説明

共重合ポリエステル樹脂の製造方法

【課題】 色調に優れると共に、ガスバリア性を付与するためのジカルボン酸成分の共重合を安定して行い得、よって、安定した品質のポリエステル樹脂を製造することができる共重合ポリエステル樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体を主成分とし、フェニレンジオキシジ酢酸を共重合成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応又はエステル交換反応を経て重縮合させることにより共重合ポリエステル樹脂を製造するにおいて、フェニレンジオキシジ酢酸をジオール成分に溶解させた溶液として反応系に添加する共重合ポリエステル樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスバリア性を付与するためのジカルボン酸成分を共重合した共重合ポリエステル樹脂の製造方法に関し、更に詳しくは、色調に優れると共に、ガスバリア性を付与するためのジカルボン酸成分の共重合を安定して行い得、よって、安定した品質のポリエステル樹脂を製造することができる共重合ポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ポリエチレンテレフタレート樹脂に代表されるポリエステル樹脂は、優れた機械的性質及び化学的特性に加え、その優れた透明性、ガスバリア性、安全衛生性等の面から注目され、射出成形したプリフォームを延伸ブロー成形したボトルとして、又、押出成形したシートを熱成形したトレイやカップとして、或いは、該シートを二軸延伸したフィルム等として、特に食品包装分野において著しい伸びを示している。
【0003】しかしながら、ポリエステル樹脂のガスバリア性は、食品包装分野において汎用されているポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等との比較においては優れるものの、例えば、酸素ガス、炭酸ガス等のバリア性が特に厳しく要求される炭酸飲料、アルコール飲料等のボトルとしては、必ずしも十分とは言えず、特に近年の小型化ボトルにおいてはその傾向が顕著である。
【0004】一方、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂のガスバリア性改良方法として、特表昭60−501060号、特開平5−186570号等公報には、テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体を主成分としフェニレンジオキシジ酢酸を共重合成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを共重合させる方法が開示され、テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体とエチレングリコールとのエステル化反応開始時又はエステル交換反応開始時に予めフェニレンジオキシジ酢酸を添加してエステル化反応又はエステル交換反応させ、引き続いて重縮合させるか、テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体とエチレングリコールとのエステル化反応生成物又はエステル交換反応生成物にフェニレンジオキシジ酢酸を添加し、引き続いて重縮合させる等の共重合方法が記載されている。
【0005】所が、本発明者等の検討によると、これら公報に記載されるフェニレンジオキシジ酢酸の添加方法では、得られる共重合ポリエステル樹脂は若干黄味がかっていて色調が劣ると共に、必ずしも共重合を安定して行い得ず、よって、安定した品質のポリエステル樹脂を製造することができないことが判明した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたもので、色調に優れると共に、ガスバリア性を付与するためのジカルボン酸成分の共重合を安定して行い得、よって、安定した品質のポリエステル樹脂を製造することができる共重合ポリエステル樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記目的を達成すべくなされたものであって、即ち、本発明は、テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体を主成分とし、フェニレンジオキシジ酢酸を共重合成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応又はエステル交換反応を経て重縮合させることにより共重合ポリエステル樹脂を製造するにおいて、フェニレンジオキシジ酢酸をジオール成分に溶解させた溶液として反応系に添加する共重合ポリエステル樹脂の製造方法、を要旨とする。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の共重合ポリエステル樹脂の製造方法において、ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸又はそのアルキル(炭素数1〜4程度)エステル形成誘導体を主成分とし、ジオール成分としてはエチレングリコールを主成分とする。ここで、エステル形成誘導体としては、具体的には、例えば、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート等が挙げられる。
