説明

六方晶炭窒化ホウ素、その製造方法及び組成物

【課題】優れた熱伝導性を有する新規な高結晶性の六方晶炭窒化ホウ素及びそれを高い反応率で効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】黒鉛化指数(GI)が7.0以下である六方晶炭窒化ホウ素が提供される。また、炭化ホウ素を、窒素を含む雰囲気中2300℃以上2500℃以下で加熱する六方晶炭窒化ホウ素の製造方法が提供される。また、窒素を含む雰囲気の圧力が、0.1MPa以上1MPa以下である六方晶炭窒化ホウ素の製造方法。樹脂及び/又はゴムに六方晶炭窒化ホウ素を含有させてなる組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高結晶性の六方晶炭窒化ホウ素、その製造方法及び組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭窒化ホウ素は、黒鉛と六方晶窒化ホウ素(h−BN)の中間的な化合物、又はダイヤモンドと立方晶窒化ホウ素(c−BN)の中間的な化合物である。黒鉛とh−BNの中間的な化合物(常圧相炭窒化ホウ素と呼ばれる)はさらに、結晶性が低いものは乱層構造炭窒化ホウ素、結晶性が高いものは六方晶炭窒化ホウ素に分類される。特に六方晶炭窒化ホウ素は、熱伝導性、化学的安定性、固体潤滑性及び耐熱衝撃性などの、黒鉛とh−BNの優れた性質を併せ持つと同時に、黒鉛とh−BNにはない、新しい性質を有することが期待されている。このため、これらの特性を活かして固体潤滑・離型剤、樹脂及び/又はゴムの充填材、耐熱性・絶縁性焼結体などへの応用が期待されている。
【0003】
常圧相炭窒化ホウ素の製造方法の例としては以下がある。
(1)シアン化アルカリ金属とハロゲン化ホウ素とを反応させる方法。
(2)有機アミンボラン又はその誘導体、有機窒素ボラン又はその誘導体などの、窒素及びホウ素を同時に含む有機化合物を熱分解する方法。
(3)炭素間の不飽和結合を含むニトリル化合物にハロゲン化ホウ素を反応させて得た付加化合物を、非酸化性雰囲気で焼成する方法。
(4)炭化ホウ素(BC)と窒素(N)を、1600〜2250℃で反応させる方法。
【0004】
(1)〜(3)の方法で得られる常圧相炭窒化ホウ素は、層状構造は有するものの、明瞭な六方晶の結晶構造は有さない乱層構造炭窒化ホウ素である(特許文献1〜3)。(4)の方法で得られる常圧相炭窒化ホウ素は、BCNの組成を有しており、反応温度に応じて1600〜1900℃では乱層構造炭窒化ホウ素(t−BCN)を、2250℃では六方晶炭窒化ホウ素(h−BCN)が作り分けられている。しかしながら、この方法においても充分に結晶性が高いh−BCNは得られていない(非特許文献1)。
【0005】
以上の通り、従来何れの方法においても、熱伝導性、化学的安定性、固体潤滑性及び耐熱衝撃性などの、黒鉛とh−BNの優れた性質を充分に併せ持つ、高結晶性の炭窒化ホウ素を製造することが実現できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−148096号公報
【特許文献2】特開平6−115913号公報
【特許文献3】特開平8−245206号公報
【特許文献4】特開2007−308360号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Alloys and Compounds;466,299-303(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来の常圧相炭窒化ホウ素の製造方法が有する問題に対処するためになされたものであり、新規な高結晶性の六方晶炭窒化ホウ素及びそれを高い反応率で効率的に製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)黒鉛化指数(GI)が7.0以下である六方晶炭窒化ホウ素。
(2)炭化ホウ素を、窒素を含む雰囲気中で、2300℃以上2500℃以下で加熱することを特徴とする、六方晶炭窒化ホウ素の製造方法。
(3)窒素を含む雰囲気の圧力が、0.1MPa以上1MPa以下であることを特徴とする、前記(2)に記載の六方晶炭窒化ホウ素の製造方法。
(4)樹脂及び/又はゴムに前記(1)に記載の六方晶炭窒化ホウ素を含有させてなることを特徴とする組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の六方晶炭窒化ホウ素(h−BCN)は、従来の常圧相炭窒化ホウ素とは異なり高い結晶性を有することから、優れた熱伝導性を有する。特に電子材料分野において、本発明の混合物が配合された樹脂及び/又はゴム組成物は、電子部品から発生する熱を効率よく放出させるための絶縁放熱シート等として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、更に詳しく本発明について説明する。先ず、本発明の物質について説明する。本発明の物質は、高結晶性の六方晶炭窒化ホウ素(h−BCN)である。結晶性の乏しい乱層構造炭窒化ホウ素(t−BCN)及び低結晶性のh−BCNは既知の物質であるが、本発明の高結晶性h−BCNは新規物質である。
【0012】
