説明

入場用自動改札機、出場用自動改札機、および自動改札システム

【課題】災害や事故等で中止していた列車の運転が再開されたときにおける、駅構内の混雑を抑えるとともに、利用者が感じる不公平感が抑えられる入場用自動改札機を提供する。
【解決手段】出場用自動改札機1Bは、災害や事故等で列車の運転が中止されているとき、本体の動作モードを運転中止モードに設定し、自駅(本体の設置駅)で入場した利用者に対して、その入場を無効にするキャンセル処理を行う。また、入場用自動改札機1Aは、災害や事故等で中止されていた列車の運転が再開されたとき、本体の動作モードを運転再開時モードに設定し、キャンセル処理が行われた乗車券を所持している利用者を駅構内に入場させ、反対にキャンセル処理が行われていない乗車券を所持している利用者を駅構内に入場させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駅構内に入場する利用者に対して改札処理を行う入場用自動改札機、駅構内から出場する利用者に対して改札処理を行う出場用自動改札機、および、これらの自動改札機を適用した自動改札システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駅の改札口では、利用者に対する改札処理を自動改札機で行っている。周知のように、自動改札機には、駅構内に入場する利用者に対して改札処理を行う入場用自動改札機と、駅構内から出場する利用者に対して改札処理を行う出場用自動改札機とがある。自動改札機は、利用者の乗車券(キップ、定期券、プリペイド券等)を受け付け、この乗車券に記録されている乗車券情報を読み取り、読み取った乗車券情報に基づいて、改札通路における利用者の通行を許可するかどうかを判定する。自動改札機は、改札通路の通行を許可しないと判定すると、改札通路の出口側に設けた扉を閉し、改札通路における利用者の通行を制限する。反対に、改札通路の通行を許可すると判定すると、改札通路の出口側に設けた扉を開し、改札通路における利用者の通行を許可する。
【0003】
また、災害や事故等で列車の運転が中止された場合、そのときに駅構内に入っている利用者を駅構内から出場させないで、列車の運転が再開されるまで駅構内で待たせることは、利用者の肉体的な疲労や精神的な疲労が大きく、好ましくない。このため、列車の運転が中止されている間は、利用者の希望に応じて、駅構内からの出場を認め、列車の運転が再開された後に、駅構内への再入場を許可している。
【0004】
また、特許文献1では、一度入場した利用者が、忘れ物等に気がついて、一時的に駅構内から出場するのを許可する出場用自動改札機が提案されている。この出場用自動改札機は、前回の乗車券の利用が自駅での入場であり、且つ前回の入場からの経過時間が予め定めた時間以内であるときに、利用者が一時的に駅構内から出場するのを許可する。また、自動改札機は、利用者が一時的に駅構内から出場するのを許可したとき、この利用者が所持している乗車券に再入場を許可する情報を記録し、この乗車券を利用者に返却する。
【特許文献1】特開2001−43405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、中止されていた列車の運転が再開されたときには、利用者の安全確保のために、駅構内に入場させる利用者の人数を制限し、駅構内(特にホーム)の混雑を抑える必要がある。従来は、駅係員が、改札口で利用者を誘導し、駅構内に入場させる利用者の人数を判断しており、駅係員の作業負担が大きかった。
【0006】
また、この入場制限では、列車の運転が再開されるまでの利用者の待ち時間については全く考慮していない。このため、列車の運転が中止されているときに、駅構内から出場し、列車の運転が再開されるのを待っていた利用者(待ち時間が比較的長い利用者)と、列車の運転が再開される直前に駅に来た利用者(待ち時間が短い利用者)と、を区別した入場制限が行えなかった。その結果、待ち時間が比較的長い利用者よりも、待ち時間が短い利用者のほうが、先に駅構内に入場することがあり、待ち時間が比較的長い利用者に不公平感を感じさせ、利用者に対するサービスがよくないという問題があった。
【0007】
この発明の目的は、災害や事故等で中止していた列車の運転が再開されたときにおける、駅構内の混雑が抑えられるとともに、利用者が感じる不公平感が抑えられる入場用自動改札機、出場用自動改札機、および自動改札システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の入場用自動改札機は、上記課題を解決し、その目的を達するために以下の構成を備えている。
