説明

内視鏡用挿入補助具

【課題】シース挿入部に汎用性があり、製造コストを低減でき、シース挿入部の保管場所を省スペース化できる内視鏡用挿入補助具を提供する。
【解決手段】挿入補助具10は、シース挿入部14が少なくとも2分割された、複数の管体16〜22からなる分割構造体である。すなわち、シース挿入部14は、内視鏡挿入部26の長さに対応した長さとなる複数の管体を選択して組み立てられることにより、必要となる部品種類を低減できるため、製造コストを低減できる。また、製造メーカは、長さが異なる複数の管体を揃えておき、医療機関側からの受注後に、それらの管体のなかから所定の管体を選択してシース挿入部を組み立てた後、医療機関側に納品することもできる。また、内視鏡挿入部26の長さに対応した一体品のシース挿入部を1本毎に保管する必要はない。よって、挿入補助具10は、シース挿入部14の保管場所を省スペース化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡用挿入補助具に係り、特に硬性内視鏡の挿入部の観察窓の曇りを防止する機能、及び観察窓を洗浄する機能を有する内視鏡用挿入補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、内視鏡を利用した医療診断が広く行われている。このような内視鏡は、挿入部の先端部が汚れ易い環境で使用されるため、挿入部の先端部に設けられている観察窓、照明窓を常に清浄に保ち、良好な視野を確保する必要がある。
【0003】
特許文献1には、硬性内視鏡に用いられる内視鏡用シース装置(内視鏡用挿入補助具、又はオーバーシースとも言う)が開示されている。特許文献1の内視鏡用シース装置は、硬性内視鏡の本体部に装着されるシース本体部と、硬性内視鏡の挿入部が挿入されるシース挿入部とを備えている。前記シース挿入部は、その内径が硬性内視鏡の挿入部の外径よりも大きく構成されている。これにより、シース挿入部に硬性内視鏡の挿入部を挿入した装着状態において、シース挿入部と前記挿入部との間に流体供給用通路が形成される。流体供給用通路は、シース挿入部の先端部に設けられたノズルに連通されている。したがって、前記流体供給用通路に流体を供給すると、流体が前記ノズルから硬性内視鏡の照明窓、観察窓に噴射されるので、観察窓、照明窓が清浄に保たれる。
【0004】
また、特許文献2も同様に、内視鏡の挿入部が挿入されるシースを備えた挿入補助具が開示されている。この挿入補助具は、前記シースに内視鏡の挿入部を挿入した装着状態において、シースと前記挿入部との間に第1空間と第2空間とが各々独立して設けられている。第1空間には洗浄媒体が供給され、第2空間には気体が供給され、前記洗浄媒体及び気体が内視鏡の照明窓、観察窓に噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−275185号公報
【特許文献2】特許第4037488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、内視鏡の挿入部は、製造メーカによって長さが異なる。また、処置する部位によってその長さが異なるため、医療用機関側では、挿入部の長さが異なる複数台の内視鏡が揃えられている。特許文献1、2に開示された挿入補助具は、内視鏡の挿入部の長さに対応させてシース挿入部が製造されたものなので、長さの異なる挿入部には対応できず汎用性がない。よって、挿入補助具の製造メーカは、内視鏡の挿入部の長さに対応した複数種類のシース挿入部を製造する必要があるので、各社硬性鏡への対応、長さの違う硬性鏡毎に部品を製造する必要があり、部品種類の増加に伴い保管場所のスペースが広くなるという問題があった。
【0007】
