説明

入浴装置

【課題】
浴槽本体の昇降操作によって入浴経過時間の計数が自動的に行えるものとし、入浴経過時間を計数する為の専用操作を不要とすることで入浴介護者の入浴操作に係る負担を軽減する入浴装置を提供すること。
【解決手段】
所定区間を昇降可能な浴槽本体2内に入浴者が載置される担架3を支持する架台13が固設される入浴装置1において、入浴経過時間の計数が浴槽本体2の上昇指示と同時に、又は浴槽本体2が前記所定区間内における所定位置にまで上昇すると自動開始され、前記入浴経過時間の計数は浴槽本体2の下降指示と同時に、又は上昇状態にある浴槽本体2が前記所定区間内における所定位置にまで下降すると自動停止される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行困難な身体障害者又は高齢者(以下、入浴者という)を入浴させる入浴装置における入浴経過時間の計数と表示に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、「入浴者を車椅子に乗せたままで入浴をできるようにした扉開閉式の入浴浴槽」と「担架に乗せられた入浴者が、リフタによって、入浴浴槽の上方から入浴、出浴される形式の入浴浴槽」において入浴時間のカウントを可能にした技術が記載されている。
【0003】
しかしながら、昇降可能な浴槽内に固設される架台上に入浴者が載置される担架を移動させた後、浴槽を上昇させ入浴者を入浴させるタイプの入浴装置における入浴時間のカウントに係る技術に関しては、一切言及されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平10−146374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、浴槽本体の昇降操作によって入浴経過時間の計数が自動的に行えるものとし、入浴経過時間を計数する為の専用操作を不要とすることで入浴介護者の入浴操作に係る負担を軽減すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現する為、本発明は、所定区間を昇降可能な浴槽本体内に入浴者が載置される担架を支持する架台が固設される入浴装置において、入浴経過時間の計数が前記浴槽本体の上昇指示と同時に、又は前記浴槽本体が前記所定区間内における所定位置にまで上昇すると自動開始され、前記入浴経過時間の計数は前記浴槽本体の下降指示と同時に、又は上昇状態にある前記浴槽本体が前記所定区間内における所定位置にまで下降すると自動停止されるように構成した。
【0007】
又、入浴経過時間を表示する時間表示部を浴槽本体に設けた。更に、入浴経過時間が設定入浴時間に至ると報知音を発生する報知器を設け、該報知器からの報知音によって入浴者及び入浴介護者に退浴時機を報知するように構成した。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、例えば、操作パネル部に装備される浴槽本体の上昇スイッチを押下し浴槽本体の上昇指示をすることにより入浴経過時間の計数が開始され、浴槽本体の下降スイッチを押下し浴槽本体が下限位置にまで下降すると自動的に入浴経過時間の計数が停止するので、入浴介護者は上昇・下降スイッチを押下して浴槽本体の昇降操作だけを行えばよく、上昇・下降スイッチとは別の入浴経過時間の計数開始及び計数停止に係る計数スイッチの押下操作等が不必要となり、スイッチ操作の手数を減らすことができ、入浴介護者の入浴装置操作に係る負担を軽減できる。
【0009】
又、前記計数スイッチの押下操作をし忘れた結果、入浴経過時間が確認できなくなるといった不都合な事態の発生を低減することができる。更に、入浴経過時間の計数専用の計数スイッチを余分に操作パネル部に装備する必要がなく、スイッチ類の個数を減少することができ、コストダウンが図れる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、入浴介護者は操作パネル部に設けられる時間表示部を目視することで、入浴者がどの程度の時間入浴を行っているのかを容易に把握できる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、例えば、入浴装置から離れた浴室内で他の作業を行っている入浴介護者に対しても退浴時機が到来したことを確実に知らせることができ、従って、入浴者を長時間湯に浸からせたままの状態で放置し入浴者に脳貧血を引き起こさせてしまうといった危険性を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
