説明

共重合性をもつ希土類金属錯体、その製造方法及びそれを用いた樹脂組成物

【課題】希土類金属錯体粉末を合成樹脂中に均一に分散させた組成物として使用する場合に、マトリックス樹脂、特にEVA樹脂とグラフト共重合して、化学的に均一分散した組成物を形成させるための、共重合性をもつ希土類金属錯体を提供する。
【解決手段】配位子としてグラフト共重合可能なエチレン性不飽和結合をもつ有機カルボン酸誘導体をもつものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類金属錯体と合成樹脂との組成物を、太陽電池セル封止材や発光性樹脂パネルや蛍光膜形成材料などとして使用する場合に、マトリックス樹脂とグラフト共重合して安定な組成物を形成し得る新規な希土類金属錯体、その製造方法及びそれを用いた樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
希土類金属は、通常、酸化状態3が最も安定であるが、Eu、Yb、Smは酸化状態2の錯体も形成することができ、またCeは四価の化合物を形成する。その結合はイオン性が大きく、また高位の配位数をとりやすいので、正電荷(通常は3+)を中和するのに必要な陰イオン性配位子と反応させたのち、さらに中性有機配位子を反応させることにより希土類金属錯体とすることができる。
【0003】
そして、これまでに、中性有機配位子として、例えばC55やC5(CH35やC8CH8をもつ多数の希土類金属錯体が知られ、その中の一部は化合物の合成中間体、重合触媒などとして用いられている(非特許文献1参照)。また、シクロペンタジエニルやペンタメチルシクロジエニルやシクロオクタテトラエン、ビピリジルやフェナントロリンをもつ多数の希土類金属錯体も知られている。
【0004】
最近に至り、有機化合物と金属イオンとの結合体を材料として開発する研究が進められた結果、6〜8座のアミノ酸誘導体を配位子とした希土類金属錯体を有効成分とするNMR用キラルシフト試薬、光学分割試薬(特許文献1参照)、ナフトアルデヒド、アセトナフトン又は10‐メチルアクリドンのような芳香族カルボニル化合物と、マグネシウムイオン、ルテチウムイオン、イッテルビウムイオン、スカンジウムイオンのような金属イオンとの錯体からなる発光材料(特許文献2参照)などが提案されている。
【0005】
他方、蛍光体粉末を樹脂材料と混合して、発光性パネルを形成したり、蛍光体をマトリックス樹脂及び溶剤と混合して蛍光膜形成用組成物を形成する場合に樹脂材料やマトリックス樹脂としてエチレン・酢酸ビニル共重合体(以下EVAという)を用いることが知られている(特許文献3、4参照)。
【0006】
また、本発明者らは、先に450nm以下の光を吸収して、可視領域で発光する蛍光希土類金属錯体粉末をEVA樹脂中に均一に分散させて太陽電池セル封止材と使用することを提案した(特許文献5、6参照)。
【0007】
ところで、このように蛍光体粉末をEVA樹脂マトリックスに分散させて使用する場合、これまでは物理的な分散により均一な組成物としていたが、これを化学的な分散を行うことができれば、より均一かつ安定な組成物とすることができるにもかかわらず、このような組成物はこれまで知られていなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2002−20358号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献2】特開2003−183639号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献3】特開2004−249644号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献4】特開平8−102257号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献5】特願2005−118666号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献6】特願2005−120126号公報(特許請求の範囲その他)
【非特許文献1】「第4版実験化学講座18 有機金属錯体」、丸善株式会社発行、社団法人日本化学会編、p.36−48
