説明

免疫調節作用を有する化合物

【課題】 望ましくない免疫応答を回避するとともに、免疫応答能を高めることができる
免疫調節作用を有する物質を提供するこことを目的とする。
【解決手段】 魚類の卵の破砕液の上清を遠心して可溶性画分とし、前記可溶性画分を有
機溶媒により抽出して有機溶媒抽出画分とし、前記有機溶媒抽出画分を遠心して得た沈殿
を緩衝液に懸濁して緩衝液懸濁画分とし、前記緩衝液懸濁画分をホモジナイズ後遠心した
上清から得られる免疫調節作用を有する化合物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節作用を有する化合物に関し、より詳細には、魚類の卵から得られる
、免疫調節作用を有する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体においては、抗原が体内へ侵入したときにこれらを特異的に排除する反応が
免疫系において起こる。これは免疫応答と呼ばれ、生態防御機構の1つとして知られてい
る。
【0003】
免疫応答には体液性免疫と細胞性免疫とがあるが、この免疫応答は、上記の抗原に特異
的であること、反応し得る抗原の種類が109という膨大な数に上ること、一度侵入した
抗原に対しての記憶が残ること(免疫記憶)、応答が自律的に終息すること、そして自ら
が有している抗原物質に対しては反応しないこと(免疫寛容)といった特徴を備えている

【0004】
例えば、個体が、ある細菌という抗原に初めて接すると、免疫系の細胞がこの抗原を認
識し、この結果、この細菌に対する免疫反応が惹起されることになる。場合によっては、
寛容(トレランス)になったりもする。
【0005】
上記の細菌は、一次抗原であり、一次抗原刺激に対しては、5つあるヒトの免疫グロブ
リン(以下、「Ig」ということがある)のクラスのうち、まず、IgMクラスの抗体が
産生され(一次応答)、これが大勢を占める。一方、この細菌に次に接した場合には、こ
れは二次抗原刺激となり、IgGクラスの抗体が優位に産生される(二次応答)ことが知
られている。
【0006】
一次応答と二次応答とを比較してみると、二次応答における抗原と抗体との親和力は、
一次応答における親和力よりも遙かに高く、アフィニティ・マチュレーションが起こって
いる。
【非特許文献1】免疫学イラストレイテッド 87頁 南江堂 1986年4月25日 第6刷発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
免疫応答においてこうした一次応答と二次応答とが起こることを利用した病気の予防と
して、各種ワクチンの接種が行われているが、1回の接種では十分な免疫記憶が形成され
ないため、複数回の接種が必要とされることがある。そして、2回目の接種の際にアナフ
ィラキシーが起こることもある。アナフィラキシーはアレルギー反応の1種であり、免疫
応答の1つの表れであるが、急速で激しい症状を呈することが特徴である。
【0008】
したがって、このような望ましくない免疫応答を回避しつつ、免疫応答能を高めること
が強く要望されていた。そして、こうした免疫応答能を高めるときに、免疫調節作用を有
する物質をうまく用いることができれば、安全性も確保されることとなる。
【0009】
本発明の発明者らは、上記のような事情の下で鋭意研究を進め、本発明を完成したもの
である。本発明は、魚類の卵の破砕液から得られる、免疫調節作用を有する化合物を提供
することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、魚類の卵の破砕液の上清を遠心分離して可溶性画分とし、前記可
溶性画分を有機溶媒により抽出して有機溶媒抽出画分とし、前記有機溶媒抽出画分を遠心
分離して得た沈殿を緩衝液に懸濁して緩衝液懸濁画分とし、前記緩衝液懸濁画分をホモジ
ナイズ後遠心分離した上清から得られる免疫調節作用を有する化合物である。
【0011】
ここで、前記魚類の卵としては、ニシン、タラ、サケ、トビウオ、ホキ及びシシャモからなる群より選ばれる少なくとも一つの卵を使用することが好ましい。
また、前記有機溶媒は、アセトン、n−ヘキサン及びエタノールからなる群より選ばれ
る少なくとも一つであることが好ましい。
【0012】
そして、前記有機溶媒による抽出は、−30℃〜−10℃に冷却したアセトン、n−ヘ
キサン及びエタノールからなる群より選ばれる少なくとも一つを、前記可溶性画分と等量
