説明

共役ジエンをベースとした、または共役ジエンおよびビニル芳香族化合物をベースとした変性ポリマー、その調製方法、およびその使用

本発明は、共役ジエンをベースとした、または共役ジエンおよびビニル芳香族化合物をベースとしたポリマー、その調製方法、およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップリングしたヘテロ原子含有変性ジエンポリマー、その調製、およびその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
特にタイヤの構築に使用される公知の方法は、特にこの目的に適した有機または無機の化合物を使用して、共役ジエンをベースとした、もしくは共役ジエンおよびビニル芳香族化合物をベースとした、リビングポリマー、または好ましくはアルカリ金属末端を有するリビングポリマーを結合(カップリング)し、その結果、特に加工特性、ならびに物理的および動力学的特性、特にタイヤにおける転がり抵抗に関連した特性をも改善する。
【0003】
当該産業で言及されるゴムに使用される結合剤/カップリング剤は、リビングポリマーに結合することができる適切な基、例えばエポキシ基(特許文献1)、イソシアナート基、アルデヒド基、ケト基、エステル基、およびハリド基をも有する非常に広範囲の種々の有機化合物、ならびに特に対応するケイ素化合物またはスズ化合物((特許文献2)および(特許文献3))、例えばそのハリド、スルフィド、またはアミドだけではない。(特許文献4)に、高性能タイヤトレッド向けのゴム組成物について述べられており、その下層ゴムの一部は、スズ化合物、リン化合物、ガリウム化合物、またはケイ素化合物を使用して、カップリングされている。
【0004】
同様に、ポリジエンの末端基を官能化する様々な方法が知られている。ネオジム含有系を触媒としたポリブタジエンの場合、使用する化合物の例は、エポキシド;ケトンまたはアルデヒドの群からの置換ケト化合物であり、他の例は、例として(特許文献5)に述べられているように、酸誘導体および置換イソシアナートである。別の公知の末端基変性方法では、二重官能化試薬が使用される。これらの試薬は、例として(特許文献6)または(特許文献7)に記載されているように、極性官能基を使用して、ポリジエンと反応し、分子の第2の極性官能基を使用して、充填剤と相互に作用する。
【0005】
これまで使用された結合剤のいくつかは、かなり欠点を伴い、例として希土類、特にネオジム含有系を触媒としたジエン重合反応の場合、末端基変性を招き、したがってカップリング剤として不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】German Auslegeschrift19 857 768
【特許文献2】EP−A0 890 580
【特許文献3】EP−A0 930 318
【特許文献4】German Auslegeschrift19 803 039
【特許文献5】米国特許第4906706号明細書
【特許文献6】国際公開第01/34658号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6992147号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、本発明の目的は、これまで使用された変性ポリマーの欠点を回避し、ゴム混合物への組込みやすさ、および得られたゴム成形品の機械的/動力学的特性を改善する変性ジエンポリマーを提供することであった。具体的な意図は、引裂伝播(tear-propagation)特性を改善することである。
【0008】
驚くべきことに、公知の変性ポリマーを使用したゴム成形品の生成における上記の欠点は、今回本発明に従って変性したポリマーを使用すると回避することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、下記の式(I)による、共役ジエン、または共役ジエンおよびビニル芳香族化合物をベースとした変性ポリマー:
[BR]−PUR
[式中、
BR=ジエンポリマー、ビニル芳香族−ジエンコポリマー、
PUR=主ポリウレタン単位、かつ
nは、2以上、好ましくは2〜10である]
を提供する。本発明では、使用する主ポリウレタン単位は、好ましくは多官能性イソシアナートおよび/またはチオイソシアナート(成分A)と多官能性プロトン酸(H-acid)化合物(成分B)から構成される生成物混合物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
使用する成分Aは、例としてUllmann’s Enzyklopaedie der technischen Chemie[Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry],4th Edition,Weinheim:Verlag Chemie,Volume 19,1980,pages 303 to 304 and Volume 13,1977,pages 347 to 358またはW.Siefken in Justus Liebigs Annalen der Chemie,562,pages 75 to 136に記載されている多官能性イソシアナートおよび/またはチオイソシアナートの化合物を含むことができる。
