説明

内視鏡の可撓管部と、この可撓管部を有する内視鏡

【課題】 可撓管部を小さな湾曲半径で曲げる際にも、可撓管部を曲げるための大きな力を必要とせず、操作性が良く、患者への負担を減少できる内視鏡の可撓管部と、この可撓管部を有する内視鏡とを提供すること。
【解決手段】 可撓管部25は、螺旋管81と、螺旋管81の先端部81a側に配設される前側接続管111と、螺旋管81の基端部81b側に配設される後側接続管121とを有している。螺旋管81は、前側接続管111と後側接続管121との少なくとも一方の接続管に対して、螺旋管81の軸方向に移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する内視鏡の可撓管部と、この可撓管部を有する内視鏡とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に内視鏡は、大腸におけるS状結腸などに曲がりながら挿入される可撓管部を有している。例えば特許文献1には、このような可撓管部が開示されている。この可撓管部は、例えば螺旋管と、この螺旋管の外側に配設され、螺旋管に積層する(螺旋管を覆う)網状の網状管と、この網状管の外側に配設され、網状管に積層する(網状管を覆う)外皮とを有している。このように可撓管部は、3層構造を有している。
【0003】
また例えば特許文献2において、可撓管部は、内視鏡の湾曲部と可撓管部の先端部とを連結するために可撓管部の先端部に配設される前側接続管と、可撓管部の基端部と内視鏡の操作部とを連結するために可撓管部の基端部に配設される後側連結管とを有している。前側接続管は湾曲部の基端部と連結し、後側連結管は内視鏡の操作部と連結する。
【0004】
このとき、螺旋管の先端部と、網状管の先端部と、外皮の先端部とは、それぞれ前側接続管に固定されている。また螺旋管の基端部と、網状管の基端部と、外皮の基端部とは、後側接続管に固定されている。
【0005】
螺旋管の先端部が前側接続管に固定され、螺旋管の基端部が後側接続管に固定されているために、螺旋管は可撓管部の長手方向に沿って移動せず位置を規制されている。そのため可撓管部の長手方向において、螺旋管は、可撓管部全体に渡って配設されることとなり、可撓管部全体の潰れと、可撓管部の局所的な潰れとを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−263059号公報
【特許文献2】特開2009−153714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的にS状結腸は、非常に小さい湾曲半径を有している。そのため、上述したように可撓管部がS状結腸に曲がりながら挿入される際、可撓管部もS状結腸に対応するように小さく曲がる必要がある。可撓管部が曲がる際、一般的に、可撓管部の内側は自然長(直線状態)時の長さよりも狭まり(縮み)、可撓管部の外側は自然長(直線状態)時の長さよりも広がる(伸びる)。この点は、螺旋管についても同様である。
【0008】
しかし、上述したように、螺旋管は可撓管部の潰れを防止するために、螺旋管の両端部は固定されており、螺旋管は可撓管部の長手方向に沿って移動せず位置を規制されている。そのため、S状結腸の湾曲半径が小さいほど、可撓管部(螺旋管)は曲がりにくく、可撓管部を曲げるためには大きな力が必要となる。このように、S状結腸の湾曲半径が小さいほど、可撓管部の操作性が低下してしまう。
【0009】
また可撓管部がS状結腸などに曲がりながら挿入される際、可撓管部がS状結腸に対応するように柔らかく曲がらないと、患者への負担が増加してしまう。
【0010】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、可撓管部を小さな湾曲半径で曲げる際にも、可撓管部を曲げるための大きな力を必要とせず、操作性が良く、患者への負担を減少できる内視鏡の可撓管部と、この可撓管部を有する内視鏡とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は目的を達成するために、螺旋管と、前記螺旋管の先端部側に配設され、湾曲部の節輪と接続する第1の接続管と、前記螺旋管の基端部側に配設され、操作部と接続する第2の接続管と、を具備し、前記螺旋管は、前記第1の接続管と前記第2の接続管との少なくとも一方の接続管に対して、前記螺旋管の軸方向に移動可能であることを特徴とする内視鏡の可撓管部を提供する。
【0012】
本発明は目的を達成するために、内視鏡の可撓管部は、螺旋管と網状管と樹脂層と接続管とから構成され、前記接続管は、前記螺旋管の先端部側に配設され、湾曲部の節輪と接続する第1の接続管と、前記螺旋管の基端部側に配設され、操作部と接続する第2の接続管と、を具備し、前記網状管と前記樹脂層との少なくとも一方の両端部は、前記第1の接続管と前記第2の接続管とにそれぞれ固定され、前記螺旋管は、前記第1の接続管と前記第2の接続管との少なくとも一方の接続管に対して、前記螺旋管の軸方向に移動可能であることを特徴とする内視鏡の可撓管部を提供する。
【0013】
また本発明は目的を達成するために、上記に記載の内視鏡の可撓管部を有する内視鏡を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可撓管部を小さな湾曲半径で曲げる際にも、可撓管部を曲げるための大きな力を必要とせず、操作性が良く、患者への負担を減少できる内視鏡の可撓管部と、この可撓管部を有する内視鏡とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に係る内視鏡の概略図である。
【図2A】図2は、第1の実施形態における可撓管部の3層構造を示す図である。
【図2B】図2Bは、網状管の一部を拡大した図である。
【図3A】図3Aは、螺旋管の両端部が接続管に固定された状態で螺旋管が曲がる状態を示す図である。
【図3B】図3Bは、螺旋管の両端部が接続管に配設されている網状管に対して摺動可能な状態で螺旋管が曲がる状態を示す図である。
【図3C】図3Cは、螺旋管の両端部が接続管に配設されている網状管に対して摺動可能な状態で螺旋管が曲がる状態を示す図である。
【図3D】図3Dは、螺旋管の両端部が接続管に対して摺動可能な状態で螺旋管が曲がる状態を示す図である。
【図4A】図4Aは、第2の実施形態における螺旋管の構成を示す図である。
【図4B】図4Bは、第2の実施形態の第1の変形例を示し、第1の変形例における螺旋管の先端部側の構成を示す図である。
【図4C】図4Cは、第2の実施形態の第2の変形例を示し、第2の変形例における螺旋管の構成を示す図である。
【図4D】図4Dは、第2の実施形態の第3の変形例を示し、第3の変形例における螺旋管の先端部側の構成を示す図である。
