説明

内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材

【課題】
内視鏡の先端部から放出される気泡が排水循環口に吸引されることを防止し、廃液及び薬液を排水循環口から効率的に強制排水又は強制回収するために内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材を提供することにある。
【解決手段】
格子状又は網状で、内視鏡洗浄装置の洗浄槽内の廃液及び薬液を排水又は回収するための排水循環口を覆うように設けられ、内視鏡の先端部が当接することにより、先端部を排水循環口から所定距離離隔させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡洗浄装置の洗浄槽内の廃液及び薬液を回収するための排水循環口に設けられる内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使用された内視鏡を洗浄する装置として内視鏡洗浄装置が用いられている。この内視鏡洗浄装置は、内視鏡を載置した洗浄槽内に水や薬液を流し込んで内視鏡を洗浄するものである。本件出願人は、洗浄に掛かる時間を短縮するため特許文献1に示す発明を提案した。特許文献1に示す発明は、内視鏡の洗浄・消毒工程において、洗浄槽内に蓄積された水又は薬液を洗浄槽の排水循環口からポンプ及び切換バルブを介して直接洗浄槽より強制廃液又は強制回収するものである。
【特許文献1】特開2000−197605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、偶発的に内視鏡の先端部が洗浄槽の排水循環口の近傍に位置した状態で廃液又は薬液を強制廃液又は強制回収すると、内視鏡の先端から放出された気泡も排水循環口に吸い込まれ、ポンプの吸引性能を低下させる可能性があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、内視鏡の先端部から放出される気泡が排水循環口に吸引されることを防止し、廃液及び薬液を排水循環口から効率的に強制排水又は強制回収するために内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材は、格子状又は網状で、内視鏡洗浄装置の洗浄槽内の廃液及び薬液を排水又は回収するための排水循環口を覆うように設けられ、内視鏡の先端部が当接することにより、先端部を排水循環口から所定距離離隔させることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材は、内視鏡の先端部と排水循環口との距離が、洗浄槽内の廃液及び薬液を排水循環口から強制排水又は強制回収したとき、内視鏡の先端部等から出た気泡が排水循環口に吸引されない距離であることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材は、逆椀状で洗浄槽方向に突出することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材は、排水循環口に係止する係止部を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材は、内視鏡より柔らかい樹脂製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び請求項2の発明によれば、内視鏡の先端部が内視鏡規制部材に当接することにより、先端部を排水循環口から所定距離離隔させ、内視鏡の先端部から放出される気泡が排水循環口に吸引されることを防止し、廃液及び薬液を排水循環口から効率的に強制排水又は強制回収することができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、逆椀状で洗浄槽方向に突出することから、内視鏡の先端部を確実に排水循環口から所定距離離隔可能で、廃液及び薬液を排水循環口から効率的に強制排水又は強制回収することができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、排水循環口に係止する係止部を備えることで、内視鏡規制部材の排水循環口からの脱離を防止し、内視鏡の先端部を確実に排水循環口から所定距離離隔可能で、廃液及び薬液を排水循環口から効率的に強制排水又は強制回収することができる。
【0013】
請求項5の発明によれば、内視鏡より柔らかい樹脂製であることから、内視鏡の損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。本発明の形態における内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材は、内視鏡洗浄装置の洗浄槽内の廃液及び薬液を排水又は回収するための排水循環口に設けられるものである。
【0015】
図1は、本発明に係る内視鏡洗浄装置の一例を示す外観図である。図2は、本発明に係る内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材の一例を示す斜視図である。図3は、同内視鏡規制部材の使用状態を示す説明図である。図4は、同内視鏡規制部材の装着方法を示す説明図である。図5は、同内視鏡規制部材の機能を示す説明図である。
【0016】
図において、内視鏡洗浄装置1は、内視鏡洗浄装置本体5の上面に、内視鏡3を収める洗浄槽6を備える。この洗浄槽6は、内視鏡3を収めた状態で洗浄水や薬液Wを満たし、それら液体の流れにより内視鏡3を洗浄するための槽である。洗浄槽6の底部には、廃液や薬液Wを排水したり循環させるための排水循環口7が設けられている。尚、内視鏡洗浄装置1の操作は、内視鏡洗浄装置本体5上面正面に設けられた操作パネル8で行う。
【0017】
洗浄槽6の排水循環口7には、図3及び図4に示すように、円筒状で上面に網22を備える排水目皿20が挿嵌されている。この排水目皿20の上面には、網22を跨ぐように逆U字形の取手21が設けられている。排水循環口7の下方からはパイプ25が伸び、図示しないポンプに連通されている。
【0018】
また、図3に示すように、排水循環口7の排水目皿20の上部には、内視鏡規制部材10が装着されている。この内視鏡規制部材10は、略逆椀状で、廃液や薬液Wが排水循環口7に流入可能な格子状で、排水循環口7を覆うように循環槽6内に突出して設けられている。格子の間隔は、内視鏡3の先端部3aが嵌り込まない間隔で、例えば約6mm〜約9mmである。内視鏡規制部材10の高さは、例えば約20mmである。また、内視鏡規制部材10は、内視鏡3の先端部3aが当接しても内視鏡3が傷つかない硬度を有する例えば樹脂で形成されている。
【0019】