また、挿入補助具を製作する方法として、樹脂成型金型を用いることが多いが、硬性内視鏡の挿入部の長さの違いにより、それらの硬性内視鏡に対応する金型を製作する必要があるので、挿入補助具を安価に製造することが困難であった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、シース挿入部に汎用性があり、製造コストを低減でき、シース挿入部の保管場所を省スペース化できる内視鏡用挿入補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係る内視鏡用挿入補助具は、手元操作部と、前記手元操作部に基端部が接続されるとともに内視鏡の挿入部を挿通するルーメンを備えた筒状のシース挿入部と、からなる内視鏡用挿入補助具において、前記シース挿入部は、複数の管体を前記シース挿入部の長手方向に沿って連結してなる分割構造体であることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記分割構造体は、前記手元操作部の基端部に接続される第1の管体と、前記第1の管体の先端部に接続される第2の管体とを少なくとも備えていることが好ましい。
【0011】
本発明の内視鏡用挿入補助具は、シース挿入部が少なくとも2分割された、複数の管体からなる分割構造体である。すなわち、前記シース挿入部は、内視鏡挿入部の長さに対応した長さとなる複数の管体を選択して組み立てられる。つまり、内視鏡用挿入補助具の製造メーカは、長さが同一、及び長さが異なる複数の管体を揃えておき、医療機関側からの受注後に、それらの管体から所定の管体を選択してシース挿入部を組み立てた後、完成した内視鏡用挿入補助具を医療機関側に納品する。よって、本発明のシース挿入部は汎用性がある。
【0012】
また、本発明の如く、シース挿入部を前記分割構造体とすることによって、製造メーカ側では、内視鏡の挿入部の長さに対応した一体品のシース挿入部を1本毎に保管する必要はない。よって、シース挿入部の製造コストを低減できるとともに、シース挿入部の保管場所を省スペース化できる。
【0013】
本発明によれば、前記第1の管体、及び前記第2の管体には流体管路が備えられ、前記第2の管体の先端部には、前記流体管路と連通したノズルが備えられていることが好ましい。これにより、流体管路に供給された流体をノズルから噴射することができる。
【0014】
本発明によれば、前記第1の管体、及び前記第2の管体の各々の前記流体管路の端部には嵌合部が設けられ、各々の前記嵌合部を嵌合させることにより、前記第1の管体と前記第2の管体とが連結されることが好ましい。これにより、第1の管体と第2の管体との連結部における流体管路の気密性、水密性が向上する。
【0015】
本発明によれば、前記第1の管体と前記第2の管体との間には、流体管路を備えた少なくとも一つ以上の第3の管体が介在され、前記第3の管体の前記流体管路の基端部側の嵌合部が、前記第1の管体の前記流体管路の先端部側の嵌合部と嵌合され、前記第3の管体の前記流体管路の先端部側の嵌合部が、前記第2の管体の前記流体管路の基端部側の嵌合部と嵌合されることが好ましい。これにより、第1から第3の管体の各々の連結部における流体管路の気密性、水密性が向上する。
【0016】
本発明によれば、前記流体管路は、送気管路、又は送水管路であることが好ましい。これにより、ノズルから気体、液体、及び気体と液体との混合流体を、内視鏡挿入部の先端面に配置されている照明窓、観察窓に噴射することができ、照明窓、観察窓を清浄に保つことができる。
【0017】
本発明によれば、前記シース挿入部の外表面に密着されて該シース挿入部を被覆する被覆材が設けられていることが好ましい。これにより、シース挿入部の管体同士の連結強度がより一層向上する。
【0018】
本発明によれば、前記被覆材は、筒状の熱収縮チューブであることが好ましい。これにより、熱収縮チューブを熱収縮させるだけで、被覆材をシース挿入部の外表面に密着させることができる。
【0019】
本発明によれば、前記第2の管体の先端部は、該第2の管体の長手軸と直交する平面上に先端開口部を有することが好ましい。これにより、本発明の内視鏡用挿入補助具を、直視内視鏡用の挿入補助具として使用できる。
【0020】
本発明によれば、前記第2の管体の先端部は、該第2の管体の長手軸と斜交する平面上に先端開口部を有することが好ましい。これにより、本発明の内視鏡用挿入補助具を、斜視内視鏡用の挿入補助具として使用できる。
【0021】
本発明によれば、前記シース挿入部は、樹脂製であることが好ましい。これにより、管体に備えられるルーメン、流体管路の形状を均一に成形できる。
【0022】
本発明の好ましい内視鏡用挿入補助具は、ノズルを有する先頭ピース(第2の管体)、管路及び挿入補助具の骨格を形成する中間ピース(第3の管体)、中間ピース(第3の管体)と同様に管路と骨格を形成しながら長さを調整する調整ピース(第3の管体)、送気・送水を制御する操作部と連結する基端ピース(第1の管体)からなる。
