説明

内視鏡用フード

【課題】内視鏡のレンズ付近に液体が溜まることを抑制できる内視鏡用フードを提供する。
【解決手段】経鼻内視鏡2の先端部の外周面21に着脱自在に装着される筒状の装着部31と、装着部31の先端から延設され経鼻内視鏡2の先端22と患部との距離を一定に維持する突出部32とを有するフード本体3を備える。さらに、突出部32の内周面33には、洗浄液を噴出する送水チューブ4と、汚れた洗浄液や患部から流れ出る血液等の液体を吸引する排水チューブ5が設けられている。そして、排水チューブ5の排水口52は、送水チューブ4の送水口42よりも基端側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)において用いられる内視鏡の先端に取り付けられる内視鏡用フードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの内視鏡下で手技を行う場合、内視鏡の先端に内視鏡用フードが装着される。これにより、内視鏡の先端と患部との距離が一定に維持され、患部の良好な視野を確保することができる。
【0003】
また、この内視鏡用フードは、患部を洗浄する洗浄液を先端から噴出させる送水口と、汚れた洗浄液や患部から流れ出る血液等の液体を吸引する排水口とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、患部の粘膜や出血等の汚れを送水口から噴出された洗浄液で洗浄することができるため、患部の視野を良好な状態に維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−84141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の内視鏡用フードの排水口は、フードの先端位置に配置されているため、内視鏡の先端が上方を向いたときに、送水口から噴出された洗浄液や患部から流れ出る血液等の液体がフード内に溜まるおそれがある。フード内に液体が溜まると内視鏡による視野の悪化につながるという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、フード内に溜まった液体を確実に排水し、内視鏡の視野を良好な状態に維持し易くすることができる内視鏡用フードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の内視鏡用フードは、内視鏡の先端部の外周面に着脱自在に装着される筒状の装着部と、前記装着部の先端から延設され前記内視鏡の先端と患部との距離を一定に維持する突出部とを備える内視鏡用フードにおいて、前記突出部には、前記患部を洗浄する洗浄液を先端から送水する送水チューブと、前記突出部の内側に溜まった液体を先端から排出する排水チューブとが設けられ、前記排水チューブの先端位置は、前記送水チューブの先端位置よりも基端側に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、排水チューブの先端(排水口)が送水チューブの先端(送水口)よりも基端側に配置されているので、内視鏡の先端が上方を向いている場合においても、排水チューブの排水口からフード内に溜まった液体が排出され易くなる。
【0009】
また、本発明において、前記装着部が前記内視鏡の先端部に装着された際に、前記排水チューブの先端位置は、前記内視鏡の先端位置又は前記内視鏡の先端位置よりも基端側に配置されていることが好ましい。
【0010】
これによれば、排水チューブの先端(排水口)が、内視鏡の先端位置(レンズ位置)又は内視鏡のレンズ位置よりも基端側に配置されているので、内視鏡の先端が上方を向いている場合においても、排水チューブの先端(排水口)から内視鏡のレンズ上に溜まった液体を残すことなく排出することができる。このため、内視鏡のレンズ付近に液体が溜まることを抑制し、内視鏡の視野を良好な状態に維持し易くなる。
【0011】
また、本発明において、前記排水チューブは、前記突出部の内周面に着脱自在に設けられていることが好ましい。
【0012】
これによれば、排水チューブの排水口を任意の位置に配置することができるので、内視鏡の先端と患部との距離を任意に調節することが可能となる。即ち、フードの突出量を任意に調節しても、排水チューブの排水口を排水効率が高い位置(例えば、内視鏡のレンズ位置又は内視鏡のレンズ位置よりも基端側)に配置することができる。
【0013】
また、本発明において、前記内視鏡は、経鼻内視鏡であって、前記送水チューブ及び排水チューブは、前記突出部の内周面に設けられていることが好ましい。
【0014】
これによれば、フードの内側に前記送水チューブ及び排水チューブを取り付けることで、フードの外周面が滑らかな曲面となるので、フードの外周面が体腔壁に接触した際にかかる患者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の内視鏡用フードの一構成例を示す説明図。
【図2】本実施形態の内視鏡用フードの変形例を示す説明図。
【図3】本発明の内視鏡用フードの使用例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳しく説明する。まずは、図1を参照して、本実施形態の内視鏡用フード1の構成について説明する。
【0017】
本発明の実施形態の内視鏡用フード1は、経鼻内視鏡2の先端部の外周面21に着脱自在に装着される筒状の装着部31と、装着部31の先端から延設され、経鼻内視鏡2の先端22と患部との距離を一定に維持する突出部32とを有するフード本体3を備える。さらに、突出部32の内周面33には、洗浄液を噴出する送水チューブ4と、汚れた洗浄液や患部から流れ出る血液等の液体を吸引する排水チューブ5が設けられている。
【0018】
フード本体3は、経鼻内視鏡2に装着するものであることから、フード本体3の肉厚は、極力薄くなっていることが好ましい。本実施形態では例えば0.5〜0.6mmと薄くなっている。また、図3に示すように、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)において、突出部32で患部の粘膜を挙上させなくてはならないことから、フード本体3の材質は、本実施形態では例えば硬度40度以上のシリコーンゴムが採用されている。
【0019】
