説明

全熱交換素子

【課題】給気流路の直線部分における気流の速度分布が一様となるように改善し、熱交換率を高めた全熱交換素子を提供すること。
【解決手段】直線部分41と直線部分41に対して傾斜し、直線部分41に空気を供給する傾斜部分42とを有する給気流路4と、給気流路4の直線部分41に平行な直線部分51を有する排気流路5とが仕切板2を境にして隣接するように形成した全熱交換素子1において、給気流路4の直線部分41における空気の速度分布が一様となるように、給気流路4の直線部分41に流路断面積を減ずる抵抗片6を設けたので、給気流路4の直線部分41における空気の速度分布が一様となるように改善され、熱交換率が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全熱交換器に搭載され、温度および湿度の異なる空気の間で熱と湿気とを交換する全熱交換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
全熱交換器に搭載され、温度および湿度の異なる空気の間で熱と湿気とを交換する全熱交換素子が広く知られている。全熱交換素子は、仕切板を境にして給気流路と排気流路とが隣接するように構成したもので、給気流路に流れる空気と排気流路に流れる空気との間で熱と湿気とを交換する(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、全熱交換素子には、直交流型と対向流型の二種類がある。対向流型の全熱交換素子は、給気流路と排気流路とが平行となる直線部分を有しており、給気流路と排気流路とが立体交差する直交流型の全熱交換素子よりも熱交換率が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−250585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、対向流型の全熱交換素子に構成された給気流路および排気流路は、直線部分と、直線部分に対して傾斜し、直線部分に空気を供給する傾斜部分とを有し、直線部分と傾斜部分との境界部分は屈曲している。このため、傾斜部分から直線部分に供給された空気の流れは直線部分において偏り、給気流路と排気流路とが重なるように設けてある場合であっても給気流路に流れる空気の速度分布の偏りと排気流路に流れる空気の速度分布の偏りとが異なり、熱交換率を高めることができなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、給気流路の直線部分または排気流路の直線部分における気流の速度分布が一様となるように改善し、熱交換率を高めた全熱交換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、直線部分と該直線部分に対して傾斜し、該直線部分に空気を供給する傾斜部分とを有する給気流路と、前記給気流路の直線部分に平行な直線部分を有する排気流路とが仕切板を境にして隣接するように構成した全熱交換素子において、前記給気流路の直線部分における空気の速度分布が一様となるように、前記給気流路の直線部分に流路断面積を減ずる抵抗片を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記抵抗片を設けた給気流路の直線部分は、前記給気流路の傾斜部分との境界となる境界部であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、直線部分を有する給気流路と、前記給気流路の直線部分に平行な直線部分と該直線部分に対して傾斜し、該直線部分に空気を供給する傾斜部分とを有する排気流路とが仕切板を境にして隣接するように構成した全熱交換素子において、前記排気流路の直線部分における空気の速度分布が一様となるように、前記排気流路の直線部分に流路断面積を減ずる抵抗片を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記抵抗片を設けた排気流路の直線部分は、前記排気流路の傾斜部分との境界となる境界部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる全熱交換素子は、給気流路の直線部分に流路断面積を減ずる抵抗を設けたので、給気流路の直線部分における空気の速度分布が一様となるように改善され、熱交換率が高められる。
【0012】
また、本発明にかかる全熱交換素子は、排気流路の直線部分に流路断面積を減ずる抵抗を設けたので、排気流路の直線部分における空気の速度分布が一様となるように改善され、熱交換率が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である全熱交換素子を搭載した全熱交換器を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態である全熱交換素子を示す概念図である。
【図3】図3は、全熱交換素子に設けられた給気流路を示す平面図である。
【図4】図4は、図3に示したIV−IV断面図である。
【図5】図5は、全熱交換素子に設けられた排気流路を示す平面図である。
【図6】図6は、図5に示したVI−VI断面図である。
