説明

内視鏡及び内視鏡先端部材の温度制御方法

【課題】先端部を冷却する機能と先端部のレンズの曇り止め機能の両機能を実現できる内視鏡を提供する。
【解決手段】内視鏡先端部材と、内視鏡先端部材に熱的に結合される熱交換器と、内視鏡先端部材内に配置された撮像素子レンズと、熱交換器に一端が結合され内部を流体が通る往路チューブと、往路チューブに熱的に結合された加熱機構と、往路チューブの他端が結合され流体を送り出す送液機構と、を備えた内視鏡であって、少なくとも内視鏡の対象物内への導入前及び導入中において、加熱機構により加熱された流体で撮像素子レンズを加熱可能であり、かつ、少なくとも内視鏡が対象物内にあるときに、送液機構が往路チューブ中の流体を循環させることにより内視鏡先端部材を冷却可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡及び内視鏡先端部材の温度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱源を効果的に冷却できる内視鏡装置として、特許文献1記載の内視鏡装置は、複数の熱源と、これらの熱源のそれぞれに対して設けられた熱交換器と、熱量が低い順に熱交換器を連通して流体が内部を流れるチューブと、を備える。
【0003】
また、特許文献2は、体腔内の多湿環境下で生体から発生する水蒸気に対し、防曇効果を有する曇り防止装置として、内視鏡の挿入部の先端部に配置される観察光学系の先端位置の光学部材の表面に親水性処理を施した表面処理部と、光学部材を加熱して曇り止め処理を行う加熱手段と、を具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−253090号公報
【特許文献2】特開2006−282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の内視鏡装置では、先端部を冷却することが可能だが、先端部のレンズの曇り止めも行えることが望ましい。一方、特許文献2では、先端部の冷却と同時にレンズの曇り止めを行う機構を導入できるほど内視鏡の先端部にはスペースがない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、内視鏡の先端部の冷却と先端部のレンズの曇り止めの両機能を備えた内視鏡を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る内視鏡は、内視鏡先端部材と、内視鏡先端部材に熱的に結合される熱交換器と、内視鏡先端部材内に配置された撮像素子レンズと、熱交換器に一端が結合され内部を流体が通る往路チューブと、往路チューブに熱的に結合された加熱機構と、往路チューブの他端が結合され流体を送り出す送液機構と、を備えた内視鏡であって、少なくとも内視鏡の対象物内への導入前及び導入中において、加熱機構により加熱された流体で撮像素子レンズを加熱可能であり、かつ、少なくとも内視鏡が対象物内にあるときに、送液機構が往路チューブ中の流体を循環させることにより内視鏡先端部材を冷却可能であることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る内視鏡は、送液機構に結合されるリザーバータンクを備え、送液機構から搬出される流体は内視鏡先端部材から内視鏡の外側へ排出されることが好ましい。
【0009】
本発明に係る内視鏡は、一端が熱交換器に、他端が送液機構に、それぞれ結合される復路チューブを備え、往路チューブと復路チューブを通じて、流体が内視鏡の先端部、シャフト部、及び操作部内で循環することが好ましい。
【0010】
本発明に係る内視鏡においては、送液機構が操作部内に配置されることが好ましい。
【0011】
本発明に係る内視鏡においては、加熱機構がシャフト部内に配置されることが好ましい。
【0012】
本発明に係る内視鏡においては、内視鏡を対象物内に導入する前に加熱機構で流体加熱を行い、内視鏡の対象物内への導入後に加熱機構での流体加熱を停止することが好ましい。
【0013】
本発明に係る内視鏡においては、内視鏡先端部材に熱的に結合される熱電対で測定された温度に基づいて送液機構の駆動条件を変更することが好ましい。
【0014】
本発明に係る内視鏡においては、熱電対で測定された温度に基づいて加熱機構の駆動をオン、オフすることが好ましい。
【0015】