【0009】
この入場用自動改札機は、駅構内に入場する利用者に対して改札処理を行う。乗車券情報読取手段が、受け付けた乗車券に記録されている乗車券情報を読み取り、入場可否判定手段が、この乗車券情報に基づいて、駅構内への利用者の入場を許可するかどうかを判定する。
【0010】
また、動作モード設定手段が本体の動作モードを、中止されていた列車の運転が再開されたときに行う運転再開時モードに設定しているとき、キャンセル情報判定手段が乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に、今回の列車の運転が中止されていた期間に、駅構内から出場したことを示すキャンセル情報が記録されているかどうかを判定する。すなわち、キャンセル情報判定手段は、列車の運転が中止されているので、運転が再開されるまでの間、一旦駅構内から出場した利用者であるかどうかを判定している。また、このキャンセル情報は、後述するように、出場用自動改札機が乗車券に記録する。
【0011】
さらに、入場可否判定手段は、動作モード設定手段が本体の動作モードを運転再開時モードに設定しているとき、キャンセル情報判定手段によって乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に該当するキャンセル情報が記録されていないと判定された場合、駅構内への利用者の入場を許可しないと判定する。これにより、中止されていた列車の運転が再開されたときに、駅構内に入場させる利用者の人数を制限することができるとともに、運転が中止されているときに駅構内から一旦出場した利用者を優先的に駅構内に入場させることができる。したがって、災害や事故等で中止していた列車の運転が再開されたときにおける、駅構内の混雑が抑えられるとともに、利用者が感じる不公平感が抑えられる。
【0012】
また、前記記憶手段が記憶する前記入場制限情報を、上位装置から通知された入場制限情報に更新する構成としてもよい。この場合、上位装置は、例えば、駅構内を撮像した撮像画像を処理し、駅構内の混雑度を推定し、この推定した混雑度に基づいて入場制限情報を生成する構成とすればよい。このようにすれば、入場制限情報が手間をかけずに、適正に更新できる。
【0013】
また、入場制限情報を記憶する記憶手段を備え、
入場可否判定手段を、本体の動作モードが運転再開時モードに設定されているとき、キャンセル情報判定手段によって乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に該当するキャンセル情報が記録されていると判定された場合、記憶手段が記憶している入場制限情報を用いて駅構内への利用者の入場を許可するかどうかを判定する構成としてもよい。例えば、入場制限情報に、入場許可時刻を含ませておき、乗車券に記録されているキャンセル情報が記録された時刻、または、このキャンセル情報により無効にされた前回の入場情報が記録された時刻が、入場許可時刻以前であれば入場を許可し、入場許可時刻以前でなければ入場を許可しない構成とすればよい。このようにすれば、運転が中止されているときに駅構内から一旦出場した利用者についても、待ち時間の長さを考慮して駅構内に入場させることができる。
【0014】
また、この発明の出場用自動改札機は、駅構内から出場する利用者に対して改札処理を行う。出場用自動改札機は、乗車券情報読取手段が、受け付けた乗車券に記録されている乗車券情報を読み取り、出場可否判定手段が、この乗車券情報に基づいて、駅構内からの利用者の出場を許可するかどうかを判定する。
【0015】
また、動作モード設定手段が本体の動作モードを列車の運転が中止されているときに行う運転中止モードに設定しているとき、キャンセル情報記録手段が、乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に対して、前回の駅構内への入場を無効にするキャンセル情報を記録する。上述した入場用自動改札機は、動作モード設定手段が本体の動作モードを運転再開時モードに設定しているとき、このキャンセル情報を用いて利用者の入場可否を判定する。
【0016】
また、出場用自動改札機は、キャンセル情報記録手段を、前回の入場駅が自駅であれば、キャンセル情報を今回受け付けた乗車券に記録し、反対に、前回の入場駅が自駅でなければ、キャンセル情報を今回受け付けた乗車券に記録しない構成としてもよい。このようにすれば、列車を利用して移動してきた利用者の乗車券に、キャンセル情報を記録することがない。