【図7】図7は、流路を構成する経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる全熱交換素子の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態である全熱交換素子を搭載した全熱交換器を示す概念図である。本発明の実施の形態である全熱交換素子1を搭載した全熱交換器100は、静止形の全熱交換器であって、温度および湿度の異なる空気の間で熱と湿気とを交換する。
【0016】
図1に示すように、全熱交換器100は、屋外から室内に連通する給気流路101と、室内から屋外に連通する排気流路102とを有している。本発明の実施の形態である全熱交換素子1は、給気流路101と排気流路102とに跨いで設けられ、給気流路101に流れる空気と排気流路102に流れる空気との間で熱と湿気とを交換する。
【0017】
給気流路101の途中には、ファンFが設けてあり、屋外から外気OAを導入し、全熱交換素子1に供給し、全熱交換素子1から室内に給気SAを供給する。同様に、排気流路102の途中には、ファンFが設けてあり、室内から還気RAを導入し、全熱交換素子1に供給し、全熱交換素子1から屋外に排気EAを排出する。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態である全熱交換素子を示す概念図である。図2に示すように、本発明の実施の形態である全熱交換素子1は、対向流型の全熱交換素子であって、平面視六角形を成している。全熱交換素子1は、仕切板2と間隔板3とを交互に積層することにより、仕切板2と仕切板2との間隔が確保され、仕切板2を境にして、給気流路4と排気流路5とが隣接する。そして、仕切板2の積層方向に給気流路4と排気流路5とが交互に設けられ、給気流路4に流れる空気と排気流路5に流れる空気との間で熱と湿気とが交換される。
【0019】
仕切板2は、熱交換に適した平坦な板状体で構成され、一方の面に給気流路4が設けられ、他方の面に排気流路5が設けられる。そして、仕切板2の一方の面に設けられた給気流路4に流れる空気(給気)と他方の面に設けられた排気流路5に流れる空気(排気)との間で熱と湿気とが交換される。仕切板2は、熱交換に適した通気抵抗度が100秒以上の紙、たとえば、ビスコース紙が用いられる。なお、ビスコース紙は、湿潤状態でも十分な引っ張り強度を発揮する。
【0020】
間隔板3は、仕切板2と仕切板2との間隔を確保するとともに、仕切板2と仕切板2との間に給気流路4あるいは排気流路5を構成するためのもので、たとえば、仕切板2と同一の材質で構成される。
【0021】
図3は、全熱交換素子に設けられた給気流路を示す平面図であり、図4は、図3に示したIV−IV断面図である。また、図5は、全熱交換素子に画成された排気流路を示す平面図であり、図6は、図5に示したVI−VI断面図である。
【0022】
上述したように、本発明の実施の形態である全熱交換素子1は、対向流型の全熱交換素子であって、図3に示すように、仕切板2の一方の面に設けられた給気流路4は、直線部分41と、直線部分41に対して右斜め下方に傾き、直線部分41に空気を供給する傾斜部分(吸込側傾斜部分)42と、直線部分41に対して左斜め下方に傾き、直線部分41から空気が供給される傾斜部分(吐出側傾斜部分)43とを有している。したがって、図3に示す給気流路4は、吸込側傾斜部分42から直線部分41に空気を供給し、直線部分41から吐出側傾斜部分43に空気が供給される。なお、給気流路4は、直線部分41に対して左斜め下方に傾いた吐出側傾斜部分43に代えて、直線部分41に対して左斜め上方に傾いた吐出側傾斜部分(図示せず)を有するものとしてもよい。このように吐出側傾斜部分の傾く方向を代えると、給気流路4を構成する経路の経路長が略同一となり、経路長の差による抵抗差を小さなものにできる。
【0023】
また、図5に示すように、仕切板2の他方の面に設けられた排気流路5は、給気流路4に設けた直線部分41に平行な直線部分51と、直線部分51に対して左斜め上方に傾き、直線部分51に空気を供給する傾斜部分(吸込側傾斜部分)52と、直線部分51に対して右斜め上方に傾き、直線部分51から空気が供給される傾斜部分(吐出側傾斜部分)53とを有している。したがって、図5に示す排気流路5は、吸込側傾斜部分52から直線部分51に空気を供給し、直線部分51から吐出側傾斜部分53に空気が供給される。そして、給気流路4の直線部分41に流れる空気と排気流路5の直線部分51に流れる空気とがすれ違うことにより、効率的な熱交換を可能にしている。なお、上述したように、給気流路4の吐出側傾斜部分43の傾く方向を左斜め下方から左斜め上方に代えた場合には、排気流路の吐出側傾斜部分53の傾く方向を右斜め上方から右斜め下方に代えるものとする。このように、吐出側傾斜部分の傾く方向を代えると、給気流路を構成する経路の
経路長が略同一となり、経路長の差による抵抗差を小さなものにできる。
【0024】
そして、給気流路4の吸込側傾斜部分42の端部は、上述した六角形の一辺(図3において右下となる辺)に開口し、吸込口42aとなる。また、給気流路4の吐出側傾斜部分43の端部は、吸込口42aと一つおいて隣り合う他辺(図3において左下となる辺)に開口し、吐出口43aとなる。同様に、排気流路5の吸込側傾斜部分52の端部は、給気流路4の吸込口42aと対向する他辺(図5において左上となる辺)に開口しており、吸込口となる。また、排気流路5の吐出側傾斜部分53の端部は、吸込口52aと一つおいて隣り合う他辺(給気流路4の吐出口と対向する他辺(図5において右上となる辺))に開口し、吐出口53aとなる。
