説明

内視鏡の先端部

【課題】大きなスペースを用いることなく、副送水口から噴出した水を所定の方向に曲げることができる内視鏡の先端部を提供すること。
【解決手段】挿入部1の先端2に、挿入部1の前方に位置する被写体の方向に向けて水Wを噴出するための副送水口7が配置された内視鏡の先端部において、副送水口7から噴出される水Wを側方に引き寄せてその噴出方向を曲げるように作用をする水流引寄壁8,8′,8″を、副送水口7の辺縁の外側であってその近傍位置から前方に向かって突設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の先端部に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡には、観察対象粘膜面の汚れや血液等を洗い流すために、挿入部の前方に位置する被写体の方向に向けて水を噴出するための副送水口が配置されたものが少なくない。そのような内視鏡においては、従来は、副送水口が単純に前方に向かって開口形成されていた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−292958、段落〔0014〕
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、副送水口が単純に前方に向かって開口形成された構造では、副送水口から噴出される水が観察視野の中心に向かわないので照準をつけ難く、観察対象粘膜面の汚れや血液等を洗い流す操作に手間がかかる場合がある。
【0004】
そこで、副送水口を内視鏡の挿入部の先端に斜め向きに配置することが考えられるが、そのような構成を採ると挿入部の先端内に大きなスペースが必要になるため、他の機能を低下させてしまうことになりかねない。
【0005】
そこで本発明は、大きなスペースを用いることなく、副送水口から噴出した水を所定の方向に曲げることができる内視鏡の先端部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の先端部は、挿入部の先端に、挿入部の前方に位置する被写体の方向に向けて水を噴出するための副送水口が配置された内視鏡の先端部において、副送水口から噴出される水を側方に引き寄せてその噴出方向を曲げるように作用をする水流引寄壁を、副送水口の辺縁の外側であってその近傍位置から前方に向かって突設したものである。
【0007】
なお、副送水口が挿入部の先端の軸線と平行方向に真っ直ぐの向きに挿入部の先端面に開口していてもよく、また、内視鏡観察像を取り入れるための観察窓が挿入部の先端面に配置されると共に、水流引寄壁が副送水口と観察窓との間の位置に設けられて、副送水口から噴出される水が水流引寄壁に引き寄せられてその噴出方向が観察窓の前方方向に曲げられるようにしてもよい。
【0008】
また、水流引寄壁が、挿入部の先端面から前方に突出形成されたピン状体であってもよく、或いは、副送水口が、挿入部の先端面に形成された凹部の底部に形成されていて、水流引寄壁が凹部の側壁部で形成されていてもよく、その場合、側壁部の中の水流引寄壁になる部分が、側壁部の中の他の部分から副送水口の前方寄りの方向に突出した形状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、副送水口から噴出される水が、副送水口の辺縁の外側であってその近傍位置から前方に向かって突設された水流引寄壁に引き寄せられてその噴出方向が曲げられるので、大きなスペースを用いることなく、副送水口から噴出した水を所定の方向に曲げることができ、水を観察視野の中心方向に向けて噴出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
挿入部の先端に、挿入部の前方に位置する被写体の方向に向けて水を噴出するための副送水口が配置された内視鏡の先端部において、副送水口から噴出される水を側方に引き寄せてその噴出方向を曲げるように作用をする水流引寄壁を、副送水口の辺縁の外側であってその近傍位置から前方に向かって突設する。
【実施例】
【0011】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は本発明の第1の実施例の内視鏡の先端部を示しており、可撓管状の挿入部1の先端に連結された先端部本体2の先端面2aに、内視鏡観察像を取り入れるための観察窓3と、観察範囲に向かって照明光を放射するための照明窓4が並んで配置されている。5は処置具突出口、6は、観察窓3の表面に向かって開口配置された送気送水ノズルである。
【0012】
7は、観察対象粘膜面の汚れや血液等を洗い流すために、挿入部1の前方に位置する被写体の方向に向けて水を噴出するための副送水口であり、先端部本体2の先端面2aに前方に向けて真っ直ぐに開口する状態に配置されている。
【0013】
また、副送水口7から噴出される水を副送水口7から噴出した直後の位置で側方に引き寄せてその噴出方向を曲げるための水流引寄壁8が、副送水口7に隣接して副送水口7の前方に添う状態に先端部本体2の先端面2aに固定的に突設されている。
【0014】
図1は内視鏡の先端部の側面断面図であり、観察窓3の後方位置の先端部本体2内には対物光学系9が配置され、その対物光学系9による被写体の投影位置に固体撮像素子10の撮像面が配置されていて、先端部本体2の真っ直ぐ前方が内視鏡観察される。11は、処置具突出口5に連通接続された処置具挿通チャンネルである。
【0015】
12は、先端部本体2の軸線と平行方向に先端部本体2に貫通形成された通水孔であり、その後端には挿入部1内に挿通配置された送水チューブ13が接続され、通水孔12の先端開口部分が副送水口7になっている。通水孔12の断面形状は正円形であり、その断面形状のまま真っ直ぐ副送水口7として開口している。
【0016】
水流引寄壁8は、副送水口7の辺縁の近傍であって副送水口7と観察窓3との間の位置に真っ直ぐ前方に向けて突設されており、この実施例では断面形状が正円形のピン状体が用いられている(以下、本実施例においては「ピン状体8」という)。
【0017】
その結果、副送水口7から噴出される噴出水Wが、先端部本体2の先端面2aから突出したピン状体8に引き寄せられて、噴出水Wの噴出方向が観察窓3の前方方向に曲げられ、観察視野の中央付近で被写体を洗浄することができる。
