説明

公共枡更生部材および公共枡更生方法

【課題】容積の減少をほとんど招くことなく公共枡を更生することを可能にする。
【解決手段】インバート部11を更生可能なインバート部更生部材22と、立上管部12を更生可能な立上管部更生部材23とを、それぞれ別個に備える。インバート部更生部材22が、インバート部11とほぼ同じ大きさかインバート部11よりも若干小さい平面形状を有すると共に、上部開口部14から挿入可能な大きさに変形可能およびインバート部11をほぼ覆い得る大きさに形態変更可能な
形態変更可能インバート部更生部材によって構成される。立上管部更生部材23が、丸めて上部開口部14から挿入可能で、拡げることにより立上管部12の内面をほぼ覆うことが可能なシート状部材25によって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容積の減少をほとんど招くことなく公共枡を更生することを可能にした公共枡更生部材および公共枡更生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
公共下水道においては、宅地と公地との境界部分に点検用の公共枡が設けられている。
【0003】
そして、このような既設の公共枡が老朽化した場合、地面を掘削して公共枡を新しい物に交換する必要があるが(開削工法)、地上状況などにより地面を掘削することが困難な場合には、地面を掘削せずに既設の公共枡を更生して延命化を図る必要が生じる。このような公共枡の更生手段には、公共枡の内部に公共枡更生部材を取付けるものがある(非開削工法)。
【0004】
このような公共枡の更生手段については、特許文献1〜特許文献3などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3448034公報
【特許文献2】特許第4132995公報
【特許文献3】特許第4219074公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記各特許文献に記載された公共枡の更生手段では、更生後の公共枡の容量が極端に小さくなってしまうという問題があった。また、公共枡更生部材が、公共枡の上部開口部よりも大きなものである場合には、公共枡更生部材を公共枡の中へ入れるために、上部開口部およびその周辺を掘削する必要が生じるという問題があった。更に、公共枡への下水の流入口の位置が通常とは異なるような場合には、流入口の位置に対応するための部材が別途必要になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、少なくとも、底面のインバート部と、該インバート部の周縁部から筒状に立上がる立上管部と、該立上管部の上端部から縮径しつつ上方へ向かって延びる斜壁部と、該斜壁部の上側に設けられて前記インバート部よりも口径の小さい上部開口部とを有する既設の公共枡を更生するための公共枡更生部材であって、前記インバート部を主に更生可能なインバート部更生部材と、前記立上管部を主に更生可能な立上管部更生部材とを、それぞれ別個に備え、前記インバート部更生部材が、前記インバート部とほぼ同じ大きさかインバート部よりも若干小さい平面形状を有すると共に、前記上部開口部から挿入可能な大きさに形態変更可能および前記インバート部をほぼ覆い得る大きさに形態復帰可能な形態変更可能インバート部更生部材によって構成され、前記立上管部更生部材が、丸めて前記上部開口部から挿入可能で、拡げることにより前記立上管部の内面をほぼ覆うことが可能なシート状部材によって構成されたことを特徴とする。
請求項2の発明は、前記インバート部更生部材が、前記上部開口部から挿入可能な大きさに変形可能および前記インバート部をほぼ覆い得る大きさに復帰可能な変形復帰部材によって構成されたことを特徴とする。
請求項3の発明は、前記インバート部が、公共枡の流出口へ向かって下り勾配に傾斜するインバート溝と、該インバート溝へ向かって下り勾配に傾斜する傾斜面部とを有すると共に、前記インバート部更生部材が、前記インバート溝と前記傾斜面部との境界部分周辺に、変形復帰可能な変形復帰部を有することを特徴とする。
請求項4の発明は、前記インバート部更生部材が、前記上部開口部から挿入可能な大きさに分解可能および前記インバート部をほぼ覆い得る大きさに組立可能な分解組立部材によって構成されたことを特徴とする。
請求項5の発明は、前記インバート部更生部材が、少なくとも流入口側部分と流出口側部分とに分割されたことを特徴とする。
請求項6の発明は、前記インバート部更生部材が、周縁部の少なくとも一部に、前記立上管部更生部材の下端部を収容保持可能な下部収容部を有し、前記立上管部更生部材が、一方の側縁部に、他方の側縁部を収容保持可能な側縁部収容部を有することを特徴とする。
請求項7の発明は、前記インバート部更生部材が、周縁部に前記立上管部の下部を構成する下部立上壁部を一体に有し、該下部立上壁部の上縁部に前記下部収容部を有すると共に、前記下部立上壁部の前記インバート溝と対応する位置に、流出口と合致する円形の管口を設けたことを特徴とする。
請求項8の発明は、前記インバート部更生部材の前記インバート部側の面、または、前記立上管部更生部材の前記立上管部側の面の少なくとも一方に、前記インバート部と前記インバート部更生部材との間、または、前記立上管部と前記立上管部更生部材との間に注入される裏込材に食込保持可能なアンカー部を設けたことを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の公共枡更生部材を用いて公共枡を更生する公共枡更生方法であって、公共枡底面のインバート部とほぼ同じ大きさかインバート部よりも若干小さい平面形状を有するインバート部更生部材を、形態変更させて公共枡の上部開口部から内部へ挿入した後、公共枡の内部で形態復帰させて、インバート部をほぼ覆うように設置し、シート状部材によって構成された立上管部更生部材を、丸めて公共枡の上部開口部から内部へ挿入した後、公共枡の内部で拡げて、公共枡の立上管部内面をほぼ覆うように設置し、立上管部と立上管部更生部材との間、および、インバート部とインバート部更生部材との間に裏込材を注入して、立上管部更生部材およびインバート部更生部材を、裏込材にて立上管部およびインバート部にそれぞれ固定することを特徴とする。
