説明

内視鏡システムおよびコネクタカバー

【課題】一度使用した内視鏡を手術室内に一時的に保管することができ、同一の患者に対して内視鏡を再利用可能とする。
【解決手段】可撓性の挿入部の先端に、照明光を射出する照射部と体腔内壁から戻る戻り光を集光する集光部とを備える内視鏡と、内視鏡の照射部から射出する照明光を発生する光源と集光部により集光された戻り光を撮影して取得された画像情報を処理する画像プロセッサとを含む制御部と、内視鏡と制御部とを接続し、光を導光する導光部材6と電気信号を伝送する配線9とを含むケーブル5と、該ケーブル5を長さ方向の途中位置で着脱可能に接続する一対のコネクタ13と、制御部側のケーブル5およびコネクタ13を被覆するカバー2とを備え、該カバー2が、一対のコネクタ13間に挟まれる挟持部2aに、導光部材6により導光される光を透過する光学窓14と、配線9どうしを電気的に接続する電気接点15とを備える内視鏡システム1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システムおよびコネクタカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手術室内において内視鏡を使用するには、患者の体腔内に挿入される挿入部を含む内視鏡本体を無菌的に管理された手術室内に配置する必要がある。一方、内視鏡本体に光を供給しあるいは内視鏡本体から得られた光や電気信号を受け取って処理する制御部は、熱や塵埃を発生するため、無菌的に管理されていない手術室外に配置され、ケーブルによって接続されるのが一般的である。
【0003】
この場合において、手術室内においては、患者の血液等の体液等がケーブルに付着する場合もあるため、一度使用した内視鏡を再使用する場合には、感染症などの発生を防ぐために洗浄や滅菌処理を行っていた。しかし、確実な洗浄や滅菌処理を行うのには相当の時間を要するため、内視鏡の使用効率が低下するという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、交換可能なカバーで覆われた内視鏡が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この内視鏡によれば、使用後にカバーを交換することで、内視鏡自体を再利用することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−47476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のカバー付内視鏡は、体腔内への挿入部に設けられたカバーが挿入容易性を低下させるという不都合がある。一方、ディスポーザブルの内視鏡も考案されているが、手術室外の清浄度が管理されていない領域に配置されている光源や制御部にケーブルによって接続する必要があるので、ケーブルの先端が清浄度の管理されていない領域に配置されることとなる。このため、ケーブルを光源や制御部から取り外した場合には、手術室外に配置されていた部分のケーブルを手術室内に持ち込むことができず、手術室内に一時的に保管することができないという不都合がある。
一度使用した内視鏡を手術室内に一時的に保管することができれば、同一の患者に対して再利用することができるので便利である。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、一度使用した内視鏡を手術室内に一時的に保管することができ、同一の患者に対して内視鏡を再利用可能とする内視鏡システムおよびコネクタカバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、可撓性の挿入部の先端に、照明光を射出する照射部と、体腔内壁から戻る戻り光を集光する集光部とを備える内視鏡と、該内視鏡の前記照射部から射出する照明光を発生する光源と、前記集光部により集光された戻り光を撮影して取得された画像情報を処理する画像プロセッサとを含む制御部と、前記内視鏡と前記制御部とを接続し、光を導光する導光部材と電気信号を伝送する配線とを含むケーブルと、該ケーブルを長さ方向の途中位置で着脱可能に接続する一対のコネクタと、前記制御部側のケーブルおよびコネクタを被覆するカバーとを備え、該カバーが、前記一対のコネクタ間に挟まれる挟持部に、前記導光部材により導光される光を透過する光学窓と、配線どうしを電気的に接続する電気接点とを備える内視鏡システムを提供する。
【0009】