【0011】
成分Aは、次の構造の少なくとも1つの化合物を含む。
Q[NCX]q
[式中、
q=2以上の数、
X=OまたはS、好ましくはO、かつ
Qは、4〜1000個の炭素原子、好ましくは6〜500個の炭素原子を有するオリゴマー構造であり、この構造は二重結合を含むことができ、あるいはQは、2〜200個の炭素原子、好ましくは6〜100個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、4〜200個の炭素原子、好ましくは5〜10個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜200個の炭素原子、好ましくは6〜13個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、または8〜200個の炭素原子、好ましくは8〜12個の炭素原子を有するアリール脂肪族炭化水素基であり、適切な場合、記載したオリゴマー、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、およびアリール脂肪族炭化水素基は、O、N、Sの群から1個または複数のヘテロ原子を含む]。
【0012】
成分Aの好適な化合物の例は、エチレンジイソシアナート、具体的にはテトラメチレン1,4−ジイソシアナート;ヘキサメチレン1,6−ジイソシアナート(「HDI」);ドデカン1,12−ジイソシアナート;シクロブタン1,3−ジイソシアナート;シクロヘキサン1,3−および1,4−ジイソシアナート;1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン;2,4−および2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアナート;ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート(「水素添加MDI」または「HMDI」);1,3−および1,4−フェニレンジイソシアナート;2,4−および2,6−トルエンジイソシアナート(「TDI」);ジフェニルメタン−2,4’−および/または−4,4’−ジイソシアナート(「MDI」);ナフチレン1,5−ジイソシアナート;トリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアナート;ポリメチレンポリ(フェニルイソシアナート)、これらは、アニリンおよびホルムアルデヒドの縮合と、その後に続くホスゲン化によって得ることができる化合物である(「MDI」);ノルボルナンジイソシアナート;m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアナート;カルボジイミド基、ウレタン基、アロファナート基、イソシアヌラート基、または尿素基が存在することができる変性ポリイソシアナート、あるいはイソシアナート基を有する液状ジエンポリマーなどのオリゴマー化合物、例えばイソシアナート基を含むポリブタジエン(「Krasol(登録商標)LBD2000および3000」)、ただしイソシアナート基は、ヒドロキシ基を含むポリジエン(例えば、「Krasol(登録商標)LBH」で表わされる基本的タイプの化合物)とジイソシアナートの反応により生成することができる;である。
【0013】
同様に、多官能性イソシアナートおよび/またはチオイソシアナート(成分A)と以下に記載する多官能性プロトン酸化合物(化合物B)から構成された反応生成物を使用することも可能である。ただし、これらは遊離のイソシアナート基を含む。
【0014】
非極性脂肪族、脂環式、または芳香族の溶媒に可溶性または混和性である化合物を使用することは好ましい。本明細書では、HDI、MDI、HMDI、TDI、またはKrasol(登録商標)LBDタイプのイソシアナートが好ましく、これらは商業ベースで容易に入手可能である。
【0015】
本発明では、使用する成分Bは、多官能性プロトン酸化合物、その中で、例としてUllmann’s Encyklopaedie der technischen Chemie[Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry],4th Edition,Weinheim:Verlag Chemie,Volume 19,1980,pages 31 to 38およびpages 304 to 306に記載されているように、とりわけチオール、アルコール、および/またはアミンを含むことができる。
【0016】
成分Bは、構造Bの少なくとも1つの化合物を含む。
T[YH]p、
[式中、
p=2以上の数