【0023】
先頭ピースは、硬性内視鏡の形状(特に先端部の角度、レンズ面の配置、ライトガイド部の配置など)に合致するように最適化されて新規設計される。前記中間ピースは、調整部際で調整が可能となるように、連結する個数を増減する。調整ピースは適用する硬性鏡の長さに合致するように長さが最適化されて、新規設計される。基端ピースは、流用される。
【0024】
各ピースの管路は、連結した場合のシール性を確保するために、管路突起部の先端付近、又は基端付近にOリングなどのシール部材を用いる、もしくは、Oリングの代わりにエラストマーなど密着性を有する材料をインサート成型することが可能である。又は、管路突起部を有さずに、各ピースに形成された案内部分(凹凸嵌合部)をガイドにして連結された後に、極肉薄のパイプやチューブを装填することでも実現できる。ただし、この場合、先頭ピースと連結ピースは、挿入補助具の骨格が形成された後に接着や溶着、圧入などの方法で連結されることが好ましい。
【0025】
中間ピースと基端ピースの内径寸法は、一般的な硬性鏡の外形寸法より大きめとすることで、汎用性が高まる。一方、先頭ピースと調整ピースは、適用する硬性鏡の外形寸法に合せて、ほぼ等しい、又はやや太い内径寸法にすることで、先頭ピースと調整ピースで硬性鏡の挿入部と挿入補助具のガタツキを抑えることができる。調整ピースは、基端ピースの1つ前もしくは数個前に配置されるのが望ましい。
【0026】
先頭ピースと調整ピースが、中間ピースの長さに対して短くできるように、適用する硬性鏡の長さに対して個数を調整することで、先頭ピース、及び調整ピース用を新たに製作する成型金型を小さくすることができ、製造コストを抑えることができる。
【0027】
各ピースの連結構造を維持する形態として、各ピースを接着や溶着などで接合する、又は、管路をガイドにして連結した後に、薄い(外形寸法に影響の少ない)熱収縮チューブ(ポリエーテルブロックアミド、ポリオレフィンなど生体適合性、ガンマ線滅菌耐性を有したものが望ましい)を利用して、全体を被覆した状態で圧縮して連結を維持する方法がある。
【0028】
これにより、本発明の内視鏡用挿入補助具によれば、長手方向に短いピース(複数の管体)を連結して構成することにより、硬性鏡の長さに対して、柔軟に対応が可能となり、汎用性が高まる。
【0029】
また、本発明は、硬性鏡挿入部を装填した場合に、挿入部の円周方向中心と挿入補助具の円周方向中心を偏芯させて、片側に肉厚部(断面積が大きい部分)を設け、その肉厚部に管路を形成するスペースを作ることができるので、挿入補助具の外形寸法が大きくなることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の内視鏡用挿入補助具によれば、シース挿入部を複数の管体からなる分割構造体としたので、シース挿入部に汎用性があり、また、シース挿入部の製造コストを低減でき、更に、シース挿入部の保管場所を省スペース化できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態の挿入補助具に硬性内視鏡が装着された全体斜視図
【図2】図1の形態を下方から見た斜視図
【図3】挿入補助具を構成するシース挿入部の組み立て斜視図
【図4】直視内視鏡用の管体を示した断面図
【図5】斜視内視鏡用の管体を示した断面図
【図6】コレットチャックの構成を示した組み立て斜視図
【図7】シース挿入部を構成する管体同士の連結構造を示した断面図
【図8】シース挿入部を構成する管体同士の連結構造を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に従って本発明に係る内視鏡用挿入補助具の好ましい実施の形態について詳説する。
【0033】
図1は、実施の形態の内視鏡用挿入補助具(以下、挿入補助具という)10に硬性内視鏡12が装着された全体斜視図であり、図2は、図1の形態を下方から見た斜視図である。また、図3には、挿入補助具10を構成するシース挿入部14の組み立て斜視図が示されている。
【0034】