本発明によれば、可撓性の挿入部を体腔内に挿入し、照明部から照明光を照射して、対向内壁から戻る反射光や蛍光等の戻り光を集光部により集光して撮影することにより、対向内壁の画像を得ることができる。照射部から射出する照明光、あるいは、集光部により集光された戻り光はケーブル内の導光部材を介して手術室外に配置される制御部から導光されあるいは制御部に送られて画像プロセッサにより処理される。また、挿入部の先端に電子部品が存在する場合には、該電子部品への電気信号あるいは、電子部品からの電気信号がケーブル内の配線を介して制御部との間でやりとりされる。
【0010】
この場合において、本発明によれば、ケーブルが一対のコネクタによって着脱可能に接続されており、制御部側のケーブルおよびコネクタがカバーによって覆われているので、内視鏡側のケーブルおよびコネクタを手術室外の清浄度が管理されていない空間から完全に切り離すことができる。そして、カバーにはコネクタ間に挟まれる挟持部に光学窓と電気接点とが設けられているので、コネクタが接続されると、光学窓を介して光の導光が担保され、電気接点を介して電気信号の伝送が担保される。
【0011】
すなわち、本発明によれば、コネクタを切り離すことにより、手術室内のみに配置されていた内視鏡部分は、手術室内に一時保管することが可能となり、同一の患者に対して再利用することができる。また、制御部側のケーブルおよびコネクタについても、カバーによって覆われることで、手術中に患者の体液等が直接付着せず、使い捨てにすることなくまた、時間のかかる洗浄あるいは滅菌処理を行うことなく再利用することができる。
【0012】
また、本発明は、内視鏡と制御部とを接続し、光および電気信号を伝達するケーブルを、その途中位置において着脱可能に接続する一対のコネクタに取り付けられ、前記制御部側のコネクタおよびケーブルを被覆するコネクタカバーであって、前記一対のコネクタ間に挟まれる挟持部を備え、該挟持部に、ケーブルにより導光される光を透過する光学窓と、電気信号を伝送する配線どうしを電気的に接続する電気接点とを備えるコネクタカバーを提供する。
【0013】
本発明によれば、内視鏡と接続部とを接続するケーブルの途中位置を着脱可能に接続する一対のコネクタの制御部側のコネクタおよびケーブルを被覆することにより、手術室内のケーブルと、手術室外のケーブルとを明確に分離することができる。したがって、コネクタを切り離すことにより、手術室内のみに配置されていた内視鏡部分は、手術室内に一時保管することが可能となり、同一の患者に対して再利用することができる。また、制御部側のケーブルおよびコネクタについても、コネクタカバーによって覆われることで、手術中に患者の体液等が直接付着せず、使い捨てにすることなくまた、時間のかかる洗浄あるいは滅菌処理を行うことなく再利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一度使用した内視鏡を手術室内に一時的に保管することができ、同一の患者に対して内視鏡を再利用可能とすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る内視鏡システム1およびコネクタカバー2について、図1〜図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム1は、内視鏡3と、制御部4と、これらを接続するケーブル5と、コネクタカバー2とを備えている。
【0016】
内視鏡3は、患者の体腔内に挿入される可撓性の挿入部3aを備えている。挿入部3aの先端には、照明光を射出する照射部6aと、体腔内壁から戻る戻り光を集光する集光部7とが設けられている。照射部6aは、挿入部3aの長手方向に沿って配置された光ファイバの射出端により構成されている。集光部7は、戻り光、例えば、体腔内壁における反射光や体腔内に存在する蛍光物質が励起されることにより発生する蛍光を集光する対物レンズ(以下、対物レンズ7ともいう。)である。
【0017】
また、挿入部3aの先端には、対物レンズ7により集光された戻り光を撮影して電気信号に変換するCCDのような撮像素子8が配置されている。撮像素子8により取得された電気信号は、挿入部3aに設けられた配線9によって挿入部3aの基端側に伝送されるようになっている。
【0018】
制御部4は、挿入部3aに設けられた光ファイバ6に入射させる照明光を発生する光源10と、配線9により伝送されてきた電気信号を処理して画像を形成する画像処理部11とを備えている。また、制御部4には、画像処理部11により形成された画像を表示する表示部12が接続されている。
