説明

共重合体ラテックス組成物

【課題】耐チッピング性に優れ、乾燥時のブリスター防止、基材への密着性、耐候性、放置安定性をバランスよく両立する水性塗料組成物を実現可能な、共重合体ラテックス組成物を提供するする。
【解決手段】(A)異相構造を有するジエン系共重合体ラテックス粒子、(B)重合体ラテックス粒子、を含み、(A)成分の算出ガラス転移温度(Tg)は−60〜0℃であり、(B)成分の実測ガラス転移温度(Tg)は80℃以上であり、(B)成分の平均粒子径は10nm〜80nmである自動車水性塗料用の共重合体ラテックス組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車水性塗料用として好ましく使用される共重合体ラテックス組成物に関する。更に詳しくは、自動車水性塗料用として必要な物性、例えば、耐チッピング性、耐ブリスター性、基材となる電着板等への密着性、放置安定性等に優れた塗料を実現することが可能な共重合体ラテックス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体外板や外装部品に塗装される塗膜には、走行中の飛び石や砂利の衝突による亀裂の発生、塗膜の剥離といった、いわゆるチッピングと称される現象が生じる事が知られている。このチッピング現象から塗膜や基材を保護することを目的として、例えば自動車の床裏部においては従来、カチオン電着塗装が行われた基材表面に塩化ビニルプラスチックゾル組成物系の塗料を塗装することが行われている。しかしながら、ポリ塩化ビニルを含有している塩化ビニルプラスチックゾル組成物は、廃自動車鋼板の焼却処理工程において塩化水素ガスが発生し、焼却炉を損傷する場合がある。
また、床裏部以外、例えば自動車ボディの側面等においては、カチオン電着塗装が行われた基材表面に中塗り塗膜を形成する場合がある。このような中塗り塗膜を形成する塗料としては、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂を主成分とし、溶媒として有機溶剤が使用された塗料が一般に用いられる。しかしながら、有機溶剤が使用された塗料は、塗料安定性や塗装作業性の観点からは好まれるものの、環境負荷(VOC等)の観点からは好ましくなく、改良が求められている。
【0003】
このような事情の下、近年、塩化ビニルプラスチックゾル組成物に代わる塗料として、水系塗料組成物が提案されている。
しかし、水系塗料組成物は、以下の如き多くの課題を抱えている。まず、水系塗料組成物は、水を分散媒とするため、特に高温(約90〜130℃)での乾燥時に水分の蒸発に起因する塗膜の膨れ(ブリスター)を生じ易い。殊に、自動車の床裏部の様に、厚膜の塗膜を形成する必要がある場合にこの課題が深刻である。
また、水系塗料組成物にて形成された塗膜は、その耐水性が不足し易い。従って、当該塗膜は、降雨や降雪に接触した後に所望の耐チッピング性を確保し難い場合がある。
更に、水系塗料組成物にて形成された塗膜は、基材との密着性が不足し易い。即ち、電着塗装表面やチッピングプライマー層の表面に対する塗膜の十分な密着性が確保し難い場合がある。
また更に、水性塗料組成物は組成物の分散安定性が不足し易い。従って、当該組成物が工程上の障害となる場合がある。
【0004】
これらの水系塗料組成物の課題を解決する為、数多くの先行技術が開示されている。例えば、ブリスターの課題に対しては、加熱によって水系塗料組成物成分の一部が凝集する性質を有する水系塗料組成物(すなわち、感熱ゲル化する性質を付与した水系塗料組成物)が提案されている(特許文献1、特許文献2)。また、塗膜の耐水性や電着板への密着性を改良させる技術として、特定組成の単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体ラテックスが提案されている(特許文献3)。更に、原料単量体の添加方法を工夫する事によって各種性能を改良した共重合体ラテックスが提案されている(特許文献4)。また更に、優れた耐チッピング性能を発現させる水系塗料の技術として、特定の水性バインダー樹脂、無機顔料、及び粘性調整剤を含有する水性塗料組成物が提案されている(特許文献5)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−32938号公報
【特許文献2】特開平5−331387号公報
【特許文献3】特開2003−138198号公報
【特許文献4】特開2005−53950号公報
【特許文献5】特登3142165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した各課題をバランスよく両立する水系塗料組成物を実現する観点からはなお改良の余地がある。また、自動車のボディ側面等に塗膜を形成する場合には塗膜の耐候性が良好であることが望まれる。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、耐チッピング性に優れ、乾燥時のブリスター防止、基材への密着性、耐候性、放置安定性をバランスよく両立する水性塗料組成物を実現可能な共重合体ラテックス組成物を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、自動車用水性塗料の構成材料として用いられる共重合体ラテックスに関し、特定のガラス転移温度を有する複種類の共重合体ラテックスを混在させて共重合体ラテックス組成物とすること、及び、共重合体ラテックスとして異相構造を有するものを用いること等に着目し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、以下の共重合体ラテックス組成物を提供する。
【0008】
[1]以下の(A),(B)成分、
(A)異相構造を有するジエン系共重合体ラテックス粒子、及び
(B)異相構造を有する前記ジエン系共重合体ラテックス粒子とは異なる重合体ラテックス粒子、を含み、
前記(A)成分の算出ガラス転移温度(Tg)は−60〜0℃であり、前記(B)成分の実測ガラス転移温度(Tg)は80℃以上であり、前記(B)成分の平均粒子径は10nm〜80nmである共重合体ラテックス組成物。
[2]前記(A)成分は、以下の(a−1),(a−2)成分、
(a−1)共役ジエン系単量体、及び
(a−2)当該共役ジエン系単量体と共重合可能な単量体であって、当該共役ジエン系単量体とは異なる単量体、
を含む単量体混合物からなる[1]記載の共重合体ラテックス組成物。
[3]前記(A)成分と前記(B)成分との配合比は、((A)成分の固形分):((B)成分の固形分))質量比として95:5〜99:1である[1]又は[2]記載の共重合体ラテックス組成物。
[4]前記(A)成分の実測ガラス転移温度(Tg)は−80℃〜100℃であり、かつ当該Tgを決定する際に観察される転移最低温度TLと転移最高温度THとの差(TH−TL)が40℃以上である[1]から[3]のいずれか一つに記載の共重合体ラテックス組成物。
[5]前記(A)成分の平均粒子径が160nm〜500nmである[1]から[4]のいずれか一つに記載の共重合体ラテックス組成物。
[6]前記(A)成分の乾燥物に飽和状態にまでトルエンで膨潤させた場合の、トルエン不溶分のトルエン湿潤物質量とそれを乾燥して得られる乾燥物質量との質量比(トルエン膨潤度)は6以上であり、かつ前記(A)成分と前記(B)成分とを含む前記共重合体ラテックス組成物のトルエン膨潤度は5以上である[1]から[5]のいずれか一つに記載の共重合体ラテックス組成物。
