説明

内装用化粧シート

【課題】塩化ビニル基材を使用せず、建築物の壁面等の内装に用いた際に、シワやたるみを生じず好適に施工でき、被着体への好適な追従性を有し、貼付け後も浮きや剥がれを生じにくく、かつ、良好な不燃性を有する内装用化粧シートを提供する。
【解決手段】紙質基材又は紙質基材と樹脂フィルムとが積層された複合シートの表面に意匠面2を設けた化粧紙1の意匠面とは裏面側に、厚さ5〜50μmの金属箔層4と、樹脂プライマー層5又は樹脂フィルム層からなる樹脂薄膜層と、粘着剤層6とを順に有し、前記金属箔層から化粧紙側の層の有機物の総量が150g/m以下である内装用化粧シートにより、塩化ビニル基材を使用せずとも、好適な施工性、被着体への好適な追従性、良好な不燃性を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙等の内装に使用される内装用化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面や天井等の住宅内装や車両内装等に用いられる壁紙化粧シートとしては、基材上に塩化ビニル樹脂からなる樹脂層を有するものや、塩化ビニル樹脂層を発泡させて発泡樹脂層としたもの、あるいは、これに絵柄層や凹凸模様を設けたものなどが一般的に用いられている。しかし、これら塩化ビニル樹脂を用いた化粧シートは、燃焼時に有害な塩化水素ガスを発生するために、焼却処分に制限があるという廃材処理の問題や、また火災時に発生した塩化水素ガスが有毒であるという問題があり、塩化ビニル樹脂を用いた壁紙化粧シートに代わる化粧シートが求められている。
【0003】
塩化ビニルを使用しない化粧シートとしては、紙質基材の化粧紙を使用した化粧シートが従前より使用されている。しかし、このような化粧紙を使用した化粧シートは、含水による剛性の低下やカールを生じやすいため、施工時にシワやたるみが発生する問題があった。また、含水や乾燥による伸縮を生じやすいため、施工時には綺麗に仕上がった状態であっても、乾燥による収縮等によりシワが発生したり、隣接する化粧シート同士が離れて目開き等を生じたりして、良好な外観で施工するのが容易ではなかった。さらに、紙質基材の化粧紙を使用した化粧シートは、折り曲げ部分からの浮きが生じやすく、壁面角部や凹凸を有する表面への追従性の向上が望まれていた。
【0004】
施工後の含水によるシートのシワや浮き、たるみ等を抑制できるシートとして、表裏両面に凹凸を形成して波状にした紙層の表裏に樹脂フィルム層を積層し、粘着剤層を設けた粘着剤付紙シートが開示されている(特許文献1参照)。当該シートは、紙層が波状とされていることにより、湿度による紙層の伸縮を厚さ方向に逃がすことができ、また、紙層が内部フィルム層により固定されていることで紙層の横方向への伸縮を防止できることが開示されている。しかし、当該構成のものは、紙層の表裏に樹脂フィルム層を有することから、必然的に有機物含量が多くなり、シワの抑制と不燃性の両立が難しい構成であった。また、アルミ層を設けても良いことが開示されているものの当該アルミ層は粘着剤層と直接積層されることから、当該構成では、被着体である壁面からのアウトガスや、基材のアルカリ性によりアルミ層が腐食して浮きや剥がれが生じる場合があった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−302999公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、塩化ビニル基材を使用せず、建築物の壁面等の内装に用いた際に、シワやたるみを生じず好適に施工でき、被着体への好適な追従性を有し、貼付け後も浮きや剥がれを生じにくく、かつ、良好な不燃性を有する内装用化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内装用化粧シートは、表面に意匠面を設けた紙質基材からなる化粧紙の裏面側に、厚さ5〜50μmの金属箔層を有し、金属箔層の化粧紙側の層の有機物総量を少なくすることで、好適な不燃性を実現できると共に、仮に燃焼した際や廃棄処理する際にも塩化水素ガスを発生することがない。