内視鏡の処置具挿入部の構造
【課題】固定ナットで押圧固定された処置具挿入口金にガタつきや緩みが発生せず、しかも、処置具挿入口金を複数部品に分割する必要がなくて、コスト性、組立作業性に優れ、衛生的なデメリットが発生しない内視鏡の処置具挿入部の構造を提供すること。
【解決手段】処置具挿入口金取付孔2の内周面とそれに面する処置具挿入口金7の外周面とに、平面どうしで当接し合うDカット係合部15を形成すると共に、処置具挿入口金7が、固定ナット11で押圧固定されていない状態では処置具挿入口金取付孔2内で軸線周り方向に回転自在となるように、Dカット係合部15における処置具挿入口金取付孔2の最小内径を処置具挿入口金7の最大外径より大きく形成した。
【解決手段】処置具挿入口金取付孔2の内周面とそれに面する処置具挿入口金7の外周面とに、平面どうしで当接し合うDカット係合部15を形成すると共に、処置具挿入口金7が、固定ナット11で押圧固定されていない状態では処置具挿入口金取付孔2内で軸線周り方向に回転自在となるように、Dカット係合部15における処置具挿入口金取付孔2の最小内径を処置具挿入口金7の最大外径より大きく形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡の処置具挿通チャンネルに処置具を挿入するための内視鏡の処置具挿入部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来の内視鏡の処置具挿入部を示しており、処置具挿通チャンネル91の基端に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金92が、プラスチック製の操作部ハウジング93に開口形成された処置具挿入口金取付孔94の奥側位置に配置されている。
【0003】
そして、処置具挿入口金取付孔94に外側から差し込まれた処置具挿入口金95と処置具挿通チャンネル基端口金92とが螺合部96で螺合連結されて、処置具挿入口金95が、処置具挿入口金取付孔94内に形成された段部97に固定ナット98で外方から押圧固定された構造になっている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−26248
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような内視鏡の処置具挿入部においては、処置具挿入口金95が、処置具挿入口金取付孔94内に形成された段部97に固定ナット98で外方から押圧されることにより、操作部ハウジング93に固定されている。
【0006】
したがって、処置具挿入口金95に外側から大きな回転力が作用すると(例えば、処置具の操作部が処置具挿入口金95に着脱されるような場合等)、処置具挿入口金95が回転して固定ナット98が緩み、処置具挿入口金95がガタつく状態になってしまう場合がある。
【0007】
そこで、例えば図11に示されるように、処置具挿入口金取付孔94と処置具挿入口金95との嵌め合い部に断面形状がD状のいわゆるDカット係合部99等のような非回転嵌合部を設ければ、処置具挿入口金取付孔94内での処置具挿入口金95の回転を規制することができる(例えば、特開2003−126027)。
【0008】
しかし、そのように処置具挿入口金95が軸線周り方向に回転できないようにしてしまうと、処置具挿通チャンネル基端口金92に対して処置具挿入口金95を螺合連結することができなくなる。
【0009】
そのため、処置具挿入口金95を二部品(95A,95B)に分割して接続する必要が生じ、コスト面での不利益だけでなく、組み立て時に螺合部96の螺合作業が困難を究め、また、二つに分割された処置具挿入口金95A,95Bの分割/接続部の隙間が汚液溜まりになる可能性も生じて衛生上も好ましくない。
【0010】
