説明

内燃機関の燃料タンク

【課題】光源等のエネルギー源を必要とせず、極めて簡単な構造としながら、貯溜される燃料を光触媒作用で改質する。製造コストを低減して安価に多量生産する。
【解決手段】内燃機関の燃料タンクは、金属板の表面に酸化チタンを付着しているチタンプレート3と、金属板の表面にセラミックスを付着しているセラミックスプレート4とを備える格子材2をタンク1内に配設している。格子材2は、チタンプレート3とセラミックスプレート4とを互いに交差するように連結して、セラミックスプレート4から放射される赤外線がチタンプレート3の酸化チタンに照射されるように配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料である液体燃料を貯溜する燃料タンクに関し、とくに、貯溜される液体燃料を改質して燃焼効率を向上できる内燃機関の燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、燃料の燃焼によって生じた高温・高圧のガスを直接利用して作動する機関であって、その燃料としてガソリン、軽油、重油等の液体燃料が使用される。これらの液体燃料は、化石燃料とも呼ばれており、その消費量を低減して有効に利用するために、燃焼効率を向上することは極めて重要である。また、環境面においても、燃焼時に発生する排気ガス中に含まれる大気汚染物質を低減することが求められている。
【0003】
内燃機関における燃焼効率を向上し、大気汚染物質の排出を低減するために、光触媒の作用を利用して燃料タンクに貯溜される液体燃料を改質する技術が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
特許文献1の公報には、内部に光触媒を配設して、この光触媒の作用で燃料を改質する燃料貯蔵槽が記載される。この燃料貯蔵槽は、液体燃料を貯蔵する主貯蔵槽内に、光触媒性燃料改質部材と、該燃料改質部材に高エネルギー線を照射する高エネルギー線源とを配設している。この燃料貯蔵槽は、液体燃料の表面下近傍に配置された燃料改質部材に、高エネルギー線源から高エネルギー線を照射し、燃料改質部材中の光触媒性金属酸化物の光触媒機能によって、金属酸化物の表面近傍にある水、酸素等から活性酸素種を生成させる。この燃料貯蔵槽は、液体燃料の主成分であるパラフィン系炭化水素を、活性酸素種と化学反応させ、その構造中にオキサイドイオンを取り込むことにより、燃焼時に有効な酸素供給源として作用させ、燃焼効率を向上することができる。
【0005】
しかしながら、この構造の燃料貯蔵槽は、主貯蔵槽内に高エネルギー線源を配置するので、全体の構造が複雑になる問題点がある。さらに、高エネルギー線源に電力を供給する必要があるので、ランニングコストが高くなると共に、メンテナンスにも手間がかかる問題点がある。
【0006】
さらに、特許文献2の公報には、金属又はセラミックス又はこれらの混合物からなる非処理成品の表面にチタニア被膜を形成してなる光触媒コーティング成型物とそのコーティング方法が記載される。この光触媒コーティング成型物は、金属又はセラミックス又はこれらの混合物からなる非処理成品の表面に、チタン又はチタン合金から成る粉体を噴射し、この粉体中のチタンを非処理成品の表面に拡散させると共に、酸化させてチタニア被膜を形成する。この光触媒コーティング成型物は、たとえば、金属又はセラミックス又はこれらの混合物からなる非処理成品を球形状に成形し、その表面にチタン又はチタン合金から成る粉体を噴射してその表面にチタニア被膜を形成することができる。このように、球形状に成形される光触媒コーティング成型物は、燃料タンク内に収納して効率よく燃料を改質できる。
【0007】
しかしながら、この光触媒コーティング成型物も、光触媒をより効果的に反応させるには、チタニア被膜に光を照射する必要があり、その供給が困難である問題点がある。また、球形状の光触媒コーティング成型物は、表面積を広くして燃料との接触面積を広くできる特長はあるが、金属又はセラミックス又はこれらの混合物からなる非処理成品を球形状に成形し、さらに、球形状の非処理成品にチタン又はチタン合金から成る粉体を噴射してその表面にチタニア被膜を形成するので、その製造に手間がかかり、安価に多量生産できない欠点がある。
【特許文献1】特開平10−176615号公報
