免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法
【課題】ベースプレートの下面と充填材充填用空間に充填される充填材との境界での空気溜まりを生じにくくできる免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法を提供する。
【解決手段】免震基礎を構築する型枠105を配置するとともに、注入孔93を有するベースプレート90を上記型枠105で規定される空間の上端部に設置し、この型枠105内に先行コンクリートを打設して先行コンクリートの上面とベースプレート90の下面92との間に充填材充填用空間69を設けた後、ベースプレート90の注入孔93を介して充填材充填用空間69に充填材を充填する充填方法において、上記注入孔93の近傍において先行コンクリートの上面からベースプレート90の下面92まで充填材を盛り上げた後、充填材が同心円状に外側に拡大しながら充填材充填用空間69に充填されるようにした。
【解決手段】免震基礎を構築する型枠105を配置するとともに、注入孔93を有するベースプレート90を上記型枠105で規定される空間の上端部に設置し、この型枠105内に先行コンクリートを打設して先行コンクリートの上面とベースプレート90の下面92との間に充填材充填用空間69を設けた後、ベースプレート90の注入孔93を介して充填材充填用空間69に充填材を充填する充填方法において、上記注入孔93の近傍において先行コンクリートの上面からベースプレート90の下面92まで充填材を盛り上げた後、充填材が同心円状に外側に拡大しながら充填材充填用空間69に充填されるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事務所ビル、工場あるいは集合住宅などの建築物の基礎において、免震装置を設置する際に、免震装置のベースプレートの下部に高流動コンクリートまたはグラウト材(モルタル)などの充填材を充填する充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免震装置を据え置く基礎(土台)となる免震基礎の上面に免震装置の下部のベースプレートを設置する作業は以下のように行われている。まず、建築物の床版コンクリートを形成し、床版コンクリート上の所定の位置に型枠を組み立て、型枠内にコンクリートを打設して免震基礎の下部コンクリートを形成する。下部コンクリート上にベースプレートを受ける架台を設置するとともに、免震基礎を補強するはかま筋を組み立てる。ベースプレートは、円形や多角形に形成された厚さ10〜30mm程度の鉄板のような平板である。架台の上部にはベースプレート設置面を形成するための3個以上のベースプレート支持体が設けられており、架台に設けられたベースプレート支持体の上下移動機構を操作してベースプレート支持体の上下位置を調整することによってベースプレート設置面の水平レベルを調整する。架台上部に形成された水平レベル調整後のベースプレート設置面にベースプレートの下面を載置し、ベースプレートの上面が水平面となるように設置する。ベースプレートの中央部には、ベースプレートの上下面に貫通する注入孔が形成されている。
グラウト材のような充填材やコンクリートを、ホッパー及び自動突き棒装置を備えた充填装置を用いて注入孔よりベースプレート下に注入する。この際、ホッパーの充填材排出口とベースプレートの注入孔とが合うようにベースプレートの上面に充填装置が設置される。まず、コンクリートがホッパー内からホッパーの充填材排出口及びベースプレートの注入孔を経由して型枠で囲まれたベースプレート下に打設されることによって先行コンクリートが形成される。この際、先行コンクリートの天端がベースプレートの下面より下方に約30〜50mm程度の位置まで来るようにする。即ち、先行コンクリートの天端とベースプレートの下面との間に約30〜50mm程度の充填材充填用空間が形成される。そして、充填材がホッパー内からホッパーの充填材排出口及びベースプレートの注入孔を経由して充填材充填用空間内に打設供給されて上端部充填材層が形成される(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開平11−293933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法によれば、ベースプレート90下に落下する流動速度の遅い充填材を使用した場合や、充填材が途切れ途切れに投入されたりした場合など、図16に示すように、充填材が先行コンクリート95の天端95tより上方向に山状に盛り上がるように積み重なりにくく、先行コンクリート95の天端95tに落下した充填材がすぐに周辺に拡がって面状になり、広い面を形成したままベースプレート90の下面92に面接触するため、その下面92の真下に存在する空気が充填材により押出されないまま充填材が充填されるので、充填材内への空気の巻き込みが多くなる。即ち、充填材が盛り上がるよりも先に周辺に拡がってしまうため、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じやすくなる。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、ベースプレートの下面と充填材充填用空間に充填される充填材との境界での空気溜まりを生じにくくできる免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、免震基礎を構築する型枠を配置するとともに、注入孔を有するベースプレートを上記型枠で規定される空間の上端部に設置し、この型枠内に先行コンクリートを打設して先行コンクリートの上面とベースプレートの下面との間に充填材充填用空間を設けた後、ベースプレートの注入孔を介して充填材充填用空間に充填材を充填する充填方法において、上記注入孔の近傍において先行コンクリートの上面からベースプレートの下面まで充填材を盛り上げた後、充填材が同心円状に外側に拡大しながら充填材充填用空間に充填されるようにしたので、充填材が先行コンクリートの天端より上方向に山状に盛り上がるように積み重ねられた後にベースプレートの下面に接する山ができた後に放射状に周囲に拡がるので、充填材が充填材充填用空間の空気を押出しながら充填されるため、充填材とベースプレートの下面との間の空気を少なくできる。よって、充填材充填用空間に対する充填材の充填性が向上し、充填材が密実に充填されて空気溜まりの少ない上端部充填材層を形成できる。つまり、ベースプレートの下面と充填材充填用空間に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じにくくなり、ベースプレートの下面と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
円錐形状の漏斗部を介して充填材を充填材充填用空間に連続して供給したので、充填材充填用空間に連続して流下する充填材の圧力及び充填材の流動速度が速くなるので、充填材充填用空間への充填材の充填性が良くなって、ベースプレートの下面と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
上記充填材として、内径5cm、長さ10cmの円筒を平面に直立させた状態で円筒内に充填された後、円筒が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材を用いたので、上述したように、充填材が先行コンクリートの天端より上方向に山状に盛り上がるように積み重ねられた後にベースプレートの下面に接する山ができた後に放射状に周囲に拡がるので、充填材が充填材充填用空間の空気を押出しながら充填されるため、充填材とベースプレートの下面との間の空気を少なくできる。
上記充填材として、セメントと膨張材粉末とから成る結合材と、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物から成る第1の粉体とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物から成る第2の粉体とから成る増粘材と、細骨材と、セメント混和剤粉末と、水とが混ぜ合わされて形成され、単位水量が380〜440kg/m3、水と結合材との比が34.0〜60.0%、第1の粉体の量と第2の粉体の量との和が2.50〜4.00kg/m3、セメント混和剤粉末の量が0.90〜2.00kg/m3であり、上述のように円筒が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材と同様の流動特性を有するモルタルを用いたので、充填材が先行コンクリートの天端より上方向に山状に盛り上がるように積み重ねられた後にベースプレートの下面に接する山ができた後に放射状に周囲に拡がるので、充填材が充填材充填用空間の空気を押出しながら充填されるため、充填材とベースプレートの下面との間の空気を少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
最良の形態1
図1乃至図5は最良の形態1を示し、図1は充填装置の断面図を示し、図2は充填材のフロー試験を示し、図3はフロー試験を行った充填材の流動特性を示し、図4は充填材の組成を示し、図5は充填装置の充填材の充填を示す。
【0006】
まず、図1乃至図5を参照し、ベースプレート90の構成、ベースプレート90の設置作業、免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法の概要について説明する。
図外の免震装置を据え置く基礎(土台)となる免震基礎16の上面16aに設置されることになるベースプレート90は、例えば厚さ10〜30mm程度の鉄板により形成され、ベースプレート90の表面(以下、上面という)91と裏面(以下、下面という)92とに貫通する注入孔93を備える。
このベースプレート90の設置作業は、まず、建築物の床版コンクリート100を形成し、床版コンクリート100上の所定の位置に型枠105を組み立て、型枠内94にコンクリートを打設して先行下部コンクリート95aを形成する。先行下部コンクリート95a上にベースプレート90を受ける架台96を設置するとともに、免震基礎16を補強する図外の鉄筋をはかま筋として組み立てる。架台96の上部にはベースプレート設置面98を形成するための3個以上のベースプレート支持体99が設けられており、架台96に設けられたベースプレート支持体99の上下移動機構101(ねじ式上下機構など)を操作してベースプレート支持体99の上下位置を調整することによってベースプレート設置面98の水平レベルを調整する。架台96の上部に形成された水平レベル調整後のベースプレート設置面98にベースプレート90の下面92を載置し、ベースプレート90の上面91が水平面となるように設置固定する。
そして、充填装置1を用い、ベースプレート90の注入孔93を介して型枠内94にコンクリートを打設して先行上部コンクリート95bを形成する。この場合、先行上部コンクリート95bの天端95t(先行コンクリートの上面)とベースプレート90の下面92との間に充填材充填用空間69を残すように、先行上部コンクリート95bを形成する。尚、充填装置1を用いずに、先行下部コンクリート95aや先行上部コンクリート95bを形成するコンクリートを、ベースプレート90の外周縁90aと型枠105との間Dや注入孔93より直接打設してもよい。この場合、コンクリートがベースプレート90の下面92に付着しないように打設する。その後、充填装置1を用い、充填材をベースプレート90の注入孔93を介して充填材充填用空間69に充填する。
【0007】
本発明では、上記充填材として、5分フロー試験の計測値が250mm±20mmである特性を有した充填材を用いた。5分フロー試験は、図2に示すように、内径5cm、長さ10cmの円筒11を用い、当該円筒11を平面12に直立させた状態で円筒11内に充填材を充填した後、円筒11を引き上げることによって平面上に円状に広がった引き上げ5分後の充填材の円状の最大径の長さaと、当該最大径と直交する方向における充填材の円状の径(直交径)の長さbとを測定し、その最大径の長さと直交径の長さとの平均値を5分フロー試験の計測値とした。
即ち、内径5cm、長さ10cmの円筒11を平面12に直立させた状態で円筒11内に充填された後、円筒11が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材を用いた。
【0008】
具体的には、図3に示すように、5分フロー試験の計測値が平均248mm、1分フロー試験の計測値が平均240mm、20cm到達時間が9秒という流動特性を有した充填材を用いた。
1分フロー試験は、内径5cm、長さ10cmの円筒を用い、当該円筒11を平面12に直立させた状態で円筒11内に充填材を充填した後、円筒11を引き上げることによって平面12上に円状に広がった引き上げ1分後の充填材の円状の最大径の長さと、当該最大径と直交する方向における充填材の円状の径(直交径)の長さとを測定し、その最大径の長さと直交径の長さとの平均値を1分フロー試験の計測値とした。
20cm到達時間は、フロー試験において円筒11が引き上げられてから充填材の円状の最大径が20cmになるまでに要した時間である。
【0009】
5分フロー試験の計測値が平均248mmであった充填材の組成を図4に示す。図4中の、W/Bは水と結合材との比(以下、水結合材比(W/B)という)、Wは単位水量、Bは結合材(セメント(C)+膨張材粉末(CSA))の単位量、Cはセメント(住友大阪社製、普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm3)の単位量、CSAは膨張材粉末(電気化学鉱業社製、商品名「デンカパワーCSA」、ρ=3.10g/cm3)の単位量、Sは細骨材(竹折鉱業社製、岐阜県瑞浪産珪砂5号、密度=2.58g/cm3)の単位量、Vtは増粘材(花王社製、製品名「ビスコトップ200P」)の単位量、SPは高性能減水材(花王社製、商品名「マイテイ21P」ρ=2.30g/cm3)の単位量、Ad2は消泡材粉末(日本トレーディング社製、商品名「FSアンチフォームDC2−4248S」)の単位量、Ad1は膨張材(アルミ粉)の単位量である。
