説明

全果圧縮型搾汁装置及び果実の搾汁方法

【課題】果実の連続搾汁処理において、圧縮面の表面処理に拘わらず十分な果汁効率を有した圧縮型搾汁装置及び果実の搾汁方法を提供する。
【解決手段】果実の流れ方向Fと異なる両側方向から対向圧縮して搾汁する圧縮手段と、圧縮手段によって圧縮搾汁された果汁を回収する回収手段と、搾汁後の果実の皮等を排出する排出手段とを具備する。圧縮手段は、一側方及び他側方へ交互に湾曲する一対の対向面3Fによって連続形成された湾曲圧縮空間3Sを形成し、この湾曲圧縮空間3S内に前記流れ方向に沿って果実を送り込むことで圧縮搾汁する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柑橘果実をはじめとする果実の果汁を搾出する全果圧縮型搾汁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果実の搾汁装置として、インライン搾汁機に代表されるチューブによる吸い取り式の装置、ブラウン搾汁機に代表される2分割後圧縮搾汁する方式の装置、チョッパーパルパー搾汁機のような皮剥き後搾汁される方式の装置、ベルト搾汁機、キャタピラ搾汁機に代表される全果圧縮型搾汁装置などが挙げられる。このうち従来の搾汁装置として、柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置における果実と直接接触する圧縮部材に、グリップ力(摩擦係数)を向上させる加工を施し、或は摩擦係数が高い材質を使用することで、搾汁効率を向上した全果圧縮型搾汁装置が開示される。これは例えば、柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置において、果実を圧縮する部材の静摩擦係数が0.55以上であることを特徴とするものである、とされる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−072994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の装置は、平板状の圧縮部材の表面処理を行なっているのみであるため、必ずしも十分な果汁効率を有するものとはいえなかった。特に連続処理を行なう場合、果汁の搾汁率1%の相違が果汁生産量に大きく関わるものである。また圧縮面の表面処理は、果実等の圧縮対象物との接触摩擦力を調整するため、対象物の表面状態に応じて適宜変更する必要あるため、圧縮面の表面処理に拘わらず十分な搾汁効率を確保することが求められている。
【0005】
そこで本発明は、果実の連続搾汁処理において、送り方向に所定形状の圧縮空間を形成し、この圧縮空間内に果実等の対象物を送り込んで圧縮することで、圧縮面の表面処理に拘わらず十分な搾汁効率を有した圧縮型搾汁装置及び果実の搾汁方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明では下記(1)〜(5)の手段を講じている。
【0007】
(1)本発明の圧縮型搾汁装置は、
投入口1Hから投入された果実Oを所定の流れ方向Fへ運搬する運搬手段と、投入された果実の表面に搾汁のための切込みを入れる切込み手段2と、前記運搬手段による運搬において、流れ方向Fと異なる果実Oの両側方向から対向圧縮して搾汁する圧縮手段と、圧縮手段によって圧縮搾汁された果汁を回収する回収手段4と、搾汁後の果実の皮を排出する排出手段5とを具備する圧縮型搾汁装置であって、
前記圧縮手段は、一側方及び他側方へ交互に湾曲する一対の対向面3Fによって連続形成された湾曲圧縮空間3Sを形成し、この湾曲圧縮空間3S内に前記流れ方向Fに沿って果実Oを送り込むことで圧縮搾汁することを特徴とする。
【0008】
一側方及び他側方へ交互に連続湾曲した湾曲圧縮空間3S内で搾汁することで、果実を一側方側への搾り形状と他側方側への搾り形状に繰り返し圧縮変形させながら搾ることとなる。この繰り返しの圧縮変形によって、搾汁効率を飛躍的に向上させることができる。
【0009】