Y=O、S、またはNRであり、ここでRは、水素、2〜200個の炭素原子、好ましくは3〜10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、4〜200個の炭素原子、好ましくは5〜10個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜200個の炭素原子、好ましくは6〜13個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、または8〜200個の炭素原子、好ましくは8〜12個の炭素原子を有するアリール脂肪族炭化水素基であり、適切な場合、記載した脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、およびアリール脂肪族炭化水素基はそれぞれ、O、N、Sの群から1個または複数のヘテロ原子を含む]。
【0017】
Tは、2〜1000個の炭素原子、好ましくは2〜100個の炭素原子を有するオリゴマー構造であり、この構造は二重結合を含むことができ、例としてジエンと、OHを含むコモノマーとの重合により、ジエンと、エポキシ基を含むコモノマーとの重合およびその後の加水分解、またはその後のOHを含む基によるオリゴマーの置換により生成され、あるいはTは、2〜200個の炭素原子、好ましくは2〜10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、4〜200個の炭素原子、好ましくは5〜10個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜200個の炭素原子、好ましくは6〜13個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、または8〜200個の炭素原子、好ましくは8〜12個の炭素原子を有するアリール脂肪族炭化水素基であり、適切な場合、記載したオリゴマー、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、およびアリール脂肪族炭化水素基はそれぞれ、O、N、Sの群から1個または複数のヘテロ原子を含む。
【0018】
同様に、多官能性プロトン酸化合物と上述した多官能性イソシアナートおよびチオイソシアナートから構成された反応生成物を使用することも可能である。ただし、これらは遊離プロトン酸基を含む。
【0019】
非極性脂肪族、脂環式、もしくは芳香族の溶媒に可溶性であり、または非極性脂肪族、脂環式、または芳香族の溶媒と混和可能である化合物を使用することは好ましい。本明細書で使用することが好ましい化合物は、Krasol(登録商標)LBH、エチレングリコール、グリセロールで表わされるタイプのプロトン酸化合物、ならびにジヒドロキシベンゼンで表わされるタイプの置換および非置換化合物であり、例としては、tert−ブチルピロカテコール、または1,2−、1,3−、および1,4−ジヒドロキシベンゼンであり、これらの化合物は、商業ベースで容易に入手可能である。
【0020】
PUR触媒は、多官能性プロトン酸化合物との反応時に存在することができる。PUR触媒の添加は、任意所望の時点で行うことができる。ジエンポリマーと成分(A)の化合物との反応後に、PUR触媒を添加することが有利である。
【0021】
使用することができるPUR触媒は、例としてUllmann’s Encyklopaedie der technischen Chemie[Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry],4th Edition,Weinheim:Verlag Chemie,Volume 19,1980,page 306に述べられている公知の化合物のいずれかを含む。スズ化合物およびアミンを使用することが特に有利であり、例としては、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクチル酸第一スズ、または1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。
【0022】
本発明では、BRという用語は、共役ジエン、例えば1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、もしくは2−フェニル−1,3−ブタジエン、好ましくは1,3−ブタジエン、およびイソプレンから、または上述した共役ジエンとビニル芳香族化合物、例えばスチレン、およびジビニルベンゼン、好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン、およびスチレンとから調製されたジエンポリマー、およびビニル芳香族−ジエンコポリマーを包含する。
【0023】
本発明の変性ポリマーの平均モル質量(M)(GPC=ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して決定)は、50000〜1500000g/mol、好ましくは200000〜700000g/molである。
【0024】
BR:PURの量比は、広範囲に変更することができる。本明細書では、PURは、成分AとBの全体であるとみなす。重量比(g/g)に基づくBR:PURの量比は、100:0.01〜30、好ましくは100:0.02〜10、特に好ましくは100:0.05〜5である。
