説明

内燃機関の制御装置

【課題】液冷式の内燃機関において、内燃機関の冷却効率の向上、及び燃費の向上を図る。
【解決手段】シリンダヘッド1及びシリンダブロック2に設けられ内部を冷却液が流通可能なウォータジャケット3と、前記冷却液を循環させる電動ポンプ8と、冷却液を放熱させる放熱器たるラジエータ5と、このラジエータ5に対する冷却水の出し入れを行うための管路7とを有する放熱装置4を備えた内燃機関100の制御装置14が、内燃機関100の負荷及び回転数に基づき前記電動ポンプ8から吐出される冷却液の流量を決定する制御、及び前記負荷の変化が検知された際に所定のディレイ時間だけ待機した後前記冷却液の流量を変化後の負荷及び回転数に基づき決定した流量に変更する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液冷式の内燃機関を制御するための内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載された内燃機関を冷却する方法の一つとして、冷却液により冷却する液冷式のものが考えられている。具体的には、シリンダヘッド及びシリンダブロックに設けられ内部を冷却液が流通可能なウォータジャケットと、前記冷却液を循環させるポンプと、冷却液を放熱させる放熱器と、この放熱器に冷却液を供給する管路とを有する放熱装置を内燃機関に設け、放熱器に達した冷却液を、送風機により送風された、或いは車両の走行によって取り入れられた外気により冷却する構成のものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、前記特許文献1記載のものでは、ポンプから吐出される冷却液の流量は、内燃機関の発熱量に基づき決定される。この発熱量は、例えば要求負荷及び回転数に基づき演算される。しかし、要求負荷が増大したことに伴い燃焼室内で燃焼する燃料の量が多くなり発熱量が大きくなった場合でも、ウォータジャケットの表面に燃焼室内の熱が伝達されてウォータジャケットの温度が上昇するまでの間にはタイムラグが存在する。すなわち、前記特許文献1記載の構成では、要求負荷が増大した後まだウォータジャケット表面の温度が上昇していない時間帯でも冷却液の流量が増加することとなり、冷却液による内燃機関の冷却はウォータジャケットの表面との熱交換により行われることから、熱交換の効率が低下するという問題が存在する。また、ウォータジャケット表面の温度がまだ上昇していないにもかかわらず冷却液の流量を増加させるべくポンプの回転数を上昇させることにより、燃費が悪化するという問題も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−213242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に着目し、液冷式の内燃機関において、内燃機関の冷却効率の向上、及び燃費の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る内燃機関の制御装置は、シリンダヘッド及びシリンダブロックに設けられ内部を冷却液が流通可能なウォータジャケットと、前記冷却液を循環させるポンプと、冷却液を放熱させる放熱器と、この放熱器に対する冷却水の出し入れを行うための管路とを有する放熱装置を備えた内燃機関の制御装置であって、内燃機関の負荷及び回転数に基づき前記ポンプから吐出される冷却液の流量を決定する制御、及び前記負荷の変化が検知された際に所定のディレイ時間だけ待機した後前記冷却液の流量を変化後の負荷及び回転数に基づき決定した流量に変更する制御を行うことを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、燃焼室内の温度が変化してからウォータジャケットの表面の温度が変化するまでのタイムラグに対応する時間帯の長さを前記ディレイ時間とすることで、放熱装置による内燃機関の冷却効率の上昇、及び燃費の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液冷式の内燃機関において、内燃機関の冷却効率の向上、及び燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両を概略的に示す図。
【図2】同実施形態に係る制御装置が行う制御の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を図1〜図2を参照しつつ以下に述べる。
【0011】
