説明

内視鏡の可撓管

【課題】多数のアラミド繊維の単糸を束ねて形成されたアラミド繊維ワイヤが網状管に用いられていても、アラミド繊維の単糸が切れることなく網状管を適正に編組して安定した品質を得ることができる内視鏡の可撓管を提供すること。
【解決手段】少なくとも一本の金属ワイヤ22aと少なくとも一本のアラミド繊維ワイヤ22bとが並置された素線束22を複数編組して形成された網状管12が螺旋管11の外周に被覆された構成を有する内視鏡の可撓管において、アラミド繊維ワイヤ22bが、アラミド繊維の単糸を多数撚り合わせて形成され、その撚り数が300〜600回/mの範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の可撓管に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の可撓管は一般に、複数の細いワイヤが並置された素線束を複数編組して形成された網状管が螺旋管の外周に被覆されて、可撓性を有する合成樹脂製の外皮が網状管の外周に押し出し成形等で被覆された構成を備えている。
【0003】
そのような内視鏡の可撓管の網状管の素線として、耐熱性の優れたアラミド繊維ワイヤ等を用いたものがある(例えば、特許文献1)。アラミド繊維ワイヤは、ポリアミド系の極細のアラミド繊維の単糸を、多数(例えば100本程度)並置して所定の太さ(例えば0.1mm程度)の一束にしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−70238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、多数のアラミド繊維の単糸を並置して形成されたアラミド繊維ワイヤは、単糸どうしが結合していないので、網状管を形成するための編組工程で偏平状になって適正に編組することができず、不良品を出してしまう場合がある。また、単糸が束からはみ出して切れてしまう場合もある。
【0006】
本発明は、多数のアラミド繊維の単糸を束ねて形成されたアラミド繊維ワイヤが網状管に用いられていても、アラミド繊維の単糸が切れることなく網状管を適正に編組して安定した品質を得ることができる内視鏡の可撓管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の可撓管は、少なくとも一本の金属ワイヤと少なくとも一本のアラミド繊維ワイヤとが並置された素線束を複数編組して形成された網状管が螺旋管の外周に被覆されて、可撓性を有する合成樹脂製の外皮が網状管の外周面に被覆された構成を有する内視鏡の可撓管において、アラミド繊維ワイヤがアラミド繊維の単糸を多数撚り合わせて形成され、その撚り数が300〜600回/mの範囲にあるようにしたものである。
【0008】
なお、アラミド繊維ワイヤが、アラミド繊維の多数の単糸を400〜500回/mの範囲で撚り合わせて形成されていれば、より好ましい特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アラミド繊維の単糸を多数撚り合わせてアラミド繊維ワイヤが形成され、その撚り数が300〜600回/mの範囲にあることにより、多数のアラミド繊維の単糸を束ねて形成されたアラミド繊維ワイヤが網状管に用いられていても、アラミド繊維の単糸が切れることなく網状管を適正に編組して安定した品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係る内視鏡の可撓管の部分側面断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る内視鏡の可撓管に用いられるアラミド繊維ワイヤの単体斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る内視鏡の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図3は本発明の実施例に係る内視鏡の全体構成を示しており、操作部2に連結された挿入部可撓管10の先端部分には、操作部2に設けられた湾曲操作ノブ3を回動操作することにより任意の方向に任意の角度だけ屈曲させることができる湾曲部4が連結されている。
【0012】
そして、湾曲部4のさらに先端側には、対物光学系や固体撮像素子等を内蔵した先端部本体5が連結されている。また、操作部2から延出する可撓性の連結コード6の端部には、外部機器であるビデオプロセッサに連結されるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。
【0013】
図1は、挿入部可撓管10の中間部分の構造を、断面位置を先端側から順に変化させて示している。なお、挿入部可撓管10内には、信号ケーブル、光学繊維束、チューブ類等のような各種内蔵物が挿通配置されているが、その図示は省略されている。
