説明

内視鏡装置

【課題】屈曲可能部で屈曲する内視鏡をファーター乳頭部へ容易に挿入することができる内視鏡装置を提供する。
【解決手段】先端部に屈曲可能部Eaを有する内視鏡Eと、先端部の側壁に開口する側口部13とを有し該内視鏡Eを内挿した第1オーバーチューブ10と、先端に開口部22を有し第1オーバーチューブ10を内挿した第2オーバーチューブ20とを備えた内視鏡装置1であって、第1オーバーチューブ10は、第2オーバーチューブ20の開口部22から突出でき、側口部13より先端側の外周面に膨張可能な第1のバルーン14を有する。第2オーバーチューブ20は、先端部の外周面に膨張な第2のバルーン24を有する。内視鏡Eは、第2オーバーチューブ20の開口部22から第1オーバーチューブ10の側口部13が露出した状態で、屈曲可能部Eaを屈曲させることで該側口部13から突出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡と、該内視鏡を内挿するオーバーチューブとを備える内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の胆道(胆嚢及び胆管)や膵管を検査する方法として、胆汁及び膵液の出口であるファーター乳頭部に、先端部に屈曲可能部を有する内視鏡を挿入して観察する方法が知られている。
【0003】
かかる観察方法においては、図4に示すように、先端部に屈曲可能部Eaを有する内視鏡Eと、内視鏡Eを内挿し、内視鏡Eの体内への挿入を補助するオーバーチューブ51と、オーバーチューブ51の先端部の側壁に開口する側口部52と、オーバーチューブ51の側口部52の先端側に設けられた膨張収縮可能な円環形状のバルーン53とを備える内視鏡装置54が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
内視鏡装置54によって観察する場合には、まず、内視鏡Eをオーバーチューブ51の基端51aからオーバーチューブ51内に挿入し、その状態でオーバーチューブ51を患者の口側から十二指腸に挿入する。次に、内視鏡Eの先端Ebをオーバーチューブ51の先端51bから突出させて内視鏡Eにてファーター乳頭部を確認した後に、オーバーチューブ51を回動させて側口部52をファーター乳頭部に対向する位置に配置する。
【0005】
次に、バルーン53を円環形状に膨張させてバルーン53を十二指腸内壁に密着させることにより、側口部52がファーター乳頭部に対向する位置にオーバーチューブ51を保持する。
【0006】
次に、内視鏡Eの先端Ebをオーバーチューブ51の側口部52に対向する位置まで後退させる。次に、内視鏡Eを回動し、屈曲可能部Eaの屈曲方向を側口部52に合致させる。次に、内視鏡Eを屈曲可能部Eaで屈曲させることにより先端Ebを側口部52から突出させ、先端Ebをファーター乳頭部に挿入する。
【0007】
このファーター乳頭部は、その位置、形が個人によって異なるとともに、口径が小さく、さらに、内視鏡Eが挿入されるファーター乳頭部の側口部は、十二指腸に対して垂直より患者の肛門方向を向いている。そのため、患者の口側から挿入された内視鏡Eは、屈曲可能部EaでJ字状に屈曲させた状態で、先端Ebをファーター乳頭部に挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−22623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記内視鏡装置54では、内視鏡Eを回動し屈曲可能部Eaで屈曲させて、先端Ebをオーバーチューブ51の側口部52から突出させる際に、内視鏡Eが側口部52及びオーバーチューブ51に接触して力が作用する。これにより、側口部52が変形し、あるいはオーバーチューブ51が屈曲するため、内視鏡Eの先端Ebを側口部52から突出させることが困難になる場合があるという不都合がある。
【0010】
また、内視鏡装置54では、内視鏡EをJ字状に屈曲させた状態を予想して、側口部52とファーター乳頭部との位置を合わせてバルーン53を膨張させ固定しなければならない。そのため、バルーン53を固定した位置によっては、内視鏡Eの先端Ebとファーター乳頭部との位置が合わず、先端Ebをファーター乳頭部に挿入することが困難となる場合がある。
【0011】