加えて、一夜、静置することによって行うことが好ましい。
【0013】
上記の有機溶媒を用いて、以上のように抽出操作を行うことにより、免疫調節作用を有
する化合物を、魚類の卵の破砕液から効率良く抽出することが可能となる。
【0014】
ここで、前記免疫調節作用は免疫グロブリンの産生量を変動させるものであり、前記免
疫グロブリンの産生量の変動は、免疫グロブリン産生細胞数又は前記細胞の免疫グロブリ
ン産生能の変動に依存するものであることが好ましい。
【0015】
このため、免疫グロブリン産生細胞数が増加するか、これらの細胞による免疫グロブリ
ンの産生能が上昇することにより、免疫調節作用が発揮されることになる。
【0016】
前記免疫グロブリン産生細胞は、ヒト型親細胞と肺癌患者のリンパ球とを融合させて得
られたハイブリドーマであることが好ましい。そして、前記免疫グロブリンは、免疫グロ
ブリンMであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、魚類の卵の破砕液に対して、遠心、溶媒抽出等の処理を行うことによ
り、簡便な手順で免疫調節作用を有する化合物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、本発明の化合物の抽出に用いた、魚類の卵について説明する。
本発明に使用する魚類としてはニシン、タラ、サケ、トビウオ、ホキ及びシシャモ等
が挙げられる。
前記魚類は一種もしくは二種以上を使用することができる。
また本発明に使用する魚類の卵としては、ニシン、タラ、サケ、トビウオ、ホキ及びシシャモ等の卵を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
中でもニシン、タラ、サケ、トビウオ、ホキ及びシシャモからなる群より選ばれる少な
くとも一つの卵を使用することが好ましく、ニシンの卵であるカズノコを使用することが
、一定の質の材料を容易に入手できることからさらに好ましい。
【0019】
上記の魚類の卵から、後述する免疫調節作用を有する化合物を抽出するにあたっては、
最初に、卵を破砕して破砕液を得る。この破砕は、特に水や溶媒を加えることなく、所定
量の魚類の卵を秤量し、容器中で、フードプロセッサー、ホモジナイザー等を使用して行
うことができる。こうした破砕器具の中でも、フードプロセッサーを使用すると、破砕効
率が高い。
【0020】
ついで、得られた破砕液から不溶物を除くために、1〜10℃の温度範囲、好ましくは
2〜5℃の温度範囲、さらに好ましくは約4℃にて遠心分離を行い、上清を得る。得られ
た上清から、1〜10℃の温度範囲、好ましくは2〜5℃の温度範囲、さらに好ましくは
約4℃にて超遠心分離を行った後に得られる可溶性画分に対し、有機溶媒を用いた抽出を
行う。
【0021】
こうした有機溶媒としては、アセトン、n−ヘキサン、エタノール等を挙げることがで
きる。アセトン、n−ヘキサン、エタノールからなる群から選ばれる有機溶媒を用いるこ
とが、免疫調節作用を有する化合物を効率よく抽出することができる点で好ましい。
【0022】
前記有機溶媒は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0023】
そして、約−30℃〜約−10℃に冷却した上記の有機溶媒、より好ましくは、アセト
ンを、上記可溶性画分の半量〜2倍量加えて抽出操作を行う。抽出時間は一夜、静置した
ままで行う。ここで、上記の有機溶媒は約−20℃に冷却することが好ましく、上記可溶性
画分と等量加えることが、抽出効率の点からさらに好ましい。
【0024】
冷却した有機溶媒を用いて静置するという抽出方法をとることとしたのは、タンパク質
を効率よく抽出できるという理由によるものである。
【0025】
一般に、「免疫調節」とは、免疫応答に関与する免疫担当細胞が、抗体や種々の生理活
性物質を分泌し、その作用を通じて免疫現象を調節することをいう。本明細書中、「免疫
調節作用」には、こうした免疫現象の調節作用に加え、免疫担当細胞数の増減及び抗体産
生能の上下によって生じる、免疫現象の変動も含まれるものとする。
【0026】
ここで、「免疫担当細胞」は、一般的には、複数の細胞の相互反応によって成立する免
疫応答において、この相互反応に関与し、免疫応答を成立させる細胞の総称である。具体
的には、T細胞及びB細胞からなるリンパ球、抗原を提示する抗原提示細胞等を挙げるこ