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、希土類金属錯体粉末を合成樹脂中に均一に分散させた組成物として使用する場合に、マトリックス樹脂、特にEVA樹脂とグラフト共重合して、化学的に均一分散した組成物を形成させるための、共重合性をもつ希土類金属錯体を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、合成樹脂と混合して組成物としたときに、マトリックス樹脂と化学的に反応して安定な組成物を形成し得る蛍光希土類金属錯体を得るために、鋭意研究を重ねた結果、蛍光希土類錯体の配位子として、マトリックス樹脂とグラフト共重合する能力をもつ有機化合物誘導体すなわちグラフト共重合可能なエチレン性不飽和結合をもつ有機カルボン酸誘導体を導入することにより、その目的を達成することができることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、配位子としてグラフト共重合可能なエチレン性不飽和結合をもつ有機カルボン酸誘導体をもつことを特徴とする共重合性をもつ蛍光希土類金属錯体、有機溶剤と無機酸との混合物に希土類金属酸化物粉末を懸濁させ、均一な溶液が形成されるまで加熱反応させ、次いでその反応混合物中にグラフト共重合可能なエチレン性不飽和結合をもつ有機カルボン酸及び中和量の有機アミンを加えて反応させ、析出した沈殿を分取することを特徴とする共重合性をもつ蛍光希土類金属錯体の製造方法及び樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
本発明の金属錯体は中心金属として希土類金属が用いられているが、この希土類金属については特に制限はなく、希土類に属する金属、すなわちランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、イットリウム及びスカンジウムの中から任意に選んで用いることができる。
【0013】
また、この中心金属に配位される有機カルボン酸誘導体は、中心金属の正電荷(3+)を中和するための配位子であるため、希土類金属1原子当り3分子が配位される必要がある。この配位子の供給源としては、有機カルボン酸又はその塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩が用いられる。この有機カルボン酸としては、共重合可能なエチレン性不飽和結合を有するものを用いることが必要である。
【0014】
このような有機カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、チグリン酸、2‐デセン酸、エライジン酸のような不飽和脂肪酸やビニルグリコール酸、プロペニルグリコール酸のようなヒドロキシ不飽和脂肪酸、2‐メトキシプロペン酸、4‐メトキシブテン酸のようなアルコキシ不飽和脂肪酸などを挙げることができるが、好ましいのは、一般式
n−Ar−COOH (I)
(式中のArは芳香環基、Rはアルケニル基又はアルケニルオキシ若しくはアルケニルチオキシ基であり、nは1〜3の整数である)
この式における芳香環基は、芳香族性炭素環基及び芳香族性複素環基を含む。
で表わされる置換芳香族カルボン酸である。このような置換芳香族カルボン酸としては、例えば4‐ビニル安息香酸、3,4‐ジビニル安息香酸、3‐ブテニル安息香酸、4‐ヘキセニル安息香酸などのアルケニル置換安息香酸や3‐ビニルオキシ安息香酸、4‐ビニルオキシ安息香酸、4‐ブテニルオキシ安息香酸、3,4‐ジヘキセニルオキシ安息香酸、4‐デセニルオキシ安息香酸、4‐ウンデセニルオキシ安息香酸、3,4‐ジデセニルオキシ安息香酸、3,4‐ジウンデセニルオキシ安息香酸,3,6‐ジウンデセニルオキシナフトエ酸、4‐ウンデセニルオキシ‐1‐ナフトエ酸、6,7‐ジウンデセニルオキシ‐2‐ナフトエ酸、7‐ウンデセニルオキシ‐4‐フルオレンカルボン酸、3‐ウンデセニル‐2‐チオフェンカルボン酸のようなアルケニルオキシ置換芳香族カルボン酸またはアルケニル置換芳香族カルボン酸を挙げることができる。
これらの置換芳香族カルボン酸の中で特に好ましいのは、一般式
【化1】

であらわされる3,4‐ジウンデセニルオキシ安息香酸である。
【0015】
上記の一般式(I)中のRがアルケニルオキシ基であり、nが2の化合物であるが、このような化合物は、例えばジヒドロキシ安息香酸に2分子のハロゲン置換アルケンを反応させることによって製造することができる。
【0016】
本発明の錯体において有機カルボン酸誘導体に加えて配位子として導入される中性有機配位子は有機アミンおよび有機リン化合物である。この有機アミンとしては、フェナントロリン、ビピリジン、キノキン、ピリジンような第三級アミンが好ましく、また有機リン化合物としては、トリフェニルリン酸、トリチオフェニルリン酸、トリ(4−ブトキシフェニル)リン酸などが好ましい。
【0017】
本発明のグラフト共重合可能な蛍光希土類金属錯体は、例えば次のようにして製造することができる。
すなわち、有機溶剤中に希土類金属酸化物粉末を懸濁し、これに無機酸を加え、均一なほぼ透明の溶液が形成されるまで反応させる。この際、所望ならば撹拌して反応を促進することができる。均一な溶液が形成されたならば、この中へグラフト共重合可能な有機カルボン酸及び有機アミンを導入し、反応させると、白色固体が析出してくる。十分に白色固体を析出させたのち、これをろ別し、有機溶剤を水で洗浄後、減圧乾燥する。このようにして、使用した希土類金属酸化物に基づき70%又はそれ以上の収率で所望の錯体が得られる。この生成物が目的とする錯体であることは、例えば元素分析値、赤外線吸収スペクトルにより同定することができる。