【0009】本発明においては、このジカルボン酸成分としてのテレフタル酸又はそのエステル形成誘導体とジオール成分としてのエチレングリコールとからなるエチレンテレフタレート単位が構成繰り返し単位の80モル%以上を占めるのが好ましく、90モル%以上を占めるのが更に好ましい。エチレンテレフタレート単位が80モル%未満では、共重合ポリエステル樹脂としての機械的性質や耐熱性等が劣る傾向となる。
【0010】そして、本発明においては、ジカルボン酸成分における共重合成分としてフェニレンジオキシジ酢酸が必須であり、該フェニレンジオキシジ酢酸の全ジカルボン酸成分に占める割合は0.1〜20モル%であるのが好ましく、0.2〜10モル%であるのが更に好ましく、0.5〜5モル%であるのが特に好ましい。
【0011】尚、フェニレンジオキシジ酢酸としては、具体的には、例えば、1,2−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、2−メチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、5−メチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、6−メチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、5−エチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、6−エチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、5−メトキシ−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、6−メトキシ−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、4−クロロ−1,2−フェニレンジオキシジ酢酸、4−クロロ−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸等、及びこれらのエステル形成誘導体等が挙げられ、中で、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸及びそのエステル形成誘導体が好ましい。
【0012】又、テレフタル酸及びそのエステル形成誘導体、及びフェニレンジオキシジ酢酸以外のジカルボン酸成分として、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸、又はそれらのエステル形成誘導体の一種又は二種以上を、又、エチレングリコール以外のジオール成分として、例えば、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオールの一種又は二種以上を、更に、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、並びに、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分、等の一種又は二種以上を、共重合成分として用いてもよく、中で、ジカルボン酸成分としてはイソフタル酸等が、又、ジオール成分としてはジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等が好適である。これらは、各々、全ジカルボン酸成分、全ジオール成分に対して、好ましくは10モル%以内、更に好ましくは5モル%以内の範囲で用いられる。
【0013】本発明の共重合ポリエステル樹脂の製造方法は、基本的には、テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とによるポリエステル樹脂の慣用の製造方法による。即ち、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とをエステル化反応槽でエステル化し、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応槽に移送し重縮合させる直接重合法、テレフタル酸のエステル形成誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とをエステル化反応槽でエステル交換反応し、得られたエステル交換反応生成物を重縮合反応槽に移送し重縮合させるエステル交換法、或いは、スラリー調製槽でテレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分をエチレングリコールを主成分とするジオール成分に分散させてスラリー化したスラリーを、エステル化反応槽中の前記で得られたエステル化反応生成物又はエステル交換反応生成物に、連続的に添加して常圧下でエステル化し、得られた反応生成物を連続的に又は/及び段階的に重縮合反応槽に移送して重縮合させる連続式直接重合法等のいずれもをも採り得る。又、通常、重縮合反応により得られた樹脂は、重縮合反応槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状とされるが、更に、この重縮合後のペレットを加熱処理して固相重合させることにより、更に高重合度化させ得ると共に、反応副生物のアセトアルデヒドや低分子オリゴマー等を低減化することもできる。