本発明の物質が高い結晶性を有することは、粉末X線回折測定法における結晶性の指標である黒鉛化指数(GI=Graphitization Index)を用いて確認することができる。GIは、X線回折図の(100)、(101)及び(102)線の積分強度比、すなわち面積比を次式によって算出して求める(J.Thomas,et.al,J.Am.Chem.Soc. 84,4619(1962))。GIの値が小さいほど、高結晶性である。
GI=〔面積{(100)+(101)}〕/〔面積(102)〕
【0013】
本発明のh−BCNのGIは7.0以下である。GIが7.0を超えると熱伝導性、化学的安定性、固体潤滑性、耐熱衝撃性及び電気絶縁性等の優れた特性を発揮することができないため、本発明には適さない。
【0014】
次に、本発明の物質の製造方法について説明する。本発明のh−BCNは、炭化ホウ素(BC)を、窒素を含む雰囲気中で、2300℃以上2500℃以下で加熱することによって得られる。従来のBCを窒素雰囲気中で加熱する方法は、加熱温度が2250℃以下であるため、生成物がh−BNとC(黒鉛)の混合物であったり(特許文献4)、結晶性の乏しいt−BCN又はGIが7.0を超える低結晶性のh−BCNであったり(非特許文献1)するため、何れも本発明には適さない。
【0015】
本発明者等は、BCを、窒素を含む雰囲気中、2300℃以上2500℃以下という特定範囲の温度で加熱することによってのみ、従来法の有する上記問題点が解消され、優れた特性を有する高結晶性のh−BCNが得られることを知得し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明に用いる原料であるBCは、一般的なもので良く、例えば市販のBC粉末を用いることができる。BC粉末は、粒径が小さいほど反応しやすくなるため、例えばレーザー回折散乱法における平均粒径(D50)が30μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0017】
原料をh−BN製又は黒鉛製の反応容器に充填後、電気炉内に配置し、炉内を窒素を含む雰囲気にして2300℃以上2500℃以下で加熱することで、BCとNが下式により反応してh−BCNが生成する。
C+2N → h−BCN
【0018】
反応の促進及び、上式の逆反応によるBCの再析出防止のため、雰囲気の圧力は常圧よりも高い方が好ましく、0.1MPa以上1MPa以下が好ましく、特に0.5MPa以上1MPa以下が好ましい。温度が2500℃を超えると上式の逆反応によるBCの再析出が顕著になるため本発明には適さない。なお、窒素を含む雰囲気の形成は、純粋な窒素ガス(N)で炉内を充満することの他、必要に応じてNをアルゴン等の不活性ガスで希釈することや、高温で分解してNを発生するアンモニア(NH)を使用することによっても可能である。
【0019】
CがNと反応した後に電気炉を冷却して反応容器を取り出し、容器内の生成物を回収することによって本発明の物質を得ることができる。その後粉末X線回折法にてGIを測定することによって、本発明の物質の結晶性を確認することができる。
【0020】
次に、本発明の高結晶性h−BCNの用途である樹脂及び/又はゴム組成物について説明する。本発明のh−BCNが、本発明の樹脂及び/又はゴム組成物を占める含有率としては、樹脂及び/又はゴムの種類と用途によって異なるが、20体積%以上97体積%以下、好ましくは40体積%以上90体積%以下である。含有率が20体積%未満であると、h−BCNが少ないため含有の効果が顕著ではなくなる。一方、97体積%を越えると成形性が損なわれ、未充填部やボイドが発生し、電気絶縁性や信頼性が損なわれる。
【0021】
本発明で使用される樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリオキサジアゾール、ポリピラゾール、ポリキノキサリン、ポリキナゾリンジオン、ポリベンズオキサジノン、ポリインドロン、ポリキナゾロン、ポリインドキシル、シリコン樹脂、シリコン−エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ポリアミノビスマレイミド、ジアリルフタレート樹脂、フッ素樹脂、メチルペンテンポリマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、66−ナイロン及びMXD−ナイロン、アモルファスナイロン等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル−エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂等があげられる。
【0022】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール系硬化剤、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸等の酸無水物系硬化剤等をあげることができる。その使用量は、エポキシ樹脂100質量部に対し30質量部以上90質量部以下が好ましい。
【0023】
本発明で使用されるゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー、ポリブタジエン等の合成ゴムである。
【0024】
更に、本発明の樹脂及び/又はゴム組成物には、必要に応じて以下の硬化促進剤、触媒、加硫剤、滑剤・離型剤、安定剤、光安定剤、着色剤、難燃剤、カップリング剤等を配合することもできる。
