説明

入口ローラーガイド

【課題】 多種類のビレットサイズ変更に交換作業なしに対応可能である入口ローラーガイドを提供する。
【解決手段】 ガイドボックス1に支点ピン3を回転中心として取り付けてある対のローラーホルダー2、各ローラーホルダーの先端側にローラーピン5を回転中心として配置してある対のガイドローラー4及びガイドローラー4の芯間を調整するための芯間調整機構12を備え、芯間調整機構12は油圧モーター13からの回転駆動力が伝達されるセンターピニオン14と、センターピニオン14に噛み合っている対のアイドルギア15と、両アイドルギアと噛み合っている対のローラーホルダー用のギアホイール16及び対のガイドローラー用のギアホイール17と設け、ガイドボックス1の上部下面と各ローラーホルダー2との間には、互いの熱膨張に伴う接触防止用の隙間を開けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はビレットを案内するための入口ローラーガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
被圧延材であるビレット(billet)をロール圧延機により線材や棒鋼などに圧延加工するに際して、圧延スタンドのハウジングの入口側に設置して、対のガイドローラーを利用して種々のサイズのビレットを保持しながら上記入口に向けて誘導する入口ローラーガイドが開示されている(特開2001−71016号公報、特開2001−71017号公報及び特開2003−53413号公報等)。
例えば特開2001−71016号公報に記載の入口ローラガイド装置では、ガイドボックスに支点軸を中心とする一対のローラホルダを取付け、各ローラホルダの先端部に第一ローラ支持軸を回転中心とする主ガイドローラを、後端部側に支点軸に偏心して設けてある第二ローラ支持軸を回転中心とする副ガイドローラを設け、双方のガイドローラのそれぞれの芯間を芯間調整機構によって同時調整可能とするものであり、芯間調整機構は、センターピニオンを調整軸の上部に設けてある第一上偏心部のギアホイールと支点軸の上部に設けてある第二上偏心部のギアホイールと噛み合っておりかつ上記第一及び第二上偏心部を回転可能にするものである(公開公報第1頁の要約欄参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−71016号公報
【特許文献2】特開2001−71017号公報
【特許文献3】特開2003−53413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビレットのサイジング圧延の工程において、上記入口ローラガイド装置はビレットサイズの変更に対して、芯間調整機構によって変更後のサイズに適応した保持力を設定することができる。
しかしながら、加熱炉を出てすぐのビレットを誘導するガイドにあっては、高温やスケールなどの悪環境にさらされるため、フリクションガイドや通材面間が固定されているローラーガイドが多く使用されており、これらのガイドは多種類のビレットには対応することができず、ビレットサイズの変更毎にガイド替えをしているのが実情である。このガイド交換には作業者に負担がかかり、そして交換に伴う圧延作業の停止時間が長くなり、作業能率の低下を招く課題があった。そこで、可能な限り入口ローラーガイド替えを少なくするために、多種類のサイズ変更すなわち、サイズの大きなビレットから小さいものにも対応可能な大型の入口ローラーガイドを設置していた。この例では、サイズの小さいビレットを案内する場合、最初の圧延スタンドにおいて噛み込み不良が発生していた。
この発明の目的は、多種類のビレットサイズ変更に交換作業なしに対応可能である入口ローラーガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る入口ローラーガイドの第1の特徴は、加熱炉を出てすぐのビレットを通材させる第1圧延スタンドに配置してある入口ローラーガイドであり、