(2)上記圧縮型搾汁装置において、圧縮手段の一対の対向面3Fは、運搬手段の流れ方向Fを中心とした第一側方S1及び第一側方と離反(相反)する第二側方S2へ交互に湾曲変移してなり、流れ方向軸Aを基準とした第一側方S1への各湾曲変移量と第二側方S2への各湾曲変移量とが、圧縮手段を作用させる流れ方向Fの全域において略同一であることが好ましい。
【0010】
流れ方向軸Aと直交する一側方とその相反方向(他側方)への変移の量が、流れ方向Fの全域において略同一であると、果実の投入位置と皮の排出位置との最終的なズレが抑えられ、果実の運搬中の偏りを防いでより確実な連続処理が可能となる。なお後述の実施例では流れ方向軸Aを中心として水平方向右側を第一側方S1、水平方向左側を第二側方S2としているが、第一側方、第二側方は流れ方向軸Aと直交しかつ互いに相反する2方向であれば良く、例えば斜め両側方或いは上下方向を第一側方、第二側方としてもよい。
【0011】
さらに各方向への湾曲偏移量の、流れ方向Fの圧縮手段全域における累積値が均等であれば、流れ方向全体で各方への均等な搾り外力を加えた効率的な搾汁が可能となる。
【0012】
(3)上記圧縮型搾汁装置において、前記圧縮手段の対向面は、運搬手段の流れ方向を中心とした第一側方及びこの第一側方と相反する第二側方への湾曲と、運搬手段の流れ方向を中心として前記第一、第二側方と異なる第三側方及びこの第三側方と相反する第四側方への湾曲と、を組み合せた二次方向に立体湾曲してなり、対向面による湾曲圧縮空間によって、果実に捩れ方向の圧縮力を加えることが好ましい。
【0013】
第一、第二側方と、第三、第四側方とからなる異なる2組の側方に立体湾曲することで、果実の搾汁効率を飛躍的に向上させることができる。特にこの湾曲方向を、流れ方向軸を中心とする捩じれ方向に順に設けることで、果実には捩じれ方向全周への均等な搾り変形力が加えられ、搾汁効率がより向上する。
【0014】
(4)上記いずれかの圧縮型搾汁装置において、圧縮手段の対向面3Fは、運搬手段の流れ方向Fと直交し且つ前記第一側方S1、第二側方S2と異なる第三側方S3、及び、この第三側方S3と相反する第四側方S4へ交互に湾曲変移してなり、
流れ方向の全域における第三側方への各湾曲変移量の総量と、流れ方向の全域における第四側方への各湾曲変移量の総量とが略同一であることが好ましい。
【0015】
上記流れ方向軸Aと直交し且つ第一側方S1と異なる第三側方S3、及び、第三側方と相反する第四側方S4を相反する2組目の両側方向として規定したとき、上記第一側方S1、第二側方S2への各方向への湾曲偏移量が均等であることに加えて、第三側方S3、第四側方S4への湾曲偏移量が均等であると、運搬による最終位置ズレを抑制し、流れ方向軸Aから大きく偏倚することのない均等な運搬と搾汁を行うことができる。なお後述の実施例では流れ方向軸Aを中心とした鉛直方向上方を第三側方S3、鉛直方向下方を第四側方S4としている。
【0016】
(5)上記いずれかの圧縮型搾汁装置において、圧縮手段の対向面3Fは、一側方及び他側方へ交互に屈曲する一対の対向面3Fによって、流れ方向に沿って複数の屈曲突部が断続形成された湾曲圧縮空間3Sを形成することが好ましい。
【0017】
この場合、例えば運搬手段の流れ方向Fと直交し且つ前記第一側方S1、第二側方S2と異なる第三側方S3、及び、この第三側方S3と相反する第四側方S4へ交互に屈曲変移してなり、流れ方向の全域における第三側方への各湾曲変移量の総量と、流れ方向の全域における第四側方への各湾曲変移量の総量とが略同一であるようにすることができる。
【0018】
(6)上記いずれかの圧縮型搾汁装置において、前記運搬手段の流れ方向又は流れ方向と直交する方向へ亘って、対向面の対向距離を大小に繰り返し可変させたものとしてもよい。対向距離を繰り返し可変させることで、圧縮力に変化を与え、総合的な搾汁効率を向上させることができる。
【0019】
或いは、前記運搬手段の流れ方向又は流れ方向と直交する方向へ亘って、対向面の対向距離を均等に保持するものとしてもよい。運搬手段の流れ方向全体に亘って均等なままの対向距離としながら湾曲圧縮することで、偏りのない均等な搾汁を行うことが可能となり、また運搬方向の位置ずれが生じにくいものとなる。