本発明に係る内視鏡先端部材の温度制御方法は、内視鏡先端部材に結合されたチューブに熱的に結合した加熱機構により、チューブ内を流れる流体を加熱することによって、内視鏡先端部材を所定温度以上に加熱する加熱工程と、加熱工程において内視鏡先端部材が加熱された内視鏡を対象物の内部へ導入する導入工程と、導入工程において内視鏡を対象物の内部へ導入した後に、チューブ内の流体を循環させることによって、内視鏡先端部材を所定温度未満に冷却する冷却工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る内視鏡は、先端部を冷却する機能と先端部のレンズの曇り止め機能の両機能を実現できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内視鏡を含む内視鏡システムの構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る内視鏡及び光源装置の内部構造を示す断面図である。
【図3】第2実施形態に係る内視鏡の内部構造を示す断面図である。
【図4】第3実施形態に係る内視鏡の内部構造を示す断面図である。
【図5】第3実施形態に係る内視鏡のフィードバック制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】第3実施形態の内視鏡における加熱機構のフィードバックの手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る内視鏡の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る内視鏡1を含む内視鏡システムの構成を示す図である。以下、図1を用いて内視鏡システムについて説明する。
内視鏡システムは被検体の体内を観察する観察装置である。
【0019】
内視鏡1は、対象物としての被検体の体内に入り、体内画像の取得や生細胞取得、治療を行なう手段を持つ装置である。
内視鏡操作部2は、内視鏡使用者が手で把持し、内視鏡先端の方向を操作する機構が配置された部材である。
【0020】
ユニバーサルコード3、光源装置4、ビデオプロセッサ5、及びモニター6は、内視鏡1と電気的、機械的に繋がり、各役割を果たす。
ユニバーサルコード3は、内視鏡操作部2と光源装置4を結ぶコードである。ユニバーサルコード3の内部には、電気的、機械的な接続を果たすための配線が多数配置されている。光源装置4は、内視鏡先端から放射される光を駆動させる装置である。ビデオプロセッサ5は、内視鏡1から送られる画像の処理や各回路の同期や処理を行なう。モニター6は、内視鏡1の画像を出力、表示する。
【0021】
図2を用いて、先端部9のレンズの曇り止め、先端部9の冷却のための構成について説明する。図2は、第1実施形態に係る内視鏡1及び光源装置4の内部構造を示す断面図である。図2においては、内視鏡操作部2の図示は省略している。
【0022】
内視鏡1は、先端部9、シャフト部10、及び操作部11を備える。
先端部9は、内視鏡1の先端に当たる部分であって、電気素子や体内画像を撮像するためのレンズ系が多数含まれる。先端部9の内部には、多数の部材が配置されるが、サイズが小さいため、あまりスペースがない状態になっている。先端部9内には内視鏡先端部材13が設けられ、撮像素子レンズ7を含むレンズ及び電気素子は、内視鏡先端部材13内に配置されている。内視鏡先端部材13内に導入されている電気素子としては、例えば撮像素子8があり、レンズとしては、例えば撮像素子レンズ7がある。
【0023】
操作部11は、先端部9を機械的に操作する部分、かつ、内視鏡使用者が手で把持する部分となる。シャフト部10は先端部9と操作部11の間に位置する部分で、柔軟性を持ち、曲げることができる。なお、手術用硬性鏡では、このシャフト部10を硬性材料で構成し、柔軟性を持たせない場合もある。
【0024】
内視鏡先端部材13は、内部に配置された電気素子の駆動による熱が伝わり、温度が上昇していることが多い。第1実施形態の内視鏡においては、内視鏡先端部材13内に熱交換器14を熱的に結合させ、この熱交換器14の中に流体を流すことによって熱交換を行い内視鏡先端部材13ひいては先端部9を冷却又は加熱する。以下、流体は液体として説明を行う。内視鏡では内部に余りスペースがないため、小さな領域で大きな熱交換効果をあげたい場合、流体は液体を使用する方が効率が良い。
【0025】
熱交換器14は、往路チューブ15の一端と結合され、内部を液体が通る。この液体は、光源装置4内に配置したリザーバータンク18に保管されている。往路チューブ15の他端は、光源装置4内に配置した送液機構17に結合されている。この送液機構17は、リザーバータンク18中の液体を送り出し、この液体は、内視鏡1の先端部9へ輸送され、先端部9から外に排出される。ここで、少なくとも内視鏡1が対象物内にあるときに、送液機構17が往路チューブ15中で流体を流すことにより内視鏡先端部材13を冷却可能である。