【0018】
このとき、噴出水Wは噴出方向が曲げられても水流が広がったりせず、副送水口7の径をそのまま維持した状態で曲げられるので、粘膜表面の汚物や血液等を強力に洗浄することができる。なお、噴出水Wの曲がり角度は5°〜30°程度の範囲である。
【0019】
このように、本来は噴出水Wが真っ直ぐ前方に噴出される副送水口7の前方を遮らずに、噴出水Wの本来の噴出方向に対して平行にピン状体8を突出させることにより噴出水Wがピン状体8に引き寄せられて曲がるのは、ピン状体8と平行に流体(噴出水W)が流れることによりその間の部分が負圧になって噴出水Wがピン状体8側に寄せられ、それによって噴出水Wがピン状体8に触れると、その後は水の表面張力により噴出水Wがピン状体8にくっついた状態になることによると思われる。
【0020】
図3及び図4は、ピン状体8と副送水口7との間の間隔eを変化させた場合に、副送水口7からのピン状体8の突出長Lをどの程度にすると噴出水Wが曲がるかを実験したときの実験結果を示しており、ピン状体8の直径dはd=0.33mm、副送水口7の直径DはD=0.5mmである。
【0021】
この実験結果から、ピン状体8と副送水口7との間の間隔eが0.5mmを越えない(e≦0.5mm)範囲にある必要があり、eが0.25mm以下では噴出水Wの状態が不安定でピン状体8がほとんど突出していなくても噴出水Wが曲がったりするので、ピン状体8と副送水口7との間の間隔eは0.3mm〜0.5mmの範囲に設定するのが望ましい。
【0022】
図5及び図6は本発明の第2の実施例の内視鏡の先端部を示しており、先端部本体2の先端面2aに形成された凹部2bの底部に副送水口7を形成して、その凹部2bの側面を、噴出水Wを引き寄せる水流引寄壁8′にしたものである。このように構成しても、副送水口7から噴出する水が水流引寄壁8′側に引き寄せられて観察窓3の前方方向に曲げられ、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0023】
図7及び図8は本発明の第3の実施例を示しており、先端部本体2の先端面2aに形成された凹部2bの底部に副送水口7が形成されている点は上述の第2の実施例と同様であるが、噴出水Wを引き寄せる水流引寄壁8″になる凹部2bの側壁の中央部分が、側壁の他の部分に比べて副送水口7の前方寄りに突出した形状に形成されている。その結果、噴出水Wが横振れすることなく観察窓3の前方方向に向かって正確に曲げられる。
【0024】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば副送水口7から噴出される噴出水の曲がり方向が観察窓3の前方方向でない場合であっても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡の先端部の側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の内視鏡の先端部の斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施例の副送水口とピン状体との間の間隔と副送水口から噴出する噴出水の曲がり発生との関係を明らかにする実験に用いられた内視鏡の先端部の部分側面断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の副送水口とピン状体との間の間隔と副送水口から噴出する噴出水の曲がり発生との関係を明らかにする実験結果を示す図表である。
【図5】本発明の第2の実施例の内視鏡の先端部の斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施例の内視鏡の先端部の側面断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例の内視鏡の先端部の斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施例の内視鏡の先端部の正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 挿入部
2 先端部本体
2a 先端面
2b 凹部
3 観察窓
7 副送水口
8 ピン状体(水流引寄壁)
8′、8″ 水流引寄壁
12 通水孔
W 噴出水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端に、上記挿入部の前方に位置する被写体の方向に向けて水を噴出するための副送水口が配置された内視鏡の先端部において、
上記副送水口から噴出される水を側方に引き寄せてその噴出方向を曲げるように作用をする水流引寄壁を、上記副送水口の辺縁の外側であってその近傍位置から前方に向かって突設したことを特徴とする内視鏡の先端部。
【請求項2】
上記副送水口が上記挿入部の先端の軸線と平行方向に真っ直ぐの向きに上記挿入部の先端面に開口している請求項1記載の内視鏡の先端部。
【請求項3】
内視鏡観察像を取り入れるための観察窓が上記挿入部の先端面に配置されると共に、上記水流引寄壁が上記副送水口と上記観察窓との間の位置に設けられて、上記副送水口から噴出される水が上記水流引寄壁に引き寄せられてその噴出方向が上記観察窓の前方方向に曲げられる請求項1又は2記載の内視鏡の先端部。
【請求項4】
上記水流引寄壁が、上記挿入部の先端面から前方に突出形成されたピン状体である請求項1、2又は3記載の内視鏡の先端部。
【請求項5】
上記副送水口が、上記挿入部の先端面に形成された凹部の底部に形成されていて、上記水流引寄壁が上記凹部の側壁部で形成されている請求項1、2、3又は4記載の内視鏡の先端部。
【請求項6】
上記側壁部の中の上記水流引寄壁になる部分が、上記側壁部の中の他の部分から上記副送水口の前方寄りの方向に突出した形状に形成されている請求項5記載の内視鏡の先端部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−345887(P2006−345887A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171936(P2005−171936)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】