[7]前記(B)成分の平均粒子径が15nm〜45nmである[1]から[6]のいずれかに一つに記載の共重合体ラテックス組成物。
[8]前記(A)成分は、水酸基含有のエチレン性不飽和単量体に由来する単量体ユニットを2質量%〜10質量%の範囲で含み、前記(B)成分は、水酸基含有のエチレン性不飽和単量体に由来する単量体ユニットを2質量%〜10質量%の範囲で含む[1]から[7]のいずれか一つに記載の共重合体ラテックス組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の共重合体ラテックス組成物は、塩化水素の発生問題や有機溶剤に起因するVOC問題等を生じ難い。また、本発明の共重合体ラテックス組成物を自動車水性塗料の構成材料として用いた場合、耐チッピング性、基材との密着性、耐候性、耐ブリスター性、放置安定性をバランスよく両立する塗料組成物を実現し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の共重合体ラテックス組成物は、以下の(A),(B)成分、
(A)異相構造を有するジエン系共重合体ラテックス粒子、
(B)異相構造を有する前記ジエン系共重合体ラテックス粒子とは異なる重合体ラテックス粒子、
を含むものである。まず、前記(A)成分について説明する。
【0011】
前記(A)成分は、例えば、以下の(a−1),(a−2)成分、
(a−1)共役ジエン系単量体、
(a−2)当該共役ジエン系単量体と共重合可能な単量体であって、当該共役ジエン系単量体とは異なる単量体、
を含む単量体混合物から形成することができる。前記(a−1)成分は、共重合体に柔軟性を与え、衝撃吸収性を与えるために重要な成分である。
【0012】
ここで、前記(a−1)成分が、前記単量体混合物中に占める割合としては、通常30質量%〜70質量%、好ましくは35質量%〜60質量%である。(a−1)成分の使用量を上記範囲に設定する事により、共重合体に適度の柔軟性と弾性を付与して塗膜の耐チッピング性を向上させ、かつ塗装工程後の焼き付け時にブリスターを生じ難い。
なお、前記(a−1)成分として使用される共役ジエン系単量体の好ましい例としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して使用することができる。
【0013】
一方、前記(a−2)成分は、その種類を適宜選択することにより、共重合体ラテックス組成物にさまざまな特性を付与できる。前記(a−2)成分として用いられる単量体の好ましい例としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体、シアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体、水酸基含有のエチレン性不飽和単量体、等が挙げられる。
【0014】
前記エチレン性不飽和カルボン酸系単量体は、共重合体ラテックスに必要な分散安定性を与え、顔料との結合作用を高めるために好ましく使用される成分である。
ここで、前記エチレン性不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の二塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前記エチレン性不飽和カルボン酸系単量体が、前記単量体混合物中に占める割合としては、通常0.1質量%〜7質量%、好ましくは0.3質量%〜5質量%である。エチレン性不飽和カルボン酸系単量体の使用量を上記範囲に設定する事により、前記(A)成分、又は本実施の形態の共重合体ラテックス組成物の分散安定性を良好に保つ事ができる。また、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体の使用量を上記範囲に設定する事により、共重合体ラテックス組成物、又はこれを利用した水性塗料の粘度を取り扱いに支障をきたさないような適度な範囲に調整する事できる。
【0015】
前記シアン化ビニル系単量体は、共重合体の凝集力を高める目的で好ましく使用される成分である。
ここで、前記シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前記シアン化ビニル系単量体が、前記単量体混合物中に占める割合としては、通常0質量%〜30質量%である。シアン化ビニル系単量体の使用量を当該範囲に設定する事により、前記(A)成分の重合安定性を低下させることなく、塗膜の耐チッピング性と耐ブリスター性を同時に向上させる効果を得ることができる。
【0016】
前記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
前記水酸基含有のエチレン性不飽和単量体は、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を含有する塗料に、基材への優れた密着性を発現させる目的で好ましく用いられる。
ここで、前記水酸基含有のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体、アリルアルコール、及びN−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体としてより具体的には、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが挙げられる。
また、前記水酸基含有のエチレン性不飽和単量体が、前記単量体混合物中に占める割合としては、通常2質量%〜10質量%、好ましくは3質量%〜8質量%である。当該割合を2質量%以上とすることにより、良好な密着性を発現させ得る。また、当該割合を10質量%以下とすることにより、共重合体ラテックス組成物又は塗料の粘度を取り扱い易い粘度に調整する事ができる。
【0019】
前記単量体混合物には、上述した各種単量体の他、種々の単量体を配合することができる。そのような単量体としては、例えば、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステル類;
2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのピリジン類;
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジルエステル類;
アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、グリシジルメタクリルアミド、N,N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド類;
酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;
塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;
ジビニルベンゼン、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能ビニル系単量体;
等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いる事ができる。中でも、得られる共重合体ラテックス組成物の安定性、塗料の耐チッピング性、密着性、耐ブリスター性の観点からは、スチレン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸を配合することが好ましい。
