説明

内視鏡キャップ

本願は、前端部(13)及び後端部(14)を有するフレキシブルシャフト(2)と、少なくとも1つのウェブ部材を含むウェブ(5)を有する医療用把持装置に関するものであり、ウェブ(4)はシャフト(2)の前端部(3)に付着される。医療用把持装置は、ウェブ(4)上にヒンジが形成される少なくとも2つのブランチ(5、6)と、少なくとも部分的にシャフト(2)に配列され、部分的にフレキシブルな少なくとも2つの制御メカニズム(7、151、155、8、152、156)と、をさらに有する。それぞれのブランチ(5、6)はそれぞれの制御メカニズム(7、151、155、8、152、156)によって、ウェブ(4)に対し個別的に移動することができる。さらに、医療用把持装置は、フレキシブルシャフト(2)の後端部(14)にグリップ(150)が設けられ、該グリップを介在して医療用把持装置(1)を操作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間又は動物の管腔臓器内で生体組織用クリップを位置決めするために用いられる内視鏡キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、US 6,849,078 B2に開示されている生体組織用クリップが従来技術として知られている。理解の便宜を図るため、以下、図1を参照しつつこの生体組織用クリップについて詳しく説明する。
【0003】
図1に示すように、クリップ100は、2つの側面ヒンジ130又は柔軟性があるモールディングを介在して開閉可能な2つの顎部110、120を有する口腔型の固定手段から構成される。ヒンジ130又は柔軟性があるモールディングは、顎部110、120が開いている間に、ばね力が蓄えられるばね弾性ストラップから形成され、蓄えられたばね力は、顎部110、120が開放されるとき、即ちヒンジ130又は柔軟性があるモールディングが動かされるときに、決められた型締め力によって顎部110、120を相互に噛合うように強力に閉じる。
【0004】
具体的には、クリップ100は、部分的に異なる幅を有するリング状になるように、ばね鋼板から一体的にパンチング形成される。径方向に幅広で対向する2つのリング部分は2つの顎部110、120を構成し、両顎部110、120の間に配される狭幅の2つのリング部分はヒンジ130又は柔軟性があるモールディングを形成する。顎部110、120は、幅広のリング部分をアーチ状の曲線形状に形成され、狭幅の2つのリング部分は、ヒンジを形成するために長手方向軸を中心に略180°ねじられる。このようなばね鋼板の特殊形状は、対向して動く2列の歯を有するサメの口のような形状を形成し、2列の歯は幅広のリング部分をパンチングすることで形成される。
【0005】
以下、上述した医療用生体組織用クリップ100の機能について説明する。
【0006】
一般的に、医療用機器である内視鏡の挿入は、患者が耐えることができるように全体的に構成される。この場合、医療用機器は管腔臓器の内部から管腔臓器に固定される必要がある。このため、多数の組織用クリート、クリップ又はアンカーが内視鏡によって管腔臓器内に挿入され、臓器内側の予め決められた部位に配置される。最後にクリップ又はアンカーは臓器組織に密着してから、そのばね偏向力が開放される。そして、クリップ又はアンカーは、顎部、フック又は針の間に挟まれた組織を予め決められた型締め力又は拡張力によって固定又は把持する。このとき、それぞれの顎部の歯、フック、針又は尖った突出端は組織内に入り込み、望ましくは突刺される。これによって、クリップ又はアンカーは所定空間の臓器内側に固定され、つまり、固定位置で臓器組織に引張力が加わる。
【0007】
図1には詳しく図示されていないが、一般的に、内視鏡は内視鏡ヘッド又は内視鏡キャップを有する。このような内視鏡ヘッド又は内視鏡キャップは、内視鏡に一般的に求められる照明などの機能の他に、光学システム及び洗浄手段を有しており、必要に応じて生体組織クリップに用いられる保持手段及び引出手段をさらに有することができる。保持手段及び引出手段は、手動又は遠隔操作により内視鏡の長手方向に移動可能なスライドと同様の拡張スリーブから構成される。拡張スリーブは、クリップが管腔臓器内に挿入される際後方に滑らないように、開かれた状態の生体組織クリップがスリーブに取付けられている。このため、スライドがクリップの軸方向後方に配されて、即ちクリップの軸方向ストッパーの役割を果たす。
【0008】
