説明

入力装置及びその製造方法

【課題】 カメラ等の光学装置に対する下部基板と上部基板との間の光透過部における光の反射を小さくし透過率を向上させることができ、光学装置の感度を向上させることが可能な入力装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 透光性基材の表面に透明導電膜が形成された下部基板22と上部基板21とを有し、各透明導電膜が対向するように前記下部基板22と前記上部基板21とが空気層44を介して対向し、前記上部基板21の表面が操作面側である入力装置において、前記下部基板22と前記上部基板21との間の一部には、各基板との屈折率の差の絶対値が、前記空気層44と各基板との屈折率の差の絶対値よりも小さくなる透光性媒質42にて埋められた光透過部41が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向配置された下部基板及び上部基板を有する入力装置に係り、特に、カメラ等の光学装置に対する光透過構造に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗式のタッチパネルは、透光性基材の表面に透明導電膜が形成された下部基板及び上部基板を間に空気層を挟んで対向させた構造である。
【0003】
上部基板は可撓性であり、指やペンで押圧すると上部基板が変形して対向する透明導電膜同士が接触する。この押圧操作された際の透明導電膜の抵抗による分圧を、互いに直交するX方向及びY方向にて測定することで、押圧位置を特定することが可能になっている。
【0004】
タッチパネルは携帯電話、デジタルカメラ等の様々な電子機器に搭載されている。電子機器の形態よっては例えばカメラをタッチパネルの端部付近に設置する場合がある。
【0005】
抵抗式のタッチパネルは、図9に示すように下部基板1と上部基板2とが空気層3を介して対向配置されている。下部基板1と上部基板2間の端部は両面テープ等の接合層4を介して接合されている。
【0006】
図9に示すように下部基板1の下面1a側にカメラ5が設置されている。カメラ5は液晶ディスプレイ(図示しない)が配置されるタッチパネルの入力領域15の外側端部に配置される。
【0007】
図9に示す構造では、カメラ5と対向する下部基板1と上部基板2の間を空気層3aとしていた。
【0008】
しかしながら図9に示す構造では、前記空気層3aにより光の反射が起こりやすく透過率が低下する問題があった。このためカメラ5の感度が低下するといった問題があった。
【0009】
特許文献3及び特許文献4のように、下部基板と上部基板との間に液体を注入する技術が知られている。
【0010】
しかしながら、このように液体を入れる構造を図9に示す構造のタッチパネルに適用しても、下部基板と上部基板との間に満遍なく液体を注入して封止することは困難であり生産性に劣るし、気泡等が入りやすく、カメラ5の感度を適切に向上させることが難しいと考えられる。また液漏れの心配もあり実用性に乏しい。
【0011】
また特許文献1に示すように、加飾層が表示画面を取り囲む形状で形成されている場合、カメラ等と対向する領域では加飾層の一部を除去して光透過部を形成することが必要となる。
【0012】
例えば図10に示すように、タッチパネルを構成する上部基板2の上方には、表面に操作面6を備える透光性の表面基材7と、前記表面基材7の下面7aに印刷等でされて成る加飾部8が設けられる。図10に示すように加飾部8は、複数の加飾層8a〜8cを積層して構成される。このように複数の加飾層8a〜8cを積層して所定の色に着色する。複数の加飾層8a〜8cが積層されて成る加飾部8には、光透過部9に空間10が形成され、加飾部8の各加飾層8a〜8cの端部8dは高さ方向に一致している。このため、加飾部8の下面8e(最も下側に形成された加飾層8cの下面)と表面基材7の下面7aとの間には急峻な段差11が形成される。
【0013】
そして図10に示すように、表面基材7と加飾部8からなる表面層12と上部基板2との間は、光学用の透明粘着シート13を介して接合されている。透明粘着シート13は加圧によって変形可能な材質であるが、図10に示すように、加飾部8の下面8eと表面基材7の下面7aとの間には急峻な段差11があるために、前記段差11を適切に透明粘着シート13にて埋めることが難しく図10に示す構造では気泡14が生じやすい問題があった。