【特許文献2】特開2000−61314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、光源等のエネルギー源を必要とせず、極めて簡単な構造としながら、貯溜される燃料を光触媒作用で改質できる内燃機関の燃料タンクを提供することにある。
さらに、本発明の他の大切な目的は、光触媒を効率よく作用させて理想的に燃料を改質できると共に、製造コストを低減して安価に多量生産できる内燃機関の燃料タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内燃機関の燃料タンクは、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。内燃機関の燃料タンクは、金属板の表面に酸化チタンを付着しているチタンプレート3と、金属板の表面にセラミックスを付着しているセラミックスプレート4とを備える格子材2をタンク1内に配設している。格子材2は、チタンプレート3とセラミックスプレート4とを互いに交差するように連結して、セラミックスプレート4から放射される赤外線がチタンプレート3の酸化チタンに照射されるように配置している。
【0010】
本発明の内燃機関の燃料タンクは、チタンプレート3が金属板の両面に酸化チタンを付着して、セラミックスプレート4が金属板の両面にセラミックスを付着することができる。
【0011】
本発明の内燃機関の燃料タンクは、チタンプレート3が、交差部分においてセラミックスプレート4の厚さよりも幅の広いスリット5を有し、セラミックスプレート4が、交差部分においてチタンプレート3の厚さよりも幅の広いスリット5を有し、チタンプレート3のスリット5にセラミックスプレート4を、セラミックスプレート4のスリット5にチタンプレート3を入れて、チタンプレート3とセラミックスプレート4を交差するように連結することができる。
【0012】
本発明の内燃機関の燃料タンクは、タンク1内に燃料を強制的に撹拌する撹拌機構6を設けることができる。この撹拌機構6は、エアーリフトポンプとすることができる。
【0013】
さらに、本発明の内燃機関の燃料タンクは、タンク1に燃料を供給する給油路23に、セラミックス粒の表面に酸化チタンを付着している酸化チタンセラミックス粒8をネット充填してなるろ過具7を配設し、タンク1に供給される燃料をろ過具7に通過させることができる。
【0014】
さらに、本発明の内燃機関の燃料タンクは、タンク1から燃料を排出する排出路27に、セラミックス粒の表面に酸化チタンを付着している酸化チタンセラミックス粒8をネット充填してなるろ過具9を配設し、タンク1から排出される燃料をろ過具9に通過させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の内燃機関の燃料タンクは、光源等のエネルギー源を必要とせず、極めて簡単な構造としながら、貯溜される燃料を光触媒作用で改質できる特長がある。それは、本発明の燃料タンクが、チタンプレートとセラミックスプレートとを互いに交差するように連結してなる格子材をタンク内に配設しているからである。この構造の燃料タンクは、セラミックスプレートから放射される赤外線がチタンプレートの酸化チタンに照射されて、酸化チタンの光触媒作用を促進するので、従来の燃料タンクのように光源等のエネルギー源を必要とせず、極めて簡単な構造としながら、タンク内の燃料を効率よく改質できる。
【0016】
さらに、本発明の特筆すべき特長は、光触媒を効率よく作用させて理想的に燃料を改質できる構造としながら、製造コストを低減して安価に多量生産できることである。とくに、本発明の燃料タンクは、金属板の表面に酸化チタンを付着したチタンプレートと、金属板の表面にセラミックスを付着したセラミックスプレートとを物理的に連結してタンク内に配設するので、従来のようにセラミックスの表面に酸化チタンを付着する構造に比べて極めて簡単に製造できる。しかも、チタンプレートとセラミックスプレートとを別々に製造するので、その生産効率を向上でき、また、これらのプレートを互いに連結して製造するので、その製造工程を簡素化して製造コストを低減できる。
【0017】
本発明の請求項3の内燃機関の燃料タンクは、チタンプレートにセラミックスプレートの厚さよりも幅の広いスリットを設けて、チタンプレートのスリットにセラミックスプレートを入れると共に、セラミックスプレートにチタンプレートの厚さよりも幅の広いスリットを設けて、セラミックスプレートのスリットにチタンプレートを入れて連結するので、チタンプレートとセラミックスプレートとを、極めて簡単に交差するように連結できる。