【0020】
(7)本発明の果実の搾汁方法は、前記いずれか記載の圧縮型搾汁装置を使用した果実の搾汁方法であって、
投入された果実の表面に搾汁のための切込みを入れる切込み工程と、運搬において、流れ方向と異なる果実の両側方向から対向圧縮して搾汁する圧縮工程と、圧縮手段によって圧縮搾汁された果汁を回収する果汁回収工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記手段を講じることで、果実の連続搾汁処理において、所定の連続圧縮空間内に送りこんで圧縮することにより、十分な搾汁効率を有した圧縮型搾汁装置及び果実の搾汁方法を提供するものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の圧縮型搾汁装置の平面構成図。
【図2】実施例1の圧縮型搾汁装置の側面構成図。
【図3】実施例1の圧縮型搾汁装置の圧縮空間の正面構成図。
【図4】実施例1の圧縮型搾汁装置の片側のチェーン駆動部の正面構成図。
【図5】実施例1の圧縮型搾汁装置の圧縮空間の平面構成図。
【図6】実施例1の圧縮型搾汁装置の一対の圧縮プレートの拡大斜視図。
【図7】実施例2の圧縮型搾汁装置の圧縮空間の平面構成図。
【図8】実施例2の圧縮型搾汁装置の一対の圧縮プレートの拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態例につき実施例として示す各図と共に説明する。本発明の圧縮型搾汁装置は、圧縮外力によって搾汁可能な果実(食用ないし非食用の果物又は野菜)を圧縮対象物とする。食用の圧縮対象物としては例えば、柑橘類(例えばバレンシアオレンジ、ネーブルオレンジ、ブラッドオレンジ、ジャッファ・オレンジ、ベルガモット等のオレンジ類、グレープフルーツ、オランジェロ等のグレープフルーツ類、柚子、ダイダイ、カボス、スダチ、レモン、シークヮーサー、ライム、シトロン、ブッシュカン、三宝柑等の香酸柑橘類、ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、ジャバラ、スウィーティー、デコポン等の雑柑類、イヨカン、清見、タンカン等のタンゴール類、セミノール、アグリフルーツ等のタンゼロ類、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、タチバナ、紀州ミカン、サクラジマミカン、カラマンシー等のミカン類、その他文旦類、カラタチ類、キンカン類を含む)のほか、リンゴ、ブドウ、イチゴ状果、リンゴ、ナシ等のナシ状果、イチジク状果、バナナ、ビワ、スイカ等のウリ状果、及びブドウやパイナップルといったものが含まれる。
【0024】
そして本発明の圧縮型搾汁装置は、基本的に、投入口1Hから投入された果実Oを所定の流れ方向Fへ運搬する運搬手段(11,12)と、投入された果実の表面に搾汁のための切込みを入れる切込み手段2と、前記運搬手段による運搬において、流れ方向Fと異なる果実Oの両側方向から対向圧縮して搾汁する圧縮手段(31〜35)と、圧縮手段によって圧縮搾汁された果汁を回収する回収手段4と、搾汁後の果実の皮を排出する排出手段5とを具備する(図1、図2)。以下、各構成につき詳述する。
【0025】
(運搬手段(11,12))
運搬手段(11,12)は、一端に投入口1Hを有し、流れ方向F下方へ傾斜しながら流れ方向へ伸長する投入台11と、投入台11の両側部に立設した一対の側枠12とによって形成された運搬枠によって、果実等の搾汁対象物Oを転動させながら運搬する。投入台11の台幅、及び一対の側枠12間距離は流れ方向に沿って幅寸法が徐々に小さくなるものとしている(図1、図2)。特に投入台11は平面視先細り形状の先部となっており、その両側部が圧縮手段の上流側の圧縮プレート31P対向面3Fによって挟まれる。
【0026】
(圧縮手段(31〜35))