浴槽本体の昇降操作によって入浴経過時間の計数が自動的に行えるものとし、入浴経過時間を計数する為の専用操作を不要とすることで入浴介護者の入浴操作に係る負担を軽減するという目的を、浴槽本体の上昇スイッチのON作動と同時に入浴経過時間の計数を自動的に開始し、下降スイッチが押下され浴槽本体が所定の下限位置にまで下降した時点で入浴経過時間の計数を自動的に停止する構成とすることにより実現した。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例1を図1乃至5を参照して説明する。
図1は入浴装置1を示す平面図、図2は浴槽本体2の昇降手段を説明する模式図、図3は浴槽本体2の主たる電気的構成を示す簡易ブロック図、図4は入浴経過時間の計数・表示に係る制御例を示すフローチャート図、図5は主操作パネル部20の主要部分を拡大した部分図である。
【0014】
図1に示すように本発明の入浴装置1は、平面視略長方形状の浴槽本体2と、該浴槽本体2の入浴部31内に設けられる架台13と、入浴者を仰臥姿勢に横たわらせる担架3と、該担架3を載置し搬送する搬送車4とを主たる構成要素としている。
【0015】
図2に示すように浴槽本体2は浴室床面18に複数の脚を介して載置される側面視L字状の基台5上に配置されており、浴槽本体2は基台5上に配備される浴槽昇降手段6によって所定区間を昇降可能になされている。浴槽昇降手段6は、基台5と浴槽本体2の底壁2a下面との間に設けられるX字状のパンタグラフ7と、ロッド11a先端部がパンタグラフ7の所定箇所に連結されると共にピストン部11bが基台5に軸着される油圧シリンダ11と、該油圧シリンダ11のロッド11aをピストン部11bに対して伸長又は収縮させることによりパンタグラフ7を閉脚方向又は開脚方向に駆動させる油圧ポンプ8を有する油圧ユニット9とから構成される。
【0016】
油圧ポンプ8とピストン部11bとは配管10で接続され、該配管10の中途位置にはロッド11aをピストン部11b内方へ収縮させる為の電磁弁12が介装されている。従って、浴槽本体2はロッド11aが伸長しパンタグラフ7が閉脚方向に駆動すると上昇し、逆にロッド11aが収縮しパンタグラフ7が開脚方向に駆動すると下降する。
【0017】
又、基台5上には一端部が基台5に固定されると共に浴槽本体2の底壁2aの略中心部を貫通して鉛直状に延設される支柱部13aと、該支柱部13aの他端部に担架3を支持する平面視略長方形状の支持板部13bとからなる架台13が設けられている。尚、支柱部13aが貫通される底壁2a箇所には入浴部31内に溜められる湯水を入浴部31外へ漏出させないよう不図示のシール部材等でシールされている。支持板部13bの長手方向の上面左右位置には搬送車4から移動される担架3を支持板部13b上の所定位置に案内する案内レール17・17が所定の間隔を有して平行態様に配設されている。支持板部13bの中央部には担架3と架台13とがロックされていることを検知する近接センサ29が固着される(図1参照)。
【0018】
基台5の直立部5aの所定位置には浴槽本体2の上昇を所定上限位置にて自動停止させる上限リミットスイッチ14と、浴槽本体2の下降を所定下限位置にて自動停止させる下限リミットスイッチ15とがそれぞれ配設される。直立部5aが形成される側における浴槽本体2の側壁2bの外面下部には前記上限・下限リミットスイッチ14・15をON/OFF操作する突片16が取着されている。尚、図2は浴槽本体2が所定上限位置にまで上昇した状態を示している。図2中、32は入浴部31内に給湯された湯水の温度を検出する温度センサ、33は入浴部31内の湯水の下限水位を検出する下限水位センサ、34は入浴部31内の湯水の上限水位を検出する上限水位センサである。
【0019】