クリップが特定の位置に配されるときに、スライドは軸方向に対し前方に移動し、それと共に拡張スリーブ上のクリップを取り外す。クリップは、拡張スリーブから取り外される際に動かされ、即ち図1のクリップのバイアスメカニズムが開放されて、生体組織クリップの両顎部は閉じられて、その間に提供された組織を固定する。
【0009】
このような内視鏡において、内視鏡の直径はその機能を左右する最も重要な要素の1つであるが、複数の必須機能を含む内視鏡キャップは体積が大きくなり、内視鏡の適用範囲が制限されてしまうという問題点が指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US 6,849,078 B2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題点を解消するために、公知の生体組織用クリップを配置することができ、可能な限り小径な内視鏡キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、請求項1に記載の技術的特徴を有する内視鏡キャップによって達成される。
【0013】
本発明は、生体組織用クリップを収容する拡張スリーブの外側円周面に、円周方向に対して両側(又は、その端部)が開口して前方溝(舌状の軸方向突出部)を形成して、細線又は織物が径方向に前方溝を横断して引き出されることを特徴とする。細線は、一方の端部が内視鏡又は内視鏡キャップに固定され、他方の端部が内視鏡に沿って移動可能に案内される。細線は、生体組織用クリップが溝に押し込まれるときに、生体組織用クリップとともに溝に引き込まれて収められる。そして、細線が引っ張られると、前方溝内の細線が収縮することで、生体組織用クリップは細線によって再び溝から押し出される。
【0014】
本発明の保持手段及び引出手段は、スライド可能な細線を設けるとともに、軸方向に対するストッパーを形成する前方溝/切れ込みが設けられている。保持手段及び引出手段は、引出手段を最小限の空間しか必要としない非常に柔軟な細線又はケーブルによって構成して、滑車の原理によってクリップに対して十分に大きな移動力を作用させることができる。
【0015】
本発明の更なる有利な構成は、従属項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術による生体組織用クリップであり、本発明に適用可能な生体組織用クリップを例示した図である。
【図2】図1の生体組織用クリップが装着された本発明の内視鏡キャップの長手方向断面図である。
【図3】本発明の保持手段及び引出手段が稼動されたときの図2の長手方向断面図である。
【図4】本発明の保持手段及び引出手段の稼働段階を示す図である。
【図5a】円状のキャップ壁にクリップを案内する前方溝の他の実施例を示す図である。
【図5b】円状のキャップ壁にクリップを案内する前方溝の他の実施例を示す図である。
【図5c】円状のキャップ壁にクリップを案内する前方溝の他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付された図面を参照しながら実施例を基に本発明を詳しく説明する。
【0018】
図2に示すように、本実施例の内視鏡キャップ1は、人体又は動物の管腔臓器内に挿入可能な内視鏡又は套管針の遠位端に配置される。
【0019】
本発明による内視鏡キャップ1は、内視鏡の近位端に設けられるハンドルによって個別に操作することができる内視鏡に特有の機能、例えば、照明、光学手段、洗浄手段、作業チャネルマウス等を選択的に備える内視鏡ヘッド2に装着されたときに、内視鏡ヘッド2の遠位端を囲むスリップオン部1aを有する。内視鏡キャップ1は、図1の生体組織用クリップ4が嵌め込まれる拡張スリーブ3を有する外壁側で、スリップオン部1aから軸方向の所定距離に形成される。拡張スリーブ3は内視鏡ヘッド2の遠位端側から軸方向に突出して、先端部で径方向の外側へと湾曲する環状部分を形成する。内視鏡キャップ1の正確な軸方向の位置決めのために、内視鏡キャップ1は、内視鏡ヘッド2の端部側に押圧される径内環状端5を設けることで、内視鏡が近位端方向に移動することを防止する。
【0020】
また、本実施例では、内視鏡キャップ1は内視鏡ヘッド2のハウジングを構成し、その結果、内視鏡キャップ1は、内視鏡の一部として図2に示される内視鏡シャフト6にしっかりと固定される。他の実施例として、内視鏡キャップ1は、内視鏡ヘッド2と分離することもできる。内視鏡キャップ1は、市販される内視鏡の改良キットとして適合な内視鏡ヘッド2のハウジングに取り付けることができる。
【0021】