【0019】
ケーブル5は、内視鏡3と制御部4とを接続し、光および電気信号を伝送するようになっている。したがって、ケーブル5には、光を導光する導光部材である光ファイバ6と、電気信号を伝送する配線9とが備えられている。さらに具体的には、ケーブル5は、その長さ方向の途中位置において着脱可能に接続するための一対のコネクタ13を備えている。
一対のコネクタ13には、図4に示されるように、相互に接続されたときに対向することとなる接続面に、それぞれ対応する位置に配置された光ファイバ6の端面および配線9に接続された接触子9aとが露出している。
【0020】
本実施形態に係るコネクタカバー2は、コネクタ13間に挟まれる挟持部2aと、制御部4側のコネクタ13およびケーブル5を手術室内において被覆するカバー部2bとを備えている。挟持部2aには、図2に示されるように、ケーブル5内の光ファイバ6により導光されてきた照明光を透過させる光学窓14と、ケーブル5内の配線9により伝送されてきた電気信号を受け渡す電気接点15とが備えられている。
【0021】
一対のコネクタ13の接続面間に挟持部2aを挟んでコネクタ13どうしを組み付けることにより、コネクタ13の接続面に露出している光ファイバ6の端面が、挟持部2aの光学窓14の位置に一致し、接触子9aが挟持部2aの電気接点15の位置に一致して接触状態に保持されるようになっている。
【0022】
これにより、一対のコネクタ13を接続することによって、制御部4側の光ファイバ6により導光されてきた照明光が、制御部4側のコネクタ13の接続面に露出する光ファイバ6の端面から射出され、光学窓14を介して内視鏡3側のコネクタ13の接続面に露出する光ファイバ6の端面に入射されるようになっている。また、内視鏡3側のケーブル5内の配線9により伝送されてきた電気信号は、内視鏡3側のコネクタ13の接続面に露出する接触子9aから挟持部2aの電気接点15および制御部4側のコネクタ13の接続面に露出する接触子9aを介して制御部4側のケーブル5内の配線9により制御部4へ伝送されるようになっている。
【0023】
カバー部2bは、挟持部2aの外周全周から延びる柔軟なフィルム状の部材であって、制御部4側のケーブル5の少なくとも一部、例えば、手術に際して体液が飛散する可能性のある範囲を被覆するようになっている。
【0024】
コネクタ13どうしの接続は、一方のコネクタ13の外周に設けた溝16と、他方のコネクタ13の内面側に設けたボール17とをカバー部2bを挟んで係合させることにより行われるようになっている。ボール17が半径方向に移動可能でかつ、バネ18等により半径方向内方に付勢されていることにより、一方のコネクタ13を他方のコネクタ13に嵌合させるだけで、ボール17と溝16とを係合させて、両コネクタ13が接続状態に維持されるようになっている。
【0025】
このように構成された本実施形態に係る内視鏡システム1およびコネクタカバー2の作用について説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム1を用いて体腔内壁の観察を行うには、図3に示される状態から、図4に示されるように、挟持部2aを接続面間に挟んで一対のコネクタ13を接続し、挿入部3aを患者の体腔内に挿入した状態で、制御部4に設けられた光源10から照明光を射出させる。光源10から発せられた照明光は、制御部4側のケーブル5内の光ファイバ6を介して導光され、挟持部2aに設けられた光学窓14を透過して、内視鏡3側のケーブル5内の光ファイバ6に入射され、光ファイバ6内を導光されて挿入部3a先端の照射部6aから体腔内壁に向けて照射される。
【0026】
体腔内壁からの戻り光は、挿入部3a先端に設けられた対物レンズ7により集光され、撮像素子8により撮影される。撮像素子8により取得された画像情報を示す電気信号は、内視鏡3側のケーブル5内の配線9を介して伝送され、挟持部2aの電気接点15によって、制御部4側のケーブル5内の配線9に引き渡され、当該配線9によって伝送されて制御部4内の画像処理部11に入力される。
伝送されてきた電気信号が画像処理部11において処理されることにより、体腔内壁の画像が形成され、表示部12により表示される。
【0027】
この場合において、制御部4側のコネクタ13およびケーブル5はコネクタカバー2によって覆われているので、手術中に患者の体液等がコネクタ13やケーブル5に直接付着することがなく清浄な状態に維持される。体液等が付着したコネクタカバー2は、ケーブル5から取り外すことにより交換することができる。したがって、制御部4側のコネクタ13およびケーブル5は、滅菌処理や洗浄処理のような時間のかかる処理を行うことなく、繰り返し再使用することができる。