次に、図3を参照して入浴装置1の主たる電気的構成について説明する。制御装置19は浴槽本体2長手方向の左右端の上面位置にそれぞれ配設される主操作パネル部20(図1中、浴槽本体2の右端側)と副操作パネル部21(図1中、浴槽本体2の左端側)に装備される各種スイッチ類の他、上述した上限・下限リミットスイッチ14・15、近接センサ29等からの信号を受信し、入浴装置1の作動を制御する。尚、副操作パネル部21には主操作パネル部20に装備されるスイッチ類と同等のものが一部装備される為、以下は主操作パネル部20に装備されるスイッチ類についてのみ説明を行う。
【0020】
上昇スイッチ22は浴槽本体2の上昇を指示し、下降スイッチ23は浴槽本体2の下降を指示し、停止スイッチ24は浴槽本体2の昇降停止を指示するものである。計数カウンタ26は入浴経過時間を計数するカウンタであって、制御装置19から入浴経過時間の計数開始の信号が送信されると計数を開始し、計数停止の信号が送信されると計数を停止する。
【0021】
制御装置19は計数カウンタ26により計数される入浴経過時間を読み取り、時間表示部27に表示する。報知器28は入浴装置1に内蔵のスピーカとされ、計数カウンタ26により計数された入浴経過時間が予め制御装置19に設定している入浴時間(以下、設定入浴時間と称呼する)に到達すると音声を発生するものである。音声スイッチ25は報知器28からの音声の許可/禁止を指示するものである。尚、図示及び詳細な説明は省略するが、前記設定入浴時間は、入浴介護者等によって必要に応じて適宜変更が可能なものである。
【0022】
浴槽本体2を上昇させる場合は、不図示の給湯手段を用いて湯水を下限位置にある浴槽本体2内に溜めた後、搬送車4を浴槽本体2長手方向における一側方位置に接近させ浴槽本体2と搬送車3とを不図示のロック手段を用いて連結する。担架3を搬送車4から架台13上にスライド移動させる。図示は省略するが担架3と架台14には、担架3が架台14の所定位置に至ると自動的にロックがなされるようにロック手段が形成されている。担架3と架台13とのロックが完了すると、近接センサ29がON作動し、制御装置19に信号を送信し、浴槽本体2の上昇が許容される。
【0023】
次に、電磁弁12を閉弁状態で油圧ポンプ8を駆動させ、油圧シリンダ11のロッド11aを伸長させパンタグラフ7を閉脚方向に作動させる。このパンタグラフ7の作動によって浴槽本体2が上昇し入浴者は入浴可能状態となる。浴槽本体2の上昇移動は突片16が上限リミットスイッチ14に当接し、該スイッチ14がONとなった時点(上限位置)で自動停止する。
【0024】
浴槽本体2を下降させる場合は、制御装置19にて電磁弁12を開弁状態に作動制御することで油圧シリンダ11のロッド11aが収縮作動しパンタグラフ7が開脚方向に駆動し、浴槽本体2が下降する。浴槽本体2の下降は、突片16が下限リミットスイッチ15に当接し、該スイッチ15がON作動した時点(下限位置)で自動停止する。尚、上限位置と下限位置の間で浴槽本体2の昇降を停止させる場合は、停止スイッチ24を押下すればよい。
【0025】
次に、図4に基づいて、入浴経過時間の計数に係る制御を説明する。図4中、Sはステップを示す。入浴装置1の電源スイッチ30をONにすると、時間表示部27に入浴経過時間が零と表示される(S1)。S2において、制御装置19によって浴槽本体2が下限位置にあるか否かが判別される。YESの場合、即ち、浴槽本体2が下限位置にあり下限リミットスイッチ15がONになっていることを制御装置19が検知した場合は、S3に移行する。
【0026】
次に、S3において、搬送車4から担架3が架台13上に移動されロックされているか否かが判別される。YESの場合、即ち、近接センサ29によってロックがなされたことが制御装置19にて検知された場合は、S4へ移行する。
【0027】
S4において、上昇スイッチ22が押下操作されONになったか否かが判別される。上昇スイッチ22がONになった旨が制御装置19によって検知されると、制御装置19は浴槽昇降手段6を作動させ浴槽本体2を上昇させると共に入浴経過時間を計数する計数カウンタ26に計数開始信号を送信し、計数カウンタ26が入浴経過時間の計数を開始する(S5)。
【0028】
制御装置19は計数カウンタによって計数された入浴経過時間を読み取り、時間表示部27に表示する(S6)。浴槽本体2は浴槽昇降手段6の作動によって、上限リミットスイッチ14がONとなる所定の上限位置にまで上昇すると、上昇が自動停止する。
【0029】
