説明

免疫調節ポリマー

【課題】IL-2分泌を誘導する、IL-10分泌を誘導する、T細胞を活性化する、特異的抗原に対するIgG抗体応答を抑制する、同種移植片生存を促進する、外科的手術後の癒着形成を減少させる、および宿主の膿瘍形成の素因となる手術、外傷または疾患に付随する膿瘍形成に対して保護するための方法および生成物の提供。
【解決手段】少なくともある最小距離だけ分離された少なくとも二つの反復電荷モチーフを有するポリマーであり、好ましくは双性イオン性非ポリサッカリドポリマーを局所的に投与することから成る方法。反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は好ましくは、少なくとも32Åの距離だけ分離されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫応答を調節するための免疫調節薬および方法に関している。本発明はまたT細胞を活性化する、IL-2を誘導する、細菌感染または混入に付随する膿瘍形成に対して患者を保護する、および患者の手術後の癒着形成を減少させるための方法にも関している。
【背景技術】
【0002】
腹膜内への結腸細菌の漏出に付随して普通に起こる合併症は、腹腔内敗血症および膿瘍形成である。膿瘍は手術過程の間、外傷または虫垂炎および癌のような疾患で起こるような、組織または体腔内での細菌傷害または混入に応答して形成される細菌、リンパ球、マクロファージ、多形核白血球およびフィブリンの被覆化された収集物である。細菌による暴露された体領域の侵襲は、腹膜後腔、骨盤または体の他の間隙または器官内の局在した領域で起こるであろう。感染された組織は、組織構造を通過できずおよび細胞壁のない細菌を効果的に一掃する抗生物質に対しては比較的影響を受けずに維持される。もし膿瘍が処置されずに残っていると、発熱を起こし、入院が長引き、およびある場合には死につながるであろう。もし膿瘍が破裂すると、その細菌内容物が腹腔内へ放出され、続いてこれらの患者において敗血症の再発が導かれる。現在、腹部手術が行われる場合、抗生物質が予防的にならびに術後のために投与される。しかしながら、一度膿瘍が形成されたら、時間がかかりおよび費用もかかるが、障害となる膿瘍を排膿するためのさらなる手術的介入が主たる手段である。
【0003】
単純に非常に多くの細菌株が膿瘍形成を起こすことができ、および一つのものに対する保護は他のものに対しては保護を示さないので、腹部内手術の場合におけるような膿瘍形成に対して患者を免疫することは実行不可能であった。さらに、ワクチン接種および続いての免疫応答の誘導が特定の細菌による膿瘍形成に対して十分な保護を与えるかどうかは未解決である。ヒトへの生または弱毒化細菌株投与に付随する問題および危険性も存在するので、多数の異なった細菌を含んでいるワクチンを製造する努力をさらに思いとどまらせている。
【0004】
細菌の被膜ポリサッカリドはヒトに対して病原性であるいくつかの細菌の表面を覆っていることが観察できる。ポリサッカリドは体液性抗体応答を惹起するT細胞非依存性抗原として特徴付けられている。多くのポリサッカリドは免疫原性であることが示されているが、いくつかはあっても弱い免疫原性のみである。
【0005】
バクテロイデス フラジリスBacteroides fragilis)は腹腔内膿瘍から単離された主たる真性嫌気性生物である。被膜ポリサッカリド複合体(CPC)は膿瘍形成を起こすB. フラジリスの一領域として同定されている。この炭化水素複合体はB. フラジリスの表面を覆っている。アジュバント(滅菌盲腸内容物および硫酸バリウム)存在下、単離された複合体単独で宿主免疫系と相互作用できて病理生物学的応答を惹起し、複合体が腹腔内に注射された個体で完全に形成された腹腔内膿瘍を生じる。研究は齧歯類モデルで実施され、B. フラジリスまたはそのCPCは腹腔内に注射された。無傷のB. フラジリスおよびCPC単独の両方とも腹腔内敗血症に関連した膿瘍形成を誘発した。
【0006】
B. フラジリスのCPCが、続いてのB. フラジリスによる感染および膿瘍形成に対して患者を免疫するのに使用できるかどうかが調べられた。”免疫性”および膿瘍形成は間接的に関連した免疫学的応答に起因するとは知られていないので、膿瘍形成を誘発するCPC単独の特性に基づいてこのことが可能であろうことは決して予測可能ではない。CPCが皮下に投与された場合、ラットモデルにおいて腹腔内CPC仲介膿瘍誘導に対する免疫学的保護を与えることが観察された。このポリサッカリド複合体による膿瘍形成に対する保護はT細胞依存性宿主応答により仲介されていると決定された。
【0007】
B. フラジリスかまたはCPCの皮下投与は、B. フラジリスまたはCPCの攻撃に続く膿瘍形成に対して動物を保護するには十分であったが、予想されていたように、他の細菌株に対しては免疫性を与えなかった。従って、それらは結腸に普通に観察される多くの生物体により起こされる膿瘍形成のための”ワクチン”としては使用されなかった。
【0008】
CPCは、AおよびBと称される二つの異なった高分子量ポリサッカリドから成っている。各々のポリサッカリドは、遊離アミノ、カルボキシおよびホスホナート基を含む珍しい構成糖を有する異なったオリゴサッカリド反復ユニットから成っている。ポリサッカリドAは平均のとれた陽性に荷電したアミノ基および陰性に荷電したカルボキシル基を含むテトラサッカリド反復ユニットを有する。ポリサッカリドBは遊離アミノ基および陰性に荷電したリン酸基を有する珍しい2-アミノ エチルホスホナート置換基を含んでいるヘキササッカリド反復ユニットを有する。ガラクツロン酸残基は追加の陰性に荷電したカルボキシル基を含んでいる。二つのサッカリド鎖間のイオン性相互作用はポリサッカリドAおよびBを高分子量CPC複合体へ固く結合している。複合体被覆モチーフは、試験された限りの全てのB. フラジリス株で保存されている形質である。
【0009】
最近、特定の構造モチーフを有するポリサッカリドが膿瘍誘導細菌の攻撃に対して動物を保護できることが発見された。米国特許第5,700,787および5,679,654号。好適にはポリサッカリドはB. フラジリスのポリサッカリドAに特徴的な電荷モチーフ反復ユニットのポリマーであり、モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ酸残基およびカルボキシル、ホスファート、ホスホナート、スルファートおよびスルホナートから成る群より選択される陰性に荷電した残基である。そのようなポリマーは”交差保護”を誘導できる。即ち、単一のポリマーが種々の細菌による膿瘍形成に対する保護を生み出すことができる。このポリマーは宿主に膿瘍形成の素因をつくる手術、外傷または疾患に関連する膿瘍形成に対する保護を誘導するために有用である。このポリマーの医薬製剤は腹腔内手術とともにまたは素因をつくる状態の提示により患者に投与される。
【0010】
従来の技術においてインターロイキン-10(IL-10)のようないくつかの型のサイトカインが膿瘍形成を阻止するための一般的な免疫調節薬として有用である一方、インターロイキン-2(IL-2)、腫瘍壊死因子およびインターフェロンのような他のサイトカインが膿瘍形成に関与している(そのような物質に特異的な抗体が膿瘍形成阻止を助けることができるので)ことが報告されている。米国特許第7,700,787号。
【0011】
外科手術後癒着は腹部、骨盤、婦人科、心胸、整形外科および脳神経外科手術の主たる合併症である。腹腔内の手術癒着は高死亡率に関係しており、致死的であろう。それらは腸閉塞および器官不全を生じさせる。米国単独で毎年約150万例の腹部手術が行われている。これらの手術の25から35パーセントで手術的癒着の発生が生じている。腸閉塞および器官不全を起こす癒着の修復はそれらを除くための再手術を必要とする。
【0012】
伝統的には、これらの癒着は操作的外傷および手術間の組織の乾燥を含む因子の組み合わせにより起こされると考えられてきた。これらの問題を改善するために試みられた多くの技術がこれまで報告されている。外科手術後癒着の形成を減少させることを目指した現在の臨床的方法は一般的に、癒着形成に関与するようになるであろう表面間に物理的障壁を作り出すことを意図し、手術部位内へ直接フィルムまたはゲルを置くことに頼っている。これらの方法は手術者にとっては扱いにくいものである。乾燥を最少にし、操作的外傷のいくつかを防ぐための緩衝剤として働かせるため、手術の前および間の手術領域の被覆にいくつかのポリマーの高度濃縮溶液が使用されてきた。この技術の例はGoldbergらによる米国特許第4,819,617号およびDe Belderらによる米国特許第4,886,787号に開示されている。使用された物質の中で優れていたのはポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、カルボキシメチルセルロースおよびタンパク質またはポリペプチド溶液のようないくつかの他のポリマーである。
【0013】
外科手術後癒着形成を減少させるために使用されてきた一つのポリマーはヒアルロン酸(HA)である。Goldbergらによる一連の特許、特に米国特許第5,140,016号は手術癒着を防止するための手段として、ヒアルロン酸溶液による手術部位での前処置使用を示している。Goldbergは手術癒着防止のために使用する場合に、0.01から0.6%(重量/容量)の濃度での高分子量HA(>500kDa)の希薄溶液が効果的であると開示している。約1500kDa分子量HAの0.01%溶液が、通常70%以上の癒着を生成するラット癒着モデルにおけるすべての重度な腹腔内癒着を効果的に防止する。
【0014】
膿瘍形成同様に、外科手術後癒着形成には炎症部位内でのフィブリン沈着が含まれる。癒着形成の正確な機構は未知であるが、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、特にTGF-β1の明らかな役割に多くの関心が寄せられている。TGF-βは炎症性応答の制御および線維芽細胞による細胞外マトリックスの生成において鍵となる因子である。TGF-βはまたインテグリンレセプターの合成を増加させ、それにより細胞および細胞外マトリックス間の相互作用を促進する。ラットの腹腔癒着モデルを使用し、Lucasらは抗TGF-β1を注射したラットは、対照IgG、抗TGF-β2または全特異的抗TGF-βを受け取ったラットよりも著しく低い癒着スコアを持っていたことを示した。Lucas, PA et. al. J Surg Res 65:135(1996)。
【0015】
Elsonによる米国特許第5,679,658号は手術癒着を防止する方法を開示しており、そこでは手術部位は有効量の共有結合で架橋されたN,O-カルボキシメチルキトサン(NOCC)ゲルで被覆され、手術操作後、非架橋NOCC溶液で洗浄されている。NOCCは、キトサン構造のグルコサミンユニットのアミノおよび一級ヒドロキシル部位両方のいくつかにカルボキシメチル置換基が存在しているポリマーである。Hayesによる米国特許第4,619,995号。NOCCは本分野では既知の通常の方法を使用して安定なゲルへ架橋できる。KrauseらはTGF-β活性の調節を反映する、癒着形成に対するNOCCの効果について可能性を調べた。Krause et. al. J Invest Surg 11:105(1998)。ラットの盲腸削除モデルを使用し、Krauseらは血清および腹腔内へ放出された細胞増殖阻害剤のレベルをNOCCが抑制したことを報告している。しかしながら、この活性はTGF-β中和抗血清およびTGF-β耐性細胞増殖アッセイの両方を使用して決定されたようなTGF-βの既知の形態とは異なっている。KrauseらはNOCCの少なくとも一つの潜在的効果にTGF-β阻害とは異なった機構が含まれていると結論している。
【0016】
これまでのことを考慮すると、膿瘍形成、手術癒着形成およびその他の免疫関連疾患を処置および/または防止するための組成物および方法を開発する必要性が未だに存在している。
【発明の概要】
【0017】
本発明はIL-2分泌を誘導する、Th1サイトカインプロフィールを産生するためにT細胞を活性化する、特定の抗原に対するIgG抗体応答を抑制する、同種移植片の生存を促進する、宿主膿瘍形成の素因となる手術、外傷または疾患に付随する膿瘍形成に対して保護する、および外科的手術後癒着形成を減少させるための方法および生成物に関している。本発明の方法は少なくとも二つの反復電荷モチーフを有するポリマー(本発明のいくつかの態様においてはポリペプチド)である免疫調節薬を使用することにより達成される。反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っている。少なくとも二つの反復電荷モチーフはお互いに最小距離だけ分離されている。それ故ポリマーの最小の長さは、いくつかのユニットで分離された一つの末端の一つの反復電荷モチーフおよび反対側末端の他方のモチーフを有するポリマー長である。このポリマーの最小の長さは10アミノ酸残基に相当する。
【0018】
本発明は一つの態様において医薬組成物を包含している。この態様の医薬組成物は少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン(kDa)未満のポリペプチド(ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも8アミノ酸残基の距離で分離されている)、および医薬として受容可能な担体である。別の態様では、少なくとも二つの反復電荷モチーフは少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40アミノ酸残基の距離だけ分離されている。
【0019】
本発明の別の態様は少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリペプチド(ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は介在配列により分離されており、その長さは少なくとも水溶液中で8アミノ酸長オリゴマーの末端を分離している最小距離に相当しており、介在配列は中性である)、および医薬として受容可能な担体の医薬組成物である。一つの態様において、ポリマーは混合ポリマーである。別の態様において、混合ポリマーはペプチド-核酸である。別の態様では、少なくとも二つの反復電荷モチーフは少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40アミノ酸残基の距離だけ分離されている。
【0020】
ポリマーおよびポリペプチドは反復電荷モチーフを有する限り、多くの異なったユニットの組み合わせから構成されていてもよい。一つの態様において、ポリマーまたはポリペプチドは非反復ユニットを有する。別の態様において、ポリマーまたはポリペプチドは反復ユニットを有する。ポリマーが反復ユニットを有する場合、反復ユニットは同一の反復ユニットでも、または同一ではない反復ユニットでもよい。
【0021】
ポリマーまたはポリペプチドは二つ以上の反復電荷モチーフを持っていてもよい。一つの態様においてポリマーまたはポリペプチドは少なくとも10反復電荷モチーフを有する。別の態様においてポリマーまたはポリペプチドは少なくとも15反復電荷モチーフを有する。さらに別の態様においてポリマーまたはポリペプチドは少なくとも20反復電荷モチーフを有する。
【0022】
反復荷電ユニット間の区域は、全体がまたは部分的に反復または非反復荷電ユニットから構成されているであろう。もしくは、反復荷電ユニット間の区域は、全体が中性ユニットから成る介在配列で構成されているであろう。
【0023】
反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷は隣接するユニット上に存在し、それ故中性アミノ酸により分離されていないであろう。別の態様において反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷は少なくとも一つの中性ユニットにより分離されている。別の態様において反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷は少なくとも五つの中性ユニットにより分離されている。
【0024】
本発明の一つの態様に従うと、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ酸部分は少なくとも115Åの距離だけ分離されている。別の態様において少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ酸部分は少なくとも155Åの距離だけ分離されている。好適な態様において少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ酸部分は少なくとも200Åの距離だけ分離されている。
【0025】
ポリマーがポリペプチドである場合、それは天然のポリペプチドでもまたは合成ポリペプチドでもよい。ポリマーはまた天然のものでも天然ではないものでもよい。一つの態様において、ポリペプチドは少なくとも一つの修飾アミノ酸を有する。別の態様において、ポリペプチドは少なくとも10の修飾アミノ酸を有する。さらに別の態様に従うと、ポリペプチドは1:1の陽性対陰性電荷比を有する。いくつかの態様においてポリマーがポリペプチドである場合、3〜7部のリジン(K)、1〜3部のグルタミン酸(E)、4〜7部のアラニン(A)、0.5〜2部のチロシン(Y)の相対モル比のK、E、AおよびY残基でポリマーは構成されていない。
【0026】
本発明に従うと、前記のならびに以下に記載するような免疫調節ポリマーは、IL-2分泌を誘導する、IL-10分泌を誘導する、Th1サイトカインを産生するためにT細胞を活性化する、および抗原特異的IgG抗体産生を抑制するような免疫特異的応答を誘導できた。また、本ポリマーは膿瘍形成の防止、IL-2応答性またはTh1応答性障害の処置、自己免疫疾患の処置または同種移植片生存の促進に有用であることも見いだされた。
【0027】
一つの態様において、インターロイキン2(IL-2)分泌を誘導するための方法は以下の工程を含んでいる:IL-2分泌細胞を、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する、50キロダルトン未満のポリマーのIL-2分泌誘導の有効量と接触させる、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、ポリマーは非反復ユニットを有する。
【0028】
別の態様において、インターロイキン2(IL-2)分泌を誘導するための方法は以下の工程を含んでいる:IL-2分泌細胞を、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する、50キロダルトン未満のポリペプチドのIL-2分泌誘導の有効量と接触させる、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも8アミノ酸残基の距離だけ分離されている。一つの態様において、ポリペプチドは反復ユニットから形成されており、ここで反復電荷モチーフは反復ユニットの少なくとも一部分である。別の態様において、少なくとも二つの反復電荷モチーフは少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40アミノ酸残基の距離だけ分離されている。
【0029】
別の態様において、本発明はIL-2分泌を誘導することによるIL-2応答性障害を処置するための方法である。本方法はIL-2応答性障害を有する患者に少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマーをIL-2分泌誘導に有効な量を投与する工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、患者は手術を受けるようには準備されていない。
【0030】