【0017】
さらに、この発明の自動改札システムは、上述の入場用自動改札機や出場用自動改札機に対して動作モードを指示する上位装置を設けた構成である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、災害や事故等で中止していた列車の運転が再開されたときにおける、駅構内の混雑が抑えられるとともに、利用者が感じる不公平感が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態である自動改札システムについて説明する。
【0020】
図1は、この自動改札システムの構成を示す概略図である。この自動改札システムは、駅を利用する利用者に対して改札処理を行う。この自動改札システムは、複数の自動改札機1と、上位装置2と、を備えている。各自動改札機1は、駅の改札口に設置される。自動改札機1には、駅構内に入場する利用者に対して改札処理(入場処理)を行う入場用自動改札機1Aと、駅構内から出場する利用者に対して改札処理(出場処理)を行う出場用自動改札機1Bと、がある。以下の説明では、入場用自動改札機1Aと、出場用自動改札機1Bと、を区別しないときは、総称して自動改札機1と言う。
【0021】
上位装置2は、所謂駅サーバであり、自動改札機1だけでなく、図示していない券売機、精算機、係員端末等の他の種類の駅務機器も管理する。また、上位装置2は、公衆回線や専用回線を介して、鉄道会社のセンタに接続されている。
【0022】
図2は、自動改札機の主要部の構成を示す図である。自動改札機1は、制御部10と、乗車券受付部11と、利用者検知部12と、表示部13と、扉開閉部14と、通信部15と、を備えている。制御部10は、自動改札機1本体各部の動作を制御し、利用者に対して改札処理を行う。入場用自動改札機1Aで行われる改札処理は入場処理であり、出場用自動改札機1Bで行われる改札処理は出場処理である。
【0023】
乗車券受付部11は、改札通路を通行する利用者が所持している乗車券を受け付け、その乗車券に記録されている乗車券情報を読み取る。乗車券には、乗車券情報を磁気データで記録した磁気券や、内蔵メモリに電子データで記録した非接触IC券等がある。乗車券受付部11は、処理対象の乗車券に応じて構成されている。具体的には、磁気券を処理する自動改札機1であれば、磁気券に対して、記録されている乗車券情報の読み取りや、書き込みを行う構成を備えている。また、非接触IC券を処理する自動改札機1であれば、この非接触IC券との間で無線通信を行う構成を備えている。非接触IC券に対する乗車券情報の読み取りや、書き込みは、この非接触IC券との無線通信によって行われる。
【0024】
制御部10は、乗車券受付部11が乗車券から読み取った乗車券情報に基づいて、改札通路における利用者の通行を許可するかどうかを判定する通行可否判定機能を有している。また、乗車券受付部11は、改札通路の通行を許可した利用者の乗車券に、今回の改札処理にかかる情報(入場情報や出場情報等)を書き込む。ただし、受け付けた乗車券を回収するときには、この情報の書き込みは行わない。
【0025】
利用者検知部12は、改札通路に沿って並べた複数のセンサを有し、各センサの検知結果に基づいて、改札通路を通行している利用者毎に、その位置を検知する。このセンサは、例えば、改札通路を挟んで発光部と受光部とを対向させて配置した透過型の光センサや、発光部と受光部とを一体的に構成し、発光部から照射した光の反射光を受光部で受光する反射型の光センサである。
【0026】
表示部13は、改札通路を通行している利用者に対するメッセージを表示器(不図示)に表示する。扉開閉部14は、改札通路の出口側に設けた扉を開閉する。自動改札機1は、改札通路における利用者の通行を許可する場合に扉を扉開閉部14に開させ、改札通路における利用者の通行を許可しない場合に扉を扉開閉部14に閉させる。通信部15は、上位装置2との間におけるデータ通信を制御する。
【0027】
図3は、上位装置2の主要部の構成を示す図である。上位装置2は、制御部20と、第1の通信部21と、第2の通信部22と、を備えている。制御部20は、上位装置2本体各部の動作を制御する。第1の通信部21は、上述した自動改札機1や、券売機、精算機等の駅務機器との間におけるデータ通信を制御する。第2の通信部22は、公衆回線や専用回線等を介して、センタとの間におけるデータ通信を制御する。
【0028】