S7において計数カウンタ26によって計数された入浴経過時間が設定入浴時間に到達した旨を制御装置19によって検知された場合(Yesと判別)で、S12にて音声スイッチ25がONであることが検知された場合(Yesと判別)は、スピーカ(報知器28)から音声が発生され(S13)、この音声でもって退浴時機が到来したことを入浴者及び入浴介護者に対して報知する。
【0030】
発生される音声は、制御装置19内に予め記憶された所定時間のメロディ音とされ、所定時間が経過した後にメロディ音は自動停止される(S14)。音声スイッチ25がOFFとされている場合は、入浴経過時間が設定入浴時間に到達にしてもスピーカから音声は発生されない仕組みとされている。
【0031】
入浴介護者は前記メロディ音によって入浴経過時間が設定入浴時間に到達したことを確認した後、入浴者を退浴させる作業に移行する。浴槽本体2を下降させ入浴を完了する場合は、下降スイッチ23を押下操作する(S8)。制御装置19は下限リミットスイッチ15がONとなる所定の下限位置にまで浴槽本体2が下降したか否かを判別し(S9)、YESの場合は計数カウンタ26による入浴経過時間の計数を停止し(S10)、時間表示部27に表示される入浴経過時間を零に戻す(S11)。
【0032】
尚、S2においてNoと判別された場合は浴槽本体2が上昇或いは下降している状態であり、計数カウンタ26によって入浴経過時間の計数が継続され、その時間が時間表示部27に表示される。S3〜S4、S8〜S9、S12においてNoと判別された場合はいずれも図4に示す各所定位置にまでループされる。
【0033】
尚、上述した実施例1では上昇スイッチ22をONにすると制御装置19が入浴開始を検知し計数カウンタ26が入浴経過時間の計数を開始し、下降スイッチ23を押下し浴槽本体2が所定の下限位置まで下降すると入浴経過時間の計数を停止する構成としたが、本発明は上記構成に限定されることはなく、例えば、上昇スイッチ22をONにした後、浴槽本体2が所定の上限位置にまで上昇した(上限リミットスイッチ14がONとなる)時点で入浴経過時間の計数を開始してもよく、或いは上昇スイッチ22をONにしてから所定時間(例えば、5秒)後に入浴経過時間の計数を開始してもよく、更に、入浴経過時間の計数を停止するタイミングに関しても下降スイッチ23をONにした時点で入浴経過時間の計数を停止してもよく、或いは下降スイッチ23をONにしてから所定時間(例えば、5秒)後に入浴経過時間の計数を停止しても勿論よい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、歩行困難な身体障害者又は高齢者を入浴させる入浴装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1の入浴装置を示す平面図である。
【図2】実施例1の浴槽本体の昇降機構を説明する模式図である。
【図3】実施例1の浴槽本体の主たる電気的構成を示す簡易ブロック図である。
【図4】実施例1の入浴経過時間の計数・表示に係る制御例を示すフローチャート図である。
【図5】実施例1の主操作パネル部20の主要部分を拡大した部分図である。
【符号の説明】
【0036】
1 入浴装置
2 浴槽本体
3 担架
13 架台
27 時間表示部
28 報知器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定区間を昇降可能な浴槽本体内に入浴者が載置される担架を支持する架台が固設される入浴装置において、入浴経過時間の計数が、前記浴槽本体の上昇指示と同時に又は前記浴槽本体が前記所定区間内における所定位置にまで上昇すると自動開始され、前記入浴経過時間の計数は、前記浴槽本体の下降指示と同時に又は上昇状態にある前記浴槽本体が前記所定区間内における所定位置にまで下降すると自動停止されることを特徴とする入浴装置。
【請求項2】
入浴経過時間を表示する時間表示部が浴槽本体に設けられることを特徴とする請求項1記載の入浴装置。
【請求項3】
入浴経過時間が設定入浴時間に至ると報知音を発生する報知器を設け、該報知器からの報知音によって入浴者及び入浴介護者に退浴時機を報知することを特徴とする請求項1又は2記載の入浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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