【0018】
上記の反応において用いる希土類金属酸化物としては、例えばSc23、Y23、La23、Eu23、Sm23、Tb47などがある。これらの希土類金属酸化物は、粒径100μm以下、好ましくは10μm以下の粉末とし、有機溶剤中に分散して用いられる。
【0019】
また、有機溶剤としては、これまで有機希土類金属錯体の製造に際して慣用されていたものの中から任意に選んで用いることができる。このような有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルアセトアミド、テトラヒドロキシフラン(THF)、アセトン、クロロホルム、メチレンクロライド、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどがある。
【0020】
本発明方法においては、上記の希土類金属酸化物粉末を、上記の有機溶剤中に加え、かきまぜることによって均一に分散させる。この際の有機溶剤の使用割合としては、希土類金属酸化物に対し、質量比で1:30ないし1:300、好ましくは1:50ないし1:200の範囲で選ばれる。
【0021】
また、この際用いる無機酸としては、塩酸、塩素酸、硫酸、硝酸のような強酸が用いられる。この無機酸の使用量は、希土類金属粉末に対して少なくとも化学量論的量、好ましくは若干過剰量とするのがよい。
【0022】
また、加熱温度としては、特に制限はないが、通常は40℃以上、好ましくは60〜100℃の範囲で選ばれる。この加熱処理は、分散液がほぼ透明の溶液になるまで続けられる。この処理時間は、希土類金属の種類、無機酸の種類、無機酸の濃度などにより左右されるが、通常は10分ないし5時間の範囲である。
【0023】
このようにして得られた本発明の蛍光希土類金属錯体は、EVAと混合し、必要に応じ触媒を加え、加熱することにより容易にEVAにグラフト共重合し、化学的に均一な組成物を形成する。
【0024】
この際のEVAと錯体との混合割合は、通常EVAの質量に基づき10%を超えない量、好ましくは0.01〜8%、特に0.05〜1%の範囲内で選ばれる。錯体の量が0.01%よりも少ないと所望の蛍光強度は得られないし、また10%を超えると錯体の使用量が増加しても蛍光強度は向上しないので経済的に好ましくない。
【0025】
このEVAと錯体とからなる組成物には、有機過酸化物を加え、これを加熱分解させることにより、架橋構造を形成して機械的強度を向上させることができる。
【0026】
この有機過酸化物としては、100℃以上でラジカルを発生するものであればいずれでも使用可能であるが、配合時の安定性を考慮に入れれば、半減期10時間の分解温度が70℃以上であるものが好ましい。
このようなものとしては、例えば2,5‐ジメチルヘキサン‐2,5‐ジハイドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン‐3、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´‐ビス(t‐ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)ブタン、2,2‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)ブタン、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、t‐ブチルパーオキシベンズエート、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
有機過酸化物の配合量はEVAに対し5質量%までで充分である。
【0027】
この組成物においては、さらに、その架橋度を向上させ、耐久性を向上するために架橋助剤を添加することができる。
この架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアネートなどの3官能の架橋助剤や、NKエステルなどの単官能の架橋助剤が用いられる。架橋助剤の配合量はEVAに対し10質量%までで充分である。
【0028】
また、この組成物には、安定性を向上するためにヒドロキシキノン、ヒドロキシキノンモノメチルエーテル、P‐ベンゾキノン、メチルハイドロキノンなどの安定剤を添加することができる。
安定剤の配合量はEVAに対し5質量%までで充分である。
【0029】
さらに、この組成物には、紫外線吸収剤、老化防止剤、変色防止剤などを添加することができる。
【0030】