次に、この自動改札システムの動作について説明する。この自動改札システムは、中止されていた列車の運転が再開されたときに、利用者の安全確保のために駅構内に入場させる利用者の人数を制限するとともに、列車の運転が再開されるまでの待ち時間を考慮し、待ち時間の長い利用者を優先的に駅構内に入場させるシステムである。出場用自動改札機1Bは、災害や事故等で列車の運転が中止されているとき、本体の動作モードを運転中止モードに設定し、自駅(本体の設置駅)で入場した利用者に対して、その入場を無効にするキャンセル処理を行う。また、入場用自動改札機1Aは、災害や事故等で中止されていた列車の運転が再開されたとき、本体の動作モードを運転再開時モードに設定し、キャンセル処理が行われた乗車券を所持している利用者を駅構内に入場させ、反対にキャンセル処理が行われていない乗車券を所持している利用者を駅構内に入場させない。
【0029】
上位装置2が、センタから通知される列車の運転状況等に基づいて、動作モードを各自動改札機1に指示する。この指示には、入場用自動改札機1Aに対する指示と、出場用自動改札機1Bに対する指示がある。また、自動改札機1は、上位装置からの指示にしたがって、動作モードを設定する。
【0030】
図4は、出場用自動改札機の動作を示すフローチャートである。上位装置2は、災害や事故等で列車の運転が中止されたことがセンタ装置等から通知されると、接続されている出場用自動改札機1Bに対して、動作モードを運転中止モードに設定することを指示する。また、上位装置2は、災害や事故等で中止されていた列車の運転が再開されたことがセンタ装置等から通知されると、接続されている出場用自動改札機1Bに対して、動作モードを通常モードに設定することを指示する。すなわち、上位装置2は、列車の運転が中止されていないとき、接続されている出場用自動改札機1Bに通常モードを指示し、反対に、列車の運転が中止されているとき、接続されている出場用自動改札機1Bに運転中止モードを指示する。
【0031】
出場用自動改札機1Bは、上位装置2から動作モードを通常モードに設定することが指示されると、本体の動作モードを通常モードに設定する(S1、S2)。また、出場用自動改札機1Bは、上位装置2から動作モードを運転中止モードに設定することが指示されると、本体の動作モードを運転中止モードに設定する(S3、S4)。
【0032】
また、出場用自動改札機1Bは、乗車券受付部11で乗車券を受け付けると(S5)、この乗車券に記録されている乗車券情報を読み取る(S6)。出場用自動改札機1Bは、この時点で設定されている動作モードが通常モードであるか、運転中止モードであるかを判断する(S7)。出場用自動改札機1Bは、本体の動作モードが通常モードであれば、S6で読み取った乗車券情報に基づいて、改札通路における利用者の通行(駅構内からの出場)を許可するかどうかを判定する(S8)。S8では、今回受け付けた乗車券の有効期間や有効区間等の乗車券情報に基づいて、改札通路における利用者の通行を許可するどうかを判定する。また、前回の入場駅が自駅であっても、自駅出場を許可している場合には、S8で改札通路における利用者の通行を許可する。
【0033】
出場用自動改札機1Bは、S8で改札通路における利用者の通行を許可すると判定すると、扉開閉部14が改札通路の出口側に設けた扉を開する(S9)。また、出場用自動改札機1Bは、このとき、今回の改札処理にかかる出場情報を、今回受け付けた乗車券に記録する記録処理や、今回受け付けた乗車券を回収する回収処理等を必要に応じて行う。出場情報には、出場処理を行った日時や、出場駅等を示す情報が含まれている。一方、出場用自動改札機1Bは、S8で改札通路における利用者の通行を許可しないと判定すると、扉開閉部14が改札通路の出口側に設けた扉を閉する(S10)。
【0034】
出場用自動改札機1Bは、S7で、本体の動作モードが運転中止モードに設定されていれば、前回の入場駅が自駅であるかどうか(自駅入場であるかどうか)を判定する(S11)。後述するように、入場用自動改札機1Aは、駅構内への入場を許可した利用者が所持している乗車券に、この入場処理を行った日時や入場駅を示す入場情報を記録している。出場用自動改札機1Bは、今回受け付けた乗車券に記録されている前回の入場情報によって、S11にかかる判定を行う。出場用自動改札機1Bは、S11で自駅入場でないと判定すると、上述したS8以降の処理を行う。
【0035】