そこで本発明は、かかる不都合を解消して、内視鏡をファーター乳頭部へ容易に挿入することができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の内視鏡装置は、先端部に屈曲可能部を有する内視鏡と、先端に開口部と先端部の側壁に開口する側口部とを有し該内視鏡を内挿した第1オーバーチューブと、先端に開口部を有し該第1オーバーチューブを内挿した第2オーバーチューブとを備えた内視鏡装置であって、該第1オーバーチューブは、該第2オーバーチューブの開口部から該第1オーバーチューブの側口部が露出されるように突出でき、該第1オーバーチューブは、該側口部より先端側の外周面に膨張及び収縮可能な第1のバルーンを有し、該第2オーバーチューブは、先端部の外周面に膨張及び収縮可能な第2のバルーンを有し、該内視鏡は、該第2オーバーチューブの開口部から該第1オーバーチューブの側口部が露出した状態で、前記屈曲可能部を屈曲させることで該側口部から突出できることを特徴とする。
【0013】
本発明の内視鏡装置では、内視鏡を第1オーバーチューブの基端から第1オーバーチューブ内に挿入し、当該第1オーバーチューブを第2オーバーチューブの基端から第2オーバーチューブ内に挿入し、その状態で第2オーバーチューブを患者の口から十二指腸に挿入する。
【0014】
次に、内視鏡の先端を第1オーバーチューブの開口部から突出させて内視鏡にてファーター乳頭部を確認した後に、第2オーバーチューブの先端をファーター乳頭部より基端側の位置に配置する。
【0015】
そして、第2のバルーンを膨張させて十二指腸内壁に密着させることにより、第2オーバーチューブをファーター乳頭部より基端側の位置で保持する。
【0016】
次に、第1オーバーチューブの先端を第2オーバーチューブの開口部から突出させ、第1オーバーチューブの側口部をファーター乳頭部に対向する位置に配置する。
【0017】
そして、第1のバルーンを膨張させて十二指腸内壁に密着させることにより、第1オーバーチューブを、側口部がファーター乳頭部に対向する位置で保持する。
【0018】
次に、内視鏡の先端を第1オーバーチューブの側口部の位置まで後退させた後、内視鏡を屈曲可能部で屈曲させることにより該先端を側口部から突出させ、該先端をファーター乳頭部に挿入する。
【0019】
したがって、本発明の内視鏡装置では、第2のバルーンが膨張して第2オーバーチューブを十二指腸内壁に保持した状態で、第1オーバーチューブの側口部をファーター乳頭部に内視鏡の先端を挿入するのに適した位置に配置することができる。
【0020】
また、本発明の内視鏡装置では、該第1オーバーチューブは、該第2オーバーチューブの開口部から該第1オーバーチューブの側口部が露出されるように突出され、かつ、第1オーバーチューブの第1のバルーンは該側口部より先端側に設けられると共に、第2のバルーンは、該第2オーバーチューブは、先端部にもうけられている。そのため、該側口部は、軸方向において両バルーンに挟まれ強固に保持されることとなる。したがって、内視鏡が側口部及びオーバーチューブに接触して力が作用する場合であっても、側口部の変形及びオーバーチューブの屈曲を防ぐことができる。
【0021】
この結果、本発明の内視鏡装置によれば、第1オーバーチューブの側口部の位置の調整が容易であり、かつ、内視鏡の先端を該側口部から確実に突出させることができるので、該内視鏡をファーター乳頭部へ容易に挿入することができる。
【0022】
本発明の内視鏡装置において、前記第1のバルーンは、前記第1オーバーチューブの外周面の一部であって該側口部と同側に設けられることが好ましい。
【0023】
前記構成を備える内視鏡装置では、第1のバルーンが第1オーバーチューブの側口部の開口方向に膨張して、該側口部に対向する側の十二指腸内壁に当接する。この結果、第1オーバーチューブは、十二指腸の中心軸よりもファーター乳頭部から離間する側へ偏心して保持されることになる。
【0024】
したがって、本発明の内視鏡装置では、側口部を備える第1オーバーチューブが十二指腸の中心軸よりもファーター乳頭部から離間する側へ偏心して位置しているため、内視鏡をファーター乳頭部へ挿入する際に側口部とファーター乳頭部との間に広い空間を確保することができる。
【0025】
この結果、本発明の内視鏡装置によれば、この広い空間において内視鏡の先端を操作して該先端とファーター乳頭部の位置合わせをすることができるので、該内視鏡をファーター乳頭部へ容易に挿入することができる。
【0026】