圧縮手段(31〜35)は、流れ方向軸Aを中心とした一側方及び他側方へ交互に湾曲する一対の対向面3Fの間に湾曲圧縮空間3Sを形成し、この湾曲圧縮空間3S内に送り込んだ果実を両側から挟み込みながら前記流れ方向Fに果実Oを運搬することで圧縮搾汁する(図1、図2)。
【0027】
実施例では流れ方向軸Aを中心とした一側方及び他側方に一対のキャタピラ機構が設置され、各キャタピラ機構の少なくとも片側面には、複数の圧縮プレート31Pが幅方向に環状に連接され、それぞれの外面が対向面として露出する。そして、一対のキャタピラ機構それぞれの圧縮プレートの対向面間に湾曲圧縮空間3Sが形成され、環状連接した圧縮プレート31Pを連接方向に周回作動させることで、湾曲圧縮空間3Sの圧縮プレートが送り方向に沿って送出入される。湾曲圧縮空間内3Sで送出入される各圧縮プレートの対向面によって、果実を圧縮空間3S内で挟み込んで対象物を運搬しながら圧縮するものとしている(図1〜図3)。
【0028】
圧縮プレート31Pは、プレート背面のチェーン31Cを介して環状に連接され、送り方向最下流位置に立設された駆動軸32、及び、送り方向最上流位置に立設された従動軸35を亘って周状に巻着される。具体的には複数の圧縮プレート31Pは、プレート背面の上下部に固定された環状のチェーン31Cを介して幅方向に連結される。また各プレート背面の中央部には、駆動軸32、従動軸35の各周面歯車と噛合し得る噛合機構が形成され、この噛合機構によって駆動軸32周り、従動軸35周りに周着保持される(図1〜図3)。
【0029】
(バックアップローラ33)
また圧縮プレート31Pの周回軌道上には、他のキャタピラ装置の圧縮プレート31Pと対向する区間において、圧縮力を付与する複数のバックアップローラ33が流れ方向Fに沿って並び、それぞれが軸回転可能に立設する。各バックアップローラ33は、湾曲圧縮空間3Sを形成する圧縮プレート31P群の各背面に接して圧縮プレート31Pの対向部の軌道を形成する。
【0030】
このうち上流側のバックアップローラ33群は流れ方向軸Aへ徐々に近接するように斜方向に配置され、一対のキャタピラ機構によって流れ方向へ向かって互いに近接することで果実を流れ方向軸A上に誘導するものとしている。
【0031】
また下流側のバックアップローラ33群は流れ方向軸Aに対して並行配置され、一対のキャタピラ機構によって均等なベルト間距離(圧縮幅3W)内で果実を確実に誘導しながら圧縮搾汁するものとしている(図1、図2)。そして搾汁時に発生する対象物(果実)への圧縮力は、駆動回転可能なバックアップローラ33に同軸固定された柱状のローラ噛合部33Bに裏側から噛合されることで付与される(図3)。
【0032】
(切込み手段2)
上流側のバックアップローラ33群の対向面3F間には前記投入台11の平面視先細り形状の先部が配置されており、この先部の上方には、投入台11上の対象物(果実)に切り込みを入れる切込み手段2が吊設される。上流側のバックアップローラ33群表面の圧縮プレート31Pによって対象物を運搬しながらその軸上上部からに切り込みを入れることで、対象物を下部の適宜位置に押しつけて搾汁開始穴を幅方向略中央位置に形成し、その直後から下流側のバックアップローラ33群表面の圧縮プレート31Pによって対象物へ圧縮力を加えるものとしている。
【0033】
切り込み手段2は具体的には、下辺に刃面を有したプレート状の切削刃が、流れ方向軸A上に沿って圧縮区間の上流側近傍に吊設される。刃面を有する下辺は上流側から下流側に向かって下方傾斜しており、投入台11上を下流側へ転動する対象物の上部から徐々に刃部が突入するものとしている。切削刃の吊設高さ及び刃面の傾斜角度、刃の枚数は対象物(果実)の大きさや硬さ等に応じて適宜調整される。なお果実の種類や状態に応じて切削刃を取り外し、切り込み手段を設けない装置構成とすることも可能である。
【0034】
(駆動軸32周りの駆動機構)
