説明

内視鏡の対物レンズ部

【課題】遮光マスクを、非円形の断面形状の観察像投影光路の断面形状に正確に合わせて短い工程時間で対物鏡筒に正確かつ確実に固定することができる内視鏡の対物レンズ部を提供すること。
【解決手段】対物鏡筒11と遮光マスク15とに、対物鏡筒11に対する遮光マスク15の軸線周り方向の位置決めをするための遮光マスク位置決め手段15a,16を設けると共に、遮光マスク15を、対物鏡筒11内において軸線方向に移動しないように対物鏡筒11に機械的に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡の挿入部先端に内蔵された内視鏡の対物レンズ部に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の挿入部先端には対物レンズが内蔵されており、フレアやゴースト等の発生を防止するめに、観察像投影光路の周辺部の不要光を遮るための遮光マスクが対物鏡筒の後半部分に取り付けられている。
【0003】
そのような内視鏡の対物レンズ部において、従来は、遮光マスクを対物鏡筒に直接接着固定するか、遮光マスクを間に挟み込んだ二つの光学部品を対物鏡筒内に接着固定していた(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開平8−248327
【特許文献2】特開平6−269405
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、遮光マスクの固定を接着で行うと、製造工程において、接着剤の硬化待ちのために工程が長時間中断されてコスト高になる原因の一つになる場合がある。
また、観察像が投影される固体撮像素子の撮像面が方形等のような非円形に形成されている内視鏡では、それに対応して観察像投影光路の断面形状も非円形になるが、従来の内視鏡の対物レンズ部においては、接着固定時に遮光マスクの向きを目測で調整していたので、観察像投影光路に対してマスク形状のズレが発生して不要光が一部通過したり逆に必要光が一部カットされて観察像の品質低下の原因になる場合があった。
【0005】
そこで本発明は、遮光マスクを、非円形の断面形状の観察像投影光路の断面形状に正確に合わせて短い工程時間で対物鏡筒に正確かつ確実に固定することができる内視鏡の対物レンズ部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の対物レンズ部は、挿入部先端に内蔵された断面形状が円形の対物鏡筒の後半部分に、非円形の断面形状の観察像投影光路の周辺部の不要光を遮るための遮光マスクが取り付けられた内視鏡の対物レンズ部において、対物鏡筒と遮光マスクとに、対物鏡筒に対する遮光マスクの軸線周り方向の位置決めをするための遮光マスク位置決め手段を設けると共に、遮光マスクを、対物鏡筒内において軸線方向に移動しないように対物鏡筒に機械的に固定したものである。
【0007】
なお、遮光マスク位置決め手段が、遮光マスクの円形の外縁部分から外方に突出する突起と、遮光マスクの突起が係合するように対物鏡筒に形成された係合溝とにより構成されていてもよく、その場合、係合溝が、対物鏡筒の後端側に開放された形状に形成されていてもよい。
【0008】
また、対物鏡筒の後端縁が内方にかしめられ、それによって遮光マスクが対物鏡筒に機械的に固定されていてもよく、その場合、対物レンズの中の後端の対物レンズが対物鏡筒の後端部分内に配置されて、その後端の対物レンズの前側に隣接して遮光マスクが配置され、対物鏡筒の後端縁がかしめられることにより、遮光マスクが対物鏡筒内に押圧固定されていてもよい。
【0009】
また、観察像投影光路の後端位置に固体撮像素子の撮像面が配置されていて、その固体撮像素子を保持する撮像部保持部材の対物鏡筒に対する軸線周り方向の位置決めをするための撮像部保持部材位置決め手段が設けられているとよく、その場合、係合溝が、撮像部保持部材位置決め手段に対して位置を対応させて対物鏡筒に形成されているとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対物鏡筒と遮光マスクとに、対物鏡筒に対する遮光マスクの軸線周り方向の位置決めをするための遮光マスク位置決め手段を設けたことにより、遮光マスクを非円形の断面形状の観察像投影光路の断面形状に正確に合わせることができ、さらに、遮光マスクを対物鏡筒内において軸線方向に移動しないように対物鏡筒に機械的に固定したことにより、遮光マスクを短い工程時間で対物鏡筒に確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