紫外線吸収剤としては、例えば2‐ヒドロキシ‐4‐n‐オクトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシ‐5‐スルフォベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、2‐(2´‐ヒドロキシ5‐メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系、フェニルサリシレート、p‐t‐ブチルフェニルサリシレートなどのヒンダードアミン系のものが用いられる。
【0031】
老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、ビスフェニル系、ヒンダードアミン系のもの例えばジ‐t‐ブチル‐p‐クレゾール、ビス(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペラジル)セバケートなどが用いられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の蛍光希土類錯体をEVAと混合して調製した太陽電池セル封止材は、従来のものに比べて均一分散性がよく、長期間にわたり安定した状態で使用することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0034】
参考例1
3,4‐ジヒドロキシ安息香酸エチル9.8g(54mmol)、炭酸カリウム17g(120mmol)とをジメチルホルムアミド120mlに懸濁させ、この中へ11‐ブロモ‐1‐ウンデセンのジメチルホルムアミド溶液(0.86M濃度)150mlを徐々に滴下し、90℃においてかきまぜながら18時間反応させる。
次いで得られた反応混合物を室温まで冷却し、反応生成物をエーテルで抽出し、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥したのち、溶媒を留去したところ、残渣として淡かっ色の固体が得られた。この固体をエタノールを用いて再結晶することにより、3,4‐ジウンデセニルオキシ安息香酸エチル22gを得た。このものの3,4‐ジヒドロキシ安息香酸エチルに基づく収率は84%であった。
【0035】
次に、このものの1H−NMR、13C−NMR及びIRの特性値を示す。
1H−NMR(δ,ppm):1.34(−CH2−and−CH3,m,23H),1.45(−CH2−,m,4H),1.83(−CH2−,m,4H),2.04(−CH2−,q,J=7.2Hz,4H),4.04(−CH2−,td,J1=6.7Hz,J2=1.6Hz,4H),4.34(−OCH2−,q,J=7.2Hz,2H),4.93(=CH2,d,J=10.2Hz,2H),4.99(=CH2,d,J=17.2Hz,2H),5.79(−CH=,m,2H),6.86(−C63−,d,J=8.4Hz,1H),7.54(−C63−,d,J=7.4Hz,1H),7.64(−C63−,dd,J1=8.5Hz,J2=2.1Hz,1H);13C−NMR(δ,ppm):14.8(−CH3),26.4(−CH2−),26.4(−CH2−),29.3(−CH2−),29.5(−CH2−),29.6(−CH2−),29.8(−CH2−),29.9(−CH2−),30.0(−CH2−),34.2(−CH2−),61.1(−CH2−),69.4(−OCH2−),69.7(−OCH2−),112.4,114.5(=CH2),114.7,123.2,123.8,139.6(−CH=),148.9,153.5,166.9(−COO−);IR(KBr):3070,2978,2919,2849,1708,1642,1421,1390,1366,1348,1293,1278,1069,1031,1105,1069,1031,991,914,869,761cm-1
【0036】
次に、このようにして得た3,4‐ジウンデセニルオキシ安息香酸エチル9.8g(20mmol)と水酸化ナトリウム4.0gとをエタノール200mlに溶解した溶液を12時間還流したのち、室温まで冷却した。この反応混合物にエーテル200mlと1M濃度の塩酸150mlを加えて振りまぜたのち、エーテル層を分液して硫酸マグネシウムで乾燥したのち、溶媒を留去した。残留した黄白色の固体をメタノールから再結晶させて精製することにより、3,4‐ジウンデセニルオキシ安息香酸8.7g(18.9mmol)を得た。このものの3,4‐ジウンデセニルオキシ安息香酸エチルに基づく収率は95%であった。
【0037】
次に、このものの1H−NMR、13C−NMR及びIRの特性値を示す。