本発明は、固定ナットで押圧固定された処置具挿入口金にガタつきや緩みが発生せず、しかも、処置具挿入口金を複数部品に分割する必要がなくて、コスト性、組立作業性に優れ、衛生的なデメリットが発生しない内視鏡の処置具挿入部の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の処置具挿入部の構造は、処置具挿通チャンネルの基端に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金が、操作部ハウジングに開口形成された処置具挿入口金取付孔の奥側位置に配置され、処置具挿入口金取付孔に外側から差し込まれた処置具挿入口金と処置具挿通チャンネル基端口金とが螺合連結されて、処置具挿入口金が、処置具挿入口金取付孔内に形成された段部に固定ナットで外方から押圧固定された構造を有する内視鏡の処置具挿入部の構造において、処置具挿入口金取付孔の内周面とそれに面する処置具挿入口金の外周面とに、平面どうしで当接し合うDカット係合部を形成すると共に、処置具挿入口金が、固定ナットで押圧固定されていない状態では処置具挿入口金取付孔内で軸線周り方向に回転自在となるように、Dカット係合部における処置具挿入口金取付孔の最小内径を処置具挿入口金の最大外径より大きく形成し、固定ナット内に処置具挿入口金を嵌合させて、固定ナットを処置具挿入口金取付孔の口元部に螺合させることにより、Dカット係合部で処置具挿入口金取付孔の内周平面部と処置具挿入口金の外周平面部とが当接し合う状態になるようにしたものである。
【0012】
なお、固定ナットと螺合する雌ねじ部の軸線位置が、処置具挿入口金取付孔の軸線位置と比較してDカット係合部に接近する側に偏心して形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、処置具挿入口金を摘んで処置具挿通チャンネル基端口金に容易に螺合連結させることができ、その後で、固定ナットを処置具挿入口金取付孔の口元部に螺合させることにより、Dカット係合部で処置具挿入口金取付孔の内周平面部と処置具挿入口金の外周平面部とが当接し合うので、処置具挿入口金に外側から大きな回転力が作用しても処置具挿入口金にガタつきや緩みが発生せず、しかも、処置具挿入口金を複数部品に分割する必要がないので、コスト的、衛生的なデメリットが発生しない優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿入部の側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿入部の図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿入部の組み立て工程における側面断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿入部の図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の側面断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の図5における処置具挿入口金を省略した状態のVI−VI断面図である。
【図7】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の図5におけるVI−VI断面図である。
【図8】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の組み立て工程における側面断面図である。
【図9】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の図8におけるIX−IX断面図である。
【図10】内視鏡の処置具挿入部の第1の従来例の側面断面図である。
【図11】内視鏡の処置具挿入部の第2の従来例の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、内視鏡の操作部の下端部付近に設けられた処置具挿入部を示している。操作部ハウジング1はプラスチックモールドにより形成されていて、処置具挿入口金取付孔2が、操作部ハウジング1に外側から内側に斜め下方に向けて形成されている。
【0016】
3は、内視鏡の挿入部内に全長にわたって挿通配置された、例えば四フッ化エチレン樹脂チューブ等からなる可撓性の処置具挿通チャンネルである。処置具挿通チャンネル3の基端部に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金4は、操作部ハウジング1内の処置具挿入口金取付孔2の奥側位置に配置されている。
【0017】
処置具挿通チャンネル基端口金4には、処置具挿通チャンネル3に対して二股に分かれた状態に、吸引チューブ5と処置具挿入口金7とが接続されている。なお、処置具挿通チャンネル基端口金4の周囲にはその他の各種部材も配置されているが、その図示は省略されている。