【0014】尚、前記製造方法において、エステル化反応は、必要に応じて、例えば、三酸化二アンチモンや、アンチモン、チタン、マグネシウム、カルシウム等の有機酸塩等のエステル化触媒の存在下に、200〜270℃程度の温度、0〜3kg/cm2 G程度の圧力でなされ、エステル交換反応は、必要に応じて、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、チタン、亜鉛等の有機酸塩等のエステル交換触媒の存在下に、200〜270℃程度の温度、0〜3kg/cm2 G程度の圧力でなされ、又、重縮合反応は、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、三酸化二アンチモン等の金属酸化物、或いは、ゲルマニウム、アンチモン、亜鉛、チタン、コバルト等の有機酸塩等の重縮合触媒、及び、正燐酸、亜燐酸、アルキル燐酸等の安定剤の存在下に、240〜290℃程度の温度、0.1〜10mmHg程度の減圧下でなされる。又、固相重合は、120〜200℃程度の温度で1分間以上加熱する等して予備結晶化がなされた後、180〜240℃程度の温度、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下、又は/及び、0.1〜10mmHg程度の減圧下でなされる。
【0015】本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、ジカルボン酸成分における共重合成分としてのフェニレンジオキシジ酢酸を、ジオール成分に溶解させた溶液として反応系に添加することが必須であり、これにより、色調に優れると共に、共重合を安定して行い得、よって、安定した品質のポリエステル樹脂の製造が可能となる。
【0016】ここで、溶解に用いられるジオール成分としては、エチレングリコール及び共重合に用いられるその他のジオール成分であれば特に限定されるものではないが、中でエチレングリコールが好ましく、又、溶解させる溶液のジオール成分/フェニレンジオキシジ酢酸のモル比は、溶解性、及び溶液としての流動性等の面から、2〜12であるのが好ましく、2.5〜8であるのが更に好ましく、3.5〜5であるのが特に好ましい。尚、溶解は、50〜180℃程度の温度でするのが好ましい。
【0017】前記溶液の反応系への添加時期及び位置は、特に限定されるものではなく、前記エステル化反応又はエステル交換反応開始時、又は、前記エステル化反応又はエステル交換反応中に、エステル化反応槽に、或いは、前記エステル化反応生成物又はエステル交換反応生成物に対して、エステル化反応槽に、若しくは、エステル化反応槽から重縮合反応槽への移送中の移送配管に、又は、移送後の重縮合槽に、添加する等の方法が挙げられるが、中で、エステル化反応生成物又はエステル交換反応生成物に添加するのが好ましい。又、添加時の溶液の温度は、30〜150℃とするのが好ましく、50〜100℃とするのが更に好ましい。
【0018】本発明の製造方法により得られるポリエステル樹脂は、その固有粘度が、通常、0.55〜1.5dl/g、好ましくは0.65〜1.2dl/g、特に好ましくは0.75〜0.95dl/gの範囲であり、又、色調として、JIS Z8730の参考1に規定されるLab表色系における色座標b値(黄味/青味の指針となる)が、好ましくは−3〜+6、更に好ましくは−2〜+5、特に好ましくは−1〜+4のものとなる。
【0019】又、本発明の製造方法により得られるポリエステル樹脂は、例えば、射出成形によってプリフォームに成形された後、延伸ブロー成形することによって、或いは、押出成形によって成形されたパリソンをブロー成形することによって、ボトル等に成形され、又、押出成形によってシートに成形された後、熱成形することによってトレイや容器等に成形され、或いは、該シートを二軸延伸してフィルム等とされ、特に食品包装分野において有用なものとなる。
【0020】中で、射出成形によって得られたプリフォームを、再加熱後に二軸延伸するコールドパリソン法等のブロー成形法よってボトルを成形するのに好適であり、例えば、炭酸飲料、果汁飲料、アルコール飲料、茶やミネラルウォーター等の飲料、醤油、ソース、みりん、ドレッシング等の液体調味料等の容器として好適に用いられる。
【0021】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0022】実施例1ジメチルテレフタレート50.5kg(260モル)とエチレングリコール32.3kg(520モル)をエステル化反応槽に投入して溶解後、エチレングリコールに溶解させた酢酸マンガンを、ポリエステル樹脂の理論収量に対してマンガン原子として100ppmの量となるように添加し、約220℃に保持しつつ、生成するメタノールを留出させながらエステル交換反応を行った後、該エステル化反応槽に、テレフタル酸43.2kg(260モル)とエチレングリコール19.4kg(312モル)をスラリー調製槽でスラリー化したスラリーを3時間かけて連続的に移送し、約250℃でエステル化反応を行い、移送から4時間後に、反応液の50%を重縮合反応槽に移送した。
【0023】一方、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸9.05kg(40モル)とエチレングリコール9.93kg(160モル)を溶解槽中で約110℃で攪拌しながら溶解させて溶液を作製した(エチレングリコール/1,3−フェニレンジオキシジ酢酸のモル比4。)。