一つの態様において、ポリマーは前記新規医薬製剤の任意のポリマーである。別の態様において、ポリマーはポリペプチドである。別の態様に従うと、陽性に荷電した遊離アミノ部分は天然に存在する陽性に荷電したアミノ酸に由来する。好適には、陽性に荷電したアミノ酸はリジン(K)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)およびヒスチジン(H)から成る群より選択される。好適な陽性に荷電したアミノ酸はリジンである。好適には、陰性に荷電したアミノ酸はアスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)から成る群より選択される。陰性に荷電したアミノ酸の好適な例はアスパラギン酸である。
【0031】
ポリマーおよびポリペプチドは反復電荷モチーフを有する限り、多くの異なったユニットの組み合わせから構成されていてもよい。一つの態様において、ポリマーまたはポリペプチドは非反復ユニットを有する。別の態様において、ポリマーまたはポリペプチドは反復ユニットを有する。ポリマーが反復ユニットを有する場合、反復ユニットは同一の反復ユニットでも、または同一ではない反復ユニットでもよい。
【0032】
ポリマーまたはポリペプチドは二つ以上の反復電荷モチーフを持っていてもよい。一つの態様においてポリマーまたはポリペプチドは少なくとも10反復電荷モチーフを有する。別の態様においてポリマーまたはポリペプチドは少なくとも15反復電荷モチーフを有する。さらに別の態様においてポリマーまたはポリペプチドは少なくとも20反復電荷モチーフを有する。
【0033】
反復荷電ユニット間の区域は、全体がまたは部分的に反復または非反復荷電ユニットから構成されているであろう。もしくは、反復荷電ユニット間の区域は、全体が中性ユニットから成る介在配列で構成されているであろう。
【0034】
反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷は隣接するユニット上に存在し、それ故中性アミノ酸により分離されていないであろう。別の態様において反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷は少なくとも一つの中性ユニットにより分離されている。別の態様において反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷は少なくとも五つの中性ユニットにより分離されている。
【0035】
本発明の一つの態様に従うと、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ酸部分は少なくとも115Åの距離だけ分離されている。別の態様において少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ酸部分は少なくとも155Åの距離だけ分離されている。好適な態様において少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ酸部分は少なくとも200Åの距離だけ分離されている。
【0036】
ポリマーは合成または自然、天然または非天然その他のように任意の型のポリマーであろう。ポリマーは天然のユニット、または少なくとも一つの修飾された(即ち、化学的に修飾された)アミノ酸を有するポリペプチドのような化学修飾ユニットを有するであろう。一つの態様において、ポリペプチドは少なくとも10の修飾アミノ酸を有する。
【0037】
別の態様において、ポリマーは1:1の陽性対陰性電荷比を有する。
さらに別の態様に従うと、IL-2応答性障害はAIDS、癌、自己免疫疾患から成る群より選択される障害である。
【0038】
驚くべきことに、IL-2は膿瘍を発生する危険性がある患者において膿瘍形成に対する保護を誘導できることが本発明に従って発見された。これは患者に外来性IL-2またはIL-2誘導剤を投与することにより達成される。本発明以前は、IL-2は膿瘍形成に寄与するであろうと本分野では信じられていた。IL-2が実際に膿瘍誘導を予防するのを助けることが発見されたのは驚くべきことであった。
【0039】
従って、本発明の一つの態様は感染に付随する膿瘍形成に対しての保護を誘導するための方法である。本方法は、IL-2およびIL-2誘導剤から成る群より選択される化合物が膿瘍形成に対する保護を誘導するために有効量含まれている医薬製剤をそのような保護を必要としている患者に投与する工程を含んでいる。一つの態様において、IL-2誘導化合物は、活性化Th1細胞、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、抗CD-3抗体、酸化的化学物質、およびツカレソール(4[2-ホルミル-3-ヒドロキシフェノキシメチル]安息香酸)から成る群より選択される。
【0040】
前記のポリマーにより活性化されたT細胞は膿瘍を発生する危険性がある患者において膿瘍形成に対する保護を誘導できることが本発明に従って発見された。従って、本発明の一つの態様は感染に付随する膿瘍形成に対する保護を誘導するための方法を包含している。本方法は、少なくとも二つの反復電荷モチーフ有する50キロダルトン未満のポリマーが膿瘍形成に対する保護を誘導するために有効量含まれている医薬製剤をそのような保護を必要としている患者に投与する工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、ポリマーは非反復ユニットを有する。
【0041】
別の態様において本発明は感染に付随する膿瘍形成に対する保護を誘導するための方法であり、それは少なくとも二つの反復電荷モチーフ有する50キロダルトン未満のポリペプチドが膿瘍形成に対する保護を誘導するために有効量含まれている医薬製剤をそのような保護を必要としている患者に投与する工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも8アミノ酸残基の距離だけ分離されている。好適には、ポリペプチドは反復ユニットから形成されており、ここで反復電荷モチーフは反復ユニットの少なくとも一部分である。別の態様において、少なくとも二つの反復電荷モチーフは少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40アミノ酸残基の距離だけ分離されている。
【0042】
一つの態様において、膿瘍形成に対する保護を誘導するために有用な医薬製剤はIL-2を誘導する。本発明のこの特色の別の態様に従うと、膿瘍形成に対する保護を誘導するために有用な医薬製剤はIL-10を誘導する。
【0043】
保護を必要としている患者とは、膿瘍を発生する危険性を有する患者である。一つの態様において、医薬製剤は患者が膿瘍形成状態に暴露される前に患者に投与される。別の態様において、医薬製剤は患者が膿瘍形成状態に暴露された後に患者に投与される。さらに別の態様において、医薬製剤は手術を必要としている患者に投与される。別の態様において、医薬製剤は手術が行われている患者に投与される。
【0044】
医薬製剤は単独でまたは他の化合物と一緒に投与される。一つの態様において医薬製剤は、ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、シクラシリン、エピシリン、ヘタシリン、ピバンピシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、fルクロキサシリン、カルベニシリン、チカルシリン、アブロシリン、メツロシリン、ピペラシリン、アムジノシリン、セファレキシン、セファラジン、セファドキシル、セファゾリン、セフロキシム、アキセチル、セファマンドール、セフォニシド、セフォキシチン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフメノキシム、セフトリアキソン、モキサラクタム、セフォテタン、セフォペラゾン、セフタジドム、イミペネム、クラブラナート、チメンチン、スルバクタム、ネオマイシン、エリスロマイシン、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、バンコマイシン、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、アミノグリコシド、キノロン、テトラサイクリンおよびリファムピンからなる群より選択される一つまたはそれ以上の抗菌剤とともに与えられる。
【0045】
いくつかの態様においてポリマーはポリサッカリドであり、他の態様において非ポリサッカリドである。さらに別の態様において、ポリマーはペプチドであり、別の態様において非ペプチドである。
【0046】
前記のポリマーは外科的手術後癒着を発生する危険性がある患者において外科的手術後癒着形成に対する保護を誘導できることも本発明に従って発見されている。従って、本発明の一つの態様は外科的手術後癒着形成を減少させるための方法を包含している。本方法は少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する双性イオン性ポリマーが外科的手術後癒着形成に対する保護を誘導するために有効量含まれている医薬製剤をそのような保護を必要としている患者に投与する工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されている。
【0047】
手術部位での外科的手術後癒着形成を減少させるために有用な医薬製剤は、一つの態様においてIL-2を誘導する。本発明のこの特色の別の態様において、手術部位での外科的手術後癒着形成を減少させるために有用な医薬製剤はIL-10を誘導する。
【0048】
本発明の一つの態様は手術部位での外科的手術後癒着形成を減少させるための方法であり、それは少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する双性イオン性ポリマーが外科的手術後癒着形成減少させるために有効量含まれている医薬製剤を、そのような保護を必要としている患者の手術部位以外の場所に投与する工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されている。
【0049】
本発明の別の態様は、手術部位で起こっている外科的手術後癒着形成を減少させるための方法であり、それは少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する双性イオン性非ポリサッカリドポリマーが外科的手術後癒着形成に対する保護を生み出すために有効量含まれている医薬製剤を、そのような保護を必要としている患者の手術部位に局所的に投与する工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されている。
【0050】
本発明の別の態様は、外科的手術後癒着形成を減少させるための方法であり、それは少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満の双性イオン性ポリペプチドが外科的手術後癒着形成減少させるために有効量含まれている医薬製剤を、そのような保護を必要としている患者に投与する工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも8アミノ酸残基の距離だけ分離されている。好適には、ポリペプチドは反復ユニットから形成されており、ここで反復電荷モチーフは反復ユニットの少なくとも一部分である。別の態様において、少なくとも二つの反復電荷モチーフは少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40アミノ酸残基の距離だけ分離されている。
【0051】
本発明の別の態様は、外科的手術後癒着形成を減少させるための方法であり、それは少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する双性イオン性ポリサッカリドポリマーが外科的手術後癒着形成に対する保護を生み出すために有効量含まれている医薬製剤を、そのような保護を必要としている患者の手術部位に局所的に投与する工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており;およびポリサッカリドポリマーは約500キロダルトン未満の分子量を持っており;およびポリサッカリドポリマーはN,O-カルボキシメチルキトサンまたはその誘導体ではない。
【0052】
ある態様において、外科的手術後癒着形成を減少させるために有用な本発明のポリマーは少なくとも部分的に架橋でき、およびゲルを形成できる。別の態様において、外科的手術後癒着形成を減少させるために有用な本発明のポリマーは非架橋にでき、および溶液で使用できる。
【0053】
ある態様において、外科的手術後癒着形成を減少させるために有用な本発明のポリマーは約1.5キロダルトンから約50キロダルトンの分子量範囲であろう。別の態様において、外科的手術後癒着形成を減少させるために有用な本発明のポリマーは約50キロダルトンより大きく、約500キロダルトンより小さい分子量範囲であろう。さらに別の態様において、外科的手術後癒着形成を減少させるために有用な本発明のポリマーは約500キロダルトンに等しいまたはそれ以上から約5000キロダルトンの分子量範囲であろう。
【0054】
ある態様において、外科的手術後癒着形成を減少させるために有用な本発明のポリマーは患者体重kg当たり約1から10mgの範囲であろう。
外科的手術後癒着形成を減少させる必要がある患者とは、外科的手術後癒着を発生する危険性がある患者である。一つの態様において、医薬製剤は患者が外科的手術後癒着形成状態に暴露される前に患者に投与される。別の態様において、医薬製剤は患者が外科的手術後癒着形成状態に暴露された後に患者に投与される。さらに別の態様において、医薬製剤は手術を必要としている患者に投与される。別の態様において、医薬製剤は手術が行われている患者に投与される。
【0055】
別の態様に従うと、本発明はT細胞を活性化する方法である。本方法は抗原提示細胞存在下、IL-2分泌を誘導するために有効量の、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマーとT細胞を接触させる工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、およびポリペプチドは非反復ユニットを有する。
【0056】
別の態様において、本発明はT細胞を活性化する方法であり、該方法は抗原提示細胞存在下、IL-2分泌を誘導するために有効量の、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマーとT細胞を接触させる工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも8アミノ酸残基の距離だけ分離されている。好適には、ポリペプチドは反復ユニットから形成されており、ここで反復電荷モチーフは反復ユニットの少なくとも一部分である。別の態様において、少なくとも二つの反復電荷モチーフは少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40アミノ酸残基の距離だけ分離されている。
【0057】
さらに別の態様に従うと、本発明はT細胞を活性化してTh1-細胞特異的サイトカインを産生させることによる、Th1-細胞応答性障害を処置するための方法である。本方法はTh1-細胞応答性障害を有する患者に、T細胞によるIL-2分泌の誘導に有効量の、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマーを投与する工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、および患者は手術を受けるために準備されていない。
【0058】
一つの態様において、Th1-細胞応答性障害はインシュリン依存性糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患および同種移植片拒絶から成る群より選択される。
【0059】
別の態様に従った本発明は、特異的抗原への不適切なIgG抗体応答により特徴付けられる障害を処置するための方法である。本方法は、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマーが、特異的抗原に対するIgG抗体応答を抑制するために有効量含まれている医薬製剤を、不適切なIgG抗体により特徴付けられる障害を有する患者に投与する工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、およびポリマーがポリペプチドの場合、3〜7部のリジン(K)、1〜3部のグルタミン酸(E)、4〜7部のアラニン(A)、0.5〜2部のチロシン(Y)の相対モル比のK、E、AおよびY残基でポリマーは構成されていず、および患者は手術を受けるために準備されていない。
【0060】
好適には、医薬製剤は日に一度患者に投与される。一つの態様において、医薬製剤は1:1の陽性対陰性電荷比を有する。
別の態様の本発明は、同種移植片生存を促進するための方法である。本方法は少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリペプチドが、同種移植片生存を促進するために有効量含まれている医薬製剤を、そのような処置を必要とする患者に投与する工程を含んでおり、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも8アミノ酸残基の距離だけ分離されており、およびポリマーがポリペプチドの場合、3〜7部のリジン(K)、1〜3部のグルタミン酸(E)、4〜7部のアラニン(A)、0.5〜2部のチロシン(Y)の相対モル比のK、E、AおよびY残基でポリマーは構成されていず、および患者は手術を受けるために準備されていない。一つの態様において、医薬製剤は同種移植片移植後、日に一度患者に投与される。別の態様において、少なくとも二つの反復電荷モチーフは少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40アミノ酸残基の距離だけ分離されている。
【0061】
本発明の各々の制限は、本発明の種々の態様を包含できる。従って、任意の一つの要素または要素の組み合わせを含んでいる本発明の各々の制限は、本発明の各々の態様に含ませることができる。
【0062】
発明の詳細な説明
本発明に従い、免疫調節ポリマーが生体内、試験管内および生体外で免疫細胞を操作するために、および免疫関連障害のいくつかの型を処置するために有用であることが発見された。本明細書に記載されている免疫調節ポリマーはIL-2生成を誘導し、IL-10生成を誘導し、T細胞を活性化し、および抗原特異的IgG抗体生成を抑制することにより免疫細胞機能を改変できる。免疫調節ポリマーである化合物の群は、好適には少なくとも二つの陽性に荷電した遊離アミノ基および少なくとも二つの陰性に荷電した基を有する。
【0063】
免疫系を調節する能力を仲介するポリマーに特別な構造特性が存在することが発見された。従来、B. フラジリス被膜ポリサッカリドA(PS A)の電荷モチーフを有するポリサッカリドは多くの型の細菌で膿瘍誘導をなくせることが示されている。今、これらのポリサッカリドは膿瘍形成を防止する能力に加えて他の免疫調節活性を有することが発見された。また、同様の電荷構造を有するポリペプチドおよびペプチド-核酸のような非ポリサッカリドを含んでいる他のポリマーも、ポリサッカリドと同様の様式で免疫機能を調節することができることが発見された。本発明の免疫調節非ポリサッカリドポリマーは、免疫調節ポリサッカリド(即ち、50kDaより大きい)より一桁小さくても(即ち、1.5〜5kDa)この機能を維持しているので幾分驚くべきことであった。
【0064】
これらのポリマー上の陽性におよび陰性に荷電された基の両方が、免疫系に影響するおよび膿瘍形成から動物を保護する能力を調節している。どちらかの電荷の全中和はポリマーの免疫調節能力を消滅させる。
【0065】