請求項10の発明は、前記形態変更の際に、変形復帰部材によって構成されたインバート部更生部材の形状を変形させると共に、前記形態復帰の際に、変形復帰部材によって構成されたインバート部更生部材の形状を復帰させることを特徴とする。
請求項11の発明は、前記形態変更の際に、分解組立部材によって構成されたインバート部更生部材を分解させると共に、前記形態復帰の際に、分解組立部材によって構成されたインバート部更生部材を一体的に組立てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、部品点数を抑えてコストを下げると共に、組付工数を少なくして公共枡を容易に更生することが可能となる。また、容積の減少をほとんど招くことなく公共枡を更生することが可能になると共に、インバート部更生部材や立上管部更生部材を中に入れるために上部開口部や斜壁部を掘削する必要をなくすことができる。更に、公共枡に対する流入口の位置が通常とは異なるような場合であっても、立上管部更生部材の流入口に相当する位置を削孔することによって直接対処することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】公共枡の側方断面図である。
【図2】図1の公共枡に本発明の実施例1にかかる公共枡更生部材を取付けた状態を示す側方断面図である。
【図3】図2を流出口側から見た部分断面図である。
【図4】図2のインバート部更生部材の斜視図である。
【図5】図4のインバート部更生部材を折畳んだ状態を示す斜視図である。
【図6】折畳んだインバート部更生部材を上部開口部から挿入した状態を示す図である。
【図7】挿入したインバート部更生部材を公共枡の内部で拡げる状態を示す図である。
【図8】図2の立上管部更生部材の斜視図である。
【図9】図8の立上管部更生部材を丸めて上部開口部から挿入する状態を示す図である。
【図10】丸めた立上管部更生部材を公共枡の内部で拡げる途中の状態を示す図である。
【図11】丸めた立上管部更生部材を公共枡の内部で拡げた状態を示す図である。
【図12】変形復帰部としてのヒンジ部を示すインバート部更生部材の底面図である。
【図13】変形復帰部としての弾性連結部材を示すインバート部更生部材の底面図である。
【図14】変形復帰部としての変形可能形状部を示すインバート部更生部材の側方断面図である。
【図15】変形復帰部としての樹脂ヒンジを示すインバート部更生部材の側方断面図である。
【図16】裏込材注入工程における風船状部材を示す図である。
【図17】裏込材注入工程における裏込材を注入する隙間を示す図である。
【図18】実施例2にかかるインバート部更生部材を示す分解した斜視図であり、(a)は流入口側部分、(b)は流出口側部分である。
【図19】図18の流入口側部分を示す図であり、(a)は外側から見た側面図、(b)は平面図、(c)は内側から見た側面図である。
【図20】図18の流出口側部分を示す図であり、(a)は内側から見た側面図、(b)は平面図、(c)は外側から見た側面図である。
【図21】図18の流入口側部分に現場で管口を形成する状態を示す斜視図である。
【図22】実施例2の変形例にかかるインバート部更生部材を示す分解した平面図であり、(a)は流入口側部分、(b)は流出口側部分である。
【図23】(a)は流入口側部分を内側から見た側面図、(b)は流出口側部分を外側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
公共下水道においては、宅地と公地との境界部分(の公地側)に点検用の公共枡が設けられている。
【0011】
そして、このような既設の公共枡が老朽化した場合、地面を掘削して公共枡を新しい物に交換する必要があるが(開削工法)、地上状況などにより地面を掘削することが困難な場合には、地面を掘削せずに既設の公共枡を更生して延命化を図る必要が生じる。このような公共枡の更生手段には、公共枡の内部に公共枡更生部材を取付けるものがある(非開削工法)。
【0012】
この発明は、上記した非開削工法に関するものである。
【0013】
以下、本発明を具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1〜図17は、この実施例1およびその変形例を示すものである。
【0015】
<構成>以下、構成について説明する。
【0016】
先ず、図1は、公共枡1の側方断面図である。この公共枡1は、宅地2と公地3との境界部分(の公地3側)の地中に埋設されている。公共枡1の底部周辺には、宅地2側からの下水流入管4が接続される流入口5と、公地3側の下水流出管6へ接続される流出口7とが設けられている。なお、流入口5については、宅地2側の状況によっては、この図とは異なる位置(高さ)に設けられることがある。流出口7については、この図の位置に一定して設けられる。
【0017】
このような公共枡1は、少なくとも、底面のインバート部11と、このインバート部11の周縁部から筒状に立上がる立上管部12と、この立上管部12の上端部から縮径しつつ上方へ向かって延びる斜壁部13と、この斜壁部13の上側に設けられてインバート部11よりも口径の小さい上部開口部14とを有している。上部開口部14には、蓋部材15が着脱自在に取付けられる。インバート部11、立上管部12、斜壁部13、上部開口部14は、それぞれ独立したコンクリート製などのブロック状の部材(インバート部構成部材、立上管構成部材、斜壁部構成部材、上部開口部構成部材)によって構成され、これらを上下方向に積重ねることによって公共枡1が構成されている。なお、立上管部12を構成する立上管構成部材については、2段構成となっているが、単段でも3段以上であっても良い。この場合、少なくともインバート部11と立上管部12とは、平面視円形状のものとされている。また、斜壁部13と上部開口部14については、平面視円形状のものや矩形状のものなどが存在する。
【0018】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0019】