【図4E】図4Eは、第2の実施形態の第4の変形例を示し、第4の変形例における螺旋管の先端部側の構成を示す図である。
【図4F】図4Fは、第4の変形例において、螺旋管が曲がる際に、弾性部材が伸びる状態を示す図である。
【図5】図5は、第3の実施形態における可撓管部の先端部側の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1と図2Aと図2Bと図3Aと図3Bと図3Cとを参照して第1の実施形態について説明する。
図1に示すように内視鏡1は、患者の体腔内等に挿入される細長い挿入部10と、挿入部10の基端部と連結し、内視鏡1を操作する操作部60とを有している。
【0017】
挿入部10は、挿入部10の先端部側から基端部側に向かって、先端硬質部21と、湾曲部23と、可撓管部25とを有している。先端硬質部21の基端部は湾曲部23の先端部と連結し、湾曲部23の基端部は可撓管部25の先端部と連結している。
【0018】
先端硬質部21は、挿入部10の先端部であり、硬い。
【0019】
湾曲部23は、後述する湾曲操作部67の操作によって、例えば上下左右といった所望の方向に湾曲する。湾曲部23が湾曲することにより、先端硬質部21の位置と向きとが変わり、観察対象物が観察視野内に捉えられ、照明光が観察対象物に照明される。湾曲部23は、図2Aに示すように複数の節輪23a,23bが挿入部10の長手方向に沿って回動可能に連結されていることで、構成されている。節輪23a,23bは図示しない網状管によって覆われ、図示しない網状管は樹脂やゴム等の図示しない外皮によって覆われている。
【0020】
可撓管部25は、所望な可撓性を有しており、外力によって曲がる。可撓管部25は、操作部60における後述する本体部61から延出されている管状部材である。可撓管部25の構造については、後述する。
【0021】
操作部60は、可撓管部25が延出している本体部61と、本体部61の基端部と連結し、内視鏡1を操作する操作者によって把持される把持部63と、把持部63と接続しているユニバーサルコード65とを有している。
【0022】
本体部61は、本体部61の外装体である折れ止め部61aを有している。
【0023】
把持部63には、湾曲部23を湾曲操作する湾曲操作部67が配設されている。湾曲操作部67は、湾曲部23を左右に湾曲操作させる左右湾曲操作ノブ67aと、湾曲部23を上下に湾曲操作させる上下湾曲操作ノブ67bと、湾曲した湾曲部23の位置を固定する固定ノブ67cとを有している。
【0024】
また、把持部63には、吸引スイッチ69aと、送気・送水スイッチ69bとを有するスイッチ部69が配設されている。スイッチ部69は、把持部63が操作者に把持された際に、操作者の手によって操作される。吸引スイッチ69aは、先端硬質部21に配設される図示しない吸引開口部から図示しない吸引チャンネルを介して、粘液や流体等を内視鏡1が吸引するときに操作される。送気・送水スイッチ69bは、先端硬質部21において図示しない撮像ユニットの観察視野を確保するために図示しない送気・送水チャンネルから流体を送気・送水するときに操作される。流体は、水や気体を含む。
【0025】
また、把持部63には、内視鏡撮影用の各種ボタン71が配設されている。
【0026】
ユニバーサルコード65は、図示しないビデオプロセッサや光源装置に接続する接続部65aを有している。
【0027】
次に図2Aと図2Bと図3Aと図3Bと図3Cとを参照して、可撓管部25の構造について説明する。
可撓管部25は、例えば中空形状を有している。詳細には、図2Aに示すように可撓管部25は、例えば、螺旋管81と、この螺旋管81の外側に配設され、螺旋管81に積層する(螺旋管81を覆う)網状の網状管91と、この網状管91の外側に配設され、網状管91に積層する(網状管91を覆う)外皮101とを有している。
このように可撓管部25は、螺旋管81と網状管91と外皮101とからなる3層構造である。
【0028】
螺旋管81は、例えばステンレス鋼材製の帯状の薄板素材が螺旋形状に成形されて、略円管状に形成されている。螺旋管81の先端部81aと基端部81bとは、螺旋管81の中心軸に対して略90度となるようにカットされている。螺旋管81は、例えば薄肉金属螺旋管である。螺旋管81は、例えば疎巻きに形成されている。螺旋管81は、可撓管部25全体の潰れと、可撓管部25の局所的な潰れとを防止するために、可撓管部25の長手(軸)方向に沿って可撓管部25全体に渡って配設されている。螺旋管81は、先端部81aから基端部81bまで均一の太さを有している。
【0029】
網状管91は、図2Bに示すように、例えばステンレス鋼材製の複数の素線93が束にされた素線束95が略円管状に編み込まれることで、形成される。網状管91において、素線束95同士は、交差され、格子状となっている。この網状管91の厚さは、2つ分の素線93の外径を足し算したものに該当する。例えば1つ分の素線93の外径をdとする場合、網状管91の厚さは、2dとなる。網状管91は、網状管91の先端部から網状管91の基端部まで均一の太さを有している。
【0030】
外皮101は、例えばゴム材などのフレキシブル性を有する樹脂材によって形成されている。外皮101は、網状管91の外側を覆うように略円管状に形成されている。
【0031】
また図2Aと図3Bとに示すように、可撓管部25は、湾曲部23の基端部と可撓管部25の先端部とを連結するために可撓管部25の先端部に配設され、最も可撓管部25側に配設されている節輪23bに嵌め込まれる前側接続管111と、可撓管部25の基端部と本体部61とを連結するために可撓管部25の基端部に配設され、折れ止め部61aの内部に固定される後側接続管121とを有している。
【0032】
前側接続管111は、螺旋管81の先端部81a側に配設され、先端部81a側が差し込まれる第1の接続管となっている。この前側接続管111は、上述したように内視鏡1の湾曲部23と連結する。なお前側接続管111には、網状管91の先端部も差し込まれる。
【0033】
また後側接続管121は、螺旋管81の基端部81b側に配設され、基端部81b側が差し込まれる第2の接続管となっている。この後側接続管121は、上述したように内視鏡1の操作部60と連結する。なお後側接続管121には、網状管91の基端部も差し込まれる。
【0034】
このように前側接続管111と後側接続管121とは、螺旋管81の先端部81a側と基端部81b側とにそれぞれ配設され、螺旋管81の両端部(先端部81aと基端部81b)が差し込まれる1対の接続管となっている。前側接続管111と後側接続管121とは、略同一の構成を有している。
【0035】