とができ、抗原提示細胞としては、樹状細胞、マクロファージ等を挙げることができる。
本明細書中においては、これらのほかに、こうした免疫担当細胞と他の細胞とのハイブリ
ドーマも「免疫応答細胞」に含まれるものとする。
【0027】
免疫担当細胞のうち、免疫グロブリン(以下、「Ig」ということがある)を産生する
Ig産生細胞によるIgの産生量の変動は、免疫調節に大きな影響を与える。ヒトの免疫
グロブリンには、5つのクラスがあることが知られており、これらの中でも、一次免疫応
答に関わるIgMと二次免疫応答に関わるIgG、IgE等の産生量は、免疫調節作用に
与える影響が大きい。
【0028】
そして、Ig産生細胞数が増加した場合に、及びIg産生細胞における産生能が上昇し
た場合には、Igの産生量そのものが増加し、この逆の場合には産生量が減少することに
なる。
【0029】
本発明の免疫調節作用を有する化合物は、Ig産生細胞数を増減させるか、これら産生
細胞における産生能を上下させることにより、免疫調節作用を発揮することとなる。そし
て、Ig産生細胞数の増減と、これら産生細胞における産生能の上下とを同時に生じさせ
る場合もある。
【0030】
本発明の免疫調節作用を有する化合物は、Ig産生細胞のうち、ヒト型親細胞と癌患者
のリンパ球とを融合させて得られたハイブリドーマに対して作用を発揮することが好まし
い。
【0031】
こうしたハイブリドーマとしては、ヒトのリンパ腫由来の癌細胞を親株とするHB4C
5等を挙げることができる。HB4C5を使用すると、この細胞から分泌されるIgMを指標として、免疫調節作用を容易に測定することができる。
【0032】
以下に、本発明の免疫調節作用を有する化合物を得るための手順を、魚類の卵としてカ
ズノコを、有機溶媒としてアセトンを用い、免疫調節作用についてHB4C5を用いた場
合を例に挙げて説明する。
【0033】
カズノコを、秤量して遠心可能なチューブにとり、例えば、フードプロセッサーを用い
て破砕し、破砕液を得る。この破砕液を低速で遠心分離し、不溶物を除去した後に超遠心
分離し、可溶性画分を得る。
【0034】
遠心分離可能なチューブとしては、例えば、15mLコニカルチューブ(コーニング社
製)、50mLコニカルチューブ(コーニング社製又はヌンク社製)等を挙げることがで
きる。
【0035】
得られた可溶性画分に、−20℃に冷却したアセトンを等量加えて、一夜静置すること
により抽出操作を行う。ここで回収した沈殿に緩衝液を加えてホモジナイズし、超遠心分
離して不溶物を除き、上清を回収する。なお、上清が複数層に分かれる場合には、各層ご
とに回収する。
【0036】
ホモジナイズに使用する緩衝液としては、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液等を挙げ
ることができ、緩衝能の高いリン酸緩衝液を使用することが好ましい。なお、リン酸緩衝
液は、後述する透析においても使用することができる。
【0037】
回収した上清の各層を、個別に緩衝液に対して透析することにより、目的とする免疫調
節作用を有する化合物を含む画分(以下、「粗精製画分」ということがある)を得ること
ができる。
【0038】
上記のようにして得た粗精製画分を試料として、以下の手順に従い、この画分の免疫調
節作用を測定する。免疫調節作用は、ハイブリドーマの細胞数の増加と、培養上清中にお
ける免疫グロブリンの増加量とを指標として評価することができる。
【0039】
継代培養した上記のハイブリドーマを2日間前培養する。また、上述した試料を、あら
かじめ設定した希釈倍率となるように、培養液で希釈した希釈液を調製する。
【0040】
前培養を終えたハイブリドーマの培養液を、所望の濃度となるように培養液で調製し、
これを所定の濃度となるようにシャーレ又は96穴プレート等にまき、ここに上述したよ
うに調整した免疫調節作用を有する化合物を含む画分の希釈液を加えて、所定の条件で培
養する。
【0041】
また、免疫調節作用を測定するため、無血清培地を使用することが好ましく、こうした
培地としては、EDRF培地、RPMI1640等を挙げることができる。EDRF培地
に、インスリン、トランスフェリン、エタノールアミン、及びセレナイト(以下、ITE
Sということがある)を添加すると、血清の影響を受けずに活性を測定できるという利点
があることから、後述するハイブリドーマの培養においては、ITESを所定の濃度で添