【0018】
ステンレス鋼製の処置具挿入口金7は、処置具挿入口金取付孔2内に外側から差し込まれた状態に配置されて、処置具挿入口金7の突端側は処置具挿入口金取付孔2の口元から外方に突出している。
【0019】
処置具挿入口金7の奥側の先端部分は、処置具挿入口金取付孔2の奥側位置で処置具挿通チャンネル基端口金4と螺合連結され(螺合連結部8)、その連結部にはシール用のOリング6が装着されている。
【0020】
処置具挿入口金7の軸線位置には、図示されていない処置具を処置具挿通チャンネル3内に案内するための処置具通過孔7aが貫通形成されていて、処置具通過孔7aと処置具挿通チャンネル基端口金4内とが真っ直ぐに連通している。
【0021】
処置具挿入口金取付孔2は中間部分で入口側が奥側より大きな径に形成されていて、その境界部は入口側に対向する段差面がある段部9になっている。また、処置具挿入口金7もそれに合わせた形状に形成されて、処置具挿入口金取付孔2の段部9に当接する段部当接面10が処置具挿入口金7に鍔状に形成されている。
【0022】
処置具挿入口金取付孔2の口元部には雌ねじ部12が形成されており、その雌ねじ部12に外方から螺合する固定ナット11により(螺合部A)、処置具挿入口金7の段部当接面10が処置具挿入口金取付孔2内の段部9に外方から押圧固定され、それによって、処置具挿入口金7が操作部ハウジング1に固定された状態になっている。13、14はシール用のOリングである。
【0023】
処置具挿入口金取付孔2の中間部分(即ち、螺合連結部8と段部当接面10との間の部分)の内周面と、それに面する処置具挿入口金7の外周面とには、平面どうしで当接し合うDカット係合部15が形成されている。
【0024】
II−II断面を図示する図2に示されるように、Dカット係合部15においては、処置具挿入口金取付孔2の断面形状が正円形の一部を弦状に真っ直ぐにした形状に形成され、処置具挿入口金7の外周面の断面形状も、それに対応して正円形の一部が平面状にカットされた形状に形成されている。
【0025】
処置具挿入口金7には、180°対称位置にも同様のカット面が形成されている。このように、処置具挿入口金7の外周面に形成される平面状のカット面の数を多くすると、組み立て時に処置具挿入口金7の回転方向の向きの制約が小さくなり好ましい。ただし、平面状のカット面が一か所だけであっても差し支えない。
【0026】
このDカット係合部15において、処置具挿入口金7の外周平面部が処置具挿入口金取付孔2の内周平面部に当接していることにより、処置具挿入口金7の軸線周り方向の回転が規制されて、固定ナット11の緩みが発生しない。
【0027】
ただし、Dカット係合部15において、処置具挿入口金7の外径サイズが処置具挿入口金取付孔2の内径サイズより小さく形成されている。具体的には、処置具挿入口金7が、固定ナット11で押圧固定されていない状態では処置具挿入口金取付孔2内で軸線周り方向に回転自在となるように、Dカット係合部15における処置具挿入口金取付孔2の最小内径が処置具挿入口金7の最大外径より大きく形成されている。
【0028】
処置具挿入口金7は、処置具挿入口金取付孔2と軸線が一致するようにセットされた状態では、Dカット係合部15において外周平面部が処置具挿入口金取付孔2の内周平面部と当接するので軸線周りに回転させることができない。
【0029】
しかし、図3及びそのIV−IV断面を図示する図4に示されるように、固定ナット11が取り付けられていない状態で、処置具挿入口金7の軸線位置をDカット係合部15から遠ざかる方向に移動させることにより、処置具挿入口金7を処置具挿入口金取付孔2内において軸線周り方向に自由に回転させることができる。
【0030】
したがって、組立工程において、処置具挿入口金7を処置具挿通チャンネル基端口金4に螺合連結部8で螺合させる作業の際には、処置具挿入口金取付孔2の口元から外方に突出する処置具挿入口金7の突端部を摘んで、処置具挿入口金取付孔2内で処置具挿入口金7を軸線周りに回転させることができ、螺合連結部8における処置具挿通チャンネル基端口金4との螺合作業を極めて容易に行い、処置具挿通チャンネル基端口金4を処置具挿入口金取付孔2側に引き寄せた状態に連結固定することができる。
【0031】
図1に戻って、処置具挿入口金7は、処置具挿入口金取付孔2の口元側において外周面が正円形の断面形状に形成されていて、外周面に雄ねじが形成された円筒状に形成されている固定ナット11内に処置具挿入口金7が嵌合している(嵌合部B)。