本発明は免疫調節ポリマーの医薬組成物およびその使用法に関している。一つの態様において本発明は、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマー、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Å介在配列により分離されており、ここで、介在配列は中性である、および医薬として受容可能な担体から成る医薬組成物である。
【0066】
別の態様において、本発明は少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリペプチド、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも8アミノ酸残基の距離だけ分離されている、および医薬として受容可能な担体から成る医薬組成物である。
【0067】
前記のポリマーは多くの型のポリマーを包含している。本明細書で使用される場合、”ポリマー”とは結合により連結された個々のユニットの直線状主鎖を有する化合物である。用語”主鎖”とは高分子化学の分野での通常の意味で与えられている。ポリマーは必要な電荷モチーフを有する限り、主鎖組成が不均一でもよく、従ってペプチド-核酸(核酸に結合されたアミノ酸を有する)のようなお互いに連結されたポリマーの任意の可能な組み合わせを含んでいる。本発明のポリマーは主鎖内に非高分子化合物を有するので、いくつかの場合、本分野で通常知られているようなポリマーとは異なっているであろう。例えば、本発明のポリマーは、二つの組のアミノ酸をお互いに連結する有機リンカーを含む領域を除いて、全体がアミノ酸で構成されているであろう。好適な態様において、ポリマーは主鎖組成が均一であり、例えば、ポリペプチド、ポリサッカリドおよび炭化水素である。本明細書で使用される場合、”核酸”とは、デオキシリボース核酸(DNA)またはリボース核酸(RNA)のようなヌクレオチドから成るバイオポリマーである。本明細書で使用される場合、ポリペプチドとは連結されたアミノ酸から成るバイオポリマーである。本明細書で使用される場合、ポリサッカリドとは連結された糖から成るバイオポリマーである。
【0068】
ポリマーは反復ユニットから構成されており、例えば、全ポリマーが反復電荷モチーフで構成されていてもよい。本明細書で使用される場合、”ユニット”とは本分野で知られている意味と一致しており、ポリマーの構成ブロックを示している、例えば、タンパク質のユニットはアミノ酸であり、ヌクレオチドのユニットは核酸であり、ポリサッカリドのユニットはモノサッカリドである等。反復ユニットで構成されているポリマーとは、ポリマー内に少なくとも二回見出されるユニットの組で全体が構成されているポリマーである。ポリマーの反復ユニットは同一のまたは同一ではない反復ユニットであろう。本明細書で使用される場合、”同一反復ユニット”とは、すべてのメンバーが同一の組成を持ちおよびユニットの他の組のメンバーと同一の順序で位置している、ポリマー内で反復されるユニットの組である。本明細書で使用される場合、”非同一反復ユニット”とは、メンバーのすべてが同一の組成を持っておらずおよび/またはユニットの他の組のメンバーと同一の順序では位置していない、ポリマー内で反復されるユニットの組である。すべてのメンバーが同一でない限り、非同一反復ユニットのいくつかのメンバーは他の組のメンバーと同一の順序および/または位置を持っていてもよい。本発明の文脈で使用される場合、非同一反復ユニットを有するポリマーは、すべて非同一反復ユニットを有するまたは同一および非同一反復ユニットが組み合わされたポリマーである。
【0069】
本発明のポリマーはまた非反復ユニットで構成されていてもよい。本明細書で使用される場合、非反復ユニットで構成されているポリマーとは全体が反復ユニットで構成されていないポリマーである。例えば、非反復ユニットで構成されているポリマーとはランダムポリマーであろう。”ランダム”ポリマーとは、反復電荷モチーフ以外は特異的なまたは同定可能な順序を持っていないユニットを有するポリマーである。非反復ユニットで構成されたポリマーは、部分的にランダムであるが、幾分の反復モチーフを含むハイブリッド反復ポリマーであってもよい。
【0070】
ポリマーは少なくとも二つの反復電荷モチーフを含んでいる。本明細書で使用される場合、”反復電荷モチーフ”とは陽性に荷電された遊離アミノ部分および陰性に荷電された部分から構成されるモチーフである。モチーフは二重に荷電された単一ユニットまたは多数のユニットから構成されており、一つのユニットは陽性電荷を持っており、および第二のユニットは陰性の電荷を有する。電荷が異なったユニットに存在している場合、ユニットはお互いに隣接していてもまたは中性ユニットにより分離されていてもよい。中性ユニットとは陽性および/または陰性電荷を持っていないユニットである。モチーフの荷電ユニットは任意の数の、しかし好適には10未満の中性ユニットにより分離されているであろう。反復電荷モチーフはポリマー内で任意の配向で存在しているであろう。例えば、中性ユニットにより分離された二つの反復電荷モチーフを有するポリマーは以下の配列を有するであろう:陽性電荷、最初に陰性電荷が続き、中性ユニットが続き、陰性電荷および最後に陽性電荷が続く。もしくは、ポリマーは以下の配列を有するであろう:陽性電荷、最初に陰性電荷が続き、中性ユニットが続き、陽性電荷および最後に陰性電荷が続く、など。
【0071】
本明細書で使用される場合、”陽性に荷電された遊離アミノ部分”とは一級アミンを意味している。本明細書で使用される場合、”陰性に荷電された部分”とは任意の陰性に荷電された基を意味しているが、好適にはカルボキシル基である。遊離アミノ基を有する陽性に荷電されたアミノ酸にはリジン(K)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)およびヒスチジン(H)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。陰性に荷電されたアミノ酸にはアスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0072】
免疫調節ポリマーは少なくとも二つの反復電荷モチーフを有するが、2以上の任意の数で持っていてもよい。例えば、ポリマー全体が反復電荷モチーフから構成されていてもよい。もしくは、ポリマーは2からポリマー全体が反復電荷モチーフから構成された場合の任意の数(それはもちろんポリマーのサイズに依存するであろう)の間の任意の数で構成されているであろう。ポリマーは例えば、少なくとも10、15、20、25、30、35その他の反復電荷モチーフを有するであろう。
【0073】
少なくとも二つの反復電荷モチーフは最小距離だけはお互いに分離されている。この最小距離は、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分間の距離として定量される。もしくは、距離は少なくとも二つの反復電荷モチーフの陰性に荷電された遊離アミノ部分間の距離として定量される。距離、32Åはポリペプチドの少なくとも8アミノ酸残基の距離に等しい。このサイズを有するポリマーは10アミノ酸残基に相当する最小サイズから構成されており、下記の構造を有する、式中、各々のXは反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分であり;各々のNは独立して中性または荷電ユニット(反復電荷モチーフを含むことができる)である:
XN8X
反復ユニットの陰性に荷電された部分はXの両側に存在するであろう。式XN8Xは全ポリマーであってもよいし、または大きなポリマーの副組であってもよい。少なくとも二つの反復電荷モチーフの荷電された遊離アミノ部分間の最少距離は、いくつかの好適な態様において、27、37、47その他のアミノ酸残基に等しい距離であり、各々20、40および50の最小サイズを有するポリマーを生成する。ポリマーはもちろん、追加の反復電荷モチーフを有することにより、または末端に他のユニットを有することでより大きいものであってもよい。
【0074】
反復電荷モチーフ間の領域は、反復電荷モチーフ、他のユニットまたはそれらの混合物で構成されているであろう。該領域は例えば、中性の介在配列であってもよい。介在配列はポリマーの他のユニットと同じ型でも、または完全に異なっていてもよい。例えば、それは非高分子有機残基であろう。
【0075】
本発明の免疫調節ポリマーは、前記の必要な電荷モチーフを持ち、および前記のIL-2誘導のような機能を実施する能力を有するポリマーである。免疫調節ポリマーのいくつかの特別な例が下記の実施例に提供されている。ここに提供された本発明の好適な免疫調節ポリマーの特別な例に加え、他の好適なポリマーがIL-2またはIL-10の分泌を誘導するその能力で同定および試験できる。例えば、ポリマーは化合物のライブラリー中でまたは最初から合成して同定できる。これらの化合物は次にその活性を標準IL-2またはIL-10アッセイで試験できる。そのようなアッセイは当業者にはよく知られている。例えば、実施例8に記載されているインビボRNA分析が使用され、またはタンパク質分析は実施例9に記載されている抗体または他の抗IL-2抗体を使用して実施されるであろう。さらに、T細胞を使用するインビトロアッセイも使用されるであろう。ポリマーを培養T細胞の集団に加えることができ、IL-2またはIL-10の産生が評価できる。
【0076】
本発明の免疫調節ポリマーは任意の起源から誘導される、例えば、動物または植物抽出物、細菌、真菌、海藻などのような天然源から単離および誘導されてもよいし、または合成的に製造されてもよい。例えば、ポリマーがポリペプチドの場合、ポリペプチド合成の分野では既知の通常の方法を使用して合成される。例えば、ランダムポリペプチドは米国特許第3,849,550号およびTeitelbaum et al., Eur J Immunol 1:242(1971)に記載されている方法に従って製造される。これらの参照文献はアミノ酸の製造を記載しており、チロシンのN-カルボキシ無水物、アラニン、ガンマ-ベンジルグルタメートおよびエプシロン-N-トリフルオロアセチルリジンがジエチルアミンを開始剤として用いてジオキサン中、室温で多量化され、続いて、氷酢酸中、臭化水素でグルタミン酸のガンマ-カルボキシル基が脱保護され、1Mピペリジンでリジン残基からトリフルオロアセチル基が除去される。特異的配列を有するポリペプチドおよび他のアミノ酸もまた本分野でよく知られている装置および方法論を使用して製造される。
【0077】
もしくは、ポリペプチドは組換え技術を使用して製造される。そのような方法は本分野ではよく知られており、多くの参照文献に記載されている。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989、を参照されたい。
【0078】
さらに、天然のユニットの化学修飾を使用して陽性および陰性電荷を発生させ、存在する(または合成の)ポリマーから製造される。例えば、ポリサッカリドを修飾するため、ポリマーは米国特許第5,700,787および5,679,654号に開示されている方法に従って化学的に修飾される。簡単には、天然のポリサッカリドユニットのN-アセチル残基が修飾できて遊離アミノ基が得られる。従って、陰性電荷およびN-アセチル基を有するユニットから構成されるポリサッカリド(黄色ブドウ球菌タイプ5被膜ポリサッカリドのような)は、各々の単量体反復ユニットが陽性および陰性荷電基の両方を有するように修飾できる。イミン部分(C=NH)を含むようなポリサッカリドに対して、遊離アミン基が当業者には既知の通常の化学技術により形成できる。一つの適した方法には水素化ホウ素ナトリウムの使用が含まれる。イミン基は水素化ホウ素ナトリウムで還元できて遊離アミン基が作り出される。これは蒸留水に溶解したポリサッカリドに過剰の5mgの水素化ホウ素を加え、室温で2時間撹拌することにより実施される。混合物は水に対して透析し、凍結乾燥する。
【0079】
ポリペプチドおよびアミノ酸の修飾では、ポリマーはまたWold, F., Posttranslational protein modification:Perspectives and prospectives, . C. Johnson(ED.), Posttranslational Covalent Modification of Proteins, New York;Academic, 1983, pp. 1-12、に記載されている方法に従って化学的に修飾される。
【0080】
本発明に従った有用なポリマーはまた化学薬品として得られるであろう。
本明細書中で用いる”合成ポリマー”は、化学的方法または組換え法により製造されるポリマーである。合成ポリマーは、配列が天然ポリマーと同一であってもよいが、必ずしも同一でなくてもよい。
【0081】
本明細書中で用いる”非天然ポリマー”は、組成または配列が天然ポリマーと異なるポリマーである。それは天然源からさらに修飾せずに単に単離するだけでは調製できないであろう。
【0082】
ポリマーの電荷比は、ポリマー内の正電荷と負電荷の数に依存し、ポリマーに応じて異なるであろう。場合により、ポリマーがポリペプチドであるとき、それは正と負の電荷比1:1をもつ。
【0083】
本発明により使用できるポリマーのサイズは、広範囲にわたる。特に非多糖ポリマーについては、1.2〜50 kDaのポリマーが一般的である。1態様において、ポリマーのサイズは7〜25 kDaである。ある態様においては、ポリマーのサイズは約50〜約500 kDaである。さらに他の態様においては、ポリマーのサイズは約500〜約5000 kDaである。
【0084】
本発明は、本発明のポリマーを1以上の医薬的に許容できるキャリヤーおよび所望により他の療法成分と共に含む、医療用の医薬組成物を提供する。たとえば本発明は、前記の免疫調節ポリマーをアジュバントまたは抗菌薬もしくは他の療法薬および医薬的に許容できるキャリヤーと組み合わせた医薬組成物にも関する。アジュバントについてはのちに詳述する。
【0085】
本発明に有用なポリマーを他の抗菌抗生物質と別個に、または抗菌抗生物質カクテルの形で投与することができる。抗菌抗生物質カクテルは、本発明に有用なポリマーと抗菌抗生物質および/または補充増強剤の混合物である。抗生物質を細菌感染症の処置に使用するのは一般的に行われる。この態様において、一般的な投与ビヒクル(たとえば錠剤、埋込み剤、注射液剤など)に前記ポリマーと抗菌抗生物質および/または補充増強剤の両方を含有させることができる。あるいは抗菌抗生物質を別個に投与することができる。
【0086】
抗菌抗生物質は周知であり、下記のものが含まれる:ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン(bacampicillin)、シクラシリン(cyclacillin)、エピシリン、ヘタシリン(hetacillin)、ピバンピシリン(pivampicillin)、メチシリン、ナフシリン(nafcillin)、オキサシリン、クロキサシリン(cloxacillin)、ジクロキサシリン(dicloxacillin)、フルクロキサシリン(flucloxacillin)、カルベニシリン(carbenicillin)、チカルシリン(ticarcillin)、アブロシリン(avlocillin)、メズロシリン(mezlocillin)、ピペラシリン(piperacillin)、アムジノシリン(amdinocillin)、セファレキシン、セファラジン、セファドキシル(cefadoxil)、セファクロル(cefaclor)、セファゾリン、セフロキシム・アキセチル(cefuroxime axetil)、セファマンドール(cefamandole)、セフォニシド(cefonicid)、セフォキシチン(cefoxitin)、セフォタキシム(cefotaxime)、セフチゾキシム(ceftizoxime)、セフメノキシン(cefmenoxine)、セフトリアキソン(ceftriaxone)、モキサラクタム(moxalactam)、セフォテタン(cefotetan)、セフォペラゾン(cefoperazone)、セフタジジム(ceftazidime)、イミペネム(imipenem)、クラブラネート(clavulanate)、チメンチン(timentin)、スルバクタム(sulbactam)、ネオマイシン、エリスロマイシン、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リコマイシン、バンコマイシン、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、アミノグリコシド類、キノロン類、テトラサイクリン類およびリファンピシン(参照:Goodman and Gilman's Pharmacological Basis of Therapeutics、第8版、1993、McGraw Hill社)。
【0087】
本発明のポリマーと組み合わせて使用する療法薬の厳密な量は、選択するポリマー、選択する用量および投与時期、投与様式、外科処置を考慮する場合はその性質、ならびに対象の特定の特性を含めた、さまざまな要因に依存するであろう。局所投与を行う場合、ごく少量(ナノグラム、おそらくピコグラム)が必要であることは理解されるであろう。特に、閾値量は免疫反応を好都合に高める任意量であるので、選択する厳密な量は多大な実験を行わなくても決定できる。送達様式に応じて、たとえばピコグラムないしミリグラム量が可能であるが、ナノグラムないしマイクログラム量が最も有用であると思われる。
【0088】
本発明の免疫調節ポリマーは、IL-2関連障害を処置し、動物を膿瘍誘発細菌による攻撃に対して保護し、術後外科癒着形成を軽減し、Th1関連障害を処置し、自己免疫疾患を処置し、同種異系移植片の生存を促進するのに有用である。
【0089】
したがって1態様において本発明は、インターロイキン2(IL-2)分泌を誘導する方法である。この方法は、IL-2分泌細胞をIL-2分泌の誘導に有効な量の本発明ポリマーと接触させることにより実施できる。ポリマーは好ましくは本明細書に記載する免疫調節ポリマーであるが、ただしこのポリマーは非反復単位をもつ。他の好ましい態様においてポリマーは、本明細書に記載する反復単位または非反復単位をもつ免疫調節多糖類である。
【0090】
本発明は一部は、少なくとも2つの正の基と少なくとも2つの負の基をもつ免疫調節ポリマーがIL-2を誘導するという知見に基づく。IL-2は当業者に周知のサイトカインであり、さまざまな生理作用を及ぼす。
【0091】
IL-2分泌細胞は、本発明の非多糖ポリマーによる活性化に応答してIL-2を産生する細胞である。これらの細胞にはTリンパ球が含まれ、これにはたとえばCD4+Th1およびCD4+Th2細胞ならびにCTL(CD8+)が含まれる。IL-2分泌細胞をIL-2分泌の誘導に有効な量の本発明ポリマーと接触させる。IL-2分泌の誘導に有効な量は、IL-2分泌を誘導する量である。たとえばIL-2分泌細胞が本発明ポリマーと接触した際にIL-2を分泌していない場合、そのポリマーがIL-2を誘導する能力がそのポリマーの有効量である。IL-2分泌細胞が既にIL-2を分泌している場合、そのポリマーがこの量を増加させる能力もそのポリマーの有効量である。
【0092】
IL-2を誘導するのが望ましい場合が多数ある。たとえばさまざまな実験アッセイのためにin vitroでIL-2を誘導することが望まれる。そのようなアッセイの一例は、IL-2誘導の遮断に有用な化合物を同定するためのアッセイである。他のアッセイには、種々の系に対するIL-2の作用を測定するための生理学的アッセイが含まれる。さまざまなex vivo/in vivo条件下でIL-2を誘導することも望まれる。たとえば、IL-2はエイズ、腎細胞癌および黒色腫の処置に有用であることが知られている。
【0093】
したがって本発明は、IL-2分泌の誘導によりIL-2関連障害を処置する方法をも含む。IL-2関連障害をもつ対象に、IL-2分泌の誘導に有効な量の本発明の免疫調節ポリマーを投与する。IL-2関連障害をもつ対象は、外科処置を受ける用意のない対象、およびエイズ、腎細胞癌または黒色腫を伴うか、または発症するリスクをもつ対象である。
