説明

共鳴音低減構造を有する磁気シールドルーム

【課題】これまでは存在自体が全く想定されていなかった共鳴音であって、空調ダクトから発せられる非可聴周波数帯の共鳴音を低減することにより、従来より一桁〜二桁ノイズレベルの低い磁気ノイズの極微弱磁気ノイズ空間を得ることが可能な、共鳴音低減構造を有する磁気シールドシステムを提供すること。
【解決手段】空調機20に対して軟質非磁性体にて形成された空調ダクト30を介して接続された磁気シールドルーム10であって、空調機20の振動に共鳴した空調ダクト30から発せられる非可聴周波数帯の共鳴音を低減するための共鳴型消音器であって、非磁性体にて形成されたサイドブランチ40を、当該空調ダクト30に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気を低減するための磁気シールドルームであって、特に、共鳴音低減構造を有する磁気シールドルームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MCG(Magnetocardiography、心磁界)やMEG(Magnetoencephalograpy、脳磁界)等の生体からの極微弱磁界を計測するために、磁気ノイズ(環境磁気ノイズ)を遮蔽するための磁気シールドルームを構築することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、この磁気シールドルームにおける床からの機械的な微振動に起因する磁気ノイズを低減するために、この微振動を除去するアクティブ除振装置等の各種の除振装置を基礎として使用した、除振型の磁気シールドルームも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
この除振型の磁気シールドルームは、通常、空調機における遠心送風機等の回転体に起因する磁気ノイズや振動の影響を避けるために、空調機から離れた位置に配置されると共に、空調機に対しては長い空調ダクトを介して接続されており、空調機で空調された空気がこの空調ダクトを介して磁気シールドルームに供給される。また、この空調ダクトは、当該空調ダクトが微振動した場合であっても磁気ノイズを生じさせないように、非磁性体であるグラスウールによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−160027号公報
【特許文献2】特開平7−294613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、除振型の磁気シールドルームにおいては各種の振動対策が施されているが、本願発明者は、磁気シールドルームが空調された時に、30Hz以下の微弱な磁気ノイズが生じていることを見出した。そこで、空調機の運転状態を調査したところ、空調機における送風機の旋回失速、吸込み状態の不均一、あるいはサージングなどの現象が、当該微弱な磁気ノイズの発生原因である可能性は小さいと推測された。そこで、本願発明者は、微弱な磁気ノイズの発生原因を見出すための実験を行った。以下、この実験について説明する。最初に、複数の測定項目の測定状況や測定方法をそれぞれ説明し、次いで、これら複数の測定状況の下で測定された測定結果をまとめて説明する。
【0006】
(磁気ノイズ、振動、音圧の周波数特性の測定状況や測定方法)
最初に、磁気ノイズ、振動、及び音圧の周波数特性の測定状況や測定方法を説明する。図14は、従来の除振型の磁気シールドルームにおける磁気ノイズの測定状況を示す縦断面図である。この除振型の磁気シールドルーム100は、幅3、346mm×奥行き4、346mm×高さ2、800mmであり、天井101、床102、及び側壁103が、パーマロイ(厚み=3mm)、アルミ(厚み=9mm)、パーマロイ(厚み=2mm)を積層して形成されている。この側壁103には、相互に対面する2箇所に換気口104が形成されており、各換気口104には円筒形で150mmφのグラスウール製の空調ダクト200が接続され、この空調ダクト200から空調空気が供給される。
【0007】
ここでは、空調ONの場合と空調OFFの場合について、除振型の磁気シールドルーム100の内部及び外部における図示の測定点において、x、y、z方向の磁気ノイズB、B、B、振動、室外音圧Sout、室内音圧Sin、ダクト内音圧Sを同時に測定し、各々のパワースペクトル及び相互のコヒーレンスを評価した。磁気ノイズは、148チャネルマグネトメータ型のSQUID(Superconducting Quantum Interference Device、超電導量子干渉素子)磁束計で測定した。振動は、通常の加速度計が磁気ノイズを発生させてしまい、SQUID磁束計による磁気ノイズに測定に影響を与えてしまうため、内壁の振動と天井101の振動Lwx、Lwy、Lrzは、レーザー振動計(PPV100)を用いて測定した。音圧は、精密騒音計(NA−17、リオン株式会社製)を用いて測定した。
【0008】
(空調ダクトの内部の音圧分布の測定状況や測定方法)
次に、空調ダクト200の内部の音圧分布の測定状況の測定状況や測定方法を説明する。図15には、空調メインダクト201の内部における音圧分布の測定点a〜jを示し、図16には、空調ブランチダクト202の内部における音圧分布の測定点k〜nを示す。この空調ダクト200は、空調機300から磁気シールドルーム100の近傍に至る空調メインダクト201と、この空調メインダクト201の終端近傍から分岐して除振型の磁気シールドルーム100に至る空調ブランチダクト202を備えており、ダクト内音圧Sに関しては、この空調メインダクト201と空調ブランチダクト202の各々の複数の測定点a〜nで測定した。
