説明

全球型映像施設

【課題】 球体の内壁をスクリーンとして全球に渡って映像を投映する映像施設において、プロジェクターの存在が視界に入ることにより観客の視覚の妨げとなることを防止する。
【解決手段】 球体Dの内壁をスクリーンとして全球に渡って映像を投映する映像施設にして、球体の中央を貫通するように橋梁状の通路10を設け、通路の両端を球体の内外に開口した一対の出入り口D1、D2と連結した全球型映像施設において、上記の出入り口のそれぞれの周囲に複数台のプロジェクターP1〜P12を配置し、各プロジェクターの画像を対面するスクリーンS1〜S12の分割領域に投映し、それらの分割領域の画像をつなぎ合わせて全球を包括する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は映像施設に関し、より詳細には球体の内壁をスクリーンとして全球に渡って映像を投映する映像施設に関する。
【背景技術】
【0002】
球体内の全面に映像が表示される全球映像の構想は古くからあり、究極の映像表現として位置づけられていた。例えば、従来半球状のドームに投映していたプラネタリウムにおいて、全球型のスクリーンを採用することにより天球を再現することが可能となり、より写実的な天体のシミュレーションを実現できる他、観客に恰も宇宙遊泳しているかのような没入感を与えることが可能となる。又、地球上の自然現象をシミュレートする映像においても、海中の映像を例にとれば観客は海底と海面を同時に観察することができ、より実際の現象に近い疑似体験を行うことが可能となる。
【0003】
一方、球状のスクリーンを想定した場合、床面をドームが覆う半球状のドームスクリーンと異なりスクリーン内に観客を位置させる手段がなく、これが全球映像を実現するためのネックとなっていた。従来、そのための手段として球体の中央を貫通するように橋梁状の通路を設けることが特許文献1及び2において公知であった。又、球体の赤道付近に設けた貫通窓から座席を球体外より球体内に対して進退自在に配することが特許文献3において公知であった。
【特許文献1】登録第3027303号実用新案公報
【特許文献2】登録第3105332号実用新案公報
【特許文献3】登録第3099132号実用新案公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、全球に渡って映像を投映する手段を想定した場合、複数のビデオプロジェクターによる投映像をつなぎ合わせて全球を包括する手段が現在のところ最適である。即ち、ここではスクリーンを構成する球体の壁面全周に複数台のプロジェクターを配置し、各プロジェクターの画像を対面するスクリーンの領域に投映し、それらの画像をつなぎ合わせて全球を包括する。
【0005】
複数のビデオプロジェクターによる投映像をつなぎ合わせる技術は半球状のドーム型スクリーンにおいては普及しており、現在の世界の標準は半球を6面の分割領域に分割し、ドームスクリーンの円周上に沿って配した6台のプロジェクターにより各領域に投映する方式である。よって、上記方式を全球型映像施設に応用した場合、球体の赤道面に沿って12台のプロジェクターのための12個の映写窓が開口することになる。しかしながら、これは映像の画面の最も見やすい箇所に映写窓が位置することになり、観客にとって目障りであり、没入館を大いに損なうこととなった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は前記の従来技術の問題点を解消するためにプロジェクターを観客にとって目障りでない箇所に位置させることに意を払ったものであり、球体の内壁をスクリーンとして全球に渡って映像を投映する映像施設にして、球体の中央を貫通するように橋梁状の通路を設け、通路の両端を球体の内外に開口した一対の出入り口と連結した全球型映像施設において、上記の出入り口のそれぞれの周囲に複数台のプロジェクターを配置し、各プロジェクターの画像を対面するスクリーンの分割領域に投映し、それらの分割領域の画像をつなぎ合わせて全球を包括することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
特許文献1及び2において公知の、球体の中央を貫通するように橋梁状の通路を設ける構造は、観客が球体の中心に位置することを可能にするので球体内の全面に投映される映像を鑑賞するには最適の手段である。この場合、通路上には複数の観客が存在するので、心理的に観客の視線は通路と直交する方向の上下に向けられ、通路自体の前後に向けられる場合でも他の観客を避けるためにかなり高い角度を見上げることが予想される。
【0008】
この発明は前記の観客の心理に着目して創作されたものであり、通路の一対の出入り口のそれぞれの周囲に複数台のプロジェクターを配置することにより、観客の視線の死角領域にプロジェクターを位置させ、観客の没入館を損なうことを防止している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。図2及び図3はこの発明の映像施設の一例を示す図である。図中符号Dは内面をスクリーン面とした中空の球体を指す。上記球体Dのスクリーン面には全球に渡ってプロジェクターにより映像が投映される。
【0010】
この実施例においては、以上の球体Dは映像施設の建物本体Bに合体した建築物として構築され、この実施例では球体Dとして内径12.7m程度のものを想定している。球体Dの赤道付近の前後には球体の内外に開口した一対の出入り口D1、D2が設けられ、上記の出入り口には球体の中央を貫通するように橋梁状の通路10が架け渡される。一方、建物本体Bには上記通路10に連結される入退室路B1、B2を前後に設けることにより、観客は建物本体の一方の口から球体D内に入館して通路10上で映像を鑑賞し、そのまま他方の口から退館できるようにしている。
【0011】