また、内視鏡規制部材10は、図2及び図3に示すように、内側にリブ状に突出する係止部11及びガイド12,13とを備えている。係止部11は、内側中央から突出する板状の突起で、中央に溝11aが設けられている。また、ガイド12,13は、係止部11を挟むように内視鏡規制部材10の内側から突出する棒状の突起で、係止部11に対向する面にU字状の溝12a,13aが設けられている。そして、係止部11の溝11aが、排水目皿20の取手21の水平部分に嵌合すると共に、ガイド12,13の溝12a,13aがそれぞれ取手21の鉛直部分に当接することで、内視鏡規制部材10が排水循環口7に設けられた排水目皿20に装着される。尚、内視鏡規制部材10の上部両脇には格子を凹状にした凹部14が設けられており、この凹部14を指で摘んで扱うことにより、排水循環口7への内視鏡規制部材10の着脱が容易となる。
【0020】
次に、内視鏡規制部材10の機能を説明する。まず、内視鏡規制部材10が排水循環口7に設けられていな場合を図5(a)により説明する。図5(a)では、薬液Wが洗浄槽6に満たされた状態で洗浄槽6内の内視鏡3の洗浄が行われる。そして、洗浄が終了した後、ポンプが動作し洗浄槽6内の薬液Wが、図中の矢印に示すように、排水循環口7から排水目皿20を介してパイプ25を通して強制回収される。この時、内視鏡3の先端部3aが偶発的に排水循環口7の近傍に位置し、先端部3aから内視鏡3内部の空気が排出された場合には、その気泡Bが薬液Wと共にポンプ方向に吸い込まれる場合がある。
【0021】
次に、内視鏡規制部材10が排水循環口7に設けられている場合を図5(b)により説明する。図5(b)では、薬液Wが洗浄槽6に満たされた状態で洗浄槽6内の内視鏡3の洗浄が行われる。そして、洗浄が終了した後、ポンプが動作し洗浄槽6内の薬液Wが、図中の矢印に示すように、排水循環口7から排水目皿20を介してパイプ25を通して強制回収される。この時、内視鏡3の先端部3aが偶発的に排水循環口7の近くに位置したとしても、先端部3aは内視鏡規制部材10に当接し所定距離以上に排水循環口7に接近することはない。この状態で、先端部3aから内視鏡3内部の空気が排出された場合、その気泡Bは、薬液Wと共にポンプ方向に吸い込まれることなく、浮力がポンプの吸引力に勝って薬液Wの水面方向に上昇し気中に放出される。尚、内視鏡規制部材10の高さ、すなわち内視鏡3の先端部3aと排水循環口7との距離は、洗浄槽6内の廃液及び薬液Wを排水循環口7から強制排水又は強制回収したとき、内視鏡3の先端部から出た気泡Bが排水循環口7に吸引されない距離である。
【0022】
以上のように本実施例の内視鏡洗浄装置1の内視鏡規制部材10は、内視鏡3の先端部3aが当接することにより、先端部3aを排水循環口7から所定距離離隔させ、先端部3aから放出される気泡Bが排水循環口7に吸引されることを防止し、廃液及び薬液Wを排水循環口7から効率的に強制排水又は強制回収することができる。尚、本実施例及び図面に示す内視鏡規制部材10の形状は一例にすぎず、格子状に限らず網状等、廃液及び薬液Wを流通させると共に、内視鏡3の先端部3aを排水循環口7から所定距離離隔させることができる形状であればよい。
【0023】
また、内視鏡規制部材10が逆椀状で洗浄槽6方向に突出することから、内視鏡3の先端部3aを確実に排水循環口7から所定距離離隔可能で、廃液及び薬液Wを排水循環口7から効率的に強制排水又は強制回収することができる。
【0024】
さらに、内視鏡規制部材10が排水循環口7に係止する係止部11を備えることで、内視鏡規制部材10の排水循環口7からの脱離を防止し、内視鏡3の先端部3aを確実に排水循環口7から所定距離離隔可能で、廃液及び薬液Wを排水循環口7から効率的に強制排水又は強制回収することができる。尚、本実施例及び図面に示す係止部11の形状は一例にすぎず、内視鏡規制部材10を確実に排水循環口7に装着できる形状であればよい。
【0025】
さらに、内視鏡規制部材10が内視鏡3より柔らかい樹脂製であることから、内視鏡3の損傷を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明の内視鏡規制部材10は、内視鏡の先端部から放出される気泡が排水循環口に吸引されることを防止することから、廃液及び薬液を強制排水又は強制回収する内視鏡洗浄装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る内視鏡洗浄装置の一例を示す外観図である。
【図2】本発明に係る内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材の一例を示す斜視図である。
【図3】同内視鏡規制部材の使用状態を示す説明図である。
【図4】同内視鏡規制部材の装着方法を示す説明図である。
【図5】同内視鏡規制部材の機能を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1・・・・・・・内視鏡洗浄装置
3・・・・・・・内視鏡
5・・・・・・・内視鏡洗浄装置本体
6・・・・・・・洗浄槽
7・・・・・・・排水循環口
8・・・・・・・操作パネル
10・・・・・・内視鏡規制部材
11・・・・・・係止部
12,13・・・ガイド
14・・・・・・凹部
20・・・・・・排水目皿
21・・・・・・取手
22・・・・・・網
25・・・・・・パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状又は網状で、内視鏡洗浄装置の洗浄槽内の廃液及び薬液を排水又は回収するための排水循環口を覆うように設けられ、内視鏡の先端部が当接することにより、該先端部を該排水循環口から所定距離離隔させることを特徴とする内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材。
【請求項2】
前記内視鏡の先端部と前記排水循環口との距離が、
前記洗浄槽内の廃液及び薬液を該排水循環口から強制排水又は強制回収したとき、該内視鏡の先端部等から出た気泡が該排水循環口に吸引されない距離であることを特徴とする請求項1記載の内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材。
【請求項3】
逆椀状で前記洗浄槽方向に突出することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材。
【請求項4】
前記排水循環口に係止する係止部を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材。
【請求項5】
前記内視鏡より柔らかい樹脂製であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の内視鏡洗浄装置の内視鏡規制部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−159828(P2007−159828A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360332(P2005−360332)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(591127825)株式会社アマノ (13)
【Fターム(参考)】