ところで、本発明の内視鏡装置において、第1オーバーチューブ内において該第1オーバーチューブに内挿された内視鏡が回動することがある。この場合には、第1オーバーチューブの側口部の位置と内視鏡の屈曲可能部の屈曲方向とがずれて、内視鏡を屈曲させて先端を側口部から突出させることが難しくなることがある。
【0027】
また、本発明の内視鏡装置において、第1オーバーチューブを回動して側口部をファーター乳頭部に対向させたいとき、該第1オーバーチューブが捩れて側口部をファーター乳頭部に対向させることができないことがある。
【0028】
そこで、本発明の内視鏡装置において、前記第1オーバーチューブは、横断面視楕円形状をなす内周面を備え、前記内視鏡は、該楕円形状の長軸方向に突出する少なくとも1つの回り止め部材を前記屈曲可能部の基端側に備えることが好ましい。
【0029】
前記構成によれば、少なくとも1つの回り止め部材が第1オーバーチューブの側壁の内周面に当接することにより、内挿された内視鏡の回動を規制することができる。これにより、第1オーバーチューブの側口部の位置と内視鏡の屈曲可能部の屈曲方向とがずれることを防止することができる。
【0030】
また、前記構成によれば、第1オーバーチューブの側口部をファーター乳頭部に対向させたいときは、第1オーバーチューブとともに内視鏡も合わせて回動させることにより、内視鏡が備える少なくとも1つの回り止め部材を介して、第1オーバーチューブの回動力を側口部周辺に伝えることができる。
【0031】
したがって、本発明の楕円形状の長軸方向に突出する回り止め部材を備える内視鏡装置によれば、先端部に屈曲可能部を有する内視鏡を屈曲させて先端を第1オーバーチューブの側口部からより確実に突出させることができると共に、側口部をファーター乳頭部に確実に対向させることができる。
【0032】
また、前記回り止め部材は、1つであってもよいが、1対とすることも可能である。
【0033】
本発明の楕円形状の長軸方向に突出する回り止め部材を備える内視鏡装置によれば、前記1対の回り止め部材を備えることにより、内挿された内視鏡の回動をさらに確実に規制することができる。
【0034】
また、本発明の内視鏡装置において、前記第1オーバーチューブは、横断面が大円と小円とが結合してなる瓢箪形状をなす内周面を備え、前記内視鏡は、該第1オーバーチューブの大円部の内部に位置し、小円部の内部に突出する回り止め部材を前記屈曲可能部の基端側に備えるものとしてもよい。
【0035】
前記構成によれば、回り止め部材が第1オーバーチューブの小円部の側壁の内周面に当接することにより、内挿された内視鏡の回動を規制することができる。これにより、第1オーバーチューブの側口部の位置と内視鏡の屈曲可能部の屈曲方向とがずれることを防止することができる。
【0036】
したがって、本発明の小円部の内部に突出する回り止め部材を備える内視鏡装置によれば、先端部に屈曲可能部を有する内視鏡を屈曲させて先端を第1オーバーチューブの側口部からより確実に突出させることができる。
【0037】
あるいは、本発明の内視鏡装置において、前記第1オーバーチューブは、前記側口部より基端側の内周面に案内部材を備え、前記内視鏡は、該案内部材に沿って摺動可能に係合する摺動部材を前記屈曲可能部の基端側に備えるものとしてもよい。
【0038】
前記構成によれば、摺動部材を案内部材に沿って摺動させることにより、内挿された内視鏡の回動を確実に規制することができる。これにより、第1オーバーチューブの側口部の位置と内視鏡の屈曲可能部の屈曲方向とを一致させることができる。
【0039】
したがって、本発明の案内部材と摺動部材とを備える内視鏡装置によれば、先端部に屈曲可能部を有する内視鏡を屈曲させて先端を第1オーバーチューブの側口部から極めて確実に突出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(a)は本実施形態の内視鏡装置の説明的断面図であり、図1(b)は図1(a)に示す内視鏡装置に係るオーバーチューブのB−B線断面図。
【図2】本実施形態の内視鏡装置の使用方法を示す説明図。
【図3】本実施形態の内視鏡装置の変形例を示す説明図。
【図4】従来技術の内視鏡装置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、図1を参照して本実施形態に係る内視鏡装置1について説明する。
【0042】