本発明の特徴は、シース挿入部14を、シース挿入部14の長手軸Aに直交する方向に分割した分割構造体として構成することにより、汎用性のあるシース挿入部14を提供するとともに、シース挿入部14を保管する専有スペースを削減することにある。そこで、図3には、4分割された4本の管体16、18、20、22からなるシース挿入部14が示されている。なお、実施の形態では、4分割したシース挿入部14を例示しているが、シース挿入部14の分割数は少なくとも2分割以上であればよい。
【0035】
ここで、管体16が本発明の第1の管体(基端ピース)に相当し、管体22が本発明の第2の管体(先頭ピース)に相当し、管体18、20が本発明の第3の管体(調整ピース、中間ピース)に相当する。つまり、管体16と管体22とを連結して長さの短いシース挿入部14を構成してもよい。また、前記第3の管体は、管体18のみであってもよく、3本以上の管体であってもよい。
【0036】
更に、管体22においては、図4の如く管体22の先端部に管体22の長手軸Aと直交する平面上に先端開口部23Aを有する直視硬性内視鏡用の管体としてもよく、図5の如く管体22の長手軸Aと斜交する平面上に先端開口部23Bを有する斜視硬性内視鏡用の管体としてもよい。このように管体22を内視鏡の用途に応じて選定することにより、実施の形態の挿入補助具10は、直視硬性内視鏡、及び斜視硬性内視鏡の双方に対応できる。なお、図4、図5において符号25は、模式的に示した硬性内視鏡の観察窓である。
【0037】
更にまた、管体16〜22の長さも均一ではなく、長さの異なる複数本の管体を揃えておき、硬性内視鏡12の内視鏡挿入部26の長さに対応する管体を複数本選択し、これらの管体を連結して必要とする長さのシース挿入部14を組み立てればよい。シース挿入部14の長さの調整は、主に管体18、20によって行うことが好ましい。管体16〜22は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタン等の樹脂製であることが好ましく、射出成形等のインサート成形装置によって製造されることが好ましい。この理由は、シース挿入部を樹脂製にすると、後述する流体管路(送気管路、送水管路)の形状をシース挿入部の長手方向に均一に成形することが困難であるが、実施の形態では、シース挿入部14が複数本の短い管体16〜22に分割されているため、管体16〜22毎に均一な形状の流体管路を形成できるからである。管体16〜22の連結構造については後述する。
【0038】
図3の如く硬性内視鏡12は、本体部24と硬性管からなる内視鏡挿入部26とから構成される。本体部24には、コネクタ28が突設されている。コネクタ28は、硬性内視鏡12の使用時において、挿入補助具10を構成するハンドル部(手元操作部)30の本体31のU字状切欠部34から図3上で上方に突出配置される。この状態で、ライトガイドケーブル36の一端部がコネクタ28に接続され、ライトガイドケーブル36の他端部が外設の光源装置38に接続される。なお、コネクタ28を前記切欠部34に嵌挿することによって、挿入補助具10に対する硬性内視鏡12の周方向の位置が位置決めされるとともに、周方向の位置ずれが規制される。
【0039】
コネクタ28には、光ファイバからなるライトガイド(不図示)の一端が固定されている。このライトガイドは内視鏡挿入部26内に挿通配置され、ライトガイドの他端が、内視鏡挿入部26の先端面27に設けられた照明窓40に対向するように延設されている。したがって、光源装置38からの照明光は、ライトガイドケーブル36、及び前記ライトガイドを介して照明窓40に導かれ、照明窓40から体腔内の観察部位に照射される。
【0040】
また、内視鏡挿入部26の先端面27には、観察窓42が設けられている。観察窓42から入射した観察部位の光学像は、内視鏡挿入部26内に挿通配置されたイメージガイド(不図示)の結像面に対物レンズ(不図示)によって結像される。そして、前記光学像は、前記イメージガイドを介して本体部24に導かれ、本体部24の基端部に連結された接眼部44の接眼レンズ46(図1、図2参照)を介して施術者に観察される。
【0041】
なお、実施の形態では、観察部位の光学像を、イメージガイドを介して接眼部44から観察する硬性内視鏡12を例示したが、固体撮像素子の受光面に光学像を結像させて、光学像を電子画像データとして出力する電子内視鏡であってもよい。
【0042】
内視鏡挿入部26がシース挿入部14に規定の位置まで挿入されると、内視鏡挿入部26の照明窓40、及び観察窓42がシース挿入部14の先端開口部(図3では符号22A)から露出する。