【0018】
さらに、本発明の請求項4の内燃機関の燃料タンクは、タンク内に燃料を強制的に撹拌する撹拌機構を設けているので、タンク内の燃料を撹拌しながら、燃料全体をむらなく効率よく改質できる。
【0019】
さらに、本発明の請求項6の内燃機関の燃料タンクは、タンクに燃料を供給する給油路に、酸化チタンセラミックス粒をネット充填してなるろ過具を配設しているので、タンクに供給される燃料をろ過具に通過させて改質できる特長がある。
【0020】
さらに、本発明の請求項7の内燃機関の燃料タンクは、タンクから燃料を排出する排出路に、酸化チタンセラミックス粒をネット充填してなるろ過具を配設しているので、タンクから排出される燃料をろ過具に通過させて改質できる特長がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための内燃機関の燃料タンクを例示するものであって、本発明は内燃機関の燃料タンクを以下のものに特定しない。
【0022】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0023】
本発明の内燃機関の燃料タンクは、内燃機関の燃料として使用される燃料を貯溜するタンクである。内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ロータリーエンジン、ジェットエンジン、タービン等が該当する。内燃機関に使用する燃料としては、ガソリン、軽油、重油等の液体燃料を挙げることができる。
【0024】
図1に示す燃料タンクは、タンク1の内部に貯溜される液体燃料10を改質するために、燃料改質部材として、チタンプレート3とセラミックスプレート4を連結してなる格子材2をタンク1内に配設している。
【0025】
タンク1は、密閉された金属製の容器で、内部に液体燃料10を貯溜する空間を有する。タンク1は、水平方向に延長してなる円筒状ないし角筒状をしており、内部に所定量の液体燃料10を貯溜できる容積を有する。タンク1の容積は、その用途により種々に設計されるが、一般的には数十〜数百リットルとすることができる。たとえば、自動車用の燃料タンクにおいては、50〜200リットルとする。タンク1は、内部に貯溜される液体燃料10が漏れないように、上方開口の本体部11の開口部を蓋体12で水密に閉塞した構造としている。
【0026】
チタンプレート3は、金属板の表面に酸化チタンを付着したものである。チタンプレート3は、たとえば、金属板の表面に酸化チタンの粉末を高速で噴射して、金属板の表面に酸化チタンを付着させて製作される。ただ、チタンプレートは、金属板の表面に酸化チタンを付着できる他の全ての方法で制作することもできる。たとえば、チタンプレートは、金属板の表面に酸化チタンをバインダーで付着することもできる。表面に酸化チタンを付着してなるチタンプレート3は、光のエネルギーを受けて光触媒作用を発揮する。チタンプレート3は、光触媒反応を効率よく作用させるために、金属板の両面に酸化チタンを付着している。
【0027】
セラミックスプレート4は、金属板の表面にセラミックスを付着したものである。このセラミックスプレート4は、チタンプレート3に赤外線を照射して、チタンプレート3の光触媒反応を促進する。セラミックスプレート4は、金属板の表面にアルミナ(酸化アルミ)やシリカ(酸化珪素)の粉末を付着させて製作される。セラミックスプレート4は、たとえば、アルミナまたはシリカを単独で、あるいはこれらの混合物を釉薬に混合したものを、金属板の表面に塗布した後、焼成して表面にセラミックスを付着させることができる。ただ、アルミナまたはシリカの粉末は、プラズマ溶着して金属板の表面に付着させることもできる。セラミックスプレート4は、効率よく赤外線を照射できるように、金属板の両面にセラミックスを付着している。
【0028】
チタンプレート3とセラミックスプレート4は、図2ないし図4に示すように、互いに交差するように連結して格子材2としている。格子材2は、セラミックスプレート4から放射される赤外線がチタンプレート3の酸化チタンに照射されるようにチタンプレート3とセラミックスプレート4とを配置している。
【0029】
図に示す格子材2は、複数のチタンプレート3を所定の間隔で平行に縦に並べると共に、複数のセラミックスプレート4を所定の間隔で横に平行に並べており、チタンプレート3とセラミックスプレート4とを互いに交差する状態で連結している。この構造の格子材2は、チタンプレート3とセラミックスプレート4とを、交差部分において隣り合う状態で配置して、セラミックスプレート4から放射される赤外線をチタンプレート3の酸化チタンに照射できる。