周着保持された圧縮プレート31P群の周回駆動力は、モータ3Mから片側のチェーン軸である駆動軸32を介して駆動力が噛合伝達される。具体的には図4に示すように、駆動軸32の上端にはモータ3Mが同軸設置され、その直下及び軸下端が回転可能に軸支される。駆動軸32の下部付近及び中央部付近には、2枚のスプロケット31Hがチェーン31Cの高さに合わせて外周方向に張設され、このスプロケット31Hの外周端が、圧縮プレートを周連結するチェーン31Cの枢支軸に噛合してチェーン31Cの枢支軸を支承する。チェーン31Cによって周連結された各圧縮プレートは、環状連結空間内部からスプロケット31Hによって駆動しながらプレート連結方向に周回する(図4)。
【0035】
(湾曲圧縮空間3S)
湾曲圧縮空間3Sは一側方及び他側方へ交互に連続湾曲する。この湾曲圧縮空間3S内で搾汁することで、果実を一側方側への搾り形状と他側方側への搾り形状に繰り返し圧縮変形させながら搾ることとなる。この繰り返しの圧縮変形によって、搾汁効率を飛躍的に向上させることができる。
【0036】
圧縮手段の一対の対向面3Fは、運搬手段の流れ方向Fを中心とした第一側方S1及び第一側方と離反(相反)する第二側方S2へ交互に湾曲変移してなり、流れ方向軸Aを基準とした第一側方S1への各湾曲変移量と第二側方S2への各湾曲変移量とが、圧縮手段を作用させる流れ方向Fの全域において略同一である。
【0037】
流れ方向軸Aと直交する一側方とその相反方向(他側方)への変移の量が、流れ方向Fの全域において略同一であると、果実の投入位置と皮の排出位置との最終的なズレが抑えられ、果実の運搬中の偏りを防いでより確実な連続処理が可能となる。実施例では流れ方向軸Aを中心として水平方向右側を第一側方S1、水平方向左側を第二側方S2としている。
【0038】
さらに各方向への湾曲偏移量の、流れ方向Fの圧縮手段全域における累積値が周方向に均等であれば、流れ方向全体で各方への均等な搾り外力を加えた効率的な搾汁が可能となる。なお圧縮区間の途中で流れ方向軸Aからの偏移量が一部の周方向に偏った場合でも、流れ方向全体で周方向の偏移量が均等であれば、圧縮終了時すなわち排出部での対象物の位置の偏りが生じることがない。
【0039】
圧縮手段の対向面3Fは、運搬手段の流れ方向Fと直交し且つ前記第一側方S1、第二側方S2と異なる第三側方S3、及び、この第三側方S3と相反する第四側方S4へ交互に湾曲変移してなり、流れ方向の全域における第三側方への各湾曲変移量の総量と、流れ方向の全域における第四側方への各湾曲変移量の総量とが略同一であることが好ましい。
【0040】
上記流れ方向軸Aと直交し且つ第一側方S1と異なる第三側方S3、及び、第三側方と相反する第四側方S4を相反する2組目の両側方向として規定したとき、上記第一側方S1、第二側方S2への各方向への湾曲偏移量が均等であることに加えて、第三側方S3、第四側方S4への湾曲偏移量が均等であると、運搬による最終位置ズレを抑制し、流れ方向軸Aから大きく偏倚することのない均等な運搬と搾汁を行うことができる。実施例では流れ方向軸Aを中心とした鉛直方向上方を第三側方S3、鉛直方向下方を第四側方S4としている。
【0041】
図7,8に示す実施例3の圧縮手段の対向面は、運搬手段の流れ方向を中心とした第一側方及びこの第一側方と相反する第二側方への湾曲と、運搬手段の流れ方向を中心として前記第一、第二側方と異なる第三側方及びこの第三側方と相反する第四側方への湾曲と、を組み合せた二次方向に立体湾曲してなり、対向面による湾曲圧縮空間によって、果実に捩れ方向の圧縮力を加えるものとしている。第一、第二側方と、第三、第四側方とからなる異なる2組の側方に立体湾曲することで、果実の搾汁効率を飛躍的に向上させることができる。実施例では凸面湾曲した第一圧縮プレート311P1と凹面湾曲した第二圧縮プレート311P2とが一組となって、一対の対向圧縮面3Fを構成する(図8)。
【0042】
(捩じれ方向の湾曲)
なお他の実施例としてこの湾曲方向を、流れ方向軸を中心とする捩じれ方向に順に設けたものとしてもよい。すなわち流れ方向軸A上に4組の圧縮プレートの対向組が並ぶことで上流側から順に第一、第二、第三、及び第四圧縮空間が形成されるものとしたとき、それぞれの流れ方向軸A周りに形成される湾曲方向が、上流側から順に周方向に廻りながら形成される。