5分フロー試験の計測値が平均248mmであった充填材は、図4に示すように、W/Bが35%、Wが425kg/m3、Bが1214kg/m3、Cが1194kg/m3、CSAが20kg/m3、Sが485kg/m3、Vtが3.70kg/m3、SPが1.65kg/m3、Ad2が0.2kg/m3、Ad1が0.020kg/m3の充填材である。
【0010】
充填装置1は、ホッパー2Aと、開閉装置4Aとを備える。ホッパー2Aは、例えば、金属により形成され、一端開口が充填材入口21となる大径円筒部22と、他端開口が充填材排出口23となる漏斗部24とを備える。漏斗部24は、円錐状筒壁部25と、円錐状筒壁部25の円錐の頂点部に形成された他端開口26と連通する小径円筒部27とを備える。大径円筒部22よりも筒の内径が小さい小径円筒部27は、大径円筒部22の筒の中心及び円錐状筒壁部25の円錐の中心と同軸に設けられる。充填材排出口23の周縁には、ベースプレート90の上面91に接触する設置板18を備える。設置板の下面は小径円筒部27の中心軸と直交する平面で、かつ、充填材排出口23の下端面と同一平面に形成される。
即ち、大径円筒部22の他端開口28の縁部と円錐状筒壁部25の底面側に位置する一端開口29の縁部とが溶接などの連結手段で連結され、かつ、円錐状筒壁部25の他端開口26の縁部と小径円筒部27の一端開口30の縁部とが溶接などの連結手段で互いに連結されることによって、充填材が大径円筒部22の筒内及び円錐状筒壁部25の円錐状筒内を経由して小径円筒部27の筒内に移動可能に形成され、小径円筒部27の他端開口が充填材排出口23を形成する。充填材排出口23の口径は、注入孔93の孔径よりも小さく形成される。また、ホッパー2Aは、充填材充填用空間69の容積よりも大きい容積を有したホッパー2Aを用いる。ホッパー2Aは、大径円筒部22の一端開口が上端となるように支持されることにより、充填材入口21から投入された充填材を、大径円筒部22の内部、漏斗部24の円錐状筒壁部25の内部、漏斗部24の小径円筒部27の内部を通過させて小径円筒部27の他端開口である充填材排出口23から排出する構成を備える。
開閉装置4Aは、小径円筒部27の筒の内側により形成された内部通路17を開閉する。
【0011】
充填装置1を用いた免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法を説明する。
ホッパー2Aの設置板18の下面19をベースプレートの上面91に接触させ、かつ、充填材排出口23と注入孔93とを合わせ、ホッパー2Aの内側にコンクリートを入れる。この際、開閉装置4Aで小径円筒部27の内部通路17を閉じておいて、ホッパー2A内にコンクリートを貯留した後に、開閉装置4Aを開けると、コンクリートがホッパー2の充填材排出口23及びベースプレート90の注入孔93を経由して型枠内94に打設されて先行下部コンクリート95a及び先行上部コンクリート95bが形成される。この際、先行上部コンクリート95bの天端95tがベースプレート90の下面92より下方に約30mm〜50mm程度の位置まで来るようにする。尚、上述したように、先行下部コンクリート95a及び先行上部コンクリート95bを形成するコンクリートの打設は、ベースプレート90の外周縁90aと型枠105との間Dや注入孔93より直接打設してもよい。
先行上部コンクリート95bがまだ固化しておらずコンクリートの初期沈下がおさまった状態において、先行上部コンクリート95bの天端95tとベースプレート90の下面92との隙間により形成された充填材充填用空間69に、充填装置1を用いて上記充填材を充填する。この場合も、ホッパー2Aの設置板18の下面19をベースプレートの上面91に接触させ、かつ、充填材排出口23と注入孔93とを合わせ、ホッパー2Aの内側に充填材を入れる。この際、開閉装置4Aで小径円筒部27の内部通路17を閉じておいて、ホッパー2A内に充填材を貯留しておく。ホッパー2A内に貯留する充填材の量は、少なくとも充填材充填用空間69に充填される充填材の量よりも多くしておいて、ホッパー2A内から充填材充填用空間69内に充填材を連続して充填できるようにしておく。
【0012】
ホッパー2A内に充填材を貯留しておくことで、ホッパー2A内に貯留された充填材の自重により充填材内に巻き込んだ空気(気泡)が脱気される。即ち、ホッパー2A内への投入時またはポンプによる圧送時に充填材中に巻き込んだ空気(気泡)を脱気できる。充填材内に空気(気泡)が含有されていると、充填材充填用空間69に充填材が充填された後、充填材内に含まれていた空気(気泡)が上昇してベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に溜まってしまって、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれず、免震装置の性能を低下させてしまうという問題があるが、最良の形態1では、ホッパー2A内に貯留された充填材の自重により充填材内の空気が脱気されるので、当該問題を解消できる。ホッパー2A内に一定量の充填材を貯留した後に充填材内の空気が脱気されるのに必要な所定時間を経過した場合に、開閉装置4Aを開けると、充填材がホッパー2Aの充填材排出口23及びベースプレート90の注入孔93を経由して充填材充填用空間69に打設充填されて上端部充填材層110が形成される。この際、ホッパー2A内の充填材に充填材の高さに応じた圧力が加わるので、その後開閉装置4Aを開けることにより、脱気された充填材がスムーズに充填材排出口23より排出されて上記充填材充填用空間69に充填されるので、ベースプレート90の下面92と充填材との間の空隙が形成されにくくなり、高品質の免震基礎を施工できる。また、ホッパー2A内から充填材充填用空間69内に充填材が連続して充填されるため、打設された充填材内に空気がとりこまれにくくなる。よって、最良の形態1では、貯留により脱気された充填材を充填材充填用空間69内に送り込めるとともに、充填材を充填材充填用空間69に一度に一気に打設できるため充填材内に空気がとりこまれにくくなるので、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じにくくなり、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できるようになる。
【0013】
充填材の充填作業は、ベースプレート90の注入孔93の上端まで充填材が満たされてベースプレート90の下面92と充填材とが密着された状態となるまで行われるが、充填材が充填材充填用空間69に充填されたか否かの具体的な確認方法は、ベースプレート90の外周縁90aと型枠105との間Dから覗いて上端部充填材層110の天端115がベースプレート90の下面92よりも上方に到達していることを確認することにより可能である。
【0014】
最良の形態1では、内径5cm、長さ10cmの円筒11を平面12に直立させた状態で円筒11内に充填された後、円筒11が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材を用い、注入孔93の近傍において先行上部コンクリート95bの天端95t(上面)からベースプレート90の下面92まで充填材を盛り上げた後、充填材が同心円状に外側に拡大しながら充填材充填用空間69に充填されるようにした。これにより、充填材が先行上部コンクリート95bの天端95tより上方向に山状に盛り上がるように積み重ねられた後にベースプレート90の下面92に接する山ができ、その後に放射状に周囲に拡がるので、充填材が充填材充填用空間69の空気を押出しながら充填されるため、充填材内への空気の巻き込みを少なくできる(図5(a),図5(b)参照)。よって、充填材充填用空間69に対する充填材の充填性が向上し、充填材が密実に充填されて空気溜まりの少ない上端部充填材層110を形成できる。つまり、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じにくくなり、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
【0015】
最良の形態1によれば、ホッパー2A内に充填材を貯留するための開閉装置4Aを備えたので、充填材内の空気を脱気でき、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じにくくなり、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できるようになる。また、開閉装置4Aが小径円筒部27の内部通路17を開通させる状態に設定された場合、ホッパー2A内に貯留されていた充填材の高さ位置に応じた圧力が、排出圧力となって充填材に加わるので、充填材が充填材排出口23よりスムーズに排出されるようになって、充填作業時間を短くでき、作業性が向上する。
【0016】
最良の形態1によれば、充填材充填用空間69の容積よりも大きい容積を有したホッパー2Aを備えて、充填材充填用空間69に充填される充填材の量より多い一定量の充填材をホッパー2A内に貯留しておいて、充填材充填用空間69に充填材が充填されるまで充填材充填用空間69に充填材を連続して供給するので、ホッパー2A内から充填材充填用空間69内に充填材を連続して充填できるため、充填材充填用空間69に供給された充填材内に空気がとりこまれにくくなるので、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まり(空隙)が生じにくくなり、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
【0017】
最良の形態1によれば、ホッパー2Aの円錐形状の漏斗部24により、円錐状筒壁部25から小径円筒部27に流下する充填材の圧力を大きくする圧力付与部が構成される。即ち、充填材の流下する方向に向けて流路径が漸次小さくなるように形成された円錐状筒壁部25を備えているので、充填材が円錐状筒壁部25の流路径の大きい部分から流路径の漸次小さくなる円錐状筒壁部25内を経由して流路径の小さい小径円筒部27内に流下するため、ベルヌーイの法則によって小径円筒部27内に連続して流下する充填材の圧力が増し、充填材排出口23より落下する充填材の流動速度が速くなるので、ベースプレート90の充填材充填用空間69への充填材の充填性が良くなって、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
【0018】
最良の形態1によれば、ホッパー2Aが上述した圧力付与部を備えるため、小径円筒部27内に流下する充填材の圧力が増し、充填材排出口23より落下する充填材の流動速度がさらに速くなるため、充填材内への空気の巻き込みをさらに少なくできるので、さらに空気溜まりの少ない上端部充填材層110を形成でき、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれたより高品質の免震基礎を提供できる。
【0019】
最良の形態1によれば、充填材排出口23の孔径は、ベースプレート90に形成された注入孔93の孔径よりも小さく形成されたので、注入孔93の孔の中心Bと充填材排出口23の孔の中心Aとが一致するように位置合わされた状態で充填材が注入される場合に、充填材が注入孔93の周囲に位置するベースプレート90の注入孔93近傍の上面91に接触せず、注入孔93近傍の上面91に充填材が付着するのを防止できる。
【0020】
最良の形態1によれば、ホッパー2Aが、小径円筒部27を備えたので、角管を用いた場合に比べて、充填材が筒内をスムーズに流れるので、充填作業時間を短くでき、作業性が向上する。
【0021】
最良の形態2
図6を参照し、充填材充填用空間69に充填材を充填する充填装置1の構成について詳説する。充填装置1は、ホッパー2と、ホッパー支持台3と、シャッターバルブ装置4とを備え、ホッパー2とホッパー支持台3とが分離可能に構成される。
【0022】
ホッパー2は、例えば、金属により形成され、一端開口が充填材入口21となる大径円筒部22と、他端開口が充填材排出口23となる漏斗部24とを備える。漏斗部24は、円錐状筒壁部25と、円錐状筒壁部25の円錐の頂点部に形成された他端開口26と連通する小径円筒部27とを備える。大径円筒部22よりも筒の内径が小さい小径円筒部27は、大径円筒部22の筒の中心及び円錐状筒壁部25の円錐の中心と同軸に設けられる。
即ち、大径円筒部22の他端開口28の縁部と円錐状筒壁部25の底面側に位置する一端開口29の縁部とが後述するリング平板を介して溶接などの連結手段で連結され、かつ、円錐状筒壁部25の他端開口26の縁部と小径円筒部27の一端開口30の縁部とが溶接などの連結手段で互いに連結されることによって、充填材が大径円筒部22の筒内及び円錐状筒壁部25の円錐状筒内を経由して小径円筒部27の筒内に移動可能に形成され、小径円筒部27の他端開口が充填材排出口23を形成する。
大径円筒部22の他端開口28の口内径d1は、円錐状筒壁部25の一端開口29の開口の口内径d2よりも大径であり、大径円筒部22の他端開口28の縁部28aと円錐状筒壁部25の一端開口29の縁部29aとの間を塞ぐようにリング平板31が配置される。上記大径円筒部22の他端開口28の縁部28aとリング平板31の外周縁部側上面とが溶接などの連結手段により連結され、円錐状筒壁部25の一端開口29の縁部29aとリング平板31の内周縁部側下面とが溶接などの連結手段により連結されることによって、当該リング平板31の下面32が後述のホッパー受面50に載置される面となる。
つまり、ホッパー2は、大径円筒部22の一端開口が上端となるようにホッパー支持台3に載置されることにより、大径円筒部22の一端開口である充填材入口21から投入された充填材を、大径円筒部22の内部、漏斗部24の円錐状筒壁部25の内部、漏斗部24の小径円筒部27の内部を通過させて小径円筒部27の他端開口である充填材排出口23から排出する構成を備える。
【0023】
尚、充填材排出口23の口径は、注入孔93の孔径よりも小さく形成される。また、ホッパー2は、充填材充填用空間69の容積よりも大きい容積を有したホッパー2を用いる。
【0024】
ホッパー支持台3は、前記型枠105を跨ぐように設置されるものであり、支持脚35と、梁受筒部36と、梁部37と、ホッパー受枠38とを備える。
