説明

公衆トイレ用ごみ箱

【課題】トイレ室の空間を損なうことなく、トイレ使用者にとって利便性が高く、収集の目的とするごみ以外のごみの投入を防止できる公衆トイレ用ごみ箱。
【解決手段】筐体状の本体12と、本体12に収められ、ごみを収容する収容容器40とを有し、本体12には、その前面の上部に、10〜30°の角度で上方に傾いた傾斜面20を設け、傾斜面20には、長さ50〜170mm、幅15〜55mmで開口した、ごみの投入口21を形成し、本体12には、投入口21を塞ぎ、かつ、揺動自在な蓋体22を設け、本体12には、傾斜面20の下方に収容容器40を取り出す取出口31を形成し、取出口31を塞ぐ扉体32を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公衆トイレ用ごみ箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電車車両、駅構内、公園、ホテル等の公衆トイレでは、トイレ室内の空間確保のため、壁に嵌めこまれたごみ箱が用いられている。このような公衆トイレ用ごみ箱としては、トイレ室内に面した壁にごみを投入する投入口を設け、壁の裏側にごみを収納する本体を設けたものが知られている(例えば、特許文献1)。本来、公衆トイレ用ごみ箱は、トイレの使用中に発生し、トイレに流して処理できない紙ごみ、生理用品等の可燃ごみの収集を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−76107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の公衆トイレ用ごみ箱には、本来、収集の目的としてない空き缶、空きビン等の不燃ごみや、比較的大型のごみが投入されることがある。加えて、公衆トイレ用ごみ箱内のごみが、悪戯目的で取り出されることがある。公衆トイレ用ごみ箱には、トイレ室の限られた空間を著しく損なうことなく、トイレ使用者にとって利便性の高い構造が要求されている。
そこで、本発明は、トイレ室の空間を損なうことなく、トイレ使用者にとって利便性が高く、収集の目的とするごみ以外のごみの投入と悪戯を防止できる公衆トイレ用ごみ箱を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の公衆トイレ用ごみ箱は、筐体状の本体と、前記本体に収められ、ごみを収容する収容容器とを有し、前記本体は、その前面の上部に、10〜30°の角度で上方に傾いた傾斜面を有し、前記傾斜面には、長さ50〜170mm、幅15〜55mmで開口した、ごみの投入口が形成され、前記本体には、前記投入口を塞ぎ、かつ、揺動自在な蓋体が設けられ、前記本体には、前記傾斜面の下方に前記収容容器を取り出す取出口が形成され、該取出口を塞ぐ扉体が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の公衆トイレ用ごみ箱によれば、トイレ室の空間を損なうことなく、トイレ使用者にとって利便性が高く、収集の目的とするごみ以外のごみの投入と悪戯を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態にかかる公衆トイレ用ごみ箱を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる公衆トイレ用ごみ箱を示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる公衆トイレ用ゴミ箱の部分断面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる公衆トイレ用ごみ箱の使用方法を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(公衆トイレ用ごみ箱)
本発明の公衆トイレ用ごみ箱について、その一実施形態例を以下に図1〜3を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる公衆トイレ用ごみ箱10の側面図である。図2は、本発明の実施形態にかかる公衆トイレ用ごみ箱10の正面図である。図3は、本発明の実施形態にかかる公衆トイレ用ごみ箱10の部分断面図である。
なお、本稿において「トイレ室」とは、便座を配置した個室のみならず、該個室が配置された空間である公衆トイレの施設そのものをも含む概念である。
【0009】
公衆トイレ用ごみ箱10は、筐体状の本体12と、本体12に収容された収容容器40とを有する。