【0025】
本発明は、本発明のポリマーの調製方法であって、共役ジエンを含む化合物を、まず単独でまたはビニル芳香族化合物と一緒に重合し、次いでこれらのポリマーを多官能性イソシアナートおよび/またはチオイソシアナートの化合物と反応させ、次いでこの得られたポリマー溶液を多官能性プロトン酸化合物、好ましくはチオール、アルコール、および/またはアミンと反応させる方法をさらに提供する。
【0026】
本発明のカップリングおよび変性したポリマーは、3ステップで調製されることが好ましい。第1のステップでは、ジエンポリマーおよび/またはビニル芳香族−ジエンコポリマーを調製する。
【0027】
本発明のポリマーの調製の第1のステップは、一般にポリマーを生成するために、触媒系をそれぞれのモノマーまたは複数のモノマーと反応させるような方式で実施される。
【0028】
次いで、本明細書では、BR成分を先行技術で公知の方法で調製する。本明細書で使用する触媒は、例としてEP−A011184またはEP−A1245600にさらに詳細に述べられているように、希土類金属の化合物を含むことが好ましい。重合反応で公知のチーグラー・ナッタ触媒のいずれかを使用することも可能であり、例としては、チタン、コバルト、バナジウム、またはニッケルの化合物をベースとしたもの、さもなければ希土類金属の化合物をベースとしたものである。記載したチーグラー・ナッタ触媒は、単独で、さもなければそれ同士の混合物として使用することができる。同様に、アニオン性触媒、例えばブチルリチウムをベースとした系を使用することも可能である。
【0029】
希土類金属の化合物をベースとしたチーグラー・ナッタ触媒を使用することが好ましく、例としては、セリウム、ランタン、プラセオジム、ガドリニウム、またはネオジムの化合物であり、これらは炭化水素に可溶である。対応する希土類金属塩をチーグラー・ナッタ触媒として使用することが特に好ましく、例としては、カルボン酸ネオジム、特にネオデカン酸ネオジム(neodymium neodecanoate)、オクタン酸ネオジム、ナフテン酸ネオジム、2,2−ジエチルヘキサン酸ネオジム、または2,2−ジエチルヘプタン酸ネオジムであり、対応するランタン塩またはプラセオジム塩もある。使用することができるチーグラー・ナッタ触媒は、例として以下の参考文献に述べられているように、メタロセンをベースとした触媒系もさらに包含する:EP−A919 574、EP−A1025136、およびEP−A1078939。
【0030】
重合反応は、通常の方法で、1つまたは複数の段階で、それぞれ回分式または連続式に実施することができる。複数、好ましくは少なくとも2個、特に2〜5個の反応器が連続している構成の反応器カスケードにおける連続方法が好ましい。
【0031】
この重合反応は、溶媒および/または溶媒混合物中で実施することができる。不活性非プロトン性溶媒が好ましく、例としては、異性体を含むペンタン類(isomeric pentanes)、ヘキサン類、ヘプタン類、オクタン類、デカン類、2,4−トリメチルペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、もしくは1,4−ジメチルシクロヘキサンなどのパラフィン系炭化水素、またはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、もしくはプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素である。これらの溶媒は、個別にまたは組み合わせて使用することができる。シクロヘキサンおよびn−ヘキサンが好ましい。同様に、極性溶媒とブレンドすることも可能である。
【0032】
本発明の方法における溶媒の量は、使用したモノマーの全体量100gに対して、通常1000〜100g、好ましくは500〜150gである。言うまでもなく、使用するモノマーを、溶媒の非存在下で重合することも可能である。
【0033】
重合反応は、上記の不活性非プロトン性溶媒の存在下で実施することが好ましい。
【0034】
重合温度は広範囲に変更することができ、一般に0℃〜200℃、好ましくは40℃〜130℃の範囲である。同様に、反応時間は、数分間から数時間と広範囲に及ぶ。一般に約30分間〜8時間、好ましくは1〜4時間の時間内で重合を実施する。大気圧、さもなければ高圧(1〜10バール)で実施することができる。
【0035】
記述したチーグラー・ナッタ触媒の存在下、不飽和モノマーの本発明の重合は、使用するモノマーが完全に変換されるまで実施できることが好ましい。言うまでもなく、重合反応を、所望のポリマー特性に応じて、例えばモノマー変換率約80%で早期に中断することも可能である。未変換のジエンは、例として、重合反応後にフラッシュ段階を経て除去することができる。
【0036】