【0024】引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、前記溶液を約80℃で10分間かけて3.82kg(内、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸は、1.82kgであり、全ジカルボン酸成分に対して3モル%に相当。)を移送し15分間経過後、重縮合触媒としてエチレングリコールに溶解させた三酸化二アンチモンを、ポリエステル樹脂の理論収量に対して300ppm、同じくエチレングリコールに溶解させた酢酸コバルトを、ポリエステル樹脂の理論収量に対して90ppmの量となるように、更に、安定剤としてエチレングリコールに溶解させた正燐酸を、ポリエステル樹脂の理論収量に対して180ppmの量となるように、それぞれ添加した後、約100分間かけて約250℃から約270℃まで昇温すると共に常圧から1mmHgまで減圧にしつつ、エチレングリコールを留出させながら、減圧開始後3時間の重縮合反応を行い、重縮合反応槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターでペレット化することにより、共重合ポリエステル樹脂を製造した。
【0025】前記と同様の操作を更に3回繰り返して実施し、同一条件で計4回製造した各ポリエステル樹脂について、以下に示す方法で、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸の含量、固有粘度、及び色調を測定し、結果を表1に示した(表中、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸は「PDDA」と略記。)。
【0026】1,3−フェニレンジオキシジ酢酸の含量樹脂溶液試料を、核磁気共鳴装置(NMR)により1Hをモニターすることにより分析し、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸の全カルボン酸成分に対するモル%を求めた。
【0027】固有粘度樹脂試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒約25mlに1.0重量%となるように110℃で溶解させた後、30℃まで冷却し、全自動溶液粘度計(中央理化社製「2CH型DJ504」)にて測定した。
【0028】色調樹脂試料を、底面の直径が約30mm、高さが約12mmの円柱状の粉体測色用セルに充填し、色差計(日本電色工業社製「ND−300A」)を用いて、JIS Z8730の参考1に規定されるLab表色系における色座標b値を、反射法で、セルを約90度ずつ回転して4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
【0029】更に、前記で重縮合により得られた4種の樹脂をブレンドした後、205℃の温度、1mmHg以下の減圧下で、20時間固相重合を行った。得られた樹脂の固有粘度は0.81dl/gであった。
【0030】実施例21,3−フェニレンジオキシジ酢酸9.05kg(40モル)とエチレングリコール19.9kg(320モル)を用いて溶液を作製した(エチレングリコール/1,3−フェニレンジオキシジ酢酸のモル比8。)こと、及び、該溶液の5.81kg(内、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸は、1.82kgであり、全ジカルボン酸成分に対して3モル%に相当。)を重縮合反応槽に移送したこと、の外は、実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を製造し、同様の方法で1,3−フェニレンジオキシジ酢酸の含量、固有粘度、及び色調を測定し、結果を表1に示した。又、実施例1と同様にして固相重合を行った樹脂の固有粘度は0.81dl/gであった。
【0031】実施例31,3−フェニレンジオキシジ酢酸9.05kg(40モル)とエチレングリコール29.8kg(480モル)を用いて溶液を作製した(エチレングリコール/1,3−フェニレンジオキシジ酢酸のモル比12。)こと、及び、該溶液の7.81kg(内、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸は、1.82kgであり、全ジカルボン酸成分に対して3モル%に相当。)を重縮合反応槽に移送したこと、の外は、実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を製造し、同様の方法で1,3−フェニレンジオキシジ酢酸の含量、固有粘度、及び色調を測定し、結果を表1に示した。又、実施例1と同様にして固相重合を行った樹脂の固有粘度は0.80dl/gであった。
【0032】実施例41,3−フェニレンジオキシジ酢酸のエチレングリコール溶液を約40℃で重縮合反応槽に移送したことの外は、実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を製造し、同様の方法で1,3−フェニレンジオキシジ酢酸の含量、固有粘度、及び色調を測定し、結果を表1に示した。尚、溶液は若干粘度が高く、移送ポンプにかかる負荷がやや高かった。又、実施例1と同様にして固相重合を行った樹脂の固有粘度は0.81dl/gであった。