本発明による内視鏡キャップ1は、キャップの外壁に端部側から導入される前方溝7を有し、前方溝7は内視鏡ヘッド2又はキャップ1の遠位端側でピッチ円又は鎌形状の切れ込みとして開口され、前方溝の底部は軸方向の後方、望ましくは内視鏡ヘッド2の軸方向の中央部分(スリップオン部1aの軸方向の中央領域)にストッパー8を形成する。前方溝7の半径は内視鏡キャップ1の半径よりより大きく、円周方向に離隔された2つの切れ込みがキャップ壁に前方溝7を形成する。前方溝の切れ込みを形成することで、この領域のキャップの外壁は長手方向に分割され、これによって径方向の外側の溝壁を規定する一種のタブ又は舌状部9がキャップ壁の外部に形成される。
【0022】
図5a〜図5cに示す前方溝の他の実施例において、軸方向に湾曲されるタブ又は舌状部9は、スリップオン部1aでキャップ1と一体的に形成され、キャップの外壁から径方向に距離をおいて拡張スリーブ3の軸方向に延びて溝7を形成する。この場合、キャップの外壁は前述されたように分割されないが、タブ9と同様な形態の構成がキャップ1の外壁上に案内される。タブ9は、断面が一直線に維持されるように(半径が無い)非常に小さい寸法で形成されることができ(特に、図5bを参照)、即ち、タブはキャップの円周に沿って形成される必要はない。また、タブの底面形状は任意に設計することができる。即ち、より高い強度を得るために、図5cに示すように、前記形状を根元へ向かうほど厚くなるように、及び/又は、広くなるようにすることができる。また、タブの根元自体が可能な限り高い強度を得るように要旨を変更しない範囲内で適宜寸法を設計することができる。
【0023】
本発明によれば、製造上の相違に関係なく、最終的にタブ9は、ストッパー8を構成する下部から内視鏡ヘッド2又はキャップ1の遠位端側の方向に延びて、湾曲された先端部は拡張スリーブ3の遠位端の先端部と対向するように軸方向に若干調整される。
【0024】
特に図2、図3及び図5から分かるように、前方溝7は、内視鏡又はキャップの中心軸と正確には平行に延びておらず、中心軸に対して遠位端の方へ傾斜している。また、溝7は、一直線の形態ではなく、溝壁、少なくとも外側の溝壁は、軸方向に若干湾曲され、軸方向の中心部が径方向に対し外側に膨らんでいる。
【0025】
タブ9の軸方向の前端部には、細線11又は織物がキャップ1の外部から溝の内部に案内されて固定される径方向の外側貫通孔10が形成されている。なお、細線の一方の端部はキャップの外部で結び目を形成することで、細線11が外側貫通孔10から引き出されることを防止することができる。また、外側貫通孔10と径方向に対向する箇所、即ち軸方向に突き出る拡張スリーブ3の領域で、細線11が溝の内側から内部に案内される径方向の内側貫通孔12が内視鏡キャップ1に設けられている。
【0026】
特に図3から分かるように、内側貫通孔12は内視鏡ヘッド2の遠位端側に形成され、内側貫通孔12から引き出される細線11は長い移動距離を要することなく、内視鏡ヘッド2の端部側に開放される機能チャネル又は内視鏡の作業チャネルに通すことができる。
【0027】
以下、図4を参照しながら、保持機能及び引出機能を有する本発明による内視鏡キャップの作用を説明する。
【0028】
生体組織用クリップ、例えば、図1の生体組織用クリップ4を所定の位置に移動させるために、まず生体組織用クリップは内視鏡キャップ1の拡張スリーブ3に装着されなければならない。このために、生体組織用クリップ4の下顎部及び上顎部が手動で開けられた後、生体組織用クリップ4が拡張スリーブ3の湾曲した先端部に装着され、拡張スリーブ3の上に密着される。このとき、生体組織用クリップ4の後端部が内視鏡キャップ1の前方溝7に挿入されることで、細線11は内視鏡シャフト6の機能チャネル又は作業チャネルから引き出される。
【0029】
クリップが最終的に溝底部8に当接することで生体組織用クリップ4の移動が停止し、生体組織用クリップ4及び随伴する細線11は図2に示す状態となる。即ち、この状態で、生体組織用クリップ4は内視鏡キャップ1に完全に装着され、内視鏡ヘッド2により管腔臓器に導入される。細線11は、生体組織用クリップ4の後端部を生体組織用クリップ4の長手方向にU字状に包む。
【0030】