本体12はトイレ室の壁内に設置され、使用者の側に配置される前面フレーム14、天面15、底面16、背面17、側面18とで、全体として箱状に構成されている。前面フレーム14の天面15側である上部には、上方に傾いた傾斜面である上部傾斜面20が設けられている。前面フレーム14には、上部傾斜面20の底面16側である下部に、下方に傾いた傾斜面である下部傾斜面30が設けられている。
上部傾斜面20には、ごみを投入するための略矩形の投入口21が形成され、下部傾斜面30には収容容器40を取り出すための取出口31が形成されている。
本体12の内側には、取出口31から取り出し可能に収容容器40が収められている。
【0010】
上部傾斜面20の鉛直方向に対する角度、即ち、傾斜面に沿った斜線Bと垂線Aとで形成された角度θ1は10〜30°であり、15〜25°であることが好ましい。上記範囲内であれば、便座に着座した状態で、容易にごみを投入口21に投入できるためである。
【0011】
略矩形の投入口21の長さL1は、50〜170mmであり、100〜163mmであることが好ましい。上記範囲内であれば、生理用品等、公衆トイレ用ごみ箱10が収集対象とするごみの投入が容易であり、かつ、雑誌や新聞紙等の比較的大型のごみが投入され、収容容器が早期にごみで満たされることを防ぐことができる。
投入口21の幅L2は、15〜55であり、30〜51mmが好ましい。上記範囲内であれば、公衆トイレ用ごみ箱10が収集対象とするごみの投入が容易であり、かつ、空き缶や空き瓶等、公衆トイレ用ごみ箱10が収集対象としないごみが、容易に投入されることを防止できる。
なお、投入口21の形状である略矩形とは、矩形のみならず、矩形の四隅を直線又は曲線で隅切された形状を含む概念である。
【0012】
前面フレーム14には、投入口21を塞ぐ蓋体22が設けられている。蓋体22の上端25には、両方の側面18に向かって突出する支持軸24が設けられている。蓋体22は、支持軸24が略水平となるように、前面フレーム14に設けられた軸受け26に挿入され、支持軸24を支点として揺動可能に本体12に支持されている。ここで「略水平」とは、蓋体22が背面17側に押圧されない状態(常態)において、その重心により所定の位置に停止し、投入口21を塞ぐ程度に水平であることを意味する。
【0013】
蓋体22は、支持軸24を支点として揺動自在に軸支され、常態時において投入口21を塞ぐものである。図3に示すように、蓋体22は、側面18から見た側断面の形状が、上部傾斜面20と略平行な投入口21側の面(蓋体外側面)により形成される第一の辺aと、本体12内部側の面(蓋体内側面)により形成される第二の辺bとが上端25で接して形成する内角を頂角θ2とし、蓋体22の下方の面(蓋体底面)を第三の辺(底辺)cとする略二等辺三角形となっている。蓋体22は、このような形状を有することで、常態において底辺cを二分する中点Pと上端25とを結ぶ直線Qが垂線Aと平行な状態となり、上部傾斜面20と略平行な蓋体外側面により投入口21を塞いでいる。
【0014】
蓋体22の材質は、洗浄の容易性、蓋体22の大きさ、蓋体22に求める強度や耐久性等を勘案して決定することができ、例えば、ステンレス等が挙げられる。
【0015】
蓋体22の大きさは特に限定されないが、蓋体外側面の長さは投入口21の長さL1よりも長く、かつ、第一の辺aの長さは投入口21の幅L2よりも長いことが好ましい。このような大きさであれば、蓋体22は、後方に押圧されて投入口21からごみが投入された後、前方に常態に戻る際、投入口21の周縁部に衝突して速やかに静止し投入口21を塞ぐことができるためである。
【0016】
取出口31は、本体12に収容された収容容器40を取り出すための開口部である。取出口31の大きさは、収容容器40の大きさと同等以上の大きさであり、収容容器40の大きさや操作性等を勘案して決定することができる。
【0017】
前面フレーム14には、取出口31を塞ぐ扉体32が設けられている。扉体32の前面には取っ手36が設けられている。扉体32には、その下方に、両方の側面18に向かって突出する支持軸34が設けられている。扉体32は、支持軸34が前面フレーム14の下方に設けられた軸受け35に挿入され、支持軸34を支点として回動可能に本体12に支持されている。
【0018】
扉体32の材質は、洗浄の容易性、扉体32の大きさ、扉体32に求める強度や耐久性等を勘案して決定することができ、例えばステンレス等が挙げられる。