図2Aに示すように、前側接続管111の先端部111aの内径は、例えば螺旋管81の外径と網状管91の内径と略同一である。前側接続管111の先端部111aの外径は、例えば節輪23bの内径と略同一である。前側接続管111の先端部111aは、節輪23bに嵌め込まれる。前側接続管111は、先端部111aから前側接続管111の基端部111bに向かって段差状に拡径している。前側接続管111の基端部111bの内径は、例えば網状管91の外径と外皮101の内径と略同一である。前側接続管111の基端部111bの外径は、例えば節輪23bの外径と、外皮101の外径と略同一である。
【0036】
また図2Aに示すように、後側接続管121の先端部121aの内径は、例えば網状管91の外径と外皮101の内径と略同一である。後側接続管121の先端部121aの外径は、例えば外皮101の外径と略同一である。後側接続管121は、折れ止め部61aに嵌め込まれる。後側接続管121は、先端部121aから後側接続管121の基端部121bに向かって段差状に縮径している。後側接続管121の基端部121bの内径は、例えば螺旋管81の外径と網状管91の内径と略同一である。
【0037】
また図2Aと図3Bとに示すように、前側接続管111は、先端部81aと網状管91の先端部とが差し込まれる差込口113を、基端部111bに有している。また図2Aと図3Bとに示すように、後側接続管121は、基端部81bと網状管91の基端部とが差し込まれる差込口123を、先端部121aに有している。
【0038】
また網状管91の先端部の外周面は、例えば接着によって、前側接続管111の基端部111bの内周面に固定されている。また網状管91の基端部の外周面は、例えば接着によって、後側接続管121の先端部121aの内周面に固定されている。
また外皮101の先端部は、例えば接着によって、前側接続管111の基端部111b(差込口113)の縁に固定されている。また外皮101の基端部は、例えば接着によって、後側接続管121の先端部121a(差込口123)の縁に固定されている。
なお網状管91と外皮101とは、前側接続管111と後側接続管121とに接着によって固定されているが、固定できれば接着に限定する必要はなく、固定方法は特に限定されない。
【0039】
また螺旋管81は、前側接続管111と後側接続管121とに対して固定されておらず、前側接続管111と後側接続管121とに対して螺旋管81の軸方向に移動可能である。なお螺旋管81の軸方向は、可撓管部25の長手方向と前側接続管111の軸方向と後側接続管121の軸方向とであることを示す。
【0040】
図3Bに示すように、可撓管部25が曲がる際、先端部81aは前側接続管111に対して螺旋管81の軸方向に移動し、且つ、基端部81bは後側接続管121に対して螺旋管81の軸方向に移動する。詳細には、先端部81aは、前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91に対して摺動する。また基端部81bは、後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91に対して摺動する。このように先端部81aと基端部81bとは、前側接続管111と後側接続管121とに固定されている網状管91に対して摺動する。
【0041】
また本実施形態では図3Bに示すように、可撓管部25が曲がる際、例えば、先端部81aは基端部81b(後側接続管121,把持部63)に向かうように前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91を摺動し、基端部81bは先端部81a(前側接続管111,湾曲部23)に向かうように後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91を摺動する。また図3Bに示すように可撓管部25が曲った状態から図2Aに示すように直線状態に戻る際、先端部81aは湾曲部23に向かうように前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91を摺動し、基端部81bは把持部63に向かうように後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91を摺動する。
【0042】
なお以下において、図2Aに示すように、例えば自然長時(直線状態)及び螺旋管81の軸方向において、螺旋管81の薄板間のピッチ(隙間)をL1とする。
【0043】
また周方向とは、可撓管部25の軸周り方向ではなく、図3Aと図3Bとに示すように可撓管部25の曲がり方向、言い換えると曲がっている可撓管部25全体によって形成される円弧に沿った方向を示す。
【0044】
また図3Aに示すように、螺旋管181の先端部181aが前側接続管111に固定され、螺旋管181の基端部181bが後側接続管121に固定されている螺旋管を、螺旋管181と称する。また螺旋管181を有する可撓管部を可撓管部125と称する。
このとき螺旋管181の先端部181aは、前側接続管111からの抜けを防止するために、例えば差込口113よりも先端部111a側に固定されている。また螺旋管181の基端部181bは、後側接続管121からの抜けを防止するために、例えば差込口123よりも基端部121b側に固定されている。
【0045】
図3Aに示すように、可撓管部125が湾曲半径R1及び湾曲角度θ1で曲がるとする。湾曲角度θ1は、例えば180度とする。この湾曲角度θ1は、例えば差込口113が配設される平面と差込口123が配設される平面との間に形成される角度を示す。また湾曲半径R1は、例えば曲がった可撓管部125の中心から螺旋管181の外周面までの距離を示す。このときの螺旋管181の周方向において、外周側の薄板間のピッチ(隙間)をP1とする。このP1は、一般的に、L1よりも増加する。
またこのとき、上述したように、螺旋管181の先端部181aは前側接続管111に固定され、螺旋管181の基端部181bは後側接続管121に固定されている。そのため螺旋管181の湾曲角度θ2は、湾曲角度θ1よりも大きくなる。湾曲角度θ2は、例えば螺旋管181における先端部181aと基端部181bとの間に形成される角度を示す。
【0046】
また図3Bに示すように、本実施形態のような可撓管部25が可撓管部125と同じ湾曲半径R1及び湾曲角度θ1で曲がる際、螺旋管81の周方向において、外周側の薄板間のピッチ(隙間)をP2とする。このP2は、L1よりも増加する。しかし、本実施形態の螺旋管81において、先端部81aが前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91に対して基端部81b(差込口113,後側接続管121,把持部63)に向かって摺動し、基端部81bは後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91に対して先端部81a(差込口123,前側接続管111,湾曲部23)に向かって摺動する。そのため周方向において、周方向あたりの螺旋管81の螺旋(薄板)数は、螺旋管181の螺旋(薄板)数よりも増加する。これにより本実施形態の螺旋管81は、螺旋管181よりも薄板間のピッチ(隙間)が狭められた状態となり、螺旋管181よりも周方向に沿って密に配設される。よってP2は、P1よりも小さく(狭く)なる。