また、当該金属箔層により、化粧紙側の層を薄くしても、化粧シートの剛性を確保でき、施行時にシワやたるみが生じにくく、また、含水による収縮が生じにくい。さらに、紙を基材とする化粧紙と金属箔層の構成により、壁面等の被着体へ貼り付けた際に良好に被着体形状に追従でき、壁面の出隅・入隅や、柱や梁等による角部においても良好に壁面形状に追従し、浮きや剥がれを生じにくい。また、当該金属箔層と粘着剤層との間に、樹脂プライマー層や樹脂フィルム層からなる樹脂薄膜層を有するため、壁面からのアウトガスや基材がアルカリ性または酸性であることによる金属箔層の腐食が生じにくく、腐食による施行後の浮きや剥がれを抑制できる。
【0008】
すなわち、本発明は、表面に意匠面を設けた紙質基材からなる化粧紙の裏面側に、厚さ5〜50μmの金属箔層と、樹脂プライマー層又は樹脂フィルム層からなる樹脂薄膜層と、粘着剤層とを順に有し、前記金属箔層から化粧紙側の層の有機物の総量が150g/
以下である内装用化粧シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内装用化粧シートは、良好な不燃性を有すると共に、塩化ビニル基材を使用しないことから、建築物の壁紙や天井等の住宅内装、自動車内装等に使用しても安全性が高い。また、広い壁面や天井等に施行する際にもシワやたるみを生じにくく好適な施工性を有し、また、壁面の出隅・入隅や、柱や梁等による角部においても良好に壁面形状に追従できる。また、施工後も壁面からのアウトガスによる腐食が生じにくいことから経時での浮きや剥がれが生じにくい。このため、本発明の内装用化粧シートは、住宅等の建築物や自動車等の各種の内装用、特に大面積で使用される住宅等の建築物の内装用化粧シートとして好適である。
【0010】
さらに、本発明の内装用化粧シートは、紙質材料を原反シートにしていることから、塩化ビニルなどの樹脂フィルムを単体で原反シートにする場合と比較して耐熱性に優れる。これにより、柄を印刷して乾燥する工程で優れた意匠性を実現するために印刷面を高温乾燥することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の内装用化粧シートの構成例を示す概念断面図である。
【図2】本発明の内装用化粧シートの構成例を示す概念断面図である。
【図3】本発明の内装用化粧シートの構成例を示す概念断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の内装用化粧シートは、表面を意匠面とする化粧紙の裏面側に、厚さ5〜50μmの金属箔層と、樹脂プライマー層又は樹脂フィルム層からなる樹脂薄膜層と、粘着剤層とを順に有し、前記金属箔層から化粧紙側の層の有機物の総量が150g/m以下の化粧シートである。
【0013】
[化粧紙]
本発明の内装用化粧シートに使用する化粧紙は、紙質基材の表面に意匠面を設けた化粧紙、または、紙質基材と樹脂フィルムとが積層された複合シートの表面に意匠面を設けた化粧紙を使用できる。
【0014】
紙質基材としては、壁紙として一般的に使用される紙質基材を適宜使用でき、例えば、上質紙、薄用紙、強化紙、樹脂含浸紙等を例示できる。また、上記の紙に、水性ラテックス・水性アクリル等の樹脂を含浸させたラテックス含浸紙は、印刷適性に優れ、また湿気にも強いのため好ましく使用できる。
【0015】
また、湿度に対する寸法安定性を向上させるために、ガラスファイバーやカーボン繊維等の無機質繊維や疎水性の合成繊維を含有するものや、難燃性を向上させるために、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤を含有するものも好ましく使用できる。
【0016】