図1はこの発明の映像施設におけるプロジェクターの配置及び投映画像の分割領域に関する第1実施例を示す図である。図中符合P1〜P12はプロジェクターであり、ここでは画像表示素子の画像を光学系を介してスクリーンに投映するビデオプロジェクターを想定している。この実施例においては、一対の出入り口D1、D2に近接してそれぞれの周囲に6台のプロジェクターP7〜P12、P1〜P6を配置し、各プロジェクターの画像を対面するスクリーンの6箇所のスイカ割り状の分割領域S7〜S12、S1〜S6(図中符号において仮想線で囲んだ符号はスクリーンの裏側に採番したことを示す。)に投映し、合計12箇所の分割領域の画像をつなぎ合わせて全球を包括している。この場合、ここでは一対の出入り口D1、D2のそれぞれから対面するスクリーンの各分割領域に投映するに際し、各分割領域を台形状とし、台形の底辺を全球の子午線M上に揃えることにより対面するスクリーンの半球の範囲内に各分割領域を収めている。又、各半球同士の分割領域S7〜S12、S1〜S6は子午線Mを挟んだ対称形状としており、それに伴いプロジェクターP7〜P12とP1〜P6も対称位置に配している。
【0012】
尚、この実施例において各半球の分割領域を6箇所としているのは、本願出願当時に流通しているプロジェクターの画像表示素子のアスペクト比を考慮した場合に素子の有効面積を最大限に活用するための理由によるものである。よって、将来的にプロジェクターの画像表示素子のアスペクト比が変化した場合は、それに伴い分割数も変化することは勿論である。
【0013】
図6はこの発明の映像施設におけるプロジェクターの配置及び投映画像の分割領域に関する第2実施例を示す図である。この実施例においては前記の第1実施例の場合においてプロジェクターP7〜P12とP1〜P6を対称位置に配することにより各半球同士の分割領域S7〜S12、S1〜S6を子午線Mを挟んだ対称形状としていたのに対し、各半球同士の分割領域S7〜S12、S1〜S6を子午線上で30度ずらした配置としている。
【0014】
図7はこの発明の映像施設におけるプロジェクターの配置及び投映画像の分割領域に関する第3実施例を示す図である。この実施例においては前記の第1実施例及び第2実施において各分割領域を台形状とし、台形の底辺を全球の子午線上に揃えることにより対面するスクリーンの半球の範囲内に各分割領域を収めていたのに対し、各半球の6箇所の分割領域S7〜S12、S1〜S6を底辺が三角状に突出した変形台形状とし、上記の三角状に突出した箇所を子午線からプロジェクター側の半球に張り出させ、子午線上で30度ずらすことによりそれぞれの半球から互いに張り出した分割領域の三角状に突出した箇所の斜面同士をつなぎ合わせる配置としている。
【0015】
例えば最近開発されたアスペクト比が若干横長のDLP素子を採用したプロジェクターを使用する場合には、この実施例の分割方式は素子の有効面積を最大限に活用することができ有用である。理解を容易にするために、前記第1実施例及び第2実施例において想定しているプロジェクターの縦1024ピクセル、横1280ピクセルの画像表示素子Cに表示される画像C1と不使用領域C2の関係を図4に、この実施例において想定しているプロジェクターの縦1024ピクセル、横1400ピクセルの画像表示素子Cに表示される画像C1と不使用領域C2の関係を図5にそれぞれ示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の映像施設のプロジェクターの配置及び投映画像の分割領域の第1実施例を示すための構成図。
【図2】この発明の映像施設の一部切り欠き側面図。
【図3】この発明の映像施設の一部切り欠き平面図。
【図4】第1実施例及び第2実施例におけるプロジェクターの画像表示素子の平面図。
【図5】第3実施例におけるプロジェクターの画像表示素子の平面図。
【図6】この発明の映像施設のプロジェクターの配置及び投映画像の分割領域の第2実施例を示すための構成図。
【図7】この発明の映像施設のプロジェクターの配置及び投映画像の分割領域の第3実施例を示すための構成図。
【符号の説明】
【0017】
D 球体
D1 出入り口
D2 出入り口
P1〜P12 プロジェクター
S1〜S12 投映画像の分割領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体の内壁をスクリーンとして全球に渡って映像を投映する映像施設にして、球体の中央を貫通するように橋梁状の通路を設け、通路の両端を球体の内外に開口した一対の出入り口と連結した全球型映像施設において、上記の出入り口のそれぞれの周囲に複数台のプロジェクターを配置し、各プロジェクターの画像を対面するスクリーンの分割領域に投映し、それらの分割領域の画像をつなぎ合わせて全球を包括することを特徴とする全球型映像施設。
【請求項2】
一対の出入り口のそれぞれの周囲に6台のプロジェクターを配置し、各プロジェクターの画像を対面するスクリーンの6箇所の分割領域に投映し、合計12箇所の分割領域の画像をつなぎ合わせて全球を包括する請求項1記載の全球型映像施設。
【請求項3】
一対の出入り口のそれぞれから対面するスクリーンの各分割領域に投映するに際し、各分割領域を台形状とし、台形の底辺を全球の子午線上に揃えることにより対面するスクリーンの半球の範囲内に各分割領域を収める請求項1又は2記載の全球型映像施設。
【請求項4】
一対の出入り口のそれぞれから対面するスクリーンの各分割領域に投映するに際し、各分割領域を底辺が三角状に突出した変形台形状とし、上記の三角状に突出した箇所を子午線からプロジェクター側の半球に張り出させ、それぞれの半球から互いに張り出した分割領域の三角状に突出した箇所の斜面同士をつなぎ合わせる請求項1又は2記載の全球型映像施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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