【0020】
なお、前記(a−2)成分が、前記単量体混合物中に占める割合としては、通常30質量%〜70質量%、好ましくは40質量%〜65質量%である。前記(a−2)成分を上記範囲で使用する事で、好適な耐チッピング性、耐ブリスター性を発現させることができる。
【0021】
本実施の形態において、前記(A)成分は、例えば上述のような(a−1),(a−2)成分を含む単量体混合物を用いて、乳化重合を行うことによって形成することができる。
ここで、本実施の形態における前記(A)成分の算出ガラス転移温度(Tg)とは、以下の計算式(1)によって算出される理論値である。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)・・・・・(1)
なお、Xi(i=1,2,・・・,i)は、使用されるモノマーMi(i=1,2,・・・,i)の各質量分率である。また、Tgi(i=1,2,・・・,i)は、使用されるモノマーMi(i=1,2,・・・,i)の各ホモポリマーのガラス転移温度である。
【0022】
上記Tgiの値については、本実施の形態において使用可能な代表的な各単量体について、以下の値を用いることができる。
スチレン:388K、1,3−ブタジエン:189K、メタアクリル酸メチル:373K、アクリロニトリル:450K、アクリル酸2−ヒドロキシエチル:258K、イタコン酸:500K、アクリル酸:500K。
【0023】
そして、本実施の形態において、前記(A)成分の算出ガラス転移温度(Tg)は−60〜0℃、好ましくは−40〜−10℃である。この前記(A)成分のTgを−60〜0℃の範囲にすることによって、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料は優れた耐チッピング性と、耐ブリスター性とを両立し得る。なお、Tgは、前記(A)成分を製造する際に使用される単量体の種類や使用量を選択する事などにより調整することができる。
【0024】
本実施の形態において、前記(A)成分は異相構造を有する。ここで、異相構造とは、1個の粒子内に原料単量体組成(単量体の種類、及び/又は配合比率)の異なる層が、複数存在する構造を指している。
ポリマー粒子の構造は、例えば染色処理を施した共重合体ラテックスを透過型電子顕微鏡で観察する事などにより容易に確認できる。本実施の形態における前記(A)成分のポリマー粒子構造としては、例えば、コアシェル構造、複合構造、局在構造、だるま状構造、いいだこ状構造、ラズベリー状構造、多粒子複合構造などが挙げられる。中でも、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した水性塗料の耐ブリスター性、耐チッピング性、及び塗膜の耐候性の観点から、コアシェル構造が好ましい。
【0025】
異相構造を有する前記(A)成分の製造法としては、例えば、従来商業的に用いられている乳化重合法の装置を使用し、少なくとも二段の重合工程を含む多段重合法を採用することができる。ここで、多段重合法とは、例えば特開2002−226524号公報に開示されている如く、組成の異なる複数の単量体混合物を準備し、重合反応の進行に伴って系内に添加する単量体混合物の組成を変化させる重合法である。
そして、上記のような多段重合法を採用する場合、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物で目的とする効果をより良好に発現させるためには、各重合段の単量体混合物の組成を適切にコントロールすることが重要である。
【0026】
即ち、重合反応における時系列的な観点で整理した場合、最初の工程を第一重合段、これに続く工程を第二重合段、(更にこれに続く第三重合段以降が存在してもよい)等と定義する。この場合、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料の耐ブリスター性、及び耐候性の観点から、各重合段における単量体混合物から得られる共重合体のガラス転移温度としては、より後段の重合段ほど高い算出ガラス転移温度(Tg)の得られる単量体混合物の組成にする事が望ましい。
【0027】
また、第一重合段で用いる単量体混合物の量と、第二重合段以降の各重合段で用いられる単量体混合物合計量との質量比としては、通常30:70〜80:20、好ましくは45:55〜70:30である。当該質量比をこのような値に設定することにより、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した水性塗料の耐チッピング性と耐ブリスター性とを、より高める事ができる。
【0028】
更に、各重合段において用いられる単量体混合物にて形成される共重合体の溶解度パラメーター(SP値)としては、ある重合段で用いられる単量体混合物にて形成される共重合体のSP値を基準として、その直後の重合段で用いられる単量体混合物にて形成される共重合体のSP値は増加するように設定されることが好ましい。各重合段のSP値は、単量体混合物を構成する単量体の種類や、その使用量割合等を適宜設定することで調整することができる。特に、SP値が低い前記(a−1)成分の使用量割合が重要な因子である。
【0029】
本実施の形態における前記(A)成分の実測ガラス転移温度(Tg)としては、通常−80℃〜100℃、好ましくは−60℃〜70℃である。本実施の形態において、前記(A)成分のTgは、示差走査熱量計で測定される示差熱量曲線の転移領域の温度として観察される。
【0030】
転移領域の温度とは、特開平11−279336号公報に説明されている如く、示差走査熱量計を用いてサンプルから発生する熱量を測定し、測定温度を連続的に変化させた場合に、サンプルから得られる熱量の値が連続的に変化していく状態の領域の温度を指す。
前記(A)成分のTgを上記範囲に設定する事により、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料は、優れた耐チッピング性と、耐ブリスター性とを両立し得る。
なお、上記Tgは、前記(A)成分を製造する際に使用する単量体の種類や使用量割合、単量体の重合系内への添加方法、特に前述の多段重合を行う場合の各重合段の組成と重合系内への添加速度、重合反応速度、等を選択する事により調整することができる。
【0031】
また、当該Tgを決定する際に観察される転移最低温度(転移領域の最低温度)TLと、転移最高温度(転移領域の最高温度)THとの差(TH−TL)としては、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、上限として通常150℃以下、好ましくは120℃以下である。(TH−TL)を40℃以上とする事で、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料は優れた耐ブリスター性を発現し得る。
なお、この理由は定かではないが、前記(A)成分の粒子構造が単純な均一組成ではなく1つの粒子内に組成の勾配を有するものであるため、焼き付け等の乾燥時に共重合体ラテックス組成物の製膜状態が連続的に変化する為と推測される。
また、(TH−TL)の値は、ジエン系共重合体ラテックス(A)を製造する際に使用する単量体の種類や使用量割合、単量体の重合系内への添加方法、多段重合を行う際の各重合段の組成、等を選択する事により調整することができる。