【0025】
硬化促進剤としては、ベンゾグアナミン、2,4−ジヒドラジノ−6−メチルアミノ−S−トリアジン、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、弗化ホウ素の各種アミン錯体、トリスジメチルアミノメチルフェノール、1,8−ジアザ・ビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7,ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン化合物、ジシアンジアミド、ビスフェノール型エポキシ樹脂もしくはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とアンモニアとの反応により得られるアミノアルコール化合物、アジピン酸ヒドラジド等の含窒素硬化促進剤、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン等の有機ホスフィン系硬化促進剤等をあげることができる。
【0026】
触媒としては、ビス−(トリブチル錫)オキシド、ジオクテン酸錫、オクタン酸アンチモン、酪酸錫、一酸化鉛、硫化鉛、炭酸鉛等の硬化触媒、白金化合物等の重合触媒等をあげることができる。
【0027】
加硫剤としては、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等をあげることができる。
【0028】
滑剤・離型剤としては、カルナバワックス、モンタナワックス、ポリエステルオリゴマー、シリコン油、低分子量ポリエチレン、パラフィン、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド、エステル等をあげることができる。
【0029】
安定剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、1,3,5−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、ジステアリルチオジプロピオネート、トリノニルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト等をあげることができる。
【0030】
光安定剤については、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−t−ブチルフェニルサリチレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等をあげることができる。
【0031】
着色剤としては、ベンガラ、カーボンブラック等をあげることができる。
【0032】
難燃剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、トリフェニルスチビン、水和アルミナ、フェロセン、ホスファゼン、ヘキサブロモベンゼン、テトラブロモフタル酸無水物、トリクレジルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、臭素化エポキシ誘導体等をあげることができる。
【0033】
カップリング剤については、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリインステアロイルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタン系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤等をあげることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例により、本発明に係る高結晶性六方晶炭窒化ホウ素(h−BCN)、その製造方法及び組成物をさらに詳細に説明する。しかし、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
C粉末(電気化学工業製、#1200、平均粒径0.8μm)10gを黒鉛製のルツボに充填した後、電気炉(富士電波工業製、ハイマルチ5000)内に配した。炉内を真空排気した後、窒素ガスを圧力0.1MPaまで充填した。次いで10℃/分の速度で加熱・昇温し、2300℃に達してから1時間保持した。
【0036】
その後、加熱を止めて冷却し、温度が100℃以下まで下がった時点で炉体を開放して黒鉛ルツボを取り出し、生成物を回収した。反応前後の質量変化は窒素の付加によるものと見なし、質量増加分から次式により反応率(x:0〜1)を算出したところ、0.84であった。
C + 2xN → xBCN +(1−x)B
【0037】
次いで生成物をメノウ乳鉢で解砕して得た粉末を用い、X線回折装置(日本電子製、JDX−3500)にて以下の条件にて粉末X線回折測定を行った。
管球 : Cu回転対陰極(CuKα;λ=1.54056Å)
出力 : 40kV−300mA
検出器 : シンチレーションカウンター
フィルター : モノクロメータ
スリット条件 : ソーラースリット 5°(入射、受光)
DS−SS−RS = 1°−1°−0.2mm
Scan条件 : ステップスキャン法
ステップ幅;0.02° 計数時間;0.5秒
測定範囲 : 2θ=10〜70°
【0038】
