性pH(pH 4〜5)であり、酸解離性リンカーを開裂させるのに適した条件を提供する。光解離性リンカーは光の到達できる体表および多くの体腔内で有用である。さらに、赤外光は組織を透過できる。ペプチダーゼ解離性リンカーは細胞内外の特定のペプチドを開裂させるのに使用できる(例えばTrouet et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79: 626-629 (1982)およびUmemoto et al., Int. J. Cancer, 43: 677-684 (1989)を参照)。
【0035】
いくつかの態様において、作用物質はジスルフィド結合を通して抗体に連結される。リンカー分子は抗体と反応できる反応性化学基を含む。抗体との反応のための典型的な反応性化学基は、N-スクシンイミジルエステルおよびN-スルホスクシンイミジルエステルである。さらに、いくつかの態様において、リンカー分子はジスルフィド結合を形成するために薬剤と反応できる、例えばジチオピリジル基である反応性化学基を含む。いくつかの態様において、リンカー分子は例えばN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(例えばCarlsson et al., Biochem. J, 173: 723-737 (1978)を参照)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)(例えば米国特許第4,563,304号を参照)、およびN-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)(例えばCAS登録番号341498-08-6を参照)を含む。
【0036】
非開裂可能リンカーも免疫複合体を生成するために使用できる。非開裂可能リンカーは、共有結合を介して作用物質を抗体に連結できる任意の化学的部分である。したがって、いくつかの態様において、非開裂可能リンカーは薬剤もしくは抗体が活性であり続ける条件下で酸誘導性開裂、光誘導性開裂、ペプチダーゼ誘導性開裂、エステラーゼ誘導性開裂、およびジスルフィド結合開裂に対して実質的に耐性を持つ。
【0037】
非開裂可能リンカーの例には、細胞結合物質と反応するためのN-スクシンイミジルエステルもしくはN-スルホスクシンイミジルエステル部分および薬剤と反応するためのマレイミドもしくはハロアセチルに基づく部分を有するリンカーが含まれる。マレイミドに基づく部分を含む架橋試薬には、N-スクシンイミジル4-(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、SMCCの「長鎖」類似体(LC-SMCC)であるN-スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロアート)、κ-マレイミドウンデカン酸N-スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ-マレイミド酪酸N-スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N-α-マレイミドアセトキシ)-スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル-6-(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノアート(SMPH)、N-スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)-ブチラート(SMPB)、およびN-(p-マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)が含まれる。ハロアセチルに基づく部分を含む架橋試薬には、N-スクシンイミジル-4-(ヨードアセチル)-アミノベンゾアート(SIAB)、N-スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N-スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)、およびN-スクシンイミジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)が含まれる。
【0038】
非開裂可能リンカーを形成する硫黄原子を欠いた他の架橋試薬も本発明の方法で使用できる。そのようなリンカーは、例えばジカルボン酸に基づく部分から得ることができる。典型的な非開裂可能リンカーは米国特許出願公開第2005-0169933 A1号に詳細に記載されている。
【0039】
いくつかの態様において、作用物質および抗体を連結するのにヒドラジド、マレイミドもしくはアミドの化学的性質が使用される。そのような化学的性質は、例えばフィコエリスリンを抗体に連結するのに有用である。
【0040】
III.精製
本発明は、免疫複合体および非複合免疫複合体成分(例えば非複合抗体および非複合作用物質)が混合モード支持体に結合しており、続いて免疫複合体が非複合成分から精製されるように溶出されるような、免疫複合体を「結合-溶出」モードで精製するための方法を提供する。本明細書中の本発明に関連する「結合-溶出モード」とは、標的タンパク質(例えば免疫複合体)および所望しない混入物質(例えば非複合成分)の両者が混合モードクロマトグラフィー支持体に結合するような緩衝液の条件が確立されるクロマトグラフィーの操作手段を指す。免疫複合体の他の成分からの分画は、成分および免疫複合体が支持体から別々に溶出するように条件を変化させることで、続いて達成される。
【0041】
A.固体支持体への吸着
本発明に従って、免疫複合体および非複合成分が吸着(本明細書において「結合」とも呼ばれる)できる条件下で、免疫複合体および非複合成分を含む混合物を混合モード支持体に接触させる。
【0042】
免疫複合体混合物と混合モード支持体の接触に備えて、任意で、カラム内部の化学的環境を平衡化する。これは一般に、適切なpH、電導度、および他の関連する変数を確立するために平衡化緩衝液をカラムに通過させることで成し遂げられる。本発明の限定を意図しない例で、いくつかの態様において、支持体は5.5〜11の間のpH、例えば5.5〜7、例えば6〜6.5で、任意で例えば100〜800mMから、例えば3〜600mM、例えば400〜550mMのリン酸緩衝液(例えばNaPO4)とともに、任意で混合モード支持体がCHTもしくはCFTを含んで、平衡化される。
【0043】
いくつかの態様において、任意で、本発明を実施できる前にカラム平衡化緩衝液に適合した条件に免疫複合体混合物を平衡化する。
【0044】
支持体上に添加された免疫複合体の全部が必ずしも支持体に結合するわけではない。したがって、一部の免疫複合体は最初の添加過程で失われ得る。免疫複合体の支持体への結合は、理想的には添加した免疫複合体の最小限のフロースルーをもって達成される。本発明者らは、添加された材料のフロースルーの減少を達成し、これによりリン酸緩衝システムを使用する場合の収率を増加させる1つの手段は、添加の間のリン酸緩衝液濃度を(例えば1〜50mM、例えば1〜20mMもしくは1〜10mMに)低下させることであることを見出した。任意で、緩衝能は第二の緩衝液によって補足できる。いくつかの態様において、第二の緩衝液は2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)および他の一般に「Good」緩衝液(Good, N.E. et al, Biochemistry, 5, 467-477 (1966))と呼ばれるものからなる群より選択される。さらに、実施例において説明されるように、pHを例えば5.5〜6.5、例えば約6もしくは約6.5に低下させることで、添加の間の免疫複合体のフロースルーをさらに減少させることができる。このpHは、例えばCFTとともに使用できる。
【0045】
様々な混合モードクロマトグラフィー媒体が市販されており、その任意のものを本発明の実施に使用できる。市販例はセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)もしくはセラミックフルオロアパタイト(CFT)、MEP-Hypercel(商標)、Capto-MMC(商標)、Capto-Adhere(商標)、Capto-S(商標)、Capto-Q(商標)、およびABx(商標)を含むが、それらに限定されない。
【0046】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は陰イオン交換および疎水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はMEP-Hypercel(商標)を含むが、それに限定されない。
【0047】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は陽イオン交換および親水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はCapto-S(商標)を含むが、それに限定されない。
【0048】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は陰イオン交換および親水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はCapto-Q(商標)を含むが、それに限定されない。
【0049】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は陽イオン交換、陰イオン交換、および疎水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はABx(商標)を含むが、それに限定されない。
【0050】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は水素結合およびπ-π結合の可能性を伴った陰イオン交換ならびに疎水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はCapto-Adhere(商標)を含むが、それに限定されない。
【0051】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は水素結合およびπ-π結合の可能性を伴った陽イオン交換および疎水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はCapto-MMC(商標)を含むが、それに限定されない。
【0052】
本発明は、充填層カラム、混合モード支持体を含む流動/膨張層カラム、および/または混合モード支持体が抗体調製物と一定期間混合されるバッチ操作において実施してもよい。
【0053】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体はカラムに充填されている。
【0054】
混合モード支持体は、調製のための適用を支持するのに必要な任意の大きさのカラムに充填できる。特定の適用の要件に応じてカラムの直径は1cm未満から1メートルを超える範囲に及んでいてよく、カラムの高さは1cm未満から30cmを超える範囲に及んでいてよい。
【0055】
当然のことながら、本発明は上記の高さおよび直径に限定されない。適切なカラムの大きさは当業者によって決定され得る。