【0033】比較例11,3−フェニレンジオキシジ酢酸1.82kg(8モル)をエチレングリコール3.99kg(64モル)に溶解せずにスラリーを作製した(エチレングリコール/1,3−フェニレンジオキシジ酢酸のモル比8。)こと、該スラリーを、エステル化反応槽へのテレフタル酸とエチレングリコールとのスラリー移送と同時に移送した(1,3−フェニレンジオキシジ酢酸は全ジカルボン酸成分に対して3モル%に相当。)こと、及び、エステル化反応生成物の重縮合反応槽への移送後直ちに重縮合触媒及び安定剤を添加し重縮合反応を開始したこと、の外は、実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を製造し、同様の方法で1,3−フェニレンジオキシジ酢酸の含量、固有粘度、及び色調を測定し、結果を表1に示した。
【0034】比較例21,3−フェニレンジオキシジ酢酸1.82kg(8モル)をエチレングリコール3.99kg(64モル)に溶解せずにスラリーを作製した(エチレングリコール/1,3−フェニレンジオキシジ酢酸のモル比8。)こと、該スラリーを、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に移送した(1,3−フェニレンジオキシジ酢酸は全ジカルボン酸成分に対して3モル%に相当。)こと、及び、該スラリーの重縮合反応槽への移送後直ちに重縮合触媒及び安定剤を添加し重縮合反応を開始したこと、の外は、実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を製造し、同様の方法で1,3−フェニレンジオキシジ酢酸の含量、固有粘度、及び色調を測定し、結果を表1に示した。
【0035】比較例31,3−フェニレンジオキシジ酢酸1.82kg(8モル)を溶解槽中で約220℃で溶融させたこと、該溶融物を、エステル化反応槽へのテレフタル酸とエチレングリコールとのスラリー移送と同時に移送した(1,3−フェニレンジオキシジ酢酸は全ジカルボン酸成分に対して3モル%に相当。)こと、及び、エステル化反応生成物の重縮合反応槽への移送後直ちに重縮合触媒及び安定剤を添加し重縮合反応を開始したこと、の外は、実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を製造し、同様の方法で1,3−フェニレンジオキシジ酢酸の含量、固有粘度、及び色調を測定し、結果を表1に示した。
【0036】
【表1】


【0037】
【発明の効果】本発明によれば、色調に優れると共に、ガスバリア性を付与するためのジカルボン酸成分の共重合を安定して行い得、よって、安定した品質のポリエステル樹脂を製造することができる共重合ポリエステル樹脂の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体を主成分とし、フェニレンジオキシジ酢酸を共重合成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応又はエステル交換反応を経て重縮合させることにより共重合ポリエステル樹脂を製造するにおいて、フェニレンジオキシジ酢酸をジオール成分に溶解させた溶液として反応系に添加することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】 フェニレンジオキシジ酢酸をジオール成分に溶解させた溶液のジオール成分/フェニレンジオキシジ酢酸のモル比が2〜12である請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項3】 フェニレンジオキシジ酢酸をジオール成分に溶解させた溶液の反応系への添加時の温度が30〜150℃である請求項1又は2に記載の共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項4】 フェニレンジオキシジ酢酸をジオール成分に溶解させた溶液を、テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とのエステル化反応生成物又はエステル交換反応生成物に添加する請求項1乃至3のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項5】 フェニレンジオキシジ酢酸を溶解させた溶液におけるジオール成分が、エチレングリコールである請求項1乃至4のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項6】 フェニレンジオキシジ酢酸の全ジカルボン酸成分に占める割合が0.1〜20モル%である請求項1乃至5のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項7】 フェニレンジオキシジ酢酸が1,3−フェニレンジオキシジ酢酸である請求項1乃至6のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2000−239366(P2000−239366A)
【公開日】平成12年9月5日(2000.9.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−44248
【出願日】平成11年2月23日(1999.2.23)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】