本発明に使用する化粧紙は、上記紙質基材の表面に意匠面が設けられた化粧紙であってもよいが、上記紙質基材に樹脂フィルムが積層された紙質基材/樹脂フィルムの複合シートの樹脂フィルム側表面に意匠面が設けられた化粧紙であってもよい。当該複合シートを使用した化粧紙は、樹脂フィルムにより表面の濡れ性が高く、印刷適性が向上するため好ましい。また、壁面の出隅・入隅や、柱や梁等による角部に追従させる際に紙切れを生じにくく、折り曲げ性や追従性が特に優れるため好ましい。なかでも、プライマー処理やコロナ処理などの表面処理が施されたポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの共重合樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)等の樹脂フィルムによるラミネート処理が施されていることが好ましい。特に印刷時に高温にさらされる場合には、比較的耐熱性の高いポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0017】
本発明に使用する化粧紙は、紙質基材の表面に意匠面を有する。当該意匠面は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写印刷、インクジェット印刷等の任意の方法により形成できる。なかでも、グラビア印刷とすることで、高い意匠性と優れた生産性を両立して実現できる。
【0018】
また、印刷表面には、耐擦傷性や、耐汚染性を付与するために、樹脂の硬化方式は特に限定しないが、アクリルウレタン樹脂等のトップコートが設けられていることが好ましく、熱硬化型やUV硬化型、EB硬化型などの硬化方式が採用できる。
【0019】
本発明に使用する化粧紙の厚さは特に制限されないが、化粧紙に紙質基材を使用する場合、その紙質基材の厚みはカット性や施工性が特に良好となる40〜100μmの厚さであることが好ましく、60〜80μmであることがさらに好ましい。また、化粧紙に紙質基材/樹脂フィルムの複合シートを使用する場合、紙質基材の厚みについては同様であるが、樹脂フィルムの厚みは不燃性能が良好となる5μm〜50μmが好ましく、10〜30μmがさらに好ましい。
【0020】
[金属箔層]
本発明の化粧シートは、金属箔層を有することで、施工時にシワやたるみを生じにくく良好な施工性を実現できると共に、壁面形状への優れた追従性や耐火性を実現できる。当該金属箔層としては、例えば、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス箔、銅箔等を使用できる。なかでも、アルミニウム箔は、化粧シートに一定の剛性を与え、好適に折り曲げが可能なため施工時に被着体面への追従性が良好であり、優れた不燃性を実現できることから、特に好ましく使用できる。
【0021】
金属箔層の厚さは5〜50μmであり、5〜25μmであることがより好ましく、5〜15μmであることが特に好ましい。金属箔層の厚さを当該厚さとすることで、良好な不燃性を実現しつつ、好適な施工性や、被着体への追従性を実現できると共に、任意の形状へのカット性にも優れた化粧シートを実現できる。
【0022】
金属箔層を上記化粧紙等の他の層と積層する場合には、ラミネートによる積層を好ましく使用でき、ラミネート手法としては、溶剤系ウレタン樹脂系、酢酸ビニル系、エチレン酢ビ共重合系水性ビニルウレタン系、或いは反応性ホットメルト接着剤等のシート塗布による手法が使用される。
【0023】
[樹脂薄膜層]
本発明の化粧シートは、金属箔層と粘着剤層との間に、樹脂プライマー層又は樹脂フィルム層からなる樹脂薄膜層を有することで、金属箔層の腐食を防止でき、経時での化粧シートの浮きや剥がれを抑制できる。
【0024】
樹脂薄膜層として使用する樹脂プライマー層としては、例えば、塩酢ビ系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂を塗布して得られるプライマー層を使用できる。樹脂プライマー層は、樹脂フィルム層に比して金属箔への密着性が高い点で好ましく使用できる。なかでも、塩酢ビ系樹脂は、特に密着性が高いため好ましい。