【0056】
B.非複合抗体および作用物質の洗浄
支持体に結合した非複合成分(非複合抗体もしくは非複合作用物質)を実質的に除去するために、添加に続いて1つ以上の洗浄工程が起こり得る。「実質的に除去する」とは、作用物質の少なくとも75%(任意で、少なくとも85%、95%、もしくは95%以上)が支持体から除去されることを意味する。結合した免疫複合体が支持体に結合したままであるような条件が選択される。いくつかの態様において、結合した免疫複合体の少なくとも過半数は洗浄条件で除去されない。任意で、結合した免疫複合体の少なくとも50%、65%、75%、85%、もしくは90%以上が洗浄工程の間に結合したままである。典型的な洗浄条件は、例えば添加工程における塩濃度に比べて溶液中の塩濃度を増加させることを含み得る。例えば、NaCl、KCl、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、もしくは他の可溶性塩の量を最初の結合条件に比べて増加させることができ、これにより非複合成分が支持体から除去される。例えば、任意で緩衝液濃度を変化させずに、任意で比較的低くする(例えば50mM未満、例えば5〜20mM)一方で、塩(NaClを含むが、それに限定されない)の量を例えば少なくとも0.75M、例えば1〜3M、0.75〜1.5M、例えば約2Mに(勾配的もしくは段階的に)増加させることができる。任意で、いくつかの態様において、洗浄のpHは5.5〜11の間、例えば5.5〜8.5、例えば6〜6.5、例えば約6である。
【0057】
洗浄工程で塩を導入するとpHを減少させられるため、塩によって比較的影響を受けにくい第二の緩衝液成分も洗浄工程に含まれ得る。例えば、塩濃度を増加させる一方で本質的に一定のpHを維持するために、MES、HEPES、MOPSもしくは他の「Good」緩衝液(Good, N.E. et al, Biochemistry, 5, 467-477 (1966))を洗浄に含めることができる。いくつかの態様において、第二の緩衝液の濃度は例えば1〜200mM、例えば20〜40mM、20〜60mM、30〜50mM等である。
【0058】
任意で、洗浄工程に続いて、溶出の前に支持体と接触した溶液を再平衡化するためのさらなる工程を含めることができる。
【0059】
C.溶出
非複合成分の除去に続いて、免疫複合体を溶出させるために再度条件を変化させることができる。溶出条件は、例えばイオンおよび/または緩衝液の濃度を増加させ、これにより支持体から免疫複合体を競合させることを含み得る。例えば、リン酸塩に基づく緩衝液システムでは、いくつかの態様において、緩衝液の濃度は例えば少なくとも100mM、例えば100〜900mM、例えば200〜600mM、例えば300〜500mMに引き上げられる。任意で、pHはpH 5.5〜11の間、例えば5.5〜8.5、例えば6〜6.5の間に維持される。
【0060】
任意で、さらなる塩(例えば洗浄工程で使用される塩等)は溶出緩衝液には含まれない。例えば、いくつかの態様において、塩濃度は洗浄工程の塩濃度よりも低い。いくつかの場合において、免疫複合体溶出工程における塩濃度は、先の洗浄工程よりも少なくとも50%低い。
【0061】
いくつかの態様において、支持体に結合した免疫複合体の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、もしくはより多くが溶出工程で溶出される。
【0062】
結果として得られた複合体の純度は正確な条件に従って変化する。いくつかの態様において、免疫複合体産物は少なくとも80%、90%、95%、もしくは98%純粋である。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は本願発明を例証するために提供されるものであり、本願発明を制限するものではない。
【0064】
IgG-フィコエリスリン複合体(「GAH-PE」と表す)の精製のための効果的で拡張可能なCFTに基づく方法が開発された。CFTクロマトグラフィーの工程は従来の勾配溶出法を排除するため、利用者に使いやすく合わせられている。この単一工程の過程における効果的な洗浄および単純なリン酸塩工程の溶出の組合せによって、95%を超える純度のGAH-PE複合体の高収率プールが生成される。カラム添加容量および他の過程のパラメーターの決定に必要な材料を利用できる場合には、最終過程をさらに定義することができる。開発の進行は3つの段階、すなわち提供された精製GAH-PEを用いた早期段階の開発、CFTへの移行段階、ならびに洗浄および溶出条件の定義に焦点を当てた最終段階を含む。データは、CFTおよび/またはCHTが免疫複合体をそれらの非複合前駆体から精製するための有用な汎用ツールであることを示している。
【0065】
材料および方法
IgG-フィコエリスリン複合体:100mM クエン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH 6.0を含む複合反応混合物中のGAH-PE。フィコエリスリンにはヒドラジン官能基が組み込まれ、IgGにはケトンが組み込まれ、そして活性分子は2:1のIgG:PE比でpH 6.1において3時間連結された。
【0066】
精製IgG-フィコエリスリン複合体:50mM NaPO4、0.15M NaCl、0.1% アジ化ナトリウム、pH 7.4中のGAH-PE。
【0067】
ヤギIgG(「GAH」):100mM NaPO4、0.15M NaCl、pH 7.2中のGAH。
【0068】
クロマトグラフィー樹脂:
セラミックフルオロアパタイトCFTタイプII(40μm)、
セラミックハイドロキシアパタイトCHTタイプI(40μm)。
【0069】
CFTカラム:0.5×5.1cm
【0070】
CHTカラム:0.5×5.1cm
【0071】
高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)カラム:Zorbax GF450(9.4×250mm)、Agilentの製品番号884973-902。ガードカラム(4.6×12.5mm)、Agilentの製品番号820950-911。
【0072】
Bio-Gel P6スピンカラム:Bio-Radのカタログ番号732-6221。
【0073】
クロマトグラフィーシステム:Bio-Rad LaboratoriesのBioLogic DuoFlow QuadTec 10 system。
【0074】
結果および考察
10mM NaPO4、pH 7で最初に平衡化しておいたCFTカラム(0.5×5.1cm)上に添加する前に、リン酸濃度を10mMに低下させるために精製GAH-PEを水で5倍に希釈した。その後、20カラム体積を超えて2M NaClまで直線勾配によりGAH-PEを溶出させた。図1に示すように、後にSDS-PAGE解析で確認されたように(データは示さず)、添加の間にGAH-PEはカラムを通過した。NaCl勾配による溶出の間にGAH-PEは見出されなかった。NaCl勾配による溶出の最初に、電導度が上昇し始めた際に6.9から6.1へのpH下落が観察された。これは恐らくナトリウムイオン濃度が増加したことでCFT表面上の陽子が緩衝液中に置換されたためである。
【0075】
CHTカラムを用いて上記実験を繰り返した(図2)。ほぼ同一の結果が得られた。pH下落は6.8から6.1までととても類似していた。
【0076】
CFTカラム上に添加する前に、リン酸濃度を10mMに低下させるためにヤギIgG(GAH)を水で10倍に希釈した。添加の間はGAHが保持され、NaCl勾配による溶出の間に鋭いピークとして溶出されたことが図3に示されている。GAHは勾配の初期に溶出しているため、この条件下でのGAHのCFTへの結合は弱い。
【0077】
GAHを同様に希釈し、CHTカラムに添加した(図4)。添加の間は、GAHはカラムに保持され、幅広いピークとして溶出された。このことは、GAHがCFTよりもCHTに対して、より高い結合親和性を有することを示している。
【0078】
GAH-PEならびにGAHのCFTおよびCHT上での挙動は、GAH-PEおよびGAHを添加フロースルー中のGAH-PEと分離でき、保持されたGAHがNaCl勾配によって溶出することを示していた。
【0079】
1つの実験において、複合反応混合物は100mMクエン酸ナトリウムを含んでいたが、これはCHTおよびCFTの安定性ならびにカラム結合能に有害であることが知られている。したがって、複合混合物は最初にクエン酸ナトリウム濃度を10mMに低下させるために10倍に希釈された。CHTおよびCFTカラム上に添加する前に、リン酸ナトリウム濃度も10mMに調整された。複合反応混合物におけるGAH-PE精製のためのCFTクロマトグラムが図5に示されている。添加フロースルーに大きなピークがある。NaCl勾配による溶出の間に比較的小さなピークが提示されている。フロースルーピークおよび溶出ピークのHPSEC解析によって、GAH-PE、GAH、および他の混入物質が添加の間にカラムを通過し、少量のGAHが保持され、そして続いてNaCl勾配によって溶出されることが示されている(図6)。CHTを実験で使用した場合にも同じ結果が得られた(データは示さず)。GAHがカラムを通過した原因は、添加物中の10mMリン酸ナトリウムに加えて、10mMで残存するクエン酸ナトリウムの存在であると考えられた。
【0080】
実験を繰り返す前に、クエン酸ナトリウムを除去するためにP6スピンカラムを用いて複合反応混合物を10mM NaPO4、pH 7に交換した。GAHのCFTカラムへの結合親和性は改善されたが、ある程度の量のGAHが添加フロースルーの最後にまだ見出された(データは示さず)。開発の早期段階で観察されたのとは異なるGAHの挙動は、複合反応のためにGAH上の第一級アミノ基をスクシンイミジル4-ホルミルベンゾエートで修飾したためかもしれない。
【0081】
GAHのCFTカラムへの結合親和性を改善するために、2mM NaPO4、50mM MES、pH 7への緩衝液交換を通してリン酸ナトリウム濃度を2mMに低下させた。CFTクロマトグラムは、溶出ピークが右に移動してより幅広くなり、そして500mM NaPO4による比較的大きなストリップピークがあることを示している(図7)。HPSEC解析は、添加の間は少量のGAH-PEおよびGAHのみがカラムを通過し、大きなストリップピークの主要成分はGAH-PEであったことを示している(図8)。このことは、2mM NaPO4、50mM MES、pH 7中ではGAH-PEおよびGAHの両者がCFTカラムに結合すること、およびGAH-PEがいったんカラムに結合するとCFTに対してGAHよりもかなり高い親和性を有することを示している。
【0082】
添加の間にGAHを保持する一方でGAH-PEがカラムを通過できるように、リン酸ナトリウム濃度を増加させた。これにより、5mM NaPO4、50mM MES、pH 7を用いた実験となった(図9)。クロマトグラムは、溶出ピークがより鋭いことを除いて図7と類似して見える。HPSEC解析は、添加の間にGAH-PEおよびGAHの両者がカラムを通過すること、ならびにストリップが75%より高い純度のGAH-PEを含み、GAHを含まないことを示している(図10)。
【0083】