【0032】
したがって、固定ナット11を螺合部Aに締め付けると、処置具挿入口金7の位置が固定ナット11によって強制的に処置具挿入口金取付孔2と略同軸線位置に導かれて、図2に示されるように、Dカット係合部15において、処置具挿入口金7の外周平面部と処置具挿入口金取付孔2の内周平面部とが当接し合う状態になる。
【0033】
それにより、処置具挿入口金7の軸線周り方向の回転が規制され、固定ナット11をきつく締め付ければ、その後の振動等で螺合部Aにおける固定ナット11と雌ねじ部12の螺合状態が緩まないので、処置具挿入口金7にガタつきや緩みが発生しない。
【0034】
このように、本発明によれば、処置具挿入口金7を複数部品に分割する必要がないので、コスト性、組立作業性に優れ、しかも衛生的なデメリットが発生せずに、処置具挿入口金7の緩み発生を防止することができる。
【0035】
図5は、本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の構造を示しており、処置具挿入口金7を省略したVI−VI断面を図示する図6に示されるように、固定ナット11と螺合する雌ねじ部12の軸線位置X12を、処置具挿入口金取付孔2の軸線位置X2と比較してDカット係合部15に接近する側に偏心して形成したものである。eがその偏心量である。
【0036】
VI−VI断面を図示する図7に示されるように、処置具挿入口金7の外径サイズが処置具挿入口金取付孔2の内径サイズより小さく形成されている点等は、前述の第1の実施例と同様である。
【0037】
即ち、図8及びそのIX−IX断面図である図9に示されるように、処置具挿入口金7が、固定ナット11で押圧固定されていない状態では、処置具挿入口金取付孔2内で軸線周り方向に回転自在となるように、Dカット係合部15における処置具挿入口金取付孔2の最小内径が処置具挿入口金7の最大外径より大きく形成されている。
【0038】
ただし、処置具挿入口金取付孔2の口元に形成されている雌ねじ部12の軸線位置X12が、Dカット係合部15に接近する側に寄せられて形成されていることにより、固定ナット11を雌ねじ部12に締め込むと、処置具挿入口金7がDカット係合部15側に第1の実施例より大きく強制移動させられる。
【0039】
したがって、Dカット係合部15における処置具挿入口金7の外周平面部を、第1の実施例より偏心量eだけ深く形成することができ、その結果、処置具挿入口金7の外周平面部の幅が広くなるので、固定ナット11が締め付けられた時に、処置具挿入口金7のガタつきや緩みの発生を第1の実施例よりさらに確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 操作部ハウジング
2 処置具挿入口金取付孔
3 処置具挿通チャンネル
4 処置具挿通チャンネル基端口金
7 処置具挿入口金
8 螺合部
9 段部
11 固定ナット
12 雌ねじ部
15 Dカット係合部
X2 処置具挿入口金取付孔の軸線位置
X12 雌ねじ部の軸線位置
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡の処置具挿通チャンネルに処置具を挿入するための内視鏡の処置具挿入部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来の内視鏡の処置具挿入部を示しており、処置具挿通チャンネル91の基端に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金92が、プラスチック製の操作部ハウジング93に開口形成された処置具挿入口金取付孔94の奥側位置に配置されている。
【0003】
そして、処置具挿入口金取付孔94に外側から差し込まれた処置具挿入口金95と処置具挿通チャンネル基端口金92とが螺合部96で螺合連結されて、処置具挿入口金95が、処置具挿入口金取付孔94内に形成された段部97に固定ナット98で外方から押圧固定された構造になっている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−26248
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような内視鏡の処置具挿入部においては、処置具挿入口金95が、処置具挿入口金取付孔94内に形成された段部97に固定ナット98で外方から押圧されることにより、操作部ハウジング93に固定されている。