このようにP1>P2>L1となる。
【0047】
また例えば図3Bに示すように、上述したように先端部81aは前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91に対して基端部81bに向かって摺動し、基端部81bは後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91に対して先端部81aに向かって摺動する。そのため、螺旋管81の湾曲角度θ3は、湾曲角度θ1と略同一になることが可能となる。また湾曲角度θ3は、湾曲角度θ2よりも小さくなることが可能となる。湾曲角度θ3は、例えば螺旋管81における先端部81aと基端部81bとの間に形成される角度を示す。
このようにθ2>θ3≧θ1となる。
【0048】
また図3Cに示すように、可撓管部25の湾曲半径と可撓管部125の湾曲半径とが共にR1、P1=P2としたとき、可撓管部25の湾曲角度θ4(例えば210度)は、可撓管部125の湾曲角度θ1(例えば180度)よりも大きくなる。つまり可撓管部25は、可撓管部125よりも大きく曲がることとなる。
【0049】
また図3Bに示すように可撓管部25が曲がる際と図3Bに示すように可撓管部25が曲がった状態から図2Aに示すように直線状態に戻る際とにおいて、先端部81aと基端部81bとが摺動し、先端部81aが前側接続管111から抜けることを防止し、基端部81bが後側接続管121から抜けることを防止し、螺旋管81が可撓管部25全体に渡って配設されるために、図2Aに示すようにL2はL3よりも長くなっている。L2は、直線状態の螺旋管81において、先端部81aから基端部81bまでの螺旋管81全体の長さを示す。またL3は、直線状態の螺旋管81において、前側接続管111の基端部111bに形成され、先端部81a側が差し込まれる差込口113から、後側接続管121の先端部121aに形成され、基端部81b側が差し込まれる差込口123までの長さを示している。L2とL3とは、螺旋管81の軸方向における長さを示す。
【0050】
なお図3Bに示すように、可撓管部25が曲がり、先端部81aが基端部81bに向かって前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91を摺動する際、前側接続管111は前側接続管111(差込口113)からの先端部81aの抜けを防止する。そのため前側接続管111は、例えば、摺動する先端部81aが前側接続管111から抜けない長さを有している、または前側接続管111からの先端部81aの抜けを防止するストッパーなどの防止部を有している。
【0051】
また図3Bに示すように、可撓管部25が曲がり、基端部81bが先端部81aに向かって後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91を摺動する際、後側接続管121は、後側接続管121(差込口123)からの基端部81bの抜けを防止する。そのため、後側接続管121は、例えば、摺動する基端部81bが後側接続管121から抜けない長さを有している、または後側接続管121からの基端部81bの抜けを防止するストッパーなどの防止部を有している。
【0052】
また可撓管部25が図3Bに示す曲がった状態から図2Aに示す直線状態に戻り、先端部81aが湾曲部23に向かって前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91を摺動する際、先端部81aは前側接続管111を挿通して節輪23bに挿入されても良い。または、前側接続管111は、前側接続管111(先端部111a)から湾曲部23への先端部81aの抜けを防止してもよい。このとき前側接続管111は、摺動する先端部81aが前側接続管111を挿通して節輪23bに挿入されることを防止するストッパーなどの防止部を有している。または前側接続管111は、前側接続管111の先端部111aの内径が螺旋管81の先端部81aの外径よりも細径となるように、形成されている。
【0053】
また可撓管部25が図3Bに示す曲がった状態から図2Aに示す直線状態に戻り、基端部81bが把持部63に向かって後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91を摺動する際、基端部81bは後側接続管121を挿通して把持部63側に挿入されても良い。または、後側接続管121は、後側接続管121(基端部121b)から把持部63側への基端部81bの抜けを防止してもよい。このとき後側接続管121は、摺動する基端部81bが後側接続管121を挿通して把持部63側に挿入されることを防止するストッパーなどの防止部を有している。または後側接続管121は、後側接続管121の基端部121bの内径が螺旋管81の基端部81bの外径よりも細径となるように、形成されている。
【0054】
前側接続管111と後側接続管121とにおける上述した防止部は、例えば前側接続管111の内周面と後側接続管121の内周面とに形成される図示しない突起部等である。突起部は、例えば前側接続管111と後側接続管121とに対して一体である。
【0055】
次に本実施形態における螺旋管81の曲がり方について図2Aと図3Aと図3Bと図3Cとを参照して説明する。
図3Bに示すように、可撓管部25の湾曲半径と可撓管部125の湾曲半径とが共にR1、可撓管部25の湾曲角度と可撓管部125の湾曲角度とが共にθ1なるように、可撓管部25が曲がる。このとき螺旋管81も曲がり、同時に、先端部81aが前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91に対して基端部81b(後側接続管121,把持部63)に向かって摺動し、基端部81bは後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91に対して先端部81a(前側接続管111,湾曲部23)に向かって摺動する。
【0056】
