説明

免震ベースプレート取付治具と取付方法

【課題】本発明は、免震ベースプレート取付治具に関し、従来の免震ベースプレート取付治具において、コンクリートを打設した後から該コンクリート硬化前の期間においてベースプレートの位置調整ができないということが課題であって、それを本発明によって解決することである。
【解決手段】免震装置のベースプレートを位置決めする治具であって、前記ベースプレートの上を跨いで門型筐体4で前記ベースプレート14を吊持し、前記門型筐体4の梁2から前記ベースプレート14を吊持する吊持ボルト5によって上下のZ方向と左右のX方向の調整が可能にされ、前記門型筐体4における支柱3の下部で前後のY方向の調整が可能であるようにした免震ベースプレート取付治具1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置を建物の基礎に取り付ける際に、ベースプレートをコンクリート硬化まで位置調整可能にする免震ベースプレート取付治具と免震ベースプレートの取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、免震装置を建物に設置する場合、図5に示すように、建物の基礎上に耐圧スラブの配筋を施工し、ベースプレート用のアンカーを打ち込んでそのアンカーの高さを調整してベースプレート14を取付け、その後、前記ベースプレート14の周囲に図中の破線で示す型枠15を組み込み、その型枠15内に先行コンクリートをポンプ圧送装置で打設する。このようなベースプレート14の免震基礎構築におけるコンクリート充填方法が特許文献1に記載されて公知となって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−127035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図5に示すように、従来の免震ベースプレート取付治具は、基礎スラブ11に打ち込んだアンカー12と鉄筋棒13等とを溶接して固定し、この鉄筋棒13とベースプレート14のアンカー14aとを溶接して固定している。よって、ベースプレート14のセット時は当該ベースプレートのレベル調整は容易であるが、溶接して固定完了した後のベースプレート14のレベル調整は、X,Y,Z方向の3方向とも不可能である。コンクリート打設に伴うベースプレートの位置に変位があった場合に、前記ベースプレート14を適宜に対応させることができないという課題がある。本発明に係る免震ベースプレート取付治具は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る免震ベースプレート取付治具の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、免震装置のベースプレートを位置決めする治具であって、前記ベースプレートの上を跨いで門型筐体で前記ベースプレートを吊持し、前記門型筐体の梁から前記ベースプレートを吊持する吊持ボルトによって上下のZ方向と左右のX方向の調整が可能にされ、前記門型筐体における支柱の下部で前後のY方向の調整が可能であることである。
【0006】
前記梁は、コ字型チャンネルバーを背中合わせに適宜間隙をおいて背向させてなり、前記間隙に吊持ボルトが上下方向に挿通され、該吊持ボルトの上部に調整ナットが螺合されていること、;
前記門型筐体は、一つのベースプレートに対して1対装備され、この一対の支柱においてY方向の調整が可能であること、;
を含むものである。
【0007】
本発明に係る免震ベースプレートの取付方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、前記本発明に係る免震ベースプレート取付治具を使用して、免震ベースプレートを門型筐体で吊持しながら免震基礎のコンクリートを免震基礎用型枠内に打設し、その打設したコンクリートが硬化する前において前記免震ベースプレートの前後,左右,上下の3方向の位置調整をすることである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の免震ベースプレート取付治具によれば、ベースプレートの下にコンクリートを打設した後で該コンクリートの硬化する前であれば、容易に左右(X),前後(Y),上下(Z)の3方向にベースプレートの位置を微調整させることができると言う優れた効果を奏するものである。
前記取付治具を形成するときに、コ字型チャンネルバーを背中合わせに適宜間隙をおいて背向させることで、吊持ボルトによる前後、上下の2方向の位置調整が容易にできるようになる。1対の門型筐体により、治具を容易に形成することができる。
【0009】
