説明

内視鏡トレーニングシステム

【課題】臓器モデルの穿孔を防ぎ、効率良くトレーニング可能な内視鏡レーニングシステムを提供する。
【解決手段】外箱10の外箱本体12に、トレーニング用内視鏡装置の図示しないスコープを挿入する臓器モデル11を収容し、外箱本体12と臓器モデル11との間を水(液体)13で充填する。水13を外箱本体12外部に流出させるための流出管15に流量計16を設け、流量計16で検出された外箱本体12の外部に流出された流量を、臓器モデル11モデルに作用する圧力として検出する。臓器モデル11が穿孔するほどの不必要な圧力がかかる前にモニタ40にその旨を表示して、使用者に注意喚起するため、臓器モデル11の穿孔を防ぐことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の挿入技術をトレーニングするための内視鏡トレーニングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の操作は、高度な挿入技術を要するため、未経験の若手医師等は臨床使用する前に十分にトレーニングを積むことが望ましい。内視鏡を強い力で押し込み、挿入した内視鏡の先端が当たると患者に苦痛を与えるため、トレーニングでは内視鏡の挿入感、特に挿入する力の加減を知ることが望ましい。
【0003】
そこで、内視鏡を挿入するトレーニングにおいて術者が患者に苦痛を与えたことを認識できるとともに、術者の内視鏡挿入手技を効率良く向上することができる内視鏡トレーニング装置が提案されている(特許文献1参照)。この内視鏡トレーニング装置では、外箱と大腸臓器モデルとの間の空間に、芳香性を有する気体を充填し、トレーニング中に大腸臓器モデルに孔が開くとその気体が外に流出する。そして、気体のにおいによって穿孔したことが認識され、内視鏡挿入の際に必要以上に圧力をかけていたと判断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−85718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記内視鏡トレーニング装置では、穿孔により初めて力をかけすぎていたと判断できるため、穿孔するまで内視鏡挿入の力加減がわからない。また、穿孔した後にはその修復作業と、気体の再充填が必要となり、手間がかかる。
【0006】
したがって、本発明は、臓器モデルの穿孔を防ぎ、効率良くトレーニング可能なトレーニングシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る内視鏡トレーニングシステムは、臓器モデルと、臓器モデルを収容する外箱本体と、外箱本体と臓器モデルとの間に充填された液体と、液体の流量を検出することにより、臓器モデルの内壁に作用する圧力を検出する検出計とを備える外箱と、検出計で検出した信号を表示する検出信号表示手段と、を備えることを特徴とする。本発明により臓器モデルの穿孔を防ぐことが可能となる。
【0008】
検出計は、外箱に設けられて液体を外箱本体外部に流出させる流出手段に設けられた流量計であり、流量計で検出された外箱本体の外部に流出された流量を、臓器モデルに作用する圧力として検出することが好ましい。この場合には、臓器モデルの内壁に作用する圧力を検出することが容易になる。
【0009】
外箱本体に液体を充填する流入手段を備え、流入手段は流出手段と連結されていることが好ましい。
【0010】
検出計で検出した信号を処理する処理手段を備えることが好ましい。
【0011】
検出計での検出結果に応じて、臓器モデルの内壁に作用する圧力が所定の値を超えたことを検出信号表示手段に表示することが好ましい。この場合には、使用者に注意喚起して臓器モデルの穿孔を防ぐことができる。
【0012】
検出計での検出結果に応じて、臓器モデルの内壁に作用する圧力方向を検出信号表示手段に表示することが好ましい。この場合には、使用者に注意喚起すると共に、使用者が瞬間的に加圧を回避する方向に誘導することが可能となる。
【0013】
外箱に接続され、スコープとプロセッサとモニタとを備えたトレーニング用内視鏡装置を備え、モニタは検出信号表示手段であり、プロセッサは処理手段であることが好ましい。この場合には、システムの構成を簡略化できる。
【0014】
液体は水であることが好ましい。この場合には、臓器モデルの内壁に作用する圧力を検出することが容易になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、臓器モデルの穿孔を防ぎ、効率良くトレーニング可能な内視鏡レーニングシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る内視鏡トレーニングシステムを示す図である。
【図2】表示部の変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る内視鏡トレーニングシステムは、外箱10と、外箱10に接続されたトレーニング用内視鏡装置20を備える。外箱10は、トレーニング用内視鏡装置の図示しないスコープを挿入する臓器モデル11と、臓器モデル11を収容する外箱本体12と、外箱本体12と臓器モデル11との間に充填された水(液体)13を備える。臓器モデル11は、支持板12aによって外箱本体12に支持され、固定される。臓器モデル11は、外箱本体12の一端の中央部に設けられた開口部14に臓器モデル11の挿入口11a側を取り付けることにより、取り外し可能に設置される。トレーニング用内視鏡装置20のスコープは、臓器モデル11の挿入口11aから挿入される。臓器モデル11は、従来使用される材料によって形成され、更に、穿孔しにくく、かつ、水13に作用する圧力を伝達しやすいように設定される。