【0014】
このような気泡14があるとそこで乱反射が起こるために光透過部9下に設置されるカメラ等の光学装置の感度を適切に向上させることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2008/111505号
【特許文献2】特開2009−123193号公報
【特許文献3】特開昭63−281190号公報
【特許文献4】特開昭59−98528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、カメラ等の光学装置に対する下部基板と上部基板との間の光透過部における光の反射を小さくし透過率を向上させることができ、光学装置の感度を向上させることが可能な入力装置を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、加飾部を備える表面層と上部基板との間に気泡が生じるのを適切に抑制することが可能な入力装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、透光性基材の表面に透明導電膜が形成された下部基板と上部基板とを有し、各透明導電膜が対向するように前記下部基板と前記上部基板とが空気層を介して対向し、前記上部基板の表面が操作面側である入力装置において、
前記下部基板と前記上部基板との間の一部には、各基板との屈折率の差の絶対値が、前記空気層と各基板との屈折率の差の絶対値よりも小さくなる透光性媒質にて埋められた光透過部が設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
これにより、前記光透過部が空気層である場合に比べて光の反射を小さくし透過率を向上させることができる。
【0020】
本発明では、前記下部基板と前記上部基板との間を接合する接合層には前記光透過部の位置に空間が形成され、前記空間内に前記透光性媒質が充填されていることが好ましい。これにより透光性媒質で埋められた光透過部を所定位置に形成しやすい。また接合層に空間を設けることで、前記接合層の幅が狭くなっても、前記空間を透光性媒質で埋めるため、下部基板と上部基板間の接合強度や機械的強度を向上させることができる。
【0021】
また本発明では、前記接合層は前記光透過部の周囲を囲むように形成されていることが好ましい。光透過部を区画でき、前記光透過部内に適切に、透光性媒質を充填することが出来る。
【0022】
また本発明では、前記下部基板には前記透光性媒質を前記光透過部に充填するための充填孔が形成されていることが好ましい。例えば、下部基板と上部基板の少なくとも一方に透光性媒質を塗布した状態で両基板を貼り合わせる構成では、気泡の発生や、あるいは透光性媒質が入力装置の外方にはみ出す可能性があったが、本発明のように、下部基板に充填孔を設け、前記充填孔から透光性媒質を注入する構成とすることで気泡発生を低減でき、透光性媒質が入力装置の外方にはみ出しにくくすることが出来る。
【0023】
また本発明では、前記下部基板には前記充填孔から前記透光性媒質を充填したときに空気を逃がすための空気逃げ孔が形成されていることが好ましい。これにより下部基板に設けられた充填孔から透光性媒質を入れやすく出来る。
【0024】
また本発明では、前記透光性媒質はアクリル系樹脂であることが好ましい。
また本発明では、前記上部基板の上面側には、前記操作面を備える透光性の表面基材と、前記表面基材の下面に設けられ前記光透過部と対向する位置に空間を備える加飾部とを有して構成される表面層、及び、前記表面層と前記上部基板との間に介在する粘着層と、が設けられ、
前記加飾部は複数の加飾層が積層されており、各加飾層の端部は、前記表面基材に近い前記加飾層ほど、前記空間内に延出して形成されており、
前記粘着層が、各加飾層の前記端部から前記表面基材の下面にかけての前記空間内を埋めていることが好ましい。
【0025】
例えば、各加飾部の端部が高さ方向に揃っているような形態(図10)では、加飾部の下面(最も表面基材から離れた加飾層の下面)と表面基板の下面との間に急峻な段差が生じるため、粘着層が前記段差を適切に埋めることができず気泡が生じやすくなっていたが、本発明のように、各加飾層の端部を、表面基材に近い前記加飾層ほど、前記空間内に延出形成することで、各加飾層の端部にて緩やかな傾斜を形成することができ、よって、加飾部と表面基材の間の空間を前記粘着層にて適切に埋めることができ、気泡の発生を抑制することが出来る。