支持脚35は、型枠105の中心を挟んで対称に対向するように2つ設けられる。支持脚35は、垂直面に平行な四角枠により構成され、四角枠の縦辺部を形成する脚柱部39の下端に車輪40を備える。梁受筒部36は、脚柱部39及び四角枠の横辺部を形成する連結部41と直交する方向に延長するように、一端部42が、脚柱部39の上端に溶接などの連結手段で連結される。
梁部37は、各支持脚35の脚柱部39の上端に設けられて互いに向かい合う梁受筒部36の他端開口43から梁受筒部36の筒内に収納される両端部を備えた互いに平行に向かい合う一対の支持梁44と、当該一対の支持梁44同士を連結する2つの連結梁45とを備える。2つの連結梁45は、一対の支持梁44の中央部を連結するために所定間隔隔てて平行に設けられる。
ホッパー受枠38は、リング枠体46により形成される。リング枠体46は、一対の支持梁44の上面47と連結梁45の上面48に跨って載置されて、リング枠体46の下面66と上面47;48とが溶接などの連結手段により固定状態に連結される。
リング枠体46の上面49におけるリングの内径は、ホッパー2の漏斗部24が通過可能で、かつ、ホッパー2の大径円筒部22が通過不可能な大きさに形成される。
つまり、ホッパー2の漏斗部24がリング枠体46の上側からリングの内側を通過し、ホッパー2のリング平板31の外面がリング枠体46の上面49により形成されたホッパー受面50に載置される。即ち、ホッパー2がリング平板31を備え、ホッパー受枠38がホッパー2のリング平板31の外面を安定に載置可能なホッパー受面50を備えたので、ホッパー2をホッパー受枠38の所定の位置に容易かつ正確に設置できる。
【0025】
一対の支持脚35は、互いに向かい合う型枠105の一対の側面の外側にそれぞれ配置される。一対の支持脚35は、梁受筒部36と支持梁44との嵌め合いが解除されるまで、互いに離れる方向に支持脚35間の距離を調整可能であり、また、一対の支持脚35は、梁受筒部36の他端開口43の縁部と連結梁45とが衝突するまで、互いに近づく方向に支持脚35間の距離を調整可能である。即ち、梁受筒部36と支持梁44との嵌め合い長さが、支持脚35;35間の距離可変長さとなり、梁受筒部36と支持梁44との嵌め合い機構が、支持脚間距離長さ可変機構を形成する。
【0026】
支持脚35は、高さ位置可変機構を備える。高さ位置可変機構は、例えば、ねじ式の脚柱部39や、短管を脚柱部39の下端に継ぎ足したり外したりする等の手段により実現できる。例えば、脚柱部39の下端面より脚柱部39の上方内部に延長する雌ねじ部と、車輪支持部の上部プレートより上方に突出するように設けられた雄ねじ部とにより実現可能である。脚柱部39の下端に継ぎ足したり外されたりする短管は、車輪支持部の上部プレートとの連結部を備えた構成とすればよい。
高さ位置可変機構により、ホッパー受枠38の高さ位置を調整できるようにすることによって、ホッパー2の充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93との間の間隔を小さくしたり、ホッパー2の充填材排出口23とベースプレート90の上面91とを接触させることができ、充填材がホッパー2の充填材排出口23、及び、注入孔93を経由して充填材充填用空間69内に良好に充填される。
【0027】
シャッターバルブ装置4は、ホッパー2の小径円筒部27の筒路を開通または閉鎖する機構であり、シャッター板51、シャッター板操作棒52を備える。図7に示すように、シャッター板51は、平板51aと、平板51aの一端部に形成されて後述する両端開口筒状通路62の一端開口63の縁面に接触するストッパ部51bとを備える。平板51aは、小径円筒部27の筒の内径よりも大きい径の円貫通孔により形成された開通路53と、遮断面54とを備える。
【0028】
小径円筒部27は、上下に分割された上筒部55及び下筒部56と、シャッター板挿入部57とを備える。シャッター板挿入部57は、上筒部55の下端開口の縁部より延長して上筒部55の中心軸と直交するように設けられた上フランジ59と、下筒部56の上端開口の縁部より延長して下筒部56の中心軸と直交するように設けられた下フランジ61と、上下のフランジ59;61の側縁同士を繋ぐ側板58;58(図8参照)とで形成された矩形状の両端開口筒状通路62により形成される。シャッター板挿入部57を形成する両端開口筒状通路62の通路高さは、シャッター板51の板厚より大きい寸法に形成され、シャッター板51が両端開口筒状通路62内を移動可能である。両端開口筒状通路62の一端開口63がシャッター板51の出入口となり、シャッター板51は当該出入口を介して両端開口筒状通路62内に挿入される。
図6;8に示すように、シャッター板51の平板51aの他端部側が両端開口筒状通路62内に挿入され、シャッター板操作棒52によりシャッター板51のストッパ部51bが押圧されて、図7に示すように、両端開口筒状通路62の一端開口63の縁面とストッパ部51bとが接触した状態となった場合に、開通路53を形成する円貫通孔の中心と上筒部55及び下筒部56の中心とが一致して、この状態での上筒部55の筒内と開通路53と下筒部56の筒内とにより、漏斗部24内の充填材を充填材排出口23に導く小径円筒部27の筒路が形成される。小径円筒部27の筒路を介した充填作業を終了する場合には、図6に示すように、シャッター板操作棒52によりシャッター板51の平板51aの他端部が押圧され、シャッター板51の平板51aの遮断面54が上筒部55の筒内と下筒部56の筒内との間を遮断することによって、充填材排出口23からの充填材の排出が停止する。尚、シャッター板51とシャッター板操作棒52とを一体にしてシャッター板操作棒52を引く操作をする場合、充填材の重さなどでシャッター板操作棒52を引けないので、ここでは、シャッター板51の平板51aの一端部側と他端部側とをシャッター板操作棒52により押圧して小径円筒部27の筒路を開閉するようにしている。
【0029】
充填装置1を用いた免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法を説明する。
まず、型枠105を跨いでホッパー受枠38がベースプレート90の注入孔93の上方に位置されるようにホッパー支持台3を設置する。そして、ホッパー2をホッパー支持台3のホッパー受枠38に支持されるように設置する。この場合、ホッパー受枠38に設置したホッパー2の充填材排出口23の中心軸とベースプレート90の注入孔93の中心軸とが一致するように、支持脚間距離長さ可変機構を調節してホッパー2の充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93との間の間隔を調整する。このように位置決めされた場合、充填材排出口23の口径が、注入孔93の孔径よりも小さく形成されていることから、充填材排出口23より充填材が排出された場合に、注入孔93周りのベースプレート90の上面91に充填材がこぼれにくくなり、充填材を充填材充填用空間69に効率的に充填できる。
尚、ホッパー2とホッパー支持台3とを分離し、ホッパー支持台3を上記型枠105を跨いだ状態で設置し、コンクリート供給場所に移動させたホッパー2内にコンクリートを投入してそのホッパー2をホッパー支持台3に据え置いてホッパー2内のコンクリートを型枠内94に打設したり、ホッパー受枠38にホッパー2を設置した状態でホッパー2の内側に圧送管などを用いてコンクリートを投入することでコンクリートを型枠内94に打設して、先行下部コンクリート95a及び先行上部コンクリート95bを形成する。即ち、コンクリート供給場所においてコンクリートを収容したホッパー2をクレーン等の揚重機で吊上げてホッパー受枠38に設置することで、ホッパー受枠38にホッパー2及びコンクリートの荷重を支持させるか、ホッパー受枠38にホッパー2を設置した状態でホッパー2の内側に圧送管などを用いてコンクリートを投入することで、ホッパー受枠38にホッパー2及びコンクリートの荷重を支持させる。この際、シャッターバルブ装置4を閉じておく。そして、ホッパー受枠38に設置されたホッパーのシャッターバルブ装置4を開状態とすることで、コンクリートがホッパー2の充填材排出口23及びベースプレート90の注入孔93を経由して型枠内94に打設されて先行下部コンクリート95a及び先行上部コンクリート95bが形成される。この際、先行上部コンクリート95bの天端95tがベースプレート90の下面92より下方に約30mm〜50mm程度の位置まで来るようにする。
【0030】
先行上部コンクリート95bがまだ固化しておらずコンクリートの初期沈下がおさまった状態において、先行上部コンクリート95bの天端95tとベースプレート90の下面92との隙間により形成された充填材充填用空間69に、高流動コンクリートやモルタルやセメントペーストのような充填材を注入して充填する。この場合も、ホッパー2とホッパー支持台3とを分離し、ホッパー支持台3を上記型枠105を跨いだ状態で設置し、充填材供給場所に移動させたホッパー2内に充填材を投入してそのホッパー2をホッパー支持台3に据え置いてホッパー2内の充填材を充填材充填用空間69に充填したり、ホッパー受枠38にホッパー2を設置した状態でホッパー2の内側に圧送管などを用いて充填材を投入することで充填材を充填材充填用空間69に充填することで上端部充填材層110を形成する。即ち、充填材供給場所において充填材を収容したホッパー2をクレーン等の揚重機で吊上げてホッパー受枠38に設置することで、ホッパー受枠38にホッパー2及び充填材の荷重を支持させるか、ホッパー受枠38にホッパー2を設置した状態でホッパー2の内側に圧送管などを用いて充填材を投入することで、ホッパー受枠38にホッパー2及び充填材の荷重を支持させる。この際、シャッターバルブ装置4を閉じておいて、ホッパー2内に充填材を貯留しておく。ホッパー2内に貯留する充填材の量は、少なくとも充填材充填用空間69に充填される充填材の量よりも多くしておいて、ホッパー2内から充填材充填用空間69内に充填材を一度に充填できるようにしておく。ホッパー2内に充填材を貯留しておくことで、上述したように、ホッパー2内に貯留された充填材の自重により充填材内の空気が脱気される。そして、ホッパー2内に一定量の充填材を貯留した後に充填材内の空気が脱気されるのに必要な所定時間を経過した場合に、ホッパー受枠38に設置されたホッパー2のシャッターバルブ装置4のシャッター板51を開状態とすることで、充填材がホッパーの充填材排出口23及びベースプレート90の注入孔93を経由して充填材充填用空間69に打設充填されて上端部充填材層110が形成される。この際、最良の形態1と同様に、ホッパー2内から充填材充填用空間69内に充填材が一度に充填されるため、打設された充填材内に空気がとりこまれにくくなる。よって、最良の形態2では、貯留により脱気された充填材を充填材充填用空間69内に送り込めるとともに、充填材を充填材充填用空間69に一度に連続して打設できるため充填材内に空気がとりこまれにくくなるので、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じにくくなり、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できるようになる。
【0031】
最良の形態1と同じように、充填材が充填材充填用空間69に充填されたことを確認した後に、次の充填箇所である免震装置のベースプレート下部に充填材を充填するために、車輪40を走行させてホッパー2及びホッパー支持台3を次の充填箇所まで移動させたり、あるいは、ホッパー2とともにホッパー支持台3をクレーン等の揚重機で吊上げてホッパー2及びホッパー支持台3を次の充填箇所まで移動させた後に、上述した充填作業を行う。
【0032】
最良の形態2では、上述した最良の形態1と同じ効果が得られるとともに、ホッパー2及び充填材の重量がベースプレート90に加わらないように、充填材を収容したホッパー2を支持するホッパー支持台3を備えたので、ホッパー2の自重及び充填材の重量をホッパー支持台3が負担するのでベースプレート90に撓みなどの変形が生じず、ベースプレート90に弾性復元によるベースプレート90の下面92と充填材との間の空隙が形成されない。即ち、ベースプレート90に撓みを発生させずに充填作業を行えて、ベースプレート90の下面92と充填材との間の空隙発生を防止可能な免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法を提供できるとともに、この方法を実現するための充填装置1を提供できるので、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
また、ホッパー2とホッパー支持台3とを分離し、ホッパー支持台3を型枠105を跨いだ状態で設置し、ホッパー2内に充填材を投入してそのホッパー2をホッパー支持台3に据え置いてホッパー2内の充填材を充填材充填用空間69に充填したので、ホッパー2だけを充填材供給場所に移動させることにより、充填材供給作業を容易に行える。
また、ホッパー支持台3が車輪40を備えるので、車輪40を走行させてホッパー支持台3を次の充填箇所まで移動させる移動作業が容易となる。
【0033】
最良の形態2によれば、シャッターバルブ装置4が、シャッター板51を備えたので、開通路53の口径の異なるシャッター板51を用意しておけば、注入孔93の口径に応じて、当該注入孔93の口径より小さい径の開通路53を有したシャッター板51を使用することで、ベースプレート90の注入孔93近傍の上面91に充填材が付着するのを防止できる。
【0034】
最良の形態3
図9に示すように、最良の形態2で説明したホッパー2の小径円筒部27の下端部に打設管120を取付けるようにしてもよい。打設管120は、充填材排出口23と注入孔93との間の距離に応じた長さで、かつ、充填材排出口23と注入孔93との間の充填材通過路として機能する管を用いればよい。
最良の形態3によれば、高さ位置可変機構そのもの、あるいは、高さ位置可変機構によるホッパー受枠38の高さ位置調整作業を不要とでき、ホッパー2の充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93との間の間隔を小さくしたり、ホッパー2の充填材排出口23と注入孔93とを連通させる作業を容易にできる。
【0035】
最良の形態4