別の実験には、リン酸ナトリウム濃度を10mMに維持する一方でpHを7から6に低下させることが含まれた。pH 6.5より低いとCHTは不安定なため、CFTが唯一の適切な選択肢であり、したがって作業はCFTだけを用いて継続された。図11に示されるように、添加フロースルーピークは図9のものよりもかなり小さい。NaCl勾配の最初に0.9 pH単位のpH下落が生じる。溶出ピークは図9のものよりもかなり大きい。CFT試料のHPSEC解析は、添加の間はGAH-PEおよびGAHが保持されること、保持されたGAHおよび他の混入物質はNaCl勾配の間に溶出されること、ならびに500mM NaPO4によって外れるまでGAH-PEはカラムに結合したままであること、およびそのストリップ中の純度は95%より高いことを示している。
【0084】
過程を単純化する目的で、保持されたGAHおよび他の混入物質を除去するためにNaCl勾配を高塩工程洗浄に変えた。高濃度のNaClがCFTに供されたときに生じるpH下落を最小限とするために、1M NaClに加えて様々な濃度のMESをコバッファー(co-buffer)として10mM NaPO4とともに洗浄液に加えた。異なる洗浄液を用いた一連の模擬実験の後に、それらのクロマトグラムを重ね合わせた。20、30、40、50、および60mMのMESの存在下では、pH下落はそれぞれ0.77、0.76、0.76、0.75、および0.74 pH単位であることが図13に示されている。MESの非存在下でのpH下落が0.9 pH単位であるのに比べて(図11)、MESはpH下落およびその持続時間の軽減を助けるが、その効果は劇的ではない。pH下落の軽減に関して20mMおよび60mMの間にほとんど差はない。しかしながら、洗浄液に40mM以上のMESを加えた場合には、pH下落の持続時間は大きく減少するようである。したがって、高塩洗浄液を10mM NaPO4、40mM MES、1M NaCl、pH 6に設定した。
【0085】
GAH-PEを効果的に捕獲することを確実とするために、平衡化緩衝液を2mM NaPO4、50mM MES、pH 6に修正した。溶出緩衝液は500mM NaPO4の代わりに300mM NaPO4となった。溶出後にカラム中にいくらかのGAH-PEが残存しているかを判断するために、より強いストリップ緩衝液である800mM KPO4を一時的に使用した。溶出プールにおけるNaCl濃度をより良く制御するために、高塩洗浄および溶出の間に平衡化緩衝液によるさらなる洗浄を挿入した。
【0086】
上記の修正を伴ったCFTの実行が図14に提示されている。予想されたとおり、添加の間のフロースルーピークは小さく、高塩洗浄の間に大きいピークが出現する。高塩洗浄ピークのテーリング部分は基線には戻らず、洗浄が不十分であることを示している。平衡化緩衝液での洗浄の間に6.1から7へのpH急増を伴う小さいピークがある。このpHの増加は、溶液からCFTの表面上に陽子を押し出すNaCl濃度の減少によるものである。溶出ピークは高塩洗浄ピークに比べて驚くほど小さい。0.8M KPO4によるストリップピークはとても小さく、300mM NaPO4によってGAH-PEが効果的に溶出されることを良く示している。CFT試料のHPSEC解析の結果を図15に示す。添加物中のGAH-PEピークの大きさはGAHピークのものと近く、これはGAH-PEおよびGAHがCFTから同等に良く回収された場合には、溶出ピークの大きさは高塩洗浄ピークのものから大きく外れるべきでないことを示唆している。添加フロースルー中にはGAH-PEおよびGAHは見出されない。GAHおよび混入物質の大半は高塩洗浄中に出現する。保持されたGAH-PEのいくらかは、平衡化緩衝液による洗浄中に見出される。NaCl濃度の減少による6.1から7へのpH急増によって、GAH-PEのいくらかが溶出する。溶出プールのGAH-PEの純度は95%より高い。0.8M KPO4によるストリップは、300mM NaPO4による溶出の後にはカラム中にGAH-PEがほとんど残っていないことを裏付ける。
【0087】
上記の観察に基づいて、CFT操作に対していくつかの修正を行った、高塩洗浄の持続時間を延長し、平衡化緩衝液による洗浄を排除した。当初のストリップ緩衝液である500 mM NaPO4を0.8M KPO4の代わりとする。新しいCFTクロマトグラフィー法は以下のとおりであった:
前平衡化(Pre-equilibration):300cm/時で5カラム体積の500mM NaPO4、pH 6.5
平衡化:5カラム体積の2mM NaPO4、50mM MES、pH 6
添加:前もって平衡化緩衝液に交換された複合反応混合物中の約0.5mgのGAH-PE複合体(注記:添加はまだ最適化されていない)
洗浄:10カラム体積の10mM NaPO4、40mM MES、1M NaCl、pH 6
溶出:6カラム体積の300mM NaPO4、pH 6.5
ストリップ:5カラム体積の500mM NaPO4、pH 6.5
サニタイゼーション:5カラム体積の1N NaOH
保存:5カラム体積の0.1N NaOH
【0088】
更新されたCFT実行のクロマトグラムを図16に示す。CFT試料のHPSEC解析の結果を図17に示す。添加物中のGAH-PE含量が以前の実行におけるものよりもかなり低いことを除けば、すべての結果は予想どおりである。考えられる理由は、緩衝液交換の前にGAH-PE複合反応混合物をさらに遠心したことによって、いくらかの沈殿したGAH-PE複合体が除去されるというものである。溶出プール中のGAH-PEの純度は95%よりも高い。CFT試料のSDS-PAGE解析を図18に示す。添加フロースルー中にGAH-PEが存在しないことはレーン3および11に裏付けられている。レーン4(高塩洗浄)は、IgGの標準的な分子量であるほぼ150kdの大きくて濃いバンドが存在することを示している。レーン2(CFT添加物)とは異なり、試料を大量に添加してさえも、レーン4には150kdを超える少数のとてもかすかなバンドしか存在しない。このことは、高塩洗浄によってGAHは除去されるが、GAH-PEにはほとんど影響がないことを示している。レーン5(ストリップ)および6(1N NaOH)ではGAH-PEの意味のある検出はされず、これはGAH-PEがカラムから良く回収されることを示している。溶出プールのプロファイルは、非還元条件(レーン7および8)ならびに還元条件(レーン15および16)における精製GAH-PE標準物質のものととても似ている。
【0089】
本明細書に記載された実施例および態様は単に例証を目的としており、それを踏まえた様々な修正もしくは変更が当業者に示唆され、本願の精神および範囲ならびに添付された特許請求の範囲の領域の中に含まれるべきであることが理解される。本明細書で引用されたすべての刊行物、特許、および特許出願は、その全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本特許出願は、2009年4月29日出願の米国仮特許出願第61/173,896号に優先権の利益を主張し、これは参照により、すべての目的のために組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
科学および医学文献において、様々な種類の免疫複合体が記載され、使用されてきた。例えば、抗体および蛍光もしくは他の種類の検出可能な標識の複合体は、診断および他の研究分野で広く多岐にわたる用途を有する。抗体および毒素、放射性同位体、もしくは他の生物活性化合物の複合体は、多岐にわたる治療用途を有する。
【0003】
免疫複合体の生成は、抗体を他の作用物質に連結することを含み得る。そのような反応は100%効率的なわけではなく、したがって反応は通常、所望の免疫複合体の他にある程度の量の非複合成分、すなわち非複合抗体および1つ以上の非複合作用物質(非複合標識、非複合毒素等)の産生をもたらす。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、非複合抗体および非複合作用物質から抗体-作用物質複合体を精製するための方法を提供する。いくつかの態様において、本方法には以下の工程が含まれる:
(a) 複合体、非複合抗体、および非複合作用物質が混合モードクロマトグラフィー支持体に結合できる条件下で、複合体、非複合抗体、および非複合作用物質の混合物を支持体に接触させる工程;
(b) 少なくとも複合体の過半数が支持体に結合したままである一方で、非複合抗体および非複合作用物質が支持体から実質的に除去されるように支持体を緩衝液に接触させる工程;および、その後
(c) 複合体を支持体から溶出させ、これにより非複合抗体および非複合作用物質から抗体-作用物質複合体を精製する工程。
【0005】
いくつかの態様において、工程(b)の緩衝液は工程(a)の混合物に比べてより高い塩濃度を含む。いくつかの態様において、塩濃度は0.5および4Mの間である。いくつかの態様において、塩はNaClである。
【0006】
いくつかの態様において、工程(c)では工程(b)の濃度に比べて緩衝液の濃度を増加させることを含む。いくつかの態様において、工程(c)では工程(b)の塩濃度に比べて塩濃度を減少させることを含む。
【0007】
いくつかの態様において、工程(a)の混合物のpHは約pH 5.5およびpH 8.5の間である(例えば5.5〜8.5、5.5〜7、5.5〜6.5、6〜7、6〜8等)。
【0008】
いくつかの態様において、工程(b)の緩衝液のpHは約pH 5.5およびpH 8.5の間である(例えば5.5〜8.5、5.5〜7、5.5〜6.5、6〜7、6〜8等)。
【0009】
いくつかの態様において、溶出の工程はpHが約pH 5.5およびpH 11の間である(例えば5.5〜8.5、5.5〜7、5.5〜6.5、6〜7、6〜8等)溶出緩衝液に支持体を接触させることを含む。
【0010】
いくつかの態様において、緩衝液はリン酸緩衝液である。
【0011】
いくつかの態様において、作用物質は標識、ホルモン、細胞毒性物質、および放射性同位体からなる群より選択される。いくつかの態様において、標識は蛍光標識である。いくつかの態様において、蛍光標識はフィコエリスリンである。
【0012】
いくつかの態様において、混合モード支持体はセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)もしくはセラミックフルオロアパタイト(CFT)を含む。いくつかの態様において、CHTはハイドロキシアパタイトCHTタイプI、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、40ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、80ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、40ミクロン;およびハイドロキシアパタイトCHTタイプII、80ミクロンからなる群より選択される。いくつかの態様において、CFTはCFTタイプI、40ミクロンおよびCFTタイプII、40ミクロンからなる群より選択される。
【0013】
本発明は、混合モードクロマトグラフィー支持体に接触した複合体、非複合抗体、および非複合作用物質の混合物も提供する。いくつかの態様において、複合体、非複合抗体、および非複合作用物質が支持体に結合できる条件下で混合物を接触させる。
【0014】
いくつかの態様において、作用物質は標識、ホルモン、細胞毒性物質、および放射性同位体からなる群より選択される。いくつかの態様において、標識は蛍光標識である。いくつかの態様において、蛍光標識はフィコエリスリンである。