出場用自動改札機1Bは、S11で自駅入場であると判定すると、前回の入場を無効にするキャンセル処理を行う(S12)。このキャンセル処理では、乗車券に記録されている前回の入場情報を無効にするキャンセル情報を、この乗車券に記録する処理であり乗車券に記録されている前回の入場情報を削除する処理ではない。また、このキャンセル情報には、キャンセル処理を行った日時を示す情報が含まれている。出場用自動改札機1Bは、S12にかかるキャンセル処理を行うと、S9で扉開閉部14が改札通路の出口側に設けた扉を開し、この利用者が駅構内から出場するのを許可する。
【0036】
このように、この出場用自動改札機1は、本体の動作モードを通常モードに設定しているときには、乗車券受付部11で受け付けた乗車券に記録されている乗車券情報に基づいて、改札通路における利用者の通行を許可するかどうかを判定する。また、本体の動作モードを運転中止モードに設定しているときには、自駅入場であれば、前回の入場を無効にするキャンセル処理を行って、利用者が出場するのを許可する。したがって、この出場用自動改札機1Bでは、駅構内に入場した後に、災害や事故等で列車の運転が中止されていることに気づいた利用者に対して、駅構内からの出場を認め、列車の運転が再開された後に、入場用自動改札機1Aで駅構内への再入場を許可することができる。
【0037】
次に、入場用自動改札機1Aの動作について説明する。図5は、入場用自動改札機の動作を示すフローチャートである。上位装置2は、災害や事故等で中止されていた列車の運転が再開されたことがセンタ装置等から通知されると、接続されている入場用自動改札機1Aに対して、動作モードを運転再開時モードに設定することを指示する。また、上位装置2は、災害や事故等で中止されていた列車の運転が再開された後、駅構内等における混雑が解消され、駅構内への入場制限を行う必要がないと判断すると、接続されている入場用自動改札機1Aに対して、動作モードを通常モードに設定することを指示する。例えば、上位装置2は、駅係員等が駅構内への入場制限解除にかかる入力操作を行うと、駅構内への入場制限を行う必要がないと判断する。
【0038】
入場用自動改札機1Aは、上位装置2から動作モードを通常モードに設定することが指示されると、本体の動作モードを通常モードに設定する(S21、S22)。また、入場用自動改札機1Aは、上位装置2から動作モードを運転再開時モードに設定することが指示されると、本体の動作モードを運転再開時モードに設定する(S23、S24)。
【0039】
また、入場用自動改札機1Aは、乗車券受付部11で乗車券を受け付けると(S25)、この乗車券に記録されている乗車券情報を読み取る(S26)。入場用自動改札機1Aは、この時点で設定されている動作モードが通常モードであるか、運転再開時モードであるかを判断する(S27)。入場用自動改札機1Aは、本体の動作モードが通常モードであれば、S26で読み取った乗車券情報に基づいて、改札通路における利用者の通行(駅構への入場)を許可するかどうかを判定する(S28)。S28では、今回受け付けた乗車券の有効期間や有効区間等の乗車券情報に基づいて、改札通路における利用者の通行を許可するどうかを判定する。
【0040】
入場用自動改札機1Aは、S28で改札通路における利用者の通行を許可すると判定すると、扉開閉部14が改札通路の出口側に設けた扉を開する(S29)。また、入場用自動改札機1Aは、このとき、今回の改札処理にかかる入場情報を、今回受け付けた乗車券に記録する記録処理を行う。入場情報には、入場処理を行った日時や、入場駅等を示す情報が含まれている。一方、入場用自動改札機1Aは、S28で改札通路における利用者の通行を許可しないと判定すると、扉開閉部14が改札通路の出口側に設けた扉を閉する(S30)。
【0041】
入場用自動改札機1Aは、S27で、本体の動作モードが運転再開時モードに設定されていれば、今回受け付けた乗車券に、前回の入場情報を無効にするキャンセル情報が記録されているかどうかを判定する(S31)。S31では、今回の列車の運転が中止されていた間に、自駅出場した利用者であるかどうかを判定している。上述したように、出場用自動改札機1Bが、列車の運転が中止されていた間に、自駅出場した利用者の乗車券にキャンセル情報を記録している。
【0042】