送液機構17としては、例えばピエゾポンプを用いる。往路チューブ15内を通す液体としては、生体に悪影響を及ぼさない水や食塩水等を使用することが好ましい。
光源装置4内は、内視鏡1内と違い、スペースが多くあるために送液機構17やリザーバータンク18を配置できる。また送液機構17として大型で高圧力のポンプを選択できるため、多くの流量を送ることが可能となる。
【0026】
また、往路チューブ15には、シャフト部10内の所定位置において、加熱機構12が熱的に結合されている。この加熱機構12は、例えばヒーターであって、往路チューブ15内の液体を加熱することができる。なお、加熱機構12の駆動を制御する制御部については図示を省略している。加熱機構12により、少なくとも内視鏡の対象物内への導入前及び導入中において、往路チューブ15内の液体が加熱され、加熱された液体により撮像素子レンズを加熱可能である。
【0027】
次に、レンズの曇り止め及び先端部9の冷却の方法を具体的に説明する。
内視鏡1は、体内に導入される際に、室温から温度の高い体内環境に晒される。体内導入前の先端部9及び内視鏡先端部材13の温度は室温と同程度であるため、室温より高温である体内に導入されると、内視鏡先端部材13内の撮像素子レンズ7が曇ってしまい視界が遮られることがある。この曇りを回避するためには、撮像素子レンズ7の温度をあらかじめ高くした状態で内視鏡1を体内に導入することが効果的である。
【0028】
一方、撮像素子レンズ7の温度を上昇させると、撮像素子レンズ7の周辺の部材も伝熱により温度上昇する。撮像素子レンズ7の周辺に配置される電気素子は、温度が上昇することによって特性の低下などの悪影響が出るものが多い。このため、レンズの曇り止め及び先端部9の冷却という両方の問題を同時に解決することが望まれる。
【0029】
そこで、第1実施形態の内視鏡においては、次の手順により内視鏡先端部材13の温度を制御することにより、撮像素子レンズ7の曇り止め及び先端部9の冷却の両機能を実現している。
まず、加熱工程として、内視鏡1を体内に導入する前に加熱機構12を駆動させ、往路チューブ15内の液体を加熱する。加熱された液体は熱交換器14を通ることによって熱交換される。温められた熱交換器14は、熱的に結合されている内視鏡先端部材13を温める。さらに、内視鏡先端部材13と熱的に結合されている電気素子やレンズに伝熱することで先端部9の温度は上昇する。このようにして、撮像素子レンズ7も間接的に温められ、体温以上の温度になった状態で体内に挿入される(導入工程)。このように撮像素子レンズ7の温度を上げた状態で体内へ導入することとしているため、曇りを防止することができる。
【0030】
加熱機構12は、シャフト部10の内視鏡先端部材13に近い位置に配置されることが望ましい。仮に加熱機構12と内視鏡先端部材13までの距離が長いと、加熱された液体は周囲環境と熱交換を行い、環境温度にまで温度低下してしまうためである。
【0031】
次に、先端部9を冷却する冷却工程を実行する。
上述のように加熱されて体内に導入された内視鏡1は体温とほぼ同じ温度になっている。内視鏡1の体内導入後、先端部9は、その内部の電気素子の駆動により、体温よりも電気素子の発熱分だけ温度が上昇している。この状態で熱交換器14内を液体が通ると、先端部9との間で熱交換が行われる。
先端部9の冷却を行うには、加熱機構12の駆動を停止した状態で、往路チューブ15内の液体の循環を継続する。これにより、往路チューブ15内の液体の温度は環境温度としての体温と同じになるまで低下する。この間、熱交換は、上述の加熱工程とは逆の方向に起こり、内視鏡先端部材13の熱が熱交換器14を介し液体に伝わり内視鏡先端部材13が冷却される。
【0032】
以上の構成及び工程により、共通の構成において、レンズ曇り止め及び冷却の両機能を実現することができる。これにより、レンズ曇りによって視野を遮られることによる内視鏡検査や治療への悪影響を回避でき、かつ、熱による電気素子への悪影響、例えば内視鏡画像に写る熱ノイズを軽減することができる。
【0033】
(第2実施形態)
図3を用いて第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態に係る内視鏡の内部構造を示す断面図である。