【0030】
ただ、格子材2は、図5に示すように、チタンプレート3とセラミックスプレート4とを交互に所定の間隔で平行に並べると共に、これらのプレートを縦横に配置して互いに交差する状態で連結することもできる。この構造の格子材2は、チタンプレート3とセラミックスプレート4とを、互いに対向する状態で配置して、セラミックスプレート4から放射される赤外線をチタンプレート3の酸化チタンに照射できる。
【0031】
以上の格子材2は、縦横に配列した複数のプレートを垂直に交差させて、各プレートで区画される領域を方形状としている。ただ、格子材2は、図6に示すように、縦横に配列した複数のプレートを斜めに交差させて、各プレートで区画される領域を平行四辺形ないしひし形とすることもできる。さらに、格子材は、図示しないが、チタンプレートとセラミックスプレートとで区画される領域が三角形状や六角形状となるように、チタンプレートとセラミックスプレートとを交差させて連結することもできる。
すなわち、本明細書において、格子材とは、複数のプレートを斜めに交差させたものも含む広い意味で使用するものとする。
【0032】
チタンプレート3とセラミックスプレート4の幅と長さは、タンク1の形状と容積によって種々に設計される。たとえば、浅いタンクでは、プレートの幅を小さくして格子材全体を低くし、浅いタンクに貯溜される液体燃料に浸漬されるようにできる。逆に、深いタンクでは、プレートの幅を大きくして格子材全体を高くできる。また、底面が広いタンクでは、プレートを長くして格子材全体の外形を大きくすることができ、底面が狭いタンクでは、プレートを短くして格子材全体の外形を小さくできる。
【0033】
さらに、格子材は、平行に配設される各プレートの数と各プレート間の距離も種々に設計できる。格子材は、平行に配設される各プレートの数を多くし、各プレート間の距離を狭くすることによって効果的に燃料を改質できる。反対に、平行に配設される各プレートの数を少なくし、各プレート間の距離を広くすることによって製造コストを低減できる。したがって、格子材は、これらのことを考慮して、平行に配設される各プレートの数と各プレート間の距離を決定する。
【0034】
チタンプレート3とセラミックスプレート4は、互いに交差するように連結するために、互いの交差部分にスリット5を設けている。図4に示すチタンプレート3とセラミックスプレート4は、互いに連結される上下の対向縁3A、4Aからプレートの中央に向かって垂直にスリット5を設けている。図4において、下方に配置されるプレート(図ではセラミックスプレート4)は、上側の対向縁4Aに所定の間隔でスリット5を設けており、上方に配置されるプレート(図ではチタンプレート3)は、下側の対向縁3Aに所定の間隔でスリット5を設けている。上下に配置されるチタンプレート3とセラミックスプレート4は、互いに対向するスリット5同士を嵌合させて、互いに交差する状態に連結される。
【0035】
図4に示すチタンプレート3とセラミックスプレート4は、ほぼ等しい上下幅を有しており、それぞれのチタンプレート3とセラミックスプレート4に上下幅のおよそ1/2の深さのスリット5を設けている。このスリット5は、チタンプレート3とセラミックスプレート4とをバランス良く連結できる。とくに、図3に示すように、上下幅の等しいチタンプレート3とセラミックスプレート4の上下端を同一面としながら連結できる。ただ、チタンプレートのスリットとセラミックスプレートのスリットは、一方を深くして他方を浅くすることもできる。
【0036】
さらに、チタンプレート3とセラミックスプレート4に設けるスリット5は、そこに挿入されるプレートの厚さよりも幅を広くしている。すなわち、図4に示すように、チタンプレート3とセラミックスプレート4とを交差させる構造においては、チタンプレート3には、セラミックスプレート4の厚さよりも幅の広いスリット5を設けており、セラミックスプレート4には、チタンプレート3の厚さよりも幅の広いスリット5を設けている。この構造のスリット5は、チタンプレート3のスリット5にセラミックスプレート4を、セラミックスプレート4のスリット5にチタンプレート3をスムーズに挿入して、チタンプレート3とセラミックスプレート4を極めて簡単に交差するように連結できる。互いに連結されるチタンプレート3とセラミックスプレート4は、その交差部分において、溶着または接着し、あるいは連結具を介して固定することができる。ただ、チタンプレートとセラミックスプレートに設けるスリットの幅は、そこに挿入されるプレートの厚さよりとほぼ等しくすることもできる。このスリットは、互いに連結されるプレート同士を位置ずれしないようにしっかりと連結できる。