【0026】
また本発明では、前記光学装置は前記光透過部と対向する下部基板の下面側に配置されている構成に適用できる。
【0027】
本発明では上記したように、前記光透過部が空気層である場合に比べて光の反射を小さくし透過率を向上させることができるから、前記光学装置を光透過部と対向した位置に配置することで、光学装置の感度を向上させることができる。
【0028】
また本発明では、カメラや光学センサからなる光学装置を備えた構成に好ましく適用される。
【0029】
また本発明は、対向して配置され、内面に導電膜が形成された下部基板及び上部基板と、前記上部基板の上面側に配置される透光性の表面基材及び前記表面基材の下面に形成される加飾部を有する表面層と、前記表面層と下部基板間に介在する粘着層と、を有する入力装置の製造方法において、
前記加飾部を複数の加飾層を積層して形成し、このとき表面基材との間の所定領域に空間を形成し、且つ前記表面基材に近い加飾層の端部ほど前記空間内に延出するように形成する工程と、
前記表面層と上部基板間を粘着層を介して接合し、このとき、前記各加飾層の前記端部から前記表面基材の下面にかけての前記空間を前記粘着層にて埋める工程と、を有することを特徴とするものである。
【0030】
本発明のように、各加飾層の端部を、表面基材に近い前記加飾層ほど、前記空間内に延出形成することで、各加飾部の端部にて緩やかな傾斜を形成することができる。このため、粘着層を間に挟んで、表面層と上部基板間を圧着すると、粘着層が加飾部の端部の緩やかな傾斜に沿って変形し加飾部と表面基材の間の空間を前記粘着層にて適切に埋めることができ、気泡の発生を抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、カメラ等の光学装置に対する下部基板と上部基板との間の光透過部における光の反射を小さくし透過率を向上させることができ、また、加飾部を備える表面層と上部基板との間に気泡が生じるのを適切に抑制することが可能となる。よって本発明の入力装置にカメラ等の光学装置を設置することで、前記光学装置の感度を適切に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態における入力装置(タッチパネル)の分解斜視図、
【図2】本実施形態の入力装置の部分縦断面図、
【図3】本実施形態における入力装置の特徴的部分を概念的に示した模式図(縦断面図)、
【図4】本実施形態の入力装置の改良点を説明するための模式図(縦断面図)、
【図5】(a)は、図3と異なる実施形態における入力装置の特徴的部分を概念的に示した模式図(縦断面図)であり、(b)は、(a)の入力装置に透光性媒質を注入した状態を示す模式図(縦断面図)、
【図6】図3と異なる実施形態における入力装置の特徴的部分を概念的に示した模式図(縦断面図)、
【図7】本実施形態における入力装置の図3とは異なる特徴的部分を概念的に示した模式図(縦断面図)であり、(a)〜(b)は製造工程を示す縦断面図、
【図8】入力装置の検知動作を示す説明図、
【図9】入力装置の第1の技術的課題を説明するための模式図(縦断面図)、
【図10】入力装置の第2の技術的課題を説明するための模式図(縦断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は本実施形態における入力装置(タッチパネル)の分解斜視図、図2は本実施形態の入力装置の部分縦断面図であり、図1の組立後の入力装置をA−A線(図1のA−A線は上部基板に対する位置に図示)から切断し矢印方向から見た図、図3は本実施形態における入力装置の特徴的部分を概念的に示した模式図(縦断面図)、図4は問題点を説明するための入力装置を概念的に示した模式図(縦断面図)、図5(a)は、別の実施形態における入力装置の特徴的部分を概念的に示した模式図(縦断面図)であり、(b)は、(a)の入力装置に透光性媒質を注入した状態を示す模式図(縦断面図)、図6は、別の実施形態における入力装置の特徴的部分を概念的に示した模式図(縦断面図)、図7は、本実施形態における入力装置の図3とは異なる特徴的部分を概念的に示した模式図(縦断面図)であり、(a)〜(b)は製造工程を示す縦断面図、図8は、入力装置の検知動作を示す説明図である。なお、図3〜図6に示す模式図は特徴的部分を強調するために図2に示す断面図と異なる比率で図示している。