【0009】
空調メインダクト201は、長さ約46、500mm×直径約450mmの円筒形ダクトであり、測定点a〜jを5、400mm間隔(ただし、測定点b−cは3、200mm間隔)で設けた。空調ブランチダクト202は、円筒形の第1から第4の空調ブランチダクト203〜206を図16のように接続して構成されており、第1空調ブランチダクト203は長さ約11、000mm×直径約150mm、第2空調ブランチダクト204は長さ約4、500mm×直径約250mm、第3空調ブランチダクト205は長さ約3、000mm×直径約150mm、第4空調ブランチダクト206は長さ約3、000mm×直径約150mmである。これら空調ダクト200の全長(ここでは、空調メインダクト201及び第1〜第3空調ブランチダクト203〜205の長さの合計)は約67、000mmとなる。なお、精密騒音計(低周波音圧計)は、風雑音の影響を受けないように配置し、各測定点a〜nでの音圧出力をFFTアナライザにより周波数解析し、各周波数帯での音圧を読み取った。
【0010】
(空調ダクトの内部の音圧の解析状況や解析方法)
次に、空調ダクト200の内部の音圧の解析状況や解析方法を説明する。ここでは、空調ダクト200を音響管の各音響要素に置き換え、伝達マトリックス法を用いて当該空調ダクト200の内部の音圧の解析を行った。この解析に用いた空調メインダクト201と空調ブランチダクト202の四端子行列を図17に示す。ここでは、空調機300に内蔵された遠心送風機の特徴から音源の内部インピーダンスは小さいと想定されるため、音源は一定の振動速度vで駆動されるのではなく、音源の音圧が一定となる定音圧音源を仮定した。また、磁気シールドルーム100に接続される第3空調ブランチダクト205と第4空調ブランチダクト206の端部は開放端とした。ここで、k[1/m]は波数(=2πf/c)、f[Hz]は周波数、c[m/s]は音速(=340[m/s])、ρ[kg/m]は空気密度、L[m]は空調ダクト200の長さ、ρcは空気の特性インピーダンス、ρc/Sは断面積S[m]の管の特性インピーダンス、Zbは空調ブランチダクト202の駆動点インピーダンスである。
【0011】
(磁気ノイズ、振動、音圧の周波数特性の測定状況や測定方法)
次いで、上述の複数の測定状況の下で測定された測定結果を説明する。最初に、磁気ノイズ、振動、及び音圧の周波数特性の測定結果を説明する。図18(a)には、図14のx方向の磁気ノイズBの測定結果、図18(b)には、図14の磁気シールドルーム100の内壁のy方向の振動速度Lwyの測定結果、図18(c)には、室外音圧Sout、室内音圧Sin、及びダクト内音圧Sの測定結果を、それぞれ示す。これら図18(a)〜(c)において、横軸は周波数(Hz)である。また、図18(a)の縦軸は磁気ノイズのレベル(fT/Hz1/2)、図18(b)の縦軸は振動速度((mm/sec)/Hz1/2)、図18(c)の縦軸は音圧(dB/Hz1/2)である。
【0012】
これら図18(a)〜(c)に示す測定結果から、以下のことが判った。すなわち、空調機ONの場合の磁気ノイズBと振動速度Lwyは、いずれも20Hz以下である。また、磁気ノイズBに関しては、空調機OFFでは10fT/Hz1/2であるが、空調機ONでは200fT/Hz1/2であり、一桁以上大きくなっている。室内音圧Sinとダクト内音圧Sは、全周波数帯で、空調機OFFの場合より空調機ONの場合の方が大きくなっており、室内音圧Sinは、ダクト内音圧Sと似通った周波数特性になっている。また、室内音圧Sinが室外音圧Soutに比べて2〜7Hzと10Hzで大きくなっている理由は、空調ダクト200により磁気シールドルーム100に直接的に超低周波音が供給されているためと考えられる。また、磁気ノイズBと振動速度Lwyでは、2〜6Hz、8Hz、10Hz、13Hz、18Hzで、室内音圧Sinと振動速度Lwyでは2.5Hz、4〜6Hz、8Hz、13Hzで、ダクト内音圧Sと室内音圧Sinでは2.5Hz、5〜6Hz、8Hz、10Hz、13Hzで、それぞれ高い相関が認められた。以上から、空調ダクト200のゆらぎによる低周波音に起因する磁気シールドルーム100の内部に伝搬した超低周波音が、磁気シールドルーム100の内壁を垂直方向(壁の面外方向)に振動させ、2.5Hz、5Hz、8Hz、13Hzで磁気ノイズが生じていることが判った。
【0013】
(空調ダクトの内部の音圧分布の測定結果と解析結果)
次いで、空調ダクト200の内部の音圧分布の測定結果と解析結果について説明する。図19(a)には、図15の測定点eにおける音圧の周波数特性の測定結果、図19(b)には、図15の測定点hにおける音圧の周波数特性の測定結果を、それぞれ示す。これら図19(a)(b)において、横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は音圧(dB)である。これら両方の測定点e、hにおいては、2.5Hzと8.4Hzにピークが認められ、測定点eにおいては、さらに4.2Hzにピークが認められた。
【0014】