【0094】
他の態様において本発明は、感染に伴う膿瘍形成に対する保護を誘導する方法を提供する。この方法は、そのような保護を必要とする対象に、膿瘍形成に対する保護を誘導するのに有効な量のIL-2、IL-2誘導性化合物または本発明の免疫調節ポリマーを含有する医薬調製物を投与する工程を含む。本発明によれば、外から投与するIL-2およびIL-2誘導性化合物が膿瘍形成に対する保護を誘導しうることが見出された。IL-2が膿瘍形成に関与する可能性を教示する先行技術からみて、この知見は特に予想外である。この教示は、IL-2特異性抗体が膿瘍形成の遮断に役立つという知見に基づくものであった。意外にも本発明によれば、IL-2およびIL-2誘導性化合物が実際にin vivoで膿瘍形成に対して保護することが見出された。
【0095】
本発明に用いるIL-2誘導性化合物は、IL-2分泌細胞によるIL-2分泌を誘導する任意の化合物である。これらの化合物には、スーパー抗原(たとえばSEA)、抗CD3抗体、酸化性化学物質、ツカレソル(tucaresol)および活性化T細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
本発明のポリマーは、初期工程としてIL-2の分泌を誘導するだけでなく、次いでIL-10の分泌も誘導する。いずれか特定の理論に拘束されることを意味するものではないが、本発明ポリマーの投与に伴ってみられるIL-10分泌は間接的であり、すなわちIL-2分泌の結果として生じる作用により仲介されると思われる。IL-10は当業者に周知のサイトカインであり、さまざまな生理作用を及ぼす。それは、IL-2産生を含めたTh1機能を阻害することが知られている重要なTh2サイトカインであると考えられる。IL-10は多数のタイプの炎症プロセス、たとえば敗血症、炎症性腸疾患および癒着を阻止することが他の者により示されている。さらに、IL-10は特定の自己免疫疾患、移植臓器対個体反応疾患(GvHD)および乾癬を阻止する。
【0097】
膿瘍形成に対する保護に有用な免疫調節ポリマーは、本明細書に記載する本発明の免疫調節ポリマーであるが、ただしこのポリマーは非反復単位をもつ。膿瘍形成に対する保護に有用な他の免疫調節ポリマーは、本明細書に記載する本発明の免疫調節ポリペプチドである。
【0098】
これらの化合物を、膿瘍形成に対する保護を誘導するのに有効な量で投与する。本明細書中で用いる、膿瘍形成に対する保護を誘導するのに有効な量は、単独で、または追加量もしくは追加の療法化合物と組み合わせて、特定の細菌の感染により生じる膿瘍の形成を阻止または予防する、IL-2、IL-2誘導性化合物または本発明の免疫調節ポリマーの量である。投与様式に応じて、1ナノグラム/kg〜100ミリグラム/kgの用量が有効であると思われる。好ましい範囲は500ナノグラム/kg〜500マイクログラム/kg、最も好ましくは1〜100マイクログラム/kgであると思われる。絶対量は、さまざまな要因(投与を予定外科処置または緊急外科処置と組み合わせるかどうか、併用処置、投与回数、ならびに年齢、身体状態、体格および体重を含めた各患者のパラメーターを含む)に依存し、ルーティン実験程度で決定できるであろう。一般に、最大量、すなわち確実な医学的判断による安全最高量を使用することが好ましい。
【0099】
本発明の医薬組成物の多数回投与が考慮される。本発明は多数回投与すると有効であることが示され、外科処置前3週間にわたって、外科処置前2週間にわたって、外科処置前1週間にわたって、最初の投与を外科処置の24時間前に、また細菌暴露後に投与した場合ですら投与できる。外科処置後に追加量を投与してもよい。細菌感染/汚染、およびその後の膿瘍形成に対する免疫反応を高める方式はいずれも採用できるが、最適な用量および投与方式は、膿瘍形成の発現を阻止するだけでなく、特定の細菌性生物または種々の細菌性生物による膿瘍形成に対する完全な保護をもたらすものである。そのポリマーを多数回送達するのに望ましい時間間隔は、当業者がルーティン実験程度で決定できる。
【0100】
したがって1態様において本発明は、対象において細菌性膿瘍形成を阻止するのが望ましい場合にはいつでも使用できる。これには、予定外科処置および緊急事態においてそのような状態を阻止するための予防処置が含まれる。予定外科処置には下記の腹部内外科処置が含まれる:結腸右半側切除術;結腸左半側切除術;S状結腸切除術;部分結腸切除術;全結腸切除術;腹腔鏡検または開放胆嚢切除術;胃切除術など。緊急外科処置には、下記の状態を矯正するためのものが含まれる:穿孔性潰瘍(十二指腸または胃);穿孔性憩室炎;閉塞性憩室炎;急性虫垂炎;穿孔性虫垂炎;鈍的腹部外傷;穿通性腹部外傷;膿瘍排膿のための2回目の手術など。本発明は、腹部内以外の外科処置、たとえば心臓外科処置および創傷感染の矯正のための外科処置にも有用である。本発明は、対象に膿瘍形成の素因をもたらす疾患、たとえば骨盤炎症性疾患、炎症性腸疾患、尿路感染症および大腸癌についても有用である。したがって本発明は実質的にいかなる組織または臓器の膿瘍にも有用であり、特にアクネなどの皮膚疾患が含まれるが、これらに限定されない。本発明に関連する当業者には、本発明が有用である状態および処置の範囲が認識されるであろう。本明細書中で用いる対象とは、ヒト、霊長類、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコおよびげっ歯類を意味する。
【0101】
膿瘍形成を阻止するために投与する場合、本発明の免疫調節ポリマーをアジュバントと共に投与することができる。”アジュバント”という用語には、本発明ポリマーと同時に取込みまたは投与され、対象における免疫反応を増強する、いかなる物質も含まれる。アジュバントには、アルミニウム化合物、たとえばゲル、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、ならびにフロイントの完全または不完全アジュバントが含まれる(これらにおいては、パラフィン油エマルション中に安定化された水の水相に本発明ポリマーを取り込ませる)。パラフィン油の代わりに他のタイプの油、たとえばスクアレンまたはラッカセイ油を用いてもよい。アジュバント特性をもつ他の物質には、BCG(弱毒化Mycobacterium tuberculosis)、リン酸カルシウム、レバミソール(levamisole)、イソプリノシン(isoprinosine)、ポリアニオン類(たとえばポリA:U)、レンチナン(lentinan)、百日咳毒素、リピドA、サポニン類、ペプチド類(たとえばムラミルジペプチド)および希土類(たとえばランタンおよびセシウム)塩類が含まれる。アジュバントの量は、対象、および用いる個々のポリマーに依存し、当業者が多大な実験なしに容易に決定できる。好ましいアジュバントは、T細胞を選択的に刺激するものである。T細胞応答を抑制する可能性のあるアジュバントは、避けることが望ましい。
【0102】
本発明の他の態様においては、多くの一般的タイプの外科処置に伴う術後外科癒着形成に対する保護を誘導する方法を提供する。この方法は、そのような保護を必要とする対象に、術後外科癒着形成を軽減するのに有効な量の本発明の免疫調節ポリマーを含有する医薬調製物を投与する工程を含む。本発明によれば、手術部位とは別個の部位へのポリマー投与により術後外科癒着形成に対する保護を誘導しうることが見出された。術後外科癒着の発生を軽減するためにある種のポリマーの局所投与が有効であることを教示した先行技術からみて、この知見は特に予想外である。本発明によれば意外にも、本発明ポリマーは癒着が形成されそうな外科処置部位と離れた部位に皮下投与した場合に有効であることが見出された。
【0103】
術後外科癒着形成に対して保護するのに有用な免疫調節ポリマーは、前記の本発明の免疫調節ポリマーである。膿瘍形成に対して保護するのに有用な他の免疫調節ポリマーは、本明細書に記載する免疫調節ポリペプチドである。
【0104】
術後外科癒着形成に対する保護を誘導するのに有効な量の化合物を投与する。本明細書中で用いる、術後外科癒着形成に対する保護を誘導するのに有効な量は、単独で、または追加量もしくは追加の療法化合物と組み合わせて、術後外科癒着形成を阻止または予防する、本発明の免疫調節ポリマーの量である。投与様式に応じて、1ナノグラム/kg〜100ミリグラム/kgの用量が有効であると思われる。好ましい範囲は500ナノグラム/kg〜500マイクログラム/kg、最も好ましくは1〜100マイクログラム/kgであると思われる。絶対量は、さまざまな要因(投与を予定外科処置または緊急外科処置と組み合わせるかどうか、併用処置、投与回数、ならびに年齢、身体状態、体格および体重を含めた各患者のパラメーターを含む)に依存し、ルーティン実験程度で決定できる。一般に、最大量、すなわち確実な医学的判断による安全最高量を使用することが好ましい。
【0105】
本発明の医薬組成物の多数回投与が考慮される。本発明は、外科処置前日から開始して3日間にわたって、外科処置前2日間にわたって、多数回投与すると有効であることが示された。追加量を外科処置後に投与してもよい。術後外科癒着形成を軽減する方式はいずれも採用できるが、最適な用量および投与方式は、術後外科癒着形成の発生を阻止するだけでなく、術後外科癒着形成に対する完全な保護をもたらすものである。そのポリマーを多数回送達するのに望ましい時間間隔は、当業者がルーティン実験程度で決定できる。
【0106】
したがって1態様において本発明は、対象において術後外科癒着形成を阻止することが望まれる場合にはいつでも使用できる。これには、予定外科処置および緊急手術後の癒着形成を阻止するための予防処置が含まれる。予定外科処置には下記の腹部内外科処置が含まれる:結腸右半側切除術;結腸左半側切除術;S状結腸切除術;部分結腸切除術;全結腸切除術;腹腔鏡検または開放胆嚢切除術;胃切除術;膵切除術;脾切除術;肝臓、膵臓、小腸または腎臓の移植;癒着溶解など。緊急外科処置には、下記の状態を矯正するためのものが含まれる:穿孔性潰瘍(十二指腸または胃);穿孔性憩室炎;閉塞性憩室炎;腸閉塞;急性虫垂炎;穿孔性虫垂炎;鈍的腹部外傷;穿通性腹部外傷;膿瘍排膿のための2回目の手術;腹部腹大動脈瘤破裂など。本発明は、腹部内以外の外科処置、たとえば心臓外科処置、開放および内視鏡検整形外科処置、神経外科処置、婦人科および骨盤外科処置、ならびに創傷感染の矯正のための外科処置にも有用である。本発明は、対象に自然癒着形成の素因をもたらす疾患、たとえば骨盤炎症性疾患、炎症性腸疾患、尿路感染症および大腸癌についても有用である。したがって本発明は実質的にいかなる組織または臓器に関する炎症プロセスにも有用である。本発明に関連する当業者には、本発明が有用である状態および処置の範囲が認識されるであろう。
【0107】
術後外科癒着形成を阻止するために投与する場合、本発明ポリマーを手術部位とは別個の部位(全身投与を含む)に投与するか、または術後外科癒着形成の可能性を少なくすることが望まれる手術部位に局所投与することができる。本発明ポリマーは、水溶液として、架橋ゲルとして、または水溶液と架橋ゲル形との一時的もしくは物理的な組合わせとして投与できる。架橋ゲルは、反復電荷モチーフ、すなわち正に荷電した遊離アミノ酸部分および負に荷電した部分を、本発明により術後外科癒着形成を軽減または阻止する目的に十分な程度に保有しなければならない。
【0108】
本発明の多糖ポリマーは双性イオンであり、正に荷電した遊離第一級アミノ基を少なくとも2つの反復電荷モチーフそれぞれに含むので、本発明の多糖ポリマーは脱アセチル化ヒアルロン酸、脱アセチル化コンドロイチン硫酸、脱アセチル化ケラタン硫酸、および脱アセチル化デルマタン硫酸を含むことができる。同じ理由で、本発明の多糖ポリマーは、N,O-カルボキシメチルキトサン(NOCC)、ヒアルロン酸(HA)またはヒアルロン酸塩(たとえばヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウムおよびヒアルロン酸カルシウムを含む)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デキストラン硫酸、ペントサン(ポリ)硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、またはポリビニルピロリドン(PVP)を含まない。好ましい態様において、ポリマーはポリペプチドである。
【0109】
特定のポリマーを用いて宿主T細胞を刺激し、多数の細菌に対する保護を誘導しうることが見出された。この保護作用はT細胞依存性であり、体液性抗体反応によっては仲介されない。したがって、本発明の調製物の投与は”ワクチン接種”ではなく、調製物は免疫化抗原を発現する細菌に特異的な保護を仲介する”ワクチン”ではない。
【0110】
本発明によれば、前記の免疫調節ポリマーはT細胞を活性化してTh1サイトカインを産生させるのに有用であることも見出された。T細胞をIL-2分泌に有効な量の本発明の免疫調節ポリマーと接触させる。後記実施例に示すように、免疫調節ポリマーはT細胞を活性化して、Th1特異性サイトカイン、たとえばIL-2およびインターフェロン-γ(IFN-γ)を分泌させることが見出された。T細胞が刺激されると、それらはTh1またはTh2サイトカインに分化することができる。この態様の本発明は、本発明の免疫調節ポリマーがT細胞を活性化してTh1サイトカインプロフィルをもつサイトカインの放出を仲介するという知見に基づくものであり、したがってT細胞を活性化してTh1サイトカインプロフィルを生じるのが望ましい場合はいつでも有用である。
【0111】
いずれか特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、下記のように考えられる。本発明の免疫調節ポリマーはT細胞を活性化してTh1サイトカインプロフィルを生じ、その結果IL-2を放出する。次いでIL-2は、細菌の増殖を遮断することにより膿瘍形成に対して保護し、またはIL-2が仲介する他の障害を予防もしくは阻止する機能をもつ。後記実施例で証明するように、免疫調節ポリマー、免疫調節ポリマーにより活性化されたT細胞、活性化T細胞抽出物、および外因性IL-2は、すべてin vivoで膿瘍形成に対する保護を誘導する機能をもつ。したがって本発明は、これらの各物質の投与により膿瘍形成に対して保護するための方法を提供する。
【0112】
したがって本発明は、T細胞の活性化方法を含む。この方法は、抗原提示細胞の存在下でT細胞をIL-2分泌の誘導に有効な量の本発明の免疫調節ポリマーと接触させることを伴う。好ましくは、このポリマーは非反復単位をもつ。他の好ましい態様において、ポリマーは反復単位または非反復単位をもつ本発明の免疫調節ポリペプチドである。
【0113】
本明細書中で用いる”T細胞”は、一部はその細胞表面にCD3およびT細胞抗原受容体を発現することを特色とする胸腺由来リンパ球である。本明細書中で用いる”Th1細胞”は、主にIL-2、IFN-γおよびリンホトキシンを分泌するCD4+Tリンパ球である。Th1サイトカインプロフィルは、IL-2、IFN-γおよびリンホトキシンを含む。
【0114】
本発明は、T細胞を活性化してTh1細胞特異性サイトカインを産生することによりTh1細胞関連障害を処置する方法をも含む。この方法は、Th1細胞関連障害をもつ対象に、T細胞によるIL-2分泌の誘導に有効な量の本発明の免疫調節ポリマーを投与することにより達成される。Th1細胞関連障害をもつ対象は、外科処置を受ける用意がないが、Th1細胞関連障害を発症するリスクをもつか、またはその障害を伴う対象である。”Th1細胞関連障害”は、Th1サイトカインにより阻止される免疫仲介障害である。その障害の発症が部分的または完全に予防された場合、あるいはその障害の程度が軽減した場合、本明細書中で用いるように、障害は阻止される。Th1細胞関連障害には、インスリン依存性糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患および同種異系移植片拒絶が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
本発明によれば、本発明の特定の免疫調節ポリマーは特異的抗原に対するIgG抗体反応の抑制および同種異系移植片生存の促進にも有用であることが見出された。本発明のこれらの態様に有用な免疫調節ポリマーには、前記ポリマーが含まれるが、ただしモル比4〜6:1.4〜2.1:3.2〜4.2:1、6:2:4.5:1、4.1〜5.8:1.4〜1.8:3.2〜4.2:1、6:1.9:4.7:1、4.9:1.7:3.8:1または6:1.8:4:1の、アラニン、グルタミン酸、リシンおよびチロシンからなるものを除く。一般にポリマーは、グルタミン酸、リシン、アラニンおよびチロシンのみからなる場合、特に文献記載のGLATの形のものおよびコポリマー1を除く。ある態様において本発明の免疫調節ポリマーは、外科処置を受ける用意がない対象におけるこれらの障害を処置するのに有用である。
【0116】
本明細書中で用いる”特異的抗原に対する不適切なIgG抗体反応を特色とする障害”は、急性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、特定の自己免疫性関節炎疹(慢性関節リウマチを含む)、全身性紅斑性狼瘡(狼瘡)、エイズ、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)および特定の形の甲状腺炎などの障害である。
【0117】
本発明ポリマーは同種異系移植片の生存を促進するのにも有用である。本明細書中で用いる”同種異系移植片の生存を促進する”という用語は、レシピエントと同種の他の個体に由来する移植した細胞、組織または臓器がもつ生理学的に有用な機能が、未処置レシピエントにおける同様な移植片の対応する機能より、測定可能なほど延長または保存されることを表す。
【0118】
本発明のポリマーは、それ自体がアジュバント特性をもつ。本明細書に記載するポリマーはヒトの免疫反応を増強するので、それらをアジュバントとして他の物質と組み合わせて使用できる。
【0119】
本発明の調製物を感染”に関連して”投与するとは、宿主に膿瘍形成の素因をもたらす外科処置、外傷または疾患と時間的に十分に近接しており、したがって膿瘍形成に対する保護効果が得られることを意味する。予定外科処置の場合は、本発明の調製物を外科処置前に長期間(すなわち数週間、さらには数カ月間)投与し、好ましくは外科処置に近接した時点で(かつ外科処置後ですら)追加投与することができる。特に緊急事態の場合、本発明の調製物を外傷または外科処置の直前(数分間ないし数時間前)および/または後に投与することができる。細菌感染/汚染に対する対象の免疫反応を高め、これによって効果的な宿主反応の機会を増し、膿瘍形成の可能性を少なくするために、本発明の調製物を外科処置に近接した時点で投与することは重要である。
【0120】
本発明の調製物を医薬的に許容できる溶液中において投与する。これらは、一般に医薬的に許容できる濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合性キャリヤー、アジュバント、および所望により他の療法成分を含有してもよい。
【0121】
本発明のポリマーをそれ自体で(そのまま)、または医薬的に許容できる塩の形で投与できる。医薬中に用いる場合には塩類は医薬的に許容できなければならないが、その医薬的に許容できる塩類を調製するために医薬的に許容できない塩類の使用が好都合なことがある。そのような塩類には下記の酸から調製されるものが含まれるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸およびベンゼンスルホン酸。それらの塩類を、カルボン酸基のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、たとえばナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩として調製することもできる。
【0122】