挿入部先端に内蔵された断面形状が円形の対物鏡筒の後半部分に、非円形の断面形状の観察像投影光路の周辺部の不要光を遮るための遮光マスクが取り付けられた内視鏡の対物レンズ部において、対物鏡筒と遮光マスクとに、対物鏡筒に対する遮光マスクの軸線周り方向の位置決めをするための遮光マスク位置決め手段を設けると共に、遮光マスクを、対物鏡筒内において軸線方向に移動しないように対物鏡筒に機械的に固定する。
【実施例】
【0012】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、内視鏡の挿入部1の先端部分を示しており、挿入部1の先端に連結された先端部本体2の先端面に観察窓3が配置されている。
【0013】
この実施例の観察窓3には、凹レンズからなるカバーレンズ4が取り付けられていて、その奥に配置された対物レンズ5による被写体の投影位置(即ち、観察像投影光路の後端位置)に、固体撮像素子6の撮像面6aが配置されている。
【0014】
固体撮像素子6の撮像面6aは例えば長方形又は正方形等の非円形形状であり、それに対応して、対物レンズ5中の観察像投影光路の断面形状も非円形になっている。7はYAGレーザカットフィルタ、8は固体撮像素子6のカバーガラスである。
【0015】
9は、固体撮像素子6で撮像された内視鏡観察画像の撮像信号等が伝送される信号ケーブルであり、挿入部1内に全長にわたって挿通配置されている。10は、固体撮像素子6と信号ケーブル9との間に接続された電子部品等が封止された回路封止部である。
【0016】
11は、カバーレンズ4と対物レンズ5が前方と後方から嵌め込まれて固定された対物鏡筒であり、内面と外面の各々に段が形成された円筒状に形成されて、先端部本体2に形成された対物部収容孔2aに内蔵されている。12は開口絞り、13は、対物レンズ5の中の後端の対物レンズ5aとその前側の対物レンズとの間を所定間隔に規制するためのスペーサーリングである。
【0017】
そのスペーサーリング13と後端の対物レンズ5aとの間には、対物レンズ5内の観察像投影光路の周辺部の不要光を遮るための遮光マスク15が配置されている。遮光マスク15は、図1におけるII−II断面を図示する図2に示されるように、マスク縁15iがその位置の観察像投影光路の断面形状に合わせた非円形状に形成され、外縁15oは対物鏡筒11の後端付近の内周面に嵌合する円形状に形成されている。
【0018】
そのような遮光マスク15の外縁部分には、対物鏡筒11に対する遮光マスク15の軸線周り方向の位置決めをするための突起15aが突出形成されている。そして、図3に示されるように、遮光マスク15の突起15aがガタつきなく係合する係合溝16が対物鏡筒11に形成されている。係合溝16は、対物鏡筒11の後端側に一端が開放された直線溝状に形成されている。
【0019】
したがって、突起15aを係合溝16に係合させて遮光マスク15を対物鏡筒11内に後方から嵌め込むと、突起15aと係合溝16との係合によりマスク縁15iの向きが所定の方向に規制された状態になる。
【0020】
図1に戻って、組立時に対物鏡筒11内に後方から嵌め込まれるのは、開口絞り12、後端の対物レンズ5aを除く対物レンズ5、スペーサーリング13、遮光マスク15、そして後端の対物レンズ5aの順であり、対物鏡筒11の後端縁11aが内方にかしめられて後端の対物レンズ5aの後端部分に押し付けられることで、開口絞り12、対物レンズ5、スペーサーリング13、遮光マスク15及び後端の対物レンズ5aが対物鏡筒11内に機械的に押圧固定される。
【0021】
したがって組立工程においては、従来のように接着剤の硬化待ちのための時間が必要なく、遮光マスク15は、後端の対物レンズ5aによりスペーサーリング13に押圧固定された状態になる。
【0022】
その後方に配置された固体撮像素子6は、断面形状が方形状の撮像部保持筒18の中間部分に軸線周りの向きを撮像部保持筒18と合わせて、YAGレーザカットフィルタ7等と共に固着されており、その撮像部保持筒18の最先端部分には、図4に示されるように、対物鏡筒11と連結するための撮像部接続枠19が一体的に固着されている。