図20(a)には、実測で認められたピーク2.5Hzの成分についての測定点a〜nにおける音圧分布の測定結果と、伝達マトリックス法を用いて求めた音圧分布であって、空調ダクト200の全長(空調機からの距離x=0〜67m)に渡る音圧分布の計算結果(解析値)とを示す。また、図20(b)には、実測で認められたピーク13Hzの成分についての測定点a〜nにおける音圧分布の測定結果と、伝達マトリックス法を用いて求めた音圧の音圧分布であって、空調ダクト200の全長(空調機からの距離x=0〜67m)に渡る音圧分布の計算結果(解析値)とを示す。これら図20(a)(b)において、横軸は空調機300からの距離x(m)、縦軸は音圧(dB)である。ここでは、音源の音圧は2.5Hzでは0.25pa、13Hzでは0.025Paとし、空調機300からの距離x=0mから0.1m間隔で音圧分布を求めた。なお、計算ではピーク成分がそれぞれ2Hz、12.25Hzであったため、その成分を用いた。図20(a)から判るように、測定結果と解析結果は相互に良く一致しており、空調ダクト200で発生した現象が、音響管の場合と同様の音響現象であることが確認できた。また、図20(b)から判るように、測定と解析の傾向は相互に似通っており、13Hzでも2.5Hzと同様の現象が確認できた。
【0015】
(空調ダクトの内部の音圧の周波数特性の解析結果)
次いで、図21には、伝達マトリックス法で図17の四端子行列を用いて求めた、測定点eにおける音圧の周波数特性の解析結果を示す。この図21では、2.0Hz、5.25Hz、8.75Hz、12.25Hzでピークが認められた。図19(a)に示した測定点eの測定結果でも2.5Hz、4.2Hz、8.4Hz、13Hzにピークがあり、図21のピークとほぼ似通った周波数帯にピーク値が存在することが判った。この解析結果の周波数特性の類似性と音圧分布の類似性から、ダクト系の共鳴現象が2.5Hz、8.4Hz、13Hzで発生していることが確認できた。以上から、伝達マトリックス法を用いて空調ダクト200の内部の音圧を解析して実測値と比較した結果、超低周波数域の共鳴現象が空調ダクト200の内部で発生していることが確認された。
【0016】
(測定結果及び解析結果の考察)
これまでに説明した測定結果及び解析結果から、本願発明者により、以下のことが見出された。空調機ONと空調機OFFの両方の状態において、空調ダクト200の内部および磁気シールドルーム100の内部の音圧と、磁気ノイズ、内壁の振動の周波数特性を測定した結果、空調ダクト200から磁気シールドルーム100の内部に伝搬した超低周波音が、磁気シールドルーム100の内壁を垂直方向に振動させることにより、2.5Hz、5Hz、8Hz、10Hz、13Hzで磁気ノイズが生じていることが見出された。さらに、2.5Hz、13Hzの空調ダクト200の内部の音圧分布の測定結果は、伝達マトリックス法を用いた空調ダクト200の内部の音圧解析結果とよく一致し、グラスウール製の空調ダクト200の内部でも超低周波の共鳴現象が生じていることが見出された。また、測定と一致した解析のピーク値の周波数帯は、空調ダクト200の低周波音による磁気シールドルーム100の内壁の振動に起因すると考えられた磁気ノイズ(2.5Hz、5Hz、8Hz、13Hz)と概ね同じ周波数帯であり、グラスウール製の空調ダクト200のダクト共鳴が、磁気シールドルーム100の微弱磁気ノイズの要因であることが見出された。
【0017】
このように空調ダクト200のダクト共鳴が、磁気シールドルーム100の微弱磁気ノイズの要因になることは、極めて予想外の事実であった。すなわち、これまでは、除振型の磁気シールドルーム100に適用される空調ダクト200としては、微振動による磁気ノイズが発生しない非磁性体のグラスウール製の空調ダクト200が使用されており、このようなグラスウール製の空調ダクト200はその軟質性のため、金属製ダクトのような共鳴現象を生じさせないものと考えられており、空気ゆらぎや音圧の要因としては一切考慮されていなかった。特に、今回の空気ゆらぎのように、非可聴周波数帯の20Hz以下の超低周波音におけるグラスウール製の空調ダクト200の共鳴現象について、これまでに存在が確認された事例はなく、従って、その対策についても検討された事例はなかった。
【0018】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、これまでは存在自体が全く想定されていなかった共鳴音であって、空調ダクトから発せられる非可聴周波数帯の共鳴音を低減することにより、従来より高い磁気ノイズの遮蔽効果を得ることが可能な、共鳴音低減構造を有する磁気シールドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、空調設備に対して軟質非磁性体にて形成された空調ダクトを介して接続された磁気シールドルームであって、前記空調設備の振動に共鳴した前記空調ダクトから発せられる非可聴周波数帯の共鳴音を低減するための共鳴型消音器であって、非磁性体にて形成された共鳴型消音器を、当該空調ダクトに設けたものである。
【0020】
また、請求項2に係る本発明は、請求項1に係る本発明において、前記空調ダクトは、グラスウールにて形成されたグラスウールダクトである。
【0021】