【0025】
樹脂薄膜層として使用する樹脂フィルム層としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンとポリプロピレンの共重合樹脂等の樹脂を使用できる。樹脂フィルム層は樹脂プライマー層に比して、膜厚が樹脂プライマーより厚く、耐久性が高い点で好ましく使用できる。なかでも、ポリエチレンは生産性が高く、またコスト面でも有利のため好ましく使用できる。
【0026】
樹脂フィルム層は、接着剤を介してフィルムを貼り合せても良いが、溶融させた樹脂を押し出しながら他の層と貼り合せるいわゆるポリラミ法を用いると生産性が高く、工業的な観点からより好ましい。当該方法により樹脂フィルム層を形成する場合には、上記金属箔層と強化紙等の紙質基材の間に溶融させた樹脂を塗布し、ラミネートして積層する方法を好ましく使用できる。なお、溶融させながら樹脂フィルム層を形成する場合、密着性、生産性の観点から低密度ポリエチレンを使用することが特に好ましい。
【0027】
樹脂薄膜層の厚さは、樹脂プライマー層としては1〜10μm、より好ましくは2〜7μm、特に3〜5μmが好ましい。樹脂フィルム層としては、10〜60μm、より好ましくは20〜50μm、特に30〜40μmが好ましい。
【0028】
[粘着剤層]
本発明に使用する粘着剤層は、化粧シートを好適に被着体に貼り付けられるものであれば特に制限されず、アクリル系粘着剤、アクリルウレタン系粘着剤、エポキシ変性ウレタン系粘着剤からなる粘着剤層を適宜使用できる。なかでも、アクリルウレタン系粘着剤、エポキシ変性ウレタン系粘着剤は、耐久性が高いため好ましい。
【0029】
粘着剤層を他の層と積層する場合には、他の層に粘着剤を直接塗布した後、乾燥させて粘着剤層を設ける方法や、剥離紙上に粘着剤を塗布、乾燥して形成した粘着剤層を、他の層と貼り合わせる方法を使用できる。
【0030】
また粘着剤層には、粘着剤層や壁面から発生するアウトガスあるいは貼り施工時に基材と化粧シートの間に入ってしまった気泡を好適に除去するために、溝が設けられていることが好ましい。当該溝の形状としては、直線状、格子状等の任意の形状であってよい。
【0031】
本発明に使用する粘着剤層の厚さは特に制限されないが、30〜60μmの厚さであることが好ましく、40〜50μmであることが、さらに好ましい。
【0032】
その他、粘着剤層については、わずかだが残留溶剤があるため、トルエン・キシレン・エチルベンゼンなど厚生労働省が室内空気濃度の指針値を定めた13物質を使用しないことが望ましい。
【0033】
[内装用化粧シート]
本発明の内装用化粧シートは、上記表面に意匠面を設けた紙質基材又は紙質基材/樹脂フィルムの複合シートからなる化粧紙の意匠面とは裏面側に、厚さ5〜50μmの金属箔層と、樹脂プライマー層又は樹脂フィルム層からなる樹脂薄膜層と、粘着剤層とを順に有する。そして、当該構成と共に、金属箔層から化粧紙側の層(化粧紙を含む)の有機物の総量が150g/m以下とすることで、化粧シートに好適な不燃性に加え、好適な施工性や追従性を兼備することができる。
【0034】
金属箔層から化粧紙側の層の有機物の総量は、150g/m以下、好ましくは10〜90g/m、より好ましくは30〜60g/mとすることが好ましい。当該有機物総量は少ないほど燃焼成分を低減できるが、一方で、少なすぎると化粧シートの剛性が低減し、シワやたるみが発生しやすくなる。本願発明においては、有機物総量を低減すると共に、一定厚さの金属箔層を構成中に有することで、少ない有機物総量にて良好な不燃性を実現すると共に、好適な施工性や追従性を実現できる。
【0035】
本発明の内装用化粧シートにおいては、上記各層間に他の層が設けられていてもよい。例えば、上記各層間を接着するために接着剤層を設けたり、各層表面にプライマー層やコロナ処理による易接着処理を行ってもよい。
