説明

内燃機関における吸気装置

【課題】エアクリーナからの吸気入口10を有するサージタンク6と内燃機関の各気筒2,3,4との間を,各気筒ごとに独立する吸気枝管7,8,9にて接続して成る吸気装置において,サージタンク内に溜まる水による弊害を低減する。
【解決手段】前記各吸気枝管のうち少なくとも一つの吸気枝管9を,前記サージタンク6の底部に横向きに接続し,この一つの吸気枝管9には,前記サージタンクの底部への横向きの接続部9aから上向きに曲がる立ち上がり部9bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,複数の気筒を備えた内燃機関において,エアクリーナからの吸気を,各気筒に分配するための吸気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の内燃機関においては,先行技術としての特許文献1及び2等に記載されているように,吸気効率を向上を図るために,エアクリーナからの吸気入口を有するサージタンクと内燃機関の各気筒との間を,各気筒ごとに独立する吸気枝管にて接続するという構成にした吸気装置が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−193755号公報
【特許文献2】特開2006−118437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記各特許文献の記載の吸気装置は,そのいずれも,各気筒への吸気枝管を,サージタンクの底面に,下向きに延びるように接続するという構成にしていることにより,前記サージタンク内における凝縮水等の水は,液体のままの状態で吸気枝管を通って気筒の燃焼室に吸い込まれることになるから,燃焼の悪化を招来するおそれが大きいという問題がある。
【0005】
また,特許文献2の吸気装置においては,サージタンク内における凝縮水等の水は,当該サージタンク内の底に一旦溜めるようにしているが,このサージタンク内の底に溜まった水は,内燃機関の始動の際,及び/又は,内燃機関の加速の際に,これも液体のままの状態で吸気枝管を通って気筒の燃焼室に一気に吸い込まれることになるから,内燃機関に始動性の低下,加速性の低下といった悪影響を及ぼすという問題がある。
【0006】
本発明は,前記の吸気装置において、前記した問題を解消することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「エアクリーナからの吸気入口を有するサージタンクと内燃機関の各気筒との間を,各気筒ごとに独立する吸気枝管にて接続して成る吸気装置において,
前記各吸気枝管のうち少なくとも一つの吸気枝管は,前記サージタンクの底部に横向きに接続されており,この一つの吸気枝管には,前記サージタンクの底部への横向きの接続部から上向きに曲がる立ち上がり部が設けられている。」
ことを特徴としている。
【0008】
また,請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記一つの吸気枝管における前記サージタンクへの横向きの接続部は,前記サージタンクへの吸気入口に対向している。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1によると,サージタンクの底に溜まる凝縮水等の水は,前記サージタンクから各気筒への吸気枝管のうち一つの吸気枝管における横向きの接続部の底に入って溜まり,この水は,サージタンク内から気筒に向かうように流れる吸気によって吹き上げられることによって水滴になる。
【0010】
この水滴は,前記横向きの接続部の下流側に設けられている上向きへの立ち上がり部において浮遊する状態で,吸気に比較的長い時間にわたって曝されることにより,大部分が気化することになる。
【0011】
これにより,前記サージタンク内の底に溜まる水が,液体の状態のままで気筒の燃焼室に吸い込まれるのを大幅に少なくできるから,水の吸い込みよる燃焼性の悪化,始動性の低下及び加速性の低下を招来することを確実に低減できる。
【0012】
特に,請求項2によると,前記サージタンク内の底に溜まる水は,吸気入口から入る吸気によって一つの吸気枝管内に積極的に押し込まれることになるから,前記した効果をより助長できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】内燃機関の平面図である。
【図2】図1のII−II視右側面図である。
【図3】図1のIII −III 視正面図である。
【図4】図2のIV−IV視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,本発明の実施の形態を,図1〜図4の図面について説明する。