扉体32の大きさは、取出口31を十分に覆える大きさであり、操作性等を勘案して決定することができる。
【0019】
取っ手36の形態は、特に限定されないが、トイレ室の空間をできるだけ損なわないようにする観点から、扉体32に埋め込まれ、扉体32の表面と略面一であるものが好ましい。例えば、図1、2に示すように、扉体32が閉じている場合は、把持部37が扉体32の表面と略面一であり、扉体32を開く際に把持部37を引き出して、開閉操作ができるものが好ましい。
加えて、扉体32には施錠装置が設けられていることが好ましい。扉体32の開閉が不特定人により容易に行われると、公衆トイレ用ごみ箱10が収容を予定していないものが投入されたり、収容したごみを取り出す悪戯等、不測の行為がなされる懸念があるためである。
【0020】
収容容器40の材質は、洗浄の容易性、収容容器40の大きさ、収容容器40に求める強度や耐久性、収容容器40を取り出す際の操作性等を勘案して決定することができ、例えばステンレスやプラスチック等が挙げられる。
収容容器40の形状は特に限定されず、直方体形、円筒形等が挙げられ、本体12内部の形状に応じて決定することができる。
収容容器40の大きさは、取出口31の大きさに応じて決定することができる。
【0021】
(公衆トイレ用ごみ箱の使用方法)
公衆トイレ用ごみ箱10の使用方法について、図4を用いて説明する。図4は、公衆トイレ用ごみ箱10の使用方法を説明する側面図である。
公衆トイレ用ごみ箱10は、前面フレーム14がトイレ室内に配置されて投入口21と取出口31がトイレ室内に露出するように、本体12がトイレ室内の壁11に嵌め込まれ、利用される。
【0022】
公衆トイレ用ごみ箱10の設置位置は特に限定されないが、例えば、床面から投入口21の上端までの距離が60〜100cmとなるように設置されることが好ましい。かかる設置位置とすることで、トイレ使用者は、便座に着座したままでも、ごみを投入できるためである。
【0023】
図4に示すとおり、公衆トイレ用ごみ箱10は、常態において蓋体22aにより投入口21が塞がれ、扉体32aにより取出口31が塞がれている。
トイレ使用者は、公衆トイレ用ごみ箱10にごみを投入するに当たり、まず、投入口21の蓋体22aを背面17側に押圧する。押圧された蓋体22aは、支持軸24を支点として天面15に向かって回動し、蓋体22bの状態となる。こうして、投入口21は開口され、ごみの投入が可能となる。この状態において、蓋体22の重心は、天面15側に移動している。
投入口21からごみを投入すると、投入されたごみは、本体12内を落下し、本体12内に収められた収容容器40に収容される。トイレ使用者がごみの投入を終え、蓋体22bへの押圧を解除すると、蓋体22bは、その重心移動により、支持軸24を支点とし、自ずと落下するように回動して、常態(蓋体22a)に復帰する。こうして、蓋体22aは、投入口21を塞ぐことができる。
【0024】
ごみの投入が継続的に行われ収容容器40がごみで満たされた場合には、次の操作により収容容器40のごみを回収又は廃棄できる。まず、常態における扉体32aを開錠し、把持部37を把持して前方へ引っ張る。把持部37を引っ張ると、扉体32aは支持軸34を支点として回動し、扉体32aは前方に倒れるようにして扉体32bの状態となる。こうして、取出口31は開口される。そして、開口した取出口31から、収容容器40を引き出し、収容容器40内に収容されたごみを回収又は廃棄することができる。
【0025】
収容容器40内のごみを回収又は廃棄した後、空の収容容器40を本体12内に収め、蓋体30bの持ち上げるようにして、支持軸34を支点とし回動して、扉体32aの状態とする。こうして、取出口31は閉口される。そして、扉体32aを施錠して、常態とすることができる。
【0026】
上述のとおり、蓋体は、上端に設けられた支持軸が本体の軸受け部に挿入され、揺動自在となっている。そして、蓋体は、前記支持軸を支点として回動することで、投入口を開閉する。このように、蓋体の開閉機構は、バネや複雑な機器装置等の部材が使用されていないため、長期間にわたる使用においても不具合が生じる頻度を低減できる。この結果、公衆トイレ用ごみ箱は、部材の修理・交換が生じたりする頻度が極めて少ないため、煩雑なメンテナンスを要することなく、長期にわたって使用できる。
【0027】