【0006】
したがって、処置具挿入口金95に外側から大きな回転力が作用すると(例えば、処置具の操作部が処置具挿入口金95に着脱されるような場合等)、処置具挿入口金95が回転して固定ナット98が緩み、処置具挿入口金95がガタつく状態になってしまう場合がある。
【0007】
そこで、例えば図11に示されるように、処置具挿入口金取付孔94と処置具挿入口金95との嵌め合い部に断面形状がD状のいわゆるDカット係合部99等のような非回転嵌合部を設ければ、処置具挿入口金取付孔94内での処置具挿入口金95の回転を規制することができる(例えば、特開2003−126027)。
【0008】
しかし、そのように処置具挿入口金95が軸線周り方向に回転できないようにしてしまうと、処置具挿通チャンネル基端口金92に対して処置具挿入口金95を螺合連結することができなくなる。
【0009】
そのため、処置具挿入口金95を二部品(95A,95B)に分割して接続する必要が生じ、コスト面での不利益だけでなく、組み立て時に螺合部96の螺合作業が困難を究め、また、二つに分割された処置具挿入口金95A,95Bの分割/接続部の隙間が汚液溜まりになる可能性も生じて衛生上も好ましくない。
【0010】
本発明は、固定ナットで押圧固定された処置具挿入口金にガタつきや緩みが発生せず、しかも、処置具挿入口金を複数部品に分割する必要がなくて、コスト性、組立作業性に優れ、衛生的なデメリットが発生しない内視鏡の処置具挿入部の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の処置具挿入部の構造は、処置具挿通チャンネルの基端に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金が、操作部ハウジングに開口形成された処置具挿入口金取付孔の奥側位置に配置され、処置具挿入口金取付孔に外側から差し込まれた処置具挿入口金と処置具挿通チャンネル基端口金とが螺合連結されて、処置具挿入口金が、処置具挿入口金取付孔内に形成された段部に固定ナットで外方から押圧固定された構造を有する内視鏡の処置具挿入部の構造において、処置具挿入口金取付孔の内周面とそれに面する処置具挿入口金の外周面とに、平面どうしで当接し合うDカット係合部を形成すると共に、処置具挿入口金が、固定ナットで押圧固定されていない状態では処置具挿入口金取付孔内で軸線周り方向に回転自在となるように、Dカット係合部における処置具挿入口金取付孔の最小内径を処置具挿入口金の最大外径より大きく形成し、固定ナット内に処置具挿入口金を嵌合させて、固定ナットを処置具挿入口金取付孔の口元部に螺合させることにより、Dカット係合部で処置具挿入口金取付孔の内周平面部と処置具挿入口金の外周平面部とが当接し合う状態になるようにしたものである。
【0012】
なお、固定ナットと螺合する雌ねじ部の軸線位置が、処置具挿入口金取付孔の軸線位置と比較してDカット係合部に接近する側に偏心して形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、処置具挿入口金を摘んで処置具挿通チャンネル基端口金に容易に螺合連結させることができ、その後で、固定ナットを処置具挿入口金取付孔の口元部に螺合させることにより、Dカット係合部で処置具挿入口金取付孔の内周平面部と処置具挿入口金の外周平面部とが当接し合うので、処置具挿入口金に外側から大きな回転力が作用しても処置具挿入口金にガタつきや緩みが発生せず、しかも、処置具挿入口金を複数部品に分割する必要がないので、コスト的、衛生的なデメリットが発生しない優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿入部の側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿入部の図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿入部の組み立て工程における側面断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の内視鏡の処置具挿入部の図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の側面断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の図5における処置具挿入口金を省略した状態のVI−VI断面図である。