【0036】
金属箔層から化粧紙側の層の有機物総量には、意匠面を有する化粧紙中の印刷部や、紙質基材中に含浸された樹脂成分などがあり、金属箔層と化粧紙とが接着剤により接着されている場合や、金属箔表面に接着性向上のためのプライマー層を有する場合などは、これら接着剤やプライマー層が含まれる。
【0037】
本発明の化粧シートの厚さは、使用する態様に応じて適宜調整すれば良いが、例えば、壁紙として使用する場合には120〜250μmの厚さであることが好ましく、150〜200μmであることが、さらに好ましい。
【0038】
[実施態様]
以下、本発明の内装用化粧シートの好適な実施態様を例示する。本発明の内装用化粧シートの好適な一例としては、表面に意匠面を有する化粧紙の裏面に、接着剤を介して金属箔層が設けられ、当該金属箔層にプライマー層を介して粘着剤層が設けられた構成を例示できる(図1)。当該構成の内装用化粧シートは、各層を順に積層することで製造できるため容易に製造でき、また、薄手の化粧シートを形成できる。この構成とした場合、低コストで実現できる。
【0039】
また、他の好適な一例としては、表面に意匠面を有する紙質基材からなる化粧紙の裏面に接着剤層を介して金属箔層が設けられ、当該金属箔層に低密度ポリエチレン層を介して粘着剤層が設けられた構成を例示できる(図2)。当該構成においては、低密度ポリエチレン層と粘着剤層との密着性向上に際して、強化紙を間に介して積層することも好ましい(図3)。当該構成の内装用化粧シートは、下地基材が強いアルカリ性または酸性であってもポリエチレン層が特に高い防腐食性を発揮するという点で非常に効果的である。
【0040】
本発明の内装用化粧シートは、上記構成により、良好な不燃性を有すると共に、塩化ビニル基材を使用しないことから、建築物の壁紙や天井等の住宅内装、自動車内装等に使用しても安全性が高い。また、広い壁面や天井等に施行する際にもシワやたるみを生じにくく好適な施工性を有し、また、壁面の出隅・入隅や、柱や梁等による角部においても良好に壁面形状に追従できる。また、施工後も壁面からのアウトガスによる腐食が生じにくいことから経時での浮きや剥がれが生じにくい。また、紙質材料を原反シートにしていることから、塩化ビニルなどの樹脂フィルムを単体で原反シートにする場合と比較して耐熱性に優れる。これにより、柄を印刷して乾燥する工程で優れた意匠性を実現するために印刷面を高温乾燥することが可能である。このため、本発明の内装用化粧シートは、住宅等の建築物や自動車等の各種の内装用、特に大面積で使用される住宅等の建築物の壁紙として好適に使用できる。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
坪量60gのラテックス含浸紙(興人社製「GFN60」)に、2液ウレタン系接着剤(DIC社製「タイフォース」)を固型分で10g/m塗布して16μmのPETフィルムをドライラミネートした紙質基材/樹脂フィルム複合シートの樹脂フィルム側表面に、グラビア印刷で木目柄を印刷し、さらにアクリルウレタン系トップコートを一番表面に印刷して意匠面を有する化粧紙を得た。得られた化粧紙に、2液ウレタン系接着剤(DIC社製「タイフォース」)を、固形分で10g/m塗布して乾燥し、厚さ7μmのアルミニウム箔を熱ロールで貼り合わせた。当該アルミニウム箔表面に、グラビアロールで塩酢ビ系プライマー(DIC社製「ディックシール」)を固形分で3g/m塗布した後、アクリルウレタン系粘着剤(DIC社製「ファインタック」)をコンマコーターにより固形分で40g/m塗布乾燥し、離型紙を貼り合わせて、化粧シート(1)を得た。アルミニウム箔層から意匠面側の有機物含有量は、100g/mであった。
【0042】
(実施例2)
化粧紙として、坪量60gのラテックス含浸紙(興人社製「GFN60」)からなる紙質基材に、グラビア印刷で木目柄を印刷して得られた化粧紙を使用した以外は、実施例1と同様にして化粧シート(2)を得た。アルミニウム箔層から意匠面側の有機物含有量は、60g/mであった。