【0034】
本実施形態における入力装置20は、図1に示すように、上部基板21と、下部基板22と、接合層23と、出力用電極部25を備えたフレキシブル基板24とを有して構成される。なお図1では、上部基板21の表面に加飾部を有する表面層26が重ねられた状態を示している。
【0035】
図1,図2に示すように、上部基板21と下部基板22とは接合層23を介して接合されている。
【0036】
下部基板22は、透光性基材30と、透光性基材30の上面(上部基板21と対向する内面)に形成された透明導電膜31と、透明導電膜31の表面に形成された下部電極32,32を有して構成される。下部電極32,32は入力領域33の外周に位置する周囲部34に配置される。
【0037】
また、図1,図2に示すように、下部基板22と高さ方向にて所定間隔を空けて対向する上部基板21は、透光性基材35と、透光性基材35の下面(下部基板22と対向する内面)に形成された透明導電膜36と、透明導電膜36の表面に形成された一対の上部電極37,37とを有して構成される。上部電極37,37は入力領域33の外周に位置する周囲部34に配置される。
【0038】
下側の透光性基材30はポリカーボネート樹脂(PC樹脂)やポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)、環状ポリオレフィン(COP樹脂)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(アクリル)(PMMA)等の透明基材で形成され、厚みが50μm〜300μm程度で形成される。下側の透光性基材30は上側の透光性基材35より厚くまた剛性が高いことが好適である。例えば下側の透光性基材30は、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)等で形成されることが好適である。
【0039】
また上側の透光性基材35は、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)やポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)、環状ポリオレフィン(COP樹脂)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(アクリル)(PMMA)等の透明基材であり、厚みが50μm〜300μm程度で形成される。
【0040】
透明導電膜31,36は、ITO(Indium Tin Oxide)、SiO2,ZnO等の無機透明導電材料を、スパッタや蒸着等で成膜して形成される。又は、これらの無機透明導電材料の微粉末を固着したものでもよい。あるいは、有機透明導電材料として、カーボンナノチューブやポリチオフィン、ポリピロール等の有機導電性ポリマーをコーティングしたものでもよい。各透明導電膜31,36の厚さは、0.005μm〜2μm程度である。
【0041】
ここで本実施形態では、透光性及び透明性とは可視光線透過率が90%以上の状態を指す。更にヘイズ値が3以下であることが好適である。
【0042】
また、下部電極32及び上部電極37は例えばAg塗膜を印刷形成したものである。下部電極32及び上部電極37には透明導電膜31,36よりも抵抗値の低い導電材料が使用される。
【0043】
なお図2では、各基材30,35の表面(内面)は平坦面であるが、干渉縞等の発生を抑制すべく、液晶ディスプレイ81と対向する部分の前記基材30,35の表面が例えばプリズム形状とされていてもよい。
【0044】
図1,図2に示す入力装置20は抵抗式タッチパネルの構造であり、入力操作可能な入力領域33が設けられる。またこの実施形態では、前記入力領域33の外周に位置する周囲部34は非入力領域である。なお周囲部34に、前記入力領域33とは別の入力領域を設けることも可能である。図2に示すように入力領域33には液晶ディスプレイ81が対向配置されている。
【0045】
図2に示すように、下部基板22と上部基板21との間には空気層44が設けられている。また図示しないが空気層44内には多数のドットスペーサが設けられている。
【0046】