入場用自動改札機1Aは、S31で今回受け付けた乗車券にキャンセル情報が記録されていないと判定すると、表示部13が駅構内への入場制限を行っている旨のメッセージを表示器に表示する(S32)。例えば、「申し訳ありませんが、現在入場制限を行っています。駅構内に入場できません。」というメッセージを表示器に表示する。また、入場用自動改札機1Aは、このメッセージを音声で出力するように構成してもよい。入場用自動改札機1Aは、S32で入場制限を行っている旨のメッセージを表示すると、S30で扉開閉部14が改札通路の出口側に設けた扉を閉する。これにより、入場用自動改札機1Aは、キャンセル情報が記録されていない乗車券を所持している利用者が駅構内に入場するのを制限する。また、このときには、S28にかかる判定を行わないので、入場用自動改札機1Aの処理負荷が抑えられる。
【0043】
入場用自動改札機1Aは、S31で今回受け付けた乗車券にキャンセル情報が記録されていると判定すると、S28以降の処理を実行する。
【0044】
このように、この入場用自動改札機1は、本体の動作モードを通常モードに設定しているときには、乗車券受付部11で受け付けた乗車券に記録されている乗車券情報に基づいて、改札通路における利用者の通行を許可するかどうかを判定する。また、本体の動作モードを運転再開時モードに設定しているときには、前回の入場情報を無効にするキャンセル情報が記録されていない乗車券では、駅構内への入場を許可しない。したがって、中止されていた列車の運転が再開されたときに、駅構内に入場させる利用者の人数を制限することができるとともに、運転が中止されているときに駅構内から一旦出場した利用者を優先的に駅構内に入場させることができる。これにより、災害や事故等で中止していた列車の運転が再開されたときにおける、駅構内の混雑が抑えられるとともに、利用者が感じる不公平感が抑えられる。
【0045】
また、上記実施形態では、入場用自動改札機1Aは、本体の動作モードを運転再開時モードに設定しているとき、キャンセル情報が記録されているかどうかによって、駅構内への入場制限をかける構成としたが、このキャンセル情報が記録された時刻(すなわち、キャンセル処理が行われた時刻)も用いて、入場制限をかける構成としてもよい。
【0046】
この場合、上位装置2は、運転再開時モードへの設定を指示するとき、複数段階の制限レベルと、各レベルに対応する入場許可時刻と、を対応付けた入場制限情報を、入場用自動改札機1Aに通知する。入場用自動改札機1Aは、上位装置2から通知された入場制限情報を制御部10に設けられているメモリ(不図示)に記憶する。上位装置2が、入場用自動改札機1Aに通知する入場制限情報は、例えば、列車の運転が15:00−19:00まで中止されていた場合、
制限レベル1−入場許可時刻 16:00
制限レベル2−入場許可時刻 17:00
制限レベル3−入場許可時刻 18:00
制限レベル4−入場許可時刻 19:00
という情報である。
【0047】
また、上位装置2は、入場用自動改札機1Aに対して、制限レベルを通知する。例えば、上位装置2は、駅係員等が制限レベルを設定する入力操作を行うと、その制限レベルを入場用自動改札機1Aに通知する。
【0048】
なお、入場用自動改札機1Aは、上位装置2から通知された最新の制限レベルを制御部10のメモリに記憶する。
【0049】
図6は、この場合の入場用自動改札機の動作を示すフローチャートである。この入場用自動改札機1Aは、図6に示すように、上述した例の入場用自動改札機1AのS31と、S32との間に、追加したS40にかかる処理を行う。具体的には、S31で今回受け付けた乗車券にキャンセル情報が記録されていると判定すると、この乗車券に対してキャンセル処理が行われた時刻が、この時点で設定されている入場許可時刻以前であるかどうかを判定する(S40)。上述したように、乗車券に記録されているキャンセル情報には、キャンセル処理を行った日時が含まれている。また、この時点で設定されている入場許可時刻は、上位装置2から通知された最新の制限レベルに対応する入場許可時刻である。例えば、上記の例において、上位装置2から通知された最新の制限レベルが1であれば、入場制限時刻は、16:00であり、上位装置2から通知された最新の制限レベルが2であれば、入場制限時刻は、17:00である。
【0050】
入場用自動改札機1Aは、S40で入場許可時刻以前でないと判定すると、S32以降の処理を行う。反対に、S40で入場許可時刻以前であると判定すると、S28以降の処理を行う。
【0051】
このように、この入場用自動改札機1Aでは、運転が中止されているときに駅構内から一旦出場した利用者についても、待ち時間の長さを考慮して駅構内に入場させることができる。したがって、災害や事故等で中止していた列車の運転が再開されたときにおける、駅構内の混雑が一層抑えられるとともに、利用者が感じる不公平感が一層抑えられる。
【0052】