ガイドボックスと、このガイドボックスに支点ピンを回転中心として取り付けてあって先端部が上記ガイドボックスの出側から突出している対のローラーホルダーと、各ローラーホルダーの先端側にローラーピンを回転中心として配置してある対のガイドローラーと、上記ガイドローラーの芯間を調整するための芯間調整機構とを備えていることにある。上記各支点ピン及び各ローラーピンは、上記ガイドボックス及び各ローラーホルダーにそれぞれ開けてあるピン孔に挿入されている。上記芯間調整機構は、駆動源と、この駆動源からの回転駆動力が伝達されるセンターピニオンと、このセンターピニオンを挟んでビレットの案内方向と交差する方向に沿って対向的に配置してあってかつ上記センターピニオンに噛み合っている対の伝達歯車と、両伝達歯車と噛み合いかつ上記各支点ピンの上部にそれぞれ偏心状態に設けてある対のローラーホルダー用のギアホイールと、上記両伝達歯車と噛み合いかつ上記各ローラーピンの上部にそれぞれ偏心状態に設けてある対のガイドローラー用のギアホイールと設けてある。上記ガイドボックスの上部下面と上記各ローラーホルダーとの間には、互いの熱膨張に伴う接触防止用の隙間を開けてある。上記対のローラーホルダー用のギアホイールは、それぞれ対のガイドローラー用のギアホイールと上記ビレットの案内方向に沿って対向配置されている。
この発明に係る入口ローラーガイドの第2の特徴は、第1の特徴を備えていると共に、各ローラーホルダーの先端部にノーズを装着してあり、上記両ローラーホルダー間には後端側が上記ガイドボックスの入側より突出しているエントリーガイドを配置してあり、伝達歯車がアイドルギアであり、隙間は上記ガイドボックスの上板部の下面とローラーホルダーとの間に開けられていることにある。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、駆動源からの回転駆動力を受ける伝達歯車を介在させてガイドローラーの芯間調整を可能にする芯間調整機構を設けているので、多種類サイズのビレットの変更に対して入口ローラーガイドの本体を交換することなく対応することができ、入口ローラーガイドの本体の交換の負担を抑制することができる。
また、この発明によれば、ガイドボックス上部の下面とローラーホルダーとの間に隙間を開けることにより、高温による熱影響を回避できるから、高温時でもビレットを確実に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明に係る入口ローラーガイドを示す平面図であって、ギアカバーの一部を切欠している図である。
【図2】この発明に係る入口ローラーガイドを示す正面図であって、ギアカバーの一部を切欠している図である。
【図3】この発明に係る入口ローラーガイドを示す側面図であって、ギアカバーの一部を切欠している図である。
【図4】この発明に係る入口ローラーガイドにおける支点ピン、ローラーピン及びガイドローラーの取り付け状態を示す断面図であって、ギアカバーの一部を切欠している図である。
【図5】ビレットとガイドローラーの関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明に係る入口ローラーガイドについて図面を参照して説明する。
図1〜図3に示す入口ローラーガイドにおいて、底部にガイドベースを有するガイドボックス1は、上板部1a、下板部1b及びこれらの両板部間を結合している支柱1c,1dによって組み立てられている。ガイドボックス1内には、対のローラーホルダー2が配置されており、これらのローラーホルダーがそれぞれ支点ピン3を回転中心として取り付けられている。各ローラーホルダー2の先端部は、ガイドボックス1の出側(図1右側)に向けて突出されている。各ローラーホルダー2の先端部は圧延ロール6の入口側に向けて突出されている。各ローラーホルダー2の先端部の内側の対向面にはノーズ7がボルト8によって固定されている(図1)。また、各ローラーホルダー2の先端側には、対のガイドローラー4がローラーピン5を回転中心として設けられている。対のガイドローラー4は、軸心部に設けてあってベアリングを内蔵している軸受け部(図示せず。)を介してローラーピン5に取り付けられている。また、対のローラーホルダー2間にはエントリーガイド9を配置してある。エントリーガイド9はその後端側(図2左端側)がガイドボックス1の入側より突出されている。エントリーガイド9はボルト10によりローラーホルダー2に接続されている。
図2に示す入口ローラーガイドは、図示していないが加熱炉(又は溶融炉)を出てすぐのビレットを通材させる第1圧延スタンドに配置してあるために、ガイドボックス1と各ローラーホルダー2との間には、互いの熱膨張に伴う接触防止用の隙間11を開けてある。この隙間は、ガイドボックス1の上部下面である上板部1aの下面と各ローラーホルダー2との間に形成されている。隙間11によって、ガイドボックス1及び各ローラーホルダー2に対する高温時における熱の影響を極力抑制することができるから、各ローラーホルダーの動作が円滑に行える。
【0009】