投入口は、長さ50〜170mm、幅15〜55mmで開口しているため、空き缶、空き瓶、新聞、雑誌等、本来、公衆トイレ用ごみ箱が収集対象としていないごみが投入されることを防止できる。加えて、常態においては、投入口が蓋体で塞がれ、取出口が扉体で塞がれているため、投入口及び取出口から本体内に収容されたごみを容易に目視できない。加えて、常態においては、投入口が蓋体で塞がれ、取出口が扉体で塞がれているため、悪戯目的でごみが取り出されることを防止できると共に、臭気の拡散等も抑制でき、公衆衛生の面から好ましい環境を作ることができる。
本発明の公衆トイレ用ごみ箱は、床面から投入口の上端までの距離が60〜100cmとなるように設置されることが想定される。投入口が鉛直方向に対して10〜30°で上向きに傾いた上部傾斜面に形成されているため、トイレ使用者は便座に着座したままであっても、容易にごみを投入口に投入できる。
【0028】
(その他の実施形態)
本発明の公衆トイレ用ごみ箱は、上述の実施形態に限定されない。
上述の実施形態では、投入口21は矩形であるが、投入口21の形状はこれに限られず、例えば、楕円形等であってもよい。投入口21の形状が楕円形である場合、長径の長さを投入口の長さとし、短径の長さを投入口21の幅とする。加えて、上述の実施形態では、投入口21は横方向に長い形状であるが、本発明はこれに限定されず、上下方向に長い形状であってもよい。
【0029】
蓋体22は上述の実施形態に限られず、常態において投入口21を塞ぐ構造であればよい。即ち、蓋体22自身の重心移動により、投入口21の周縁部に接触して、あるいは、接触せずに、投入口21を塞ぐものであればよい。
例えば、上述の実施形態では、蓋体22が底辺cを形成する底面を有しているが、蓋体22の形状はこれに限られず、底面を有しない構造であってもよい。平板を二つ折りとして側断面の形状を略V字型とし、折り目である稜線を上端25とした形状であってもよい。あるいは、蓋体22は、第一の辺a、第二の辺bが曲面を形成していてもよい。
また、例えば、蓋体22は、その形態を一枚板とし、該一枚板の上方に錘を設け、該錘の下方に支持軸を設け、常態において前記一枚板の下部が前面フレーム14に当接した状態で投入口21を塞ぐような重心とした構造であってもよい。
【0030】
上述の実施形態では、蓋体22は、蓋体22に設けられた支持軸24が、本体12に設けられた軸受け26に挿入されているが、蓋体22を本体12に支持する手段はこれ限られず、蓋体22が揺動できるものであればよい。例えば、蓋体22を前面フレーム14に蝶番で接続してもよい。
また、支持軸24が天面15より2〜10mm程低い位置にある方が、蓋体22は回転しやすい。
【0031】
上述の実施形態では、下部傾斜面30は下方に傾いた傾斜面であるが、下部傾斜面30の形態はこれに限定されることなく、意匠性等を勘案して決定することができる。ただし、トイレ室の空間を有効利用する観点からは、下部傾斜面30は下方に傾いた傾斜面とすることが好ましい。
【0032】
上述の実施形態では、扉体32は、扉体32の下部に支持軸34を設け、支持軸34を支点として開閉するものであるが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、扉体32の上部の両側に支持軸を設け、該支持軸を支点とし開閉するものであってもよいし、扉体32の略鉛直方向に支持軸を設け、該支持軸を支点とし開閉するものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 公衆トイレ用ごみ箱
12 本体
20 上部傾斜面
21 投入口
22、22a、22b 蓋体
24 支持軸
30 下部傾斜面
31 取出口
32、32a、32b 扉体
40 収容容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体状の本体と、前記本体に収められ、ごみを収容する収容容器とを有し、
前記本体は、その前面の上部に、10〜30°の角度で上方に傾いた傾斜面を有し、
前記傾斜面には、長さ50〜170mm、幅15〜55mmで開口した、ごみの投入口が形成され、
前記本体には、前記投入口を塞ぎ、かつ、揺動自在な蓋体が設けられ、
前記本体には、前記傾斜面の下方に前記収容容器を取り出す取出口が形成され、該取出口を塞ぐ扉体が設けられていることを特徴とする、公衆トイレ用ごみ箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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