【0019】
外箱10には、一端に水13を外箱本体12外部に流出させるための流出管(流出手段)15が設けられる。流出管15には、水13が流出した流量を検出するための流量計16が設けられる。外箱10の他の一端には、外箱本体12に水13を充填するための流入管(流入手段)17が設けられる。流入管17には、外箱本体12に水13を充填する際に調整する流入栓18が設けられる。流出管15と流入管17は管路19によって連結されており、流入栓18を開くことにより、流出管15から流出された水13を補充することが可能となっている。また、管路19には、流出管15から流出された水13の量を調整する調整弁19aが設けられる。本実施形態では、水13は外箱本体12と管路19を循環するように制御される。臓器モデル11の内壁11bに対して作用する圧力は、外箱本体12に充填された水13に作用する。水13に作用する圧力に応じて、水13が流出管15を通じて外箱本体12の外側に流出され、この流量は流量計16によって検出される。
【0020】
トレーニング用内視鏡装置20は、スコープとプロセッサ(処理手段)30とモニタ(検出信号表示手段)40とを備える。スコープは、一端がプロセッサ接続口31よりプロセッサ30に接続され、他端が臓器モデル11の挿入口11aに挿入される。プロセッサ30の外部入力端子32には、流量計16に設けられたケーブル16aが接続され、流量計16で検出された信号がプロセッサ30に伝送される。プロセッサ30の外部出力端子33には、モニタ40のケーブル40aが接続され、プロセッサ30で処理された信号がモニタ40に表示される。
【0021】
スコープで得られた画像信号は、画像信号処理回路34にて所定の画像処理が行われる。また、流量計16で検出された信号は、検出信号処理回路35で所定の処理が施される。画像信号処理回路34及び検出信号処理回路35から出力された各信号は、合成処理回路36で合成処理が施され、同時にモニタ40に表示される。図2(a)に示すように、モニタ40の表示部41は、略中央に設定され、内視鏡スコープから得られた画像を表示する画像表示部42と、画像表示部42の周囲を取り囲むマスク部43から構成される。マスク部43は通常黒色に設定されており、右上隅部、左上隅部及び左下隅部の各部には、観察日付、観察者名等のコメントを表示するコメント表示部44が設定される。
【0022】
次に、本発明の実施形態に係る内視鏡トレーニングシステムを用いた内視鏡トレーニング方法について説明する。まず、トレーニング用内視鏡装置20のスコープを臓器モデル11の挿入口11aに挿入する。スコープの先端から得られた画像信号はプロセッサ30に入力され、画像信号処理回路34で画像処理が施され、更に合成処理回路36で処理が施されてモニタ40に出力される。図2(a)に示すように、流量計16によって検出された信号が所定の値以下の場合に通常画面としてモニタ40に表示されるのは、スコープから得られた画像を表示した画像表示部42と黒色のマスク部43である。
【0023】
内視鏡スコープの挿入操作において、臓器モデル11の内壁11bに対して作用する圧力が増加すると、流出管15を通じて外箱本体12の外側に流出する流量が増加する。この流量を流量計16によって検出し、所定の値を超えている場合には、マスク部43の色が変化する。このマスク部43の色の変化により、使用者は加圧しすぎていると判断し、直ちにスコープに対する加圧を緩めることで臓器モデル11の穿孔を回避することが可能となる。所定の値を超えて加圧しただけ水13が外箱本体12の外側に流出しているため、一度トレーニングを止め、流入栓18を開いて流出した量の水を外箱本体12に補充する。水を補充した後、トレーニングを再開することが可能となる。
【0024】
このように、本発明の実施形態に係る内視鏡トレーニングシステムでは、臓器モデル11が穿孔するほどの不必要な圧力がかかる前にモニタ40にその旨を表示して、使用者に注意喚起するため、臓器モデル11の穿孔を防ぐことが可能となる。また、臓器モデル11の穿孔を防ぐことにより、修復作業がなくなり、短時間に反復して何度もトレーニングすることが可能となる。更に、穿孔する前に注意喚起するため、臓器モデル11を穿孔しない力、つまり、臨床時において患者に苦痛を与えない程度の力を体感することができる。なお、マスク部43の色は、作用する圧力の値に応じて適宜設定でき、例えば警告レベルでは黄色、穿孔するほど高い圧力が作用した場合には赤色に設定することが可能である。また、本実施形態では、圧力に応じてマスク部43全体の色が変化するように設定したが、注意喚起が可能であれば、色が変化するのはマスク部43の一部であってもかまわない。
【0025】