【0043】
例えば、流れ方向軸A周りの湾曲方向が、上流から順に、右方向から右上方向を通って上方向に到る第一空間、上方向から左上方向を通って左方向に到る第二空間、左方向から左下方向を通って下方向に到る第三空間、下方向から右下方向を通って再び右方向へ到る第四空間によって捩じれ方向に形成されることで、果実には捩じれ方向全周への均等な搾り変形力が加えられ、搾汁効率がより向上する。
【0044】
図5、図6に示す圧縮手段の対向面3Fは、平面視にて一側方及び他側方へ交互に屈曲する一対の対向面3Fによって、流れ方向に沿って複数の屈曲突部31FT,31RTが断続形成された湾曲圧縮空間3Sを形成している。この場合、例えば運搬手段の流れ方向Fと直交し且つ前記第一側方S1、第二側方S2と異なる第三側方S3、及び、この第三側方S3と相反する第四側方S4へ交互に屈曲変移してなり、流れ方向の全域における第三側方への各湾曲変移量の総量と、流れ方向の全域における第四側方への各湾曲変移量の総量とが略同一であるようにすることができる。
【0045】
具体的には一対の圧縮プレート31P1,31P2はそれぞれ傾斜偏向厚に形成され、波状の対向面が対向距離を所定の圧縮幅3Wに保ちながら並行配置される。このとき各対向面3F1,3F2は図6に示すように、平面視にて流れ方向軸Aに対して傾斜した直線辺FL1、FL2を有し、正面視にて側方凸部FH2及び側方凹部FH1が上下に交互に形成された波形曲線辺を有し、かつ側断面視にてこの波形曲線片が流れ方向に沿って徐々に下方に変移してなる。
【0046】
また直線辺FL1、FL2の端部では、各圧縮プレート31P1,31P2の後方角部31RT、前方角部31FTが異なる突出角度の屈曲突部となっており、複数の圧縮プレートの組が向きを変えてベルト周着方向に沿って離間配置されることで、図5に示すように、異なる突出角度の屈曲突部によって果実皮面に突入しながら果実を圧縮搾汁することができる。このような第一屈曲突部と第二屈曲突部は果実に噛合することで、果皮から直接搾汁しながら果実を流れ方向へ確実に運搬誘導することができる。
【0047】
上記実施例では、前記運搬手段の流れ方向又は流れ方向と直交する方向へ亘って、対向面の対向距離を一定の圧縮幅3Wのままに保持している。運搬手段の流れ方向全体に亘って均等なままの対向距離としながら湾曲圧縮することで、偏りのない均等な搾汁を行うことが可能となり、また運搬方向の位置ずれが生じにくいものとなる。
【0048】
なお他の実施例として、前記運搬手段の流れ方向又は流れ方向と直交する方向へ亘って、対向面の対向距離を大小に繰り返し可変させたものとしてもよい。対向距離を繰り返し可変させることで、圧縮力に変化を与え、総合的な搾汁効率を向上させることができる。
【0049】
(回収手段4)
回収手段4は投入台11の下流側半部から圧縮手段の圧縮区間の下流側端部までの範囲を囲う大型の回収口と回収口から所定の平面視収集位置へ傾斜集合する傾斜収集面と、収集位置から下部に筒状に連通した筒状路とを有してなり、一対のキャタピラ機構の下部に設けられる。筒状路の下端には回収口が開閉可能に設けられ、傾斜収集面を伝って収集された搾汁を回収口4Hから外部に回収する(図1、図2)。回収口は平面視四隅のいずれかの位置に偏向して設けられていてもよく、複数個所が設けられていてもよい。筒状路内又は回収口には図示しない網状のフィルターが設けられ、搾りカスや果肉、種等を濾過回収する。
【0050】
(排出手段5)
排出手段は湾曲圧縮空間3Sの下流側の側縁からさらに下方傾斜して設けられた排出路からなり、搾汁後の果肉や果皮を回収する(図1、図2)。
【0051】
(本発明の果実の搾汁方法)
本発明の果実の搾汁方法は、以下の工程を順に開始し又は同時に行うこととしている。任意の装置によって達成されるが、上記の圧縮型搾汁装置を使用することが好ましい。
・投入された果実の表面に搾汁のための切込みを入れる切込み工程
・運搬において、流れ方向と異なる果実の両側方向から対向圧縮して搾汁する圧縮工程
・圧縮手段によって圧縮搾汁された果汁を回収する果汁回収工程。