図10(a),(b)に示すように、最良の形態2で説明したホッパー2の小径円筒部27の下端部に設けられた打設管120を、充填材排出口23よりも下方に延長可能で、かつ、充填材排出口23の位置に復帰させることの可能な伸縮管121により構成してもよい。伸縮管121は、例えば、蛇腹管、あるいは、小径円筒部27とで二重管を形成する内管あるいは外管により形成すればよい。伸縮管121は、充填時以外は、吊上手段125により充填材排出口23側に位置され、充填時には、吊上手段125が解除されることで自重で降下して注入孔93の周囲のベースプレート90の上面91に位置される。
最良の形態4によれば、小径円筒部27が伸縮管121を備えたことにより、充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93との間の距離を伸縮管121の伸縮距離の範囲で調整可能となり、高さ位置可変機構そのもの、あるいは、高さ位置可変機構によるホッパー受枠38の高さ位置調整作業を不要とでき、ホッパーの充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93との間の間隔を小さくしたり、ホッパー2の充填材排出口23と注入孔93とを連通させる作業を容易にできる。
また、伸縮管121は、蛇腹管または二重管であるので、伸縮管121を直線状に垂直方向に移動でき、伸縮管121に曲線部ができないため円滑な充填作業が可能となる。
尚、伸縮管121の下端開口122と注入孔93とが離れないように外部から伸縮管121を注入孔93側に押え付けたり、伸縮管121の下端開口縁部をベースプレート90の上面91に固定することで、安定な充填作業を行える。
【0036】
最良の形態5
図11(a),(b)に示すように、伸縮管121が、下端部に重り(カウンターウエイト)を備えた構成としてもよい。重りは、例えば、伸縮管121の下端開口122の縁部より下端開口122より離れる方向でかつ伸縮管121の中心軸と直交する方向に延長するように設けられたフランジ状の鋼板材126により形成される。重りは、充填時以外は、吊上手段125により充填材排出口23側に位置され、充填時には、吊上手段125が解除されることで自重で降下して注入孔93の周囲のベースプレート90の上面91に位置される。この際、伸縮管121が伸びて、充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93とが伸縮管121により連通するので、充填材は、充填材排出口23、伸縮管121、注入孔93を介してベースプレート90下の充填材充填用空間69に充填される。重りは、伸縮管121内を通過する充填材の圧力で移動することなく、伸縮管121の位置を安定に維持できる重量のものを用いる。
【0037】
吊上手段125としては、重りをロープで吊上げるロープ巻き取り機構、重りを小径円筒部27にピン等で取付ける機構などを用いればよい。ロープ巻き取り機構を用いる場合、ロープ巻き取り機構を型枠105の外側に設置でき、作業者がベースプレート90上に乗ることなくロープ巻き取り機構を操作できるようになるので、好ましい。
【0038】
最良の形態5によれば、重りが自重で降下することで、充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93とが伸縮管121により連通するように、伸縮管121の下端とベースプレート90の上面91とを密着させることができるので、充填材の充填作業を確実に行うことができる。また、高さ位置可変機構そのもの、あるいは、高さ位置可変機構によるホッパー受枠38の高さ位置調整作業を不要とできる。
【0039】
最良の形態6
打設管120、または、伸縮管121の下端に、管路を開閉するバルブを設けてもよい。
最良の形態6によれば、ホッパー2のシャッターバルブ装置4のシャッター板51の位置から打設管120、または、伸縮管121の下端までに滞留する充填材をベースプレート90上に排出してベースプレート90上に付着させることなく、ホッパー支持台3、または、ホッパー2を移動できるようになる。充填材をベースプレート90上に付着させたままでは免震装置を水平に設置できない。また、ベースプレート90上に付着した充填材を除去すればよいが、作業が煩雑である。最良の形態6では、このような問題を解消できる。
【0040】
最良の形態7
図12に示すように、最良の形態2で説明した充填方法において、ベースプレート90上に余剰充填材収容容器130を設けるようにしてもよい。余剰充填材収容容器130は、ベースプレート90の上面91に設置される底板131と、底板131の周縁部より立上るように設けられた壁133とを備えた上部開放の箱体により形成される。底板131には、注入孔93の径よりも小径の底孔132が形成される。
充填材を充填する際に、余剰充填材収容容器130の底板131をベースプレート90の上面91に置いて、底孔132の中心と注入孔93の中心とが一致するように余剰充填材収容容器130を位置決めした後に、例えば、伸縮管121の充填材排出口23と底孔132とを連通させて充填材を充填する。尚、余剰充填材収容容器130は、例えば、伸縮管121や打設管120の下端、あるいは、充填材排出口23からシャッターバルブ装置4のシャッター板51までの管路の容積よりも大きい容積のものを用いる。
最良の形態7によれば、伸縮管121や打設管120の下端、あるいは、充填材排出口23の下端に開閉バルブを設けない場合において、余剰充填材収容容器130の底孔132の内面より溢れた充填材を余剰充填材収容容器130内に捕集できる。また、余剰充填材収容容器130内に捕集された充填材は、充填材充填用空間69内に充填された充填材が何らかの原因で沈下した場合に、充填材充填用空間69に補充されるので、充填材充填用空間69内に充填された充填材が何らかの原因で沈下したとしても、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
【0041】
最良の形態8
上記余剰充填材収容容器130の底孔132と注入孔93との間に薄板を挿入してから、薄板と余剰充填材収容容器130とを一緒にベースプレート90の上面91から取り除くようにした。
最良の形態8によれば、余剰充填材収容容器130内に残った充填材が底孔132を介してベースプレート90の上面91に落ちるのを防止でき、ベースプレート90の上面91を汚さずに余剰充填材収容容器130を撤去できるため、充填材がベースプレート90上に排出されてベースプレート90上に付着するようなことを防止できる。
【0042】
最良の形態9
最良の形態1;2で説明したホッパー2A;2の大径円筒部22と漏斗部24とを分離可能に構成し、この場合において、漏斗部24を金属製で構成するとともに、大径円筒部22を防水加工された紙製筒体で構成してもよい。
最良の形態9によれば、容量の大きな大径円筒部22を使い捨ての紙型枠にすることができ、大径円筒部22分の重量が減るため、作業所から倉庫などへの台車の運搬作業が容易となる。
【0043】
最良の形態10
ホッパー支持台3は、一対の車輪40つき支持脚35と、梁受筒部36と、梁部37と、ホッパー受枠38とに、分離可能な構成とすれば、装置の運搬が容易となる。
【0044】
最良の形態11
充填材として、次の組成を有したモルタルを用いてもよい。図13に示したような、セメント(C)、膨張材粉末(CSA)、増粘性混和剤粉末(Vt)、細骨材(S)、セメント混和剤粉末(SP)、消泡剤粉末(E)、水(W)が混ぜ合わされて形成されたモルタルであり、図14に示したように、セメント混和剤粉末の量(SP使用量)が適正範囲0.90〜2.00kg/m3であり、第1の粉体の量と第2の粉体の量との和、即ち、増粘性混和剤粉末の量(Vt使用量)が適正範囲2.50〜4.00kg/m3であり、水結合材比(W/B)が適正範囲34.0〜60.0%であり、単位水量(W)が適正範囲380〜445kg/m3であるという条件を満たし、かつ、図15に示した評価値条件を満たす特性を持つモルタルである。即ち、フロー試験の20cmフロー時間が20秒〜60秒、フロー試験の5分フローが250±25mm、pH試験の結果が12.0以下、空気量測定方法で求めた空気量が4.0%以下、ブリーディングが0という条件を満たすモルタルである。
【0045】
増粘材としての増粘性混和剤粉末(Vt)は、第1の粉体と第2の粉体とからなる。第1の粉体は、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物の粉体や、第1の水溶性低分子化合物を含む液体を乾燥させたことにより形成された第1の水溶性低分子化合物の粉体を用いた。第2の粉体は、アニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物の粉体や、第2の水溶性低分子化合物を含む液体を乾燥させたことにより形成された第2の水溶性低分子化合物の粉体を用いた。セメント混和剤粉末(SP)は、増粘性混和剤粉末(Vt)と相溶性に優れたカルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤粉末を用いた。セメント(C)と膨張材粉末(CSA)とにより結合材(B)が形成される。
第1の水溶性低分子化合物としては、4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が好ましく、特に、アルキルアンモニウム塩を主成分とする添加剤が好ましい。また、第2の水溶性低分子化合物としては、芳香環を有するスルフォン酸塩が好ましく、特に、アルキルアリルスルフォン酸塩を主成分とする添加剤が好ましい。セメント(C)は、石灰石・粘土・酸化鉄などを原料とした普通ポルトランドセメント,早強ポルトランドセメント,中庸熱ポルトランドセメント,白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメントや、高炉セメント,フライアッシュセメント,シリカセメントなどの混合セメントを用いる。細骨材(S)は、川砂から得られた珪砂などを用いる。膨張材粉末(CSA)は、石灰複合系膨張材粉末を用いる。消泡剤粉末(E)は、シリコン系の消泡剤粉末を用いる。消泡剤粉末(E)は、混練の際に泡が発生してモルタルの空気量が多くなって強度の低下や比重の減少等が起こることを防止するために、用いる方が好ましい。
【0046】
最良の形態11に示したモルタルを充填材として使用した場合でも、最良の形態1で述べたような、内径5cm、長さ10cmの円筒を平面に直立させた状態で円筒内に充填された後、円筒が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材を使用した場合と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
尚、先行コンクリート95a;95bの注入時に使用するホッパー2A,2と、充填材の充填時に使用するホッパー2A,2とを別々に用意しておいて、ホッパー2A,2を取り替えることにより、充填材と先行コンクリート95a;95bとが混合することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】充填装置の断面図(最良の形態1)。
【図2】充填材のフロー試験を示す図(最良の形態1)。
【図3】フロー試験を行った充填材の流動特性を示す図。(最良の形態1)。
【図4】充填材の組成を示す図。(最良の形態1)。
【図5】充填装置の充填材の充填を示す図(最良の形態1)。
【図6】充填装置の断面図(最良の形態2)。
【図7】充填装置の要部拡大図(最良の形態2)。
【図8】充填装置の斜視図(最良の形態2)。
【図9】ホッパーに打設管を取付けた図(最良の形態3)。
【図10】ホッパーに伸縮管を取付けた図(最良の形態4)。
【図11】伸縮管の下端部に重りを備えた構成を示す図(最良の形態5)。
【図12】ベースプレート上に余剰充填材収容容器を備えた構成を示す図(最良の形態7)。
【図13】充填材として使用するモルタルを組成する使用材料の詳細を示す表(最良の形態11)。
【図14】充填材として使用するモルタルのSP使用量、Vt使用量、水結合材比、単位水量の適正範囲を示す表(最良の形態11)。
【図15】充填材として使用するモルタルの評価試験での評価項目、試験方法、評価値を示す表(最良の形態11)。
【図16】充填材充填用空間に充填される充填材が面状に充填された状態を示す図(従来)。
【符号の説明】
【0049】
24 漏斗部、69 充填材充填用空間、90 ベースプレート、
92 ベースプレートの下面、93 注入孔、
95a 先行下部コンクリート(先行コンクリート)、
95b 先行上部コンクリート(先行コンクリート)、105 型枠。
【技術分野】
【0001】
本発明は、事務所ビル、工場あるいは集合住宅などの建築物の基礎において、免震装置を設置する際に、免震装置のベースプレートの下部に高流動コンクリートまたはグラウト材(モルタル)などの充填材を充填する充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免震装置を据え置く基礎(土台)となる免震基礎の上面に免震装置の下部のベースプレートを設置する作業は以下のように行われている。まず、建築物の床版コンクリートを形成し、床版コンクリート上の所定の位置に型枠を組み立て、型枠内にコンクリートを打設して免震基礎の下部コンクリートを形成する。下部コンクリート上にベースプレートを受ける架台を設置するとともに、免震基礎を補強するはかま筋を組み立てる。ベースプレートは、円形や多角形に形成された厚さ10〜30mm程度の鉄板のような平板である。架台の上部にはベースプレート設置面を形成するための3個以上のベースプレート支持体が設けられており、架台に設けられたベースプレート支持体の上下移動機構を操作してベースプレート支持体の上下位置を調整することによってベースプレート設置面の水平レベルを調整する。架台上部に形成された水平レベル調整後のベースプレート設置面にベースプレートの下面を載置し、ベースプレートの上面が水平面となるように設置する。ベースプレートの中央部には、ベースプレートの上下面に貫通する注入孔が形成されている。