得られたX線回折パターンからは、h−BCNに帰属される回折線が認められ、生成物がh−BCNであることが分かった。
【0039】
さらに、X線回折図の(100)、(101)及び(102)線の積分強度比すなわち面積比より黒鉛化指数(GI)を算出したところ、6.6であった。
【0040】
(実施例2〜7)
表1に示す条件の他は実施例1と同様にして窒素を含む雰囲気下での加熱を行った。得られた生成物の質量から反応率を算出し、さらに粉末X線回折法によって生成物の結晶相を同定し、GIを算出した。これらの結果は表2にまとめて示した。
【0041】
【表1】

【表2】

【0042】
(比較例1)
加熱時の保持温度を2250℃とした他は実施例1と同様にして、表1に示す条件にて窒素を含む雰囲気下での加熱を行った。得られた生成物の質量から反応率を算出したところ0.75であった。さらに粉末X線回折法によって生成物の結晶相を同定したところ、生成物は、低結晶性のh−BCNであり、GIを算出したところ8.3であった。これらの結果は表2にまとめて示した。
【0043】
(比較例2)
加熱時の保持温度を2250℃とした他は実施例2と同様にして、表1に示す条件にて窒素を含む雰囲気下での加熱を行った。得られた生成物の質量から反応率を算出したところ0.78であった。さらに粉末X線回折法によって生成物の結晶相を同定したところ、生成物は、低結晶性のh−BCNであり、GIを算出したところ7.6であった。
【0044】
(比較例3)
加熱時の保持温度を2550℃とした他は実施例1と同様にして、表1に示す条件にて窒素を含む雰囲気下での加熱を行った。得られた生成物の質量から反応率を算出したところ0.37であった。さらに粉末X線回折法によって生成物の結晶相を同定したところ、生成物は、h−BCNとBCの混合物であった。またBCの生成により、h−BCN本来の固体潤滑性は損なわれていた。
【0045】
(実施例8〜9、比較例4〜5)
実施例1〜2で得られた高結晶性h−BCN、又は比較例1〜2で得られた低結晶性h−BCNの何れかの粉末100質量部と液状シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製商品名「CF−3110」)50質量部の混合物にトルエン100質量部と加硫剤(東レダウコーニング製 RC−4)0.5質量部を加えてスラリーを調製し、自動塗工装置(テスター産業製 PI−1210)を用いてグリーンシートに成形した後、加熱加硫し、厚み0.20mm(0.0002m)の絶縁放熱シートを製造した。
【0046】
これをTO−3型銅製ヒーターケースと銅板の間にはさみ、締め付けトルク5kgf−cmでセットした後、ヒーターケースに電力15Wをかけて5分間保持した後ヒーターケースと銅板の温度差を測定し、熱抵抗(℃/W)=温度差(℃)/電力(W)により、絶縁放熱シートの厚さ方向の熱抵抗を算出した。更に、ヒーターケースと銅板の伝熱面積を6cm(=0.0006m)と仮定して、熱伝導率(W/m・K)=〔電力(W)×シート厚さ(0.0002m)÷伝熱面積(0.0006m)〕÷温度差(℃)により、絶縁放熱シートの厚さ方向の熱伝導率を算出した。これらの結果は表3にまとめて示した。
【0047】
【表3】

【0048】
実施例と比較例の対比から、本発明の六方晶炭窒化ホウ素は高い結晶性と優れた熱伝導性を示している。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の、高結晶性六方晶炭窒化ホウ素は、従来例を見ない新規物質である。本発明の製造方法によれば、高い反応率で効率良く高結晶性六方晶炭窒化ホウ素を製造することができる。本発明によって得られる高結晶性六方晶炭窒化ホウ素を、例えば高熱伝導性フィラーとして樹脂等のマトリックスに充填した複合材料は、産業分野に広く使用することができる。
【0050】
また、本発明の高結晶性六方晶炭窒化ホウ素は、熱伝導性以外の化学的安定性、固体潤滑性、耐熱衝撃性及び電気絶縁性の優れた特性を発揮することが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛化指数が7.0以下である六方晶炭窒化ホウ素。
【請求項2】
炭化ホウ素を、窒素を含む雰囲気中で、2300℃以上2500℃以下で加熱することを特徴とする六方晶炭窒化ホウ素の製造方法。
【請求項3】
前記窒素を含む雰囲気の圧力が、0.1MPa以上1MPa以下であることを特徴とする請求項2に記載の六方晶炭窒化ホウ素の製造方法。
【請求項4】
前記炭化ホウ素は、レーザー回折散乱法における平均粒径(D50)が30μm以下である粉末であることを特徴とする請求項2又は3に記載の六方晶炭窒化ホウ素の製造方法。
【請求項5】
前記炭化ホウ素は、レーザー回折散乱法における平均粒径(D50)が5μm以下である粉末であることを特徴とする請求項4に記載の六方晶炭窒化ホウ素の製造方法。
【請求項6】
樹脂及び/又はゴムに請求項1に記載の六方晶炭窒化ホウ素を含有させてなることを特徴とする組成物。

【公開番号】特開2013−53018(P2013−53018A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190468(P2011−190468)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)