本発明の内燃機関100は、例えば冷却液として冷却水を使用するもので、前記図1に示すように、シリンダブロック1とシリンダヘッド2との内部に設けられて冷却水が循環するウォータジャケット3、冷却水を放熱させる放熱器たるラジエータ5、このラジエータ5に送風する送風機6、及び前記ラジエータ5に対する冷却水の出し入れを行うための管路であるラジエータ側管路7を有する放熱装置4と、前記ウォータジャケット3と前記ラジエータ5との間で冷却水を循環させるための電動ポンプ8とを備えている。
【0012】
前記ウォータジャケット3は、前記図1に示すように、その内部に冷却水を流通させるための冷却水通路3aを有する。また、このウォータジャケット3は、前記ラジエータ5に対して冷却水を送り込むためのラジエータ側冷却水戻り管路7aに接続されるラジエータ側ウォータアウトレット3a、及び前記ラジエータ5から冷却水を受け取るためのラジエータ側冷却水供給管路7bに接続されるラジエータ側ウォータインレット3bを備えている。ここで、前記ラジエータ側ウォータアウトレット3aの近傍位置には、冷却水の温度(冷却水温度)を検出する水温センサ9を備えている。さらに、このウォータジャケット3は、車両暖房を行うためのヒータ10に冷却水を送り込むためのヒータ側冷却水戻り管路11aに接続されるヒータ側ウォータアウトレット3c、及び前記ヒータ10から冷却水を受け取るためのヒータ側冷却水供給管路11bに接続されるヒータ側ウォータインレット3dを備えている。ここで、前記ラジエータ側冷却水戻り管路7a及び前記ラジエータ側冷却水供給管路7bは、前記ラジエータ側管路7を構成する。また、前記ヒータ側冷却水戻り管路11a及び前記ヒータ側冷却水供給管路11bは、ヒータ10に対する冷却水の出し入れを行うためのヒータ側管路11を構成する。
【0013】
前記送風機6は、前記図1に示すように、前記ラジエータ5の背面側に配置され、該ラジエータ5に放熱のための風を供給する図示しない送風モータ、及びこの送風モータにより回転駆動される送風ファンを有する。送風モータは、例えば直流モータである。
【0014】
また、前記図1に示すように、前記ラジエータ側冷却水供給管路7bにはラジエータバイパス管路12が接続されており、前記ラジエータ側冷却水供給管路7bと前記ラジエータバイパス管路12の接続部には開閉弁である電子サーモスタット13が設けられている。
【0015】
この電子サーモスタット13は、前記図1に示すように、前記ラジエータ5を通過してラジエータ側冷却水供給管路7bを流通する冷却水と、前記ラジエータバイパス管路12を流通する冷却水とが電動ポンプ8側へ流出する流量を制御するワックス式のサーモスタットバルブを備えている。このサーモスタットバルブは、温度に応じて圧縮および膨張するワックスを感温部として利用することで、機関内冷却水通路を通過した冷却水の水温に応じてそのバルブが機械的に開閉し得る構成となっている。
【0016】
前記電動ポンプ8は、回転速度を変更できる形式の例えば直流モータで、その回転数を検出する回転数センサ15を備えている。この電動ポンプ8は、制御装置14から出力される駆動信号eによりその回転数が、冷却水温度に基づいて制御される。回転数センサ15から出力されるポンプ回転数信号bは、制御装置14に入力される。
【0017】
一方、制御装置14は、中央演算処理装置と記憶装置と入力インターフェースと出力インターフェースとを具備してなるマイクロコンピュータシステムを主体に構成されている。記憶装置には、後述する放熱制御プログラムが格納してあり、また同プログラムの実行に必要なデータなどが記憶してある。入力インターフェースには、水温センサ9から出力される水温信号aと、電動ポンプ8の回転を検出する回転数センサから出力されるポンプ回転数信号bと、内燃機関100の吸気管圧力を検出する圧力センサ16から出力される吸気圧信号cと、内燃機関100の回転数を検出する回転数センサ17から出力されるエンジン回転数信号dとが、その他の各種のセンサやスイッチ(それぞれ図示しない)の出力信号とともに入力される。また、出力インターフェースからは、電動式ポンプに対して駆動信号eが、さらには図示しない燃料噴射弁やスパークプラグなどに対してそれぞれ作動のための信号が出力される。
【0018】
前記制御装置14の内部メモリには、中央演算処理装置が実行することにより、内燃機関100の負荷、より具体的には圧力センサ16から出力される吸気圧信号cが示す吸気圧、及び回転数センサ17から出力されるエンジン回転数信号dが示すエンジン回転数をパラメータとして、前記電動ポンプ8からの冷却液の吐出量を変化させる制御を行う放熱制御プログラムが内蔵されている。
【0019】
以下、この放熱制御プログラムによる制御の手順を、フローチャートである図2を参照しつつ説明する。
【0020】