【0023】
撮像部接続枠19には、前面の上下(又は左右)両端位置に一対の平行突起21が突出形成されており、それとピッタリ係合する一対の平行平面部20が、図1におけるV−V断面を図示する図5や図3等に示されるように、係合溝16の位置と対応をつけて対物鏡筒11の外周面に平行に形成されている。
【0024】
したがって、図1に示されるように、平行平面部20と平行突起21とを係合させて対物鏡筒11と撮像部接続枠19とを連結固着することにより、撮像部保持筒18が対物鏡筒11に対して軸線周りに相対的に回転できない状態に位置決めされて連結固定された状態になり、対物鏡筒11内の遮光マスク15のマスク縁15iと撮像部保持筒18内の撮像面6aとが、軸線周りの回転方向が対応をつけて規制された状態で固定的にセットされる。
【0025】
その結果、遮光マスク15のマスク縁15iが、固体撮像素子6の撮像面6aの形状に対応した断面形状の観察像投影光路と合致する状態に組み付けられ、良質な内視鏡観察像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例の内視鏡の挿入部先端の側面断面図である。
【図2】本発明の実施例の遮光マスクの断面図(図1におけるII−II断面図)である。
【図3】本発明の実施例の対物鏡筒と遮光マスクの斜視図である。
【図4】本発明の実施例の撮像部保持筒と撮像部接続枠とが一体化された状態の斜視図である。
【図5】本発明の実施例の図1におけるV−V断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 挿入部
5 対物レンズ
5a 後端の対物レンズ
6 固体撮像素子
6a 撮像面
11 対物鏡筒
11a 後端縁
15 遮光マスク
15a 突起(遮光マスク位置決め手段)
16 係合溝(遮光マスク位置決め手段)
18 撮像部保持筒(撮像部保持部材)
19 撮像部接続枠
20 平行平面部(撮像部保持部材位置決め手段)
21 平行突起(撮像部保持部材位置決め手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部先端に内蔵された断面形状が円形の対物鏡筒の後半部分に、非円形の断面形状の観察像投影光路の周辺部の不要光を遮るための遮光マスクが取り付けられた内視鏡の対物レンズ部において、
上記対物鏡筒と上記遮光マスクとに、上記対物鏡筒に対する上記遮光マスクの軸線周り方向の位置決めをするための遮光マスク位置決め手段を設けると共に、
上記遮光マスクを、上記対物鏡筒内において軸線方向に移動しないように上記対物鏡筒に機械的に固定したことを特徴とする内視鏡の対物レンズ部。
【請求項2】
上記遮光マスク位置決め手段が、上記遮光マスクの円形の外縁部分から外方に突出する突起と、上記遮光マスクの突起が係合するように上記対物鏡筒に形成された係合溝とにより構成されている請求項1記載の内視鏡の対物レンズ部。
【請求項3】
上記係合溝が、上記対物鏡筒の後端側に開放された形状に形成されている請求項2記載の内視鏡の対物レンズ部。
【請求項4】
上記対物鏡筒の後端縁が内方にかしめられ、それによって上記遮光マスクが上記対物鏡筒に機械的に固定されている請求項1、2又は3記載の内視鏡の対物レンズ部。
【請求項5】
上記対物レンズの中の後端の対物レンズが上記対物鏡筒の後端部分内に配置されて、その後端の対物レンズの前側に隣接して上記遮光マスクが配置され、上記対物鏡筒の後端縁がかしめられることにより、上記遮光マスクが上記対物鏡筒内に押圧固定されている請求項4記載の内視鏡の対物レンズ部。
【請求項6】
上記観察像投影光路の後端位置に固体撮像素子の撮像面が配置されていて、その固体撮像素子を保持する撮像部保持部材の上記対物鏡筒に対する軸線周り方向の位置決めをするための撮像部保持部材位置決め手段が設けられている請求項1ないし5のいずれかの項に記載の内視鏡の対物レンズ部。
【請求項7】
上記係合溝が、上記撮像部保持部材位置決め手段に対して位置を対応させて上記対物鏡筒に形成されている請求項6記載の内視鏡の対物レンズ部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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