これにより周方向において、周方向あたりの螺旋管81の螺旋(薄板)数は、螺旋管181の螺旋(薄板)数よりも増加する。よって螺旋管81は、螺旋管181よりも周方向に沿って密に配設される。またP2は、P1よりも小さく(狭く)なる。また螺旋管81の湾曲角度θ3は、湾曲角度θ1と略同一になることが可能となる。また湾曲角度θ3は、湾曲角度θ2よりも小さくなることが可能となる。
【0057】
P1>P2となり、θ2>θ3≧θ1となることで、可撓管部25(螺旋管81)は、可撓管部125(螺旋管181)よりも柔らかく曲がり、可撓管部125(螺旋管181)よりも曲がりやすくなる。そのため、可撓管部25(螺旋管81)を曲げる力は、可撓管部125(螺旋管181)を曲げる力よりも小さくなり、操作性が向上する。
【0058】
また可撓管部25がS状結腸などに曲がりながら挿入される際、可撓管部25がS状結腸に対応するように上述したように柔らかく曲がる。そのため、可撓管部25が用いられる際の患者への負担は、可撓管部125が用いられる際の患者への負担よりも減少する。このように患者への負担は、小さくなる。
【0059】
なおP1=P2としたとき、図3Cに示すように、螺旋管81は、螺旋管181よりも大きく曲がることとなる。そのため、可撓管部25はS状結腸に対応するように曲がり、操作性は向上する。
【0060】
またL2>L3となることで、先端部81aと基端部81bとは確実に摺動し、前側接続管111からの先端部81aの抜けが防止され、後側接続管121からの基端部81bの抜けが防止される。またL2>L3となることで、可撓管部25が曲がっても、螺旋管81が可撓管部25全体に渡って配設され、これにより可撓管部25全体の潰れと、可撓管部25の局所的な潰れとが防止される。
【0061】
また螺旋管81が疎巻きに形成されることで、螺旋管81はより柔らかく曲がる。
【0062】
また図3Bに示すように可撓管部25が曲がる際、先端部81aは、前側接続管111によって、前側接続管111(差込口113)から基端部81bへの抜けを防止される。また図3Bに示すように、可撓管部25が曲がる際、基端部81bは、後側接続管121によって、後側接続管121(差込口123)から先端部81aへの抜けを防止される。
【0063】
また可撓管部25が図3Bに示すように曲がった状態から図2Aに示すように直線状態に戻る際、先端部81aは前側接続管111を挿通して節輪23bに挿入される、または、先端部81aは前側接続管111によって前側接続管111(先端部111a)から湾曲部23への抜けを防止される。また可撓管部25が図3Bに示すように曲がった状態から図2Aに示すように直線状態に戻る際、基端部81bは後側接続管121を挿通して把持部63側に挿入される、または、基端部81bは後側接続管121によって後側接続管121(基端部121b)から把持部63側への抜けを防止される。
これにより、可撓管部25が再び曲がる際に、先端部81aは確実に前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91を摺動し、基端部81bは確実に後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91を摺動する。そのため、上述した操作性の向上と、患者への負担の減少とが常に維持される。
【0064】
このように本実施形態では、可撓管部25が曲がる際、螺旋管81の軸方向において、前側接続管111に差し込まれる先端部81aを前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91に対して摺動させ、後側接続管121に差し込まれる基端部81bを後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91に対して摺動させている。これにより本実施形態では、可撓管部25が曲がる際、螺旋管81の周方向において、周方向あたりの螺旋管81の螺旋(薄板)数を螺旋管181の螺旋(薄板)数よりも増加でき、これに伴い螺旋管81を螺旋管181よりも周方向に沿って密に配設でき、P2をP1よりも小さく(狭く)できる。また本実施形態では、θ2>θ3≧θ1にすることができる。よって本実施形態では、可撓管部25を可撓管部125よりも柔らかく曲げることができ、可撓管部25を可撓管部125よりも曲がりやすくできる。そのため本実施形態では、可撓管部25を曲げる力を可撓管部125を曲げる力よりも小さくでき、可撓管部25を小さな湾曲半径で曲げる際にも、可撓管部25を曲げるための大きな力を必要とせず、可撓管部25をS状結腸に挿入する場合でも操作性を向上できる。またこれにより本実施形態では、可撓管部25をS状結腸に挿入する場合でも患者への負担を減少できる。
【0065】
また本実施形態では、図3Cに示すように、螺旋管81の湾曲半径と螺旋管181の湾曲半径とをR1、P1=P2とした場合、螺旋管81を螺旋管181よりも大きく曲げることができる。これにより本実施形態では、可撓管部25をS状結腸に挿入する場合でも、上述したように、操作性を向上でき、患者への負担を減少できる。
【0066】
また本実施形態では、前側接続管111に差し込まれる先端部81aを前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91に対して摺動させ、後側接続管121に差し込まれる基端部81bを後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91に対して摺動させることで、螺旋管81の湾曲角度θ4をS状結腸に対応するように自在に可変できる。同時に本実施形態では、可撓管部125よりも、可撓管部25の曲げに、幅(柔軟性)を持たせることができる。よって、本実施形態では、可撓管部25をS状結腸に対応するように曲げることができる。
【0067】
また本実施形態では、L2>L3とすることで、図3Bに示すように可撓管部25が曲がった際と図3Bに示すように可撓管部25が曲がった状態から図2Aに示すように直線状態に戻る際とにおいて、先端部81aを前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91に対して摺動でき、基端部81bを後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91に対して摺動できる。また本実施形態では、L2>L3とすることで、先端部81aが前側接続管111から抜けることを防止でき、基端部81bが後側接続管121から抜けることを防止できる。また本実施形態では、L2>L3とすることで、螺旋管81を可撓管部25全体に渡って配設でき、可撓管部25全体の潰れと、可撓管部25の局所的な潰れとを防止できる。
【0068】
また本実施形態では、螺旋管81を疎巻きに形成することで、螺旋管81をより柔らかく曲げることができる。
【0069】
