説明

免震建物のエレベータシャフトの構築方法

【課題】免震建物のエレベータシャフトを構築する場合に、免震上部構造から吊り下げられるエレベータシャフトを構築する際の下部躯体との間の狭いスペースでの足場組み立て、型枠建て込み、型枠解体、足場解体作業がなくなり、安全でかつ効率的な作業を行うことができ、コスト的にも、工期的に大きな効果を期待できる。
【解決手段】免震装置上の上部構造体3の基礎部分を構築した時点で、エレベータシャフトの構築用鉄骨5を吊り降ろし、エレベータシャフトの鉄骨フレームを組み立て、もしくは、エレベータシャフトの鉄骨フレームを地組し、先行してエレベータシャフト位置に吊り降ろし、鉄骨フレームをかわして免震装置上の上部構造体3の躯体を構築し、エレベータシャフトの鉄骨フレームを前記上部構造体から吊り下げ、エレベータシャフトの床8を施工の上、エレベータシャフトの壁9としてALC等のプレキャスト版を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震建物のエレベータシャフトの構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータシャフトは一体の構造体で構成し、地震時もシャフトはエレベータの1本のまっすぐな通路として成り立っていなければならず、これは上部構造体と下部躯体が分かれ、下部躯体が上部構造体を免震ゴム等で支承するいわゆる免振建物でも同様である。
【0003】
また、エレベータシャフトの下にはエレベータピットを設けることが義務付けられていて、エレベータのカゴが落下した時に2重のスラブがあることで、スラブを貫通してのカゴが落下することによる2次災害を防止している。
【0004】
なお、免震建物のエレベータシャフトに関する特許文献としては下記のものがある。
【特許文献1】特開平11−11821号公報
【特許文献2】特開2004−257042号公報
【0005】
前記特許文献1は、中間階免震ビルにおいて、免震層を貫通するエレベータの断面積を小さくしてコスト低減や敷地の有効活用を図るもので、ビルを構成する躯体の中間階に免震層が設けられ、躯体における免震層よりも上階の部分から、免震層を縦断してエレベータガイドが貫通され、該エレベータガイドに沿ってケージが昇降するよう設けられた中間階免震ビルのエレベータ支持構造であって、前記エレベータガイドは、前記躯体における前記免震層よりも下階の部分に、緩衝部材を介して支持されていることを特徴とする中間階免震ビルのエレベータ支持構造である。
【0006】
前記特許文献2は、エレベータシャフトの周囲に特別な骨組を構築することなく、免震層による建物の下層構造体と上層構造体の相対変位に追随可能なエレベータ支持構造を提供するもので、建物の上層構造体が、建物の下層構造体の上に免震層を介して支持され、エレベータ装置を内蔵したエレベータコアが前記上層構造体と独立して設けられ、このエレベータコアの下部が前記下層構造体に連結され、前記エレベータコアの上部が前記上層構造体の上部に連結されたことを特徴とする、中間層免震建物のエレベータ支持構造である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、エレベータシャフトは一体の構造体で構成されることから、鉄筋コンクリートの壁とスラブで構成され、免震建物においても上部構造体から吊り下げる形となっていることが多い。
【0008】
この吊り下げ部分においては、免震装置の揺れ幅分30〜50cm程度しか周囲にスペースがない。
【0009】
そこで従来は下部の躯体の鉄筋・型枠を組み立て、コンクリートを打設した後、下部躯体の型枠を解体してできるだけ大きな隙間を確保し、その上で、狭いスペ−スで単管抱き足場等最小の足場を組み、エレベータシャフト壁型枠を組んでいる。
【0010】
前記のように狭いスペースなので、型枠の建て込み、解体作業上、作業性が悪い。また、足場も単管抱き足場しか入らず、十分なスペースの安全な足場を確保できずに、危険な作業を強いることになる。
【0011】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、免震上部構造から吊り下げられるエレベータシャフトを構築する際の下部躯体との間の狭いスペースでの足場組み立て、型枠建て込み、型枠解体、足場解体作業がなくなり、安全でかつ効率的な作業を行うことができ、コスト的にも、工期的に大きな効果を期待できる免震建物のエレベータシャフトの構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前記目的を達成するため、第1に、免震装置上の上部構造体の基礎部分を構築した時点で、エレベータシャフトの構築用鉄骨を吊り降ろし、エレベータシャフトの鉄骨フレームを組み立て、エレベータシャフトの床を施工の上、エレベータシャフトの壁としてALC等のプレキャスト版を取り付けることを要旨とするものである。
【0013】
第2に、エレベータシャフトの鉄骨フレームを地組し、先行してエレベータシャフト位置に吊り降ろし、鉄骨フレームをかわして免震装置上の上部構造体の躯体を構築し、エレベータシャフトの鉄骨フレームを前記上部構造体から吊り下げ、エレベータシャフトの床を施工の上、エレベータシャフトの壁としてALC等のプレキャスト版を取り付けることを要旨とするものである。
【0014】
請求項1記載の本発明によれば、免震装置上の上部構造体の基礎部分ができた時点で、エレベータシャフトの構築用鉄骨を吊り降ろし、基礎部分から吊り下げ、エレベータシャフトの鉄骨フレームを組み立て、エレベータシャフトの床を施工の上、エレベータシャフトの壁としてALC等のプレキャスト版を取り付けることで、エレベータシャフト内側から施工することが可能となり、作業の効率化、危険作業の排除が行える。
【0015】