【0037】
チタンプレート3とセラミックスプレート4の下端が同一面に配置される格子材2は、図1に示すように、下端部に固定部13を配置して、格子材2の下端をタンク1の底面11Aから離す状態で固定することができる。この構造は、格子材2の内側の領域にも液体燃料10を効率よく通過できる。とくに、燃料が減少して液面が格子材2の高さよりも低くなった場合においても、格子材2の内側の領域に液体燃料10を通過できる。
【0038】
さらに、チタンプレート3とセラミックスプレート4の下端が同一面に配置される格子材2は、図7に示すように、チタンプレート3とセラミックスプレート4のいずれか一方または両方の下端部に連通部14を設けて、格子材2の内側の領域に液体燃料10を通過できるようにすることもできる。図に示す連通部14は、プレートの下端部に開口した切欠部である。ただ、連通部は、図の鎖線で示すように、貫通孔とすることもできる。貫通孔である連通部は、プレートの下部から上部に向かって複数箇所に設けて、より効率よく液体燃料を通過できる。
【0039】
さらに、格子材2は、図8に示すように、上方に配置するプレート(図ではチタンプレート3)の下端をタンク1の底面11Aから離して配置して、このプレートの下端と底面11Aとの間に連通部14を設けることもできる。この構造の格子材2は、チタンプレート3とセラミックスプレート4に設けるスリット5の深さを調整して、たとえば、各プレートに設けるスリット5の深さの和が、下方に位置するプレートの上下幅よりも小さくなるようにして、簡単に連通部14を設けることができる。この構造の格子材2も、この連通部14を介して液体燃料10を格子材2の内側に通過できる。以上のように、下端部に連通部14を設けてなる格子材2は、図9に示すように、タンク1の底面11Aに直接固定することができる。
【0040】
以上の構造の格子材2は、チタンプレート3とセラミックスプレート4とを、簡単かつ容易に交差させる状態に連結できる。チタンプレート3とセラミックスプレート4とを連結してなる格子材2は、タンク1内の底面11Aに固定される。図1の格子材2は固定部13を介して、図9の格子材2は直接に、タンク1の底面11Aに固定している。格子材2は、連結具(図示せず)を介して、あるいは溶着して、固定部13または底面11Aに固定される。
【0041】
さらに、図1に示す燃料タンクは、タンク1内の液体燃料10を強制的に撹拌する撹拌機構6を設けている。図に示す撹拌機構6は、エアーリフトポンプである。この撹拌機構6は、タンク1内に上下方向に配設しているガイド筒15と、タンク1内の上部のエアーを吸引すると共に、このエアーをガイド筒15の下端部に供給するポンプ装置16とを備える。
【0042】
ポンプ装置16は、タンク1の外部に配設されたポンプ本体17を備えており、このポンプ本体17の供給側に連結された吸引パイプ18を蓋体12の上部に連結すると共に、ポンプ本体17の排出側に連結された排出パイプ19をタンク1内の底部であってガイド筒15の下端部に連結している。この構造のエアーリフトポンプは、ポンプ本体17からガイド筒15の下端にエアーを供給し、ガイド筒15内の液体燃料10に比重差を生じさせて液体燃料10に流れを生じさせる。ガイド筒15内の液体燃料10は、エアーが供給されることによって、実質的な比重が低くなるので、ガイド筒15内の液面が上昇する。液面が上昇するガイド筒15内の液体燃料10は、ガイド筒15の上部において、ガイド筒15に開口した貫通孔15Aから外部に移行する。したがって、このエアーリフトポンプは、液体燃料10をガイド筒15内の下方から上方へと移動させてタンク1内の液体燃料10を撹拌する。図に示す撹拌機構6は、液体燃料10の液面が下がっても、タンク1内の液体燃料10を撹拌できるように、ガイド筒15の外周面に、上下に離して複数の貫通孔15Aを開口している。このエアーリフトポンプは、極めて簡単な構造で、しかも、燃料を変質させることなく理想的に撹拌できる。なお、ポンプ本体17は、バッテリーや太陽電池等で駆動することができる。たとえば、自動車に搭載される燃料タンクにおいては、ポンプ本体をバッテリーで駆動し、屋外に設置される燃料タンクにおいては、太陽電池を使用することができる。