【0032】
本実施の形態において、前記(A)成分の平均粒子径としては、通常160nm〜500nm、好ましくは170nm〜450nm、より好ましくは190nm~400nmである。平均粒子径が160nm以上である事で、本実施の形態の共重合体ラテックスを使用した水性塗料は優れた耐ブリスター性を発現し得る。一方、平均粒子径が500nm以下である事で、同じく水性塗料は優れた耐チッピング性を発現する。
なお、平均粒子径は、前記(A)成分を乳化重合により製造する際の、乳化剤の使用量を調節する方法等によって調整することができる。
また、本願明細書における平均粒子径とは、動的光散乱法により光散乱光度計(シーエヌウッド社製、モデル6000)を用いて、初期角度45度−測定角度135度で測定した値である。
【0033】
本実施の形態において、前記(A)成分中に含まれる共重合体中のゲル分率(トルエン不溶分)としては、通常60質量%〜95質量%、好ましくは80質量%〜90質量%である。この範囲内になるようにゲル分率を調整することで、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料の耐ブリスター性と塗膜の耐チッピング性とを向上させる事ができる。
また、前記(A)成分のトルエン膨潤度としては、通常6以上、好ましくは8以上である。ここで、トルエン膨潤度とは、測定対象物の乾燥物に飽和状態にまでトルエンで膨潤させた場合の、トルエン不溶分のトルエン湿潤物質量とそれを乾燥して得られる乾燥物質量との質量比を意味している。本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料は、トルエン膨潤度を6以上に調整することで良好な耐チッピング性を発現し得る。
【0034】
次に、本実施の形態において使用される前記(B)成分について説明する。
前記(B)成分を形成する単量体に関しては、前記(A)成分と同種の単量体を使用する事ができる。中でも好ましい単量体としては、例えば、芳香族ビニル系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体、が挙げられる。
なお、本実施の形態において前記(B)成分は、前記(A)成分とは異なる成分として定義されている。ここで、「異なる」には、モノマーの種類や組成比、高次構造(異相構造の種類が異なる等)が異なる場合が含まれるものとする。
【0035】
本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料に、基材への優れた密着性を発現させる観点から、前記(B)成分を形成する単量体としては、水酸基含有のエチレン性不飽和単量体を用いることが好適である。このような水酸基含有のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル単量体、アリルアルコール、及びN−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
また、そのような水酸基含有のエチレン性不飽和単量体が、前記(B)成分を形成する全単量体中に占める割合としては、通常2質量%〜10質量%、好ましくは3質量%〜8質量%である。当該割合を2質量%以上とする事で、塗膜の良好な密着性を発現させ得る。また、当該割合を10質量%以下とする事で、共重合体ラテックス組成物及び塗料の粘度を、取り扱い易い粘度に調整し得る。
【0036】
本実施の形態において、前記(B)成分の実測ガラス転移温度(Tg)としては、80℃以上、好ましくは85℃以上、上限として通常150℃以下、好ましくは130℃以下である。Tgが80℃以上である事によって、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料は優れた耐ブリスター性を発現し得る。
なお、前記(B)成分のTgは、前記(B)成分を形成する単量体の種類やその使用割合を適宜選択する事により調整することができる。また、Tgの測定方法は、前記(A)成分の場合と同様である。
【0037】
前記(B)成分の平均粒子径としては、通常10nm〜80nm、好ましくは15nm〜45nmである。前記(B)成分の平均粒子径がこの範囲にすることによって、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料は、優れた耐ブリスター性を発現し得る。
また、前記(A)成分の平均粒子径と前記(B)成分の平均粒子径との差((A成分の粒子径)−(B成分の粒子径))としては、通常80nm〜400nm、好ましくは90nm〜350nmである。平均粒子径の差をこのような範囲に設定することにより、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料は、優れた耐ブリスター性を発現し得る。
なお、平均粒子径の制御は前記(A)成分の場合と同じく、乳化重合時に使用する乳化剤量の増減等で調整することができる。また、平均粒子径の測定方法については、前記(A)成分の場合と同様である。
【0038】
本実施の形態において、前記(B)成分のTgや平均粒子径の調整で、好適な耐ブリスター性が得られるメカニズムについては定かでない。しかし、本発明者は、ガラス転移温度が高く製膜し難い粒子が、共重合体ラテックス組成物中に微分散している事により、塗料の焼き付け時といった乾燥時に水蒸気の発散が円滑に行われ、塗膜のフクレを発生させない為と推測する。
【0039】
本実施の形態において、前記(A)成分、及び前記(B)成分の製造方法については、例えば、水性媒体中で界面活性剤の存在下、ラジカル開始剤により重合を行う等の方法を採用することができる。
ここで、使用する乳化剤としては、従来公知のアニオン、カチオン、両性および非イオン性の界面活性剤を用いることができる。好ましい界面活性剤の例としては、例えば、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などのアニオン性界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤;
が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、使用される界面活性剤の量としては、単量体100質量部に対して、通常0.1質量部〜2.0質量部である。
【0040】
前記ラジカル開始剤は、熱または還元剤の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤、有機系開始剤のいずれも使用することが可能である。好ましい開始剤の例としては、例えば、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などを挙げることができる。
このような開始剤としてより具体的には、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、前記重合の方法としては、酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を上述の重合開始剤と組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を用いることもできる。
【0041】