図1,図2に示すように下部基板22と上部基板21の間であって前記周囲部34の全部あるいは一部に電気的絶縁性の接合層23が設けられ、これにより前記下部基板22と上部基板21間が周囲部34で固定される。接合層23は、図1に示すように例えば枠形状である。接合層23は、例えばアクリル樹脂系粘着テープであるが材質等を限定するものでない。接合層23の厚さは、5μm〜200μm程度である。接合層23には下部基板22と上部基板21間を強固に接合できる接着力が求められる。
【0047】
操作者が指やペンで入力領域33を下方向へ押圧すると、上部基板21が下方向へ撓み、透明導電膜31,36が当接する。このとき、図8のP点で透明導電膜31,36同士が接触すると、下側の透明導電膜31をY方向に分割した抵抗値に対応する電圧が上部電極37,37から得られ、上側の透明導電膜36をX方向に分割した抵抗値に対応する電圧が下部電極32,32から得られる。そして得られた各電圧をA/D変換することにより、P点のX−Y座標上の位置を検知できる。
【0048】
図2に示すように下部基板22の周囲部34の下面22aには、カメラ40が設置されている。なおこの実施形態と異なって、下部基板22の下面22aに接合層を介して透光性基材から成る支持部材が接合されており、前記支持部材の下面にカメラ40が設置される構成としてもよい。あるいは、前記支持部材が設けられる形態において、カメラ40や光学センサが設置される領域を除いて支持部材が設けられ、前記カメラ40が図2と同様に、下部基板22の下面22aに設置される構成であってもよい。
【0049】
図2及び図3(模式図)に示すように、カメラ40と高さ方向(Z方向)で対向する接合層23には空間23aが形成されて前記カメラ40に対する光透過部41が設けられている。光透過部41はカメラ40に光を入射できる位置及び大きさで形成され、カメラ40のレンズ部(図示しない)と対向する領域、あるいはそれよりもやや広い領域として形成される。そして本実施形態では、前記光透過部41に透光性媒質42が充填されている。本実施形態では、各基板21,22と透光性媒質42との屈折率の差の絶対値は、各基板21,22と空気層44との屈折率の差の絶対値に比べて小さくなっている。このため、図9の従来例に示すように光透過部を空気層とした場合に比べて本実施形態では光の反射を小さくでき透過率を向上させることが可能になる。このため、カメラ40の感度を向上させることができる。
【0050】
本実施形態では、透光性媒質42には、空気(屈折率はほぼ1.0)に比べて各基板21,22との屈折率に近い屈折率を有する材質が使用される。基板21,22の屈折率は、1.2〜2.4程度、透光性媒質42の屈折率は、1.2〜2.0程度である。
【0051】
透光性媒質42は透明性に優れ(透過率に優れヘイズ値が低い)、上記した屈折率を有する材質であれば、特に材質を限定しないが、本実施形態では、UV硬化型のアクリル系樹脂を好ましく使用できる。なお透光性媒質42は当然のことながら接合層23よりも透明性に優れたものである。
【0052】
また、図2に示す形態では透光性媒質42と接する下部基板22及び上部基板21は透明導電膜31,36であるが、透明導電膜31,36は光透過部41の部分には形成されず、透光性媒質42と透光性基材30,35とが直接接する構成とすることも出来る。
【0053】
本実施形態では、下部基板22あるいは上部基板21の一方の内面に透光性媒質42を塗布した状態で下部基板22と上部基板21とを貼り合わせることが出来る。ただしかかる場合、図4に示すように透過性媒質42内に気泡43が生じたり、また図4の形態のように、光透過部41の外方を接合層23で囲んだ形態でないと透過性媒質42の一部42aが入力装置20の外方へはみ出す可能性がある。特に気泡43が、カメラ40の光透過部41に存在するとそこで乱反射が起こりカメラ40の感度を低下させる原因になる。
【0054】
そこで図5(a)に示すように下部基板22に透光性媒質42を光透過部41へ充填するための上下に貫通する充填孔50を形成し、図5(b)に示すように、透光性媒質42を充填孔50から光透過部41に充填できるようにした。図5の構造ではまず下部基板22と上部基板21とを接合層23を介して貼り合わせた後、下部基板22に形成された充填孔50から透光性媒質42を充填でき、これにより、気泡の発生を抑制でき、また透光性媒質42が入力装置20の外方へはみ出すのを防止できる。