第2実施形態に係る内視鏡101では、送液機構117が操作部11内に配置され、熱交換器14に復路チューブ116が接続されて液体が循環するシステム(液体循環機構119)になっている点が第1実施形態に係る内視鏡と異なる。その他の構成は第1実施形態に係る内視鏡と同様であって、同じ部材については同じ参照符号を使用し、その詳細な説明は省略する。
【0034】
復路チューブ116は、送液機構117と熱交換器14に熱的に結合されており、往路チューブ15と同様に内部に液体が流れる。液体は、送液機構117から、往路チューブ15、加熱機構12、熱交換器14、復路チューブ116の順に流れて送液機構117にもどるように循環する。この循環システムを液体循環機構119と呼ぶ。
【0035】
往路チューブ15内を液体が流れるときの熱交換については、第1実施形態の内視鏡の場合と同様であるため、その説明は省略し、以下、復路チューブ116での熱交換について説明する。
往路チューブ15から熱交換器14を通った液体は、加熱工程においては環境温度よりも温度が上昇した状態で、冷却工程においては環境温度よりも温度が低下した状態で、復路チューブ116内に導入される。復路チューブ116内を通った液体は、復路チューブ116内でその周囲環境と熱交換が起こる。つまり、液体は、復路チューブ116内を進み、再度、送液機構117や往路チューブ15内に入る際には環境温度と同じ温度になる。したがって、液体が循環を何度繰り返しても熱的なサイクルは毎回同じになるため、液体循環機構119として問題なく動かし続けることができる。
【0036】
ここで、内視鏡101は、内部に部材が多数配置されるため、新規構成要素を導入するのがスペースの問題で難しい。先端部9には部材が多数配置されるため新たな構成要素を導入するスペースがあまりないが、操作部11内は先端部9と比較するとスペースがあるため、送液機構117を配置することができる。なお、送液機構117は操作部11の内部に配置されるため、光源装置4内に配置される第1実施形態の送液機構17よりもサイズが小さいことが好ましい。
【0037】
また、第2実施形態の内視鏡では、液体循環機構119内を循環する液体が内視鏡外に排出されないため、第1実施形態の内視鏡のようにリザーバータンク18に液体を追加する必要がなく、メンテナンスフリーとなる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0038】
(第3実施形態)
図4及び図5を用いて、第3実施形態に係る内視鏡について説明する。図4は、第3実施形態に係る内視鏡の内部構造を示す断面図である。図5は、第3実施形態に係る内視鏡のフィードバック制御系の構成を示すブロック図である。
【0039】
第3実施形態に係る内視鏡201は、第2実施形態に係る内視鏡に熱電対220を含むフィードバック制御系を加えた構成を備える。熱電対220以外の構成は第2実施形態に係る内視鏡と同様であって、同じ部材については同じ参照符号を使用し、その詳細な説明は省略する。
【0040】
熱電対220は、内視鏡先端部材13の温度を測定し、送液量をフィードバックする。図5に示すフィードバック制御系は、熱電対220が測定した、内視鏡先端部材13の温度が所望の温度(目標温度)でない場合、送液量を変化させることにより、内視鏡先端部材13の温度を調整する。熱電対220は、例えば先端の細いシース型熱電対が適する。
【0041】
熱電対220を用いた、内視鏡先端部材13を冷却制御するためのフィードバック制御について図5を用いて説明する。図5に示すように、フィードバック制御系は、熱電対220、実測温度算出部221、温度比較部223、目標温度格納部222(メモリ)、送液機構駆動ドライバ224、加熱機構12、及び送液機構117を備える。さらに、送液機構駆動ドライバ224は、電圧制御部225及び電圧発生部226を備える。熱電対220は内視鏡先端部材13に熱的に結合され、実測温度算出部221、温度比較部223、目標温度格納部222、及び送液機構駆動ドライバ224は、例えば光源装置4内に配置される。
【0042】
熱電対220が取得した電圧値のデータは実測温度算出部221に送られ、その電圧値から内視鏡先端部材13の温度が算出される。一方、メモリ機能を持つ目標温度格納部222には、内視鏡先端部材13の目標温度があらかじめ保存されている。温度比較部223は、目標温度格納部222に保存された目標温度データと実測温度算出部221が算出した温度を比較し、温度の値に相違がある場合は送液機構117から搬送される流量を変更する。
【0043】