また、請求項3に係る本発明は、請求項1又は2に係る本発明において、前記共鳴型消音器は、グラスウールにて形成されたサイドブランチである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る本発明によれば、非磁性体にて形成された共鳴型消音器を空調ダクトに設けたことにより、これまでは存在自体が全く想定されていなかった共鳴音であって、空調ダクトから発せられる非可聴周波数帯の共鳴音を低減することができ、従来より磁気ノイズの低い極低磁気ノイズ空間を実現することができ、より微弱な脳磁界信号を計測することが可能になる。
【0023】
また、請求項2に係る本発明によれば、空調ダクトは、グラスウールにて形成されたグラスウールダクトであるため、これまでは存在自体が全く想定されていなかった共鳴音であって、グラスウールにて形成された空調ダクトの共鳴により生じる共鳴音を低減することができる。
【0024】
また、請求項3に係る本発明によれば、共鳴型消音器を、グラスウールにて形成されたサイドブランチとしたので、共鳴型消音器を、空調ダクトと同一の安価な材料にて簡易に形成することが可能になる。特に、グラスウールは比較的加工が容易であることから、現場で、サイドブランチ内の音圧を測定し、音圧が最も高い長さ(サイドブランチが最も共鳴して振動を吸収できる長さ)にサイドブランチを切断することで、サイドブランチの長さを容易に最適な長さに調整することができる。従って、状況に応じて異なり得る様々な共鳴音を効果的に低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る共鳴音低減構造を有する磁気シールドルームが設置された建屋の要部平面図である。
【図2】図1の空調ダクト周辺の要部縦断面図である。
【図3】空調ダクト及びサイドブランチを中心とする要部斜視図である。
【図4】サイドブランチを中心とする要部斜視図である。
【図5】サイドブランチ及び空調ブランチダクトを中心とする要部斜視図である。
【図6】音圧の周波数特性の測定結果を示す図であり、(a)は測定点fにおける測定結果、(b)は測定点gにおける測定結果、(c)は測定点nにおける測定結果を示す図である。
【図7】空調ダクトの音圧分布の測定結果を示す図である。
【図8】磁気シールドルームの室内音圧の測定結果を示す図である。
【図9】磁気シールドルームの内壁の振動速度の測定結果を示す図であり、(a)はx方向の振動速度Lwxの測定結果、(b)はy方向の振動速度Lwyの測定結果を示す図である。
【図10】磁気シールドルームの磁気ノイズの測定結果を示す図であり、(a)はx方向の磁気ノイズBの測定結果、(b)はy方向の磁気ノイズBの測定結果、(c)はz方向の磁気ノイズBの測定結果を示す図である。
【図11】2.3Hz用のサイドブランチを設けていない状態と設けた状態での空調ダクトの音圧分布の測定結果と、サイドブランチの音圧分布の測定結果とを示す図である。
【図12】2.5Hz用のサイドブランチを設けていない状態と設けた状態での空調ダクトの音圧分布の測定結果を示す図である。
【図13】複数のサイドブランチを取り付けた例を示す図である。
【図14】従来の除振型の磁気シールドルームにおける磁気ノイズの測定状況を示す縦断面図である。
【図15】空調メインダクトの内部における音圧分布の測定点を示す図である。
【図16】空調ブランチダクトの内部における音圧分布の測定点を示す図である。
【図17】解析に用いた空調メインダクトと空調ブランチダクトの四端子行列を示す図である。
【図18】磁気シールドルームの測定結果を示す図であり、(a)はx方向の磁気ノイズBの測定結果、(b)は内壁のy方向の振動速度Lwyの測定結果、(c)は室外音圧Sout、室内音圧Sin、及びダクト内音圧Sの測定結果を示す図である。
【図19】音圧の周波数特性の測定結果を示す図であり、(a)は測定点eにおける測定結果、(b)は測定点hにおける測定結果を示す図である。
【図20】実測された音圧分布の測定結果と、伝達マトリックス法を用いて求めた音圧分布とを示す図であり、(a)はピーク2.5Hzの成分についての音圧分布、(b)はピーク13Hzの成分についての音圧分布を示す図である。
【図21】伝達マトリックス法で求めた音圧の周波数特性の解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る共鳴音低減構造を有する磁気シールドルームの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕本実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕本実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
〔I〕本実施の形態の基本的概念
まず本実施の形態の基本的概念について説明する。本実施の形態に係る共鳴音低減構造を有する磁気シールドルームは、上述した極微弱磁界を計測することを含む様々な目的に利用可能なものであり、例えば、宇宙空間の如き特殊な空間の磁場を再現するための磁気シールドルームや、電子ビーム描画装置や走査電子顕微鏡等を設置するための磁気シールドルームとして利用可能である。
【0028】
この磁気シールドルームは、空調設備に対して、軟質非磁性体にて形成された空調ダクトを介して接続されている。以下では、これら磁気シールドルーム、空調設備、及び空調ダクトについては、特記する構造を除いて、上記従来の除振型の磁気シールドルームと同様の構造及び材質で構成されているものとする。
【0029】
〔II〕本実施の形態の具体的内容