グラウト材のような充填材やコンクリートを、ホッパー及び自動突き棒装置を備えた充填装置を用いて注入孔よりベースプレート下に注入する。この際、ホッパーの充填材排出口とベースプレートの注入孔とが合うようにベースプレートの上面に充填装置が設置される。まず、コンクリートがホッパー内からホッパーの充填材排出口及びベースプレートの注入孔を経由して型枠で囲まれたベースプレート下に打設されることによって先行コンクリートが形成される。この際、先行コンクリートの天端がベースプレートの下面より下方に約30〜50mm程度の位置まで来るようにする。即ち、先行コンクリートの天端とベースプレートの下面との間に約30〜50mm程度の充填材充填用空間が形成される。そして、充填材がホッパー内からホッパーの充填材排出口及びベースプレートの注入孔を経由して充填材充填用空間内に打設供給されて上端部充填材層が形成される(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開平11−293933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法によれば、ベースプレート90下に落下する流動速度の遅い充填材を使用した場合や、充填材が途切れ途切れに投入されたりした場合など、図16に示すように、充填材が先行コンクリート95の天端95tより上方向に山状に盛り上がるように積み重なりにくく、先行コンクリート95の天端95tに落下した充填材がすぐに周辺に拡がって面状になり、広い面を形成したままベースプレート90の下面92に面接触するため、その下面92の真下に存在する空気が充填材により押出されないまま充填材が充填されるので、充填材内への空気の巻き込みが多くなる。即ち、充填材が盛り上がるよりも先に周辺に拡がってしまうため、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じやすくなる。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、ベースプレートの下面と充填材充填用空間に充填される充填材との境界での空気溜まりを生じにくくできる免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、免震基礎を構築する型枠を配置するとともに、注入孔を有するベースプレートを上記型枠で規定される空間の上端部に設置し、この型枠内に先行コンクリートを打設して先行コンクリートの上面とベースプレートの下面との間に充填材充填用空間を設けた後、ベースプレートの注入孔を介して充填材充填用空間に充填材を充填する充填方法において、上記注入孔の近傍において先行コンクリートの上面からベースプレートの下面まで充填材を盛り上げた後、充填材が同心円状に外側に拡大しながら充填材充填用空間に充填されるようにしたので、充填材が先行コンクリートの天端より上方向に山状に盛り上がるように積み重ねられた後にベースプレートの下面に接する山ができた後に放射状に周囲に拡がるので、充填材が充填材充填用空間の空気を押出しながら充填されるため、充填材とベースプレートの下面との間の空気を少なくできる。よって、充填材充填用空間に対する充填材の充填性が向上し、充填材が密実に充填されて空気溜まりの少ない上端部充填材層を形成できる。つまり、ベースプレートの下面と充填材充填用空間に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じにくくなり、ベースプレートの下面と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
円錐形状の漏斗部を介して充填材を充填材充填用空間に連続して供給したので、充填材充填用空間に連続して流下する充填材の圧力及び充填材の流動速度が速くなるので、充填材充填用空間への充填材の充填性が良くなって、ベースプレートの下面と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
上記充填材として、内径5cm、長さ10cmの円筒を平面に直立させた状態で円筒内に充填された後、円筒が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材を用いたので、上述したように、充填材が先行コンクリートの天端より上方向に山状に盛り上がるように積み重ねられた後にベースプレートの下面に接する山ができた後に放射状に周囲に拡がるので、充填材が充填材充填用空間の空気を押出しながら充填されるため、充填材とベースプレートの下面との間の空気を少なくできる。
上記充填材として、セメントと膨張材粉末とから成る結合材と、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物から成る第1の粉体とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物から成る第2の粉体とから成る増粘材と、細骨材と、セメント混和剤粉末と、水とが混ぜ合わされて形成され、単位水量が380〜440kg/m3、水と結合材との比が34.0〜60.0%、第1の粉体の量と第2の粉体の量との和が2.50〜4.00kg/m3、セメント混和剤粉末の量が0.90〜2.00kg/m3であり、上述のように円筒が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材と同様の流動特性を有するモルタルを用いたので、充填材が先行コンクリートの天端より上方向に山状に盛り上がるように積み重ねられた後にベースプレートの下面に接する山ができた後に放射状に周囲に拡がるので、充填材が充填材充填用空間の空気を押出しながら充填されるため、充填材とベースプレートの下面との間の空気を少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
最良の形態1
図1乃至図5は最良の形態1を示し、図1は充填装置の断面図を示し、図2は充填材のフロー試験を示し、図3はフロー試験を行った充填材の流動特性を示し、図4は充填材の組成を示し、図5は充填装置の充填材の充填を示す。
【0006】
まず、図1乃至図5を参照し、ベースプレート90の構成、ベースプレート90の設置作業、免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法の概要について説明する。
図外の免震装置を据え置く基礎(土台)となる免震基礎16の上面16aに設置されることになるベースプレート90は、例えば厚さ10〜30mm程度の鉄板により形成され、ベースプレート90の表面(以下、上面という)91と裏面(以下、下面という)92とに貫通する注入孔93を備える。
このベースプレート90の設置作業は、まず、建築物の床版コンクリート100を形成し、床版コンクリート100上の所定の位置に型枠105を組み立て、型枠内94にコンクリートを打設して先行下部コンクリート95aを形成する。先行下部コンクリート95a上にベースプレート90を受ける架台96を設置するとともに、免震基礎16を補強する図外の鉄筋をはかま筋として組み立てる。架台96の上部にはベースプレート設置面98を形成するための3個以上のベースプレート支持体99が設けられており、架台96に設けられたベースプレート支持体99の上下移動機構101(ねじ式上下機構など)を操作してベースプレート支持体99の上下位置を調整することによってベースプレート設置面98の水平レベルを調整する。架台96の上部に形成された水平レベル調整後のベースプレート設置面98にベースプレート90の下面92を載置し、ベースプレート90の上面91が水平面となるように設置固定する。
そして、充填装置1を用い、ベースプレート90の注入孔93を介して型枠内94にコンクリートを打設して先行上部コンクリート95bを形成する。この場合、先行上部コンクリート95bの天端95t(先行コンクリートの上面)とベースプレート90の下面92との間に充填材充填用空間69を残すように、先行上部コンクリート95bを形成する。尚、充填装置1を用いずに、先行下部コンクリート95aや先行上部コンクリート95bを形成するコンクリートを、ベースプレート90の外周縁90aと型枠105との間Dや注入孔93より直接打設してもよい。この場合、コンクリートがベースプレート90の下面92に付着しないように打設する。その後、充填装置1を用い、充填材をベースプレート90の注入孔93を介して充填材充填用空間69に充填する。
【0007】
本発明では、上記充填材として、5分フロー試験の計測値が250mm±20mmである特性を有した充填材を用いた。5分フロー試験は、図2に示すように、内径5cm、長さ10cmの円筒11を用い、当該円筒11を平面12に直立させた状態で円筒11内に充填材を充填した後、円筒11を引き上げることによって平面上に円状に広がった引き上げ5分後の充填材の円状の最大径の長さaと、当該最大径と直交する方向における充填材の円状の径(直交径)の長さbとを測定し、その最大径の長さと直交径の長さとの平均値を5分フロー試験の計測値とした。
即ち、内径5cm、長さ10cmの円筒11を平面12に直立させた状態で円筒11内に充填された後、円筒11が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材を用いた。
【0008】
具体的には、図3に示すように、5分フロー試験の計測値が平均248mm、1分フロー試験の計測値が平均240mm、20cm到達時間が9秒という流動特性を有した充填材を用いた。
1分フロー試験は、内径5cm、長さ10cmの円筒を用い、当該円筒11を平面12に直立させた状態で円筒11内に充填材を充填した後、円筒11を引き上げることによって平面12上に円状に広がった引き上げ1分後の充填材の円状の最大径の長さと、当該最大径と直交する方向における充填材の円状の径(直交径)の長さとを測定し、その最大径の長さと直交径の長さとの平均値を1分フロー試験の計測値とした。
20cm到達時間は、フロー試験において円筒11が引き上げられてから充填材の円状の最大径が20cmになるまでに要した時間である。
【0009】
5分フロー試験の計測値が平均248mmであった充填材の組成を図4に示す。図4中の、W/Bは水と結合材との比(以下、水結合材比(W/B)という)、Wは単位水量、Bは結合材(セメント(C)+膨張材粉末(CSA))の単位量、Cはセメント(住友大阪社製、普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm3)の単位量、CSAは膨張材粉末(電気化学鉱業社製、商品名「デンカパワーCSA」、ρ=3.10g/cm3)の単位量、Sは細骨材(竹折鉱業社製、岐阜県瑞浪産珪砂5号、密度=2.58g/cm3)の単位量、Vtは増粘材(花王社製、製品名「ビスコトップ200P」)の単位量、SPは高性能減水材(花王社製、商品名「マイテイ21P」ρ=2.30g/cm3)の単位量、Ad2は消泡材粉末(日本トレーディング社製、商品名「FSアンチフォームDC2−4248S」)の単位量、Ad1は膨張材(アルミ粉)の単位量である。
5分フロー試験の計測値が平均248mmであった充填材は、図4に示すように、W/Bが35%、Wが425kg/m3、Bが1214kg/m3、Cが1194kg/m3、CSAが20kg/m3、Sが485kg/m3、Vtが3.70kg/m3、SPが1.65kg/m3、Ad2が0.2kg/m3、Ad1が0.020kg/m3の充填材である。
【0010】
充填装置1は、ホッパー2Aと、開閉装置4Aとを備える。ホッパー2Aは、例えば、金属により形成され、一端開口が充填材入口21となる大径円筒部22と、他端開口が充填材排出口23となる漏斗部24とを備える。漏斗部24は、円錐状筒壁部25と、円錐状筒壁部25の円錐の頂点部に形成された他端開口26と連通する小径円筒部27とを備える。大径円筒部22よりも筒の内径が小さい小径円筒部27は、大径円筒部22の筒の中心及び円錐状筒壁部25の円錐の中心と同軸に設けられる。充填材排出口23の周縁には、ベースプレート90の上面91に接触する設置板18を備える。設置板の下面は小径円筒部27の中心軸と直交する平面で、かつ、充填材排出口23の下端面と同一平面に形成される。
即ち、大径円筒部22の他端開口28の縁部と円錐状筒壁部25の底面側に位置する一端開口29の縁部とが溶接などの連結手段で連結され、かつ、円錐状筒壁部25の他端開口26の縁部と小径円筒部27の一端開口30の縁部とが溶接などの連結手段で互いに連結されることによって、充填材が大径円筒部22の筒内及び円錐状筒壁部25の円錐状筒内を経由して小径円筒部27の筒内に移動可能に形成され、小径円筒部27の他端開口が充填材排出口23を形成する。充填材排出口23の口径は、注入孔93の孔径よりも小さく形成される。また、ホッパー2Aは、充填材充填用空間69の容積よりも大きい容積を有したホッパー2Aを用いる。ホッパー2Aは、大径円筒部22の一端開口が上端となるように支持されることにより、充填材入口21から投入された充填材を、大径円筒部22の内部、漏斗部24の円錐状筒壁部25の内部、漏斗部24の小径円筒部27の内部を通過させて小径円筒部27の他端開口である充填材排出口23から排出する構成を備える。
開閉装置4Aは、小径円筒部27の筒の内側により形成された内部通路17を開閉する。
【0011】
充填装置1を用いた免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法を説明する。
ホッパー2Aの設置板18の下面19をベースプレートの上面91に接触させ、かつ、充填材排出口23と注入孔93とを合わせ、ホッパー2Aの内側にコンクリートを入れる。この際、開閉装置4Aで小径円筒部27の内部通路17を閉じておいて、ホッパー2A内にコンクリートを貯留した後に、開閉装置4Aを開けると、コンクリートがホッパー2の充填材排出口23及びベースプレート90の注入孔93を経由して型枠内94に打設されて先行下部コンクリート95a及び先行上部コンクリート95bが形成される。この際、先行上部コンクリート95bの天端95tがベースプレート90の下面92より下方に約30mm〜50mm程度の位置まで来るようにする。尚、上述したように、先行下部コンクリート95a及び先行上部コンクリート95bを形成するコンクリートの打設は、ベースプレート90の外周縁90aと型枠105との間Dや注入孔93より直接打設してもよい。