温度比較部223による比較結果を受けた送液機構駆動ドライバ224は、流量の変更のために送液機構117の駆動条件を変更する。送液機構117としてピエゾポンプを想定している場合、流量を変更するには送液機構117を駆動する電圧値を変更する。例えば、温度比較部223での温度比較の結果、目標温度が実測温度より低い場合は駆動電圧値を上昇させて送液機構117から搬送される流量を増加させる。温度比較部223の比較結果は、送液機構駆動ドライバ224の電圧制御部225に送られ、電圧制御部225は、比較結果に応じて電圧の昇降又は維持の判断を行う。この判断に基づいて、電圧制御部225は、所望電圧値を電圧発生部226に伝え、電圧発生部226は送液機構117に対して電圧を発信する。
以上のような動作を繰り返すことにより、内視鏡先端部材13の温度をフィードバックして送液機構117による流量を制御し、これにより内視鏡先端部材13の温度を目標温度に維持することができる。
【0044】
この構成で流量にフィードバックをかけることにより、次の2つの効果が得られる。
1つ目の効果は、内視鏡先端部材13内に配置される電気素子、例えば撮像素子8を冷却して一定の温度に保つことができ、画像の熱ノイズを一定に保ち画像の再現性を良くすることができる点である。
2つ目の効果は、送液機構117を過剰な流量条件で駆動することがなくなるため、各チューブ、熱交換器14、及び送液機構117自身が加過圧状態となることが減り、これらの寿命を長くすることができる点である。
【0045】
つづいて、内視鏡1の加熱制御(加熱工程)について、図5、図6を参照しつつ説明する。図6は、第3実施形態の内視鏡における加熱機構12のフィードバックの手順を示すフローチャートである。
上述のように、内視鏡1を体内に挿入する際には、撮像素子レンズ7の温度を体温と同じ又は体温より高い状態とする。ここでは体温を39°Cとし、内視鏡先端部材13を目標温度39°Cに維持して内視鏡1を体内に導入する場合を説明する。
なお、この加熱制御は、第1及び第2実施形態の内視鏡においても、熱電対220、実測温度算出部221、目標温度格納部222、温度比較部223、送液機構駆動ドライバ224と同様の機能を備えた部材を設けることにより、適用可能である。
【0046】
熱電対220が温度測定している内視鏡先端部材13は撮像素子レンズ7と熱的に結合しているため、内視鏡先端部材13の温度が39°Cになっていれば撮像素子レンズ7の温度も39°Cになっている。ここで、熱電対220で測定された温度が39°C以下の場合は加熱機構12をオンにして内視鏡先端部材13を加熱して温度を上昇させる。測定温度が39°Cより高い場合は、加熱したままでは内視鏡先端部材13が加過熱の状態となるため、加熱機構12をオフにする。
【0047】
より具体的な例として、図6を用いて説明する。
まず、制御が始まると、送液機構117の駆動がオンとされる(ステップS101)。次に、温度比較部223は、熱電対220が測定した温度が目標温度である39°Cよりも高いか否か判断する(ステップS102)。
測定温度が39°C以下である場合(ステップS102でNO)、温度比較部223は、加熱機構12の駆動をオンにして内視鏡先端部材13の加熱を行う(ステップS103)。これに対して、測定温度が39°Cより高い場合(ステップS102でYES)、温度比較部223は、加熱機構12の駆動をオフにして内視鏡先端部材13を加熱しない(ステップS104)。
【0048】
内視鏡1を体内へ導入するまで、及び内視鏡1を用いた体内の観察が続いている間(ステップS105でNO)、温度比較部223は、熱電対220の測定温度が39°Cより高いか否かを判断して、判断結果に応じて12をオン又はオフする処理(ステップS102〜S104)を繰り返す。また、観察中は、上述のような、送液機構117からの流量を制御することによる冷却制御も実行する。
【0049】
内視鏡1を用いた体内の観察が終了すると(ステップS105でYES)、温度比較部223は、送液機構117の駆動をオフ(ステップS106)にした後に、加熱機構12の駆動をオフ(ステップS107)にして制御を終了する。
【0050】
このようなフィードバックをかけることにより、内視鏡先端部材13の温度を39°Cに保つことができ、内視鏡1を体内に導入することができる。体内に内視鏡1が導入された後は、環境温度が39°Cとなるため、内視鏡先端部材13は、電気素子から加熱されることによって39°C以上の状態になる。そのため、体内では加熱機構12は常時オフとなる。