次に、本実施の形態の具体的内容について説明する。図1は、実施の形態に係る共鳴音低減構造を有する磁気シールドルームが設置された建屋の要部平面図、図2は、図1の空調ダクト周辺の要部縦断面図、図3は、空調ダクト30及びサイドブランチ40を中心とする要部斜視図、図4は、サイドブランチ40を中心とする要部斜視図、図5は、サイドブランチ40及び空調ブランチダクト32を中心とする要部斜視図である。以下、図1、2のX方向の距離を「長さ」、Y方向の距離を「奥行き」、Z方向の距離を「高さ」と称する。また、図14〜16に示す従来の構成のうち、本実施の形態の各部に対応する構成については、本実施の形態の各部の符号を図14〜16に括弧内に示す。また、図14〜16の測定点a〜nを、図3〜5にも示す。
【0030】
図1、2に示すように、建屋1の内部には、磁気シールドルーム10、空調機20、空調ダクト30、及びサイドブランチ40が設けられている。
【0031】
建屋1は、磁気シールドルーム10と、この磁気シールドルーム10に磁気ノイズを与える可能性がある共鳴音を低減するための共鳴音低減構造を備える共鳴音低減構造を有する磁気シールド用建屋である。
【0032】
磁気シールドルーム10は、除振型の磁気シールドルームであり、アクティブ除振装置等の各種の除振装置を基礎とし、この基礎の上に、磁気シールド体によって、天井、床、及び側壁を構築することによって、構成されている。磁気シールド体は、例えば、複数の磁性角筒体をフレームを介して相互に間隔を空けるように支持して構成されている(これら磁性角筒体やフレームの図示は省略する)。磁性角筒体は、磁性材料により形成されている。この磁性材料の具体的種類は任意であるが、例えば珪素鋼板(方向性珪素鋼板、無方向性珪素鋼板)、パーマロイ、電磁鋼板、あるいは、アモルファス板を用いることができる。
【0033】
空調機20は、空気調和を行った空気を供給する空調設備であり、例えば、ヒートポンプや送風機の如き各種の空調機器を含んで構成されている。この空調機20は、当該空調機20からの発せられる磁気ノイズや振動が磁気シールドルーム10に及ぶことを回避するため、当該磁気シールドルーム10から離れた位置(例えば、約46、500mmだけ離れた位置)に配置されている。
【0034】
図1〜5に示すように、空調ダクト30は、空調機20から供給された空気を磁気シールドルーム10に導入するための通気路である。この空調ダクト30は、円筒形状や角筒形状を含む各種の形状の中空筒体であり、全体として同一の径にて構成され、あるいは、従来と同様に、異なる径の複数のダクトを相互に接続して構成される。ここで、軟質非磁性体とは、空調設備の振動に共鳴することによって非可聴周波数帯(人間の非可聴周波数帯であり、具体的には20Hz以下。以下同じ)の共鳴音を生じさせ得る程度の軟質性を有し、かつ、振動しても磁気ノイズを生じさせない磁性体であることを意味しており、例えば、段ボール、塩化ビニール等の軟質樹脂、グラスウール、あるいはロックウールを挙げることができる。以下では、空調ダクト30は、上述した従来の空調ダクトと同様に、グラスウール製のグラスウールダクトとして構成されており、空調メインダクト31と、空調ブランチダクト32を備えており、空調ブランチダクト32は、図5に示すように、第1〜第4空調ブランチダクト33〜36を接続して構成されている。
【0035】
サイドブランチ40は、空調機20の振動に共鳴した空調ダクト30から発せられる非可聴周波数帯の共鳴音を低減するための共鳴型消音器であり、磁気シールドルーム10に磁気ノイズを与える可能性がある共鳴音を低減するための共鳴音低減構造である。このサイドブランチ40は、空調ダクト30の側方に接続された中空筒状体として構成されるもので、特に、本実施の形態においては、図3〜5に示すように、第1から第5サイドブランチ41〜45を順次接続して構成されている。
【0036】
具体的には、第1サイドブランチ41は、空調メインダクト31の側方に接続されており、第2サイドブランチ42は、第1サイドブランチ41の端部に接続されており、以降、第3サイドブランチ43は第2サイドブランチ42の端部、第4サイドブランチ44は第3サイドブランチ43の端部、第5サイドブランチ45は第4サイドブランチ44の端部に、それぞれ接続されている。これら第1から第5サイドブランチ41〜45のうち、第2サイドブランチ42は鉛直方向に沿って配置されており、他の第1サイドブランチ41と、第3から第5サイドブランチ43〜45とは、水平方向に沿って配置されている。また、第1サイドブランチ41、第2サイドブランチ42、及び第4サイドブランチ44は、空調メインダクト31に対して直交する方向に沿って配置されており、第3サイドブランチ43及び第5サイドブランチ45は、空調メインダクト31に対して平行に配置されている。これら第1から第5サイドブランチ41〜45は、相互に同一の径及び断面形状を有し、各々の両端部のうち、第5サイドブランチ45の終端部(第4サイドブランチ44から遠い方の端部)のみが閉鎖状とされ、他の端部は開口状とされている。
【0037】
