説明

全方向移動機能を持つ歩行訓練機

【課題】前後左右を含めて、あらゆる方向に移動でき、かつ、訓練中での転倒を防止することができる歩行訓練機を提供すること。
【解決手段】電動式アクチュエータにより全方向移動機能が実現されている、オムニホイールからなる全方向移動機構と、腕と肱を支える円形の支持部と、支持部の下方に配置された大径の円形部材とを有し、支持部は歩行訓練者が左右の手で把持できる左右一対の棒状把持部が前方に設けられ、大径の円形部材と連結され、歩行訓練者が支持部及び円形部材に囲まれて転倒せず歩行訓練でき、支持部及び円形部材が夫々対向して配置された2つの半円形の部材からなり、2つの半円形の部材は一方の端部同士が蝶つがいにより接続されて円形の支持部及び円形部材を形成し、蝶つがいを利用して支持部及び円形部材の後方を広く開けることができ、開けた部分から歩行訓練者が支持部及び円形部材内に入れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向移動機能を持つ歩行訓練機に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行は平坦路における2足直立歩行として単純化,モデル化されることが多いが,歩行障害を身体の機能面での障害として捉えれば,前方向だけではなく,横歩き,後歩き,方向変換などいくつかの基本動作の組み合わせからなる複雑な動作群を考慮しなければならない。したがって,前後・左右を含めた全方向移動できる歩行訓練機が望まれる。
実際リハビリテーションの現場では、直進方向の歩行訓練にキャスター付簡易型歩行機を、左右方向の歩行訓練に平行棒を使用している。訓練器具間の移乗は勿論のことであるが、動力源の無い歩行機を使っているので、歩行訓練者の誘導と訓練が非常に大変である。
一方、電動式歩行訓練機が開発されたが、前後方向しか移動できないため、本来歩行障害のリハビリテーションの目的は達成されていない。また、これらの歩行訓練機の構造上では歩行訓練中で訓練者が転倒する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】藤江正克:自立歩行システム,計測と制御,Vol.40,No.5,p.384−387(2001)
【非特許文献2】江原義弘,大橋正洋,窪田俊夫:歩行関連障害のリハビリテーションプログラム入門,医歯薬出版株式会社(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するためのものであって、前後左右を含めて、あらゆる方向に移動でき、かつ、訓練中での転倒を防止することができる歩行訓練機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
現在ロボット工学分野では、オムニホイールやボールホイールなどを利用して、ロボットの全方向移動機能を実現している。請求項1はロボット工学で使われている技術を活用すれば、容易に実現できる。
【0006】
自力で歩けない人の歩行訓練を実施するために、腕と肱を支える支持部を設けることで、歩行訓練が可能となる。また、転倒を防止するために、支持部は真中に人のウエストよりやや大きな穴を空ける円形をしており、歩行訓練者を囲むことで、転倒せず安全な歩行訓練が可能となる。
【0007】
歩行訓練者は歩行訓練を開始する前に歩行訓練機の中に入ることが必要である。そのために、蝶つがいを利用して上記支持部を広く開けることで、歩行訓練者が歩行訓練機の中に入ることが可能である。
【発明の効果】
【0008】
高齢社会に向かって、加齢による歩行機能の低下が益々深刻になってきている。歩行リハビリテーションのできる医者が、歩行訓練を必要とする者に対して、年々減っている。よって、安全に多機能を持つ歩行訓練機の開発が益々需要である。
本発明は全方向移動機構例えばオムニホイール1を取付ける事により、現在平行棒と簡易型歩行訓練機の二つの機能を実現している。
また、支持部2は歩行訓練者が支持部2によって持たされて歩行訓練を行うので、従来の転倒問題を解決することができた。
よって、本発明を利用すれば、医者のロードを減らすこともでき、歩行機能障害とする前後方向、横歩き、方向転換といったような機能を回復することができる。自立歩行訓練が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態における一例の概略図である。
【図2】本発明を利用して、歩行訓練のイメージ図である。
【図3】本発明の有効性を確認するために、造った試作機である。
【図4】図1の蝶つがい5を利用して、支持部2を開けた状態での試作機である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態における一例を示す概略図である。
図1に示すように、オムニホイール1を取付けることにより、全方向移動機能を実現されている。ただし、オムニホイールの個数は四個に限定する必要はない。また、各々のオムニホイールに付けられた自由に回転できるローラの個数も八個に限定する必要はない。
尚、全方向移動機能とは、歩行訓練機の姿勢を崩さないで任意な方向に歩行訓練機を移動することができるという機能を意味している。
【0011】
腕と肱を支える支持部2は異なる半径の金属パイプ3と4に持たされている。パイプ3の半径はパイプ4の半径より大きいので、パイプ4がパイプ3の中にスライドすることができ、よって、支持部2の高度は歩行訓練者の身長に合わせて調整することができる。
【0012】
歩行訓練者は歩行訓練を開始する前に歩行訓練の中に入ることが必要である。そのために、蝶つがい5を利用して上記支持部2を広く開けることで、歩行訓練者が歩行訓練機の中に入ることが可能である。また、歩行訓練開始後に上記支持部2を閉じることで、歩行訓練者が歩行訓練機の中に囲まれて、転倒せず歩行訓練を行う事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は歩行機能障害者の機能回復のために利用される。
【符号の説明】
【0014】
1 オムニホイール
2 支持部
3 金属パイプ
4 金属パイプ
5 蝶つがい

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式アクチュエータによって全方向移動機能が実現されている、オムニホイールからなる全方向移動機構と、腕と肱を支える円形の支持部と、前記支持部の下方に配置された該支持部よりも大径の円形部材とを有し、前記支持部は歩行訓練者が左右の手で把持できる左右一対の棒状把持部が前方に設けられるとともに前記大径の円形部材と連結されており、歩行訓練者が前記支持部及び前記円形部材に囲まれて転倒せず歩行訓練できるとともに、前記支持部及び前記円形部材が夫々対向して配置された2つの半円形の部材からなり、前記2つの半円形の部材はその一方の端部同士が蝶つがいにより接続されて円形の支持部及び円形部材を形成しており、前記蝶つがいを利用して前記支持部及び前記円形部材の後方を広く開けることができ、開けた部分から歩行訓練者が前記支持部及び前記円形部材内に入れることを特徴とする全方向移動可能な歩行機能障害者の機能回復用歩行訓練機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−152444(P2011−152444A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98757(P2011−98757)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【分割の表示】特願2001−298487(P2001−298487)の分割
【原出願日】平成13年8月23日(2001.8.23)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)