内視鏡装置1は、図1(a)に示すように、先端部に屈曲可能部Eaを有する内視鏡Eと、内視鏡Eを内挿する第1オーバーチューブ10と、第1オーバーチューブ10を内挿し内視鏡Eの体内への挿入を補助する第2オーバーチューブ20とを備えている。
【0043】
第1オーバーチューブ10は、横断面視楕円形状をなす内周面11(図1(b)参照)を有する筒体からなり、先端に開口する第1開口部12と、先端部の側壁に開口する側口部13と、膨張収縮可能な第1バルーン14とを備えている。
【0044】
第2オーバーチューブ20は、横断面視円形状をなす内周面(図1(b)参照)を有する筒体からなり、先端に開口する第2開口部22と、膨張収縮可能な第2バルーン24を備えている。
【0045】
第1バルーン14は、第1オーバーチューブ10の側口部13より先端側の外周面の一部であって、側口部13と同側に設けられている。
【0046】
第1バルーン14は、第1オーバーチューブ10の側壁内に配設された流体通路15を介して、バルーン操作部16に接続されている。第1バルーン14は、バルーン操作部16を操作することによって流体通路15を介して流体が供給又は排出されることにより、側口部13の開口方向に円球状に膨張又は収縮するようになっている。
【0047】
第2バルーン24は、第2オーバーチューブ20の先端部の外周面に設けられている。
【0048】
第2バルーン24は、第2オーバーチューブ20の側壁内に配設された流体通路25を介して、バルーン操作部26に接続されている。第2バルーン24は、バルーン操作部26を操作することによって流体通路25を介して流体が供給又は排出されることにより、円環状に膨張又は収縮するようになっている。
【0049】
内視鏡Eの屈曲可能部Eaの基端側の外周面には、筒状部材30が装着されている。筒状部材30の外周面には、第1オーバーチューブ10の楕円形状の長軸方向に突出する1対の回り止め部材31,31が設けられている。1対の回り止め部材31,31は、図1(b)に示すように、その突出した長さと内視鏡Eの直径との合計Lが、楕円形状の長軸の長さLaよりも短くかつ短軸の長さLbよりも長くなるように形成されている。
【0050】
次に、図2を参照して本実施形態にかかる内視鏡装置1の使用方法について説明する。具体的には、内視鏡装置1を用いて内視鏡Eをファーター乳頭部40に挿入して胆道や膵管を観察する場合について説明する。
【0051】
内視鏡装置1において、まず、内視鏡Eを第1オーバーチューブ10の基端17から第1オーバーチューブ10内に挿入し、当該第1オーバーチューブ10を第2オーバーチューブ20の基端27から第2オーバーチューブ20内に挿入する。その状態で内視鏡装置1を十二指腸に挿入する。
【0052】
次に、内視鏡Eの先端Ebを第1オーバーチューブ10の第1開口部12から突出させて、内視鏡Eにてファーター乳頭部40を確認した後に、第2オーバーチューブ20を前進又は後退させて第2バルーン24をファーター乳頭部40より基端側の位置に配置する。
【0053】
次に、図2(a)に示すように、バルーン操作部26を操作することにより、第2バルーン24に流体を供給し膨張させて、第2バルーン24を十二指腸内壁に密着させる。これにより、第2バルーン24は、ファーター乳頭部40より基端側の位置において第2オーバーチューブ20を保持する。
【0054】
次に、第1オーバーチューブ10を第2オーバーチューブ20の第2開口部22から突出させた後、回動させて第1オーバーチューブの側口部13をファーター乳頭部40に対向する位置に配置する。
【0055】
このとき、本実施形態の内視鏡装置1では、第1オーバーチューブ10とともに内視鏡Eも合わせて回動させることにより、内視鏡Eに設けられた1対の回り止め部材31,31を介して、第1オーバーチューブ10の回動力を側口部13周辺に伝えることができるので、側口部13をファーター乳頭部40に確実に対向させることができる。
【0056】
なお、本実施形態の内視鏡装置1では、回り止め部材31を一対、すなわち2つ備えているが、回り止め部材は1つであってもよい。
【0057】
次に、図2(b)に示すように、バルーン操作部16を操作することにより、第1バルーン14に流体を供給し膨張させて、第1バルーン14を十二指腸内壁に密着させる。これにより、第1バルーン14は、ファーター乳頭部40より先端側の位置において第1オーバーチューブ10を保持する。
【0058】
次に、内視鏡Eの先端Ebを第1オーバーチューブ10の側口部13に対向する位置まで後退させ、屈曲可能部Eaの屈曲方向を側口部13に合致させる。