【0014】
挿入部可撓管10の基本的な構成は、一般的な内視鏡の挿入部可撓管と同様であり、金属帯材を一定の径で螺旋状に隙間をあけて巻いた螺旋管11の外周に網状管12が被覆されて、可撓性を有する合成樹脂製の外皮13が網状管12の外周に被覆されたものである。なお、螺旋管11は一重、二重又は三重等であっても差し支えない。
【0015】
網状管12は、基本的には周知のように複数の細いワイヤが並置された素線束22を複数編組して形成されたものである。本発明の素線束22は、例えばステンレス鋼線材からなる複数本の金属ワイヤ22aと複数本のアラミド繊維ワイヤ22bとを並置して形成されている。ただし、少なくとも一本の金属ワイヤ22aと少なくとも一本のアラミド繊維ワイヤ22bとが並置されたものであればよい。
【0016】
アラミド繊維ワイヤ22bは、耐熱性と不燃焼性が優れたポリアミド系のアラミド繊維からなり、素線束22中に配置されるアラミド繊維ワイヤ22bの本数を選択することにより、挿入部可撓管10として好ましい可撓性を得ることが可能となり、大腸等への挿入に適した柔軟な可撓性を得ることができる。
【0017】
網状管12の素線束22を構成する各ワイヤ22a,22bの直径は例えば0.1mm程度であり、金属ワイヤ22aとアラミド繊維ワイヤ22bとを合わせて5〜15本程度のワイヤが並置されて一つの素線束22が形成され、そのような素線束22を例えば24〜48個程度編組して一つの網状管12が形成されている。
【0018】
外皮13は、可撓性を有する熱可塑性の例えばポリウレタン樹脂等であり、素材管(即ち、螺旋管11の外周面に網状管12が被覆された状態の管状体)の外周面に、押出成形等で一様に形成されて、網状管12の外周の全面に被覆、接着されている。
【0019】
図2は、網状管12の素線束22を形成するアラミド繊維ワイヤ22bを単体で示している。アラミド繊維ワイヤ22bの直径dは前述のごとく0.1mm程度であり、一本のアラミド繊維ワイヤ22bは、多数のアラミド繊維単糸を多数撚り合わせて形成されている。アラミド繊維単糸の数は、例えば65フィラメント又は133フィラメント等である(中間値、約100フィラメント)。
【0020】
そのようなアラミド繊維ワイヤ22bを形成するアラミド繊維単糸は、300〜600回/mの範囲で撚り合わされている。撚り数が300回/m未満では、網状管12を製造するために素線束22を編組する際に撚りが緩んではみ出した単糸が切れたり、アラミド繊維ワイヤ22bが偏平になってうまく編組できなかったりする場合がある。
【0021】
また、単糸がはみ出した状態でアラミド繊維ワイヤ22bが挿入部可撓管10に組み込まれると、屈曲時に網状管12の外周に結合している外皮13により単糸が引っ張られて外皮13が剥離してしまう場合がある。一方、撚り数が600回/mを越えると、単糸がきつく締まり過ぎて柔軟性が不足してしまう。
【0022】
そこで、網状管12を形成する素線束22中に含まれるアラミド繊維ワイヤ22bとして、アラミド繊維単糸を300〜600回/mの範囲で撚って形成したものを用いることにより、アラミド繊維の単糸が切れることなく網状管12を適正に編組して、耐久性のある挿入部可撓管10を製造することができる。アラミド繊維単糸の撚り数が400〜500回/mの範囲にあれば、アラミド繊維ワイヤ22bが撚りの緩みと柔軟性の双方において非常に望ましい特性を得ることができる。
【0023】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば連結コード6を外装する可撓管に適用することもできる。
【符号の説明】
【0024】
10 挿入部可撓管(可撓管)
11 螺旋管
12 網状管
13 外皮
22 素線束
22a 金属ワイヤ
22b アラミド繊維ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一本の金属ワイヤと少なくとも一本のアラミド繊維ワイヤとが並置された素線束を複数編組して形成された網状管が螺旋管の外周に被覆されて、可撓性を有する合成樹脂製の外皮が上記網状管の外周面に被覆された構成を有する内視鏡の可撓管において、
上記アラミド繊維ワイヤがアラミド繊維の単糸を多数撚り合わせて形成され、その撚り数が300〜600回/mの範囲にあることを特徴とする内視鏡の可撓管。
【請求項2】
上記アラミド繊維ワイヤが、上記アラミド繊維の多数の単糸を400〜500回/mの範囲で撚り合わせて形成されている請求項1記載の内視鏡の可撓管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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