また、上記の説明では、キャンセル処理が行われた時刻によって、入場制限をかけるとしたが、このキャンセル処理よって無効にされた入場情報にかかる入場処理が行われた時刻で入場制限をかけるようにしてもよい。
【0053】
また、上位装置2における制限レベルの判断は、駅係員等による設定入力に限らず、上位装置2が駅構内を撮像しているカメラの画像を処理して、混雑度を推定し、その推定結果に基づいて判断する構成としてもよい。例えば、上位装置2は、駅ホーム等の撮像画像に撮像されている人の人数や、撮像画像中における人口密度等が予め定めたレベルよりも低くなると、制限レベルを1つ下げる構成とすればよい。また、列車の到着前と、発車後とにおけるホームの人数差が予め定めた人数よりも大きくなると、制限レベルを1つ下げる構成とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】自動改札システムの構成を示す概略図である。
【図2】自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】上位装置の主要部の構成を示すブロック図
【図4】出場用自動改札機の動作を示すフローチャートである。
【図5】入場用自動改札機の動作を示すフローチャートである。
【図6】別の入場用自動改札機の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1−自動改札機
1A−入場用自動改札機
1B−出場用自動改札機
2−上位装置
10−制御部
11−乗車券受付部
12−利用者検知部
13−表示部
14−扉開閉部
15−通信部
20−制御部
21−通信部
22−入出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅構内に入場する利用者に対して改札処理を行う入場用自動改札機において、
乗車券を受け付け、その乗車券に記録されている乗車券情報を読み取る乗車券情報読取手段と、
前記乗車券情報読取手段が読み取った乗車券情報に基づいて、駅構内への利用者の入場を許可するかどうかを判定する入場可否判定手段と、
本体の動作モードを設定する動作モード設定手段と、
前記動作モード設定手段が本体の動作モードを、中止されていた列車の運転が再開されたときに行う運転再開時モードに設定しているとき、前記乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に、今回の列車の運転が中止されていた期間に、駅構内から出場したことを示すキャンセル情報が記録されているかどうかを判定するキャンセル情報判定手段と、を備え、
前記入場可否判定手段は、前記動作モード設定手段が本体の動作モードを前記運転再開時モードに設定しているとき、前記キャンセル情報判定手段によって前記乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に該当するキャンセル情報が記録されていないと判定された場合、駅構内への利用者の入場を許可しないと判定する手段である、入場用自動改札機。
【請求項2】
入場制限情報を記憶する記憶手段を備えるとともに、
前記入場可否判定手段は、前記動作モード設定手段が本体の動作モードを前記運転再開時モードに設定しているとき、前記キャンセル情報判定手段によって前記乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に該当するキャンセル情報が記録されていると判定された場合、前記記憶手段が記憶している前記入場制限情報を用いて駅構内への利用者の入場を許可するかどうかを判定する手段である、請求項1に記載の入場用自動改札機。
【請求項3】
前記入場可否判定手段は、乗車券にキャンセル情報が記録された時刻が、前記記憶手段が記憶している前記入場制限情報に含まれている入場許可時刻よりも以前であれば、駅構内への利用者の入場を許可すると判定し、反対に、乗車券にキャンセル情報が記録された時刻が、前記記憶手段が記憶している前記入場制限情報に含まれている入場許可時刻よりも以前でなければ、駅構内への利用者の入場を許可しないと判定する手段である、請求項2に記載の入場用自動改札機。
【請求項4】
前記記憶手段は、
駅構内の混雑度に基づく入場制限情報が上位装置から通知されたとき、記憶している入場制限情報を、今回通知された入場制限情報に更新する手段である、請求項2、または3に記載の入場用自動改札機。
【請求項5】
駅構内から出場する利用者に対して改札処理を行う出場用自動改札機において、