加したEDRF培地(以下、ITES−EDRF培地)を使用することが好ましい。
【0042】
ついで、所定の倍率に希釈した上述した画分を、あらかじめ用意した96穴培養プレー
トに所望の最終濃度となるように添加し、あらかじめ調製しておいた4×ITESをこの
96穴培養プレートに所定量ずつ加える。
【0043】
ここに、あらかじめ調製した2×EDRF培地を用いて、上述の各細胞を96穴培養プ
レート1穴当たり約5×10 cells/mLとなるように加える。
【0044】
ついで、これらの96穴培養プレートを5%COインキュベータ中、37℃にて約6
時間培養し、培養上清中の免疫グロブリンの濃度を、抗体を用いて常法に従って測定する

【0045】
ここで使用する抗体は、ハイブリドーマの親株と、産生される免疫グロブリンのタイプ
に依存する。すなわち、ハイブリドーマがヒトの細胞を親株とする場合には、産生される
免疫グロブリンもヒト型のものとなるため、抗ヒト抗体を使用することとなる。また、産
生される免疫グロブリンがIgMの場合には、抗ヒトIgM抗体を使用することとなり、
IgGの場合には、抗ヒトIgG抗体を使用することとなる。
【0046】
こうして得られたハイブリドーマ細胞の細胞数と、免疫グロブリンの産生量を、対照と
比較して活性を評価することができる。
【実施例1】
【0047】
(実施例)
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に
何ら限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)カズノコからのアセトン等による各画分の抽出
(1−1)材料等
カズノコは、オランダ産の市販品(−20℃にて冷凍保存されたもの)を購入したもの
を使用した。
【0049】
アセトンは和光純薬工業(株)より特級品を購入したものを使用した。また、水は、超
純水を蒸留して使用した。マイクロチューブは、容量1,500μLのものをアシスト社
より購入したものを使用した。
【0050】
(1−2)アセトン抽出画分の調製
上述したカズノコ3本分(冷凍重量75g)を室温で解凍した後に、フードプロセッサ
ーにより破砕し、破砕液約50mLを得た。この破砕液を、4℃、8,000×g(10
,000rpm)にて30分間遠心し、不溶物を除去して上清約30mLを得た。
【0051】
この上清を、4℃、260,000×g(80,000rpm)にて60分間超遠心し
、可溶性画分を得た。可溶性画分は2層に分離したため、上層、下層を別々に分取した。
回収量は、可溶性画分上層が4mL、同下層が15mLであった。
【0052】
可溶性画分下層10mLに対し、−20℃で冷却した等量のアセトンを加え、4℃にて
一晩静置し、その後、4℃、8,000×gにて30分間遠心して沈殿を回収した。得ら
れた沈殿に、10mMのリン酸緩衝液(pH7.4)を17mL添加し、全量を25mL
とした。
【0053】
これをホモジナイズした後に、4℃、100,000×gにて、30分間遠心して不溶
物を沈殿させ、上清22mLを回収した。回収した上清を、500倍の10mMリン酸緩
衝液(pH7.4)に対して透析し、試験用サンプルとした。
【0054】
(実施例2)上記各画分の免疫調節作用測定
(2−1)試料、試薬等
上記の実施例1で得られたカズノコのアセトン画分について、免疫調節作用を検討した

【0055】
免疫調節作用は、HB4C5を後述する条件にて培養し、IgMの産生量を指標として
評価した。IgMの産生量は、抗ヒトIgM抗体(バイオソース社製)を用いた酵素抗体法により測定した。
【0056】
ヒト型親細胞であるNAT−30と、肺癌患者のリンパ球とを融合させて作製されたヒ
ト−ヒトハイブリドーマであるHB4C5細胞は、九州大学村上教授より分与を受けた。
また、この細胞の培養には、EDRF培地を、極東製薬工業(株)より購入して使用した
。添加物であるインスリン、トランスフェリン、エタノール及びセレナイトは、シグマ社
より購入して使用した。
【0057】
(2−2)ハイブリドーマHB4C5に対するアセトン抽出画分の免疫調節作用の測定
継代培養したハイブリドーマHB4C5を、58cmのシャーレ2枚に、2×10
cells/mLでまき、2日間培養し、8×10 cells/mLの懸濁液を調製
した。
【0058】
上述した実施例1で調製した各試料を、1倍〜310倍までの濃度になるよう、リン酸
緩衝液を用いて希釈した。段階希釈した各試料50μLを、あらかじめ用意した96穴培