更に、上記重合においては連鎖移動剤を用いることも可能である。連鎖移動剤の好ましい例としては、例えば、核置換α−メチルスチレンの二量体のひとつであるα−メチルスチレンダイマー、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン類;
テトラメチルチウラジウムジスルフィド、テトラエチルチウラジウムジスルフィドなどのジスルフィド類;
四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化誘導体、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
連鎖移動剤の添加方法としては、例えば、一括添加、回分添加、連続添加など公知の添加方法が用いられる。
【0042】
共重合体ラテックスを製造する場合の重合温度としては、例えば、40℃〜100℃である。ここで、生産効率と、得られる共重合体ラテックス組成物の衝撃吸収性等の品質の観点から、重合開始時から単量体混合物の添加終了時までの期間における重合温度として、好ましくは55℃〜95℃、より好ましくは60℃〜90℃である。
また、全単量体を重合系内に添加終了後に、各単量体の重合転化率を引き上げる為に重合温度を上げる方法(いわゆるクッキング工程)を採用する事も可能である。このような工程における重合温度としては、通常80℃〜100℃である。
【0043】
前記(A)成分を製造する場合の重合固形分濃度(重合が完結した際の固形分濃度。乾燥により得られた固形分質量の、元の共重合体ラテックス組成物(水等を含む)質量に対する割合をいう。)としては、生産効率と、乳化重合時の粒子径制御の観点から、通常35質量%〜60質量%、好ましくは40質量%〜57質量%である。
一方、前記(B)成分を製造する場合の重合固形分濃度としては、乳化重合時の粒子径制御の観点から、通常10質量%〜50質量%、好ましくは15質量%〜40質量%である。
【0044】
本実施の形態の共重合体ラテックスを製造するに際し、乳化重合の系内に単量体混合物を添加する方法についても種々の方法を採用し得る。例えば、単量体混合物の一部を一括して予め乳化重合系内に仕込み重合した後、残りの単量体混合物を連続的もしくは間欠的に仕込む方法が挙げられる。また、単量体混合物を各重合段の最初から連続的または間欠的に仕込む方法が挙げられる。これらの重合方法は組み合わせることも可能である。
なお、重合時の粒子径安定性の観点、商業生産ベースにおいて発生する重合熱の除去の観点、及び製品の生産性の観点から、全単量体混合物の80質量%以上については連続的に系内に添加する方法が好ましい。
【0045】
また、前記(A)成分、及び前記(B)成分の製造に際しては、粒子径を調整する観点から公知のシード重合法を用いることも可能である。このようなシード重合法としては、シードを作製後同一反応系内で共重合体ラテックスの重合を行うインターナルシード法、別途作製したシードを用いるエクスターナルシード法などの方法を、適宜選択して用いることができる。
【0046】
前記(A)成分、及び前記(B)成分の製造に際しては、必要に応じて公知の各種重合調整剤を用いることができる。即ち、例えばpH調整剤、キレート剤などを使用することができる。
pH調整剤の好ましい例としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、等が挙げられる。また、キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0047】
本実施の形態の共重合体ラテックス組成物は、それぞれ別個に製造された前記(A)成分と前記(B)成分とを均一に混合して共重合体ラテックス組成物を形成してもよいし、同一の反応器内で前記(A)成分と前記(B)成分とを同時に製造して共重合体ラテックス組成物を形成してもよい。更には、前記(A)成分、又は前記(B)成分のいずれか一方をまず製造後、その存在下で他方の成分を製造して共重合体ラテックス組成物を形成してもよい。
【0048】
本実施の形態において、前記(A)成分と、前記(B)成分との配合比は、((A)成分の固形分):((B)成分の固形分))質量比として通常95:5〜99:1、好ましくは96:4〜98:2である。当該配合比が上記範囲に調整される事により、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物が塗料用に使用された際に、優れた耐チッピング性と耐ブリスター性とが両立され得る。
【0049】
本実施の形態の共重合体ラテックス組成物について、トルエン膨潤度としては、通常5以上、好ましくは7以上である。トルエン膨潤度とは、前述のジエン系共重合体ラテックス(A)の説明部分で述べた内容と同様である。上記膨潤度が5以上であることで、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料は良好な耐チッピング性を発現し得る。
【0050】
本実施の形態の共重合体ラテックス組成物は、通常、溶媒中に分散された状態で最終製品として提供される。この場合の固形分濃度としては、通常30質量%〜60質量%である。
ここで、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物には、その効果を損ねない限り、必要に応じて各種添加剤を添加したり、あるいは他のラテックスを混合して用いたりすることができる。例えば分散剤、消泡剤、老化防止剤、耐水化剤、殺菌剤、増粘剤、保水剤、印刷適性剤、滑剤、架橋剤などを添加することができる。また、アルカリ感応型ラテックス、有機顔料、ウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョンなどを混合して用いることもできる。なお、物性上問題のない範囲で、他の(ジエン系)共重合体ラテックスを併用しても良い。
また、これらの各種添加剤は、前記(A)成分、前記(B)成分をそれぞれ製造する段階で添加されてもよいし、前記(A)成分と、前記(B)成分とが混合される際、または混合された後に添加されてもよい。
【0051】
本実施の形態の共重合体ラテックス組成物は、そのままで、或いは必要に応じ、各種充填剤、添加剤、他種エマルジョン、有機材料等を添加して、塗料として使用することができる。
このような充填剤の例としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、珪藻土、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、セピオライト、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、ベンガラ等の無機顔料;
ガラスビーズ、発泡ガラスビーズ、火山ガラス中空体、ガラス繊維等のガラス材料;
カーボンブラック等の有機顔料が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
また、充填剤の添加量としては、共重合体ラテックス組成物の固形分100質量部に対し、通常50質量部〜400質量部である。充填剤の添加量をこのような範囲とする事で、得られた塗料は、優れた耐チッピング性と耐ブリスター性とを両立する。
【0052】
上記添加剤としては、例えば、可塑剤、タレ防止剤、増粘剤、消泡剤、分散剤、起泡剤、コロイド安定剤、防腐剤、PH調整剤、老化防止剤、着色剤、架橋剤、硬化剤、保水剤等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して使用する事が可能である。