内視鏡1の体内導入後は、上述の冷却工程又はフィードバック制御により、送液機構117による流量を制御し、これにより内視鏡先端部材13内に配置した電気素子を冷却して一定の温度に保つ。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態又は第2実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係る内視鏡は、内視鏡の先端部の冷却と先端部のレンズの曇り止めの両機能の実現に有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 内視鏡
2 内視鏡操作部
3 ユニバーサルコード
4 光源装置
5 ビデオプロセッサ
6 モニター
7 撮像素子レンズ
8 撮像素子
9 先端部
10 シャフト部
11 操作部
12 加熱機構
13 内視鏡先端部材
14 熱交換器
15 往路チューブ
17 送液機構
18 リザーバータンク
101 内視鏡
116 復路チューブ
117 送液機構
119 液体循環機構
201 内視鏡
220 熱電対
221 実測温度算出部
222 目標温度格納部
223 温度比較部
224 送液機構駆動ドライバ
225 電圧制御部
226 電圧発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡先端部材と、
前記内視鏡先端部材に熱的に結合される熱交換器と、
前記内視鏡先端部材内に配置された撮像素子レンズと、
前記熱交換器に一端が結合され内部を流体が通る往路チューブと、
前記往路チューブに熱的に結合された加熱機構と、
前記往路チューブの他端が結合され前記流体を送り出す送液機構と、
を備えた内視鏡であって、
少なくとも前記内視鏡の対象物内への導入前及び導入中において、前記加熱機構により加熱された前記流体で、前記撮像素子レンズを加熱可能であり、かつ、
少なくとも前記内視鏡が前記対象物内にあるときに、前記送液機構が前記往路チューブ中の流体を循環させることにより前記内視鏡先端部材を冷却可能であることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記送液機構に結合されるリザーバータンクを備え、前記送液機構から搬出される流体は前記内視鏡先端部材から前記内視鏡の外側へ排出されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
一端が前記熱交換器に、他端が前記送液機構に、それぞれ結合される復路チューブを備え、前記往路チューブと前記復路チューブを通じて、流体が前記内視鏡の先端部、シャフト部、及び操作部内で循環することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記送液機構が前記操作部内に配置されることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記加熱機構が前記シャフト部内に配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記内視鏡を前記対象物内に導入する前に前記加熱機構で流体加熱を行い、前記内視鏡の前記対象物内への導入後に前記加熱機構での流体加熱を停止することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記内視鏡先端部材に熱的に結合される熱電対で測定された温度に基づいて前記送液機構の駆動条件を変更することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記熱電対で測定された温度に基づいて前記加熱機構の駆動をオン、オフすることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項9】
内視鏡先端部材に結合されたチューブに熱的に結合した加熱機構により、前記チューブ内を流れる流体を加熱することによって、前記内視鏡先端部材を所定温度以上に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程において前記内視鏡先端部材が加熱された内視鏡を対象物の内部へ導入する導入工程と、
前記導入工程において前記内視鏡を前記対象物の内部へ導入した後に、前記チューブ内の流体を循環させることによって、前記内視鏡先端部材を所定温度未満に冷却する冷却工程と、
を備えることを特徴とする内視鏡先端部材の温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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