このように構成されたサイドブランチ40は、1/4波長干渉型の消音器として機能し、空調ダクト30の内部からサイドブランチ40の内部に至った音のうち、当該サイドブランチ40の長さに応じて共鳴する特定の周波数の音が終端部(第5サイドブランチ45の閉鎖状の端部)で反射して空調ダクト30に戻り、空調ダクト30の内部の音と逆位相で合成されることで、空調ダクト30の内部の音が低減される。従って、サイドブランチ40の全長を、空調ダクト30から発せられる共鳴音の非可聴周波数に合致する長さとすることで、当該共鳴音を低減することが可能になる。具体的には、共鳴音の非可聴周波数が2.5Hzである場合、サイドブランチ40の全長は、2.5Hzの1/4波長の長さである34mとなる((340m/s)/(2.5Hz)/4=34m)。
【0038】
ただし、空調ダクト30から発せられる共鳴音の非可聴周波数は、予め正確に算定できない場合もあるため、施工現場において調整してもよい。例えば、後述するように、このサイドブランチ40をグラスウール等で形成した場合、グラスウールは比較的加工が容易であることから、現場で、サイドブランチ40内の音圧を測定し、音圧が最も高い長さ(サイドブランチ40が最も共鳴して振動を吸収できる長さ)にサイドブランチ40を切断することで、サイドブランチ40の長さを容易に最適な長さに調整してもよい。
【0039】
また、サイドブランチ40は、空調ダクト30の共鳴音が最大になる位置(ピーク)に接続されることが好ましく、共鳴音の波の腹部に対応する位置に取り付けることが好ましい。例えば、共鳴音の非可聴周波数が2.5Hzである場合、空調ダクト30の空調機20側の端部から、2.5Hzの1/4波長の長さである約30mの位置に(図4においては、ほぼ腹の位置に対応する測定点fから4000mmの位置に)、サイドブランチ40を取り付ける。なお、サイドブランチ40の径は、共鳴音を低減できる限りにおいて任意であるが、ここでは、空調メインダクト31の径が約450mmであるのに対して、サイドブランチ40の径を約300mmとしている。すなわち、サイドブランチの径は、メインダクトの径(450mmφ)と同じ径であれば、低減できる周波数帯幅が最大になるが、350mmφ、300mmφ、あるいは250mmφであっても対象とする周波数帯の音圧を低減できる。
【0040】
このサイドブランチ40は、非磁性体にて形成されている。このようにサイドブランチ40を非磁性体で形成するのは、サイドブランチ40が空調ダクト30からの振動により微振動した場合であっても磁気ノイズを発生させないためである。この非磁性体としては、空調ダクト30を構成する軟質磁性体と同様の材料を使用することができ、例えば、段ボール、塩化ビニール等の軟質樹脂、グラスウール、あるいはロックウールを使用することができる。
【0041】
(本実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、非磁性体にて形成された共鳴型消音器としてのサイドブランチ40を空調ダクト30に設けたことにより、これまでは存在自体が全く想定されていなかった共鳴音であって、空調ダクト30から発せられる非可聴周波数帯の共鳴音を低減することができ、従来より一桁〜二桁ノイズレベルの低い低磁気ノイズの空間(極微弱磁気ノイズ空間)を実現する(例えば本実施の形態では200fT/Hz1/2から10fT/Hz1/2)ことができ、より微弱な脳磁界信号を計測することが可能になる。
【0042】
また、空調ダクト30は、グラスウールにて形成されたグラスウールダクトであるため、これまでは存在自体が全く想定されていなかった共鳴音であって、グラスウールにて形成された空調ダクト30の共鳴により生じる共鳴音を低減することができる。
【0043】
また、共鳴型消音器を、グラスウールにて形成されたサイドブランチ40としたので、共鳴型消音器を、空調ダクト30と同一の安価な材料にて簡易に形成することが可能になる。特に、グラスウールは比較的加工が容易であることから、現場で、サイドブランチ40内の音圧を測定し、音圧が最も高い長さ(サイドブランチ40が最も共鳴して振動を吸収できる長さ)にサイドブランチ40を切断することで、サイドブランチ40の長さを容易に最適な長さに調整することができる。従って、状況に応じて異なり得る様々な共鳴音を効果的に低減することが可能になる。
【0044】
〔実施例〕
次に、本発明の実施例(実験結果)について説明する。ここでは、空調ダクト30の内部の音圧の測定結果と、磁気シールドルーム10の内部の音圧等の測定結果について、それぞれ説明する。なお、特記する場合を除いて、実験状況や実験装置は、上記従来の磁気シールドルームに対する実験と同様であるものとする。
【0045】
(空調ダクトの内部の音圧の測定結果)
最初に、空調ダクト30の内部の音圧の測定結果について説明する。まず、図3〜5に示す測定点a〜nの位置(図15、16の測定点a〜nと同じ位置)において、サイドブランチ40がない場合とある場合での音圧の周波数特性を測定し、2.5Hz(2.3Hz)での空調ダクト30の音圧分布を求め、サイドブランチ40の効果を確認した。
【0046】
図6(a)には、測定点f(サイドブランチ40の接続直前の点)における音圧の周波数特性の測定結果、図6(b)には、測定点g(サイドブランチ40の接続直後の点)における音圧の周波数特性の測定結果、図6(c)には、測定点n(磁気シールドルーム10の接続前の点)における音圧の周波数特性の測定結果を、それぞれ示す。これら図6(a)〜(c)において、横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は音圧(dB)である。これら図6(a)〜(c)から判るように、測定点f、g、nのいずれにおいても、2〜3Hzの周波数帯で、サイドブランチ40がある場合は、サイドブランチ40がない場合に比べて、音圧が10〜20dB低減している。