適切な緩衝剤には下記のものが含まれる:酢酸および塩(1〜2%w/v);クエン酸および塩(1〜3%w/v);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%w/v);ならびにリン酸および塩(0.8〜2%w/v)。適切な保存剤には、塩化ベンザコニウム(0.003〜0.03%w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v);パラベン類(0.001〜0.25%w/v)およびチメロサール(0.004〜0.02%w/v)が含まれる。
【0123】
本発明の医薬組成物は有効量のポリマーを含有し、これは所望により医薬的に許容できるキャリヤー中に含有される。”医薬的に許容できるキャリヤー”という用語は、ヒトまたは他の動物に投与するのに適した1以上の適合性固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル封入用物質を意味する。”キャリヤー”という用語は、有機または無機の天然または合成成分であって、適用を容易にするためにそれと有効成分を組み合わせるものを表す。目的とする医薬効果を実質的に損なう相互作用のない様式で、医薬組成物の各成分を本発明のポリマーと、また相互に、混和することができる。
【0124】
非経口投与に適した組成物は無菌水性調製物を含むことが好都合であり、これらをレシピエントの血液と等張にすることができる。許容できるビヒクルおよび溶剤には、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。さらに、無菌の固定油を溶液または懸濁媒質として用いるのが好都合である。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含めたいかなる銘柄の固定油も使用できる。さらに、注射剤の調製に脂肪酸、たとえばオレイン酸を利用できる。皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内などへの投与に適したキャリヤー配合物は、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company(ペンシルベニア州イーストン)にみられる。
【0125】
本発明に有用なポリマーを1以上のポリマーの混合物として送達することができる。混合物は数種類のポリマーからなっていてもよい。
多様な投与経路を利用できる。選択する具体的な様式は、もちろん選択した個々のポリマー、処置する個々の状態、および療法効果を得るのに必要な用量に依存する。本発明方法は一般に、医学的的に許容できるいかなる投与様式によっても実施できる。これは、臨床的に許容できない副作用を引き起こすことなく有効レベルの免疫反応を生じるいかなる様式をも意味する。好ましい投与様式は、非経口経路である。”非経口”という用語には、皮下、静脈内、筋肉内または腹腔内への注射または注入法が含まれる。
本発明の組成物を単位剤形で提供するのが好都合であり、医薬分野で周知の任意の方法で調製できる。すべての方法が、1以上の補助成分を構成するキャリヤーとポリマーを混和する工程を含む。一般に組成物は、ポリマーを液体キャリヤー、微細に分割した固体キャリヤー、または両者と、均質かつ密に混和し、次いで必要ならば生成物を造形することにより調製される。ポリマーを凍結保存することもできる。
【0126】
他の送達系には、持効性、遅効性または持続放出性の送達系が含まれる。そのような系は抗炎症薬の繰返し投与を避けることができ、対象および医師にとっての簡便性を高める。当業者には利用できる多数のタイプの放出送達系が周知である。それらには、ポリマーベースの系、たとえばポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸およびポリアンヒドリドが含まれる。薬物を収容したマイクロカプセルは、たとえばUSP5,075,109に記載されている。送達系には、下記の非ポリマー系も含まれる:脂質:ステロール、たとえばコレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸、または中性脂肪、たとえばモノ-、ジ-およびトリ-グリセリドを含む;ヒドロゲル放出系;サイラスティック系;ペプチドベース系;ろうコーティング;一般的な結合剤および賦形剤を用いた圧縮錠剤;部分融合埋込み剤など。具体例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:(a)本発明物質がマトリックス内にある形で含まれる侵食系(erosional system)、たとえばUSP4,452,775、4,675,189および5,736,152に記載のもの;ならびに(b)有効成分が制御された速度でポリマーから浸出する拡散系、たとえばUSP3,854,480、5,133,974および5,407,686に記載のもの。さらに、ポンプベースハードウェア送達系も使用でき、それらのうちあるものは埋込み用として調製される。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】B. フラジリスPS Aの詳細な構造。このポリサッカリドは約200のテトラサッカリド反復ユニットから構成されており、遊離アミノ、N-アセチルおよびカルボキシル基を有する。修飾Iのように、無水酢酸による処理ですべての遊離アミノ基がN-アセチルに変換される。ピルビン酸に付随する陰性に荷電されたカルボキシル基はカルボジイミド還元により還元できる(修飾II)。過ヨウ素酸酸化(0.01M NaIO4、室温で90分)はガラクトフラノース側鎖からC6を特異的に切断して(糖4、修飾III)、アルデヒド基(CHO)をC5に残す。水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)での還元による酸化PS Aの続いての修飾はC5のアルデヒドをヒドロキシメチル基へ還元し(修飾IVのように)、ガラクトフラノース側鎖がアラビノフラノースへ変換される。
【図2】B. フラジリスPS Aへ応答したT細胞増殖。ヒトT細胞(5x104細胞/ml)は照射APC(2.5x105/200μl)と、PS Aの10倍希釈液または陽性対照として1ng/mlでのブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)存在下で12日間同時培養された。3Hチミジン(1μCi/ウェル)を培養の最後の6時間に加えた。PS Aに対する応答は用量依存的であり、培養6日目にピークを持っていた。示された結果は少なくとも5回の独立した実験の代表的なものである。
【図3】B. フラジリスPS Aおよび修飾PS A誘導体へ応答したT細胞増殖。すべてのポリサッカリドは10μg/mlの濃度で試験された。CD4+細胞はこの系における応答細胞として使用された。PS Aは図1で説明したように無水酢酸処理により化学的にN-アセチル化された、修飾I。PS Aの遊離アミノ基のN-アセチル基への変換は増殖応答を消滅させた(PS A:NAc)。末端ガラクトースのピルビン酸ケタール環に付随する陰性に荷電されたカルボキシル基の還元は(図1、修飾II)、増殖応答を72%減少させた。0.01Mメタ過ヨウ素酸ナトリウムでの処理によりPS Aが選択的に酸化された(図1、修飾III)。この過ヨウ素酸法による酸化はこのポリサッカリドによるT細胞活性化を消滅させた(PS A:酸化型)。しかしながら、酸化されたPS AのNaBH4による還元によりPS Aに対する増殖応答が再生した(PS A:酸化型/還元型)。ペルオキシド-酸化PS A(PS A:ペルオキシド)による匹敵する増殖活性および過ヨウ素酸-酸化および還元PS Aの増殖活性の再生の証明により、観察されたT細胞応答はポリサッカリドによるものであり、夾雑するタンパク質によるものではないことが確認された。
【図4】S. ニューモニエタイプ1被膜ポリサッカリド(CP)のT細胞用量応答およびN-アセチル化の影響。タイプ1CPは強力なT細胞応答を惹起し、それはPS S応答の典型的には60〜70%であった。タイプ1被膜ポリサッカリドのN-アセチル化はT細胞増殖を消滅させた(NAcタイプ1CP)。
【図5】タイプ3CPと比べたタイプ1CPによるT細胞増殖の比較。タイプ3CPはグルコースおよびグルクロン酸の反復ユニットから成っており、これらのアッセイにおいてT細胞応答を惹起しない。
【図6】T細胞増殖に対する反復ユニットサイズの影響。種々のサイズのK-Dペプチド(20μg/ml)が、インキュベーション6日後にT細胞活性化を刺激する能力で評価された。15、20および25反復から成るポリマーとT細胞およびAPCとの培養はT細胞増殖を生じた。1、5または10の反復を有するペプチドとのインキュベーションはT細胞活性化を刺激しなかった。S. ニューモニエタイプ1CP(20μg/ml)が陽性対照として含まれていた。
【図7】食塩水およびPS A処理動物から採取されたT細胞からのIL-2、IFN-γ、IL-4およびIL-10 mRNAの比較発現。全RNAがRT-PCRにかけられた。β-アクチンが陽性対照として使用された。食塩水処理動物からのT細胞はこれらのサイトカインの転写体を発現しなかったが、一方、PS A処理動物からのT細胞はIL-2、IFN-γおよびIL-10の転写体を発現した。
【図8】PS A処理による誘導された抗体抑制。SVJマウスを50μgのPS Aまたは食塩水で処理し、タイプIIIグループB連鎖球菌ポリサッカリド(GBSタイプIIIカプセル)および破傷風トキソイド(TT)を含んでいる共同ワクチンで免疫した。抗原特異的IgG応答は一次抗原暴露後38および56日後にELISAによりアッセイした。上図:GBSタイプIIIカプセルに対するIgG応答;下図:TTに対するIgG応答。
【図9】双性イオン性ポリサッカリド(Zps)による癒着防止。各々10匹の3群が、盲腸削除24時間前、当日、および24時間後に、食塩水、ペクチンまたはS. ニューモニエタイプ1CP(投与量当たり100マイクログラム)で処理された。滅菌ラット盲腸内容物(0.5ml)が傷縫合に先立って腹腔内へ導入された。動物を処置6日後に殺し、0(癒着なし)から5(非常に厚い血管新生化癒着または一つ以上の平面癒着)の測定尺度で評点した。被膜ポリサッカリドで処理したラットは、ペクチンを受けたラットと比較して有意に低い癒着評点を持っていた(p<0.001)。
【図10】癒着減少のT細胞移入。食塩水またはストレプトコッカス ニューモニエタイプICPで処理されたドナーからのT細胞が癒着誘導24時間前にラットへ移入された。癒着は6日後に評点された。
【実施例】
【0128】
実施例1:
細菌の起源、多糖類の単離および修飾、および腹腔内敗血症の動物モデル
B. fragilis NCTC9343およびATCC23745を初めにNational Collection of Type Cultures(London、England)またはAmerican Type Culture Collection(Bethesda、MD)から得た。微生物は使用するまでペプトン-イーストまたは脳心臓注入培養液中に-80℃で保存し、記載に従って嫌気的に培養した。Pantosti et al. Infect Immun 59:2075(1991)。B. fragilis NCTC9343およびATCC23745由来のCPCは、先に記載したように熱フェノール/水抽出により単離し、つづいてPSAの精製を行った。Tzianabos, A et al. J Biol Chem 267:18230(1992)。
【0129】
肺炎連鎖球菌1型夾膜多糖(CP)および他の肺炎連鎖球菌多糖はATCC(MD)から得た。
荷電の変化した分子を生成するための多糖の化学的修飾については先に記載されている。Taylor, R et al. Biochemistry11:1383(1972)(カルボジイミド還元)およびBaumann, H et al. Biochemistry31:4081(1992)(N-アセチル化および脱アミノ化)。
【0130】
本研究で使用した腹腔内敗血症のラットモデルについては先に記載されている。Onderdonk, A et al. J Infect Dis 136:82(1977)およびTzianabos, A et al. Science 262:416(1993)。簡単に述べると、体重180〜200gの雄WistarまたはLewisラット(Charles River Laboratories、Wilmington、MA)を別々に飼育し、餌(Ralston Purina、St. Louis、MO)と水は自由に与えた。動物はネンブタール(50mg/ml;Abbott Laboratories、North Chicago、IL)0. 15mlを1回腹腔内注射して麻酔し、腹部を剃り、ヨードチンキを塗布した。腹壁および腹膜を通って前正中線切開(0.5-1.0cm)を行い、接種物0.5mlを含むゼラチンカプセルを骨盤に挿入した。B. fragilis NCTC9343(108cfu/動物)、黄色ブドウ球菌PS80(107cfu/動物)、または精製した被験多糖を含む接種物は、記載に従って滅菌ラット盲腸内容物および10%硫酸バリウム(w/V)を含むアジュバント溶液と1:1に混合した。Onderdonk, A et al. Infect Immun 13:22(1976)。切開部位は3.0絹糸での結節縫合により閉じ、動物をケージに戻した。
【0131】
6日後、盲検により動物の剖検を行い、被験群について知らされていない観察者が一以上の腹腔内膿瘍形成について観察を行った。完全に形成された一以上の膿瘍を有するラットを陽性とした。完全に形成された膿瘍がまったく見られない動物を陰性とした。
【0132】
実施例2:
PSAによるT細胞活性化は荷電モチーフに依存する
T細胞に依存して防御宿主反応を引き起こすB. fragilis PSAの効力は、PSAと上記細胞型との間の相互作用を示唆した。従って、実験はin vitroでPSAがT細胞を活性化させるか否かについて検討するために行った。
【0133】
T細胞増殖試験はヒトロイコパック(匿名の血小板ドナー由来の廃棄白血球)を使用して行った。単核細胞は赤血球および多形核球を取り除くためのficoll-hypaque沈降により分離した。ナイロンウールカラムを使用して、T細胞、B細胞および単核細胞からなる単核層からB細胞および単核細胞を取り除いた。これらの細胞の一部はナイロンウールにのせる前に保存し、セシウム線源を6.4 kRads、4.8分間照射後に自己フィーダー細胞として使用した。98%以上CD3陽性(FACS分析により測定)であるナイロンを通過した細胞は、リスポンダー細胞として使用するか、または磁気ビーズによるネガティブ選択に従ってCD4(OKT4)またはCD8(OKT8)に対する抗体とともにさらに枯渇させた。Finberg, RW et al. J Immunol 149:2055(1992);Haregewoin, A et al. Nature 340:309(1989)。RPMI1640および5% ウシ胎児血清を含むU-底96ウェルプレート(Corning-Costar Corp., Cambridge、MA)中で、照射したAPCs(2.5×105/200μl)と12日間共存培養したヒトT細胞(5×104細胞/200μl)に10倍希釈したPSAを添加した。Nguyen, LH et al. J Virol 66:7067(1992)。予め設定した時点で、細胞を採取する6時間前に1mCiの3H-チミジン/ウェルで細胞をパルス標識し、細胞増殖を測定した。細胞は十分に洗浄し、採取して、液体シンチレーション法により放射活性な取り込み量を測定した。PSAに対する反応は一般にヒトT細胞ドナーにより変化した。すべての試験において、PSAとともに培養した照射APCsまたはSEA単独は、これらの抗原に反応して増殖しなかった。データはトリプリケートのウェル±標準誤差の平均としてcpmで表した。すべての増殖実験で、データは少なくとも5回の異なる実験の典型的な結果を表す。
【0134】
ヒトT細胞を用いた増殖試験において、PSAは用量依存的反応(用量範囲:10〜0.1μg/ml、図2)を引き起こした。この増殖反応はPSAとの培養6日後に最高になった。ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)の至適濃度1ng/mlで試験を行った場合も増殖反応は6日でピークに達し、対照である培地に比べ、50〜150倍の範囲の刺激指数を得た(図2)。
【0135】
PSAの2-アセタミド-4-アミノ-2,4,6-トリデオキシガラクトース残基のC4における遊離アミノ基(糖1、図1)、およびin vivoで生物学的機能を媒介する糖3上のピルビン酸基と結合したカルボキシル基の重要性を示した。Tzianabos, AO et al. Science 262:416(1993);Tzianabos, A. O. et al. Infect Immun;62:4881(1994);Tzianabos, AO et al. Infect Immun 62:3590(1994)。さらに、PSAによるT細胞活性化における上記化学基の役割について評価した。特異的化学的修飾はPSAの遊離アミノ基を中性のN-アセチル基に変換した(図。1、修飾I)。PSAのN-アセチル化はPSAによるT細胞活性化を阻害し、この結果はPSA上の遊離アミノ基がT細胞活性化において必須であることを示唆する(図3、それぞれ10μg/mlのPSA対PSA:NAc)。末端ガラクトース残基と結合したピルビン酸置換基のカルボジイミド還元によるPSA上の陰性荷電基の化学的修飾(図1、修飾II)は非修飾PSAに比べ増殖反応が72%低下した(それぞれ、7,937±3264cpm対27,886±7890cpm)。これらのデータはin vitroでのT細胞活性化媒介における上記の荷電基の重要な役割を説明し、in vivoでの膿瘍形成に対するPSA媒介保護における上記の基の効果と関連する。Tzianabos, AO et al. Infect Immun 62:4881(1994)。
【0136】
以下のデータは、PSAに対するT細胞増殖反応がタンパク質またはペプチド汚染の存在を表すという可能性について扱う:(1)B. fragilis由来の表面多糖の精製はタンパク質を分解または変性するためにデザインした方法と関連した(熱フェノールによる抽出、反復したプロナーゼ消化、および1M NaOH中で1時間沸騰)。Pantosti, A et al. Infect Immun 59:2075(1991)。(2)SDS-PAGE、定量的タンパク質試験、およびアミノ酸分析は多糖サンプル中にタンパク質が含まれていないことを示した。(3)PSAはその電荷モチーフのために、水溶液中でイオン的に凝集し、T細胞を活性化させる能力を失う。T細胞活性化に使用するほんの少し前に等電点電気泳動により上記イオン複合体を分解することが重要である。(4)特異的に炭水化物を変化させ、タンパク質を変化させない化学的処置でPSAを処置すると、PSAによる増殖は阻害された。しかし、変化した炭水化物基を化学的に再生すると、T細胞活性化は復活した。実験の最終セットのために、メタ過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)処理により、PSAを化学的に酸化した。上記処理は炭水化物の隣接したヒドロキシル基間のC-C結合の開裂に選択的である。PSAの場合、過ヨウ素酸酸化はガラクトフラノース側鎖のC6の除去に非常に特異的で(図1、糖4、修飾III)、C5にアルデヒド基を形成する。T細胞増殖試験では、過ヨウ素酸酸化PSAは反応を誘発できなかった(図3、それぞれ10μg/mlのPSA対PSA:NAc)。活性の消失は過ヨウ素酸酸化によるアルデヒドの形成のためで、アルデヒドはPSAの遊離アミノ基と相互作用して中間体シッフ塩基を形成する。T細胞および/またはAPCsとの相互作用よりむしろ、シッフ塩基形成における分子内および分子間アルデヒドによる遊離アミノ基の占有が、酸化型PSAによる増殖の欠如をもたらしてもよい。RhodesはT細胞とAPCs間のシッフ塩基形成がT細胞活性化のシグナルの提供に重要であることを示した。Zheng, et al. Science 256:1560(1992)。