既設の公共枡1が老朽化した場合に、図2、図3に示すような公共枡更生部材21を用いて公共枡1を更生し得るようにする。公共枡更生部材21は、樹脂製のものとされる。公共枡更生部材21に使用される樹脂としては、例えば、塩化ビニール樹脂などがある。
【0020】
(構成1−1)公共枡更生部材21について
まず、公共枡更生部材21は、インバート部11を更生可能なインバート部更生部材22と、立上管部12を更生可能な立上管部更生部材23とを、それぞれ別個に備えるようにする。
【0021】
そして、インバート部更生部材22を、図4に示すように、インバート部11とほぼ同じ大きさかインバート部11よりも若干小さい平面形状を有するものとする。
このインバート部更生部材22を、図5〜図7に示すように、上部開口部14(図2参照。以下同様)から挿入可能な大きさに形態変更可能、および、インバート部11をほぼ覆い得る大きさに形態復帰可能な形態変更可能インバート部更生部材によって構成する。
一方、上記立上管部更生部材23を、図8〜図11に示すように、丸めて上部開口部14(図9参照。以下同様)から挿入可能で、拡げることにより立上管部12の内面をほぼ覆うことが可能なものとする。この立上管部更生部材23をシート状部材25によって構成する。
【0022】
ここで、シート状部材25は、好ましくは、容易に折畳めるような薄手のものではなく、丸めたり広げたりすることができる程度の柔軟性と自己保形性とを有する比較的厚手のもの(数ミリ程度以上のもの)などとする。
【0023】
(構成1−2)
このインバート部更生部材22(形態変更可能インバート部更生部材)を、上部開口部14から挿入可能な大きさに変形可能およびインバート部11をほぼ覆い得る大きさに復帰可能な変形復帰部材24によって構成する。
【0024】
ここで、インバート部更生部材22の変形は、例えば、後述するように、折畳みや折曲げなどとする。
また、インバート部11は、後述するように、流出口7へ向かって下り勾配に傾斜しているので、これに伴い、立上管部更生部材23となるシート状部材25も、下縁部をインバート部11の傾斜に合わせて斜めにカットされたものなどとする。
【0025】
(構成1−3)変形復帰部26について
図3に示すように、上記したインバート部11は、流出口7へ向かって下り勾配に傾斜するインバート溝11aと、このインバート溝11aへ向かって下り勾配に傾斜する傾斜面部11bとを有している。
【0026】
そして、このインバート部11の形状に合わせて、インバート部更生部材22(変形復帰部材24)を、インバート溝11aと傾斜面部11bとの境界部分周辺に、変形復帰可能な変形復帰部26を有するものとする。
【0027】
ここで、一般的なインバート部11の詳細について説明すると、インバート溝11aは、インバート部11の直径方向へ延びるものとされる。そして、インバート溝11aは、ほぼ半円形状の溝断面を有するものとされる。また傾斜面部11bは、インバート溝11aの両側部に位置するものとされる。傾斜面部11bは、インバート部11の周縁部に沿った円弧状の縁部と、インバート溝11aの側縁部に沿った直線状の縁部とを有する平面視ほぼ円弧面状の平坦な傾斜面とされる。
【0028】
よって、インバート部更生部材22も、インバート溝11aを更生するインバート溝更生部22aと、傾斜面部11bを更生する傾斜面部更生部22bとを有するものとされる。
インバート溝更生部22aも、インバート溝11aと同様に、インバート部11の直径方向へ延びるほぼ半円形状の溝断面を有するものとされる。インバート溝更生部22aは、インバート溝11aの上側に設置される。
また、傾斜面部更生部22bも、傾斜面部11bと同様に、インバート溝更生部22aの両側部に位置して円弧状の縁部と直線状の縁部とを有する平面視ほぼ円弧面状の平坦な傾斜面とされる。傾斜面部更生部22bは、傾斜面部11bの上側に設置される。
【0029】
そして、上記した変形復帰部26は、インバート溝更生部22aの側部と、傾斜面部更生部22bの縁部との境界線の位置に部分的または全体的に設けられる。
【0030】
なお、インバート部更生部材22は、後述する裏込材の注入時に、容易に浮き上がったり、容易に変形したりしないような、自己保形性を有するものであることが機能的および構造的には好ましい。そのため、変形復帰部26についても、インバート部更生部材22の自己保形性を損わないようなものとするのが好ましい。
【0031】
以下、変形復帰部26の具体的な例について説明する。
【0032】
先ず、変形復帰部26は、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとを別部品で構成したものに対して設けることができる。この場合には、図12に示すように、変形復帰部26を、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの間を連結可能なヒンジ部材26aとすることができる。
【0033】
ヒンジ部材26aは、金属製や樹脂製のものを使用することができる。ヒンジ部材26aは、固定蝶番や、抜差蝶番や、その他のものを使用することができる。ヒンジ部材26aは、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの境界線の位置(の裏面側や表面側など)に部分的に設けられる。変形復帰部26をヒンジ部材26aとする場合には、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの境界線に沿って(裏面側や表面側などに)シールテープ27などのシール材を貼付けて隙間をシールし得るようにするのが好ましい。また、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの間にできる隙間は、インバート部11への設置後に接着剤や充填剤や接合剤などによって埋めることによってシール性を確保することができる。
【0034】
