説明

全方位センサーおよびそれを用いた装置

【課題】地磁気により動作する方位磁針の向きと重力方向に対する傾斜を簡便な方法で電気的に同時に取り出すことが出来る全方位センサーを提供すること。
【解決手段】本発明の全方位センサーは、方位磁石16と錘17が内在された球体の表面が反射処理され、球体を内包する球体の表面が散乱処理されるとともに、表面に光の透過を適宜遮断する吸収パターンが配置されている。この球体を入射側透過窓12と出射側透過窓19が設けられ、透明液体で満たされた遮光筐体13内に浮遊させ、出射側透過窓19から出た光を光電変換素子18により電気信号に変換することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地磁気により発生する磁場方位を電気的で取り出す方位センサーおよびそれを用いた装置に関するものであり、特に、GPS(全方位地球システム)機能付きのナビゲーションシステム装置等に用いられる全方位センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地磁気により発生する磁場方位は、方位磁針の向きにより簡便に肉眼で把握することが可能である。しがしながら、GPS機能付きのナビゲーション装置に表示された電子ディスプレイモニター地図画面を進行方向に応じて正常な向きに回転させるには、方位磁針の向きを電気的に、デジタル信号として取り出す必要がある。
【0003】
一方、特開平6−82253号公報には、発光素子、受光センサおよび複数の開口部を設けたケース内部に配置された微小な遮光性小球により、発光素子からの光を遮り、複数の姿勢を検出する姿勢検出装置の技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−82253号公報(第1頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、微小な遮光性小球により、発光素子からの光を遮り、複数の姿勢を検出する従来の方法では、姿勢方向が、正立、左傾斜、右傾斜、前傾斜、後継者、倒立の6方位のとびとびの方向しか認識できず、全方位に渡って正確に方位を認識することは不可能であった。よって、本発明は連続的に全方位に渡って正確に方位を認識できる全方位センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の全方位センサーは、方位磁石と錘が内在された球体と、球体を移動可能に保持する筐体とを備えた全方位センサーであって、球体の表面は光を導光する導光機能を備え、かつ表面の少なくとも一部に光を吸収する吸収パターンを有し、筐体は光が入射する入射側透過窓と、光が出射する出射側透過窓とを有し、入射側透過窓から入射した光は、球体の表面を導光し、出射側透過窓より出射され、出射された光を電気信号に変換することを特徴とする。
【0006】
また、吸収パターンは球体の表面を導光する光量が方位によって異なるように、球体の表面に配置されていることを特徴とする。また球体は、表面が反射処理された内核球を有し、内核球の外側には表面が散乱機能を有する導光層が備えられていることを特徴とする。また球体は樹脂からなることを特徴とする。また筐体内には透明液体が満たされ、球体を移動可能に保持していることを特徴とする。また、本発明はこの全方位センサーを用いた装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の全方位センサーを用いることにより、地磁気により発生する磁場方位と重力方向に対する傾斜を同時に、簡素な光学系による光電変換システムにより電気的信号に変換できるため、方位を連続的に感知することが可能である。また、センサー自体の小型化と方位の電気信号化により、モニター上の地図画像や航空衛星画像をすばやく方位に応じて回転させる共に、装置を傾けても正確さが損なわれない、使用者にとって小型で高性能の方位装置やナビゲーション装置を提供できる。なお、光電素子は少数でよいので、光電素子やそれを実装するための複雑な回路基板も簡略が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の形態を詳述する。本発明の全方位センサーを用いた方位装置の機能を図5に基づいて説明する。本発明を用いた方位装置51は、GPS機能によって電子ディスプレイ上の地図モニタ−53上に、方位装置を持った人の位置と進行方向表示52を行うことが可能である。これは、方位装置51に組み込まれた全方位センサー54が、地磁気の向きを電気的なデジタル信号として出力し、電子ディスプレイモニター上の地図画面を進行方向に応じて正常な向きに回転させるためである。
【実施例】
【0009】
次に、本発明の全方位センサーについて実施例として詳述する。図1は本発明の全方位センサーの構造を示す模式図である。11は光源で光を出力する赤色LEDであり、3Vで0.1Aの300mwで発光している。遮光筐体13には光源からの光を入射する3mmφの入射側透過窓12が設けられている。この遮光筐体13内には、透明液体のベンゼンが満たされ、表面に導光機能を備えた球体14が移動可能に浮遊した状態となっている。この球体14は、固定された方位磁石16と真ちゅうの錘17とを内在している。
【0010】
球体14は、遮光筐体13内を自由に回転できるように、遮光筐体13と球体14との間には隙間を設けている。しかし、入射側透過窓12から入射した光が球体14のほぼ中心に入射されるように、その隙間がなるべく小さくなるように設計するのが好ましい。また、球体14と透明液体との比重をほぼ等しくさせれば、遮光筐体13があらゆる方向に変化しても、球体14は、錘と方位磁石によって、ほぼ定位置に保持することが可能である。さらに、遮光筐体13には二つの出射側透過窓19を設けている。この出射側透過窓19は一つでも構わないが、複数個設けることによって、センサーの精度を高めることができる。
【0011】
図2は、球体14の表面における吸収パターンを示した模式図である。この吸収パターンは点状の黒色網点パターンであり、球体14の表面を導光する光量が方位によって異なるように、表面の単位面積あたりの黒色網点パターンを各々変化させ、球体14の表面に各々分布をもって、黒色網点パターンを複数箇所設けている。図2の<側面パターン模式図>では、球体14の側面側から見た黒色網点パターンを示している。図2の<上面パターンの模式図>では、球体14の上部極点側から見た黒色網点パターンを示している。これら模式図に図示したように、上部極点付近と下部極点付近では、黒色網点パターンの配置分布密度を濃くし、赤道付近では配置分布密度を淡くする。また、極点付近においても、<上面パターンの模式図>で図示するように、極点を中心に黒色網点パターンの配置密度を徐々に変化させる。図示しないが、下面の極点付近でも、黒色網点パターンの配置密度を徐々に変化させる。このとき、上面の極点付近とは逆回転で濃から淡へと配置分布を変えるのが好ましい。