また本実施形態では、図3Bに示すように可撓管部25が曲がる際、前側接続管111によって差込口113からの先端部81aの抜けを防止でき、後側接続管121によって差込口123からの基端部81bの抜けを防止できる。また本実施形態では、図3Bに示すように可撓管部25が曲がった状態から図2Aに示すように直線状態に戻る際、先端部81aを前側接続管111を挿通して節輪23bに挿入でき、基端部81bを後側接続管121を挿通して把持部63側に挿入できる。または本実施形態では、前側接続管111によって先端部111aから湾曲部23への先端部81aの抜けを防止でき、後側接続管121によって基端部121bから把持部63側への基端部81bの抜けを防止できる。そのため本実施形態では、可撓管部25が再び曲がる際に、先端部81aを確実に前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91に対して摺動でき、基端部81bを確実に後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91に対して摺動できる。よって本実施形態では、上述した操作性の向上と、患者への負担の減少とを常に維持できる。
【0070】
また本実施形態では、先端部81aが前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91に対して摺動することで、先端部81aが摺動する際に前側接続管111が摺動する先端部81aによって磨耗してしまうことを防止できる。よって本実施形態では、螺旋管81の破損を防止できる。この点は、基端部81bと、後側接続管121の基端部121bに固定されている網状管91と、後側接続管121とについても同様である。
【0071】
なお本実施形態では、先端部81aと基端部81bとの両方が摺動したが、これに限定する必要はない。本実施形態では、例えば、先端部81aが前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91に対して摺動し、基端部81bが後側接続管121に固定されても良い。この固定は、例えば溶接や接着などである。
これにより本実施形態では、可撓管部25において体腔内に最初に挿入される可撓管部25の先端部において、可撓管部25を先端部側からより柔らかく曲げることができる。
【0072】
もちろん本実施形態では、例えば、先端部81aは前側接続管111に固定され、基端部81bのみが後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91に対して摺動しても良い。この固定は、例えば溶接や接着などである。
例えば先端部81aが湾曲部23の基端部側に配設される複数の節輪23a,23bに挿入されることで、湾曲部23の基端部側において、湾曲抵抗が大きくなり、湾曲部23の基端部側は湾曲に支障をきたす虞が生じる。また可撓管部25と湾曲部23との連結部(前側接続管111)の長さが、先端部81aが摺動するように十分に長くなると、湾曲しない硬質部が長くなってしまう。しかし、本実施形態では、先端部81aを前側接続管111に固定することで、湾曲部23の基端部側において湾曲に支障をきたすことを防止でき、硬質部の長さが長くなることを防止できる。
【0073】
また本実施形態では、先端部81aを前側接続管111に固定することで、先端部81aが節輪23a,23bに挿入されることを確実に防止でき、節輪23a,23bに挿入された先端部81aによって湾曲部23の湾曲に支障をきたすことを防止できる。
【0074】
また本実施形態では、先端部81a側において1巻きの薄板のみを前側接続管111に差し込んで摺動させているが、先端部81a側が差し込まれ摺動でき前側接続管111から抜けなければ、この巻き(螺旋,薄板)数は限定されない。この点は、基端部81b側についても同様である。
【0075】
このように本実施形態では、先端部81a側は、螺旋管81の軸方向に沿って、前側接続管111の基端部111bに固定されている網状管91に対して摺動する、及び/または基端部81b側は、螺旋管81の軸方向に沿って、後側接続管121の先端部121aに固定されている網状管91に対して摺動する。
【0076】
なお本実施形態では、可撓管部25が曲がる際、先端部81aは前側接続管111に対して螺旋管81の軸方向に移動し、及び/または、基端部81bは後側接続管121に対して螺旋管81の軸方向に移動すれば、上記に限定されない。
【0077】
例えば、図3Dに示すように、先端部81aは先端部111aにまで配設されており、基端部81aは基端部121bにまで配設されている。そして、可撓管部25が曲がる際、先端部81a側は、螺旋管81の軸方向に沿って、前側接続管111の先端部111aに対して直接摺動してもよい、及び/または基端部81b側は、螺旋管81の軸方向に沿って、後側接続管121の基端部121bに対して直接摺動してもよい。
【0078】
なお可撓管部25が曲がる際、先端部81a側が螺旋管81の軸方向に沿って前側接続管111に対して摺動することができれば、摺動位置は特に限定されない。この点は、基端部81側についても同様である。
【0079】
また本実施形態では、螺旋管81を疎巻きに形成したが、これに限定する必要は無い。螺旋管81は例えば密巻きに形成されてもよいし、または螺旋管81は初張力が付与された密着コイルによって形成されていてもよい。このような場合であっても、本実施形態では、上述した効果を得ることができる。なお螺旋管81が密着コイルによって形成されている場合、密着コイルは例えば密着コイルバネとなっている。密着コイルは、螺旋状の素線93によって形成される螺旋状の線材である。
【0080】
また本実施形態では、前側接続管111の形状と後側接続管121の形状とは、網状管91と外皮101とを固定でき、螺旋管81が上述したように摺動できれば、特に限定されない。また本実施形態では、螺旋管81が上述したように摺動できれば、前側接続管111と後側接続管121とにおける網状管91と外皮101との固定位置は特に限定されない。
【0081】
また本実施形態では、前側接続管111を最も可撓管部25側に配設されている節輪23bに嵌め込んでいるが、前側接続管111と節輪23bとを連結できれば、連結については特に限定されない。
【0082】
また本実施形態では、先端部81aが前側接続管111に差し込まれ、基端部81bが後側接続管121に差し込まれているが、これに限定する必要はない。例えば、先端部81aが最も可撓管部25側に配設されている節輪23bに差し込まれ、基端部81bが折れ止め部61aにおける差込口に差し込まれても良い。この場合、節輪23bが前側接続管111として機能し、差込口113が後側接続管121として機能する。
【0083】