【0059】
このとき、本実施形態の内視鏡装置1では、内視鏡Eの屈曲可能部Eaの基端側に設けられている1対の回り止め部材31が第1オーバーチューブ10の側壁の内周面11に当接することにより、内挿された内視鏡Eの回動が規制される。
【0060】
したがって、本実施形態の内視鏡装置1では、第1オーバーチューブ10の側口部13の位置と内視鏡Eの屈曲可能部Eaの屈曲方向とがずれることを防止することができる。
【0061】
この結果、本実施形態の内視鏡装置1では、内視鏡Eの先端Ebを第1オーバーチューブ10の側口部13に対向する位置まで後退させるだけで屈曲可能部Eaの屈曲方向を側口部13に合致させることができる。
【0062】
次に、内視鏡Eを屈曲可能部Eaで屈曲させることにより先端Ebを側口部13から突出させる。そして、図2(c)に示すように、内視鏡Eを屈曲可能部Eaでさらに屈曲させてJ字状に維持した状態で、先端Ebをファーター乳頭部40に挿入する。
【0063】
このとき、図2(c)に示すように、内視鏡Eの屈曲可能部Eaの外周面を第1バルーン14に当接させ、第1バルーン14を支点として内視鏡EをJ字状に屈曲させることにより、深部まで挿入することができる。
【0064】
以上に説明したように、本実施形態の内視鏡装置1では、第1オーバーチューブ10は第2オーバーチューブ20に内挿されており、その第1オーバーチューブ10は、第2オーバーチューブ20が先端部に設けられた第2バルーン24により十二指腸内壁に保持された状態で、側口部13をファーター乳頭部40に対向する位置に配置することができる(図2(b)参照)。
【0065】
したがって、本実施形態の内視鏡装置1は、第2バルーン24によって第2オーバーチューブ20が十二指腸内壁に保持された状態で、第1オーバーチューブ10の側口部13をファーター乳頭部40に内視鏡Eの先端Ebを挿入するのに適した位置に極めて容易に配置することができるので、内視鏡Eをファーター乳頭部40へ容易に挿入することができる。
【0066】
また、第2バルーン24によって第2オーバーチューブ20が十二指腸内壁に保持された状態で、第1オーバーチューブ10の側口部13の配置を仮に決定した後で、内視鏡Eを屈曲可能部Eaで屈曲させることにより先端Ebを側口部13から突出させ、ファーター乳頭部40に挿入可能か否か確認してから、第1バルーン14を膨張させて、第1バルーン14を十二指腸内壁に密着させることもできる。
【0067】
さらに、第1バルーン14を膨張させ、第1バルーン14を十二指腸内壁に密着させた後において、側口部13の位置が適切ではなく、内視鏡Eの先端Ebをファーター乳頭部40に挿入するのが困難であった場合には、第2バルーン24によって第2オーバーチューブ20が保持された状態で、第1バルーン14を収縮させ、第1オーバーチューブ10の側口部13の位置を再調整することができる。
【0068】
以上のことからも、本実施形態の内視鏡装置1は、第1オーバーチューブ10の側口部13を、ファーター乳頭部40に内視鏡Eの先端Ebを挿入するのに適した位置に極めて容易に配置することができるので、内視鏡Eをファーター乳頭部40へ容易に挿入することができる。
【0069】
また、本実施形態の内視鏡装置1では、第1オーバーチューブ10の側口部13の先端側に設けられた第1バルーン14に加えて、側口部13を挟んで存在する第2オーバーチューブ20の先端部に設けられた第2バルーン24を備えていることにより、側口部13はファーター乳頭部40に対向する位置で強固に保持されることとなる(図2(b)参照)。
【0070】
したがって、内視鏡Eが側口部13及び第1オーバーチューブ10に接触して力が作用する場合であっても、側口部13の変形及び第1オーバーチューブ10の屈曲を防ぐことができる。
【0071】
この結果、本実施形態の内視鏡装置1は、内視鏡Eを屈曲可能部Eaで屈曲させて、先端Ebを第1オーバーチューブ10の側口部13から確実に突出させることができるので、ファーター乳頭部40への挿入を容易にすることができる。
【0072】
また、本実施形態の内視鏡装置1では、第1バルーン14が側口部13の開口方向に円球状に膨張して、側口部13に対向する側の十二指腸内壁に当接するので、第1オーバーチューブ10が、十二指腸の中心軸よりもファーター乳頭部40から離間する側へ偏心して位置することとなる(図2(b)参照)。
【0073】