本発明に係る取付方法によれば、前記免震ベースプレート取付治具により、打設したコンクリートが硬化する前において前記免震ベースプレートの前後,左右,上下の3方向の位置調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る免震ベースプレート取付治具1を基礎スラブ11上に設置した状態の正面図である。
【図2】同本発明の免震ベースプレート取付治具1を、図1におけるA−A線視した平面図である。
【図3】同本発明の免震ベースプレート取付治具1における支柱3の正面図(A)とB−B線に沿った断面図(B)とである。
【図4】本発明の免震ベースプレート取付治具1によるベースプレート14の設置工程を順に示す説明図(A),(B),(C)である。
【図5】同従来例に係るベースプレート取付治具による、ベースプレート14を基礎スラブ11上に設置し固定した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る免震ベースプレート取付治具1は、図1に示すように、門型筐体4を形成してベースプレート14を上から吊持するようにしたものである。
【実施例1】
【0012】
本発明に係る免震ベースプレート取付治具1は、図1に示すように、免震装置のベースプレート14を位置決めする治具であって、前記ベースプレート14の上を跨いで門型筐体4で前記ベースプレート14を吊持し、前記門型筐体4を構成する梁2から前記ベースプレート14を吊持する吊持ボルト5によって上下のZ方向と左右のX方向の調整が可能にされ、前記門型筐体4を構成する両側の支柱3のそれぞれの下部で前後のY方向の調整が可能である。
【0013】
前記門型筐体4における梁2は、鋼製コ字型チャンネルバー2a,2aを背中合わせに適宜間隙6をおいて背向させてなり、該コ字型チャンネルバー2aの長手方向の端部で連結ブラケット7によって固定されている。なお、梁2の断面形状は、上記コ字型に限らず、L字型等でもよい。
【0014】
図1乃至図2に示すように、前記間隙6に、全ネジタイプの吊持ボルト5が上下方向に挿通され、該吊持ボルト5の上部に調整ナット8と、下側に定着ナット9とが螺合されている。ナット10は、ベースプレート14に吊持ボルト5を螺着させた後の固定ナットである。この吊持ボルト5は、前記調整ナット8で上下方向の調整を行い、定着ナット9でその位置に定着させるものである。なお、X方向の位置は、予め間隙6の間を前記吊持ボルト5をベースプレート14とともに移動させるものである。
【0015】
前記門型筐体4は、一つのベースプレート14に対して1対装備され、この一対の支柱3においてY方向の調整が可能である。この支柱3は、図3(A),(B)に示すように、断面コ字型の鋼製チャンネルバーであり、前記梁2とは前記連結ブラケット7の基部7aを介してプレート16によってボルト21及びナット21aで固定され、下部は、プレート17が設けられ、基礎スラブ11に打ち込まれたアンカー18aにネジ止めされるボルト18によって位置固定される。
【0016】
前記プレート17の中央部には、図3(B),(C)に示すように、ネジ孔17bが設けられ、このネジ孔17bにレベル調整ボルト19が貫通して螺着される。レベル調整ボルト19と定着ナット19aで高さ(Z方向)が調整される。このレベル調整ボルト19の下に、ボルトが基礎スラブ11にめり込まないように調整用プレート20が敷設してある。また、Y方向の位置調整には、前記プレート17におけるボルト18挿通用の長孔17aがY方向に長孔となっていて、Y方向へ調整できるようになっている。
【実施例2】
【0017】
本発明に係る免震ベースプレート取付治具1は、1対の門型筐体4,4を使用するので、これらを長手方向の端部位置で鋼製バーで溶接・固定して一体に連結して、井桁状に構成しても良い。
【0018】
本発明に係る免震ベースプレート取付治具1の使用方法は、図1に示すように、木製等の介い物15aの上にベースプレート14を載置し、図1及び図2に示すように、アンカー18aを基礎スラブ11へ所定の位置に打ち込む。門型筐体4,4を前記ベースプレート14に跨らせて、ボルト18をプレート17の長孔17aに挿通させて前記アンカー18aにねじ込み取り付けることで、当該門型筐体4,4を起立させる。
【0019】
そして、前記門型筐体4における間隙6に吊持ボルト15を挿通させる。この吊持ボルト5には、予めナット9,10を装着しておく。前記吊持ボルト5の下端部をベースプレート14のアンカー14aにおけるメネジ部14bに螺着する。
【0020】
前記ナット10をベースプレート14に向かって締め込む。前記吊持ボルト5の上部に調整ナット8を装着させて、ベースプレート14の左右(X方向)の位置を合わせるとともに、前記調整ナット8でベースプレート14の下面の位置を免震基礎上端の位置に合わせる。前記ナット9を梁2に向かって締め込む。こうして、ベースプレート14の位置決めがなされた後に、前記介い物15aを撤去する。