1H−NMR(δ,ppm):1.30(−CH2−,m,20H),1.43(−CH2−,m,4H),1.71(−CH2−,m,4H),2.00(−CH2−,q,J=7.0Hz,4H),3.34(−OH,br,1H),3.98(−CH2−,dt,J1=20.0Hz,J2=6.3Hz,4H),4.92(=CH2,dd,J1=10.2Hz,J2=1.1Hz,2H),4.99(=CH2,dd,J1=17.1Hz,J2=1.9Hz,2H),5.77(−CH=,m,2H),7.01(−C63−,d,J=8.6Hz,1H),7.42(−C63−,d,J=1.9Hz,1H),7.53(−C63−,dd,J1=8.4Hz,J2=21.9Hz,1H);13C−NMR(δ,ppm):26.4(−CH2−),26.4(−CH2−),29.3(−CH2−),29.5(−CH2−),29.8(−CH2−),29.8(−CH2−),30.0(−CH2−),34.2(−CH2−),69.4(−OCH2−),69.6(−OCH2−),112.4,114.5(=CH2),114.9,121.8,124.9,139.6(−CH=),148.9,154.3,172.31(−COO−);IR(KBr):3079,2923,2849,1670,1643,1597,1520,1467,1444,1416,1393,1350,1307,1114,1071,1014,911,803,769,725,674cm-1
【0038】
参考例2
2‐ヒドロキシ安息香酸エチル11g(64mmol)、炭酸カリウム10g(71mmol)とをジメチルホルムアミド70mlに懸濁させ、この中へ11‐ブロモ‐1‐ウンデセンのジメチルホルムアミド溶液(0.54M濃度)120mlを徐々に滴下し、90℃においてかきまぜながら18時間反応させる。
次いで得られた反応混合物を室温まで冷却し、反応生成物をエーテルで抽出し、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥したのち、溶媒を留去したところ、残渣として淡かっ色の油状物が得られた。この油状物をクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン)で生成することにより、2‐ウンデセニルオキシ安息香酸エチル17gを得た。このものの2‐ヒドロキシ安息香酸エチルに基づく収率は85%であった。
【0039】
次に、このものの1H−NMR、13C−NMR及びIRの特性値を示す。
1H−NMR(δ,ppm):1.34(−CH2−and−CH3,m,23H),1.47(−CH2−,m,4H),1.82(−CH2−,m,4H),2.04(−CH2−,q,J=7.2Hz,4H),4.04(−CH2−,td,J1=6.7Hz,J2=2.0Hz,4H),4.34(−OCH2−,q,J=7.2Hz,2H),4.93(=CH2,d,J=10.2Hz,2H),4.99(=CH2,d,J=15.6Hz,2H),5.81(−CH=,m,2H),6.86(−C63−,d,J=8.6Hz,1H),7.54(−C63−,d,J=2.0Hz,1H),7.59(−C63−,s,1H),7.64(−C63−,dd,J1=8.4Hz,J2=2.0Hz,1H);13C−NMR(δ,ppm):14.7(−CH3),26.4(−CH2−),28.9(−CH2−),29.3(−CH2−),29.5(−CH2−),29.6(−CH2−),29.8(−CH2−),29.9(−CH2−),34.2(−CH2−),61.1(−O−CH2−),69.2(−OCH2−),113.5,114.5(=CH2),120.3,121.3,131.9,133.5(−CH=),139.5,158.9(−COO−);IR(KBr):2991,2968,2947,2897,1510,1487,1424,1393,1308,1208,1157,1127,1030,1007,924,841,725,677,663cm-1
【0040】
次に、このようにして得た2‐ウンデセニルオキシ安息香酸エチル4.5g(14mmol)と水酸化ナトリウム1.0gとをエタノール50mlに溶解した溶液を12時間還流したのち、室温まで冷却した。この反応混合物にエーテル70mlと1M濃度の塩酸60mlを加えて振りまぜたのち、エーテル層を分液して硫酸マグネシウムで乾燥したのち、溶媒を留去した。残留した黄白色の油状物をエーテルから再結晶させて精製することにより、2‐ウンデセニルオキシ安息香酸3.7g(13mmol)を得た。このものの2‐ウンデセニルオキシ安息香酸エチルに基づく収率は90%であった。
【0041】
次に、このものの1H−NMR、13C−NMR及びIRの特性値を示す。