使用者に注意喚起する方法として、マスク部43の色の変化の他に、臓器モデルの内壁に作用する圧力方向を表示してもよい。例えば、図2(b)に示すように、マスク部43の右下部に圧力方向表示部45を設定する。内視鏡スコープを挿入していない状態では、図2(b)に示すように圧力方向表示部45には何も表示されない。トレーニングを開始し、臓器モデル11に内視鏡スコープが挿入されると、図2(c)に示すように臓器モデル11の内壁11bに対して作用する圧力の方向を、圧力方向表示部45内に矢印46で表示する。この矢印46に色を付し、この色は臓器モデル11の内壁11bに対して作用する圧力に応じて変化するように設定する。
【0026】
臓器モデル11の内壁11bに対して作用する圧力が所定の値以上になると、矢印46の色が変化する。そこで、使用者は矢印46の先端と逆の方向に力を抜くことにより、かかり過ぎた圧力を軽減することができ、臓器モデル11の穿孔を防ぐことができる。このように、臓器モデル11が穿孔するほどの不必要な圧力がかかる前にモニタ40にその旨を表示して、使用者に注意喚起すると共に、使用者が瞬間的に加圧を回避する方向に誘導することが可能となる。なお、使用者が瞬間的に判断できるように、矢印46の方向は、圧力がかかり過ぎていた場合にスコープを引く方向に設定してもかまわない。また、圧力に応じて矢印46の大きさが変化するように設定してもかまわない。
【0027】
なお、本実施形態では水13を用いたが、ある程度の粘性を有し、流量計16で圧力が測定可能であれば、他の液体であってもかまわない。また、水13は循環していなくてもかまわない。
【0028】
更に、本実施形態では、臓器モデルの内壁に作用する圧力を検出した結果をトレーニング用内視鏡装置のモニタに表示したが、他に表示手段を設けてもかまわない。同様に、検出信号を処理する処理手段としてトレーニング用内視鏡装置のプロセッサを用いたが、他に処理手段を設けてもかまわない。検出された信号全てを処理するとプロセッサに負担がかかるため、ある一定の圧力を超えた場合に処理を開始するように設定してもかまわない。また、臓器モデルの内壁に作用する圧力を検出するのは、流量計16以外の他の圧力計であってもかまわない。
【0029】
10 外箱
11 臓器モデル
11a 挿入口
11b 内壁
12 外箱本体
13 水(液体)
15 流出管(流出手段)
16 流量計(検出計)
17 流入管(流入手段)
19 管路
20 トレーニング用内視鏡装置
30 プロセッサ(処理手段)
31 プロセッサ接続口
32 外部入力端子
33 外部出力端子
34 画像信号処理回路
35 検出信号処理回路
36 合成処理回路
40 モニタ(検出信号表示手段)
40a ケーブル
41 表示部
42 画像表示部
43 マスク部
45 圧力方向表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器モデルと、
前記臓器モデルを収容する外箱本体と、前記外箱本体と前記臓器モデルとの間に充填された液体と、前記液体の流量を検出することにより、前記臓器モデルの内壁に作用する圧力を検出する検出計とを備える外箱と、
前記検出計で検出した信号を表示する検出信号表示手段と、
を備えることを特徴とする内視鏡トレーニングシステム。
【請求項2】
前記検出計は、前記外箱に設けられて前記液体を前記外箱本体外部に流出させる流出手段に設けられた流量計であり、前記流量計で検出された前記外箱本体の外部に流出された流量を、前記臓器モデルに作用する圧力として検出することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡トレーニングシステム。
【請求項3】
前記外箱本体に前記液体を充填する流入手段を備え、前記流入手段は前記流出手段と連結されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡トレーニングシステム。
【請求項4】
前記検出計で検出した信号を処理する処理手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡トレーニングシステム。
【請求項5】
前記検出計での検出結果に応じて、前記臓器モデルの内壁に作用する圧力が所定の値を超えたことを前記検出信号表示手段に表示することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡トレーニングシステム。
【請求項6】
前記検出計での検出結果に応じて、前記臓器モデルの内壁に作用する圧力方向を前記検出信号表示手段に表示することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡トレーニングシステム。
【請求項7】
前記外箱に接続され、スコープとプロセッサとモニタとを備えたトレーニング用内視鏡装置を備え、前記モニタは前記検出信号表示手段であり、前記プロセッサは前記処理手段であることを特徴とする請求項6に記載の内視鏡トレーニングシステム。
【請求項8】
前記液体は水であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡トレーニングシステム。

【図1】
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【図2】
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