【0137】
過ヨウ素酸酸化後、PSAを水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)で還元し、C5のアルデヒド基をヒドロキシメチル基に変換した(図1、修飾IV)。この修飾により側鎖の糖はアラビノフラノース残基に変換するが、多糖の荷電基の初めのモチーフはそのままであった。酸化型PSAの側鎖ヒドロキシメチル基の再生により、上記多糖の増殖活性が復活した(図3、それぞれ10μg/mlのPSA対PSA:酸化型/還元型)。NMRおよびGC-MSは、100%の反復単位が記載されたように修飾されたことを確証した。
【0138】
一般に、タンパク質はNaIO4酸化に非常に抵抗性であるが、この処置によりタンパク質またはペプチドに結合したシステイン残基に存在するチオール基をスルホキシド誘導体に酸化することは可能である。J. March, Advances in Organic Chemistry(John Wiley and Sons, New York, 第4版、1992)。もしこのことが事実なら、NaBH4による還元が酸化処置を逆転し、上記の作用を受けたアミノ酸を再生するであろう。従って、上記記載の結果はシステインを含むペプチドによる汚染の結果かもしれない。上記の残っている可能性を除去するために、PSAを過酸化水素で処理した。過酸化水素はシステインのチオール基をスルホキシド誘導体に酸化するが、炭水化物構造には作用しない。J. March, Advances in Organic Chemistry(John Wiley and Sons, New York, 第4版、1992)。過酸化水素処理PSAによるT細胞増殖試験は、増殖活性が未処理多糖の活性に等しいことを示した(図3、それぞれ10μg/mlのPSA対PSA:過酸化型)。従って、過酸化水素により酸化された生成物による同等の増殖活性、および過ヨウ素酸酸化PSAのNaBH4還元による増殖活性の回復は、観察されたT細胞反応が炭水化物に由来するものであって、汚染したタンパク質によるものではないことを確証した。
【0139】
実施例3:
T細胞活性化に関与する双極性イオンポリマー荷電モチーフの性状決定
本実施例では、PSAと同じ荷電モチーフをもつ他の細菌多糖がin vitroでT細胞を活性化するか否について検討する。肺炎連鎖球菌1型夾膜多糖(CP)は反対の荷電基をもつ天然に存在するわずかな多糖類のうちの一つである。Lindberg, B et al. Carbohydr Res 78:111(1980)。1型CPは、PSAに存在する正に荷電した遊離アミノ基(2-アセタミド-4-アミノ-2,4,6-トリデオキシガラクトース残基)の付いた同じ糖残基をもつ三糖反復単位である。さらに、1型CPは反復単位毎に負に荷電したカルボキシル基を含む2つのガラクツロン酸残基を有する。以前の研究で、1型CPもPSAと同様に膿瘍形成から動物を保護することを示している。Tzianabos, AO et al. Infect Immun 62:4881(1994)。さらに、この保護活性はまたその反復単位構造中の遊離アミノ基の存在に依存している。肺炎連鎖球菌3型CPは1型CPと異なり、グルコースとグルクロン酸の2糖反復単位を有する。Reeves, RE et al. J Biol Chem 139:511(1941)。
【0140】
肺炎連鎖球菌1型および3型夾膜多糖はATCC(Rockville、MD)から得て、含まれている細胞壁多糖、C物質を除去するために80℃で1時間、2M NaOH処理をした。ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製後、肺炎連鎖球菌多糖類は等電点電気泳動にかけ、透析、凍結乾燥し、凝集を防ぐために3M NaCl中に保存した。T細胞増殖試験は、PSAのかわりに1型または3型CPを使用し、実施例2に従って行った。
【0141】
1型CPは強い用量依存的T細胞反応を引き起こし、反応は培養6時間後にピークに達し、具体的には上記試験におけるPSA反応の60〜70%であった。NMRにより確かめられた1型CPのN-アセチル化はT細胞増殖を阻害した(図4)。肺炎連鎖球菌3型CPは、グルコースおよびグルクロン酸の2糖反復単位を有するが、上記試験においてT細胞反応を引き起こさなかった(図5)。
【0142】
実施例4:
T細胞活性化に関与する双極性イオンポリマー荷電モチーフの性状決定
T細胞活性化における双極性イオン荷電モチーフの役割を示すために、PSAの反復単位を真似て、2糖反復単位を合成した。この目的のために、反復単位サイズの異なるリシン(K)およびアスパラギン酸(D)、(K-D)nを合成し、CD4+T細胞の刺激能に対して試験を行った。
【0143】
ペプチド(K-D)nはFmoc chemistryを使用して、アルコキシベンジルアルコール(PAC)レジン(PerSeptive Biosystems, Inc., Framingham, MA)を用いてRainin Symphony peptide systhesizerで行った。アミノ酸はカップリングのために2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3テトラメチルウロニウムヘキサフルオロ燐酸(HBTU)により活性化した。調製したペプチドはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析法および核磁気共鳴(NMR)法により分析した。MassスペクトルはVoyager MALDI-TOF質量分析計から得た。プロトンNMRスペクトルは500MHzのBrucker AMX500から得た。両分析により、ペプチドが予想した構造であることを確かめた。
【0144】
実施例2のT細胞増殖試験に従い、異なるサイズのK-Dペプチド(20μg/ml)のインキュベーション6日後のT細胞活性化能について評価した。肺炎連鎖球菌1型CP(20μg/ml)を陽性対照として使用した。
【0145】
15、20または25反復単位からなるK-Dペプチドはそれぞれin vitroでT細胞活性化を刺激した(図6)。10反復単位のペプチドによる反応はより低かった。10反復単位以下(1〜5)のペプチドは、T細胞活性化を刺激しなかった。対照ペプチド、ポリ-L-リシンもまた、T細胞活性化を刺激しなかった。これらのデータは多糖ではない双極性イオン反復単位ポリマーがT細胞活性化を刺激し、この活性がポリマーの反復単位サイズに依存することを明確に示した。
【0146】
実施例5:
双極性イオンポリペプチドは膿瘍形成に対して保護をする
本実施例では、実施例1の腹腔内敗血症モデルを使用して、in vivoで双極性イオン(K-D)nペプチドが膿瘍形成から動物を保護するか否かについて検討する。動物には50または5μgの25反復単位のK-Dペプチド(K-D)25を投与し、B. fragilisをチャレンジした。結果を表1、実験Aに示す。高用量の(K-D)25投与は生理的食塩水処理対照群に比べ、有意に動物を保護した(それぞれ、17%と78%、p<0.0005)。しかし、低用量のペプチドでは保護できなかった。双極性イオン多糖肺炎連鎖球菌1型CPは用量50μgでは有意に動物を保護したが、用量5μgでは保護しなかった。高用量のポリ-L-リシン投与は膿瘍形成に対する保護ができなかった。結局、(K-D)25による動物の処理は、重要な病原菌肺炎連鎖球菌による膿瘍形成から動物を保護した(表1、実験B)生理的食塩水で処理し、肺炎連鎖球菌をチャレンジした動物の膿瘍形成率は80%であったが、50μgの(K-D)25での処理は膿瘍形成率を20%に低下させた(p<0.002)。これらのデータは、PSAによる動物の処理が一般にヒトでの腹腔内敗血症と関連する広範囲の腸微生物により誘発される膿瘍を妨害することを示した以前の研究と関連する。Tzianabos, AO et al. J Clin Invest 96:2727(1995)。
【0147】
保護におけるペプチド反復単位サイズの影響について検討した。上記記載の方法に従って、動物は50μg/各反復単位サイズの用量で処理した(表2)。15、20、または25反復単位ペプチドによる処理は有意な保護を示した。しかし、10以下の反復単位ペプチドによる処理では生理的食塩水で処理した動物に比べで保護は有意ではなかった。実際、10反復単位以下のペプチドでは、反復単位サイズが減少するにつれて保護の程度が低下した。in vivo保護試験とT細胞増殖データとの相関関係は、これらの活性に欠くことのできない最適な反復単位サイズがあることを強く示唆している。
【0148】
表1.ペプチド(K-D)25による膿瘍形成に対する保護。ジペプチド反復単位は記載に従って合成した。動物は先に記載したように、チャレンジの24時間前、チャレンジ時、24時間後に皮下注射により適当なポリマーで処理した。Tzianabos, AO et al. J Clin Invest 96:2727(1995)。動物にB. fragilis(1×108cfu/ラット)または黄色ブドウ球菌PS80(1×107cfu/ラット)をチャレンジし、6日後に腹腔内膿瘍形成を調べた。
【0149】
【表1】

【0150】
1生理的食塩水処理対照との比較。動物群間の膿瘍形成の比較はカイ2乗解析により行った(InStat, GraphPad Software, Inc., San Diego, CA)。
表2.異なる反復単位サイズの(K-D)25による膿瘍形成に対する保護。動物は先に記載したように、チャレンジの24時間前、チャレンジ時、24時間後に皮下注射により適当なポリマーで処理した。Tzianabos, AO et al. J Clin Invest 96:2727(1995)。動物にB. fragilis(1×108cfu/ラット)または黄色ブドウ球菌PS80(1×107cfu/ラット)をチャレンジし、6日後に腹腔内膿瘍形成を調べた。
【0151】
【表2】

【0152】
1生理的食塩水処理対照との比較。動物群間の膿瘍形成の比較はカイ2乗解析により行った(InStat, GraphPad Software, Inc., San Diego, CA)。
実施例6:
膿瘍形成におけるT細胞移入試験
細胞移入実験は先に記載したように行った。Tzianabos, AO et al. J Clin Invest 96:2727(1995)。動物は脾臓摘出前1週間、PSA(10μg/用量)を全部で4用量、皮下注射した。脾臓はPSA-処理または生理的食塩水-処理ラットから摘出し、Coulter FN カウンター(Coulter Electronics Inc., Hialeah, FL)を使用して数え、トリパンブルー排除試験により生存能力を調べた。標本をナイロンウールカラムに通してT細胞を濃縮した(FACS分析による評価では純粋なT細胞は95%以上)。T細胞は記載に従って、CD4+またはCD8+T細胞に対する特異的抗体で処理して分画し(Biosource International, Camarillo, CA)、磁気ビーズによるネガティブ選択を行った(Perseptive Diagnostics, Cambridge, MA)。Finberg, RW et al. J Immunol 149:2055(1992);Haregewoin, A et al. Nature 340:309(1989)。磁気ビーズ分離後の精製した細胞集団の確認をFACS分析により行い、相当する細胞集団が95%以上純粋であることを示した。次に精製したT細胞を数え、適切な細胞数(3×106/動物)に調製して、動物への心臓内移入(0.2ml)を行った。T細胞移入24時間後に、動物にB. fragilisをチャレンジし、6日後に群ごとの膿瘍を有する動物の割合を測定した。結果を表3に示す。
【0153】
生理的食塩水処理動物由来の未分画T細胞を移入した動物は膿瘍を形成した(84%膿瘍率)が、PSA処理動物由来の未分画T細胞を移入された動物ではわずか28%が膿瘍を形成した(p=0.0001)。PSA処理動物由来のCD4+T細胞の移入はレシピエント動物における膿瘍形成率を29%に低下させた((p=0.0001)が、PSA処理ラット由来のCD8+T細胞を移入され、膿瘍を発生した動物の数は、同様の処理動物由来のCD4+T細胞を移入された動物より、有意に高かった(p<0.005)。
【0154】
表3.CD4+T細胞はB. fragilisによる膿瘍形成に対する保護を媒介する。
【0155】
【表3】

【0156】
1動物はT細胞採取前にPSA 10μgを4回、皮下注射した
2生理的食塩水処理ラット由来のT細胞を与えた動物との比較
3T細胞はラットB細胞マーカーに特異的なイソタイプ適合モノクローナル抗体とインキュベートした。
【0157】
実施例7:
双極性イオンポリマー荷電モチーフに対するCD4+T細胞反応における可溶性因子
上記保護活性についてさらに詳しく調べるために実施例6に従って、生理的食塩水-またはPSA処理動物から採取したCD4+T細胞集団は凍結/解凍を行い、細胞を溶解させるか、または1%ホルムアルデヒドで固定した。T細胞溶解産物は、濃縮T細胞集団を凍結/解凍サイクルに3回さらすことにより得た。細胞破片を遠心機で分離(3,000×g)し、残った溶解産物をin vivoT細胞移入試験に使用した(3×106細胞/動物に相当する)。得られた細胞溶解産物または固定細胞集団を実施例6に記載したようにB. fragilisによるチャレンジ24時間前に未処置のレシピエント動物に移入した。結果を表4に示す。
【0158】
生理的食塩水処理ラット由来の未処理、溶解、または固定細胞を与えた動物は膿瘍を発生した(それぞれ72%、90%および75%)。PSA処理ラット由来の無傷のCD4+T細胞、またはCD4+T細胞溶解産物を移入すると、未処理T細胞レシピエントは保護された(それぞれ22%および17%の膿瘍率)。しかし、PSA処理動物由来のCD4+T細胞を固定すると保護活性は阻害され、固定した生理的食塩水処理CD4+T細胞を与えた動物の75%と比較して88%の膿瘍率であった。
【0159】
表4.腹腔内膿瘍形成に対する移入したCD4+T細胞処理の効果
【0160】
【表4】

【0161】
1動物はT細胞採取前に生理的食塩水またはPSA(10μg)を4回、皮下注射した。
23×106細胞または同じ数の細胞に由来するT細胞溶解産物を各動物に移入した。
3生理的食塩水処理ラット由来の同様に処理したT細胞を与えた動物との比較
4NS=有意でない
実施例8:
PSA処理動物由来のT細胞によるサイトカインmRNA発現
実施例6の細胞移入実験に記載したように動物をPSAで処理し、精製した脾臓T細胞にRT-PCR分析を行った。RNeasy Mini Kit(Qiagen, Santa Clarita, CA)を使用して、精製したT細胞から総細胞RNAを集めた。簡単に述べると、1×107細胞を溶解し、反復して20ゲージ針を通すことによりホモジナイズし、RNAアフィニティーカラムにのせた。残ったDNAをDNaseI(Gibco BRL, Rockville, MD)で消化し、RNeasy Kitを使用してRNAを精製した。1%(w/v)アガロースゲルの電気泳動によりRNA完全性を確認した後、Superscript RT-PCR Kit(Gibco BRL, Rockville, MD)を使用して逆転写(RT)を行った。10μgアリコート中のRNAをオリゴ(dT)でプライム化し、取り扱い説明書に従ってRTを行った。得られたcDNAをRNase(Gibco BRL, Rockville, MD)で処理し、1.5mM MgCl2、20mM Tris-HCl、0.2mM dNTPs、0.1% TritonX-100、2.5U Taqポリメラーゼ、200ng cDNA、および各プライマー 200ngを含む50μlの反応液中でPCRを行った。タッチダウンPCRを簡素化した、ステップダウンPCRを行い、非特異的生成物の形成を減らした。Hecker, KH et al. Biotechniques 20:478(1996)。ホットスタートは94℃で20分間行った。増幅サイクルの条件は94℃、1分間の変性、各アニーリング温度(67℃、64℃、61℃、58℃、55℃および51℃)での2分間、3サイクルのアニーリング、および72℃、3分間の伸長からなる。52℃のアニーリング温度でさらに20サイクル行い、全体で38サイクル行った。IL-4のPCRは58℃のアニーリング温度で35サイクル行った。イントロンを含むプライマーはGeneStarプログラムを使用してデザインした:
β-アクチンセンス 5'-CCAACCGTGAAAAGATGACCC-3' SEQ ID NO:1
β-アクチンアンチセンス 5'-TCGTACTCCTGCTTGCTGATCC-3' SEQ ID NO:2
IL-2センス 5'-ACGCTTGTCCTCCTTGTCAAC-3' SEQ ID NO:3
IL-2アンチセンス 5'-CCATCTCCTCAGAAATTCCACC-3' SEQ ID NO:4
IL-4センス 5'-GCTGTCACCCTGTTCTGCTTTC-3' SEQ ID NO:5
IL-4アンチセンス 5'-TCATTAACGGTGCAGCTTCTC-3' SEQ ID NO:6
IL-10センス 5'-ACAATAACTGCACCCACTTCC-3' SEQ ID NO:7
IL-10アンチセンス 5'-AAATCATTCTTCACCTGCTCC-3' SEQ ID NO:8
IFN-γセンス 5'-CCATCAGCAACAACATAAGTGTC-3' SEQ ID NO:9
IFN-γアンチセンス 5'-ACTCCTTTTCCGCTTCCTTAG-3' SEQ ID NO:10。
【0162】
cDNAを含まない陰性対照を各PCRごとに増幅した。プライマーの確実性は特異的IL-2、IFN-γ、IL-4およびIL-10細胞刺激試験で確かめた。cDNA産物は1.5%アガロースゲル電気泳動を行い、臭化エチジウムで染色して視覚化した。結果を図7に示す。
【0163】
Th1サイトカインIL-2およびIFN-γの上昇したmRNAレベルはPSA処理動物から採取したT細胞から検出した。さらに、Th2サイトカインIL-10の転写物も観察された。IL-4の転写物の存在は上記T細胞標本からは認められなかった。生理的食塩水処理動物由来のT細胞の分析ではIL-2、IFN-γ、IL-4およびIL-10のmRNA転写物は認められなかった。
【0164】
実施例9:
サイトカイン-特異的抗体による保護の中和
保護に移入におけるサイトカインの役割を評価するために、実施例7に記載したT細胞溶解産物は特異的サイトカインを中和するために抗体で処理した。上記抗体中和試験のために、3×106細胞/動物当量を50μgの適当な抗体と30分間、室温で混合し、心臓内に投与した。中和実験には、IL-2特異的ポリクローナル抗体(BioSource International, Camarillo, CA)およびIL-10およびIFN-γに特異的なモノクローナル抗体(PharMingen, San Diego, CA)を使用した。イソタイプ適合ラット抗体を陰性対照として使用した。結果を表5に示す。
【0165】
PSA処理動物由来T細胞溶解産物にIFN-γまたはIL-10に特異的な抗体の添加は膿瘍形成に対する保護の移入を中和しなかった。生理的食塩水処理動物由来のT細胞溶解産物と上記サイトカイン特異的抗体の混合は、チャレンジ後に膿瘍を形成するレシピエント動物の能力に変化をおこさなかった。しかし、PSA処理動物由来T細胞溶解産物とIL-2特異的抗体を混合すると保護活性は阻害された。イソタイプ適合対照抗体と混合したPSA溶解産物を移入した動物の膿瘍形成率27%と比べ、IL-2特異的抗体と混合したPSA溶解産物を移入した膿瘍形成率は76%であった(p<0.0005)。
【0166】
表5.移入したT細胞溶解産物のサイトカイン特異的抗体処理による効果
【0167】
【表5】

【0168】
1動物はT細胞採取前に生理的食塩水またはPSA(10μg)を4回、皮下注射した。4×106T細胞当量を各動物に移入した。
2それぞれの生理的食塩水対照群との比較
3動物はイソタイプ適合対照Abで処理した。
4偽Abと混合したPSA溶解産物との比較