第2のステップでは、重合反応後に、ジエンポリマーまたはビニル芳香族−ジエンコポリマーを、多官能性イソシアナートおよび/またはチオイソシアナートの化合物と反応させる。この反応が行われる溶媒または溶媒混合物は、ジエンポリマーまたはビニル芳香族−ジエンコポリマーの調製に使用された非プロトン性有機溶媒または溶媒混合物と同じであることが好ましい。言うまでもなく、溶媒/溶媒混合物を変更することも可能であり、あるいは多官能性イソシアナートおよび/またはチオイソシアナートを別の溶媒に添加することも可能である。使用することができる非プロトン性有機溶媒の例は、ペンタン類、ヘキサン類、ヘプタン類、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ベンゼン、トルエン、およびエチルベンゼンであり、好ましくは、ヘキサン類、シクロヘキサン、およびトルエンであり、特に好ましくはヘキサンである。
【0037】
ジエンポリマーまたはビニル芳香族−ジエンコポリマーと化合物との反応は、ポリマーの中間体を単離することなく、in situで実施することが好ましく、本明細書では、重合反応後に、ジエンポリマーまたはビニル芳香族−ジエンコポリマーを、まず多官能性イソシアナートおよび/またはチオイソシアナートの化合物(成分A)と反応させる。
【0038】
この反応時に、反応を損なう恐れがある妨害化合物(disruptive compound)を排除することが好ましい。これらの妨害化合物の例は、二酸化炭素、酸素、水、アルコール、ならびに有機酸および無機酸である。
【0039】
有機溶媒の量は、適切な予備実験によって容易に決定することができ、使用したモノマーの全体量100gに対して、通常は100〜1000g、好ましくは150〜500gである。
【0040】
本発明の方法は、通常0℃〜200℃、好ましくは30℃〜130℃の温度で実施する。同様に、反応は、大気圧、さもなければ高圧(1〜10バール)で実施することができる。
【0041】
反応時間は、好ましくは比較的短い。約1分〜約1時間の範囲である。
【0042】
次いで、このようにして得られたポリマー溶液を、第3のステップでは、好ましくはポリマーの中間体を単離することなく、多官能性プロトン酸化合物、好ましくはチオール、アルコール、および/またはアミン(成分B)とin situで反応させる。
【0043】
得られたポリマー溶液と成分Bとの反応では、同様にPUR触媒を使用する。これは、上記に列挙したPUR触媒を含むことができる。
【0044】
ポリマーに対して10〜1000ppmの量のPUR触媒は、反応を促進することができる。反応は、0℃〜150℃、好ましくは30℃〜130℃の温度で実施される。反応の後には、NCO含有量の滴定、または2260〜2275cm−1におけるIRスペクトルのNCO帯の評価を行うことができる。一般に、24時間未満の反応時間で十分である。
【0045】
本発明のカップリングおよび変性したポリマーの分子量は、広範囲に異なり得る。本発明のポリマーの通常の用途では、数平均分子量は約100000〜約2000000の範囲である。
【0046】
ワークアップ中、反応混合物を、前述のように、活性水素を含む停止剤試薬、例としてはアルコールもしくは水または適切な混合物で処理することが可能である。さらに、変性ポリマーを単離する前に、抗酸化剤を反応混合物に添加することは有利である。
【0047】
本発明のポリマーを、通常通りに、例えば水蒸気蒸留、またはアルコールなどの適当な綿状沈殿剤(flocculent)を使用した綿状沈澱によって単離する。次いで、例として、綿状沈澱ポリマーを、得られた流体から遠心または押出によって取り出す。単離したポリマーから、残留溶媒および他の揮発性構成要素を、適切な場合には減圧下で加熱によって、または送風装置からの空気流中で除去することができる。
【0048】
言うまでもなく、通常の配合成分を本発明のポリマーに添加することができ、例としては、充填剤、染料、顔料、軟化剤、および補強剤である。さらに、公知のゴム補助剤および架橋剤を添加することができる。
【0049】
本発明の変性ポリマーは、加硫物またはいかなる種類ものゴム成形品を生成する公知の方式で使用することができる。
【0050】
本発明のカップリングおよび変性したポリマーをタイヤ混合物で使用するとき、例として、カーボンブラックを含む配合材料およびシリカを含む配合材料において、耐引裂伝播性を顕著に改善することが可能であった。
【0051】
本発明は、タイヤおよびタイヤ構成要素、ならびにゴルフボール、ならびにテクニカルゴム品目、ならびにゴム強化プラスチック、ならびにABSプラスチックおよびHIPSプラスチックを生成するための本発明の変性ポリマーの使用をさらに提供する。
【0052】
下記の実施例は、本発明を例示するものであって、結果として限定する効果を及ぼすものではない。
【実施例】
【0053】
空気および湿気を排除して、窒素中で重合反応を実施した。テクニカルグレードの酸素不含乾燥ヘキサンを溶媒として使用した。バッチサイズに適した2L〜20L容量のオートクレーブ中で、重合反応を実施した。
【0054】
変換率は、重量測定で決定した。本明細書では、標本を採取した後(まだ、溶媒およびモノマーを含む)および乾燥した後(65℃で真空乾燥キャビネット)に、ポリマー溶液を計量した。
【0055】