まず、吸気圧が減少したか否かを判定する(S1)。吸気圧が減少していない場合には、吸気圧が増加したか否かを判定する(S2)。吸気圧が増加している場合には、変化後の吸気圧が所定の低負荷領域又は中負荷領域であるか否かを判定する(S3)。吸気圧が減少した場合、及び吸気圧が増加した場合であって変化後の吸気圧が所定の低負荷領域又は中負荷領域である場合には、続けて所定のディレイ時間の間だけ待機する(S4)。このディレイ時間は、吸気圧が変化した後、該吸気圧の変化を反映して発熱量が変化し、この発熱量の変化にともないウォータジャケット3の温度が変化するまでの時間帯の長さに対応するものであり、例えば実験により予め決定される。その後、吸気圧及びエンジン回転数に基づき電動ポンプ8の回転数の制御を行う(S5)。より具体的には、吸気圧及びエンジン回転数をパラメータとして前記電動ポンプ8の目標回転数を決定し、電動ポンプ8の回転数を目標回転数に向けて変化させる制御を行う。一方、吸気圧の変化がない場合、及び吸気圧が増加した場合であって変化後の吸気圧が所定の高負荷領域である場合は、直ちに電動ポンプ8の回転数の制御を行う(S5)。
【0021】
以上に述べたように、本実施形態の構成によれば、負荷が変化することにより燃焼室内の温度が変化してからウォータジャケット3の表面の温度が変化するまでのタイムラグに対応させて、負荷の変化を検知してから前記ディレイ時間経過した後はじめて電動ポンプ8の回転数の制御を行いウォータジャケット3の冷却水通路3a内を通過する冷却水の流量を変化させるので、放熱装置4による内燃機関100の冷却効率の上昇、及び燃費の向上を図ることができる。
【0022】
また、本実施形態では、負荷の変化を検知してから前記ディレイ時間だけ待機する制御を、吸気圧が減少した場合、及び吸気圧が増加した場合であって変化後の吸気圧が所定の低負荷領域又は中負荷領域である場合にのみ行い、変化後の吸気圧が高負荷領域である場合には負荷の変化を検知した後直ちに電動ポンプ8の回転数を上昇させることによりウォータジャケット3の冷却水通路3a内を通過する冷却水の流量を増加させるので、内燃機関100のオーバーヒートを防ぐことができる。
【0023】
なお、本発明は以上に述べた実施態様に限らない。
【0024】
例えば、上述した実施形態では、内燃機関の負荷を示すパラメータとして吸気圧を採用しているが、アクセル操作量や、吸気マニホルドに供給される空気流量等を内燃機関の負荷を示すパラメータとして採用してもよい。
【0025】
また、上述した実施形態では、所定のディレイ時間の間だけ待機した後冷却液の流量を変化後の負荷及び回転数に基づき決定した流量に変更する制御を、吸気圧が減少した場合、及び吸気圧が増加した場合であって変化後の吸気圧が所定の低負荷領域又は中負荷領域である場合にのみ行っているが、内燃機関の熱容量が大きい場合や外気温が十分低い場合等、吸気圧が高負荷領域まで増加した場合であってもオーバーヒートが発生しないような条件の場合は、吸気圧が増加した場合であっても、変化後の吸気圧に関わらず所定のディレイ時間の間だけ待機した後冷却液の流量を変化後の負荷及び回転数に基づき決定した流量に変更するようにしても制御を行うようにしてもよい。
【0026】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0027】
100…内燃機関
1…シリンダヘッド
2…シリンダブロック
3…ウォータジャケット
4…放熱装置
5…ラジエータ(放熱器)
7…ラジエータ側管路(管路)
8…電動ポンプ
14…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド及びシリンダブロックに設けられ内部を冷却液が流通可能なウォータジャケットと、前記冷却液を循環させるポンプと、冷却液を放熱させる放熱器と、この放熱器に対する冷却水の出し入れを行うための管路とを有する放熱装置を備えた内燃機関の制御装置であって、
内燃機関の負荷及び回転数に基づき前記ポンプから吐出される冷却液の流量を決定する制御、及び前記負荷の変化が検知された際に所定のディレイ時間だけ待機した後前記冷却液の流量を変化後の負荷及び回転数に基づき決定した流量に変更する制御を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−96243(P2013−96243A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237170(P2011−237170)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)