【0055】
また図6に示す実施形態の接合層23は、図1と同様に光透過部41の周囲を囲むように形成されている。また図6では、下部基板22に充填孔50が形成されている。更に図6に示す形態では、光透過部41を挟んで充填孔50と対向する側に空気逃げ孔51が形成されている。このため充填孔50から透光性媒質42を注入しながら光透過部41に存在する空気を空気逃げ孔51から外方へ逃がすことができ、光透過部41に適切に透光性媒質42を充填することが出来る。この実施形態では、図5と同様に気泡の発生を抑制でき、更に光透過部41の周囲を接合層23にて囲んだ形態であるから透光性媒質42が外方へはみ出すことを回避できる。
【0056】
また本実施形態では、接合層23には光透過部41の部分に空間23aを形成するため、接合層23の幅が狭くなり接合層23の接合強度が低下しやすくなるが、本実施形態では、空間23aに透光性媒質42を充填するため接合強度、機械的強度を向上させることができ、また光透過部41に対する耐塵性、耐湿性を向上させることが可能である。
【0057】
本実施形態では図2に示すように、上部基板21の上面21a側には、操作面(入力領域33の表面)を備える透光性の表面基材60と、表面基材60の下面に設けられた加飾部61とを有して構成される表面層26が設けられる。そして表面層26と上部基板21との間が粘着層62を介して接合されている。
【0058】
図1,図2に示すように加飾部61は、入力領域33や、下部基板22と上部基板21間に形成された光透過部41と対向するカメラ領域63や、センサ領域64,65には形成されず空間となっている。そしてこの空間内が粘着層62で埋められている。
【0059】
図7(a)には、カメラ領域63における表面層26の部分拡大縦断面図が示されている。
【0060】
図7(a)に示すように、加飾部61には、カメラ領域63(図2に示す光透過部41と対向する領域)に空間66が形成されている。
【0061】
図7(a)に示すように、加飾部61は複数の加飾層67〜69が積層されて構成されている。各加飾層67〜69はスクリーン印刷等で形成される。各加飾層67〜69は着色されており、このように複数の加飾層67〜69を重ねることで表面基材60を通して見た加飾部61を所定の色に着色できる。
【0062】
本実施形態では図7(a)に示すように、各加飾層67〜69の端部は、表面基材60に近い加飾層ほど、空間66内に延出して形成されている。このため、上部加飾層69の端部69aが最も空間66内に延出しており、中間加飾層68の端部68aは、下部加飾層67の端部67aよりも空間66内に延出している。したがって、加飾部61の端部61aは、図10で示した構造のように各加飾部の端部を揃える形態に比べて緩やかに傾斜した形状となる。
【0063】
図7(b)は、図7(a)の次の工程を示す。図7(b)に示すように、表面層26と上部基板21とを、粘着層62を介して対向させる。粘着層62には加圧により変形可能な透明粘着シートを用いることが出来る。
【0064】
そして図7(c)に示す工程のように表面層26と上部基板21間を粘着層62を介して接合する。このとき、表面層26と上部基板21間を加圧することで、粘着層62が変形する。本実施形態では、図7(a)で説明したように、加飾部61の端部61aが緩やかに傾斜した形状となっていることから端部61aの形状に沿って粘着層62が適切に変形しやすく、加飾部61の端部61aから表面基材60の下面にかけて形成された空間66内を適切に粘着層62で埋めることができ、図10に示す構造に比べて気泡の発生を抑制することが可能になる。これにより光の乱反射が生じるのを抑制でき、カメラ40の感度をより効果的に向上させることが可能になる。
【0065】
図7に示す表面層26に設けられた加飾部61の端部61aの段差構造は、センサ領域64,65や入力領域33における加飾部61の端部構造にも適用できる。なおセンサ領域64,65はカメラ40と同様に下部基板22の下面側に設けられた光学センサ(図示しない)と対向した領域である。また光学センサと対向する下部基板22と上部基板21との間には透光性媒質が充填されて成る光透過部が形成されている。光学センサとしては、周囲の光を感知したり指紋を識別出来るセンサ等であるが特に種類を限定するものではない。また、図7で説明した製造方法は、加飾部に空間を形成し、前記空間内を粘着層で埋める形態であれば、前記空間がどの部分に形成されようとも適用することができるし、入力装置が抵抗式でなく静電容量式タッチパネル等であっても適用できる。