【図7】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の図5におけるVI−VI断面図である。
【図8】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の組み立て工程における側面断面図である。
【図9】本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の図8におけるIX−IX断面図である。
【図10】内視鏡の処置具挿入部の第1の従来例の側面断面図である。
【図11】内視鏡の処置具挿入部の第2の従来例の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、内視鏡の操作部の下端部付近に設けられた処置具挿入部を示している。操作部ハウジング1はプラスチックモールドにより形成されていて、処置具挿入口金取付孔2が、操作部ハウジング1に外側から内側に斜め下方に向けて形成されている。
【0016】
3は、内視鏡の挿入部内に全長にわたって挿通配置された、例えば四フッ化エチレン樹脂チューブ等からなる可撓性の処置具挿通チャンネルである。処置具挿通チャンネル3の基端部に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金4は、操作部ハウジング1内の処置具挿入口金取付孔2の奥側位置に配置されている。
【0017】
処置具挿通チャンネル基端口金4には、処置具挿通チャンネル3に対して二股に分かれた状態に、吸引チューブ5と処置具挿入口金7とが接続されている。なお、処置具挿通チャンネル基端口金4の周囲にはその他の各種部材も配置されているが、その図示は省略されている。
【0018】
ステンレス鋼製の処置具挿入口金7は、処置具挿入口金取付孔2内に外側から差し込まれた状態に配置されて、処置具挿入口金7の突端側は処置具挿入口金取付孔2の口元から外方に突出している。
【0019】
処置具挿入口金7の奥側の先端部分は、処置具挿入口金取付孔2の奥側位置で処置具挿通チャンネル基端口金4と螺合連結され(螺合連結部8)、その連結部にはシール用のOリング6が装着されている。
【0020】
処置具挿入口金7の軸線位置には、図示されていない処置具を処置具挿通チャンネル3内に案内するための処置具通過孔7aが貫通形成されていて、処置具通過孔7aと処置具挿通チャンネル基端口金4内とが真っ直ぐに連通している。
【0021】
処置具挿入口金取付孔2は中間部分で入口側が奥側より大きな径に形成されていて、その境界部は入口側に対向する段差面がある段部9になっている。また、処置具挿入口金7もそれに合わせた形状に形成されて、処置具挿入口金取付孔2の段部9に当接する段部当接面10が処置具挿入口金7に鍔状に形成されている。
【0022】
処置具挿入口金取付孔2の口元部には雌ねじ部12が形成されており、その雌ねじ部12に外方から螺合する固定ナット11により(螺合部A)、処置具挿入口金7の段部当接面10が処置具挿入口金取付孔2内の段部9に外方から押圧固定され、それによって、処置具挿入口金7が操作部ハウジング1に固定された状態になっている。13、14はシール用のOリングである。
【0023】
処置具挿入口金取付孔2の中間部分(即ち、螺合連結部8と段部当接面10との間の部分)の内周面と、それに面する処置具挿入口金7の外周面とには、平面どうしで当接し合うDカット係合部15が形成されている。
【0024】
II−II断面を図示する図2に示されるように、Dカット係合部15においては、処置具挿入口金取付孔2の断面形状が正円形の一部を弦状に真っ直ぐにした形状に形成され、処置具挿入口金7の外周面の断面形状も、それに対応して正円形の一部が平面状にカットされた形状に形成されている。
【0025】
処置具挿入口金7には、180°対称位置にも同様のカット面が形成されている。このように、処置具挿入口金7の外周面に形成される平面状のカット面の数を多くすると、組み立て時に処置具挿入口金7の回転方向の向きの制約が小さくなり好ましい。ただし、平面状のカット面が一か所だけであっても差し支えない。
【0026】