【0021】
前記門型筐体4の支柱3におけるレベル調整ボルト19をネジ孔17bに装着して締め込み、その先端が調整用プレート20上面に当たったところで、定着ナット19aを締め込んで定着させ、更に、ボルト18を締め込んで、ベースプレート14の上下方向(Z)の位置決めをする。また、前後方向(Y)の位置調整を、図3(B),(C)に示すように、長孔17aによって門型筐体4を移動させて前記ボルト18を締め込んで行う。
【0022】
こうして、図4(A)に示すように、ベースプレート14がX,Y,Z方向にそれぞれ位置決めされ、且つ、門型筐体4,4によって宙に浮いた状態で吊持される。その後、免震基礎部の配筋を完了させてその周囲を型枠15で囲う。そして、図4(B),(C)に示す手順でコンクリートを打設する。前記打設するコンクリートに気泡などが混入しないようにホッパー16aを使用してコンクリートを打設する場合には、図2に示すベースプレート14の中央の打設孔14bから流し込んで、オーバーフローさせるものである。
【0023】
そして、前記型枠15内に打設したコンクリートがまだ硬化しないうちに、ベースプレート位置の計測を行い、前記ベースプレート14の位置調整が必要になった場合には、前記調整ナット8とレベル調整ボルト19と、ボルト18とで、左右(X),前後(Y),上下(Z)方向の位置調整を行う。
【0024】
左右(X)方向の調整は、ナット9を弛めて行い、前後(Y)方向には、ボルト18を弛めて行う。上下(Z)方向には、吊持ボルト5と調整ナット8及び定着ナット9とで行う場合と、レベル調整ボルト19及び定着ナット19aで行う場合との2通りがある。適宜にいずれか一方若しくは両方を調整して行う。このように、免震基礎用のコンクリートを打設した後でも、当該コンクリートの硬化前であれば、ベースプレート14の位置調整ができるようになったものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る免震ベースプレート取付治具1は、適宜大きさの吊持用治具として広く適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 免震ベースプレート取付治具、
2 梁、
2a コ字型チャンネルバー、
3 支柱、
4 門型筐体、
5 吊持ボルト、
6 間隙、
7 連結ブラケット、 7a 基部、
8 調整ナット、
9 定着ナット、
10 ナット、
11 基礎スラブ、
12 アンカー、
13 鉄筋棒、
14 ベースプレート、
14a アンカー、 14b メネジ部、
15 型枠、 15a 介い物、
16 プレート、 16a ホッパー、
17 プレート、 17a 長孔
18 ボルト、 18a アンカー、
19 レベル調整ボルト、 19a 定着ナット、
20 調整用プレート、
21 ボルト、 21a ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震装置のベースプレートを位置決めする治具であって、
前記ベースプレートの上を跨いで門型筐体で前記ベースプレートを吊持し、前記門型筐体の梁から前記ベースプレートを吊持する吊持ボルトによって上下のZ方向と左右のX方向の調整が可能にされ、前記門型筐体における支柱の下部で前後のY方向の調整が可能であること、
を特徴とする免震ベースプレート取付治具。
【請求項2】
梁は、コ字型チャンネルバーを背中合わせに適宜間隙をおいて背向させてなり、前記間隙に吊持ボルトが上下方向に挿通され、該吊持ボルトの上部に調整ナットが螺合されていること、
を特徴とする請求項1に記載の免震ベースプレート取付治具。
【請求項3】
門型筐体は、一つのベースプレートに対して1対装備され、この一対の支柱においてY方向の調整が可能であること、
を特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の免震ベースプレート取付治具。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の免震ベースプレート取付治具を使用して、免震ベースプレートを門型筐体で吊持しながら免震基礎のコンクリートを免震基礎用型枠内に打設し、その打設したコンクリートが硬化する前において前記免震ベースプレートの前後,左右,上下の3方向の位置調整をすること、
を特徴とする免震ベースプレートの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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