【0043】
ただ、撹拌機構は、エアーリフトポンプ以外の構造とすることもできる。図9に示す撹拌機構6は、タンク1内の底部に配設されて液体燃料10を撹拌する撹拌部材20と、この撹拌部材20を回転させるモーター21とを備える。この撹拌機構6は、タンク1の外部に配設されたモーター21に連結された回転軸22をタンク1内に配設し、この回転軸22に撹拌部材20を固定している。この撹拌機構6は、撹拌部材20を液体燃料10に浸漬する状態で回転させて液体燃料10を強制的に撹拌する。
【0044】
以上のように撹拌機構6を備える燃料タンクはチタンプレート3の近傍で改質された液体燃料10と、チタンプレート3から離れた位置にある液体燃料10とを撹拌して混合できるので、タンク1内の液体燃料10の全体をむらなく改質できる特長がある。ただ、本発明の燃料タンクは、必ずしも撹拌機構を装備する必要はない。たとえば、自動車等の車両に搭載される燃料タンクは、車両の移動や、スタート・ストップ時の慣性等によって燃料タンク内の液体燃料が揺動されるので、この揺れによって液体燃料を自然に撹拌できる。したがって、車両に搭載される燃料タンクは、撹拌機構を省略して製造コストを低減することも可能である。
【0045】
さらに、図1と図9に示す燃料タンクは、タンク1内に燃料を供給する給油路23に、液体燃料10を改質するろ過具7を配設している。図に示すタンク1は、蓋体12の上面から突出して供給部12Aを設けており、この供給部12Aに給油パイプ24を連結している。給油パイプ24は、先端に給油口25を備えており、この給油口25から液体燃料10を供給するようにしている。さらに、タンク1は、供給部12Aからタンク1の内部に延長された給油路23にろ過具7を配設している。
【0046】
ろ過具7は、図10に示すように、セラミックス粒の表面に酸化チタンを付着している酸化チタンセラミックス粒8をネット充填したものである。酸化チタンセラミックス粒8は、たとえば、球形状に成形されたセラミックス粒の表面に酸化チタンを噴射して付着させて製作される。酸化チタンセラミックス粒8が充填されるネット部材26は、たとえば、無数の透孔を開口してなる金網または金属板を袋状に成形したものである。これらの透孔は、酸化チタンセラミックス粒8よりも小さな開口面積としている。図に示すろ過具7は、ネット部材26である外袋26Aと内袋26Bの間に酸化チタンセラミックス粒8を充填すると共に、内袋26Bの内側を給油路23に連結している。この構造のろ過具7は、給油路23からタンク1に供給される液体燃料10を酸化チタンセラミックス粒8に通過させて改質できる。
【0047】
さらに、図1と図9に示す燃料タンクは、タンク1から燃料を排出する排出路27に、液体燃料10を改質するろ過具9を配設している。図に示すタンク1は、タンク1内の液体燃料10をエンジンに供給する供給パイプ29を、蓋体12の上面に設けた貫通孔28を貫通して配設している。供給パイプ29は、タンク1の外部に配設されたポンプ30に連結されている。このポンプ30が運転されると、タンク1内の液体燃料10がポンプ30に吸引されて、排出路27を通過してエンジンに供給される。
【0048】
ろ過具9は、前述のろ過具7と同様に、セラミックス粒の表面に酸化チタンを付着している酸化チタンセラミックス粒8をネット充填したものである。したがって。酸化チタンセラミックス粒8と、これを充填するネット部材26には、前述と同じものが使用できる。このろ過具9は、図11に示すように、ネット部材26をカップ状に成形しており、ネット部材26で成形される外カップ26aと内カップ26bの間に酸化チタンセラミックス粒8を充填している。さらに、ろ過具9は、外カップ26aと内カップ26bの底を貫通して供給パイプ29の下端を挿通し、内カップ26bの内側に供給パイプ29の排出路27に連結している。さらに、ろ過具9は、外カップ26aと内カップ26bの開口縁部である下端部にリング状のゴム磁石31を配設している。この構造のろ過具9は、ゴム磁石31を介して、下端をタンク1の底面11Aに吸着させて所定の位置に配置できる。この構造のろ過具9は、排出路27からエンジンに供給される液体燃料10を酸化チタンセラミックス粒8に通過させて改質できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、燃料タンクに貯溜される液体燃料を改質して、その燃焼効率を向上して燃費を改善できる。また、燃焼効率が向上されることによって、燃焼時における大気汚染物質の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施例にかかる内燃機関の燃料タンクの概略断面図である。