【0028】
また、本実施形態によれば、コネクタ13の接続を取り外すことにより、内視鏡3側のケーブル5およびコネクタ13が接続された内視鏡3を制御部4側のケーブル5およびコネクタ13から切り離すことができる。コネクタ13を手術室内に配置しておくことにより、切り離された内視鏡3、ケーブル5およびコネクタ13は、全て手術室内に配置されていたものとすることができ、手術室内において一時保管することも可能となる。
【0029】
その結果、例えば、手術途中において異なる挿入部3aを有する内視鏡3に切り替えて観察を行った後に再度最初の内視鏡3により同じ患者に対して検査を行いたい場合には、内視鏡3を再使用することが可能となり、利用効率を向上することができる。また、この場合には、内視鏡3、内視鏡3側のケーブル5およびコネクタ13は使い捨てにすることができ、カバーに覆われていない挿入部3aによって挿入容易性を向上することができるという利点がある。
【0030】
なお、本実施形態においては、挿入部3aに長手方向に沿って光ファイバ6と配線9とが配置され、挿入部3aの先端に撮像素子8が配置されている場合について例示したが、これに代えて、撮像素子8が制御部4側に配置され、挿入部3aには配線9に代えてイメージファイバが配置されていることとしてもよい。
また、制御部4側に光源10を設け、挿入部3aの長手方向に沿って配置された光ファイバ6により照明光を導光することとしたが、これに代えて、挿入部の先端にLED等の光源を直接配置することにしてもよい。
【0031】
また、コネクタ13どうしを溝16とボール17とを相互に係合させる構造を採用したが、これに代えて、ネジにより締結することにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡システムを示す全体構成図である。
【図2】図1の内視鏡システムに備えられるコネクタカバーを示す斜視図である。
【図3】図2のコネクタカバーと一対のコネクタとを示す縦断面図である。
【図4】図3のコネクタを接続した状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 内視鏡システム
2 コネクタカバー(カバー)
2a 挟持部
3 内視鏡
3a 挿入部
4 制御部
5 ケーブル
6 光ファイバ(導光部材)
6a 照射部
7 対物レンズ(集光部)
9 配線
10 光源
11 画像処理部(画像プロセッサ)
13 コネクタ
14 光学窓
15 電気接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の挿入部の先端に、照明光を射出する照射部と、体腔内壁から戻る戻り光を集光する集光部とを備える内視鏡と、
該内視鏡の前記照射部から射出する照明光を発生する光源と、前記集光部により集光された戻り光を撮影して取得された画像情報を処理する画像プロセッサとを含む制御部と、
前記内視鏡と前記制御部とを接続し、光を導光する導光部材と電気信号を伝送する配線とを含むケーブルと、
該ケーブルを長さ方向の途中位置で着脱可能に接続する一対のコネクタと、
前記制御部側のケーブルおよびコネクタを被覆するカバーとを備え、
該カバーが、前記一対のコネクタ間に挟まれる挟持部に、前記導光部材により導光される光を透過する光学窓と、配線どうしを電気的に接続する電気接点とを備える内視鏡システム。
【請求項2】
内視鏡と制御部とを接続し、光および電気信号を伝達するケーブルを、その途中位置において着脱可能に接続する一対のコネクタに取り付けられ、前記制御部側のコネクタおよびケーブルを被覆するコネクタカバーであって、
前記一対のコネクタ間に挟まれる挟持部を備え、
該挟持部に、ケーブルにより導光される光を透過する光学窓と、電気信号を伝送する配線どうしを電気的に接続する電気接点とを備えるコネクタカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−273652(P2009−273652A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127704(P2008−127704)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】