また、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとを別部品で構成したものに対して設ける場合には、上記の他に、図13に示すように、変形復帰部26を、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの間を結合可能な弾性連結部材26bなどとすることができる。弾性連結部材26bには、柔軟なゴム系材料のものを使用することができる。変形復帰部26としての弾性連結部材26bは、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの境界線に沿い全体的に設けられて、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの間の隙間をシールする機能を有する。弾性連結部材26bは、例えば、接着やインサート成形などによってインバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの間に設けることができる。
【0035】
一方、変形復帰部26は、例えば、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとを一体部品で構成したものに対して設けることができる。この場合には、図14に示すように、変形復帰部26を、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの間に一体形成される変形可能形状部26cとすることができる。この変形復帰部26としての変形可能形状部26cは、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの境界線に沿って全体的に設けられる。この変形可能形状部26cは、下方迂回形状によって生じる変形能を利用したものとされる。変形可能形状部26cは、単段または多段に形成することができる。変形可能形状部26cの表面の凹凸は、汚物などの詰まりを防止し得るようにするために、インバート部11への設置後に接着剤や充填剤や接合剤などによって埋めることができる。
【0036】
また、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとを一体部品で構成したものに対して設ける場合には、上記の他に、図15に示すように、変形復帰部26を、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの間に一体形成される樹脂ヒンジ26dとすることができる。この変形復帰部26としての樹脂ヒンジ26dは、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの境界線に沿って全体的に設けられる。この樹脂ヒンジ26dは、薄肉化によって生じる変形能を利用したものとされる。この樹脂ヒンジ26dは、好ましくは、インバート部更生部材22の裏面側(下面側)に凹設形成する。これにより、表面側(上面側)の凹凸を無くして滑らかな形状とすることができる。
【0037】
更に、特に図示しないが、変形復帰部26を、変形可能形状部26cと樹脂ヒンジ26dとを、組合せたものとしても良い。
【0038】
(構成1−4)下部収容部22cおよび側縁部収容部23aについて
図4に示すように、インバート部更生部材22を、周縁部の少なくとも一部に、立上管部更生部材23の下端部を収容保持可能な下部収容部22cを有するものとする。
【0039】
また、図8に示すように、立上管部更生部材23が、一方の側縁部に、他方の側縁部を収容保持可能な側縁部収容部23aを有するものとする。
【0040】
ここで、下部収容部22cは、インバート部更生部材22と立上管部更生部材23との間の組立部となるものである。この下部収容部22cは、傾斜面部更生部22bの円弧状の縁部から立上がる立上壁とされている。この下部収容部22cは、立上管部更生部材23の下縁部と重複される重複部である。
【0041】
また、側縁部収容部23aは、立上管部更生部材23自体の組立部となるものである。この側縁部収容部23aは、立上管部更生部材23を円筒状に自己保持させるものである。側縁部収容部23aは、立上管部更生部材23の一方の側縁部に設けた二股状差込部とされている。この二股状差込部は、立上管部更生部材23の一方の側縁部に対して、一体に形成しても良いし、別体の縁部材を接着やボルトなどで取付けたものとしても良い。
【0042】
(構成1−5)アンカー部28について
図12〜図15のいずれかに示すように、インバート部更生部材22のインバート部11側の面、または、立上管部更生部材23の立上管部12側の面の少なくとも一方に、インバート部11とインバート部更生部材22との間、または、立上管部12と立上管部更生部材23との間に注入される裏込材に食込保持可能なアンカー部28を設けるようにする。
【0043】
ここで、アンカー部28は、単なる突起状のものとしても良いが、裏込材に係止可能なフック形状や返し形状を有するものとするのが好ましい。例えば、図14に示すように、インバート部更生部材22や立上管部更生部材23の面に対してほぼ面直に立上がる立上部28aと、この立上部28aからほぼ直交する方向へ張出す横張出部28bとを有する逆T字状やL字状のものなどとすることができる。但し、アンカー部28の形状や立上部28aに対する横張出部28bの張出角度は、これに限るものではない。
【0044】
このようなアンカー部28は、例えば、図12に示すように、傾斜面部更生部22bに対し、インバート部更生部材22の中心を基準として放射状となるように配置しても良いし、図13に示すように、傾斜面部更生部22bに対し、インバート溝更生部22aの側縁部と垂直な向きとなるように配置しても良い。
【0045】
なお、インバート部更生部材22とインバート部11との間、立上管部更生部材23と立上管部12との間には、全面または部分的に裏込材の注入に必要な隙間S(裏込材注入用隙間、図2、図3参照)が形成される。この場合には、インバート溝更生部22aとインバート溝11aとの間には、上記隙間Sがほとんどできないようにしている。また、傾斜面部更生部22bと傾斜面部11bとの間には、上記隙間Sがほとんどできないようにするか、または、比較的僅少な隙間Sができるようにしている。そして、立上管部更生部材23と立上管部12との間には、相対的に最も大きな隙間Sが形成されるようにしている。なお、上記隙間Sに関しては、これに限るものではなはい。また、裏込材には、例えば、モルタルなどが使用される。