また本実施形態では、内視鏡1は例えば医療用として用いられる。そのため可撓管部25において、網状管91は螺旋管81を覆い、外皮101が網状管91を覆っている。しかし、網状管91と外皮101とが螺旋管81を覆っていれば、特に限定されない。例えば、内視鏡1は例えば工業用として用いられることを鑑みて、樹脂層である外皮101が螺旋管81を覆い、網状管91が外皮101を覆っていても良い。
この場合、網状管91と樹脂層である外皮101との少なくとも一方の両端部が、前側接続管111と後側接続管121とにそれぞれ固定されていればよい。
【0084】
次に本発明に関わる第2の実施形態について図4Aを参照して説明する。
図4Aに示すように、例えば先端部81a側は、前側接続管111に固定され、螺旋管81のバネ定数よりも低いバネ定数を有する弾性部131として形成されている。螺旋管81のバネ定数とは、例えば先端部81aと基端部81bとの間に位置する螺旋管81の中間部81cにおけるバネ定数を示す。なお上述したバネ定数の関係のため、弾性部131(先端部81a側)は、可撓管部25が曲がる際、または可撓管部25が曲った状態から直線状態に戻る際、中間部81cよりも伸縮する。
【0085】
先端部81a側は、前側接続管111に差し込まれる。また先端部81a側の一部は、例えば接着や溶接などによって、例えば前側接続管111の先端部111aに固定されている。また先端部81a側の他部は、第1の実施形態と同様に移動(摺動)する。先端部81a側は、螺旋管81と一体である。先端部81a側のバネ定数が螺旋管81のバネ定数よりも低くなるために、先端部81a側は、中間部81cと比べて、例えば密巻きに形成されている。
【0086】
そのため例えば、図4Aに示すように、螺旋管81の軸方向において、螺旋管81全体の薄板の長さがL4と均一の場合、先端部81a側における薄板間のピッチP3は、中間部81cにおける薄板間のピッチP4よりも狭くなっている。このように先端部81aのバネ定数は、中間部81cのバネ定数よりも低い。
【0087】
本実施形態では、先端部81a側を、螺旋管81のバネ定数よりも低いバネ定数を有する弾性部131として形成することで、可撓管部25が曲がる際、可撓管部25の柔らかさを可変(調整)することができる。
【0088】
なお本実施形態では、先端部81aの一部のみを第1の接続管の先端部に固定しているため、先端部81aの他部は第1の実施形態と同様に摺動する。
【0089】
なお本実施形態は、上記に限定する必要は無い。第1の変形例として、図4Bに示すように、螺旋管81全体の薄板の長さがL4と均一の場合、図4Bに示すように先端部81a側における薄板間のピッチは、中間部81c側から湾曲部23側に向けて、徐々に狭くなっていてもよい。つまり螺旋管81の先端部81a側において、バネ定数は、中間部81c側から湾曲部23側に向けて徐々に低くなっている。
【0090】
また第2の変形例として、図4Cに示すように、螺旋管81の軸方向において、例えば螺旋管81全体の薄板間のピッチがP5と均一の場合、先端部81a側における薄板の長さL5は、中間部81cにおける薄板の長さL6よりも短くなっていてもよい。このように先端部81aのバネ定数は、中間部81cのバネ定数よりも低くなっている。
【0091】
また第3の変形例として、図4Dに示すように、例えば螺旋管81全体の薄板間のピッチが均一の場合、図4Dに示すように、先端部81a側における薄板の長さは、中間部81c側から湾曲部23側に向けて、徐々に短くなっていてもよい。つまり螺旋管81の先端部81a側において、バネ定数は、中間部81c側から湾曲部23側に向けて徐々に低くなっている。
【0092】
なお本実施形態と第1乃至第3の変形例とでは、先端部81a側を例として説明したが、これに限定する必要はなく、基端部81b側を弾性部131として形成してもよい。つまり本実施形態と第1乃至第3の変形例とでは、螺旋管81の先端部81aと基端部81bとの少なくとも一方は、可撓管部25が曲がる際、または可撓管部25が曲った状態から直線状態に戻る際に、螺旋管81の第1の弾性部よりも伸縮する螺旋管81の第2の弾性部を介して接続管(前側接続管111,後側接続管121)に固定されている。第1の弾性部は、中間部81cを示す。また第2の弾性部は、上述した弾性部131、つまり先端部81a側と基端部81b側とを示す。言い換えると、先端部81a側と基端部81b側とにおいて摺動する側の端部側を、差し込まれ摺動する側の接続管に固定し、螺旋管81のバネ定数よりも低いバネ定数を有する弾性部131として形成すればよい。
【0093】
また第4の変形例として、図4Eに示すように可撓管部25は、先端部81aと接続し、前側接続管111に差し込まれ、前側接続管111に固定され、螺旋管81のバネ定数よりも低いバネ定数を有する弾性部材133を有している。このようなバネ定数の関係のため、弾性部材133は、可撓管部25が曲がる際、または可撓管部25が曲った状態から直線状態に戻る際、螺旋管81よりも伸縮する。弾性部材133は、前側接続管111に差し込まれ、例えば接着や溶接などによって、例えば前側接続管111の先端部111aに固定されている。弾性部材133は、螺旋管81とは別体である。弾性部材133は、例えば疎巻きのコイルバネである。弾性部材133は、可撓管部25が曲がる際に、図4Fに示すように、螺旋管81の軸方向に沿って伸びる。弾性部材133は、可撓管部25が曲った状態から直線状態に戻る際、螺旋管81の軸方向に沿って縮む。このように、弾性部材133は、伸縮する。
【0094】
このように本変形例では、弾性部材133の弾性力によっても可撓管部25が曲がる際の可撓管部25の柔らかさを可変(調整)することができる。
【0095】
なお本変形例では、先端部81aを例として説明したが、これに限定する必要はなく、基端部81bについても同様の構成を用いることができる。つまり螺旋管81の先端部81aと基端部81bとの少なくとも一方は、可撓管部25が曲がる際、または可撓管部25が曲った状態から直線状態に戻る際に、螺旋管81よりも伸縮する弾性部材133を介して接続管(前側接続管111,後側接続管121)に固定されている。言い換えると本実施形態では、弾性部131は、先端部81aと基端部81bとにおいて摺動する側の端部と接続し、摺動する側の接続管に差し込まれ、接続管に固定されていればよい。
【0096】
次に本発明に関わる第3の実施形態について図5を参照して説明する。