【0066】
本実施形態における入力装置は、携帯電話機、デジタルカメラ、PDA、ゲーム機、カーナビゲーション等に使用される。
【符号の説明】
【0067】
20 入力装置
21 上部基板
22 下部基板
23 接合層
23a、66 空間
26 表面層
30、35 透光性基材
31、36 透明導電膜
32、37 電極
33 入力領域
34 周囲部
40 カメラ
41 光透過部
42 透光性媒質
44 空気層
50 充填孔
51 空気逃げ孔
60 表面基材
61 加飾部
62 粘着層
63 カメラ領域
64、65 センサ領域
67〜69 加飾層
81 液晶ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基材の表面に透明導電膜が形成された下部基板と上部基板とを有し、各透明導電膜が対向するように前記下部基板と前記上部基板とが空気層を介して対向し、前記上部基板の表面が操作面側である入力装置において、
前記下部基板と前記上部基板との間の一部には、各基板との屈折率の差の絶対値が、前記空気層と各基板との屈折率の差の絶対値よりも小さくなる透光性媒質にて埋められた光透過部が設けられていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記下部基板と前記上部基板との間を接合する接合層には前記光透過部の位置に空間が形成され、前記空間内に前記透光性媒質が充填されている請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記接合層は前記光透過部の周囲を囲むように形成されている請求項2記載の入力装置。
【請求項4】
前記下部基板には前記透光性媒質を前記光透過部に充填するための充填孔が形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項5】
前記下部基板には前記充填孔から前記透光性媒質を充填したときに空気を逃がすための空気逃げ孔が形成されている請求項4記載の入力装置。
【請求項6】
前記透光性媒質はアクリル系樹脂である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項7】
前記上部基板の上面側には、前記操作面を備える透光性の表面基材と、前記表面基材の下面に設けられ前記光透過部と対向する位置に空間を備える加飾部とを有して構成される表面層、及び、前記表面層と前記上部基板との間に介在する粘着層と、が設けられ、
前記加飾部は複数の加飾層が積層されており、各加飾層の端部は、前記表面基材に近い前記加飾層ほど、前記空間内に延出して形成されており、
前記粘着層が、各加飾層の前記端部から前記表面基材の下面にかけての前記空間内を埋めている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項8】
光学装置が前記光透過部と対向する下部基板の下面側に配置されている請求項1ないし7のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項9】
前記光学装置はカメラあるいは光学センサである請求項8記載の入力装置。
【請求項10】
対向して配置され、内面に導電膜が形成された下部基板及び上部基板と、前記上部基板の上面側に配置される透光性の表面基材及び前記表面基材の下面に形成される加飾部を有する表面層と、前記表面層と下部基板間に介在する粘着層と、を有する入力装置の製造方法において、
前記加飾部を複数の加飾層を積層して形成し、このとき表面基材との間の所定領域に空間を形成し、且つ前記表面基材に近い加飾層の端部ほど前記空間内に延出するように形成する工程と、
前記表面層と上部基板間を粘着層を介して接合し、このとき、前記各加飾層の前記端部から前記表面基材の下面にかけての前記空間を前記粘着層にて埋める工程と、を有することを特徴とする入力装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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