【0015】
いくつかの態様において、混合モード支持体はセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)もしくはセラミックフルオロアパタイト(CFT)を含む。いくつかの態様において、CHTはハイドロキシアパタイトCHTタイプI、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、40ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、80ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、40ミクロン;およびハイドロキシアパタイトCHTタイプII、80ミクロンからなる群より選択される。いくつかの態様において、CFTはCFTタイプI、40ミクロンおよびCFTタイプII、40ミクロンからなる群より選択される。
【0016】
定義
「抗体」は、免疫グロブリン、その複合もしくは断片の形態を指す。この用語は天然、もしくはヒト化、ヒト、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異、移植、およびインビトロ生成抗体等の遺伝子操作された形態を含む、ヒトまたは他の哺乳動物細胞株に由来するクラスIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMのポリクローナルまたはモノクローナル抗体を含んでもよいが、それらに限定されない。「抗体」は免疫グロブリン部分を含む融合タンパク質を含むが、それに限定されない複合の形態も含んでよい。「抗体」はFab、F(ab')2、Fv、scFv、Fd、dAb、Fcおよび他の組成物等の抗体断片も、それらが抗原結合機能を保持していようがいまいが含んでよい。
【0017】
「混合モードクロマトグラフィー支持体」は、2つ以上の化学的機構の組合せを実質的に含むクロマトグラフィーの固相を指す。混合モード支持体と組み合わせることのできる化学的機構の例は、陽イオン交換、陰イオン交換、疎水性相互作用、親水性相互作用、水素結合、π-π結合、および金属親和性を含むが、それらに限定されない。固相は多孔性粒子、非多孔性粒子、膜、もしくはモノリスであり得る。混合モードクロマトグラフィーはときどき「マルチモード」クロマトグラフィーと呼ばれる。
【0018】
「ハイドロキシアパタイト」は、構造式Ca10(PO4)6(OH)2のリン酸カルシウムの不溶性水酸化鉱物を含む混合モード支持体を指す。その相互作用の主要なモードはホスホリル陽イオン交換およびカルシウム金属親和性である。ハイドロキシアパタイトは、セラミック、結晶および複合の形態を含むが、それらに限定されない様々な形態で市販されている。複合の形態はアガロースもしくは他のビーズの孔の中に封入されたハイドロキシアパタイト微結晶を含む。
【0019】
「フルオロアパタイト」は、構造式Ca10(PO4)6F2のリン酸カルシウムの不溶性フッ化鉱物を含む混合モード支持体を指す。その相互作用の主要なモードはホスホリル陽イオン交換およびカルシウム金属親和性である。フルオロアパタイトは、セラミックおよび結晶複合の形態を含むが、それらに限定されない様々な形態で市販されている。
【0020】
「セラミック」ハイドロキシアパタイト(CHT)もしくは「セラミック」フルオロアパタイト(CFT)は、クロマトグラフィーへの適用に適した安定なセラミック微小球を製造するために、ナノ結晶を粒子に凝集させて高温で融合させた各鉱物の形態を指す。セラミックハイドロキシアパタイトの市販例はCHTタイプIおよびCHTタイプIIを含むが、それらに限定されない。フルオロアパタイトの市販例はCFTタイプIおよびCFTタイプIIを含むが、それらに限定されない。指定がなければ、CHTおよびCFTは約10、20、40、および80ミクロンを含むが、それらに限定されない任意の平均直径を有するほぼ球状の粒子を指す。ハイドロキシアパタイトもしくはフルオロアパタイトの選択、タイプ、および平均粒径は当業者によって決定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】精製GAH-PEのCFT精製。平衡化緩衝液:10mM NaPO4、pH 7。溶出緩衝液:平衡化緩衝液に2M NaClを追加。勾配:20カラム体積を超えて0から100%B。
【図2】精製GAH-PEのCHT精製。平衡化緩衝液:10mM NaPO4、pH 7。
【図3】GAHのCFT精製。平衡化緩衝液:10mM NaPO4、pH 7。
【図4】GAHのCHT精製。平衡化緩衝液:10mM NaPO4、pH 7。
【図5】複合反応混合物中のGAH-PEのCFT精製。平衡化緩衝液:10mM NaPO4、pH 7。
【図6】図5におけるCFTフロースルーピークおよび溶出ピークのHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図7】2mM NaPO4、50mM MES、pH 7に交換した反応混合物中のGAH-PEのCFT精製。平衡化緩衝液:2mM NaPO4、50mM MES、pH 7。溶出緩衝液:平衡化緩衝液に2M NaClを追加。勾配:20カラム体積を超えて0から100%B。
【図8】図7におけるCFT試料のHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図9】5mM NaPO4、50mM MES、pH 7に交換した反応混合物中のGAH-PEのCFT精製。
【図10】図9におけるCFT試料のHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図11】10mM NaPO4、pH 6に交換した反応混合物中のGAH-PEのCFT精製。
【図12】図11におけるCFT試料のHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図13】CFTにおける高塩洗浄の間に洗浄液にMESを添加することのpH低下への影響。
【図14】2mM NaPO4、50mM MES、pH 6に交換した反応混合物中のGAH-PEのCFT精製。
【図15】図14におけるCFT試料のHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図16】2mM NaPO4、50mM MES、pH 6に交換した反応混合物中のGAH-PEの更新されたCFT精製。
【図17】図16におけるCFT試料のHPSEC解析。ランニング緩衝液:50mM NaPO4、1M NaCl、2M尿素、pH 7。
【図18】CFT試料のSDS-PAGEおよびFlamingo染色。レーン1:分子量マーカー;レーン2:CFT添加物;レーン3:添加フロースルー;レーン4:高塩洗浄;レーン5:ストリップ(Strip);レーン6:1N NaOHによるサニタイゼーション(Sanitization)、レーン7:溶出プール;レーン8:精製GAH-PE標準物質;レーン9:分子量マーカー;レーン10:CFT添加物;レーン11:添加フロースルー;レーン12:高塩洗浄;レーン13:ストリップ;レーン14:1N NaOHによるサニタイゼーション、レーン15:溶出プール;レーン16:精製GAH-PE標準物質。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
I.序論
本発明は、免疫複合体および非複合反応物が支持体に結合されており、その後非複合反応物が支持体から洗浄され、続いて免疫複合体が支持体から溶出され、これにより非複合反応物から免疫複合体を精製する過程において混合モード支持体上で免疫複合体を精製できるという発見に一部関連する。
【0023】
II.免疫複合体
任意の免疫複合体、すなわち他の作用物質に共有結合した1つ以上の抗体もしくはその断片が本発明の方法によって精製できると考えられている。
【0024】
A.抗体
本発明において、天然、合成、もしくは組換えの供給源からの未精製または部分的に精製された抗体を含む任意の抗体調製物を使用できる。未精製の抗体調製物は、血漿、血清、腹水、乳、植物抽出物、細菌溶解物、酵母溶解物、もしくは細胞馴化培地を含むが、それらに限定されない様々な供給源から得ることができる。部分的に精製された調製物は、少なくとも1回のクロマトグラフィー、沈殿、他の分画工程、もしくは上記の任意の組合せによって処理された未精製調製物から得ることができる。いくつかの態様において、本明細書に記載の精製の前に、抗体はプロテインA親和性によって精製されており、もしくは精製されていない。
【0025】
抗体もしくはその断片は、ヒト、マウス、ヤギ、ウサギ、ブタ、ウシ、およびラットを含むが、それらに限定されない任意の抗体産生動物から得ることができる。抗体はモノクローナルもしくはポリクローナルであり得る。いくつかの態様において、抗体は単鎖抗体もしくはキメラ抗体である(ヒト化抗体を含むが、それに限定されない)。
【0026】
抗体は、本質的に所望のとおりの任意のエピトープを標的にできる。いくつかの場合において、抗体は腫瘍細胞等の標的細胞抗原を特異的に認識する。いくつかの態様において、抗体は異なる種からの抗体を認識する(例えば診断測定法における使用のため)。
【0027】
B.作用物質/複合パートナー
広く多岐にわたる作用物質を抗体に連結できる。作用物質はタンパク質(例えば生物活性タンパク質、治療タンパク質、ホルモン、細胞毒性物質、毒性タンパク質、検出可能なタンパク質等)、核酸、小分子(例えば小分子治療薬、診断薬、例えば標識、もしくは毒素)、光増感剤(ポルフィリンおよびハイドロポルフィリンを含むが、それらに限定されない)、および放射性同位体を含み得る。本質的には、抗体によって標的となる任意の作用物質が抗体と複合され得る。
【0028】
本明細書で使用される「細胞毒性物質」は、細胞の死をもたらし、細胞死を誘導し、もしくは細胞の生存率を減少させる任意の化合物を指す。適切な細胞毒性物質は、リシンA鎖、メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体、タキソイド、CC-1065およびCC-1065類似体、ならびにドラスタチンおよびドラスタチン類似体を含むが、それらに限定されない。メイタンシノイドは微小管の形成を阻害する化合物で、哺乳動物細胞に対する毒性が高い。適切なメイタンシノール類似体の例には、修飾芳香環を有するものおよび他の位置が修飾されたものが含まれる。そのようなメイタンシノイドは、例えば米国特許第4,256,746号、第4,294,757号、第4,307,016号、第4,313,946号、第4,315,929号、第4,322,348号、第4,331,598号、第4,361,650号、第4,362,663号、第4,364,866号、第4,424,219号、第4,371,533号、第4,450,254号、第5,475,092号、第5,585,499号、第5,846,545号、および第6,333,410号に記載されている。
【0029】