先行上部コンクリート95bがまだ固化しておらずコンクリートの初期沈下がおさまった状態において、先行上部コンクリート95bの天端95tとベースプレート90の下面92との隙間により形成された充填材充填用空間69に、充填装置1を用いて上記充填材を充填する。この場合も、ホッパー2Aの設置板18の下面19をベースプレートの上面91に接触させ、かつ、充填材排出口23と注入孔93とを合わせ、ホッパー2Aの内側に充填材を入れる。この際、開閉装置4Aで小径円筒部27の内部通路17を閉じておいて、ホッパー2A内に充填材を貯留しておく。ホッパー2A内に貯留する充填材の量は、少なくとも充填材充填用空間69に充填される充填材の量よりも多くしておいて、ホッパー2A内から充填材充填用空間69内に充填材を連続して充填できるようにしておく。
【0012】
ホッパー2A内に充填材を貯留しておくことで、ホッパー2A内に貯留された充填材の自重により充填材内に巻き込んだ空気(気泡)が脱気される。即ち、ホッパー2A内への投入時またはポンプによる圧送時に充填材中に巻き込んだ空気(気泡)を脱気できる。充填材内に空気(気泡)が含有されていると、充填材充填用空間69に充填材が充填された後、充填材内に含まれていた空気(気泡)が上昇してベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に溜まってしまって、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれず、免震装置の性能を低下させてしまうという問題があるが、最良の形態1では、ホッパー2A内に貯留された充填材の自重により充填材内の空気が脱気されるので、当該問題を解消できる。ホッパー2A内に一定量の充填材を貯留した後に充填材内の空気が脱気されるのに必要な所定時間を経過した場合に、開閉装置4Aを開けると、充填材がホッパー2Aの充填材排出口23及びベースプレート90の注入孔93を経由して充填材充填用空間69に打設充填されて上端部充填材層110が形成される。この際、ホッパー2A内の充填材に充填材の高さに応じた圧力が加わるので、その後開閉装置4Aを開けることにより、脱気された充填材がスムーズに充填材排出口23より排出されて上記充填材充填用空間69に充填されるので、ベースプレート90の下面92と充填材との間の空隙が形成されにくくなり、高品質の免震基礎を施工できる。また、ホッパー2A内から充填材充填用空間69内に充填材が連続して充填されるため、打設された充填材内に空気がとりこまれにくくなる。よって、最良の形態1では、貯留により脱気された充填材を充填材充填用空間69内に送り込めるとともに、充填材を充填材充填用空間69に一度に一気に打設できるため充填材内に空気がとりこまれにくくなるので、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じにくくなり、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できるようになる。
【0013】
充填材の充填作業は、ベースプレート90の注入孔93の上端まで充填材が満たされてベースプレート90の下面92と充填材とが密着された状態となるまで行われるが、充填材が充填材充填用空間69に充填されたか否かの具体的な確認方法は、ベースプレート90の外周縁90aと型枠105との間Dから覗いて上端部充填材層110の天端115がベースプレート90の下面92よりも上方に到達していることを確認することにより可能である。
【0014】
最良の形態1では、内径5cm、長さ10cmの円筒11を平面12に直立させた状態で円筒11内に充填された後、円筒11が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材を用い、注入孔93の近傍において先行上部コンクリート95bの天端95t(上面)からベースプレート90の下面92まで充填材を盛り上げた後、充填材が同心円状に外側に拡大しながら充填材充填用空間69に充填されるようにした。これにより、充填材が先行上部コンクリート95bの天端95tより上方向に山状に盛り上がるように積み重ねられた後にベースプレート90の下面92に接する山ができ、その後に放射状に周囲に拡がるので、充填材が充填材充填用空間69の空気を押出しながら充填されるため、充填材内への空気の巻き込みを少なくできる(図5(a),図5(b)参照)。よって、充填材充填用空間69に対する充填材の充填性が向上し、充填材が密実に充填されて空気溜まりの少ない上端部充填材層110を形成できる。つまり、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じにくくなり、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
【0015】
最良の形態1によれば、ホッパー2A内に充填材を貯留するための開閉装置4Aを備えたので、充填材内の空気を脱気でき、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じにくくなり、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できるようになる。また、開閉装置4Aが小径円筒部27の内部通路17を開通させる状態に設定された場合、ホッパー2A内に貯留されていた充填材の高さ位置に応じた圧力が、排出圧力となって充填材に加わるので、充填材が充填材排出口23よりスムーズに排出されるようになって、充填作業時間を短くでき、作業性が向上する。
【0016】
最良の形態1によれば、充填材充填用空間69の容積よりも大きい容積を有したホッパー2Aを備えて、充填材充填用空間69に充填される充填材の量より多い一定量の充填材をホッパー2A内に貯留しておいて、充填材充填用空間69に充填材が充填されるまで充填材充填用空間69に充填材を連続して供給するので、ホッパー2A内から充填材充填用空間69内に充填材を連続して充填できるため、充填材充填用空間69に供給された充填材内に空気がとりこまれにくくなるので、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まり(空隙)が生じにくくなり、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
【0017】
最良の形態1によれば、ホッパー2Aの円錐形状の漏斗部24により、円錐状筒壁部25から小径円筒部27に流下する充填材の圧力を大きくする圧力付与部が構成される。即ち、充填材の流下する方向に向けて流路径が漸次小さくなるように形成された円錐状筒壁部25を備えているので、充填材が円錐状筒壁部25の流路径の大きい部分から流路径の漸次小さくなる円錐状筒壁部25内を経由して流路径の小さい小径円筒部27内に流下するため、ベルヌーイの法則によって小径円筒部27内に連続して流下する充填材の圧力が増し、充填材排出口23より落下する充填材の流動速度が速くなるので、ベースプレート90の充填材充填用空間69への充填材の充填性が良くなって、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
【0018】
最良の形態1によれば、ホッパー2Aが上述した圧力付与部を備えるため、小径円筒部27内に流下する充填材の圧力が増し、充填材排出口23より落下する充填材の流動速度がさらに速くなるため、充填材内への空気の巻き込みをさらに少なくできるので、さらに空気溜まりの少ない上端部充填材層110を形成でき、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれたより高品質の免震基礎を提供できる。
【0019】
最良の形態1によれば、充填材排出口23の孔径は、ベースプレート90に形成された注入孔93の孔径よりも小さく形成されたので、注入孔93の孔の中心Bと充填材排出口23の孔の中心Aとが一致するように位置合わされた状態で充填材が注入される場合に、充填材が注入孔93の周囲に位置するベースプレート90の注入孔93近傍の上面91に接触せず、注入孔93近傍の上面91に充填材が付着するのを防止できる。
【0020】
最良の形態1によれば、ホッパー2Aが、小径円筒部27を備えたので、角管を用いた場合に比べて、充填材が筒内をスムーズに流れるので、充填作業時間を短くでき、作業性が向上する。
【0021】
最良の形態2
図6を参照し、充填材充填用空間69に充填材を充填する充填装置1の構成について詳説する。充填装置1は、ホッパー2と、ホッパー支持台3と、シャッターバルブ装置4とを備え、ホッパー2とホッパー支持台3とが分離可能に構成される。
【0022】
ホッパー2は、例えば、金属により形成され、一端開口が充填材入口21となる大径円筒部22と、他端開口が充填材排出口23となる漏斗部24とを備える。漏斗部24は、円錐状筒壁部25と、円錐状筒壁部25の円錐の頂点部に形成された他端開口26と連通する小径円筒部27とを備える。大径円筒部22よりも筒の内径が小さい小径円筒部27は、大径円筒部22の筒の中心及び円錐状筒壁部25の円錐の中心と同軸に設けられる。
即ち、大径円筒部22の他端開口28の縁部と円錐状筒壁部25の底面側に位置する一端開口29の縁部とが後述するリング平板を介して溶接などの連結手段で連結され、かつ、円錐状筒壁部25の他端開口26の縁部と小径円筒部27の一端開口30の縁部とが溶接などの連結手段で互いに連結されることによって、充填材が大径円筒部22の筒内及び円錐状筒壁部25の円錐状筒内を経由して小径円筒部27の筒内に移動可能に形成され、小径円筒部27の他端開口が充填材排出口23を形成する。
大径円筒部22の他端開口28の口内径d1は、円錐状筒壁部25の一端開口29の開口の口内径d2よりも大径であり、大径円筒部22の他端開口28の縁部28aと円錐状筒壁部25の一端開口29の縁部29aとの間を塞ぐようにリング平板31が配置される。上記大径円筒部22の他端開口28の縁部28aとリング平板31の外周縁部側上面とが溶接などの連結手段により連結され、円錐状筒壁部25の一端開口29の縁部29aとリング平板31の内周縁部側下面とが溶接などの連結手段により連結されることによって、当該リング平板31の下面32が後述のホッパー受面50に載置される面となる。
つまり、ホッパー2は、大径円筒部22の一端開口が上端となるようにホッパー支持台3に載置されることにより、大径円筒部22の一端開口である充填材入口21から投入された充填材を、大径円筒部22の内部、漏斗部24の円錐状筒壁部25の内部、漏斗部24の小径円筒部27の内部を通過させて小径円筒部27の他端開口である充填材排出口23から排出する構成を備える。
【0023】
尚、充填材排出口23の口径は、注入孔93の孔径よりも小さく形成される。また、ホッパー2は、充填材充填用空間69の容積よりも大きい容積を有したホッパー2を用いる。
【0024】
ホッパー支持台3は、前記型枠105を跨ぐように設置されるものであり、支持脚35と、梁受筒部36と、梁部37と、ホッパー受枠38とを備える。
支持脚35は、型枠105の中心を挟んで対称に対向するように2つ設けられる。支持脚35は、垂直面に平行な四角枠により構成され、四角枠の縦辺部を形成する脚柱部39の下端に車輪40を備える。梁受筒部36は、脚柱部39及び四角枠の横辺部を形成する連結部41と直交する方向に延長するように、一端部42が、脚柱部39の上端に溶接などの連結手段で連結される。
梁部37は、各支持脚35の脚柱部39の上端に設けられて互いに向かい合う梁受筒部36の他端開口43から梁受筒部36の筒内に収納される両端部を備えた互いに平行に向かい合う一対の支持梁44と、当該一対の支持梁44同士を連結する2つの連結梁45とを備える。2つの連結梁45は、一対の支持梁44の中央部を連結するために所定間隔隔てて平行に設けられる。
ホッパー受枠38は、リング枠体46により形成される。リング枠体46は、一対の支持梁44の上面47と連結梁45の上面48に跨って載置されて、リング枠体46の下面66と上面47;48とが溶接などの連結手段により固定状態に連結される。
リング枠体46の上面49におけるリングの内径は、ホッパー2の漏斗部24が通過可能で、かつ、ホッパー2の大径円筒部22が通過不可能な大きさに形成される。
つまり、ホッパー2の漏斗部24がリング枠体46の上側からリングの内側を通過し、ホッパー2のリング平板31の外面がリング枠体46の上面49により形成されたホッパー受面50に載置される。即ち、ホッパー2がリング平板31を備え、ホッパー受枠38がホッパー2のリング平板31の外面を安定に載置可能なホッパー受面50を備えたので、ホッパー2をホッパー受枠38の所定の位置に容易かつ正確に設置できる。
【0025】
一対の支持脚35は、互いに向かい合う型枠105の一対の側面の外側にそれぞれ配置される。一対の支持脚35は、梁受筒部36と支持梁44との嵌め合いが解除されるまで、互いに離れる方向に支持脚35間の距離を調整可能であり、また、一対の支持脚35は、梁受筒部36の他端開口43の縁部と連結梁45とが衝突するまで、互いに近づく方向に支持脚35間の距離を調整可能である。即ち、梁受筒部36と支持梁44との嵌め合い長さが、支持脚35;35間の距離可変長さとなり、梁受筒部36と支持梁44との嵌め合い機構が、支持脚間距離長さ可変機構を形成する。
【0026】
支持脚35は、高さ位置可変機構を備える。高さ位置可変機構は、例えば、ねじ式の脚柱部39や、短管を脚柱部39の下端に継ぎ足したり外したりする等の手段により実現できる。例えば、脚柱部39の下端面より脚柱部39の上方内部に延長する雌ねじ部と、車輪支持部の上部プレートより上方に突出するように設けられた雄ねじ部とにより実現可能である。脚柱部39の下端に継ぎ足したり外されたりする短管は、車輪支持部の上部プレートとの連結部を備えた構成とすればよい。
高さ位置可変機構により、ホッパー受枠38の高さ位置を調整できるようにすることによって、ホッパー2の充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93との間の間隔を小さくしたり、ホッパー2の充填材排出口23とベースプレート90の上面91とを接触させることができ、充填材がホッパー2の充填材排出口23、及び、注入孔93を経由して充填材充填用空間69内に良好に充填される。
【0027】