生体組織用クリップ4を取り外す場合は、シャフトチャンネルを通って内視鏡の近位端へ案内される細線11を引っ張り、前方溝7を横断している細線の部分を径方向に収縮させる。細線11は外側貫通孔10に固定されているので、細線11は、滑車の原理により軸方向の適切な力を生体組織用クリップ4に与える。これによって、生体組織用クリップ4は内視鏡キャップ1の遠位端の方向に移動される。拡張スリーブ3の端部の外側湾曲部及びゆるやかなアーチ状の前方溝7は、拡張スリーブ3の先端部に掛けられた生体組織用クリップ4のスライドを容易にして、さらには細線11を介在して作用する最大移動力を減少させる。生体組織用クリップ4の後端部が前方溝7を離脱して、これ以上タブ9によって保持されなくなると、生体組織用クリップ4に蓄えられた偏向力は、生体組織用クリップ4が拡張スリーブ3から取り外されるようにする。このようにして引き出し操作が完了し、内視鏡は管腔臓器から取り外される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡キャップ(1)の拡張スリーブ(3)に着脱容易に挿入される生体組織用クリップ(4)に用いられる保持手段及び引出手段を有する内視鏡キャップにおいて、
前記拡張スリーブ(3)の先端部に開口してキャップの外壁の両側に切れ込んでいる前方溝(7)と、軸方向前方のキャップ部分において径方向に前記前方溝(7)を横断して前記内視鏡キャップ(1)の径方向内面で操作する内視鏡チャネルに移動可能に導入される引き出し細線(11)と、を有することを特徴とする内視鏡キャップ。
【請求項2】
キャップの外壁から径方向に離れて前記内視鏡キャップ(1)の長手方向に延びるタブ(9)を有し、
前記タブ(9)と前記キャップの外壁の間には、前記拡張スリーブ(3)の先端部に開口して前方溝(7)が形成され、軸方向前方のキャップ部分において径方向に前記前方溝(7)を横断して前記内視鏡キャップ(1)の径方向内面で操作する内視鏡チャネルに移動可能に導入される引き出し細線(11)を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡キャップ。
【請求項3】
細線(11)は、前記内視鏡キャップ(1)と同軸に延びて前記前方溝(7)を形成するタブ(9)の径方向の外部に固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡キャップ。
【請求項4】
タブ(9)は、細線(11)が案内されて固定される径方向の外側貫通孔(10)を前端部に備え、
前記細線(11)が前記前方溝(7)を横断して移動可能に案内される径方向に設けられた内側貫通孔(12)は、前記外側貫通孔(10)と径方向に対向するように前記拡張スリーブ(3)に形成されることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡キャップ。
【請求項5】
前記内視鏡キャップ(1)は、前記拡張スリーブ(3)が軸方向に一体に連結される内視鏡シャフトの遠位端に嵌め込まれ、又は、ねじ止めされるスリップオン部(1a)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内視鏡キャップ。
【請求項6】
細線(11)は、前記スリップオン部(1a)の軸方向前方の前記前方溝(7)を離脱することを特徴とする請求項5に記載の内視鏡キャップ。
【請求項7】
前記スリップオン部(1a)の軸方向の規制部として、及び、差込み又はねじ込まれる内視鏡シャフトの軸方向のストッパーとして、機能する径内環状の肩部(5)を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の内視鏡キャップ。
【請求項8】
前記前方溝(7)は、キャップの中心軸に対して前記キャップの先端へ傾斜し、及び/又は、径方向に対し外側を向き、前記キャップの長手方向にアーチ状になっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の内視鏡キャップ。
【請求項9】
キャップの外壁の外部で、溝底部(8)から軸方向後方に延設され、前記キャップの全周を囲む径外方向に肉厚となった肉厚部又はビード(1b)を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の内視鏡キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公表番号】特表2011−524194(P2011−524194A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512980(P2011−512980)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057210
【国際公開番号】WO2009/150186
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510285610)オヴェスコ エンドスコピー アーゲー (6)
【Fターム(参考)】