いくつかの態様において、作用物質は検出可能な標識である。1つの局面において、本発明の抗体は反応性部分、活性化部分、もしくは反応性システインチオール基を通して任意の標識部分と複合していてよい(Singh et al (2002) Anal. Biochem. 304: 147-15; Harlow E. and Lane, D. (1999) Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; Lundblad R. L. (1991) Chemical Reagents for Protein Modification, 2nd ed. CRC Press, Boca Raton, Fla.)。付加された標識は次のように機能する可能性がある:(i)検出可能な信号を提供する;(ii)第一もしくは第二の標識によって提供される検出可能な信号を修飾するために、例えばFRET(fluorescence resonance energy transfer)を起こさせるために、第二の標識と相互作用する;(iii)抗原もしくはリガンドとの相互作用を安定化させ、または結合親和性を増加させる;(iv)移動度、例えば電荷、疎水性、形状、もしくは他の物理的パラメーターによって電気泳動の移動度または細胞透過性に影響を与える、または(v)リガンド親和性、抗体/抗原結合、もしくはイオン結合型錯体の形成を調節するために捕獲部分を提供する。
【0030】
通常、以下の区分に分類し得る多数の標識を利用できる:
【0031】
3H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、68Ga、86Y、99Tc、111In、123I、124I、125I、131I、133Xe、177Lu、211At、もしくは213Bi等の放射性同位体(放射性核種)。放射性同位体で標識された抗体は、例えば標的画像法において有用である。抗体は放射性同位体金属に結合、キレート化、もしくはそうでなければ錯体形成するリガンド試薬で標識できる。例えばCurrent Protocols in Immunology, Volumes 1 and 2, Coligen et al, Ed. Wiley-Interscience, New York, N.Y., Pubs. (1991)、Chelating ligands which may complex a metal ion include DOTA, DOTP, DOTMA, DTPA and TETA (Macrocyclics, Dallas, Tex.)を参照。
【0032】
さらなる標識は、例えば希土類キレート(ユーロピウムキレート)、FITC、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセインを含むフルオレセイン型;TAMRAを含むローダミン型;ダンシル;リサミン;シアニン;フィコエリスリン;テキサスレッド;およびそれらの類似体等の蛍光標識を含む。蛍光色素および蛍光標識試薬は、Invitrogen/Molecular Probes (Eugene, Oreg.)およびPierce Biotechnology, Inc. (Rockford, Ill.)から市販されているものを含む。
【0033】
さらなる標識は、例えば様々な酵素-基質標識も含み得る。いくつかの態様において、酵素は様々な技術を用いて測定できる発色基質の化学的変質を触媒する。例えば、酵素は基質における色の変化を触媒してもよく、それは分光光度法で測定できる。あるいは、酵素は基質の蛍光もしくは化学発光を変質させてもよい。蛍光の変化を定量するための技術は上述されている。化学発光基質は化学反応によって電子的に励起され、その後(例えばケミルミノメーター(chemiluminometer)を用いて)測定可能な光を放出するか、もしくは蛍光アクセプターにエネルギーを供与してもよい。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えばホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)等のペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸脱水素酵素)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ等)ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ等が含まれる。酵素を抗体に複合させるための技術は、例えばO'Sullivan et al (1981) "Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay", in Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic Press, New York, 73:147-166に記載されている。
【0034】
C.リンカー
広く多岐にわたるリンカー科学技術が公知であり、免疫複合体を形成するために、本明細書に記載されているように抗体を作用物質に連結するのに使用できる。例えば、リンカー試薬が抗体の標的特性の保持を提供する限り、そして任意で、抗体に連結された作用物質の活性を妨げない限り、任意の適切な二官能性架橋試薬を本発明に関連して使用できる。いくつかの態様において、リンカー分子は(上述したように)化学結合を通して薬剤を抗体に結び付け、薬剤および抗体は互いに化学的に連結される(例えば共有結合する)。いくつかの態様において、連結試薬は開裂可能なリンカーである。適切な開裂可能なリンカーの例には、ジスルフィドリンカー、酸解離性リンカー、光解離性リンカー、ペプチダーゼ解離性リンカー、およびエステラーゼ解離性リンカーが含まれる。ジスルフィド含有リンカーはジスルフィド交換を通して開裂可能なリンカーで、これは生理的条件下で起こり得る。酸解離性リンカーは酸性pHで開裂可能なリンカーである。例えば、エンドソームおよびリソソーム等の特定の細胞内区分は酸性pH(pH 4〜5)であり、酸解離性リンカーを開裂させるのに適した条件を提供する。光解離性リンカーは光の到達できる体表および多くの体腔内で有用である。さらに、赤外光は組織を透過できる。ペプチダーゼ解離性リンカーは細胞内外の特定のペプチドを開裂させるのに使用できる(例えばTrouet et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79: 626-629 (1982)およびUmemoto et al., Int. J. Cancer, 43: 677-684 (1989)を参照)。
【0035】
いくつかの態様において、作用物質はジスルフィド結合を通して抗体に連結される。リンカー分子は抗体と反応できる反応性化学基を含む。抗体との反応のための典型的な反応性化学基は、N-スクシンイミジルエステルおよびN-スルホスクシンイミジルエステルである。さらに、いくつかの態様において、リンカー分子はジスルフィド結合を形成するために薬剤と反応できる、例えばジチオピリジル基である反応性化学基を含む。いくつかの態様において、リンカー分子は例えばN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(例えばCarlsson et al., Biochem. J, 173: 723-737 (1978)を参照)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)(例えば米国特許第4,563,304号を参照)、およびN-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)(例えばCAS登録番号341498-08-6を参照)を含む。
【0036】
非開裂可能リンカーも免疫複合体を生成するために使用できる。非開裂可能リンカーは、共有結合を介して作用物質を抗体に連結できる任意の化学的部分である。したがって、いくつかの態様において、非開裂可能リンカーは薬剤もしくは抗体が活性であり続ける条件下で酸誘導性開裂、光誘導性開裂、ペプチダーゼ誘導性開裂、エステラーゼ誘導性開裂、およびジスルフィド結合開裂に対して実質的に耐性を持つ。
【0037】
非開裂可能リンカーの例には、細胞結合物質と反応するためのN-スクシンイミジルエステルもしくはN-スルホスクシンイミジルエステル部分および薬剤と反応するためのマレイミドもしくはハロアセチルに基づく部分を有するリンカーが含まれる。マレイミドに基づく部分を含む架橋試薬には、N-スクシンイミジル4-(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、SMCCの「長鎖」類似体(LC-SMCC)であるN-スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロアート)、κ-マレイミドウンデカン酸N-スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ-マレイミド酪酸N-スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N-α-マレイミドアセトキシ)-スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル-6-(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノアート(SMPH)、N-スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)-ブチラート(SMPB)、およびN-(p-マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)が含まれる。ハロアセチルに基づく部分を含む架橋試薬には、N-スクシンイミジル-4-(ヨードアセチル)-アミノベンゾアート(SIAB)、N-スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N-スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)、およびN-スクシンイミジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)が含まれる。
【0038】
非開裂可能リンカーを形成する硫黄原子を欠いた他の架橋試薬も本発明の方法で使用できる。そのようなリンカーは、例えばジカルボン酸に基づく部分から得ることができる。典型的な非開裂可能リンカーは米国特許出願公開第2005-0169933 A1号に詳細に記載されている。
【0039】
いくつかの態様において、作用物質および抗体を連結するのにヒドラジド、マレイミドもしくはアミドの化学的性質が使用される。そのような化学的性質は、例えばフィコエリスリンを抗体に連結するのに有用である。
【0040】
III.精製
本発明は、免疫複合体および非複合免疫複合体成分(例えば非複合抗体および非複合作用物質)が混合モード支持体に結合しており、続いて免疫複合体が非複合成分から精製されるように溶出されるような、免疫複合体を「結合-溶出」モードで精製するための方法を提供する。本明細書中の本発明に関連する「結合-溶出モード」とは、標的タンパク質(例えば免疫複合体)および所望しない混入物質(例えば非複合成分)の両者が混合モードクロマトグラフィー支持体に結合するような緩衝液の条件が確立されるクロマトグラフィーの操作手段を指す。免疫複合体の他の成分からの分画は、成分および免疫複合体が支持体から別々に溶出するように条件を変化させることで、続いて達成される。
【0041】
A.固体支持体への吸着