【0047】
図7には、空調ダクト30の音圧分布の測定結果を示す。この図7において、横軸は空調機20からの距離(m)であり、縦軸は音圧(dB)である。ここでは、サイドブランチ40がない場合とある場合での音圧分布を示しているが、サイドブランチ40がある場合としては、2.5Hz(長さ=28m)と、2.3Hzの(長さ=28m)での計測結果を示す。このように2.3Hz用のサイドブランチ40についても実験を行ったのは、図6(a)〜(c)の測定結果において、2.3Hzのピークも大きかったためである。この図7から判るように、3つの場合の音圧分布は、空調機20の直近の測定点(測定点a)から互いに異なっており、特に、サイドブランチ40の接続点の以遠(測定点g以遠)では、サイドブランチ40がある場合は、サイドブランチ40がない場合に比べて、音圧が10〜20dB低減している。なお、実際には、サイドブランチ40の長さは、端部の蓋の剛性に依存する。すなわち、端部の蓋が剛の場合は原則通り34mであるが、音圧が最大になり粒子速度が端部で最小になるため、端部の蓋が剛でない場合原則より短くなり、今回は蓋をグラスウールとしたので28mとなった。
【0048】
(磁気シールドルームの内部の音圧等の測定結果)
次に、磁気シールドルーム10の内部の音圧等の測定結果について説明する。上記測定点a〜nにおいて、磁気シールドルーム10の室内音圧Sin、内壁のx方向の振動速度Lwxとy方向の振動速度Lwy、x、y、z方向の磁気ノイズB、B、Bを、サイドブランチ40がない場合とある場合とで比較した。
【0049】
図8には、磁気シールドルーム10の室内音圧の測定結果を示す。縦軸は音圧(dB)、横軸は周波数(Hz)である。この図8から判るように、1〜3Hzの周波数帯で、サイドブランチ40がある場合は、サイドブランチ40がない場合に比べて、音圧が10dB程度低減している。
【0050】
図9(a)には、内壁のx方向の振動速度Lwxの測定結果、図9(b)には、内壁のy方向の振動速度Lwyの測定結果をそれぞれ示す。縦軸は振動速度(mm/sec)/Hz1/2)、横軸は周波数(Hz)である。この図9(a)から判るように、2〜7Hzの周波数帯で、サイドブランチ40がある場合は、サイドブランチ40がない場合に比べて、内壁のx方向の振動速度Lwxは、約1/2〜1/3(10dB)に低減している。また、図9(b)から判るように、1〜10Hzの周波数帯で、サイドブランチ40がある場合は、サイドブランチ40がない場合に比べて、内壁のy方向の振動速度Lwyは、約1/3(10dB)に低減している。
【0051】
図10(a)には、x方向の磁気ノイズBの測定結果、図10(b)には、y方向の磁気ノイズBの測定結果、図10(c)には、z方向の磁気ノイズBの測定結果をそれぞれ示す。縦軸は磁気ノイズのレベル(fT/Hz1/2)、横軸は周波数(Hz)である。これら図10(a)〜(c)から判るように、特に2〜3Hzの周波数帯で、サイドブランチ40がある場合は、サイドブランチ40がない場合に比べて、磁気ノイズB、B、Bはいずれも約1/3(10dB)に低減している。
【0052】
さらに、図11には、2.3Hz用のサイドブランチ40を設けていない状態(2.3Hz(サイドブランチなし))と設けた状態(2.3Hz(サイドブランチ28mあり))での空調ダクト30の上述の測定点a〜nにおける音圧分布の測定結果と、図4に示すサイドブランチ40の測定点o〜uにおける音圧分布の測定結果(2.3Hzサイドブランチ(28m))とを示す。この図11において、横軸は空調機20からの距離(m)であり、縦軸は音圧(dB)である。ここでは、サイドブランチ40の接続点(空調機からの距離=約30m)の位置から、サイドブランチ40の測定点o〜uにおける音圧が徐々に上昇しているのに対して、これにほぼ逆比例するように、サイドブランチ40を設けた状態における空調ダクト30の測定点g〜nにおける音圧が低下しており、空調ダクト30の共鳴音がサイドブランチ40によって低減されていることが判る。また、空調ダクト30の音圧に関しては、サイドブランチ40を設けた状態の方が、設けていない状態に比べて、特に、サイドブランチ40の接続点(空調機からの距離=約30m)の位置以降において、明らかに音圧が低下している。
【0053】
また、図12には、2.5Hz用のサイドブランチ40を設けていない状態と設けた状態での空調ダクト30の上述の測定点a〜nにおける音圧分布の測定結果を示す。この図12において、横軸は空調機20からの距離(m)であり、縦軸は音圧(dB)である。ここでは、サイドブランチ40を設けた状態の方が、設けていない状態に比べて、特に、サイドブランチ40の接続点(空調機からの距離=約30m)の位置以降において、明らかに音圧が低下している。
【0054】
これらの実験結果から、非磁性体にて形成された共鳴型消音器としてのサイドブランチ40を空調ダクト30に設けたことにより、空調ダクト30から発せられる非可聴周波数帯の共鳴音を低減できることが確認された。また、サイドブランチ40を空調ダクト30に設けたことにより、磁気シールドルーム10の室内音圧と内壁振動も低減されることが確認できたので、これら室内音圧や内壁振動に起因する磁気ノイズも減衰可能であることが検証できた。