【図2】図1に示す燃料タンクの格子材の平面図である。
【図3】図2に示す格子材の斜視図である。
【図4】図3に示す格子材の分解斜視図である。
【図5】格子材の他の一例を示す平面図である。
【図6】格子材の他の一例を示す平面図である。
【図7】格子材の他の一例を示す斜視図である。
【図8】格子材の他の一例を示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施例にかかる内燃機関の燃料タンクの概略断面図である。
【図10】給油路に配設されるろ過具の拡大断面図である。
【図11】排出路に配設されるろ過具の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…タンク
2…格子材
3…チタンプレート 3A…対向縁
4…セラミックスプレート 4A…対向縁
5…スリット
6…撹拌機構
7…ろ過具
8…酸化チタンセラミックス粒
9…ろ過具
10…液体燃料
11…本体部 11A…底面
12…蓋体 12A…供給部
13…固定部
14…連通部
15…ガイド筒 15A…貫通孔
16…ポンプ装置
17…ポンプ本体
18…吸引パイプ
19…排出パイプ
20…撹拌部材
21…モーター
22…回転軸
23…給油路
24…給油パイプ
25…給油口
26…ネット部材 26A…外袋 26B…内袋
26a…外カップ 26b…内カップ
27…排出路
28…貫通孔
29…供給パイプ
30…ポンプ
31…ゴム磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の表面に酸化チタンを付着しているチタンプレート(3)と、金属板の表面にセラミックスを付着しているセラミックスプレート(4)とを互いに交差するように連結して、セラミックスプレート(4)から放射される赤外線がチタンプレート(3)の酸化チタンに照射するように配置してなる格子材(2)をタンク(1)内に配設している内燃機関の燃料タンク。
【請求項2】
チタンプレート(3)が金属板の両面に酸化チタンを付着しており、セラミックスプレート(4)が金属板の両面にセラミックスを付着している請求項1に記載される内燃機関の燃料タンク。
【請求項3】
チタンプレート(3)が交差部分においてセラミックスプレート(4)の厚さよりも幅の広いスリット(5)を有し、セラミックスプレート(4)は交差部分にチタンプレート(3)の厚さよりも幅の広いスリット(5)を有し、チタンプレート(3)のスリット(5)にセラミックスプレート(4)を、セラミックスプレート(4)のスリット(5)にチタンプレート(3)を入れて、チタンプレート(3)とセラミックスプレート(4)を交差するように連結している請求項1に記載される内燃機関の燃料タンク。
【請求項4】
タンク(1)内に燃料を強制的に撹拌する撹拌機構(6)を設けている請求項1に記載される内燃機関の燃料タンク。
【請求項5】
撹拌機構(6)がエアーリフトポンプである請求項4に記載される内燃機関の燃料タンク。
【請求項6】
タンク(1)に燃料を供給する給油路(23)に、セラミックス粒の表面に酸化チタンを付着している酸化チタンセラミックス粒(8)をネット充填してなるろ過具(7)を配設しており、タンク(1)に供給される燃料をろ過具(7)に通過させるようにしてなる請求項1に記載される内燃機関の燃料タンク。
【請求項7】
タンク(1)から燃料を排出する排出路(27)に、セラミックス粒の表面に酸化チタンを付着している酸化チタンセラミックス粒(8)をネット充填してなるろ過具(9)を配設しており、タンク(1)から排出される燃料をろ過具(9)に通過させるようにしてなる請求項1に記載される内燃機関の燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−307791(P2006−307791A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133617(P2005−133617)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(399002506)株式会社オオツカ (3)