本発明に従って、免疫複合体および非複合成分が吸着(本明細書において「結合」とも呼ばれる)できる条件下で、免疫複合体および非複合成分を含む混合物を混合モード支持体に接触させる。
【0042】
免疫複合体混合物と混合モード支持体の接触に備えて、任意で、カラム内部の化学的環境を平衡化する。これは一般に、適切なpH、電導度、および他の関連する変数を確立するために平衡化緩衝液をカラムに通過させることで成し遂げられる。本発明の限定を意図しない例で、いくつかの態様において、支持体は5.5〜11の間のpH、例えば5.5〜7、例えば6〜6.5で、任意で例えば100〜800mMから、例えば3〜600mM、例えば400〜550mMのリン酸緩衝液(例えばNaPO4)とともに、任意で混合モード支持体がCHTもしくはCFTを含んで、平衡化される。
【0043】
いくつかの態様において、任意で、本発明を実施できる前にカラム平衡化緩衝液に適合した条件に免疫複合体混合物を平衡化する。
【0044】
支持体上に添加された免疫複合体の全部が必ずしも支持体に結合するわけではない。したがって、一部の免疫複合体は最初の添加過程で失われ得る。免疫複合体の支持体への結合は、理想的には添加した免疫複合体の最小限のフロースルーをもって達成される。本発明者らは、添加された材料のフロースルーの減少を達成し、これによりリン酸緩衝システムを使用する場合の収率を増加させる1つの手段は、添加の間のリン酸緩衝液濃度を(例えば1〜50mM、例えば1〜20mMもしくは1〜10mMに)低下させることであることを見出した。任意で、緩衝能は第二の緩衝液によって補足できる。いくつかの態様において、第二の緩衝液は2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)および他の一般に「Good」緩衝液(Good, N.E. et al, Biochemistry, 5, 467-477 (1966))と呼ばれるものからなる群より選択される。さらに、実施例において説明されるように、pHを例えば5.5〜6.5、例えば約6もしくは約6.5に低下させることで、添加の間の免疫複合体のフロースルーをさらに減少させることができる。このpHは、例えばCFTとともに使用できる。
【0045】
様々な混合モードクロマトグラフィー媒体が市販されており、その任意のものを本発明の実施に使用できる。市販例はセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)もしくはセラミックフルオロアパタイト(CFT)、MEP-Hypercel(商標)、Capto-MMC(商標)、Capto-Adhere(商標)、Capto-S(商標)、Capto-Q(商標)、およびABx(商標)を含むが、それらに限定されない。
【0046】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は陰イオン交換および疎水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はMEP-Hypercel(商標)を含むが、それに限定されない。
【0047】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は陽イオン交換および親水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はCapto-S(商標)を含むが、それに限定されない。
【0048】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は陰イオン交換および親水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はCapto-Q(商標)を含むが、それに限定されない。
【0049】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は陽イオン交換、陰イオン交換、および疎水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はABx(商標)を含むが、それに限定されない。
【0050】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は水素結合およびπ-π結合の可能性を伴った陰イオン交換ならびに疎水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はCapto-Adhere(商標)を含むが、それに限定されない。
【0051】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体は水素結合およびπ-π結合の可能性を伴った陽イオン交換および疎水性相互作用官能性の組合せを利用する。そのような支持体の例はCapto-MMC(商標)を含むが、それに限定されない。
【0052】
本発明は、充填層カラム、混合モード支持体を含む流動/膨張層カラム、および/または混合モード支持体が抗体調製物と一定期間混合されるバッチ操作において実施してもよい。
【0053】
いくつかの態様において、混合モードクロマトグラフィー支持体はカラムに充填されている。
【0054】
混合モード支持体は、調製のための適用を支持するのに必要な任意の大きさのカラムに充填できる。特定の適用の要件に応じてカラムの直径は1cm未満から1メートルを超える範囲に及んでいてよく、カラムの高さは1cm未満から30cmを超える範囲に及んでいてよい。
【0055】
当然のことながら、本発明は上記の高さおよび直径に限定されない。適切なカラムの大きさは当業者によって決定され得る。
【0056】
B.非複合抗体および作用物質の洗浄
支持体に結合した非複合成分(非複合抗体もしくは非複合作用物質)を実質的に除去するために、添加に続いて1つ以上の洗浄工程が起こり得る。「実質的に除去する」とは、作用物質の少なくとも75%(任意で、少なくとも85%、95%、もしくは95%以上)が支持体から除去されることを意味する。結合した免疫複合体が支持体に結合したままであるような条件が選択される。いくつかの態様において、結合した免疫複合体の少なくとも過半数は洗浄条件で除去されない。任意で、結合した免疫複合体の少なくとも50%、65%、75%、85%、もしくは90%以上が洗浄工程の間に結合したままである。典型的な洗浄条件は、例えば添加工程における塩濃度に比べて溶液中の塩濃度を増加させることを含み得る。例えば、NaCl、KCl、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、もしくは他の可溶性塩の量を最初の結合条件に比べて増加させることができ、これにより非複合成分が支持体から除去される。例えば、任意で緩衝液濃度を変化させずに、任意で比較的低くする(例えば50mM未満、例えば5〜20mM)一方で、塩(NaClを含むが、それに限定されない)の量を例えば少なくとも0.75M、例えば1〜3M、0.75〜1.5M、例えば約2Mに(勾配的もしくは段階的に)増加させることができる。任意で、いくつかの態様において、洗浄のpHは5.5〜11の間、例えば5.5〜8.5、例えば6〜6.5、例えば約6である。
【0057】
洗浄工程で塩を導入するとpHを減少させられるため、塩によって比較的影響を受けにくい第二の緩衝液成分も洗浄工程に含まれ得る。例えば、塩濃度を増加させる一方で本質的に一定のpHを維持するために、MES、HEPES、MOPSもしくは他の「Good」緩衝液(Good, N.E. et al, Biochemistry, 5, 467-477 (1966))を洗浄に含めることができる。いくつかの態様において、第二の緩衝液の濃度は例えば1〜200mM、例えば20〜40mM、20〜60mM、30〜50mM等である。
【0058】
任意で、洗浄工程に続いて、溶出の前に支持体と接触した溶液を再平衡化するためのさらなる工程を含めることができる。
【0059】
C.溶出
非複合成分の除去に続いて、免疫複合体を溶出させるために再度条件を変化させることができる。溶出条件は、例えばイオンおよび/または緩衝液の濃度を増加させ、これにより支持体から免疫複合体を競合させることを含み得る。例えば、リン酸塩に基づく緩衝液システムでは、いくつかの態様において、緩衝液の濃度は例えば少なくとも100mM、例えば100〜900mM、例えば200〜600mM、例えば300〜500mMに引き上げられる。任意で、pHはpH 5.5〜11の間、例えば5.5〜8.5、例えば6〜6.5の間に維持される。
【0060】
任意で、さらなる塩(例えば洗浄工程で使用される塩等)は溶出緩衝液には含まれない。例えば、いくつかの態様において、塩濃度は洗浄工程の塩濃度よりも低い。いくつかの場合において、免疫複合体溶出工程における塩濃度は、先の洗浄工程よりも少なくとも50%低い。
【0061】
いくつかの態様において、支持体に結合した免疫複合体の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、もしくはより多くが溶出工程で溶出される。
【0062】
結果として得られた複合体の純度は正確な条件に従って変化する。いくつかの態様において、免疫複合体産物は少なくとも80%、90%、95%、もしくは98%純粋である。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は本願発明を例証するために提供されるものであり、本願発明を制限するものではない。
【0064】
IgG-フィコエリスリン複合体(「GAH-PE」と表す)の精製のための効果的で拡張可能なCFTに基づく方法が開発された。CFTクロマトグラフィーの工程は従来の勾配溶出法を排除するため、利用者に使いやすく合わせられている。この単一工程の過程における効果的な洗浄および単純なリン酸塩工程の溶出の組合せによって、95%を超える純度のGAH-PE複合体の高収率プールが生成される。カラム添加容量および他の過程のパラメーターの決定に必要な材料を利用できる場合には、最終過程をさらに定義することができる。開発の進行は3つの段階、すなわち提供された精製GAH-PEを用いた早期段階の開発、CFTへの移行段階、ならびに洗浄および溶出条件の定義に焦点を当てた最終段階を含む。データは、CFTおよび/またはCHTが免疫複合体をそれらの非複合前駆体から精製するための有用な汎用ツールであることを示している。
【0065】
材料および方法
IgG-フィコエリスリン複合体:100mM クエン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH 6.0を含む複合反応混合物中のGAH-PE。フィコエリスリンにはヒドラジン官能基が組み込まれ、IgGにはケトンが組み込まれ、そして活性分子は2:1のIgG:PE比でpH 6.1において3時間連結された。
【0066】
精製IgG-フィコエリスリン複合体:50mM NaPO4、0.15M NaCl、0.1% アジ化ナトリウム、pH 7.4中のGAH-PE。
【0067】
ヤギIgG(「GAH」):100mM NaPO4、0.15M NaCl、pH 7.2中のGAH。
【0068】
クロマトグラフィー樹脂:
セラミックフルオロアパタイトCFTタイプII(40μm)、
セラミックハイドロキシアパタイトCHTタイプI(40μm)。
【0069】
CFTカラム:0.5×5.1cm
【0070】
CHTカラム:0.5×5.1cm