図4において、各支点ピン3は、ガイドボックス1の上下各板部1a,1bに開けてあるピン孔1a1,1b1及びローラーホルダー2に開けてあるピン孔2aを介して上記上下各板部及び上記ローラーホルダーに挿入されている。
各ローラーピン5は、ガイドボックス1の上下各板部1a,1bに開けてあるピン孔1a2,1b2及びローラーホルダー2に開けてあるピン孔2bを介して上記上下各板部及び上記ローラーホルダーに挿入されている。
【0010】
図1〜図4において、入口ローラーガイドは、対のガイドローラー4の芯間を調整するための芯間調整機構12を設けてあるので、以下この芯間調整機構について説明する。
図1に示す芯間調整機構12は、駆動源である油圧モーター13、センターピニオン14、対のアイドルギア15、対のローラーホルダー用のギアホイール16及び対のガイドローラー用のギアホイール17を備えている。
油圧モーター13には、図3に示すように油圧ホース接続口13a,13bを設けてあり、油圧モーターは油圧ホースから供給される作動油量の調整によって回転数が調整される。
センターピニオン14には、図1に示すようにガイドボックス1上に設置してあって、油圧モーター13からの回転駆動力が伝達される。
対の伝達歯車であるアイドルギア15は、図1に示すように、センターピニオン14を挟んでビレットの案内方向と交差する方向(図上下)に沿って対向的に配置されている。両アイドルギア15は、それぞれセンターピニオン14と噛み合っている。
図1及び図4において、対のローラーホルダー用のギアホイール16は各支点ピン3の上部にそれぞれ装着されている。対のギアホイール16と各支点ピン3とは互いに偏心した位置関係にある。ギアホイール16の歯部はアイドルギア15とそれぞれ噛み合っている。ギアホイール16の軸部はガイドボックス1のピン孔1a1内に回転可能に嵌め込まれている。各支点ピン3の下部は、ガイドボックス1のピン孔1b1内に嵌め込まれているエキセンピース18内に偏心状態に差し込まれている。
図1及び図4において、対のガイドローラー用のギアホイール17は各ローラーピン5の上部にそれぞれ装着されている。ギアホイール17と各ローラーピン5とは互いに偏心した位置関係にある。ギアホイール17の歯部はアイドルギア15とそれぞれ噛み合っている。ギアホイール17の軸部はガイドボックス1のピン孔1a2内に回転可能に嵌め込まれている。各ローラーピン5の下部は、ガイドボックス1のピン孔1b2内に嵌め込まれているエキセンピース19内に偏心状態に差し込まれている。各ローラーピン5の下端部は、ナット20によってガイドボックス1に保持されている。
図1において、図上側に位置しているローラーホルダー用のギアホイール16とガイドローラー用のギアホイール17とはビレットの案内方向(図左右方向)に沿って対向的に配置され、下側に位置しているローラーホルダー用のギアホイール16とガイドローラー用のギアホイール17についても上記案内方向に沿って対向的に配置されている。
図1及び図4において、21はギアカバーである。
【0011】
芯間調整機構12において、油圧モーター13が作動すると、センターピニオン14が回転駆動するから、センターピニオンに噛み合っている対のアイドルギア15も回転し、両アイドルギアの回転に伴って図1左側に位置している対のローラーホルダー用のギアホイール16が回転するから、これらのギアホイールに対して偏心位置している各支点ピン3が偏心回転し、この回転により、対のローラーホルダー2が各支点ピンを中心として偏心回転するから、対向するローラーホルダー間並びにエントリーガイド9及びノーズが同時に広くなったり狭くなったりする。
対のローラーホルダー用のギアホイール16の回転と同時に、図1右側に位置している対のガイドローラー用のギアホイール17が回転するから、これらのギアホイールに対して偏心位置している各ローラーピン5が偏心回転し、このような偏心回転により対のガイドローラー4の芯間が同時に広くなったり狭くなったりする。
芯間調整機構12の作動により、センターピニオン14の回転数及び回転方向に応じて対のローラーホルダー用のギアホイール16の回転量及び回転方向並びに対のガイドローラー用のギアホイール17の回転量及び回転方向が調整され、このことによってローラーホルダー2間及びノーズ7間が調整され、また、対のガイドローラー4の芯間D(図5)及びエントリーガイド9の面間が調整される。
【0012】
次に使用法について説明する。
ビレットS(図5)が案内される開始前には、予め、ビレットのサイズRに対応するようにガイドローラー4の芯間Dを芯間調整機構12によって調整しておく。