【0055】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0056】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
また、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0057】
(磁気シールドルーム、空調設備、及び空調ダクトの構成について)
磁気シールドルーム10、空調設備、及び空調ダクト30の構成としては、実施の形態で示した構成に限定されず、任意の構成を採用することが可能である。例えば、複数台の空調設備から共通又は個別の空調ダクト30を介して磁気シールドルーム10に空気を供給してもよい。
【0058】
(サイドブランチの構成について)
サイドブランチ40の構成としては、実施の形態で示した構成に限定されず、空調ダクト30の共鳴音を低減できる限りにおいて、任意の構成を採用することが可能である。例えば、実施の形態においては、サイドブランチ40を空調メインダクト31に接続しているが、空調ブランチダクト32に接続してもよい。また、サイドブランチ40を第1から第5サイドブランチにより構成しているが、単なる1本の中空管から構成してもよい。また、このように複数のサイドブランチ40により構成する場合においても、これら複数のサイドブランチ40の断面形状や径を相互に異なるものとしてもよい。また、空調ダクト30が複数設けられる場合には、これら複数の空調ダクト30の各々にサイドブランチ40を設けることが好ましいが、複数の空調ダクト30の一部のみにサイドブランチ40を設けてもよい。
【0059】
また、1本の空調ダクト30に対して複数のサイドブランチ40を設けてもよい。この場合において、複数のサイドブランチ40は、同一周波数の共鳴音を低減するためのものであってもよく、あるいは、異なる周波数の共鳴音を低減するためのものであってもよい。前者の場合としては、特定の周波数の共鳴音を1本のサイドブランチ40のみで十分に低減できない場合に、当該共鳴音の腹に対応する複数の位置の各々に、同一長さのサイドブランチ40を接続することが考えられる。また、後者の場合としては、複数の周波数の共鳴音が発生している場合、各共鳴音に対応するサイドブランチ40であって、相互に異なる長さのサイドブランチ40を、それぞれの共鳴音の腹に対応する位置に接続することが考えられる。図13には、複数のサイドブランチを取り付けた例を示す。ここでは、磁気シールドルーム10の内部に残っている低周波数の音圧ピーク6Hz、8Hz、11Hz、及び14Hzを低減することを目的に、空調ダクト30(長さ46.5m、直径450mmφ)に対して、各音圧ピークに対応した複数のサイドブランチ40A〜40Eを取り付けている。これらサイドブランチ40A〜40Eは、いずれも直径300mmφのグラスウールで構成されており、このうち、サイドブランチ40Aは、実施の形態のサイドブランチ40と同様に構成されている。このような構造により、20Hz以下の空調ダクト30のゆらぎによる低周波音に起因する磁気シールドルーム10の内部に伝搬した超低周波音が、磁気シールドルーム10の内壁を垂直方向(壁の面外方向)に振動させ、2.5Hz、5Hz、8Hz、13Hzで磁気ノイズが生じている超低周波音の低減が可能になる。
【符号の説明】
【0060】
1 建屋
10、100 磁気シールドルーム
20、300 空調機
30、200 空調ダクト
31、201 空調メインダクト
32、202 空調ブランチダクト
33、203 第1空調ブランチダクト
34、204 第2空調ブランチダクト
35、205 第3空調ブランチダクト
36、206 第4空調ブランチダクト
40、40A〜40E サイドブランチ
41 第1サイドブランチ
42 第2サイドブランチ
43 第3サイドブランチ
44 第4サイドブランチ
45 第5サイドブランチ
101 天井
102 床
103 側壁
104 換気口
a〜u 測定点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調設備に対して軟質非磁性体にて形成された空調ダクトを介して接続された磁気シールドルームであって、
前記空調設備の振動に共鳴した前記空調ダクトから発せられる非可聴周波数帯の共鳴音を低減するための共鳴型消音器であって、非磁性体にて形成された共鳴型消音器を、当該空調ダクトに設けた、
共鳴音低減構造を有する磁気シールドルーム。
【請求項2】
前記空調ダクトは、グラスウールにて形成されたグラスウールダクトである、
請求項1に記載の共鳴音低減構造を有する磁気シールドルーム。
【請求項3】
前記共鳴型消音器は、グラスウールにて形成されたサイドブランチである、
請求項1又は2に記載の共鳴音低減構造を有する磁気シールドルーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−54332(P2012−54332A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194405(P2010−194405)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 :社団法人 空気調和・衛生工学会 刊行物名、巻数、号数 :平成22年度大会(山口)学術講演論文集III 発行年月日 :平成22年8月12日
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】