【0071】
高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)カラム:Zorbax GF450(9.4×250mm)、Agilentの製品番号884973-902。ガードカラム(4.6×12.5mm)、Agilentの製品番号820950-911。
【0072】
Bio-Gel P6スピンカラム:Bio-Radのカタログ番号732-6221。
【0073】
クロマトグラフィーシステム:Bio-Rad LaboratoriesのBioLogic DuoFlow QuadTec 10 system。
【0074】
結果および考察
10mM NaPO4、pH 7で最初に平衡化しておいたCFTカラム(0.5×5.1cm)上に添加する前に、リン酸濃度を10mMに低下させるために精製GAH-PEを水で5倍に希釈した。その後、20カラム体積を超えて2M NaClまで直線勾配によりGAH-PEを溶出させた。図1に示すように、後にSDS-PAGE解析で確認されたように(データは示さず)、添加の間にGAH-PEはカラムを通過した。NaCl勾配による溶出の間にGAH-PEは見出されなかった。NaCl勾配による溶出の最初に、電導度が上昇し始めた際に6.9から6.1へのpH下落が観察された。これは恐らくナトリウムイオン濃度が増加したことでCFT表面上の陽子が緩衝液中に置換されたためである。
【0075】
CHTカラムを用いて上記実験を繰り返した(図2)。ほぼ同一の結果が得られた。pH下落は6.8から6.1までととても類似していた。
【0076】
CFTカラム上に添加する前に、リン酸濃度を10mMに低下させるためにヤギIgG(GAH)を水で10倍に希釈した。添加の間はGAHが保持され、NaCl勾配による溶出の間に鋭いピークとして溶出されたことが図3に示されている。GAHは勾配の初期に溶出しているため、この条件下でのGAHのCFTへの結合は弱い。
【0077】
GAHを同様に希釈し、CHTカラムに添加した(図4)。添加の間は、GAHはカラムに保持され、幅広いピークとして溶出された。このことは、GAHがCFTよりもCHTに対して、より高い結合親和性を有することを示している。
【0078】
GAH-PEならびにGAHのCFTおよびCHT上での挙動は、GAH-PEおよびGAHを添加フロースルー中のGAH-PEと分離でき、保持されたGAHがNaCl勾配によって溶出することを示していた。
【0079】
1つの実験において、複合反応混合物は100mMクエン酸ナトリウムを含んでいたが、これはCHTおよびCFTの安定性ならびにカラム結合能に有害であることが知られている。したがって、複合混合物は最初にクエン酸ナトリウム濃度を10mMに低下させるために10倍に希釈された。CHTおよびCFTカラム上に添加する前に、リン酸ナトリウム濃度も10mMに調整された。複合反応混合物におけるGAH-PE精製のためのCFTクロマトグラムが図5に示されている。添加フロースルーに大きなピークがある。NaCl勾配による溶出の間に比較的小さなピークが提示されている。フロースルーピークおよび溶出ピークのHPSEC解析によって、GAH-PE、GAH、および他の混入物質が添加の間にカラムを通過し、少量のGAHが保持され、そして続いてNaCl勾配によって溶出されることが示されている(図6)。CHTを実験で使用した場合にも同じ結果が得られた(データは示さず)。GAHがカラムを通過した原因は、添加物中の10mMリン酸ナトリウムに加えて、10mMで残存するクエン酸ナトリウムの存在であると考えられた。
【0080】
実験を繰り返す前に、クエン酸ナトリウムを除去するためにP6スピンカラムを用いて複合反応混合物を10mM NaPO4、pH 7に交換した。GAHのCFTカラムへの結合親和性は改善されたが、ある程度の量のGAHが添加フロースルーの最後にまだ見出された(データは示さず)。開発の早期段階で観察されたのとは異なるGAHの挙動は、複合反応のためにGAH上の第一級アミノ基をスクシンイミジル4-ホルミルベンゾエートで修飾したためかもしれない。
【0081】
GAHのCFTカラムへの結合親和性を改善するために、2mM NaPO4、50mM MES、pH 7への緩衝液交換を通してリン酸ナトリウム濃度を2mMに低下させた。CFTクロマトグラムは、溶出ピークが右に移動してより幅広くなり、そして500mM NaPO4による比較的大きなストリップピークがあることを示している(図7)。HPSEC解析は、添加の間は少量のGAH-PEおよびGAHのみがカラムを通過し、大きなストリップピークの主要成分はGAH-PEであったことを示している(図8)。このことは、2mM NaPO4、50mM MES、pH 7中ではGAH-PEおよびGAHの両者がCFTカラムに結合すること、およびGAH-PEがいったんカラムに結合するとCFTに対してGAHよりもかなり高い親和性を有することを示している。
【0082】
添加の間にGAHを保持する一方でGAH-PEがカラムを通過できるように、リン酸ナトリウム濃度を増加させた。これにより、5mM NaPO4、50mM MES、pH 7を用いた実験となった(図9)。クロマトグラムは、溶出ピークがより鋭いことを除いて図7と類似して見える。HPSEC解析は、添加の間にGAH-PEおよびGAHの両者がカラムを通過すること、ならびにストリップが75%より高い純度のGAH-PEを含み、GAHを含まないことを示している(図10)。
【0083】
別の実験には、リン酸ナトリウム濃度を10mMに維持する一方でpHを7から6に低下させることが含まれた。pH 6.5より低いとCHTは不安定なため、CFTが唯一の適切な選択肢であり、したがって作業はCFTだけを用いて継続された。図11に示されるように、添加フロースルーピークは図9のものよりもかなり小さい。NaCl勾配の最初に0.9 pH単位のpH下落が生じる。溶出ピークは図9のものよりもかなり大きい。CFT試料のHPSEC解析は、添加の間はGAH-PEおよびGAHが保持されること、保持されたGAHおよび他の混入物質はNaCl勾配の間に溶出されること、ならびに500mM NaPO4によって外れるまでGAH-PEはカラムに結合したままであること、およびそのストリップ中の純度は95%より高いことを示している。
【0084】
過程を単純化する目的で、保持されたGAHおよび他の混入物質を除去するためにNaCl勾配を高塩工程洗浄に変えた。高濃度のNaClがCFTに供されたときに生じるpH下落を最小限とするために、1M NaClに加えて様々な濃度のMESをコバッファー(co-buffer)として10mM NaPO4とともに洗浄液に加えた。異なる洗浄液を用いた一連の模擬実験の後に、それらのクロマトグラムを重ね合わせた。20、30、40、50、および60mMのMESの存在下では、pH下落はそれぞれ0.77、0.76、0.76、0.75、および0.74 pH単位であることが図13に示されている。MESの非存在下でのpH下落が0.9 pH単位であるのに比べて(図11)、MESはpH下落およびその持続時間の軽減を助けるが、その効果は劇的ではない。pH下落の軽減に関して20mMおよび60mMの間にほとんど差はない。しかしながら、洗浄液に40mM以上のMESを加えた場合には、pH下落の持続時間は大きく減少するようである。したがって、高塩洗浄液を10mM NaPO4、40mM MES、1M NaCl、pH 6に設定した。
【0085】
GAH-PEを効果的に捕獲することを確実とするために、平衡化緩衝液を2mM NaPO4、50mM MES、pH 6に修正した。溶出緩衝液は500mM NaPO4の代わりに300mM NaPO4となった。溶出後にカラム中にいくらかのGAH-PEが残存しているかを判断するために、より強いストリップ緩衝液である800mM KPO4を一時的に使用した。溶出プールにおけるNaCl濃度をより良く制御するために、高塩洗浄および溶出の間に平衡化緩衝液によるさらなる洗浄を挿入した。
【0086】
上記の修正を伴ったCFTの実行が図14に提示されている。予想されたとおり、添加の間のフロースルーピークは小さく、高塩洗浄の間に大きいピークが出現する。高塩洗浄ピークのテーリング部分は基線には戻らず、洗浄が不十分であることを示している。平衡化緩衝液での洗浄の間に6.1から7へのpH急増を伴う小さいピークがある。このpHの増加は、溶液からCFTの表面上に陽子を押し出すNaCl濃度の減少によるものである。溶出ピークは高塩洗浄ピークに比べて驚くほど小さい。0.8M KPO4によるストリップピークはとても小さく、300mM NaPO4によってGAH-PEが効果的に溶出されることを良く示している。CFT試料のHPSEC解析の結果を図15に示す。添加物中のGAH-PEピークの大きさはGAHピークのものと近く、これはGAH-PEおよびGAHがCFTから同等に良く回収された場合には、溶出ピークの大きさは高塩洗浄ピークのものから大きく外れるべきでないことを示唆している。添加フロースルー中にはGAH-PEおよびGAHは見出されない。GAHおよび混入物質の大半は高塩洗浄中に出現する。保持されたGAH-PEのいくらかは、平衡化緩衝液による洗浄中に見出される。NaCl濃度の減少による6.1から7へのpH急増によって、GAH-PEのいくらかが溶出する。溶出プールのGAH-PEの純度は95%より高い。0.8M KPO4によるストリップは、300mM NaPO4による溶出の後にはカラム中にGAH-PEがほとんど残っていないことを裏付ける。
【0087】
上記の観察に基づいて、CFT操作に対していくつかの修正を行った、高塩洗浄の持続時間を延長し、平衡化緩衝液による洗浄を排除した。当初のストリップ緩衝液である500 mM NaPO4を0.8M KPO4の代わりとする。新しいCFTクロマトグラフィー法は以下のとおりであった:
前平衡化(Pre-equilibration):300cm/時で5カラム体積の500mM NaPO4、pH 6.5
平衡化:5カラム体積の2mM NaPO4、50mM MES、pH 6
添加:前もって平衡化緩衝液に交換された複合反応混合物中の約0.5mgのGAH-PE複合体(注記:添加はまだ最適化されていない)
洗浄:10カラム体積の10mM NaPO4、40mM MES、1M NaCl、pH 6
溶出:6カラム体積の300mM NaPO4、pH 6.5
ストリップ:5カラム体積の500mM NaPO4、pH 6.5
サニタイゼーション:5カラム体積の1N NaOH
保存:5カラム体積の0.1N NaOH
【0088】
更新されたCFT実行のクロマトグラムを図16に示す。CFT試料のHPSEC解析の結果を図17に示す。添加物中のGAH-PE含量が以前の実行におけるものよりもかなり低いことを除けば、すべての結果は予想どおりである。考えられる理由は、緩衝液交換の前にGAH-PE複合反応混合物をさらに遠心したことによって、いくらかの沈殿したGAH-PE複合体が除去されるというものである。溶出プール中のGAH-PEの純度は95%よりも高い。CFT試料のSDS-PAGE解析を図18に示す。添加フロースルー中にGAH-PEが存在しないことはレーン3および11に裏付けられている。レーン4(高塩洗浄)は、IgGの標準的な分子量であるほぼ150kdの大きくて濃いバンドが存在することを示している。レーン2(CFT添加物)とは異なり、試料を大量に添加してさえも、レーン4には150kdを超える少数のとてもかすかなバンドしか存在しない。このことは、高塩洗浄によってGAHは除去されるが、GAH-PEにはほとんど影響がないことを示している。レーン5(ストリップ)および6(1N NaOH)ではGAH-PEの意味のある検出はされず、これはGAH-PEがカラムから良く回収されることを示している。溶出プールのプロファイルは、非還元条件(レーン7および8)ならびに還元条件(レーン15および16)における精製GAH-PE標準物質のものととても似ている。