調整時には、油圧モーター13の回転数を供給する作動油の量によって調整し、この調整を通じてセンターピニオン14の回転数が決定され、同時にセンターピニオンに噛み合っている両アイドルギア15を介して、両アイドルギアのそれぞれに噛み合っている対のローラーホルダー用のギアホイール16及びガイドローラー用のギアホイール17の回転数が調整され、最終的に対向するローラーホルダー間及び対のガイドローラー4の芯間Dが調整される。
ビレットSの案内開始後、ビレットのサイズRの変更に伴って油圧モーター13の回転数を自動的に管理し、変更したサイズのビレットに対応して対のガイドローラー4の芯間Dを自動調整し、ビレットを適確に圧延ロール6の入口側に誘導する(図2)。
【0013】
図示する入口ローラーガイドによれば、アイドルギア15を備えている芯間調整機構12を設けることによって、その本体を大きくしてもビレットのサイズ変更に対して最適なガイドローラー4の芯間Dに調整することができるから、多サイズのビレットに対してその本体を交換することなく対応することができる。
ビレットのサイズの最大値に対応した大きさのアイドルギア15を選択することにより、ビレットの大きなサイズから小さいサイズまでの多種類の変更に対応可能となる。
上記入口ローラーガイドによれば、加熱炉を出たビレットを通材させる場合において、ガイドボックス1の上板部1aの下面とローラーホルダー2との間に隙間11を開けることにより、高温による熱影響を回避できるから、高温時でもビレットを確実に誘導することができる。
【0014】
駆動源は上述した油圧モーター13に限定されない。
【符号の説明】
【0015】
D 芯間
R ビレットのサイズ
S ビレット
1 ガイドボックス
1a 上板部
2 ローラーホルダー
3 支点ピン
4 ガイドローラー
5 ローラーピン
6 圧延ロール
7 ノーズ
9 エントリーガイド
11 隙間
12 芯間調整機構
13 油圧モーター(駆動源)
14 センターピニオン
15 アイドルギア(伝達歯車)
16 ローラーホルダー用のギアホイール
17 ガイドローラー用のギアホイール
18,19 エキセンピース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉を出てすぐのビレットを通材させる第1圧延スタンドに配置してある入口ローラーガイドであり、
ガイドボックスと、このガイドボックスに支点ピンを回転中心として取り付けてあって先端部が上記ガイドボックスの出側から突出している対のローラーホルダーと、各ローラーホルダーの先端側にローラーピンを回転中心として配置してある対のガイドローラーと、上記ガイドローラーの芯間を調整するための芯間調整機構とを備えており、
上記各支点ピン及び各ローラーピンは、上記ガイドボックス及び各ローラーホルダーにそれぞれ開けてあるピン孔に挿入されており、
上記芯間調整機構は、駆動源と、この駆動源からの回転駆動力が伝達されるセンターピニオンと、このセンターピニオンを挟んでビレットの案内方向と交差する方向に沿って対向的に配置してあってかつ上記センターピニオンに噛み合っている対の伝達歯車と、両伝達歯車と噛み合いかつ上記各支点ピンの上部にそれぞれ偏心状態に設けてある対のローラーホルダー用のギアホイールと、上記両伝達歯車と噛み合いかつ上記各ローラーピンの上部にそれぞれ偏心状態に設けてある対のガイドローラー用のギアホイールと設けてあり、
上記ガイドボックスの上部下面と上記各ローラーホルダーとの間には、互いの熱膨張に伴う接触防止用の隙間を開けてあり、
上記対のローラーホルダー用のギアホイールは、それぞれ対のガイドローラー用のギアホイールと上記ビレットの案内方向に沿って対向配置されている
ことを特徴とする入口ローラーガイド。
【請求項2】
各ローラーホルダーの先端部にノーズを装着してあり、上記両ローラーホルダー間には後端側が上記ガイドボックスの入側より突出しているエントリーガイドを配置してあり、伝達歯車はアイドルギアであり、隙間は上記ガイドボックスの上板部の下面とローラーホルダーとの間に開けられていることを特徴とする請求項1記載の入口ローラーガイド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−111593(P2013−111593A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258442(P2011−258442)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000150280)株式会社中山製鋼所 (26)
【出願人】(000182476)寿産業株式会社 (47)