養プレートの各穴にそれぞれ分注した。
【0059】
ついで、以下のようにして4×ITESを調製した。すなわち、200μLのインスリ
ン(200μg)、200μLのトランスフェリン(800μg)、200μLのエタノ
ールアミン(0.192μg)、及び200μLのセレナイト(4.84μg)を合わせ
、ここに蒸留水9.2mLを加えて10mLとし、4×ITESを調製した。こうして調
製した4×ITESを、500μLずつ、上記の2mLの各シャーレに分注した。
【0060】
次に、EDRF粉末17.7gを500mLの蒸留水に溶解して調製した2×EDRF
培地10mL以上を用いて、ハイブリドーマHB4C5を1×10 cells/mL
に調製した。このハイブリドーマHB4C5を含む2×EDRF培地を、上記のプレート
の各穴に100μLずつ分注した。
【0061】
これらのシャーレを5%COインキュベータ中、37℃にて6時間培養し、培養上清
中のIgMの量を、上述した抗ヒト抗体を用いた酵素抗体法により、測定した。
【0062】
結果を表1及び図1に示す。
【0063】
【表1】

以上より、カズノコのアセトン抽出画分には、高い免疫調節作用があることが示された

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の免疫調節作用を有する化合物は、医薬品の分野、特に免疫の一次応答に関わる
医薬品の分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】カズノコのアセトン抽出画分に含まれる化合物の免疫調節作用が、希釈倍率によってどのように変化するのかを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚類の卵の破砕液の上清を遠心分離して可溶性画分とし、前記可溶性画分を有機溶媒により抽出して有機溶媒抽出画分とし、前記有機溶媒抽出画分を遠心分離して得た沈殿を緩衝液に懸濁して緩衝液懸濁画分とし、前記緩衝液懸濁画分をホモジナイズ後遠心分離した上清から得られる免疫調節作用を有する化合物。
【請求項2】
前記魚類の卵は、ニシン、タラ、トビウオ、ホキ及びシシャモからなる群より選ばれる少なくとも一つの卵であることを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節作用を有する化合物。
【請求項3】
前記有機溶媒は、アセトン、n−ヘキサン及びエタノールからなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の免疫調節作用を有する化合物。
【請求項4】
前記有機溶媒による抽出は、−30℃〜−10℃に冷却したアセトン、n−ヘキサン、及びエタノールからなる群より選ばれる少なくとも一つを、前記可溶性画分の半量〜2倍量加えて行うものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の免疫調節作用を有する化合物。
【請求項5】
前記免疫調節作用は、免疫グロブリンの産生量を変動させるものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の免疫調節作用を有する化合物。
【請求項6】
前記免疫グロブリンの産生量の変動は、免疫グロブリン産生細胞数又は前記細胞の免疫グロブリン産生能の変動に依存するものであることを特徴とする、請求項5に記載の免疫調節作用を有する化合物。
【請求項7】
前記免疫グロブリン産生細胞は、ヒト型親細胞と肺癌患者のリンパ球とを融合させて得られたハイブリドーマであることを特徴とする、請求項6に記載の免疫調節作用を有する化合物。
【請求項8】
前記免疫グロブリンは、免疫グロブリンMであることを特徴とする、請求項5に記載の免疫調節作用を有する化合物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−91654(P2007−91654A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284301(P2005−284301)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(590006398)マルトモ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】