【0043】
(実施例3)
坪量60gのラテックス含浸紙(興人社製「GFN60」)に、2液ウレタン系接着剤(DIC社製「タイフォース」)を固型分で10g/m塗布して16μmのPETフィルムをドライラミネートした紙質基材/樹脂フィルム複合シートの樹脂フィルム側表面に、グラビア印刷で木目柄を印刷して意匠面を有する化粧紙を得た。次に坪量が30g/mの強化紙(天間特殊製紙社製「HP30」)と厚さ7μmのアルミニウム箔を用意し、溶融させた低密度ポリエチレンをその間に塗布厚35μmで塗布し、ロールプレスでラミネートして積層したものを得た。次いでアルミニウム箔と強化紙との積層体のアルミニウム箔表面に、グラビアロールで塩酢ビ系プライマー(DIC社製「ディックシール」)を固形分で3g/m塗布した後、塩酢ビ系プライマー面へ2液ウレタン系接着剤(DIC社製「タイフォース」)を固形分で10g/m塗布して乾燥し、上記化粧紙の印刷していない面と熱ロールで貼り合わせ積層シートを得た。次いで、貼り合わせ積層シートの強化紙表面に、アクリルウレタン系粘着剤(DIC社製「ファインタック」)をコンマコーターにより固形分で40g/m塗布乾燥し、離型紙を貼り合わせて、化粧シート(3)を得た。アルミニウム箔層から意匠面側の有機物含有量は、83g/mであった。
【0044】
(実施例4)
60gラテックス含浸紙の代わりに、30g強化紙(天間特殊製紙社製「HP30」)を使用した以外は実施例1と同様にして、化粧シート(4)を得た。アルミニウム箔層から意匠面側の有機物含有量は、70g/mであった。
【0045】
(実施例5)
60gラテックス含浸紙の代わりに、80gラテックス含浸紙(興人社製「GF80」)を使用した以外は実施例1と同様にして、化粧シート(5)を得た。アルミニウム箔層から意匠面側の有機物含有量は、120g/mであった。
【0046】
(比較例1)
実施例1で得られた化粧紙に、グラビアロールで塩酢ビ系プライマー(DIC社製「ディックシール」)を固形分で3g/m塗布した後、アクリルウレタン系粘着剤(DIC社製「ファインタック」)をコンマコーターにより固形分で40g/m塗布乾燥し、離型紙を貼り合わせて、化粧シート(6)を得た。有機物含有量の総量は、143g/mであった。
【0047】
(比較例2)
アルミニウム箔表面に塩酢ビ系プライマー層を設けない以外は実施例1と同様にして、化粧シート(7)を得た。アルミニウム箔層から意匠面側の有機物含有量は、100g/mであった。
【0048】
(比較例3)
60gラテックス含浸紙の代わりに、興人社製110gチタン紙に水性ラテックスを20g含浸した試作品原紙を使用した以外は実施例1と同様にして、化粧シート(8)を得た。アルミニウム箔層から意匠面側の有機物含有量は、160g/mであった。
【0049】
上記実施例及び比較例にて得られた化粧シートについて、以下の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0050】
(施工性評価)
上記化粧シート(200mm×300mm)を、合成ゴム系プライマーを塗布したケイ酸カルシウム板のプライマー表面に積層し、ヘラを用いて圧着した。圧着後のシワの有無を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。
◎:極めて簡易に施工でき、施行後にも目視にてシワが確認されない。
○:施行後に目視にてシワが確認されない
×:施工後に目視にてシワが確認される
【0051】
(追従性評価)
合成ゴム系プライマーを表面及び断面に塗布したケイ酸カルシウム板(170mm×270mm)用意し、上記化粧シート(200mm×300mm)を、まず基材からはみ出すように表面にヘラを用いて積層し、次いではみ出させた化粧シートを、断面を巻き込むように貼り付けた。圧着後のシワや浮きの有無を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。