【0052】
その他本発明は上述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、一部要素の抽出、他実施例の要素または代替物への置換、削除、或いは実施例間の構成同士の重畳的組み合わせ等、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1H 投入口
11 投入台
12 側枠
2 切込み手段
3F 対向面
3M モータ
3S 湾曲圧縮空間
31C チェーン
31P 圧縮プレート
31H スプロケット
32 駆動軸
33 バックアップローラ
35 従動軸
回収手段4
排出手段5
A 流れ方向軸
F 流れ方向
O 対象物(果実)
S1 第一側方
S2 第二側方
S3 第三側方
S4 第四側方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入口から投入された果実を所定の流れ方向へ運搬する運搬手段と、投入された果実の表面に搾汁のための切込みを入れる切込み手段と、前記運搬手段による運搬において、流れ方向と異なる果実の両側方向から対向圧縮して搾汁する圧縮手段と、圧縮手段によって圧縮搾汁された果汁を回収する回収手段と、搾汁後の果実の皮を排出する排出手段とを具備する圧縮型搾汁装置であって、
前記圧縮手段は、一側方及び他側方へ交互に湾曲する一対の対向面によって連続形成された湾曲圧縮空間を形成し、この湾曲圧縮空間内に前記流れ方向に沿って果実を送り込むことで圧縮搾汁することを特徴とする圧縮型搾汁装置。
【請求項2】
前記圧縮手段の対向面は、運搬手段の流れ方向と直交する第一側方、及び、第一側方と相反する第二側方へ交互に湾曲変移してなり、流れ方向の全域における第一側方への各変移量の総量と、流れ方向の全域における第二側方への各変移量の総量とが略同一である請求項1記載の圧縮型搾汁装置。
【請求項3】
前記圧縮手段の対向面は、運搬手段の流れ方向を中心とした第一側方及びこの第一側方と相反する第二側方への湾曲と、運搬手段の流れ方向を中心として前記第一、第二側方と異なる第三側方及びこの第三側方と相反する第四側方への湾曲と、を組み合せた二次方向に立体湾曲してなり、対向面による湾曲圧縮空間によって、果実に捩れ方向の圧縮力を加える請求項1又は2記載の圧縮型搾汁装置。
【請求項4】
前記圧縮手段の対向面は、運搬手段の流れ方向と直交しかつ前記第一、第二側方と異なる第三側方、及び、第三側方と相反する第四側方へ交互に湾曲変移してなり、流れ方向の全域における第三側方への各変移量の総量と、流れ方向の全域における第四側方への各変移量の総量とが略同一である請求項2又は3のいずれか記載の圧縮型搾汁装置。
【請求項5】
前記圧縮手段の対向面は、一側方及び他側方へ交互に屈曲する一対の対向面によって、流れ方向に沿って複数の屈曲突部が断続形成された湾曲圧縮空間を形成する請求項1,2,3,又は4のいずれか記載の圧縮型搾汁装置。
【請求項6】
前記運搬手段の流れ方向又は流れ方向と直交する方向へ亘って、対向面の対向距離を大小に繰り返し可変させてなる請求項1,2,3,4又は5のいずれか記載の圧縮型搾汁装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか記載の圧縮型搾汁装置を使用した果実の搾汁方法であって、
投入された果実の表面に搾汁のための切込みを入れる切込み工程と、運搬において、流れ方向と異なる果実の両側方向から対向圧縮して搾汁する圧縮工程と、圧縮手段によって圧縮搾汁された果汁を回収する果汁回収工程とを具備することを特徴とする果実の搾汁方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−135237(P2012−135237A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289020(P2010−289020)
【出願日】平成22年12月25日(2010.12.25)
【出願人】(390031473)株式会社垣内 (3)
【Fターム(参考)】