請求項2記載の本発明によれば、鉄骨フレームを地組し、免震装置上の上部構造体の施工前に先行して設置位置に搬入し、上部構造体の施工後、鉄骨フレームを吊り上げる。その後、床のデッキプレートを敷き、コンクリートを打設して、壁としてALC等のプレキャスト版を取り付けることで、エレベータシャフト内側から施工することが可能となり、作業の効率化、危険作業の排除が行える。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように本発明の免震建物のエレベータシャフトの構築方法は、免震上部構造から吊り下げられるエレベータシャフトを構築する際の下部躯体との間の狭いスペースでの足場組み立て、型枠建て込み、型枠解体、足場解体作業がなくなり、安全でかつ効率的な作業を行うことができ、コスト的にも、工期的に大きな効果を期待できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の免震建物のエレベータシャフトの構築方法の第1実施形態を示す説明図で、図中1は下部躯体、2は下部躯体1上に設置する免震装置としての免震ゴム、3は免震装置としての免震ゴム2上の上部構造体である。
【0018】
下部躯体1にはエレベータピット4を形成している。免震装置上の上部構造体3の基礎部分(基礎、梁、スラブ等)を構築した時点、例えば鉄筋コンクリート造(RC造)ならば、型枠支保工を組み、鉄筋を配筋し、型枠にコンクリート打設し、コンクリートの強度が出て、型枠支保工を解体した後、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)ならば、鉄骨建方、鉄筋配筋、型枠組み、コンクリート打設し、コンクリートの強度が出たならば、型枠支保工を解体した後、鉄骨造(S造)ならば、鉄骨建方の後、図3に示すように、エレベータシャフトの構築用鉄骨5を吊り降ろす。
【0019】
この鉄骨5はエレベータシャフトの床開口から吊り降ろし、梁下等に埋め込んでおいたフックにチェーンブロック等(滑車を架け、ウィンチでワイヤー巻き、あるいは電動チェーンフロック)を使用して、吊り降ろした鉄骨5は前記基礎部分から吊り下げるようにしてもよい。鉄骨5によりエレベータシャフトの鉄骨フレーム6を組み立てる。
【0020】
図4に示すように、エレベータシャフト鉄骨上部の大梁7を取り付ける。この大梁7は3分割のものを地組してから、上から落とし込むようにして取り付ける。
【0021】
エレベータシャフトの鉄骨フレーム6は大梁7から吊り下げ、エレベータシャフトの床8を施工の上、エレベータシャフトの壁9としてALC等のプレキャスト版を取り付ける。床8は、デッキプレートを敷き、コンクリートを打設する、もしくはプレキャスト版で施工する。壁9を施工するプレキャスト版としては、ALC版以外のものでもよい。
【0022】
図2は本発明の第2実施形態を示すもので、エレベータシャフトの鉄骨フレーム6を地組し、先行してエレベータシャフト位置に吊り降ろす。
【0023】
前記鉄骨フレーム6をかわして免震装置(免震ゴム2)上の上部構造体3の躯体を構築する。
【0024】
前記と同じように、エレベータシャフトの鉄骨フレーム6は大梁7から吊り下げることで前記上部構造体3から吊り下げる。この場合、鉄骨フレーム6をクレーン等(ウィンチ、チェーンブロック、電動チェーンブロック)で吊り上げ、上部構造体3下に埋め込んだインサートに固定する。
【0025】
前記第1実施形態と同じくエレベータシャフトの床を施工の上、エレベータシャフトの壁としてALC等のプレキャスト版を取り付ける。床は、デッキプレートを敷き、コンクリートを打設する、もしくはプレキャスト版で施工する。壁を施工するプレキャスト版としては、ALC版以外のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の免震建物のエレベータシャフトの構築方法の第1実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の免震建物のエレベータシャフトの構築方法の第2実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明の免震建物のエレベータシャフトの構築方法の1工程を示す説明図である。
【図4】大梁取り付けの説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1…下部躯体 2…免震ゴム
3…上部構造体 4…エレベータピット
5…鉄骨 6…鉄骨フレーム
7…大梁 8…床
9…壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震装置上の上部構造体の基礎部分を構築した時点で、エレベータシャフトの構築用鉄骨を吊り降ろし、エレベータシャフトの鉄骨フレームを組み立て、エレベータシャフトの床を施工の上、エレベータシャフトの壁としてALC等のプレキャスト版を取り付けることを特徴とした免震建物のエレベータシャフトの構築方法。
【請求項2】
エレベータシャフトの鉄骨フレームを地組し、先行してエレベータシャフト位置に吊り降ろし、鉄骨フレームをかわして免震装置上の上部構造体の躯体を構築し、エレベータシャフトの鉄骨フレームを前記上部構造体から吊り下げ、エレベータシャフトの床を施工の上、エレベータシャフトの壁としてALC等のプレキャスト版を取り付けることを特徴とした免震建物のエレベータシャフトの構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−30735(P2010−30735A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194406(P2008−194406)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】