【0043】
シース挿入部14に挿入された内視鏡挿入部26は図2の如く、シース挿入部14の導入管50に設けられているコレットチャック52の締結動作によって導入管50に固定される。これにより、挿入補助具10と硬性内視鏡12とが相互に固定され、施術の安定化が図られている。
【0044】
コレットチャック52は図6の如く、コレット部54とナット部56とから構成される。コレット部54は、導入管50の基端部に形成された3本の割溝58と、導入管50の基端部の表面に刻設された雄ねじ60とを備えている。ナット部56の内周面には、雄ねじ60に螺合するテーパ状の雌ねじ62が刻設されている。したがって、ナット部56の雌ねじ62をコレット部54の雄ねじ60に螺合させ、ナット部56を締結方向に回転させると、コレット部54がテーパ状の雌ねじ62に押圧されて縮径し、硬性内視鏡12の内視鏡挿入部26に押圧される。これによって、挿入補助具10と硬性内視鏡12とがコレットチャック52によって相互に固定される。
【0045】
一方、挿入補助具10は図3の如く、硬性内視鏡12の内視鏡挿入部26が挿入される外套管としてのシース挿入部14と、シース挿入部14の基端部に設けられ、施術者が把持して操作するハンドル部30とから構成される。シース挿入部14の基端部は、ハンドル部30の本体31に備えられた支持部64に貫通配置されて、図6に示した導入管50に一体的に連結されている。
【0046】
図3の如く、シース挿入部14を構成する各管体16〜22には、内視鏡挿入部26が挿入されるルーメン16A、18A、20A、22Aが各管体16〜22の軸方向に備えられている。ルーメン16A、20Aの直径は、一般的な硬性内視鏡12の内視鏡挿入部26の外形寸法よりも大きめとすることで、汎用性が高まる。一方、ルーメン22A、18Aの直径は、適用する硬性内視鏡12の内視鏡挿入部26の外形寸法に合せて、ほぼ等しい、又はやや大きい寸法にする。これにより、管体22と管体18とによって硬性内視鏡12の内視鏡挿入部26と挿入補助具10との間のガタツキを抑えることができる。
【0047】
また、ルーメン16A〜20Aの直径を、挿入部26の外径よりも大きく、ルーメン22Aの直径を、内視鏡挿入部26の外径と略同一径としてもよい。これにより、内視鏡挿入部26の先端部が管体22のルーメン22Aに嵌合されるので、シース挿入部14に対する内視鏡挿入部26の軸方向の位置ずれが防止される。そして更に、ルーメン16A〜22Aは、管体16〜22が直棒状に連結された際に同軸上に位置するように形成されている。これにより、内視鏡挿入部26がシース挿入部14に円滑に挿入される。この効果も樹脂製のシース挿入部14を分割したことによって得られるものである。
【0048】
また、各管体16〜22には、流体管路である送気管路16B、18B、20B、22Bが各管体16〜22の軸方向に貫通して備えられている。これらの送気管路16B〜22Bは、同径に形成されるとともに、各管体16〜22が直棒状に連結された際に同軸上に位置するように形成されている。
【0049】
更に、各管体16〜22には、流体管路である送水管路16C、18C、20C、22Cが各管体16〜22の軸方向に貫通して備えられている。これらの送水管路16C〜22Cは、同径に形成されるとともに、各管体16〜22が直棒状に連結された際に同軸上に位置するように形成されている。
【0050】
なお、実施の形態では、送気管路16B〜22B、及び送水管路16C〜22Cの双方を備えているが、少なくとも一方の流体管路を備えたものでもよい。また、送気管路16B〜22B、及び送水管路16C〜22Cは、シース挿入部14の片側に備えられた肉厚部(不図示)に設けられている。前記肉厚部は、内視鏡挿入部26の円周方向中心とシース挿入部14の円周方向中心を偏芯させることにより形成される。これによって、シース挿入部14の外形寸法が大きくなることを防いでいる。
【0051】
各管体16〜22は、隣接する管体16〜22同士が、送気管路16B〜22B及び送水管路16C〜22Cに形成された凸状部(嵌合部)と凹状部(嵌合部)とを嵌合連結することにより棒状に強固に連結される。
【0052】