1分予熱した後、大型のローターを使用して、Alphaの機器でムーニーML 1+4(100)値を100℃で4分間にわたって測定した。
【0056】
発明実施例1〜17
窒素中、乾燥した20Lの鋼製反応器に入っているテクニカルグレードのヘキサン中13重量%の1,3−ブタジエン溶液に、撹拌しながらジイソブチルアルミニウムヒドリドのヘキサン溶液(DIBAH;Al(CH)、ネオジムバーサタート(neodymium versatate)に対して等モル量のエチルアルミニウムセスキクロリドのヘキサン溶液(EASC、Al(CCl)、およびネオジムバーサタートのヘキサン溶液(NdV、Nd(O1019)を添加した。次いで、混合物を供給前温度の73℃に加熱する。反応は、反応の開始後60分で完結し、ポリマー標本を採取する。次いで、撹拌しながら、HDI(成分(A))を100mlのヘキサンと一緒にビュレットで添加する。さらに30分後、撹拌しながら、エチレングリコール(成分(B))をPUR触媒ラウリン酸ジブチルスズおよび100mlのヘキサンと一緒にビュレットで添加する。反応時間が1時間経過した後、100mlのヘキサンに溶解した2.6gの安定化剤Irganox 1520で、ポリマー溶液を安定化し、次いでポリマーを約10lのエタノールで沈澱させ、真空乾燥キャビネット中、60℃で乾燥する。
【0057】
表1〜4に、使用した化合物(ジエンポリマー、成分(A)および(B)、PUR触媒)、それらの量、および変性およびカップリングの前および後の個々のポリマー標本のムーニー値を記載する。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
実施例18〜26
以下の物質を使用して、混合物を検討した。
【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
【表7】

【0066】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)による、共役ジエン、または共役ジエンおよびビニル芳香族化合物をベースとした変性ポリマー:
[BR]−PUR
[式中、
BR=ジエンポリマー、ビニル芳香族−ジエンコポリマー、
PUR=主ポリウレタン単位、かつ
nは、2以上である]。
【請求項2】
使用する主ポリウレタン単位が、多官能性イソシアナートおよび/またはチオイソシアナートと多官能性プロトン酸化合物から構成される生成物混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の変性ポリマー。
【請求項3】
使用するプロトン酸化合物が、チオール、アルコール、および/またはアミンを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の変性ポリマー。
【請求項4】
使用する多官能性イソシアナートが、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアナート、トルエン2,4−および2,6−ジイソシアナート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアナート、および/またはジフェニルメタン4,4’−ジイソシアナートを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性ポリマー。
【請求項5】
使用するジエンポリマーが、以下のモノマー:1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエンから調製された化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性ポリマー。
【請求項6】
BR対PURの重量比が、少なくとも100g:0.01g〜30gであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の変性ポリマー。
【請求項7】
共役ジエンを含む化合物を、まず単独でまたはビニル芳香族化合物と一緒に重合し、次いでこれらのポリマーを多官能性イソシアナートおよび/またはチオイソシアナートの化合物と反応させ、次いでこの得られたポリマー溶液を多官能性プロトン酸化合物と反応させることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の変性ポリマーの調製方法。
【請求項8】
タイヤおよびタイヤ構成要素、またはHIPSプラスチックおよびABSプラスチック、ならびにゴルフボールを生成するための請求項1〜6のいずれか一項に記載の変性ポリマーの使用。

【公表番号】特表2010−536946(P2010−536946A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520544(P2010−520544)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060447
【国際公開番号】WO2009/021917
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】