ここで、増粘剤としては、例えば、ポリカルボン酸塩類、ウレタン会合型、ポリエーテルタイプ、セルロースエーテル、ポリアクリルアミド等を挙げることができる。
また、架橋剤・硬化剤としては、例えば、多官能エポキシ化合物、ブロックイソシアネート、メラミン樹脂、オキソザリン化合物等を挙げることができる。
更に、起泡剤としては、例えば、重曹、炭酸アンモニウム、ニトロソ化合物、アゾ化合物、スルホニルヒドラジド等の化合物を挙げる事ができる。
【0053】
上記他種エマルジョンとしては、例えば、天然ゴムラテックス、アクリル樹脂系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、ウレタン樹脂ラテックス、エポキシ樹脂ラテックス等が挙げられる。また、上記有機材料としては、例えば、各種樹脂粉末、ゴム粉末、ポリエチレングリコール、カーボンブラック、ホワイトカーボン、セルロースパウダー、澱粉等を挙げる事ができる。
【0054】
本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を用いて塗料を調製する場合、従来公知の各種分散装置を用いることができる。分散装置としては、例えばバタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ロータリーミキサー、ニーダー、ディゾルバー、ペイントコンディショナー等を使用する事ができる。
また、本実施の形態の共重合体ラテックス組成物を使用した塗料は、従来公知の方法、例えば、ヘラ、刷毛、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン、ロール塗工機等を用いて基材に塗布する事が可能である。
【0055】
本実施の形態の共重合体ラテックス組成物は、自動車水性塗料用途の他、塗工紙用バインダー、紙のコーティング剤、カーペットバッキング剤、接着剤などにも用いる事ができる。
【実施例】
【0056】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、各物性の評価は、以下の通りの方法で行った。
【0057】
○各物性の評価方法
(1)示差走査熱量曲線による転移領域温度(TL,TH)の測定:
示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製;DSC6220)を使用し、温度−120℃から+160℃まで、15℃/min.の速度で昇温操作を行い、示差走査熱量曲線を得た。これにより、ラテックス粒子の転移領域の最低温度TLと最高温度THとを求めた。
(2)実測ガラス転移温度(Tg)の測定:
上記の示差走査熱量計を使用し、上記と同じ条件で昇温操作を行い、示差走査熱量曲線の変極点の温度から、ラテックス粒子のガラス転移温度を測定した。
(3)ラテックスの粒子径:
動的光散乱法により、光散乱光度計(シーエヌウッド社製、モデル6000)を用いて、初期角度45度−測定角度135度で測定した平均粒子径を意味する。
(4)ラテックスの粒子構造:
ラテックスをオスミウム酸により処理した後、透過型電子顕微鏡(日立製作所株式会社製;H−7100)で粒子構造を確認した。特にラテックス粒子の層構造が多層構造、或いは均一構造のどちらかであるかに着眼し観察した。
(5)ゲル分率、トルエン膨潤度:
固形分濃度を40%に調製した共重合体ラテックス組成物を、130℃で30分間乾燥しラテックスフィルムを得た。このラテックスフィルムを0.5gとり秤量した。これをトルエン30mlと混合して3時間浸透した後、目開き32μmの金属網にてろ過した場合の残留物の湿潤質量とそれを乾燥して得られる乾燥質量を秤量した。もとのラテックスフィルム質量に対する残留物の乾燥質量の割合をゲル分率(質量%)とした。また、上記残留物の乾燥質量に対する湿潤質量の比をトルエン膨潤度とした。
(6)耐チッピング性評価:
各塗料が塗装され、乾燥されたテスト板(塗膜の乾燥膜厚:300μm)を準備し、テスト板上の乾燥塗膜を水平面に対し60度の角度で固定した。次いで塗膜面の上に高さ2mのポリ塩化ビニル製パイプ(内径20mm)を水平面に対し垂直に固定した。その後、該パイプを通して、M−4ナットを2mの高さから塗膜面に連続的に落下、衝突させ、テスト板の下地が露出するまでに要した、ナットの総質量(Kg)を測定した。その総質量をチッピング強度(Kg)として表し、その大小で耐チッピング性を評価した。チッピング強度が大きいもの程、耐チッピング性は優れていると判定した。
(7)耐ブリスター性(フクレ発生限界):
複数のテスト板上に、100μm刻みで乾燥膜厚が変わるよう各塗料を塗布した。熱風乾燥機を用いて、80℃で20分間、更に130℃で20分間乾燥し、得られた乾燥塗膜についてフクレの有無を目視で確認した。フクレが発生する限界点の膜厚(μm)を測定した。この膜厚の値が大きい程、耐ブリスター性は優れていると判定した。
(8)塗膜の密着性:
テスト板上の乾燥塗膜の表面に、カッターナイフを用いて等間隔でクロスカットを入れた。この場合、テスト板と乾燥塗膜との界面までナイフが入る様にした。次にクロスカット部の中心にセロハンテープを貼り付け、一定の力で引き剥がした。引き剥がした後のテスト板の状態を目視にて観察し、以下のような基準の5点法で採点した。テスト板上に残ったクロスカット部の多いものほど良好と判断し、高い点数を付けた。
5:全てのクロスカットが剥がれず、テスト板上に残っていた。
4:全クロスカットのうち、ごく一部のクロスカットのみが、テスト板上から剥がれていた。
3:約半数のクロスカットが、テスト板上から剥がれていた。
2:大半のクロスカットが、テスト板状から剥がれていた。
1:全てのクロスカットが、テスト板上から剥がれていた。
(9)塗料の放置安定性:
テスト板上に各塗料を塗布し、室温で10日間放置した。その後熱風乾燥機を用いて80℃で20分間、更に130℃で20分間乾燥した。得られた乾燥塗膜を目視にて観察し、以下のような基準の5点法で採点した。塗膜にフクレやクラックのないもの程、高得点とし、放置安定性が良好と判断した。
5:塗膜に、フクレ・クラックの発生が全くなかった。
4:塗膜のごく一部に、フクレ・クラックの発生があった。
3:塗膜面積の約半分に、フクレ・クラックの発生があった。
2:塗膜の大半に、フクレ・クラックの発生があった。
1:塗膜の全面に、フクレ・クラックの発生があった。
(10)塗膜の耐候性:
乾燥塗膜が表面に形成されたテスト板を、スガ試験機株式会社製、デューパネル光コントロールウエザーメーターで300時間(照射4時間/60℃、湿潤4時間/40℃の繰り返し)処理した。処理後の塗膜の黄変度合いとクラックの入り度合いを目視にて観察し、以下のような基準の5点法で採点した。黄変及びクラックの少ないもの程、高得点とした。
5:塗膜に、黄変・クラックの発生が全くなかった。
4:塗膜のごく一部に、黄変・クラックの発生があった。
3:塗膜面積の約半数に、黄変・クラックの発生があった。
2:塗膜面積の大半に、黄変・クラックの発生があった。
1:塗膜全面に、黄変・クラックの発生があった。
【0058】
(A)異相構造を有するジエン系共重合体ラテックス粒子の製造
[製造例A1]