【0046】
(構成1−6)公共枡更生方法について
上記した公共枡更生部材21を用いた以下のような公共枡更生方法によって、公共枡1を更生する。
【0047】
即ち、先ず、図4〜図7に順に示すように、公共枡1底面のインバート部11とほぼ同じ大きさかインバート部11よりも若干小さい平面形状を有して形態変更可能インバート部更生部材によって構成されたインバート部更生部材22を、形態変更させて公共枡1の上部開口部14(例えば、図2参照。以下同様)から内部へ挿入した後、公共枡1の内部で形態復帰させて、インバート部11をほぼ覆うように設置する(インバート部更生部材設置工程)。
【0048】
次に、図8〜図11に順に示すように、シート状部材25によって構成された立上管部更生部材23を、丸めて公共枡1の上部開口部14から内部へ挿入した後、公共枡1の内部で拡げて、公共枡1の立上管部12内面をほぼ覆うように設置する(立上管部更生部材設置工程)。
【0049】
最後に、図16〜図17に示すように、立上管部12と立上管部更生部材23との間、および、インバート部11とインバート部更生部材22との間の隙間Sに裏込材を注入して、立上管部更生部材23およびインバート部更生部材22を、裏込材にて立上管部12およびインバート部11にそれぞれ固定する(裏込材注入工程)。
(構成1−7)より具体的な公共枡更生方法について
より具体的には、インバート部更生部材設置工程において、形態変更の際に、変形復帰部材24(形態変更可能インバート部更生部材)によって構成されたインバート部更生部材22の形状を変形させて公共枡1の上部開口部14(例えば、図2参照。以下同様)から内部へ挿入した後、形態復帰の際に、変形復帰部材24(形態変更可能インバート部更生部材)によって構成されたインバート部更生部材22の形状を公共枡1の内部で復帰させて、インバート部11をほぼ覆うように設置する(インバート部更生部材設置工程)。
【0050】
ここで、図8に示すように、公共枡更生部材21の取付に先立ち、立上管部更生部材23に対し、現場で流入口5と流出口7の位置に、対応する切欠部23bや開口部を設けるようにする。なお、流出口7に対応する切欠部23bについては、位置が決まっているので、予め設けておいても良い。
【0051】
また、上記したインバート部更生部材設置工程では、必要に応じて、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの間にできる隙間や、変形可能形状部26cの凹部などを、接着剤や充填剤や接合剤などによって埋めるようにしても良い。
【0052】
そして、上記した立上管部更生部材設置工程では、立上管部更生部材23の下端部をインバート部更生部材22の下部収容部22cに嵌め合わせ、立上管部更生部材23の一方の側縁部に設けた側縁部収容部23aに、他方の側縁部を嵌め合わせるようにする。更に、必要に応じて、立上管部更生部材23の下端部とインバート部更生部材22の下部収容部22cとの間、および、立上管部更生部材23の側縁部収容部23aと他方の側縁部との間を、接着剤や充填剤や接合剤などによって埋めてシールし得るようにしても良い。
【0053】
更に、上記した裏込材注入工程では、図16に示すように、流入口5と流出口7が裏込材で埋ってしまわないようにするために、または、流入口5や流出口7の部分に段差が生じないようにするために、空気によって膨らますことのできるパッカーなどと呼ばれる風船状部材31を詰めておくようにする。この風船状部材31は、裏込材の硬化後にしぼませて取外すようにする。なお、裏込材は、立上管部12と立上管部更生部材23との間の隙間Sから注入して、インバート部11とインバート部更生部材22との間へと廻り込ませるようにする。
【0054】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0055】
(作用効果1−1)公共枡更生部材21の形態変更について
公共枡更生部材21を、インバート部更生部材22と、立上管部更生部材23との少なくとも2つの部品で構成することにより、部品点数を抑えてコストを下げると共に、組付工数を少なくして公共枡1を容易に更生することが可能となる。
また、インバート部更生部材22を、インバート部11とほぼ同じ大きさかインバート部11よりも若干小さい平面形状を有すると共に、上部開口部14から挿入可能な大きさに形態変更可能およびインバート部11をほぼ覆い得る大きさに形態復帰可能な形態変更可能インバート部更生部材によって構成すると共に、立上管部更生部材23を、丸めて上部開口部14から挿入可能で、拡げることにより立上管部12の内面をほぼ覆うことが可能なシート状部材25によって構成したことにより、容積の減少をほとんど招くことなく公共枡1を更生することが可能になると共に、インバート部更生部材22や立上管部更生部材23を中に入れるために上部開口部14や斜壁部13を掘削する必要をなくすことができる。更に、公共枡1に対する流入口5の位置が通常とは異なるような場合であっても、例えば、シート状部材25からなる立上管部更生部材23の流入口5に相当する位置などを削孔することによって直接対処することが可能となる。
【0056】
(作用効果1−2)変形復帰部材24について
インバート部更生部材22(形態変更可能インバート部更生部材)を、上部開口部14から挿入可能な大きさに変形可能およびインバート部11をほぼ覆い得る大きさに復帰可能な変形復帰部材24によって構成することにより、変形復帰部材24の変形、復帰を利用してインバート部更生部材22を形態変更および形態復帰させることができる。
【0057】
(作用効果1−3)変形復帰部26について
変形復帰部材24によって構成されたインバート部更生部材22が、インバート溝11aと傾斜面部11bとの境界部分、または、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとの境界部分に、変形復帰可能な変形復帰部26を有することにより、上記境界部分の変形復帰部26を変形させることで、機能的および構造的に無理なくインバート部更生部材22を変形復帰し得るものとすることが可能となる。