1H−NMR(δ,ppm):1.31(−CH2−,m,10H),1.47(−CH2−,m,2H),2.04(−CH2−,q,J=6.9Hz,2H),4.25(−OCH2−,t,J=6.6Hz,2H),4.93(=CH2,dd,J1=10.1Hz,J2=0.8Hz,1H),4.99(=CH2,d,J1=17.5Hz,1H),5.80(=CH−,m,1H),7.05(Ar,d,J=8.4Hz,1H),7.13(Ar,t,J=7.5Hz,1H),7.55(Ar,t,J=7.5Hz,1H),8.19(Ar,d,J=7.8Hz,1H);13C−NMR(δ,ppm):26.3(−CH2−),29.3(−CH2−),29.4(−CH2−),29.6(−CH2−),29.7(−CH2−),29.8(−CH2−),34.2(−CH2−),70.7(−OCH2−),113.0,114.6(=CH2),118.1,122.6,134.2,135.4,139.5(−CH=),158.0,165.8(−CO−);IR(KBr):3074,2925,2855,1698,1640,1603,1578,1493,1467,1421,1397,1312,1251,1168,1143,1088,992,950,914,839,757,659cm-1
【実施例1】
【0042】
12M濃度の塩酸0.60mlとエタノール30mlとの混合物中に、酸化ユウロピウム0.18g(0.50mmol)を懸濁し、均一な溶液が得られるまで還流させた。
次いで、参考例1で得た3,4‐ジウンデセニルオキシ安息香酸0.94g(3.2mmol)を加え、さらにトリメチルアミンを反応溶液が中性になるまで加えた。この処理により白色固体が析出してくるので、これをろ別し、水とエタノールで洗浄後、減圧乾燥した。このようにして、3,4‐ジウンデセニルオキシ安息香酸誘導体3個(0.96mmol)を得た。このものの酸化ユウロピウムに基づく収率は96%であった。また、赤外線吸収スペクトル分析の結果、このものは、IR(KBr):3077,2924,2835,1614,1599,1521,1437,1398,1271,1226,1120,993,909,778,723,649cm-1のピークを有し、これから次の式で示される化学構造を有することが確認された。
【化2】

【0043】
参考例3
EVA(加水分解率72%)100質量部に対し、実施例で得たユウロピウム錯体0.2質量部及び2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン1.5質量部をエタノール20質量部に溶かして添加し、かきまぜながら60℃において2時間加熱反応させた。
次いで、このようにして得た組成物を板状体(50×50×0.5mm)に成形し、紫外線を照射したところ、赤い蛍光を発した。
また、この板状表面を顕微鏡で観察したところ、全面にわたって均一な状態であることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
EVA樹脂に混合してシリコン結晶系太陽電池モジュールのセル封止材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配位子としてグラフト共重合可能なエチレン性不飽和結合をもつ有機カルボン酸誘導体をもつことを特徴とする共重合性をもつ蛍光希土類金属錯体。
【請求項2】
グラフト共重合可能なエチレン性不飽和結合をもつ有機カルボン酸誘導体がアルケニルオキシ基をもつ芳香族カルボン酸誘導体である請求項1記載の共重合性をもつ蛍光希土類金属錯体。
【請求項3】
アルケニルオキシ基をもつ芳香族カルボン酸誘導体が3,4‐ジウンデセニルオキシ安息香酸誘導体である請求項2記載の共重合性をもつ蛍光希土類金属錯体。
【請求項4】
有機溶剤と無機酸との混合物に希土類金属酸化物粉末を懸濁させ、均一な溶液が形成されるまで加熱反応させ、次いでその反応混合物中にグラフト共重合可能なエチレン性不飽和結合をもつ有機カルボン酸及び中和量の有機アミンを加えて反応させ、析出した沈殿を分取することを特徴とする共重合性をもつ蛍光希土類金属錯体の製造方法。
【請求項5】
無機酸が塩酸である請求項4記載の共重合性をもつ蛍光希土類金属錯体の製造方法。
【請求項6】
有機アミンが第三級アミンである請求項4及び5記載の共重合性をもつ蛍光希土類金属錯体の製造方法。
【請求項7】
エチレン・酢酸ビニル共重合体に対し、請求項1ないし3のいずれかに記載の共重合性をもつ蛍光希土類金属錯体を配合した組成物からなる太陽電池セル封止材用樹脂組成物。
【請求項8】
共重合性をもつ蛍光希土類金属錯体の配合割合が、エチレン・酢酸ビニル共重合体の質量に基づき10%を超えない範囲にある請求項7記載の太陽電池セル封止材用樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−230955(P2007−230955A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57024(P2006−57024)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(593140255)サンビック株式会社 (12)
【Fターム(参考)】