すなわち、図7の如く管体16の先端面には、送気管路16Bに連通した凸状部16Dが軸方向に突出されており、一方、管体16に隣接する管体18の基端面には、送気管路18Bに連通する凹状部18Dが形成されている。また、管体16の先端面には、送水管路16Cに連通した凸状部16E(図3参照)が軸方向に突出されており、一方、管体16に隣接する管体18の基端面には、送水管路18Cに連通する凹状部(不図示)が形成されている。よって、図8の如く凸状部16Dを凹状部18Dに嵌合するとともに、凸状部16Eを前記不図示の凹状部に嵌合することにより、管体16と管体18とが連結される。同様にして管体18と管体20とが連結され、管体20と管体22とが連結される。これによって、直棒状のシース挿入部14が構成される。
【0053】
このように流体管路の端部に、連結部材である前記凸状部と前記凹状部とを設けることによって、隣接する管体16〜22同士の連結部における水密性、及び気密性が向上する。
【0054】
図7、図8に示した符号66は、シース挿入部14全体を覆う長さの筒状の熱収縮チューブ(被覆材)である。この熱収縮チューブ66の使用方法は、まず、熱収縮チューブ66にシース挿入部14全体を挿入する。次に、熱収縮チューブ66を加熱して図8の如く収縮させ、熱収縮チューブ66をシース挿入部14の外表面に密着させる。これによって、隣接する管体16〜22同士の連結部がより一層強固になるので、挿入補助具10の使用時に管体16〜22が分離することを確実に防止できる。
【0055】
熱収縮チューブ66としては、樹脂製の管体16〜22に熱による影響(変形)を与えないために、低温で熱収縮する樹脂、例えば90°で熱収縮するポリオレフィン樹脂製のものが好ましい。又は、ポリエーテルブロックアミド等の生体適合性、ガンマ線滅菌耐性を有したものが望ましい。
【0056】
なお、実施の形態では、被覆材として熱収縮チューブ66を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、被覆材としてプラスチックフィルムを用い、プラスチックフィルムによってシース挿入部14全体を巻回してもよい。
【0057】
図3に示した管体22の送気管路22Bと送水管路22Cとは、管体22の先端部近傍で合流され、その合流管路(不図示)が管体22の先端部に備えられたノズル68に連通されている。このノズル68は、ルーメン22Aの開口部の中心部に向けて開口されている。ノズル68からは、送気管路16B〜22Bから供給されてきた空気(COガス)、及び送気管路16B〜22Bと送水管路16C〜22Cとから供給されてきた空気(COガス)と洗浄水(水)との混合流体が噴射される。よって、シース挿入部14に挿入された内視鏡挿入部26の照明窓40、及び観察窓42には、空気と混合流体とが切り替えられて噴射される。
【0058】
送気管路16B〜22Bは、図6に示すポート70を介して外部に開口され、図3の送水管路16C〜22Cは、図6に示すポート72を介して外部に開口される。
【0059】
ポート70には、図2に示すようにガス供給チューブ74の一端が接続される。このガス供給チューブ74は、ハンドル部30の本体31に備えられている溝76から、図3に示す本体31の開口部78を介して外部に延設されて、その他端が図2のCO供給装置80に接続される。これにより、CO供給装置80からのCOガスがガス供給チューブ74、ポート70、及び送気管路16B〜22Bを介してノズル68に供給される。
【0060】
また、ポート72には、図2に示すように液供給チューブ82の一端が接続される。この液供給チューブ82は、本体31に備えられている溝84から、図3に示す本体31の開口部86を介して外部に延設されて、その他端が図2の送水装置88に接続される。これにより、送水装置88からの水が液供給チューブ82、ポート72、及び送水管路16C〜22Cを介してノズル68に供給される。
【0061】
以上の如く、実施の形態の挿入補助具10は、シース挿入部14が少なくとも2分割された、複数の管体16〜22からなる分割構造体である。すなわち、シース挿入部14は、製造メーカ側において、内視鏡挿入部26の長さに対応した長さとなる複数の管体を選択して組み立てられる。つまり、製造メーカは、長さが同一、及び長さが異なる複数の管体を揃えておき、医療機関側からの受注後に、それらの管体のなかから所定の管体を選択してシース挿入部を組み立てた後、完成した内視鏡用挿入補助具を医療機関側に納品する。よって、実施の形態のシース挿入部14は汎用性がある。また、市販されている主な硬性内視鏡に対応する複数のシース挿入部14を、予め揃えておいてもよい。