【0058】
(作用効果1−4)下部収容部22cおよび側縁部収容部23aについて
インバート部更生部材22が、周縁部の少なくとも一部に、立上管部更生部材23の下端部を収容保持可能な下部収容部22cを有することにより、インバート部更生部材22と立上管部更生部材23とを、下部収容部22cにて簡易的に連結し、組立てることができると共に、下部収容部22cを利用して止水性能が得られるようにすることが可能となる。
【0059】
また、立上管部更生部材23が、一方の側縁部に、他方の側縁部を収容保持可能な側縁部収容部23aを有することにより、立上管部更生部材23の一方の側縁部と他方の側縁部とを、側縁部収容部23aにて簡易的に連結し、円筒状に自己保持させることができると共に、側縁部収容部23aを利用して止水性能が得られるようにすることが可能となる。
【0060】
(作用効果1−5)アンカー部28について
インバート部更生部材22のインバート部11側の面、または、立上管部更生部材23の立上管部12側の面の少なくとも一方に、インバート部11とインバート部更生部材22との間、または、立上管部12と立上管部更生部材23との間の隙間Sに注入される裏込材に食込保持可能なアンカー部28を設けたことにより、アンカー部28が裏込材に食込保持されるようになるので、インバート部更生部材22または立上管部更生部材23を、裏込材を介して、インバート部11および立上管部12に対し、より強固に固定することが可能となる。
【0061】
(作用効果1−6)公共枡更生方法について
この実施例の公共枡更生方法によれば、上記した作用効果1−1〜作用効果1−5と同様の作用効果を得ることができる。
【実施例2】
【0062】
図18〜図23は、この実施例2およびその変形例を示すものである。なお、必要に応じて、図1〜図3なども参照する。
【0063】
<構成>以下、構成について説明する。
【0064】
この実施例は、上記実施例1とほぼ同様の構成を含んでいるので、同じ構成については記載を省略する。但し、記載を省略した部分については、実施例1の構成を以てこの実施例の構成とする。なお、この実施例にあって実施例1にない構成、および、実施例1にあってこの実施例1にない構成がある場合には、可能な限り相互に適用し得るものとする。
【0065】
(構成2−1)分解組立部材32について
この実施例では、上記実施例1の構成1−1において、構成1−2に代えて、以下の更生とする。
即ち、インバート部更生部材22(形態変更可能インバート部更生部材)が、公共枡1の上部開口部14から挿入可能な大きさに分解可能およびインバート部11をほぼ覆い得る大きさに組立可能な分解組立部材32によって構成されるようにしている。
【0066】
(構成2−2)分解組立部材32の分割について
既に上記したように、インバート部11が、公共枡1の流出口7へ向かって下り勾配に傾斜するインバート溝11aと、このインバート溝11aへ向かって下り勾配に傾斜する傾斜面部11bとを有している。
そして、このインバート部11の形状に対して、インバート部更生部材22(分解組立部材32)が、少なくとも流入口側部分32a(流入口側分割片)と流出口側部分32b(流出口側分割片)とに分割される。
【0067】
ここで、インバート部更生部材22は、3つ以上に分割することも可能である。但し、分割数が少ない程、構成の簡易化、形態変更や形態復帰の容易化、設置の容易化、止水性の向上などを得るのに有利となるので、より好ましい。この場合には、2分割としている。流入口側部分32aと流出口側部分32bとは、インバート溝11aとほぼ直交する直径に沿って2分割するようにしている。但し、インバート部更生部材22の分割形状や分割方向はこれに限るものではない。
また、インバート部更生部材22の分割部33には、両者を組合可能な組合部を設けるようにする。この組合部は、例えば、重複部34(重複組合部)などとする。この重複部34は、好ましくは、インバート部更生部材22の肉厚の範囲内にて形成されるようにする。更に好ましくは、流入口側部分32aが流出口側部分32bの上に重なるような重複部34にする。そのために、流入口側部分32aの下面側を切欠いて下面側段差部34aを形成すると共に、流出口側部分32bの上面側を切欠いて上面側段差部34bを形成するようにしている。これにより、分割部33は、組合わせた時に流れ方向に対して正段差が形成され易い形状となる。
なお、分割部33には、流入口側部分32aと流出口側部分32bとを嵌合固定可能なロック部を設けるようにしても良い。このロック部は、例えば、下面側段差部34aから下方へ向けて突設された係止爪と、上面側段差部34bに開口形成された爪係止孔とで構成されるものなどとすることができる。
【0068】
(構成2−3)下部立上壁部35について
上記実施例1の構成1−4において、以下のようにする。
即ち、インバート部更生部材22が、周縁部に立上管部12の下部を構成する下部立上壁部35を一体に有するものとする。そして、この下部立上壁部35の上縁部に、上記した下部収容部22cが設けられるものとする。
そして、上記下部立上壁部35のインバート溝11aと対応する位置に、流出口7とほぼ合致する円形の管口36を予め設けておくようにする。
【0069】
ここで、実施例1の下部収容部22cは、立上壁部の一部を兼ねたようなものとされていたが、この実施例では、上記下部立上壁部35は、実施例1の下部収容部22cを若干高くして、その外周側に小さい別の下部収容部22cを設けたようなものとされる。
上記した管口36は、流出口側部分32bの下部立上壁部35に設けられる。下水流出管6は、インバート溝11aに対する設置位置が全て一定とされているため、管口36は、インバート溝11aと対応する位置に予め設けておくことができる。この管口36は、下水流出管6と対応する大きさ(同じか若干小さい大きさ)に予め形成される(既設管口)。そのために、下部立上壁部35は、少なくとも下水流出管6の口径よりも若干大きい高さ寸法を有するものとしておく。なお、下部立上壁部35の外周面側には、管口36(既設管口)と連続し下水流出管6へ挿入される短筒部36a(図20参照)を予め一体に形成するようにしても良い。