【0012】
図3は球体の断面を示した図である。球体は外径が1cmφの大きさで、中心部が空洞のアクリル樹脂36である。また、球体の内部には空洞のアクリル樹脂36からなる内核球を備えている。内核球は球体の内部で動かないように、球体の内側にぴったり収納されている。内核球の空洞内部には、方位磁針34と真鍮の錘35が、アクリル接着剤により固定化されている。また、内核球の表面は、白色塗料が塗布されて反射機能を有する反射処理部33が形成されている。また、球体の表面はブラスト処理されすりガラス状のブラスト処理部32が形成されており、球体へ入射する光を散乱させる散乱機能を備えている。このように球体の表面が散乱機能を備えているので、球体の最外郭に設けられたアクリル樹脂36とブラスト処理部33との層は導光機能を有している。さらに、球体の最表面には、前述した黒色網点パターン31が凹版印刷で形成されている。
【0013】
図4は、球体に入射した光が導光している状態を示した模式断面図である。遮光筐体の入射側透過窓から入射した赤色の入射光40は、内核球の外側表面の反射処理部43で反射し、球体の表面であるブラスト処理部43とアクリル樹脂との層で導光し、伝播を繰り返す。伝播した光は黒色網点パターン41が配置されている箇所では吸収され、球体の外へは出射されず、黒色網点パターン41が配置されていない箇所では球体の外側へ出射光44として出射される。出射光44は遮光筐体に設けられた複数の出射側透過窓から出射され、出射側透明窓の外側に配置されている光電変換素子48により光量が電流値に変換されて測定される。あらかじめ光量と方位の関係を求めておき、出射光の電流値によって、方位を得ることができる。
【0014】
このように、図3で図示した球体を図1に図示するように遮光筐体13内に設けることによって全方位センサーを得ることができる。図1に図示したように、球体14に照射された赤色光は、反射処理された内核球15の表面で伝播を繰り返し、黒色網点パターンによって出射分布が異なるため、遮光筐体13の傾きや方位によって、光電変換素子18で受光される光強度が異なる。このような光強度を光電変換素子18によって数値化し、全方位センサーの方位を得ることができる。
【0015】
本実施例の場合、筐体の底面側の光電変換素子に流れる電流値は6〜12マイクロアンペアであった。また、側面側の光電変換素子に流れる電流値15〜35アンペアであった。
【0016】
したがって、図1に示すように、遮光筐体13の向きによって、光電変換素子に流れる電流に強弱の差異が生じ、この電流値の強弱差に加え光電素子間の電流値の比率の比較により、地球磁場方位と共に重力方向に対する傾斜を同時に電気信号として出力する。すなわち、光電変換電流を、電圧変換しAMPで増幅し、A/D変換後MPU(マイクロプロセッサーユニット)で方位演算し、重力方向を含む方位信号とをデジタル信号として出力する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の全方位センサーの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の球体の表面パターンを示す模式図である。
【図3】本発明の球体の模式断面図である。
【図4】本発明の入射光の経路を示した模式断面図である。
【図5】本発明の傾斜センサーを用いた方位装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0018】
11 光源
12 入射側透過窓
13 遮光筐体
14 球体
15 内核球
16 方位磁石
17 錘
18 光電変換素子
19 出射側透過窓
31 黒色網点パターン
32 ブラスト処理部
33 反射処理部
34 方位磁石
35 錘
36 アクリル樹脂
51 方位装置
52 進行方向表示
53 地図モニター
54 全方位センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方位磁石と錘が内在された球体と、
該球体を移動可能に保持する筐体とを備えた全方位センサーであって、
前記球体の表面は光を導光する導光機能を備え、かつ前記表面の少なくとも一部に光を吸収する吸収パターンを有し、
前記筐体は光が入射する入射側透過窓と、光が出射する出射側透過窓とを有し、
前記入射側透過窓から入射した光は、前記球体の表面を導光し、前記出射側透過窓より出射され、該出射された光を電気信号に変換することを特徴とする全方位センサー。
【請求項2】
前記吸収パターンは前記球体の表面を導光する光量が方位によって異なるように、前記球体の表面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の全方位センサー。
【請求項3】
前記球体は、表面が反射処理された内核球を有し、該内核球の外側には表面が散乱機能を有する導光層が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の全方位センサー。
【請求項4】
前記球体は樹脂からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の全方位センサー。
【請求項5】
前記筐体内には透明液体が満たされ、前記球体を移動可能に保持していることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の全方位センサー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の全方位センサーを用いた装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−304297(P2008−304297A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151237(P2007−151237)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)