実施例10:
膿瘍形成に対するIL-2媒介保護
膿瘍形成に対して保護をするIL-2の役割を示すために、B. fragilisの腹腔内チャレンジ時に組み換え型IL-2を心臓内投与により動物に投与する実験を行った。結果を表6に示す。
【0169】
IL-2による保護は用量依存的であった。1000または100pgのIL-2を投与された動物は生理的食塩水を投与された動物より膿瘍が少なかった(p<0.002)が、10pgでは有意な保護は見られなかった。100pgのIL-2を投与された動物は生理的食塩水を投与された動物に比べ、有意に低い腫瘍形成率であった(表6、実験A、27%対70%、p<0.005)上記の量のIL-4を投与された動物では膿瘍形成に対する保護が見られなかった(75%膿瘍率)。
【0170】
表6.組み換え型IL-2による膿瘍形成に対する保護1
【0171】
【表6】

【0172】
1動物にB. fragilis 108cfu/動物をチャレンジした。
2生理的食塩水処理対照群との比較3有意でない
実施例11:
膿瘍形成に対するIL-10媒介保護
膿瘍モデルにおけるIL-10の役割をさらに検討するために、B. fragilis 1×108cfuのチャレンジ時に、組み換え型IL-10、抗-IL-10、またはイソタイプ適合抗体対照による雄Wistarラット(150g)の処理を開始した。肺炎連鎖球菌1型CPを単独または抗-IL-10と一緒に処理した群を使用してさらに比較を行った。動物はチャレンジ6日後に致死させ、試験を行った。結果を表7に示す。
【0173】
イソタイプ適合対照抗体で処理した動物はすべて膿瘍を形成したが、1型CPまたは組み換え型IL-10で処理したラットは膿瘍形成から保護された(両群でp<0.0001)。単独または1型CPと組み合わせた抗-IL-10を添加すると膿瘍形成に対する有意な保護は見られなかった。組み換え型IL-10の保護効果および1型CPによる保護効果の抗-IL-10による阻害はともに、本発明の双極性イオン多糖による処理と膿瘍形成に対するIL-10媒介保護との関連を示す。
【0174】
表7.IL-10による膿瘍形成に対する保護1
【0175】
【表7】

【0176】
1動物には108cfu/動物のB. fragilisをチャレンジした。
2イソタイプ適合抗体対照と比較し、Fisherの試験(Fisher's exact test)により計算した。
3チャレンジ開始時、24、48、72時間後に腹腔内投与。
4チャレンジ開始24時間前、開始時、24時間後に皮下投与。
【0177】
実施例12:
PSA処理により誘発したIgG抗体抑制
SVJマウスは0日に、腹腔内投与によりPSA 50μg、およびIII型B群連鎖球菌多糖および破傷風トキソイドを含むコンジュゲートワクチン 2μgで処理した。対照にはPSAのかわりに生理的食塩水を投与した。21日後にコンジュゲートワクチンのブースター量を投与し、接種後38および56日に動物から採血した。捕捉剤として特異的抗原を使用して、サンドイッチELISAにより抗体-特異的IgGレベルを試験した。結果を図8に示す。
【0178】
抗体レベルのELISA試験は、PSA処理動物のIII型多糖に特異的なIgGレベルは生理的食塩水処理動物に比較して抑制されることを示した。さらに、PSA処理動物の破傷風トキソイド特異的IgGのレベルも生理的食塩水処理動物に比べて低かった。従ってPSA処理は多糖およびペプチド抗体に対するIgG反応を抑制した。
【0179】
実施例13:
肺炎連鎖球菌1型CPによる術後外科的癒着抑制
ラット(1群10匹)を外科的処置24時間前、処置時、および24時間後に、生理的食塩水(100μl)、ペクチン(生理的食塩水 100μl中、ポリガラクツロン酸、100μg)、または肺炎連鎖球菌1型CP(生理的食塩水 100μl中に、2つのガラクツロン酸残基および2-アセタミド-4-アミノ-2,4,6-トリデオキシガラクトースをもつ三糖反復単位、80kDa、100μg)を皮下注射した。癒着は先に記載したものを若干修正して誘発した。Kennedy, R et al. Surgery 120:866(1996)。簡単に述べると、腹腔の正中線切開を3cm行い、盲腸を露出した。盲腸は点状出血が見えるようになるまで外科用ガーゼで擦りむいた。盲腸を腹壁腔に挿入し、並置する腹壁を同様の方法で擦りむいた。上記処置後、先に記載されたように、滅菌したラット盲腸内容物(0.5ml)を腹膜腔に添加した。Onderdonk, AB et al. J Clin Invest 69:9(1982)。創傷は4.0絹糸で縫合した。動物は6日後に致死させ、癒着形成を調べた。癒着は先の記載に従い、以下のように0〜5までの等級をつけた:0、癒着なし;1、薄膜状の癒着;2、薄膜一枚より厚い癒着;3、焦点のある厚い癒着;4、平面付着のある厚い癒着;5、非常に厚い癒着または一平面以上の癒着。Kennedy, R et al. Surgery 120:866(1996)。結果を図9に示す。
【0180】
1型CPで処理したラットはペクチン処理ラットより癒着スコアが有意に低かった(非ペアt検定によりp<0.001)。これらのデータは、正および負の荷電基をともに有する双極性イオン多糖(Zps)の非経口的投与が、負に荷電した基のみを有する多糖(ペクチン)に比べ、癒着形成を抑制することを示す。
【0181】
実施例14:
癒着形成におけるT細胞移入試験
実施例6と同様に脾臓摘出前1週間、動物に肺炎連鎖球菌1型CP(50μg/用量)を全部で4用量、皮下注射した。生理食塩水または多糖処理動物から単離した細胞を分画し、数え、実施例13の方法に従って癒着誘発24時間前に心臓内投与により移入した。動物は致死させ、6日後に癒着の等級(0〜5)を付けた。結果を図10に示す。
【0182】
先に肺炎連鎖球菌1型CPで処理したドナー由来のCD4+T細胞を移入した動物の癒着スコアは、生理的食塩水を投与した対照由来のT細胞を移入した動物に比べて50%低下した(p<0.02)。
【0183】
[配列の簡単な説明]
SEQ ID NO: 1はβ-アクチンcDNAの増幅のためのセンスプライマーの核酸配列である。
【0184】
SEQ ID NO: 2はβ-アクチンcDNAの増幅のためのアンチセンスプライマーの核酸配列である。
SEQ ID NO: 3はIL-2 cDNAの増幅のためのセンスプライマーの核酸配列である。
【0185】
SEQ ID NO: 4はIL-2 cDNAの増幅のためのアンチセンスプライマーの核酸配列である。
SEQ ID NO: 5はIL-4 cDNAの増幅のためのセンスプライマーの核酸配列である。
【0186】
SEQ ID NO: 6はIL-4 cDNAの増幅のためのアンチセンスプライマーの核酸配列である。
SEQ ID NO: 7はIL-10 cDNAの増幅のためのセンスプライマーの核酸配列である。
【0187】
SEQ ID NO: 8はIL-10 cDNAの増幅のためのアンチセンスプライマーの核酸配列である。
SEQ ID NO: 9はIFN-γ cDNAの増幅のためのセンスプライマーの核酸配列である。
【0188】
SEQ ID NO: 10はIFN-γ cDNAの増幅のためのアンチセンスプライマーの核酸配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマー、ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電された遊離アミノ部分および陰性電荷から構成され、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分は少なくとも32Åの介在配列により分離されており、およびここで介在配列は中性である;および医薬として受容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項2】
ポリマーが非反復ユニットを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリマーが反復ユニットを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ポリマーが同一反復ユニットを有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ポリマーが非同一反復ユニットを有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマーが混合ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
混合ポリマーがペプチド-核酸である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ポリマーが少なくとも10の反復電荷モチーフを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ポリマーが少なくとも15の反復電荷モチーフを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ポリマーが少なくとも20の反復電荷モチーフを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも115Åの距離だけ分離されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも155Åの距離だけ分離されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも200Åの距離だけ分離されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
ポリマーが合成ポリペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
ポリマーが非天然ポリペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
ポリマーが、少なくとも一つの修飾アミノ酸を有するポリペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
ポリマーが、少なくとも10の修飾アミノ酸を有するポリペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
ポリマーが、1:1の陽性対陰性電荷比を有するポリペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリペプチド、ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電された遊離アミノ部分および陰性電荷から構成され、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分は少なくとも8アミノ酸により分離されている;および医薬として受容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項20】
ポリペプチドが非反復ユニットを有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ポリペプチドが反復ユニットを有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
ポリペプチドが少なくとも10の反復電荷モチーフを有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
ポリペプチドが少なくとも15の反復電荷モチーフを有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
ポリペプチドが少なくとも20の反復電荷モチーフを有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷が少なくとも一つの中性アミノ酸により分離されている、請求項19に記載の組成物。
【請求項26】
反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷が少なくとも五つの中性アミノ酸により分離されている、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷が隣接するアミノ酸上にあり、および中性アミノ酸で分離されていない、請求項19に記載の組成物。
【請求項28】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも27アミノ酸の距離だけ分離されている、請求項19に記載の組成物。
【請求項29】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも37アミノ酸の距離だけ分離されている、請求項19に記載の組成物。
【請求項30】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも47アミノ酸の距離だけ分離されている、請求項19に記載の組成物。
【請求項31】
ポリペプチドが合成ポリペプチドである、請求項19に記載の組成物。
【請求項32】
ポリペプチドが非天然ポリペプチドである、請求項19に記載の組成物。
【請求項33】
ポリペプチドが少なくとも一つの修飾アミノ酸を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項34】
ポリペプチドが少なくとも10の修飾アミノ酸を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項35】
ポリペプチドが1:1の陽性対陰性電荷比を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項36】
荷電された反復を分離しているアミノ酸が中性アミノ酸である、請求項19に記載の組成物。
【請求項37】
IL-2分泌細胞と少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマーを接触させることから成るIL-2分泌を誘導するための方法であって、ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電された遊離アミノ部分および陰性電荷から構成され、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、およびここでポリマーは非反復ユニットを有する、前記方法。
【請求項38】
ポリマーが少なくとも10の反復電荷モチーフを有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ポリマーが少なくとも15の反復電荷モチーフを有する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
ポリマーが少なくとも20の反復電荷モチーフを有する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷が少なくとも一つの中性ユニットにより分離されている、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷が少なくとも五つの中性ユニットにより分離されている、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷が隣接するユニット上にあり、および中性ユニットで分離されていない、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
ポリマーが合成ポリマーである、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
ポリマーが非天然ポリマーである、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
ポリマーがポリペプチドである、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
陽性に荷電された遊離アミノ部分が天然に存在する陽性に荷電されたアミノ酸から生じる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
陽性に荷電されたアミノ酸がリジン(K)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)およびヒスチジン(H)から成る群より選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
陽性に荷電されたアミノ酸がリジンである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
陰性電荷が天然に存在する陰性に荷電されたアミノ酸から生じる、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
陰性に荷電されたアミノ酸がアスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)から成る群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
陰性に荷電されたアミノ酸がアスパラギン酸である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
ポリペプチドの少なくとも一つのユニットが化学的に修飾されたアミノ酸である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも27アミノ酸の距離だけ分離されている、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも37アミノ酸の距離だけ分離されている、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも47アミノ酸の距離だけ分離されている、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
ポリペプチドが少なくとも一つの修飾アミノ酸を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項58】
ポリペプチドが少なくとも10の修飾アミノ酸を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項59】
ポリマーが1:1の陽性対陰性電荷比を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項60】
荷電された反復を分離しているアミノ酸が中性アミノ酸である、請求項46に記載の方法。
【請求項61】
IL-2分泌細胞と少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリペプチドを接触させることから成るIL-2分泌を誘導するための方法であって、ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電された遊離アミノ部分および陰性電荷から構成され、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分は少なくとも8アミノ酸の距離だけ分離されている、前記方法。
【請求項62】
ポリペプチドが反復ユニットから形成され、およびここで反復電荷モチーフは反復ユニットの少なくとも一部である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
IL-2分泌を誘導することによりIL-2応答性障害を処置するための方法であって、IL-2応答性障害を有する患者に、IL-2分泌を誘導するために有効量の、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマーを投与することから成る方法、ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電された遊離アミノ部分および陰性電荷から構成され、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、およびここで患者は手術を受ける準備がなされていない、前記方法。