一方、流入口側部分32aについては、下水流入管4の設置位置が、現場の状況によってそれぞれ異なっているため、図21に示すように、実際の下水流入管4の設置位置に合わせて現場で後から円形の管口37(現地開削管口)を形成し得るよう、非開削形状にしている。そして、そのために、下部立上壁部35は、少なくとも円形の管口37(現地開削管口)の高さ調整を行うための高さ調整代を有する高さ寸法にしておく。この高さ調整代は、既設の下水流入管4の設置位置の状況を調査して設定することができる。なお、下部立上壁部35は、流入口側部分32a(流入口側分割片)と流出口側部分32b(流出口側分割片)とで、同じ高さにするのが好ましい。
【0070】
(構成2−4)変形例について
また、インバート部更生部材22(形態変更可能インバート部更生部材)を分解組立部材32によって構成した場合には、図22、図23に示すように、インバート溝11aが直線以外の形状(非直線状インバート溝)を有している場合であっても容易に対応し得るようにすることが可能である。
例えば、インバート溝11aが中間部でほぼ90度屈曲したL型溝を有するものである場合(屈曲型インバート溝)、インバート溝更生部22aを図のようなものとする(屈曲型インバート溝更生部22a)。そして、例えば、インバート部更生部材22を、インバート溝11a(またはインバート溝更生部22a)の屈曲部分を通り、この屈曲部分をほぼ2等分する線に沿って流入口側部分32aと流出口側部分32bとに分割するようにする。但し、インバート溝11aの形状、および、インバート部更生部材22の分割形状や分割方向はこれに限るものではない。
【0071】
(構成2−5)具体的な公共枡更生方法について
上記実施例1の構成1−6の公共枡更生方法において、構成1−7の方法に代えて、以下のようにする。
即ち、インバート部構成部材設置工程では、形態変更の際に、分解組立部材32によって構成されたインバート部更生部材22を分解させると共に、形態復帰の際に、分解組立部材32によって構成されたインバート部更生部材22を一体的に組立てるようにする。
【0072】
ここで、インバート部更生部材22の組立ては、流出口側部分32bを先に設置し、その後で、流入口側部分32aを設置するようにする。この際、分割部33は、流出口側部分32bの上に、流入口側部分32aが重なるようにする。そして、ロック部を設けた場合には、下面側段差部34aの係止爪を、上面側段差部34bの爪係止孔に嵌合係止させるようにする。更に、必要に応じて分割部33に、接着剤や充填剤や接合剤などを塗布しておくようにする。これにより、インバート部更生部材22を一体的に組立てられる。
なお、図21に示すように、公共枡更生部材21の取付に先立ち、流入口側部分32aの下部立上壁部35に対し、実際の下水流入管4の設置位置に合わせて円形の管口37(現地開削管口)を形成するようにする。
また、立上管部更生部材設置工程、および、裏込剤注入工程に関しては上記実施例1とほぼ同様である。
【0073】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0074】
(作用効果2−1)分解組立部材32について
インバート部更生部材22(形態変更可能インバート部更生部材)を、上部開口部14から挿入可能な大きさに分解可能およびインバート部11をほぼ覆い得る大きさに組立可能な分解組立部材32によって構成することにより、分解組立部材32の分解、組立てを利用してインバート部更生部材22を形態変更、および、形態復帰させることができる。また、インバート部更生部材22(形態変更可能インバート部更生部材)を、分解組立部材32によって構成することにより、構成の簡易化、および、形態変更や形態復帰の容易化、設置の容易化、止水性の向上などを図ることができる。
【0075】
(作用効果2−2)分解組立部材32の分割について
インバート部更生部材22が、インバート溝更生部22aと傾斜面部更生部22bとを、流入口側部分32aと流出口側部分32bとに分割することにより、機能的および構造的に無理なくインバート部更生部材22を分解、組立てし得るものとすることが可能となる。また、分割部33を組合わせた後に、分割部33に接着剤や充填剤や接合剤などを塗布することなどによって、分割部33に対する止水も容易に行うことができる。
【0076】
(作用効果2−3)下部立上壁部35について
インバート部更生部材22が、周縁部に立上管部12の下部を構成する下部立上壁部35を一体に有することにより、インバート部11と立上管部12との境界部分の止水性を向上することができる。また、下部立上壁部35の上縁部に下部収容部22cを有することにより、下部収容部22cを通常の水位よりも高い位置に設定することができるので、その分、止水性を向上することが可能となる。更に、下部立上壁部35のインバート溝11aと対応する位置に、流出口7と合致する円形の管口36を予め設けておくことにより、管口36を現地で開削する手間をなくすと共に、下水流出管6や流出口7の周辺の止水性を向上することが可能となる。更に、流入口側部分32aの下部立上壁部35を非開削形状としておくことにより、実際の下水流入管4の設置位置に合わせて円形の管口37(現地開削管口)を正確に形成することができる。また、円形の管口36や管口37が、インバート部更生部材22と一体の下部立上壁部35に対して形成されているので、裏込材を注入する際に、上記した風船状部材31を膨らますことによってインバート部更生部材22と立上管部更生部材23とが離れてしまうのを防止することができる。
【0077】
(作用効果2−4)変形例について
インバート部更生部材22(形態変更可能インバート部更生部材)を分解組立部材32として構成することにより、インバート溝11aが直線以外の形状(非直線状インバート溝)を有するものであっても、容易に対応することが可能となる。
【0078】
(作用効果2−5)公共枡更生方法について