【0015】
これらの図において,符号1は,複数個(三つ)の気筒2,3,4を備えた内燃機関を示し,この内燃機関1における側面には,吸気装置5が取付けられている。
【0016】
この吸気装置5は,硬質合成樹脂製で,前記内燃機関1の各気筒2,3,4における吸気ポート2a,3a,4aよりも低い部位に配設したサージタンク6と,このサージタンク6と前記各気筒2,3,4における吸気ポート2a,3a,4aとの間を各気筒2,3,4ごとに独立して接続する吸気枝管7,8,9とによって構成されている。
【0017】
前記サージタンク6には,図示しないエアクリーナからの吸気が入る吸気入口10が一体に設けられ,その上面には,前記各気筒2,3,4のうち二つ気筒2,3への吸気枝管7,8が一体に接続されている。
【0018】
また,前記サージタンク6のうち前記吸気入口10と反対側の部分における底部には,前記各気筒2,3,4のうち残り一つの気筒3への吸気枝管9が,横向きにして一体に接続されており,この横向きの接続部9aは,前記吸気入口10からの吸気が吹き込まれるように前記吸気入口10に対向している。
【0019】
前記一つの吸気枝管9のうち前記横向きの接続部9aより下流側の部位は,上向きに曲がる立ち上がり部9bが設けられている。
【0020】
この構成において,前記サージタンク6の内底面6aに溜まる凝縮水等の水は,前記サージタンク6から各気筒2,3,4への吸気枝管7,8,9のうち一つの吸気枝管9における横向きの接続部9aの内底面9a′に入って溜まり,この水は,サージタンク6内から気筒に向かうように流れる吸気によって吹き上げられることによって水滴になる。
【0021】
この水滴は,前記横向きの接続部9aの下流側に設けられている上向きへの立ち上がり部9bにおいて浮遊する状態で,吸気に比較的長い時間にわたって曝されることにより,大部分が気化することになる。
【0022】
この場合,前記一つの吸気枝管9における横向きの接続部9aは,前記サージタンク6 への吸気入口10に対向していることにより,前記サージタンク6内の底に溜まる水は,吸気入口10から入る吸気によって一つの吸気枝管9内に積極的に押し込まれることになる。
【0023】
また,前記図示した実施の形態においては,前記一つの吸気枝管9における横向きの接続部9aの内底面9a′を,前記サージタンク6における内底面6aよりも一段低くしており,これにより,前記サージタンク6から前記一つの吸気枝管9への水の流れを良好にしている。
【0024】
また,前記硬質合成樹脂製の吸気装置5は,図2に示す側面視において,その吸気入口10の中心線10′及び各吸気枝管7,8,9の中心線7′,8′,9′を境界線として,内燃機関1に対して内側の部分と,外側の部分とに二つ割りにして別々に成形し,その両者を合わせて,振動溶着等にて一体に接合することによって製造される。
【0025】
換言すると,合成樹脂製の吸気装置を,部品点数が少なく製造は容易ではあるが形状の制約が多い二つ割り構造とした場合においても,本件発明の形状とすることで,凝縮水が吸気装置内に溜まるという不具合を防止できる。
【符号の説明】
【0026】
1 内燃機関
2,3,4 気筒
5 吸気装置
6 サージタンク
7,8,9 吸気枝管
9a 横向きの接続部 9b 上向きの立ち上がり部
10 吸気入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアクリーナからの吸気入口を有するサージタンクと内燃機関の各気筒との間を,各気筒ごとに独立する吸気枝管にて接続して成る吸気装置において,
前記各吸気枝管のうち少なくとも一つの吸気枝管は,前記サージタンクの底部に横向きに接続されており,この一つの吸気枝管には,前記サージタンクの底部への横向きの接続部から上向きに曲がる立ち上がり部が設けられていることを特徴とする内燃機関における吸気装置。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記一つの吸気枝管における前記サージタンクへの横向きの接続部は,前記サージタンクへの吸気入口に対向していることを特徴とする内燃機関における吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−127564(P2011−127564A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288999(P2009−288999)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)