このDカット係合部15において、処置具挿入口金7の外周平面部が処置具挿入口金取付孔2の内周平面部に当接していることにより、処置具挿入口金7の軸線周り方向の回転が規制されて、固定ナット11の緩みが発生しない。
【0027】
ただし、Dカット係合部15において、処置具挿入口金7の外径サイズが処置具挿入口金取付孔2の内径サイズより小さく形成されている。具体的には、処置具挿入口金7が、固定ナット11で押圧固定されていない状態では処置具挿入口金取付孔2内で軸線周り方向に回転自在となるように、Dカット係合部15における処置具挿入口金取付孔2の最小内径が処置具挿入口金7の最大外径より大きく形成されている。
【0028】
処置具挿入口金7は、処置具挿入口金取付孔2と軸線が一致するようにセットされた状態では、Dカット係合部15において外周平面部が処置具挿入口金取付孔2の内周平面部と当接するので軸線周りに回転させることができない。
【0029】
しかし、図3及びそのIV−IV断面を図示する図4に示されるように、固定ナット11が取り付けられていない状態で、処置具挿入口金7の軸線位置をDカット係合部15から遠ざかる方向に移動させることにより、処置具挿入口金7を処置具挿入口金取付孔2内において軸線周り方向に自由に回転させることができる。
【0030】
したがって、組立工程において、処置具挿入口金7を処置具挿通チャンネル基端口金4に螺合連結部8で螺合させる作業の際には、処置具挿入口金取付孔2の口元から外方に突出する処置具挿入口金7の突端部を摘んで、処置具挿入口金取付孔2内で処置具挿入口金7を軸線周りに回転させることができ、螺合連結部8における処置具挿通チャンネル基端口金4との螺合作業を極めて容易に行い、処置具挿通チャンネル基端口金4を処置具挿入口金取付孔2側に引き寄せた状態に連結固定することができる。
【0031】
図1に戻って、処置具挿入口金7は、処置具挿入口金取付孔2の口元側において外周面が正円形の断面形状に形成されていて、外周面に雄ねじが形成された円筒状に形成されている固定ナット11内に処置具挿入口金7が嵌合している(嵌合部B)。
【0032】
したがって、固定ナット11を螺合部Aに締め付けると、処置具挿入口金7の位置が固定ナット11によって強制的に処置具挿入口金取付孔2と略同軸線位置に導かれて、図2に示されるように、Dカット係合部15において、処置具挿入口金7の外周平面部と処置具挿入口金取付孔2の内周平面部とが当接し合う状態になる。
【0033】
それにより、処置具挿入口金7の軸線周り方向の回転が規制され、固定ナット11をきつく締め付ければ、その後の振動等で螺合部Aにおける固定ナット11と雌ねじ部12の螺合状態が緩まないので、処置具挿入口金7にガタつきや緩みが発生しない。
【0034】
このように、本発明によれば、処置具挿入口金7を複数部品に分割する必要がないので、コスト性、組立作業性に優れ、しかも衛生的なデメリットが発生せずに、処置具挿入口金7の緩み発生を防止することができる。
【0035】
図5は、本発明の第2の実施例の内視鏡の処置具挿入部の構造を示しており、処置具挿入口金7を省略したVI−VI断面を図示する図6に示されるように、固定ナット11と螺合する雌ねじ部12の軸線位置X12を、処置具挿入口金取付孔2の軸線位置X2と比較してDカット係合部15に接近する側に偏心して形成したものである。eがその偏心量である。
【0036】
VI−VI断面を図示する図7に示されるように、処置具挿入口金7の外径サイズが処置具挿入口金取付孔2の内径サイズより小さく形成されている点等は、前述の第1の実施例と同様である。
【0037】
即ち、図8及びそのIX−IX断面図である図9に示されるように、処置具挿入口金7が、固定ナット11で押圧固定されていない状態では、処置具挿入口金取付孔2内で軸線周り方向に回転自在となるように、Dカット係合部15における処置具挿入口金取付孔2の最小内径が処置具挿入口金7の最大外径より大きく形成されている。
【0038】
ただし、処置具挿入口金取付孔2の口元に形成されている雌ねじ部12の軸線位置X12が、Dカット係合部15に接近する側に寄せられて形成されていることにより、固定ナット11を雌ねじ部12に締め込むと、処置具挿入口金7がDカット係合部15側に第1の実施例より大きく強制移動させられる。
【0039】