シャッターバルブ装置4は、ホッパー2の小径円筒部27の筒路を開通または閉鎖する機構であり、シャッター板51、シャッター板操作棒52を備える。図7に示すように、シャッター板51は、平板51aと、平板51aの一端部に形成されて後述する両端開口筒状通路62の一端開口63の縁面に接触するストッパ部51bとを備える。平板51aは、小径円筒部27の筒の内径よりも大きい径の円貫通孔により形成された開通路53と、遮断面54とを備える。
【0028】
小径円筒部27は、上下に分割された上筒部55及び下筒部56と、シャッター板挿入部57とを備える。シャッター板挿入部57は、上筒部55の下端開口の縁部より延長して上筒部55の中心軸と直交するように設けられた上フランジ59と、下筒部56の上端開口の縁部より延長して下筒部56の中心軸と直交するように設けられた下フランジ61と、上下のフランジ59;61の側縁同士を繋ぐ側板58;58(図8参照)とで形成された矩形状の両端開口筒状通路62により形成される。シャッター板挿入部57を形成する両端開口筒状通路62の通路高さは、シャッター板51の板厚より大きい寸法に形成され、シャッター板51が両端開口筒状通路62内を移動可能である。両端開口筒状通路62の一端開口63がシャッター板51の出入口となり、シャッター板51は当該出入口を介して両端開口筒状通路62内に挿入される。
図6;8に示すように、シャッター板51の平板51aの他端部側が両端開口筒状通路62内に挿入され、シャッター板操作棒52によりシャッター板51のストッパ部51bが押圧されて、図7に示すように、両端開口筒状通路62の一端開口63の縁面とストッパ部51bとが接触した状態となった場合に、開通路53を形成する円貫通孔の中心と上筒部55及び下筒部56の中心とが一致して、この状態での上筒部55の筒内と開通路53と下筒部56の筒内とにより、漏斗部24内の充填材を充填材排出口23に導く小径円筒部27の筒路が形成される。小径円筒部27の筒路を介した充填作業を終了する場合には、図6に示すように、シャッター板操作棒52によりシャッター板51の平板51aの他端部が押圧され、シャッター板51の平板51aの遮断面54が上筒部55の筒内と下筒部56の筒内との間を遮断することによって、充填材排出口23からの充填材の排出が停止する。尚、シャッター板51とシャッター板操作棒52とを一体にしてシャッター板操作棒52を引く操作をする場合、充填材の重さなどでシャッター板操作棒52を引けないので、ここでは、シャッター板51の平板51aの一端部側と他端部側とをシャッター板操作棒52により押圧して小径円筒部27の筒路を開閉するようにしている。
【0029】
充填装置1を用いた免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法を説明する。
まず、型枠105を跨いでホッパー受枠38がベースプレート90の注入孔93の上方に位置されるようにホッパー支持台3を設置する。そして、ホッパー2をホッパー支持台3のホッパー受枠38に支持されるように設置する。この場合、ホッパー受枠38に設置したホッパー2の充填材排出口23の中心軸とベースプレート90の注入孔93の中心軸とが一致するように、支持脚間距離長さ可変機構を調節してホッパー2の充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93との間の間隔を調整する。このように位置決めされた場合、充填材排出口23の口径が、注入孔93の孔径よりも小さく形成されていることから、充填材排出口23より充填材が排出された場合に、注入孔93周りのベースプレート90の上面91に充填材がこぼれにくくなり、充填材を充填材充填用空間69に効率的に充填できる。
尚、ホッパー2とホッパー支持台3とを分離し、ホッパー支持台3を上記型枠105を跨いだ状態で設置し、コンクリート供給場所に移動させたホッパー2内にコンクリートを投入してそのホッパー2をホッパー支持台3に据え置いてホッパー2内のコンクリートを型枠内94に打設したり、ホッパー受枠38にホッパー2を設置した状態でホッパー2の内側に圧送管などを用いてコンクリートを投入することでコンクリートを型枠内94に打設して、先行下部コンクリート95a及び先行上部コンクリート95bを形成する。即ち、コンクリート供給場所においてコンクリートを収容したホッパー2をクレーン等の揚重機で吊上げてホッパー受枠38に設置することで、ホッパー受枠38にホッパー2及びコンクリートの荷重を支持させるか、ホッパー受枠38にホッパー2を設置した状態でホッパー2の内側に圧送管などを用いてコンクリートを投入することで、ホッパー受枠38にホッパー2及びコンクリートの荷重を支持させる。この際、シャッターバルブ装置4を閉じておく。そして、ホッパー受枠38に設置されたホッパーのシャッターバルブ装置4を開状態とすることで、コンクリートがホッパー2の充填材排出口23及びベースプレート90の注入孔93を経由して型枠内94に打設されて先行下部コンクリート95a及び先行上部コンクリート95bが形成される。この際、先行上部コンクリート95bの天端95tがベースプレート90の下面92より下方に約30mm〜50mm程度の位置まで来るようにする。
【0030】
先行上部コンクリート95bがまだ固化しておらずコンクリートの初期沈下がおさまった状態において、先行上部コンクリート95bの天端95tとベースプレート90の下面92との隙間により形成された充填材充填用空間69に、高流動コンクリートやモルタルやセメントペーストのような充填材を注入して充填する。この場合も、ホッパー2とホッパー支持台3とを分離し、ホッパー支持台3を上記型枠105を跨いだ状態で設置し、充填材供給場所に移動させたホッパー2内に充填材を投入してそのホッパー2をホッパー支持台3に据え置いてホッパー2内の充填材を充填材充填用空間69に充填したり、ホッパー受枠38にホッパー2を設置した状態でホッパー2の内側に圧送管などを用いて充填材を投入することで充填材を充填材充填用空間69に充填することで上端部充填材層110を形成する。即ち、充填材供給場所において充填材を収容したホッパー2をクレーン等の揚重機で吊上げてホッパー受枠38に設置することで、ホッパー受枠38にホッパー2及び充填材の荷重を支持させるか、ホッパー受枠38にホッパー2を設置した状態でホッパー2の内側に圧送管などを用いて充填材を投入することで、ホッパー受枠38にホッパー2及び充填材の荷重を支持させる。この際、シャッターバルブ装置4を閉じておいて、ホッパー2内に充填材を貯留しておく。ホッパー2内に貯留する充填材の量は、少なくとも充填材充填用空間69に充填される充填材の量よりも多くしておいて、ホッパー2内から充填材充填用空間69内に充填材を一度に充填できるようにしておく。ホッパー2内に充填材を貯留しておくことで、上述したように、ホッパー2内に貯留された充填材の自重により充填材内の空気が脱気される。そして、ホッパー2内に一定量の充填材を貯留した後に充填材内の空気が脱気されるのに必要な所定時間を経過した場合に、ホッパー受枠38に設置されたホッパー2のシャッターバルブ装置4のシャッター板51を開状態とすることで、充填材がホッパーの充填材排出口23及びベースプレート90の注入孔93を経由して充填材充填用空間69に打設充填されて上端部充填材層110が形成される。この際、最良の形態1と同様に、ホッパー2内から充填材充填用空間69内に充填材が一度に充填されるため、打設された充填材内に空気がとりこまれにくくなる。よって、最良の形態2では、貯留により脱気された充填材を充填材充填用空間69内に送り込めるとともに、充填材を充填材充填用空間69に一度に連続して打設できるため充填材内に空気がとりこまれにくくなるので、ベースプレート90の下面92と充填材充填用空間69に充填される充填材との境界に空気溜まりが生じにくくなり、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できるようになる。
【0031】
最良の形態1と同じように、充填材が充填材充填用空間69に充填されたことを確認した後に、次の充填箇所である免震装置のベースプレート下部に充填材を充填するために、車輪40を走行させてホッパー2及びホッパー支持台3を次の充填箇所まで移動させたり、あるいは、ホッパー2とともにホッパー支持台3をクレーン等の揚重機で吊上げてホッパー2及びホッパー支持台3を次の充填箇所まで移動させた後に、上述した充填作業を行う。
【0032】
最良の形態2では、上述した最良の形態1と同じ効果が得られるとともに、ホッパー2及び充填材の重量がベースプレート90に加わらないように、充填材を収容したホッパー2を支持するホッパー支持台3を備えたので、ホッパー2の自重及び充填材の重量をホッパー支持台3が負担するのでベースプレート90に撓みなどの変形が生じず、ベースプレート90に弾性復元によるベースプレート90の下面92と充填材との間の空隙が形成されない。即ち、ベースプレート90に撓みを発生させずに充填作業を行えて、ベースプレート90の下面92と充填材との間の空隙発生を防止可能な免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法を提供できるとともに、この方法を実現するための充填装置1を提供できるので、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
また、ホッパー2とホッパー支持台3とを分離し、ホッパー支持台3を型枠105を跨いだ状態で設置し、ホッパー2内に充填材を投入してそのホッパー2をホッパー支持台3に据え置いてホッパー2内の充填材を充填材充填用空間69に充填したので、ホッパー2だけを充填材供給場所に移動させることにより、充填材供給作業を容易に行える。
また、ホッパー支持台3が車輪40を備えるので、車輪40を走行させてホッパー支持台3を次の充填箇所まで移動させる移動作業が容易となる。
【0033】
最良の形態2によれば、シャッターバルブ装置4が、シャッター板51を備えたので、開通路53の口径の異なるシャッター板51を用意しておけば、注入孔93の口径に応じて、当該注入孔93の口径より小さい径の開通路53を有したシャッター板51を使用することで、ベースプレート90の注入孔93近傍の上面91に充填材が付着するのを防止できる。
【0034】
最良の形態3
図9に示すように、最良の形態2で説明したホッパー2の小径円筒部27の下端部に打設管120を取付けるようにしてもよい。打設管120は、充填材排出口23と注入孔93との間の距離に応じた長さで、かつ、充填材排出口23と注入孔93との間の充填材通過路として機能する管を用いればよい。
最良の形態3によれば、高さ位置可変機構そのもの、あるいは、高さ位置可変機構によるホッパー受枠38の高さ位置調整作業を不要とでき、ホッパー2の充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93との間の間隔を小さくしたり、ホッパー2の充填材排出口23と注入孔93とを連通させる作業を容易にできる。
【0035】
最良の形態4
図10(a),(b)に示すように、最良の形態2で説明したホッパー2の小径円筒部27の下端部に設けられた打設管120を、充填材排出口23よりも下方に延長可能で、かつ、充填材排出口23の位置に復帰させることの可能な伸縮管121により構成してもよい。伸縮管121は、例えば、蛇腹管、あるいは、小径円筒部27とで二重管を形成する内管あるいは外管により形成すればよい。伸縮管121は、充填時以外は、吊上手段125により充填材排出口23側に位置され、充填時には、吊上手段125が解除されることで自重で降下して注入孔93の周囲のベースプレート90の上面91に位置される。
最良の形態4によれば、小径円筒部27が伸縮管121を備えたことにより、充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93との間の距離を伸縮管121の伸縮距離の範囲で調整可能となり、高さ位置可変機構そのもの、あるいは、高さ位置可変機構によるホッパー受枠38の高さ位置調整作業を不要とでき、ホッパーの充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93との間の間隔を小さくしたり、ホッパー2の充填材排出口23と注入孔93とを連通させる作業を容易にできる。
また、伸縮管121は、蛇腹管または二重管であるので、伸縮管121を直線状に垂直方向に移動でき、伸縮管121に曲線部ができないため円滑な充填作業が可能となる。
尚、伸縮管121の下端開口122と注入孔93とが離れないように外部から伸縮管121を注入孔93側に押え付けたり、伸縮管121の下端開口縁部をベースプレート90の上面91に固定することで、安定な充填作業を行える。
【0036】
最良の形態5
図11(a),(b)に示すように、伸縮管121が、下端部に重り(カウンターウエイト)を備えた構成としてもよい。重りは、例えば、伸縮管121の下端開口122の縁部より下端開口122より離れる方向でかつ伸縮管121の中心軸と直交する方向に延長するように設けられたフランジ状の鋼板材126により形成される。重りは、充填時以外は、吊上手段125により充填材排出口23側に位置され、充填時には、吊上手段125が解除されることで自重で降下して注入孔93の周囲のベースプレート90の上面91に位置される。この際、伸縮管121が伸びて、充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93とが伸縮管121により連通するので、充填材は、充填材排出口23、伸縮管121、注入孔93を介してベースプレート90下の充填材充填用空間69に充填される。重りは、伸縮管121内を通過する充填材の圧力で移動することなく、伸縮管121の位置を安定に維持できる重量のものを用いる。
【0037】
吊上手段125としては、重りをロープで吊上げるロープ巻き取り機構、重りを小径円筒部27にピン等で取付ける機構などを用いればよい。ロープ巻き取り機構を用いる場合、ロープ巻き取り機構を型枠105の外側に設置でき、作業者がベースプレート90上に乗ることなくロープ巻き取り機構を操作できるようになるので、好ましい。
【0038】
最良の形態5によれば、重りが自重で降下することで、充填材排出口23とベースプレート90の注入孔93とが伸縮管121により連通するように、伸縮管121の下端とベースプレート90の上面91とを密着させることができるので、充填材の充填作業を確実に行うことができる。また、高さ位置可変機構そのもの、あるいは、高さ位置可変機構によるホッパー受枠38の高さ位置調整作業を不要とできる。