耐圧反応容器に重合初期の原料として水75質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.3質量部、及び平均粒子径37nmのポリスチレン製シードラテックス0.65質量部を含む重合初期原料を一括して仕込み、70℃にて十分に攪拌した。次いで、第一重合段用として調製しておいたスチレン18.7質量部、1,3−ブタジエン33質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.3質量部、及びt−ドデシルメルカプタン0.33質量部から成る、単量体と連鎖移動剤との混合物(以下、「単量体等混合物」と略記する)について、2時間45分をかけて一定の流量でこの耐圧容器内に連続的に添加を行った。一方、この添加開始から10分後より、水20質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.2質量部、及びペルオキソ二硫酸ナトリウム0.8質量部からなる水系混合物の添加を開始し、重合反応を開始させた。この水系混合物については、6時間50分かけて連続的に添加し、重合反応を加速させた。
第一重合段用の単量体等混合物の添加が終了した時点から1時間後に、第二重合段用の単量体等混合物の添加を開始した。この第二重合段用の単量体等混合物は、スチレン7質量部、1,3−ブタジエン7質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1質量部、及びt−ドデシルメルカプタン0.08質量部からなり、45分で連続的にこの耐圧容器内に添加し、重合反応を継続させた。
この第二重合段の単量体等混合物の終了時点より、耐圧容器内の温度を80℃に引き上げ、重合反応を加速させた。
更に第二重合段の単量体等混合物の添加が完了した時点から1時間後に、第三重合段用の単量体等混合物の添加を開始した。この第三重合段用の単量体等混合物は、スチレン19質量部、1,3−ブタジエン7.5質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1.8質量部、アクリル酸1.7質量部、及びt−ドデシルメルカプタン0.01質量部からなり、1時間30分で連続的にこの耐圧容器内に添加し、重合反応を継続させた。
第三重合段の単量体等混合物の添加終了後、耐圧容器内の温度を95℃に昇温させ、1時間30分重合反応を継続させて各単量体の重合転化率を高めた。
この共重合体ラテックスには、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムを添加してpHを8.0に調整し、スチームストリッピング法で未反応の単量体を除去した後、最後に固形分濃度を50質量%に調整した。この共重合体ラテックスを325メッシュのフィルターを通過させて濾過し、ジエン系共重合体ラテックス粒子A1を得た。ジエン系共重合体ラテックス粒子A1の各物性の評価結果を表1に記載した。
【0059】
[製造例A2−A7]
各重合段の単量体等混合物の組成を、表1に記載した通りに変更した事以外は、全て製造例A1と同じ手順でジエン系共重合体ラテックス粒子A2−A7を製造した。これらの各物性の評価結果を表1に記載した。
【0060】
[製造例A8]
製造例A1と同じ耐圧反応容器に、重合初期の原料として水75質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.3質量部、及び平均粒子径37nmのポリスチレン製シードラテックス0.65質量部を含む重合初期原料を一括して仕込み、70℃にて十分に攪拌した。次いで、予め調製しておいたスチレン44.7質量部、1,3−ブタジエン47.5質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート6.1質量部、アクリル酸1.7質量部、及びt−ドデシルメルカプタン0.42質量部から成る単量体等混合物について、5時間をかけて一定の流量でこの耐圧容器内に連続的に添加を行った。一方、この添加開始から10分後より、水20質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.2質量部、及びペルオキソ二硫酸ナトリウム0.8質量部からなる水系混合物の添加を開始し、重合反応を開始させた。この水系混合物については、6時間をかけて連続的に添加し、重合反応を加速させた。
前述の単量体等混合物の内、70質量%を添加した時点で、耐圧容器内の温度を80℃に引き上げ、重合反応を加速させた。
単量体等混合物の添加終了後、耐圧容器内の温度を95℃に昇温させ、1時間30分重合反応を継続させて各単量体の重合転化率を高めた。
この共重合体ラテックスには、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムを添加してpHを8.0に調整し、スチームストリッピング法で未反応の単量体を除去した後、最後に固形分濃度を50質量%に調整した。この共重合体ラテックスを325メッシュのフィルターを通過させて濾過し、ジエン系共重合体ラテックス粒子A8を得た。ジエン系共重合体ラテックス粒子A8の各物性の評価結果を表1に記載した。
【0061】
[製造例A9、A10]
重合初期の原料を表1に記載した通り変更した事以外は、全て製造例A1と同じ手順でジエン系共重合体ラテックス粒子A9、A10を製造した。これらの各物性の評価結果を表1に記載した。
【0062】
(B)重合体ラテックス粒子の製造
[製造例B1]
製造例A1と同じ耐圧反応容器に、重合初期の原料として水165質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10質量部、水酸化ナトリウム0.4質量部、イタコン酸4質量部、及び亜硫酸水素ナトリウム0.5質量部を含む重合初期原料を一括して仕込み、90℃にて十分に攪拌した。次いで水6質量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2.5質量部、及び硝酸鉄(III)九水和物0.01質量部を含む開始剤系水溶液を、容器内に一括添加した。この添加から5分後より、予め調製しておいたスチレン86質量部、メタクリル酸メチル4質量部、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート6質量部から成る単量体混合物について、30分をかけて一定の流量でこの耐圧容器内に連続的に添加を行った。
単量体混合物の添加終了後、耐圧容器内の温度を90℃に保ち、1時間かけて重合反応を継続させ、各単量体の重合転化率を高めた。
この共重合体ラテックスには、水酸化ナトリウムを添加してpHを4.5に調整し、スチームストリッピング法で未反応の単量体を除去した後、最後に固形分濃度を35質量%に調整した。この共重合体ラテックスを325メッシュのフィルターを通過させて濾過し、重合体ラテックス粒子B1を得た。重合体ラテックス粒子B1の各物性の評価結果を表2に記載した。
【0063】
[製造例B2−B6]
原料の組成を、表2に記載した通りに変更したこと以外は、全て製造例B1と同じ手順で重合体ラテックス粒子B2−B6を製造した。これらの各物性の評価結果を表2に記載した。
【0064】
共重合体ラテックス組成物の製造
[製造例C1−C15]
ジエン系共重合体ラテックス粒子A1と、重合体ラテックス粒子B1とを、固形分換算で96:4(質量比)で混合し、共重合体ラテックス組成物C1を調製した。このC1の評価結果を表3に記載した。