したがって、Dカット係合部15における処置具挿入口金7の外周平面部を、第1の実施例より偏心量eだけ深く形成することができ、その結果、処置具挿入口金7の外周平面部の幅が広くなるので、固定ナット11が締め付けられた時に、処置具挿入口金7のガタつきや緩みの発生を第1の実施例よりさらに確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 操作部ハウジング
2 処置具挿入口金取付孔
3 処置具挿通チャンネル
4 処置具挿通チャンネル基端口金
7 処置具挿入口金
8 螺合部
9 段部
11 固定ナット
12 雌ねじ部
15 Dカット係合部
X2 処置具挿入口金取付孔の軸線位置
X12 雌ねじ部の軸線位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置具挿通チャンネルの基端に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金が、操作部ハウジングに開口形成された処置具挿入口金取付孔の奥側位置に配置され、上記処置具挿入口金取付孔に外側から差し込まれた処置具挿入口金と上記処置具挿通チャンネル基端口金とが螺合連結されて、上記処置具挿入口金が、上記処置具挿入口金取付孔内に形成された段部に固定ナットで外方から押圧固定された構造を有する内視鏡の処置具挿入部の構造において、
上記処置具挿入口金取付孔の内周面とそれに面する上記処置具挿入口金の外周面とに、平面どうしで当接し合うDカット係合部を形成すると共に、
上記処置具挿入口金が、上記固定ナットで押圧固定されていない状態では上記処置具挿入口金取付孔内で軸線周り方向に回転自在となるように、上記Dカット係合部における上記処置具挿入口金取付孔の最小内径を上記処置具挿入口金の最大外径より大きく形成し、
上記固定ナット内に上記処置具挿入口金を嵌合させて、上記固定ナットを上記処置具挿入口金取付孔の口元部に螺合させることにより、上記Dカット係合部で上記処置具挿入口金取付孔の内周平面部と上記処置具挿入口金の外周平面部とが当接し合う状態になるようにしたことを特徴とする内視鏡の処置具挿入部の構造。
【請求項2】
上記固定ナットと螺合する雌ねじ部の軸線位置が、上記処置具挿入口金取付孔の軸線位置と比較して上記Dカット係合部に接近する側に偏心して形成されている請求項1記載の内視鏡の処置具挿入部の構造。
【請求項1】
処置具挿通チャンネルの基端に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金が、操作部ハウジングに開口形成された処置具挿入口金取付孔の奥側位置に配置され、上記処置具挿入口金取付孔に外側から差し込まれた処置具挿入口金と上記処置具挿通チャンネル基端口金とが螺合連結されて、上記処置具挿入口金が、上記処置具挿入口金取付孔内に形成された段部に固定ナットで外方から押圧固定された構造を有する内視鏡の処置具挿入部の構造において、
上記処置具挿入口金取付孔の内周面とそれに面する上記処置具挿入口金の外周面とに、平面どうしで当接し合うDカット係合部を形成すると共に、
上記処置具挿入口金が、上記固定ナットで押圧固定されていない状態では上記処置具挿入口金取付孔内で軸線周り方向に回転自在となるように、上記Dカット係合部における上記処置具挿入口金取付孔の最小内径を上記処置具挿入口金の最大外径より大きく形成し、
上記固定ナット内に上記処置具挿入口金を嵌合させて、上記固定ナットを上記処置具挿入口金取付孔の口元部に螺合させることにより、上記Dカット係合部で上記処置具挿入口金取付孔の内周平面部と上記処置具挿入口金の外周平面部とが当接し合う状態になるようにしたことを特徴とする内視鏡の処置具挿入部の構造。
【請求項2】
上記固定ナットと螺合する雌ねじ部の軸線位置が、上記処置具挿入口金取付孔の軸線位置と比較して上記Dカット係合部に接近する側に偏心して形成されている請求項1記載の内視鏡の処置具挿入部の構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−207424(P2010−207424A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57334(P2009−57334)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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