【請求項64】
IL-2応答性障害がAIDS、腎細胞癌腫およびメラノーマから成る群より選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
感染に付随する膿瘍形成に対する保護を誘導する方法であって、IL-2およびIL-2誘導化合物から成る群より選択される化合物が、膿瘍形成に対する保護を誘導するために有効量含まれている医薬製剤をそのような保護を必要としている患者に投与することから成る方法。
【請求項66】
IL-2誘導化合物が活性化T細胞、SEA、抗CD-3抗体、酸化的化学物質およびツカレソールから成る群より選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
感染に付随する膿瘍形成に対する保護を誘導する方法であって、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマーが、膿瘍形成に対する保護を誘導するために有効量含まれている医薬製剤をそのような保護を必要としている患者に投与することから成る方法、ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電された遊離アミノ部分および陰性電荷から構成され、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、およびここでポリマーは非反復ユニットを有する、前記方法。
【請求項68】
医薬製剤がIL-2を誘導する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
医薬製剤がIL-10を誘導する、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
患者が膿瘍形成状態に暴露される前に医薬製剤が患者に投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
患者が膿瘍形成状態に暴露された後に医薬製剤が患者に投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
医薬製剤が手術を必要とする患者に投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
医薬製剤が手術を受けている患者に投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
患者が膿瘍形成状態に暴露された後に医薬製剤が患者に投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項75】
医薬製剤がペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、シクラシリン、エピシリン、ヘタシリン、ピバンピシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、fルクロキサシリン、カルベニシリン、チカルシリン、アブロシリン、メツロシリン、ピペラシリン、アムジノシリン、セファレキシン、セファラジン、セファドキシル、セファゾリン、セフロキシム、アキセチル、セファマンドール、セフォニシド、セフォキシチン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフメノキシム、セフトリアキソン、モキサラクタム、セフォテタン、セフォペラゾン、セフタジドム、イミペネム、クラブラナート、チメンチン、スルバクタム、ネオマイシン、エリスロマイシン、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、バンコマイシン、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、アミノグリコシド、キノロン、テトラサイクリンおよびリファムピンからなる群より選択される一つまたはそれ以上の抗菌剤とともに与えられる、請求項67に記載の方法。
【請求項76】
ポリマーが少なくとも10の反復電荷モチーフを有する、請求項67に記載の方法。
【請求項77】
ポリマーが少なくとも15の反復電荷モチーフを有する、請求項67に記載の方法。
【請求項78】
ポリマーが少なくとも20の反復電荷モチーフを有する、請求項67に記載の方法。
【請求項79】
反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷が少なくとも一つの中性ユニットにより分離されている、請求項67に記載の方法。
【請求項80】
反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷が少なくとも五つの中性ユニットにより分離されている、請求項67に記載の方法。
【請求項81】
反復電荷モチーフの陽性および陰性電荷が隣接するユニット上にあり、および中性ユニットで分離されていない、請求項67に記載の方法。
【請求項82】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも47アミノ酸の距離だけ分離されている、請求項67に記載の方法。
【請求項83】
ポリマーが合成ポリマーである、請求項67に記載の方法。
【請求項84】
ポリマーが非天然ポリマーである、請求項67に記載の方法。
【請求項85】
ポリマーが非ポリサッカリドである、請求項67に記載の方法。
【請求項86】
ポリマーが非ポリペプチドである、請求項67に記載の方法。
【請求項87】
ポリマーがポリペプチドである、請求項67に記載の方法。
【請求項88】
陽性に荷電された遊離アミノ部分が天然に存在する陽性に荷電されたアミノ酸から生じる、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
陽性に荷電されたアミノ酸がリジン(K)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)およびヒスチジン(H)から成る群より選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
陽性に荷電されたアミノ酸がリジンである、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
陰性電荷が天然に存在する陰性に荷電されたアミノ酸から生じる、請求項87に記載の方法。
【請求項92】
陰性に荷電されたアミノ酸がアスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)から成る群より選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
陰性に荷電されたアミノ酸がアスパラギン酸である、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
ポリペプチドの少なくとも一つのユニットが化学的に修飾されたアミノ酸である、請求項87に記載の方法。
【請求項95】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも27アミノ酸の距離だけ分離されている、請求項87に記載の方法。
【請求項96】
少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分が少なくとも37アミノ酸の距離だけ分離されている、請求項87に記載の方法。
【請求項97】
ポリペプチドが少なくとも一つの修飾アミノ酸を有する、請求項87に記載の方法。
【請求項98】
ポリペプチドが少なくとも10の修飾アミノ酸を有する、請求項87に記載の方法。
【請求項99】
ポリマーが1:1の陽性対陰性電荷比を有する、請求項87に記載の方法。
【請求項100】
荷電された反復を分離しているアミノ酸が中性アミノ酸である、請求項87に記載の方法。
【請求項101】
感染に付随する膿瘍形成に対する保護を誘導する方法であって、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリペプチドが、膿瘍形成に対する保護を誘導するために有効量含まれている医薬製剤をそのような保護を必要としている患者に投与することから成る方法、ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電された遊離アミノ部分および陰性電荷から構成され、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分は少なくとも8アミノ酸の距離だけ分離されている、前記方法。
【請求項102】
ポリペプチドは反復ユニットで形成され、およびここで反復電荷モチーフは反復ユニットの少なくとも一部である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
抗原提示細胞存在下、T細胞と、IL-2分泌を誘導するために有効量の、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマーを接触させることから成るT細胞の活性化法であって、ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電された遊離アミノ部分および陰性電荷から構成され、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、およびここでポリペプチドは非反復ユニットを有する、前記T細胞の活性化法。
【請求項104】
抗原提示細胞存在下、T細胞と、IL-2分泌を誘導するために有効量の、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリペプチドを接触させることから成るT細胞の活性化法であって、ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電された遊離アミノ部分および陰性電荷から構成され、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分は少なくとも8アミノ酸の距離だけ分離されている、前記T細胞の活性化法。
【請求項105】
ポリペプチドは反復ユニットで形成され、およびここで反復電荷モチーフは反復ユニットの少なくとも一部である、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
T細胞を活性化してTh1-細胞特異性サイトカインを分泌させることによりT細胞応答性障害を処置するための方法であって、T細胞応答性障害を有する患者に、T細胞によるIL-2分泌を誘導するために有効量の、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマーを投与することから成る方法、ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電された遊離アミノ部分および陰性電荷から構成され、ここで少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電された遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、およびここで患者は手術を受ける準備がなされていない、前記方法。
【請求項107】
T細胞応答性障害がインシュリン依存性糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患および同種移植片拒絶から成る群より選択される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
特異的抗原への不適切なIgG抗体応答により特徴付けられる障害を有する患者を処置するための方法であって、不適切なIgG抗体により特徴付けられる障害を有する患者に、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する50キロダルトン未満のポリマーが、特異的抗原に対するIgG抗体応答を抑制するために有効量含まれている医薬製剤を投与することから成る方法、ここで反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されており、ここでポリマーがポリペプチドの場合、3〜7部のリジン(K)、1〜3部のグルタミン酸(E)、4〜7部のアラニン(A)、0.5〜2部のチロシン(Y)の相対モル比のK、E、AおよびY残基でポリマーは構成されておらず、およびここで患者は手術を受けるために準備されていない、前記方法。
【請求項109】
医薬製剤が日に一度患者に投与される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
医薬製剤が1:1の陽性対陰性電荷比を有する、請求項108に記載の方法。
【請求項111】
手術部位で起こる外科的手術後癒着形成を減少させる方法であって、そのような保護を必要としている患者の手術部位以外の部位に、外科的手術後癒着形成に対する保護を誘導するために有効量の、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する双性イオン性ポリマーを投与することから成る方法、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されている、前記方法。
【請求項112】
双性イオン性ポリマーがIL-2を誘導する、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
双性イオン性ポリマーがIL-10を誘導する、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
ポリマーの分子量が約1.5キロダルトンから約50キロダルトンである、請求項111に記載の方法。
【請求項115】
ポリマーがポリペプチドを含む、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
ポリマーの分子量が約50キロダルトンより大きく、約500キロダルトンより小さい、請求項111に記載の方法。
【請求項117】
ポリマーがポリサッカリドを含んでいる、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
ポリマーの分子量が約500キロダルトンに等しいかまたはより大きく、約5000キロダルトンまでである、請求項111に記載の方法。
【請求項119】
患者が手術部位を含んでいる手術過程を受ける前に投与が始まる、請求項111に記載の方法。
【請求項120】
患者が手術部位を含んでいる手術過程を受ける少なくとも1日前に投与が始まる、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
ポリマーが架橋されていない、請求項111に記載の方法。
【請求項122】
ポリマーが少なくとも部分的に架橋されている、請求項111に記載の方法。
【請求項123】
手術部位以外の部位での投与が全身的である、請求項111に記載の方法。
【請求項124】
手術部位以外の部位での投与が静脈内および皮下から成る群より選択される投与経路を含む、請求項111に記載の方法。
【請求項125】
ポリマーが非反復ユニットを有する、請求項111に記載の方法。
【請求項126】
有効量が患者の体重kg当たり約1-10mgである、請求項111に記載の方法。
【請求項127】
手術部位で起こる外科的手術後癒着形成を減少させる方法であって、そのような保護を必要としている患者の手術部位に、外科的手術後癒着形成に対する保護を誘導するために有効量の、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する双性イオン性非ポリサッカリドポリマーを局所的に投与することから成る方法、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されている、前記方法。
【請求項128】
非ポリサッカリドポリマーの分子量が約1.5キロダルトンから約50キロダルトンである、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
非ポリサッカリドポリマーの分子量が約50キロダルトンより大きく、約500キロダルトンより小さい、請求項127に記載の方法。
【請求項130】
非ポリサッカリドポリマーの分子量が約500キロダルトンに等しいかまたはより大きく、約5000キロダルトンまでである、請求項127に記載の方法。
【請求項131】
非ポリサッカリドポリマーがポリペプチドを含む、請求項127に記載の方法。
【請求項132】
患者が手術部位を含んでいる手術過程を受ける前に投与が始まる、請求項127に記載の方法。
【請求項133】
患者が手術部位を含んでいる手術過程を受ける少なくとも1日前に投与が始まる、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
非ポリサッカリドポリマーが架橋されていない、請求項127に記載の方法。
【請求項135】
非ポリサッカリドポリマーが少なくとも部分的に架橋されている、請求項127に記載の方法。
【請求項136】
非ポリサッカリドポリマーが非反復ユニットを有する、請求項127に記載の方法。
【請求項137】
有効量が患者の体重kg当たり約1-10mgである、請求項127に記載の方法。
【請求項138】
手術部位で起こる外科的手術後癒着形成を減少させる方法であって、そのような保護を必要としている患者の手術部位に、外科的手術後癒着形成に対する保護を誘導するために有効量の、少なくとも二つの反復電荷モチーフを有する双性イオン性ポリサッカリドポリマーを局所的に投与することから成る方法、ここで、反復電荷モチーフは陽性に荷電した遊離アミノ部分および陰性電荷から成っており、少なくとも二つの反復電荷モチーフの陽性に荷電した遊離アミノ部分は少なくとも32Åの距離だけ分離されている、前記方法。
【請求項139】
ポリサッカリドポリマーの分子量が約1.5キロダルトンから約50キロダルトンである、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
ポリサッカリドポリマーの分子量が約50キロダルトンより大きく、約500キロダルトンより小さい、請求項138に記載の方法。
【請求項141】
患者が手術部位を含んでいる手術過程を受ける前に投与が始まる、請求項138に記載の方法。
【請求項142】
患者が手術部位を含んでいる手術過程を受ける少なくとも1日前に投与が始まる、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
ポリサッカリドポリマーが架橋されていない、請求項138に記載の方法。
【請求項144】
ポリサッカリドポリマーが少なくとも部分的に架橋されている、請求項138に記載の方法。
【請求項145】
ポリサッカリドポリマーが非反復ユニットを有する、請求項138に記載の方法。
【請求項146】
有効量が患者の体重kg当たり約1-10mgである、請求項138に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−121986(P2011−121986A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32678(P2011−32678)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【分割の表示】特願2000−609078(P2000−609078)の分割
【原出願日】平成12年3月31日(2000.3.31)
【出願人】(501368643)ザ・ブリガーム・アンド・ウーメンズ・ホスピタル・インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】