【0039】
最良の形態6
打設管120、または、伸縮管121の下端に、管路を開閉するバルブを設けてもよい。
最良の形態6によれば、ホッパー2のシャッターバルブ装置4のシャッター板51の位置から打設管120、または、伸縮管121の下端までに滞留する充填材をベースプレート90上に排出してベースプレート90上に付着させることなく、ホッパー支持台3、または、ホッパー2を移動できるようになる。充填材をベースプレート90上に付着させたままでは免震装置を水平に設置できない。また、ベースプレート90上に付着した充填材を除去すればよいが、作業が煩雑である。最良の形態6では、このような問題を解消できる。
【0040】
最良の形態7
図12に示すように、最良の形態2で説明した充填方法において、ベースプレート90上に余剰充填材収容容器130を設けるようにしてもよい。余剰充填材収容容器130は、ベースプレート90の上面91に設置される底板131と、底板131の周縁部より立上るように設けられた壁133とを備えた上部開放の箱体により形成される。底板131には、注入孔93の径よりも小径の底孔132が形成される。
充填材を充填する際に、余剰充填材収容容器130の底板131をベースプレート90の上面91に置いて、底孔132の中心と注入孔93の中心とが一致するように余剰充填材収容容器130を位置決めした後に、例えば、伸縮管121の充填材排出口23と底孔132とを連通させて充填材を充填する。尚、余剰充填材収容容器130は、例えば、伸縮管121や打設管120の下端、あるいは、充填材排出口23からシャッターバルブ装置4のシャッター板51までの管路の容積よりも大きい容積のものを用いる。
最良の形態7によれば、伸縮管121や打設管120の下端、あるいは、充填材排出口23の下端に開閉バルブを設けない場合において、余剰充填材収容容器130の底孔132の内面より溢れた充填材を余剰充填材収容容器130内に捕集できる。また、余剰充填材収容容器130内に捕集された充填材は、充填材充填用空間69内に充填された充填材が何らかの原因で沈下した場合に、充填材充填用空間69に補充されるので、充填材充填用空間69内に充填された充填材が何らかの原因で沈下したとしても、ベースプレート90の下面92と充填材との密着性が保たれた高品質の免震基礎を提供できる。
【0041】
最良の形態8
上記余剰充填材収容容器130の底孔132と注入孔93との間に薄板を挿入してから、薄板と余剰充填材収容容器130とを一緒にベースプレート90の上面91から取り除くようにした。
最良の形態8によれば、余剰充填材収容容器130内に残った充填材が底孔132を介してベースプレート90の上面91に落ちるのを防止でき、ベースプレート90の上面91を汚さずに余剰充填材収容容器130を撤去できるため、充填材がベースプレート90上に排出されてベースプレート90上に付着するようなことを防止できる。
【0042】
最良の形態9
最良の形態1;2で説明したホッパー2A;2の大径円筒部22と漏斗部24とを分離可能に構成し、この場合において、漏斗部24を金属製で構成するとともに、大径円筒部22を防水加工された紙製筒体で構成してもよい。
最良の形態9によれば、容量の大きな大径円筒部22を使い捨ての紙型枠にすることができ、大径円筒部22分の重量が減るため、作業所から倉庫などへの台車の運搬作業が容易となる。
【0043】
最良の形態10
ホッパー支持台3は、一対の車輪40つき支持脚35と、梁受筒部36と、梁部37と、ホッパー受枠38とに、分離可能な構成とすれば、装置の運搬が容易となる。
【0044】
最良の形態11
充填材として、次の組成を有したモルタルを用いてもよい。図13に示したような、セメント(C)、膨張材粉末(CSA)、増粘性混和剤粉末(Vt)、細骨材(S)、セメント混和剤粉末(SP)、消泡剤粉末(E)、水(W)が混ぜ合わされて形成されたモルタルであり、図14に示したように、セメント混和剤粉末の量(SP使用量)が適正範囲0.90〜2.00kg/m3であり、第1の粉体の量と第2の粉体の量との和、即ち、増粘性混和剤粉末の量(Vt使用量)が適正範囲2.50〜4.00kg/m3であり、水結合材比(W/B)が適正範囲34.0〜60.0%であり、単位水量(W)が適正範囲380〜445kg/m3であるという条件を満たし、かつ、図15に示した評価値条件を満たす特性を持つモルタルである。即ち、フロー試験の20cmフロー時間が20秒〜60秒、フロー試験の5分フローが250±25mm、pH試験の結果が12.0以下、空気量測定方法で求めた空気量が4.0%以下、ブリーディングが0という条件を満たすモルタルである。
【0045】
増粘材としての増粘性混和剤粉末(Vt)は、第1の粉体と第2の粉体とからなる。第1の粉体は、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物の粉体や、第1の水溶性低分子化合物を含む液体を乾燥させたことにより形成された第1の水溶性低分子化合物の粉体を用いた。第2の粉体は、アニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物の粉体や、第2の水溶性低分子化合物を含む液体を乾燥させたことにより形成された第2の水溶性低分子化合物の粉体を用いた。セメント混和剤粉末(SP)は、増粘性混和剤粉末(Vt)と相溶性に優れたカルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤粉末を用いた。セメント(C)と膨張材粉末(CSA)とにより結合材(B)が形成される。
第1の水溶性低分子化合物としては、4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が好ましく、特に、アルキルアンモニウム塩を主成分とする添加剤が好ましい。また、第2の水溶性低分子化合物としては、芳香環を有するスルフォン酸塩が好ましく、特に、アルキルアリルスルフォン酸塩を主成分とする添加剤が好ましい。セメント(C)は、石灰石・粘土・酸化鉄などを原料とした普通ポルトランドセメント,早強ポルトランドセメント,中庸熱ポルトランドセメント,白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメントや、高炉セメント,フライアッシュセメント,シリカセメントなどの混合セメントを用いる。細骨材(S)は、川砂から得られた珪砂などを用いる。膨張材粉末(CSA)は、石灰複合系膨張材粉末を用いる。消泡剤粉末(E)は、シリコン系の消泡剤粉末を用いる。消泡剤粉末(E)は、混練の際に泡が発生してモルタルの空気量が多くなって強度の低下や比重の減少等が起こることを防止するために、用いる方が好ましい。
【0046】
最良の形態11に示したモルタルを充填材として使用した場合でも、最良の形態1で述べたような、内径5cm、長さ10cmの円筒を平面に直立させた状態で円筒内に充填された後、円筒が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材を使用した場合と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
尚、先行コンクリート95a;95bの注入時に使用するホッパー2A,2と、充填材の充填時に使用するホッパー2A,2とを別々に用意しておいて、ホッパー2A,2を取り替えることにより、充填材と先行コンクリート95a;95bとが混合することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】充填装置の断面図(最良の形態1)。
【図2】充填材のフロー試験を示す図(最良の形態1)。
【図3】フロー試験を行った充填材の流動特性を示す図。(最良の形態1)。
【図4】充填材の組成を示す図。(最良の形態1)。
【図5】充填装置の充填材の充填を示す図(最良の形態1)。
【図6】充填装置の断面図(最良の形態2)。
【図7】充填装置の要部拡大図(最良の形態2)。
【図8】充填装置の斜視図(最良の形態2)。
【図9】ホッパーに打設管を取付けた図(最良の形態3)。
【図10】ホッパーに伸縮管を取付けた図(最良の形態4)。
【図11】伸縮管の下端部に重りを備えた構成を示す図(最良の形態5)。
【図12】ベースプレート上に余剰充填材収容容器を備えた構成を示す図(最良の形態7)。
【図13】充填材として使用するモルタルを組成する使用材料の詳細を示す表(最良の形態11)。
【図14】充填材として使用するモルタルのSP使用量、Vt使用量、水結合材比、単位水量の適正範囲を示す表(最良の形態11)。
【図15】充填材として使用するモルタルの評価試験での評価項目、試験方法、評価値を示す表(最良の形態11)。
【図16】充填材充填用空間に充填される充填材が面状に充填された状態を示す図(従来)。
【符号の説明】
【0049】
24 漏斗部、69 充填材充填用空間、90 ベースプレート、
92 ベースプレートの下面、93 注入孔、
95a 先行下部コンクリート(先行コンクリート)、
95b 先行上部コンクリート(先行コンクリート)、105 型枠。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震基礎を構築する型枠を配置するとともに、注入孔を有するベースプレートを上記型枠で規定される空間の上端部に設置し、この型枠内に先行コンクリートを打設して先行コンクリートの上面とベースプレートの下面との間に充填材充填用空間を設けた後、ベースプレートの注入孔を介して充填材充填用空間に充填材を充填する充填方法において、上記注入孔の近傍において先行コンクリートの上面からベースプレートの下面まで充填材を盛り上げた後、充填材が同心円状に外側に拡大しながら充填材充填用空間に充填されるようにしたことを特徴とする免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法。
【請求項2】
円錐形状の漏斗部を介して充填材を充填材充填用空間に連続して供給したことを特徴とする請求項1に記載の免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法。
【請求項3】
上記充填材として、内径5cm、長さ10cmの円筒を平面に直立させた状態で円筒内に充填された後、円筒が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材を用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法。
【請求項4】
上記充填材として、セメントと膨張材粉末とから成る結合材と、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物から成る第1の粉体とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物から成る第2の粉体とから成る増粘材と、細骨材と、セメント混和剤粉末と、水とが混ぜ合わされて形成され、単位水量が380〜440kg/m3、水と結合材との比が34.0〜60.0%、第1の粉体の量と第2の粉体の量との和が2.50〜4.00kg/m3、セメント混和剤粉末の量が0.90〜2.00kg/m3であるモルタルを用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法。
【請求項1】
免震基礎を構築する型枠を配置するとともに、注入孔を有するベースプレートを上記型枠で規定される空間の上端部に設置し、この型枠内に先行コンクリートを打設して先行コンクリートの上面とベースプレートの下面との間に充填材充填用空間を設けた後、ベースプレートの注入孔を介して充填材充填用空間に充填材を充填する充填方法において、上記注入孔の近傍において先行コンクリートの上面からベースプレートの下面まで充填材を盛り上げた後、充填材が同心円状に外側に拡大しながら充填材充填用空間に充填されるようにしたことを特徴とする免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法。
【請求項2】
円錐形状の漏斗部を介して充填材を充填材充填用空間に連続して供給したことを特徴とする請求項1に記載の免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法。
【請求項3】
上記充填材として、内径5cm、長さ10cmの円筒を平面に直立させた状態で円筒内に充填された後、円筒が引き上げられてから5分後に平面上に円状に広がった充填材の円状の径の平均が250mm±20mmである流動特性を有した充填材を用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法。
【請求項4】
上記充填材として、セメントと膨張材粉末とから成る結合材と、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物から成る第1の粉体とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物から成る第2の粉体とから成る増粘材と、細骨材と、セメント混和剤粉末と、水とが混ぜ合わされて形成され、単位水量が380〜440kg/m3、水と結合材との比が34.0〜60.0%、第1の粉体の量と第2の粉体の量との和が2.50〜4.00kg/m3、セメント混和剤粉末の量が0.90〜2.00kg/m3であるモルタルを用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の免震装置のベースプレート下部への充填材の充填方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−127033(P2010−127033A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304319(P2008−304319)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】
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