本実施形態の可撓管部25は、前側接続管111よりも細く、前側接続管111に差し込まれ、前側接続管111の内側に配設される中空部材141をさらに有している。中空部材141の軸方向は、螺旋管81の軸方向に沿って配設されている。中空部材141は、例えば太さが均一な円筒部材である。中空部材141は、例えば金属製のパイプである。中空部材141の外径は例えば前側接続管111の先端部111aの内径と略同一であり、中空部材141は前側接続管111の先端部111aに嵌め込まれている。そのため中空部材141と前側接続管111の基端部111bとの間には、隙間143が形成される。螺旋管81の軸方向において、中空部材141の長さは、前側接続管111の長さと略同一である。中空部材141は、前側接続管111に収容されており、前側接続管111の先端部111aと基端部111bとから突出していない。
【0097】
中空部材141には、撮像ケーブルや湾曲部23を湾曲させる操作ワイヤなどの図示しない内蔵物が挿通している。内蔵物は、内視鏡1の内部において、先端硬質部21から操作部60にまで配設されている。
【0098】
前側接続管111と、前側接続管111に収容されている中空部材141とにおいて、中空部材141が先端部81a側に差し込まれ、先端部81a側が中空部材141を巻回し、先端部81a側が隙間143に配設されるように、先端部81a側は中空部材141の外周面と前側接続管111の内周面との間に配設される。先端部81a側は、螺旋管81の軸方向に沿って、中空部材141の外周面を移動可能であり、隙間143を移動する。
【0099】
中空部材141は、前側接続管111において、内蔵物と螺旋管81とを分離している。これにより中空部材141は、先端部81a側が前側接続管111に対して摺動する際に、先端部81a側と内蔵物とが互いに干渉することを防止している。言い換えると、中空部材141は、先端部81a側が摺動する際に、内蔵物が摺動する先端部81a側によって磨耗することと、先端部81a側が内蔵物によって磨耗することを防止する。
【0100】
このように本実施形態では、中空部材141によって、先端部81a側と内蔵物との互いの干渉を防止できる。また本実施形態では、中空部材141によって、先端部側の摺動をガイドできる。
【0101】
なお本実施形態では、中空部材141を前側接続管111に配設したことを説明したが、これに限定する必要はなく、前側接続管111と同様に、中空部材141を後側接続管121に配設してもよい。つまり本実施形態では、可撓管部25は、前側接続管111と後側接続管121との少なくとも一方の内部に配設される中空部材141をさらに有している。このとき中空部材141は、中空部材141が配設される側の接続管よりも細い。中空部材141が配設される側の接続管を摺動する端部側は、中空部材141を巻回するように、中空部材141の外周面と中空部材141が配設される側の接続管の内周面との間に配設される。
【0102】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0103】
1…内視鏡、10…挿入部、25…可撓管部、81…螺旋管、81a…先端部、81b…基端部、91…網状管、101…外皮、111…前側接続管、111a…先端部、111b…基端部、113…差込口、121…後側接続管、121a…先端部、121b…基端部、123…差込口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋管と、
前記螺旋管の先端部側に配設され、湾曲部の節輪と接続する第1の接続管と、
前記螺旋管の基端部側に配設され、操作部と接続する第2の接続管と、
を具備し、
前記螺旋管は、前記第1の接続管と前記第2の接続管との少なくとも一方の接続管に対して、前記螺旋管の軸方向に移動可能であることを特徴とする内視鏡の可撓管部。
【請求項2】
内視鏡の可撓管部は、螺旋管と、網状管と、樹脂層と、接続管とから構成され、
前記接続管は、
前記螺旋管の先端部側に配設され、湾曲部の節輪と接続する第1の接続管と、
前記螺旋管の基端部側に配設され、操作部と接続する第2の接続管と、
を具備し、
前記網状管と前記樹脂層との少なくとも一方の両端部は、前記第1の接続管と前記第2の接続管とにそれぞれ固定され、
前記螺旋管は、前記第1の接続管と前記第2の接続管との少なくとも一方の接続管に対して、前記螺旋管の軸方向に移動可能であることを特徴とする内視鏡の可撓管部。
【請求項3】
前記螺旋管の前記先端部と前記基端部との少なくとも一方は、前記螺旋管の第1の弾性部よりも伸縮する前記螺旋管の第2の弾性部を介して前記接続管に固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡の可撓管部。
【請求項4】
前記螺旋管の前記先端部と前記基端部との少なくとも一方は、前記螺旋管よりも伸縮する弾性部材を介して前記接続管に固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡の可撓管部。
【請求項5】
前記螺旋管が前記第1の接続管に対して前記螺旋管の軸方向に移動するとは、前記螺旋管の前記先端部が前記第1の接続管に対して前記螺旋管の軸方向に摺動し、
前記螺旋管が前記第2の接続管に対して前記螺旋管の軸方向に移動するとは、前記螺旋管の前記基端部が前記第2の接続管に対して前記螺旋管の軸方向に摺動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡の可撓管部。
【請求項6】
前記螺旋管は、疎巻き、密巻き、または初張力が付与された密着コイルによって形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡の可撓管部。
【請求項7】
前記先端部から前記基端部までの前記螺旋管の長さL2は、前記先端部側が差し込まれる前記第1の接続管の差込口から前記基端部側が差し込まれる前記第2の接続管の差込口までの長さL3よりも長いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡の可撓管部。
【請求項8】
前記第1の接続管と前記第2の接続管との少なくとも一方の内側に配設される中空部材をさらに具備し、
前記螺旋管は、前記中空部材の外周面を前記螺旋管の軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡の可撓管部。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の内視鏡の可撓管部を有する内視鏡。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−231886(P2012−231886A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101465(P2011−101465)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】