送水チューブ4は、チューブ長が、本実施形態では例えば1,000〜2,500mmとなっている。送水チューブ4の先端部41は、フード装着後に経鼻内視鏡2を鼻から挿入しなければならない点から、図1に示すように、突出部32の外周面34よりも内周面33に接着されていることが好ましい。送水チューブ4の先端部41を突出部32の外周面34に取り付けた場合、送水チューブ4が鼻腔壁に接触してしまい、患者に負担をかけるおそれがあるからである。そして、送水チューブ4の先端(送水口42)は、突出部32の先端35と同じ位置に配置されている。送水チューブ4の先端42が突出部32の先端35よりも突出していると、送水チューブ4の先端42が患部に接触してしまい、患者に負担をかけるおそれがあるからである。
【0020】
排水チューブ5は、チューブ長が、本実施形態では例えば1,000〜2,500mmとなっている。排水チューブ5の先端部51は、送水チューブ4と同様に、突出部32の内周面33に接着されている。そして、排水チューブ5の先端(排水口52)は、経鼻内視鏡2の先端22と同じ位置に配置されている。これにより、経鼻内視鏡2の先端が上方を向いたときに、排水チューブ5の排水口52から経鼻内視鏡2のレンズ23の上に溜まった液体を残すことなく排出することができる。尚、排水チューブ5の排水口52を経鼻内視鏡2の先端22よりも基端側に配置しても、上記と同様の効果は得られる。
【0021】
次に、本実施形態の内視鏡用フード1の使用方法について説明する。
【0022】
まず、図1に示すように、内視鏡用フード1の装着部31を経鼻内視鏡2の先端部の外周面21に装着し、患者の鼻等の体孔から経鼻内視鏡2を体内へ挿入する。そして、経鼻内視鏡2の先端22が患部に近づいたら、送水チューブ4の送水口42から洗浄液を送水し、患部に向けて洗浄液を噴出させる。
【0023】
次に、内視鏡用フード1の突出部32を患部の周辺に押し付ける。そして、図3に示すように、経鼻内視鏡2のチャンネル24に挿入された高周波ナイフWなどにより治療・処置を行う。このとき、経鼻内視鏡2のレンズ23の上に血液や洗浄液等の液体が溜まることがあるが、突出部32の内周面33に配置された排水チューブ5の排水口52から溜まった液体を排出することができ、経鼻内視鏡2の視野を良好に保つことができる。
【0024】
また、排水チューブ5の先端52は、経鼻内視鏡2の先端22と同じ位置に配置されているため、図1(b)に示すように、経鼻内視鏡2の先端22が上方に向いている場合においても、経鼻内視鏡2のレンズ付近に溜まった液体が排水チューブ5の先端52に流れ易くなり、効率よく突出部32内の液体を排出させることができる。
【0025】
本実施形態の内視鏡用フード1は、図1に示すように、排水チューブ5の先端部51は、突出部32の内周面33に接着されているが、図2に示すように、排水チューブ5の先端部51を突出部32の内周面33に接着せずに着脱自在にしてもよい。
【0026】
具体的には、送水チューブ4と排水チューブ5とは先端付近まで接着されており、先端部だけが二股に分離している。そして、送水チューブ4の先端部41は突出部32の内周面33に接着され、排水チューブ5の先端部51は、図2(a)に示すようにフリー状態となっている。
【0027】
この排水チューブ5は、図2(b)に示すように、排水チューブ5の先端部51を、突出部32の内周面33と経鼻内視鏡2の先端部の外周面21との間に挟みこむことにより固定する。このとき、排水チューブ5の排水口52が、経鼻内視鏡2の先端22と同じ位置になるように配置する。
【0028】
これによれば、排水チューブ5の排水口52を任意の位置に配置することができるので、経鼻内視鏡2の先端22と患部との距離を任意に調節して、経鼻内視鏡2の良好な視野を確保することが可能となる。即ち、フードの突出量を任意に調節しても、排水チューブ5の排水口52を排水効率が高い位置に配置することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、内視鏡用フード1を経鼻内視鏡2に装着する場合について説明しているが、内視鏡用フード1を経口内視鏡に装着するようにしてもよい。また、上記実施形態では、送水チューブ4を突出部32の内周面33に取り付けているが、経口内視鏡に装着する場合は、送水チューブ4を突出部32の外周面34に配置してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…内視鏡用フード1、 2…経鼻内視鏡、 3…フード本体、 32…突出部、 4…送水チューブ、 42…送水口、 5…排水チューブ、 52…排水口。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端部の外周面に着脱自在に装着される筒状の装着部と、前記装着部の先端から延設され前記内視鏡の先端と患部との距離を一定に維持する突出部とを備える内視鏡用フードにおいて、
前記突出部には、前記患部を洗浄する洗浄液を先端から送水する送水チューブと、前記突出部の内側に溜まった液体を先端から排出する排水チューブとが設けられ、
前記排水チューブの先端位置は、前記送水チューブの先端位置よりも基端側に配置されていることを特徴とする内視鏡用フード。
【請求項2】
前記装着部が前記内視鏡の先端部に装着された際に、前記排水チューブの先端位置は、前記内視鏡の先端位置又は前記内視鏡の先端位置よりも基端側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用フード。
【請求項3】
前記排水チューブは、前記突出部の内周面に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡用フード。
【請求項4】
前記内視鏡は、経鼻内視鏡であって、
前記送水チューブ及び排水チューブは、前記突出部の内周面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内視鏡用フード。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−245011(P2011−245011A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120604(P2010−120604)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(510107378)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】