【0025】
また、図3および図4に示すように、本発明の実施の形態である全熱交換素子1は、給気流路4の直線部分41における空気の速度分布が一様となるように、給気流路4の直線部分41に流路断面積を減ずる抵抗片6が設けてある。図3に示すように、抵抗片6を設ける直線部分41は、給気流路4の傾斜部分(吸込側傾斜部分)42との境界となる境界部(屈曲部)が好ましいが、給気流路4の直線部分41における空気の速度分布が一様となるように作用する部位であれば、境界部に限られるものではない。
【0026】
また、図5および図6に示すように、本発明の実施の形態である全熱交換素子1は、排気流路5の直線部分51における空気の速度分布が一様となるように、排気流路5の直線部分51に流路断面積を減ずる抵抗片7が設けてある。図5に示すように、抵抗片7を設ける直線部分51は、排気流路5の傾斜部分(吸込側傾斜部分)52との境界となる境界部(屈曲部)が好ましいが、排気流路5の直線部分51における空気の速度分布が一様となるように作用する部位であれば、境界部に限られるものではない。
【0027】
上述した本発明の実施の形態である全熱交換素子1は、給気流路4の排気流路5との間で熱と湿気とを交換する直線部分41における空気の速度分布が一様となるように、給気流路4の直線部分41に流路断面積を減ずる抵抗片6を設けたので、給気流路4の直線部分41における空気の速度分布が一様となるように改善され、熱交換率が高められる。
【0028】
また、排気流路5の給気流路4との間で熱と湿気とを交換する直線部分51における空気の速度分布が一様となるように、排気流路5の直線部分51に流路断面積を減ずる抵抗片7を設けたので、排気流路5の直線部分51における空気の速度分布が一様となるように改善され、熱交換率が高められる。
【0029】
たとえば、図7に示すように、四つの経路を構成し、最も長い経路を経路A、最も短い経路を経路Bとする。そして、経路Aに抵抗片を設けない場合において、経路Aの抵抗を100とすれば経路Bの抵抗が55となる。一方、経路Aの境界部(屈曲部)に抵抗片Rを設けた場合において、経路Aの抵抗を100とすれば経路Bの抵抗が80となる。このことは、空気の流入速度、経路差があっても流路断面積が減ずるように流路の直線部に抵抗片Rを設けると、流路の直線部分を流れる空気の速度分布が改善され、全熱交換素子の熱交換率を高めることができることを意味する。
【0030】
なお、上述した実施の形態では、給気流路4の直線部分41に抵抗片6を設けるとともに、排気流路5の直線部分51に抵抗片7を設けることとしたが、給気流路4の直線部分41あるいは排気流路5の直線部分51のいずれか一方に抵抗6,7を設けた場合であっても流路の直線部分を流れる空気の速度分布が改善され、熱交換率が高められる。
【符号の説明】
【0031】
1 全熱交換素子
2 仕切板
3 間隔板
4 給気流路
41 直線部分
42 吸込側傾斜部分
42a 吸込口
43 吐出側傾斜部分
43a 吐出口
5 排気流路
51 直線部分
52 吸込側傾斜部分
52a 吸込口
53 吐出側傾斜部分
53a 吐出口
6 抵抗片
7 抵抗片
100 全熱交換器
101 給気流路
101 給気流路
102 排気流路
F ファン
OA 外気
SA 給気
RA 還気
EA 排気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線部分と該直線部分に対して傾斜し、該直線部分に空気を供給する傾斜部分とを有する給気流路と、前記給気流路の直線部分に平行な直線部分を有する排気流路とが仕切板を境にして隣接するように構成した全熱交換素子において、
前記給気流路の直線部分における空気の速度分布が一様となるように、前記給気流路の直線部分に流路断面積を減ずる抵抗片を設けたことを特徴とする全熱交換素子。
【請求項2】
前記抵抗片を設けた給気流路の直線部分は、前記給気流路の傾斜部分との境界となる境界部であることを特徴とする請求項1に記載の全熱交換素子。
【請求項3】
直線部分を有する給気流路と、前記給気流路の直線部分に平行な直線部分と該直線部分に対して傾斜し、該直線部分に空気を供給する傾斜部分とを有する排気流路とが仕切板を境にして隣接するように構成した全熱交換素子において、
前記排気流路の直線部分における空気の速度分布が一様となるように、前記排気流路の直線部分に流路断面積を減ずる抵抗片を設けたことを特徴とする全熱交換素子。
【請求項4】
前記抵抗片を設けた排気流路の直線部分は、前記排気流路の傾斜部分との境界となる境界部であることを特徴とする請求項3に記載の全熱交換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−127602(P2012−127602A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280940(P2010−280940)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000120401)荏原実業株式会社 (31)