○:目視にて浮きやシワが確認されない
×:目視にて浮きやシワが確認される
【0052】
(不燃性試験)
上記化粧シート(200mm×300mm)を、合成ゴム系プライマーを塗布したケイ酸カルシウム板のプライマー表面に積層し、ヘラを用いて圧着したあと、99mm×99mmにカットして試料片を得た。
建築基準法第2条第9号で求められる「不燃材料」の発熱性試験に準じた方法で評価
評価基準は以下のとおりである。
コーンカロリーメータによる発熱性試験で
◎:7MJ/m以下
○:8MJ/m以下
×:9MJ/m
【0053】
(腐食性試験1)
上記化粧シート(200mm×300mm)を、合成ゴム系プライマーを塗布したケイ酸カルシウム板のプライマー表面に積層し、ヘラを用いて圧着して試料片を得た。得られた試料片を温度40℃、湿度90%の加湿環境下に一週間静置して外観を観察し、以下の評価基準にて評価した。
◎:腐食および浮きや剥がれの発生無し
○:目視にて浮きや剥がれの発生はないが、強制的に剥がすと若干の腐食が確認される
×:腐食および浮きや剥がれが発生
【0054】
(腐食性試験2)
上記化粧シート(200mm×300mm)を、合成ゴム系プライマーを塗布したケイ酸カルシウム板のプライマー表面に積層し、ヘラを用いて圧着して試料片を得た。得られた試料片を温度25℃、湿度90%の環境下に2週間放置し、接着面を一部手で剥離し外観を観察し、以下の評価基準にて評価した。
◎:腐食および浮きや剥がれの発生無し
○:目視にて浮きや剥がれの発生はないが、強制的に剥がすと若干の腐食が確認される
×:腐食および浮きや剥がれが発生
【0055】
【表1】

【0056】
上記表1のとおり、本願発明の実施例1〜5の化粧シートは、施工性評価、追従性評価、不燃性評価、腐食性試験1及び2で良好な結果を得、なかでも実施例3はその結果がすべて良好であり最も性能バランスに優れていた。一方、比較例1の化粧シートは金属箔層が無いため形状維持特性がなく、施工性評価及び追従性評価で不満足な結果であった。比較例2の化粧シートは、金属箔層を保護する層が無いため、腐食試験で金属箔層の腐食が発生してしまった。また、比較例3の化粧シートはシート厚が厚く施工性評価、追従性評価が実施例より少し劣る結果となったが、何よりも不燃性能を持つことが出来ないという結果となった。
【符号の説明】
【0057】
1 化粧紙
2 意匠面
3 接着剤層
4 金属箔層
5 プライマー層
6 粘着剤層
7 低密度ポリエチレン層
8 強化紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙質基材又は紙質基材と樹脂フィルムとが積層された複合シートの表面に意匠面を設けた化粧紙の意匠面とは裏面側に、厚さ5〜50μmの金属箔層と、樹脂プライマー層又は樹脂フィルム層からなる樹脂薄膜層と、粘着剤層とを順に有し、前記金属箔層から化粧紙側の層の有機物の総量が150g/m以下であることを特徴とする内装用化粧シート。
【請求項2】
前記金属薄膜層が、アルミニウム箔からなる層である請求項1に記載の内装用化粧シート。
【請求項3】
前記樹脂プライマー層が、塩酢ビ系樹脂プライマー層である請求項1又は2に記載の内装用化粧シート。
【請求項4】
前記紙質基材が、ラテックス含浸紙である請求項1〜3のいずれかに記載の内装用化粧シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の内装用化粧シートからなる壁紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−35617(P2012−35617A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92993(P2011−92993)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】