【0062】
また、シース挿入部14を分割構造体とすることによって、製造メーカ側では、特許文献1、2の挿入補助具のように、内視鏡挿入部26の長さに対応した一体品のシース挿入部を1本毎に保管する必要はない。よって、実施の形態の挿入補助具10は、シース挿入部14の保管場所を省スペース化できる。
【0063】
以上、実施の形態に係る内視鏡用挿入補助具10について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0064】
10…内視鏡用挿入補助具、12…硬性内視鏡、14…シース挿入部、16、18、20、22…管体、24…本体部、26…内視鏡挿入部、28…コネクタ、30…ハンドル部、31…本体、32…送気送水レバー、34…切欠部、36…ライトガイドケーブル、38…光源装置、40…照明窓、42…観察窓、44…接眼部、46…接眼レンズ、50…導入管、52…コレットチャック、54…コレット部、56…ナット部、58…割溝、60…雄ねじ、62…雌ねじ、64…支持部、66…熱収縮チューブ、68…ノズル、70、72…ポート、74…ガス供給チューブ、76…溝、78…開口部、80…CO供給装置、82…液供給チューブ、84…溝、86…開口部、88…送水装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手元操作部と、前記手元操作部に基端部が接続されるとともに内視鏡の挿入部を挿通するルーメンを備えた筒状のシース挿入部と、からなる内視鏡用挿入補助具において、
前記シース挿入部は、複数の管体を前記シース挿入部の長手方向に沿って連結してなる分割構造体であることを特徴とする内視鏡用挿入補助具。
【請求項2】
前記分割構造体は、前記手元操作部の基端部に接続される第1の管体と、前記第1の管体の先端部に接続される第2の管体とを少なくとも備えている請求項1に記載の内視鏡用挿入補助具。
【請求項3】
前記第1の管体、及び前記第2の管体には流体管路が備えられ、前記第2の管体の先端部には、前記流体管路と連通したノズルが備えられている請求項2に記載の内視鏡用挿入補助具。
【請求項4】
前記第1の管体、及び前記第2の管体の各々の前記流体管路の端部には嵌合部が設けられ、各々の前記嵌合部を嵌合させることにより、前記第1の管体と前記第2の管体とが連結される請求項3に記載の内視鏡用挿入補助具。
【請求項5】
前記第1の管体と前記第2の管体との間には、流体管路を備えた少なくとも一つ以上の第3の管体が介在され、
前記第3の管体の前記流体管路の基端部側の嵌合部が、前記第1の管体の前記流体管路の先端部側の嵌合部と嵌合され、
前記第3の管体の前記流体管路の先端部側の嵌合部が、前記第2の管体の前記流体管路の基端部側の嵌合部と嵌合される請求項4に記載の内視鏡用挿入補助具。
【請求項6】
前記流体管路は、送気管路、又は送水管路である請求項3、4、又は5に記載の内視鏡用挿入補助具。
【請求項7】
前記シース挿入部の外表面に密着されて該シース挿入部を被覆する被覆材が設けられている請求項1から6のうちいずれかに記載の内視鏡用挿入補助具。
【請求項8】
前記被覆材は、筒状の熱収縮チューブである請求項7に記載の内視鏡用挿入補助具。
【請求項9】
前記第2の管体の先端部は、該第2の管体の長手軸と直交する平面上に先端開口部を有する請求項2〜8のうちいずれかに記載の内視鏡用挿入補助具。
【請求項10】
前記第2の管体の先端部は、該第2の管体の長手軸と斜交する平面上に先端開口部を有する請求項2〜8のうちいずれかに記載の内視鏡用挿入補助具。
【請求項11】
前記シース挿入部は、樹脂製である請求項1から10のいずれかに記載の内視鏡用挿入補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−17641(P2013−17641A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153205(P2011−153205)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】