この実施例の公共枡更生方法によれば、作用効果2−1〜作用効果2−3と同様の作用効果を得ることができる。また、実施例1の上記した作用効果1−1〜作用効果1−5のうちのいずれかの作用効果を得ることもできる。
【0079】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0080】
1 公共枡
7 流出口
11 インバート部
11a インバート溝
11b 傾斜面部
12 立上管部
13 斜壁部
14 上部開口部
21 公共枡更生部材
22 インバート部更生部材
22c 下部収容部
23 立上管部更生部材
23a 側縁部収容部
24 変形復帰部材(形態変更可能インバート部更生部材)
25 シート状部材
26 変形復帰部
28 アンカー部
31 分解組立部材(形態変更可能インバート部更生部材)
31a 流入口側部分
31b 流出口側部分
33分割部
35下部立上壁部
36 管口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、底面のインバート部と、該インバート部の周縁部から筒状に立上がる立上管部と、該立上管部の上端部から縮径しつつ上方へ向かって延びる斜壁部と、該斜壁部の上側に設けられて前記インバート部よりも口径の小さい上部開口部とを有する既設の公共枡を更生するための公共枡更生部材であって、
前記インバート部を主に更生可能なインバート部更生部材と、前記立上管部を主に更生可能な立上管部更生部材とを、それぞれ別個に備え、
前記インバート部更生部材が、前記インバート部とほぼ同じ大きさかインバート部よりも若干小さい平面形状を有すると共に、
前記上部開口部から挿入可能な大きさに形態変更可能および前記インバート部をほぼ覆い得る大きさに形態復帰可能な形態変更可能インバート部更生部材によって構成され、
前記立上管部更生部材が、丸めて前記上部開口部から挿入可能で、拡げることにより前記立上管部の内面をほぼ覆うことが可能なシート状部材によって構成されたことを特徴とする公共枡更生部材。
【請求項2】
前記インバート部更生部材が、前記上部開口部から挿入可能な大きさに変形可能および前記インバート部をほぼ覆い得る大きさに復帰可能な変形復帰部材によって構成されたことを特徴とする請求項1記載の公共枡更生部材。
【請求項3】
前記インバート部が、公共枡の流出口へ向かって下り勾配に傾斜するインバート溝と、該インバート溝へ向かって下り勾配に傾斜する傾斜面部とを有すると共に、
前記インバート部更生部材が、前記インバート溝と前記傾斜面部との境界部分周辺に、変形復帰可能な変形復帰部を有することを特徴とする請求項2記載の公共枡更生部材。
【請求項4】
前記インバート部更生部材が、前記上部開口部から挿入可能な大きさに分解可能および前記インバート部をほぼ覆い得る大きさに組立可能な分解組立部材によって構成されたことを特徴とする請求項1記載の公共枡更生部材。
【請求項5】
前記インバート部更生部材が、少なくとも流入口側部分と流出口側部分とに分割されたことを特徴とする請求項4記載の公共枡更生部材。
【請求項6】
前記インバート部更生部材が、周縁部の少なくとも一部に、前記立上管部更生部材の下端部を収容保持可能な下部収容部を有し、
前記立上管部更生部材が、一方の側縁部に、他方の側縁部を収容保持可能な側縁部収容部を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の公共枡更生部材。
【請求項7】
前記インバート部更生部材が、周縁部に前記立上管部の下部を構成する下部立上壁部を一体に有し、該下部立上壁部の上縁部に前記下部収容部を有すると共に、
前記下部立上壁部の前記インバート溝と対応する位置に、流出口と合致する円形の管口を設けたことを特徴とする請求項6記載の公共枡更生部材。
【請求項8】
前記インバート部更生部材の前記インバート部側の面、または、前記立上管部更生部材の前記立上管部側の面の少なくとも一方に、前記インバート部と前記インバート部更生部材との間、または、前記立上管部と前記立上管部更生部材との間に注入される裏込材に食込保持可能なアンカー部を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の公共枡更生部材。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の公共枡更生部材を用いて公共枡を更生する公共枡更生方法であって、
公共枡底面のインバート部とほぼ同じ大きさかインバート部よりも若干小さい平面形状をするインバート部更生部材を、形態変更させて公共枡の上部開口部から内部へ挿入した後、公共枡の内部で形態復帰させて、インバート部をほぼ覆うように設置し、
シート状部材によって構成された立上管部更生部材を、丸めて公共枡の上部開口部から内部へ挿入した後、公共枡の内部で拡げて、公共枡の立上管部内面をほぼ覆うように設置し、
立上管部と立上管部更生部材との間、および、インバート部とインバート部更生部材との間に裏込材を注入して、立上管部更生部材およびインバート部更生部材を、裏込材にて立上管部およびインバート部にそれぞれ固定することを特徴とする公共枡更生方法。
【請求項10】
前記形態変更の際に、変形復帰部材によって構成されたインバート部更生部材の形状を変形させると共に、
前記形態復帰の際に、変形復帰部材によって構成されたインバート部更生部材の形状を復帰させることを特徴とする請求項9記載の公共枡更生方法。
【請求項11】
前記形態変更の際に、分解組立部材によって構成されたインバート部更生部材を分解させると共に、
前記形態復帰の際に、分解組立部材によって構成されたインバート部更生部材を一体的に組立てることを特徴とする請求項9記載の公共枡更生方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−197663(P2012−197663A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217506(P2011−217506)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】