【0089】
本明細書に記載された実施例および態様は単に例証を目的としており、それを踏まえた様々な修正もしくは変更が当業者に示唆され、本願の精神および範囲ならびに添付された特許請求の範囲の領域の中に含まれるべきであることが理解される。本明細書で引用されたすべての刊行物、特許、および特許出願は、その全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非複合抗体および非複合作用物質から抗体-作用物質複合体を精製するための方法であって、以下の工程を含む方法、
(a) 複合体、非複合抗体、および非複合作用物質が混合モードクロマトグラフィー支持体に結合できる条件下で、複合体、非複合抗体、および非複合作用物質の混合物を支持体に接触させる工程;
(b) 少なくとも複合体の過半数が支持体に結合したままである一方で、非複合抗体および非複合作用物質が支持体から実質的に除去されるように支持体を緩衝液に接触させる工程;および、その後
(c) 複合体を支持体から溶出させ、これにより非複合抗体および非複合作用物質から抗体-作用物質複合体を精製する工程。
【請求項2】
工程(b)の緩衝液が工程(a)の混合物に比べてより高い塩濃度を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
塩濃度が0.5および4Mの間である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
塩がNaClである、請求項2または3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
工程(c)が工程(b)の濃度に比べて緩衝液の濃度を増加させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
工程(c)が工程(b)の塩濃度に比べて塩濃度を減少させることを含む、請求項1または5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
工程(a)の混合物のpHが約pH 5.5およびpH 11の間である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
工程(b)の緩衝液のpHが約pH 5.5およびpH 11の間である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
溶出の工程が、pHが約pH 5.5およびpH 11の間である溶出緩衝液に支持体を接触させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
緩衝液がリン酸緩衝液である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
作用物質が標識、ホルモン、細胞毒性物質、および放射性同位体からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
標識が蛍光標識である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
蛍光標識がフィコエリスリンである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
混合モード支持体がセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)もしくはセラミックフルオロアパタイト(CFT)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
CHTがハイドロキシアパタイトCHTタイプI、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、40ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、80ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、40ミクロン;およびハイドロキシアパタイトCHTタイプII、80ミクロンからなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
CFTがCFTタイプI、40ミクロンおよびCFTタイプII、40ミクロンからなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
混合モードクロマトグラフィー支持体に接触した複合体、非複合抗体、および非複合作用物質の混合物。
【請求項18】
作用物質が標識、ホルモン、細胞毒性物質、および放射性同位体からなる群より選択される、請求項17記載の混合物。
【請求項19】
標識がフィコエリスリンである、請求項18記載の混合物。
【請求項20】
混合モード支持体がセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)もしくはセラミックフルオロアパタイト(CFT)を含む、請求項17記載の混合物。
【請求項1】
非複合抗体および非複合作用物質から抗体-作用物質複合体を精製するための方法であって、以下の工程を含む方法、
(a) 複合体、非複合抗体、および非複合作用物質が混合モードクロマトグラフィー支持体に結合できる条件下で、複合体、非複合抗体、および非複合作用物質の混合物を支持体に接触させる工程;
(b) 少なくとも複合体の過半数が支持体に結合したままである一方で、非複合抗体および非複合作用物質が支持体から実質的に除去されるように支持体を緩衝液に接触させる工程;および、その後
(c) 複合体を支持体から溶出させ、これにより非複合抗体および非複合作用物質から抗体-作用物質複合体を精製する工程。
【請求項2】
工程(b)の緩衝液が工程(a)の混合物に比べてより高い塩濃度を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
塩濃度が0.5および4Mの間である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
塩がNaClである、請求項2または3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
工程(c)が工程(b)の濃度に比べて緩衝液の濃度を増加させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
工程(c)が工程(b)の塩濃度に比べて塩濃度を減少させることを含む、請求項1または5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
工程(a)の混合物のpHが約pH 5.5およびpH 11の間である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
工程(b)の緩衝液のpHが約pH 5.5およびpH 11の間である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
溶出の工程が、pHが約pH 5.5およびpH 11の間である溶出緩衝液に支持体を接触させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
緩衝液がリン酸緩衝液である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
作用物質が標識、ホルモン、細胞毒性物質、および放射性同位体からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
標識が蛍光標識である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
蛍光標識がフィコエリスリンである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
混合モード支持体がセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)もしくはセラミックフルオロアパタイト(CFT)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
CHTがハイドロキシアパタイトCHTタイプI、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、40ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプI、80ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、20ミクロン;ハイドロキシアパタイトCHTタイプII、40ミクロン;およびハイドロキシアパタイトCHTタイプII、80ミクロンからなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
CFTがCFTタイプI、40ミクロンおよびCFTタイプII、40ミクロンからなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
混合モードクロマトグラフィー支持体に接触した複合体、非複合抗体、および非複合作用物質の混合物。
【請求項18】
作用物質が標識、ホルモン、細胞毒性物質、および放射性同位体からなる群より選択される、請求項17記載の混合物。
【請求項19】
標識がフィコエリスリンである、請求項18記載の混合物。
【請求項20】
混合モード支持体がセラミックハイドロキシアパタイト(CHT)もしくはセラミックフルオロアパタイト(CFT)を含む、請求項17記載の混合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−525407(P2012−525407A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508634(P2012−508634)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/032724
【国際公開番号】WO2010/126979
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(507190880)バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/032724
【国際公開番号】WO2010/126979
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(507190880)バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド (25)
【Fターム(参考)】
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