乗車券を受け付け、その乗車券に記録されている乗車券情報を読み取る乗車券情報読取手段と、
前記乗車券情報読取手段が読み取った乗車券情報に基づいて、駅構内からの利用者の出場を許可するかどうかを判定する出場可否判定手段と、
本体の動作モードを設定する動作モード設定手段と、
前記動作モード設定手段が本体の動作モードを列車の運転が中止されているときに行う運転中止モードに設定しているとき、前記乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に対して、前回の駅構内への入場を無効にするキャンセル情報を記録するキャンセル情報記録手段と、を備えた出場用自動改札機。
【請求項6】
前記キャンセル情報記録手段は、前回の入場駅が自駅であれば、前記キャンセル情報を今回受け付けた乗車券に記録し、反対に、前回の入場駅が自駅でなければ、前記キャンセル情報を今回受け付けた乗車券に記録しない手段である、請求項5に記載の出場用自動改札機。
【請求項7】
駅構内に入場する利用者に対して改札処理を行う入場用自動改札機と、
駅構内から出場する利用者に対して改札処理を行う出場用自動改札機と、
前記入場用自動改札機、および前記出場用自動改札機を管理する上位装置と、を備えた自動改札システムにおいて、
前記入場用自動改札機は、
乗車券を受け付け、その乗車券に記録されている乗車券情報を読み取る乗車券情報読取手段と、
前記乗車券情報読取手段が読み取った乗車券情報に基づいて、駅構内への利用者の入場を許可するかどうかを判定する入場可否判定手段と、
本体の動作モードを前記上位装置からの指示にしたがって設定する動作モード設定手段と、
前記動作モード設定手段が本体の動作モードを、中止されていた列車の運転が再開されたときに行う運転再開時モードに設定しているとき、前記乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に、今回の列車の運転が中止されていた期間に、駅構内から出場したことを示すキャンセル情報が記録されているかどうかを判定するキャンセル情報判定手段と、を備え、
前記入場可否判定手段は、前記動作モード設定手段が本体の動作モードを前記運転再開時モードに設定しているとき、前記キャンセル情報判定手段によって前記乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に該当するキャンセル情報が記録されていないと判定された場合、駅構内への利用者の入場を許可しないと判定する手段であり、
前記出場用自動改札機は、
乗車券を受け付け、その乗車券に記録されている乗車券情報を読み取る乗車券情報読取手段と、
前記乗車券情報読取手段が読み取った乗車券情報に基づいて、駅構内からの利用者の出場を許可するかどうかを判定する出場可否判定手段と、
本体の動作モードを前記上位装置からの指示にしたがって設定する動作モード設定手段と、
前記動作モード設定手段が本体の動作モードを列車の運転が中止されているときに行う運転中止モードに設定しているとき、前記乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に対して、前回の駅構内への入場を無効にするキャンセル情報を記録するキャンセル情報記録手段と、を備えている、
自動改札システム。
【請求項8】
前記上位装置は、
駅構内を撮像した撮像画像を処理し、駅構内の混雑度を推定する混雑度推定手段と、
前記混雑度推定手段が推定した駅構内の混雑度に基づく入場制限情報を前記入場用自動改札機に通知する入場制限情報通知手段と、を備え、
前記入場用自動改札機は、
前記上位装置から通知された前記入場制限情報を記憶する記憶手段を備えるとともに、
前記入場可否判定手段は、前記動作モード設定手段が本体の動作モードを前記運転再開時モードに設定しているとき、前記キャンセル情報判定手段によって前記乗車券情報読取手段が受け付けた乗車券に該当するキャンセル情報が記録されていると判定された場合、前記記憶手段が記憶している前記入場制限情報を用いて駅構内への利用者の入場を許可するかどうかを判定する手段である、
請求項7に記載の自動改札システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−61492(P2010−61492A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227819(P2008−227819)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】