同様に、ジエン系共重合体ラテックス粒子A1−A10と、重合体ラテックス粒子B1−B6とを表3に記載した割合で混合し、共重合体ラテックス組成物C2−C15を調製した。このC2−C15の評価結果を表3に記載した。
【0065】
[実施例1]
上記の共重合体ラテックス組成物C1と以下の構成材料とを使用し、均一に混合して水性塗料組成物を調製した。尚、以下の配合(質量部)は、水を除いて、全て固形分に換算した値である。
共重合体ラテックス組成物C1 100質量部
重質炭酸カルシウム 200質量部
架橋剤 9質量部
分散剤 1質量部
消泡剤 0.2質量部
増粘剤 3質量部
なお、重質炭酸カルシウムとしては商品名BF−300(白石カルシウム工業社製)、密着剤(架橋剤)としては商品名エラストロンBN−69(第一工業製薬社製)、分散剤としては商品名ポイズ530(花王社製)、消泡剤としては商品名SNデフォーマー777(サンノプコ社製)、増粘剤としては商品名SNシックナーA813(サンノプコ社製)をそれぞれ使用した。
次いで、このようにして得られた水性塗料組成物を、塗膜の膜厚が400μmになるように、電着板上にヘラを用いて塗装した。熱風乾燥機を使用して80℃で20分間、更に130℃で20分間乾燥して塗膜を形成させ、各評価に用いた。尚、耐ブリスター性(フクレ発生限界)については、塗膜の膜厚を種々変化させて塗膜を形成し、どの程度の膜厚までフクレを生じずに塗膜の形成が可能かを観察した。結果を表4に記載した。
実施例1で得られた塗膜は、チッピング強度、耐ブリスター性、塗膜の密着性、塗料の放置安定性、及び塗膜の耐候性をバランスよく両立する塗膜であった。
【0066】
[実施例2−6]
共重合体ラテックス組成物をC1に代えてC2〜C6に変更した事以外は、全て実施例1と同じ条件で塗料を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表4に記載した。
実施例2〜6で得られた塗膜は、チッピング強度、耐ブリスター性、塗膜の密着性、塗料の放置安定性、及び塗膜の耐候性をバランスよく両立する塗膜であった。
【0067】
[実施例7、8、及び9]
共重合体ラテックス組成物をC1に代えてそれぞれC8、C11、及びC12に変更した事以外は、全て実施例1と同じ条件で塗料を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表4に記載した。実施例7〜9で得られた塗膜は、チッピング強度、耐ブリスター性、塗膜の密着性、塗料の放置安定性、及び塗膜の耐候性をバランスよく両立する塗膜であった。
【0068】
[比較例1]
重合体ラテックス組成物をC1に代えてC7に変更した事以外は、全て実施例1と同じ条件で塗料を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表4に記載した。比較例1で得られた塗膜は、特にチッピング性が劣る塗膜であった。
【0069】
[比較例2]
重合体ラテックス組成物をC1に代えてC9に変更した事以外は、全て実施例1と同じ条件で塗料を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表4に記載した。比較例2で得られた塗膜は、特に耐ブリスター性が劣る塗膜であった。
【0070】
[比較例3]
重合体ラテックス組成物をC1に代えてC10に変更した事以外は、全て実施例1と同じ条件で塗料を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表4に記載した。比較例3で得られた塗膜は、チッピング強度、耐ブリスター性、塗膜の密着性、塗料の放置安定性、及び塗膜の耐候性の、いずれの物性値についても劣る塗膜であった。
【0071】
[比較例4、5、及び6]
重合体ラテックス組成物をC1に代えてそれぞれC13、C14及びC15に変更した事以外は、全て実施例1と同じ条件で塗料を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表4に記載した。比較例4〜6で得られた塗膜は、特に耐ブリスター性、塗料の放置安定性が劣る塗膜であった。
【0072】
[比較例7]
重合体ラテックス組成物C1に代えて、製造例1のジエン系共重合体ラテックスA1をそのまま用いた事以外は、全て実施例1と同じ条件で塗料を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表4に記載した。比較例7で得られた塗膜は、特に耐ブリスター性、塗料の放置安定性、耐候性に劣る塗膜であった。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A),(B)成分、
(A)異相構造を有するジエン系共重合体ラテックス粒子、及び
(B)異相構造を有する前記ジエン系共重合体ラテックス粒子とは異なる重合体ラテックス粒子、を含み、
前記(A)成分の算出ガラス転移温度(Tg)は−60〜0℃であり、前記(B)成分の実測ガラス転移温度(Tg)は80℃以上であり、前記(B)成分の平均粒子径は10nm〜80nmである共重合体ラテックス組成物。
【請求項2】
前記(A)成分は、以下の(a−1),(a−2)成分、
(a−1)共役ジエン系単量体、及び
(a−2)当該共役ジエン系単量体と共重合可能な単量体であって、当該共役ジエン系単量体とは異なる単量体、
を含む単量体混合物からなる請求項1記載の共重合体ラテックス組成物。
【請求項3】
前記(A)成分と前記(B)成分との配合比は、((A)成分の固形分):((B)成分の固形分))質量比として95:5〜99:1である請求項1又は2記載の共重合体ラテックス組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の実測ガラス転移温度(Tg)は−80℃〜100℃であり、かつ当該Tgを決定する際に観察される転移最低温度TLと転移最高温度THとの差(TH−TL)が40℃以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の共重合体ラテックス組成物。
【請求項5】
前記(A)成分の平均粒子径が160nm〜500nmである請求項1から4のいずれか1項に記載の共重合体ラテックス組成物。
【請求項6】
前記(A)成分の乾燥物に飽和状態にまでトルエンで膨潤させた場合の、トルエン不溶分のトルエン湿潤物質量とそれを乾燥して得られる乾燥物質量との質量比(トルエン膨潤度)は6以上であり、かつ前記(A)成分と前記(B)成分とを含む前記共重合体ラテックス組成物のトルエン膨潤度は5以上である請求項1から5のいずれか1項に記載の共重合体ラテックス組成物。
【請求項7】
前記(B)成分の平均粒子径が15nm〜45nmである請求項1から6のいずれか1項に記載の共重合体ラテックス組成物。
【請求項8】
前記(A)成分は、水酸基含有のエチレン性不飽和単量体に由来する単量体ユニットを2質量%〜10質量%の範囲で含み、前記(B)成分は、水酸基含有のエチレン性不飽和単量体に由来する単量体ユニットを2質量%〜10質量%の範囲で含む請求項1から7のいずれか1項に記載の共重合体ラテックス組成物。

【公開番号】特開2010−59230(P2010−59230A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223394(P2008−223394)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】