したがって、内視鏡Eをファーター乳頭部40へ挿入する際、側口部13とファーター乳頭部40との間に広い空間を確保することができる。
【0074】
この結果、本実施形態の内視鏡装置1は、内視鏡Eをファーター乳頭部40へ容易に挿入することができる。
【0075】
なお、側口部13とファーター乳頭部40との間に広い空間を確保するために、第2バルーン24を円球状に膨張する構成にした場合には、第1オーバーチューブ10と第2オーバーチューブ20とは回動自在であることから、第2バルーン24は第1バルーン14と異なり、側口部13の開口方向以外の方向に膨張することが考えられる。
【0076】
そして、この場合には、第1オーバーチューブ10と第2オーバーチューブ20とに対して、十二指腸側面の異なる方向から圧力が働くことになるため、側口部13が変形する可能性がある。
【0077】
したがって、本実施形態の内視鏡装置1では、第2バルーン24を円環状に膨張させることで側口部13の変形を防止し、先端Ebを第1オーバーチューブ10の側口部13から確実に突出させると共に、第1バルーン14を側口部13の開口方向に円球状に膨張させることで側口部13とファーター乳頭部40との間に広い空間を確保することができる。
【0078】
また、十二指腸内壁に対してチューブが当接する部分があるよりも、チューブが当接する部分がなく、バルーンのみが十二指腸内壁に対して当接したほうが、より強固にチューブを十二指腸内壁に対して保持することができる。したがって、円球状バルーンよりも円環状バルーンの方が、保持力が高い。
【0079】
したがって、本実施形態の内視鏡装置1では、第2バルーン24を円環状に膨張させて、十二指腸内壁に当接して強固に第2オーバーチューブ20を保持すると共に、第1バルーン14を側口部13の開口方向に円球状に膨張させることにより、十二指腸内壁に対する第2オーバーチューブ20の保持力と、第1オーバーチューブ10の側口部13とファーター乳頭部40との間の空間の確保とを両立させることができる。
【0080】
次に、図3を参照して、本実施形態の内視鏡装置1の回り止め部材の変形例について説明する。
【0081】
図3(a)に示すように、第1の変形例では、本実施形態の内視鏡装置1は、第1オーバーチューブ10が横断面視楕円形状をなす内周面11bを有する筒体からなる以外は、図1に示す内視鏡装置1の第1オーバーチューブ10と同一の構成を備えている。当該楕円形状は、長軸方向が開口部13の開口方向に対応している。
【0082】
そして、図3(a)に示すように、内視鏡Eの屈曲可能部Eaの基端側の外周面には、横断面視が下向きに開口するC字状である部材32が装着されている。部材32の側口部13に対向する側の外周面には、第1オーバーチューブ10の内周面11bの楕円形状の長軸方向に突出する1つの回り止め部材33が設けられている。
【0083】
回り止め部材33は、図3(a)に示すように、その突出した長さと内視鏡Eの直径との合計Lが、楕円形状の長軸の長さLaよりも短くかつ短軸の長さLbよりも長くなるように形成されている。
【0084】
第1の変形例において、その他の部分の構成は、図1(a)に示す内視鏡装置1と同一である。
【0085】
変形例1にかかる内視鏡装置1では、内視鏡Eの屈曲可能部Eaの基端側に回り止め部材33が設けられているため、回り止め部材33が第1オーバーチューブ10の側壁の内周面11bに当接することにより、内挿された内視鏡Eの回動を規制することができる。これにより、第1オーバーチューブ10の側口部13の位置と内視鏡Eの屈曲可能部Eaの屈曲方向との関係を一致させることができるので、内視鏡Eをファーター乳頭部40へ容易に挿入することができる。
【0086】
図3(b)に示すように、第2の変形例では、本実施形態の内視鏡装置1は、第1オーバーチューブ10が、横断面視が大円部11dと小円部11eとが結合してなる瓢箪形状をなす内周面11cを有する筒体からなる以外は、図1に示す内視鏡装置1の第1オーバーチューブ10と同一の構成を備えている。当該瓢箪形状は、長軸方向が側口部13の開口方向に対応している。
【0087】
そして、内視鏡Eは、第1オーバーチューブ10の横断面視が瓢箪形状の大円部11dの内部に位置している。内視鏡Eの屈曲可能部Eaの基端側の外周面には、図3(b)に示すように、横断面視が下向きに開口するC字状である部材34が装着されている。部材34の側口部13に対向する側の外周面には、第1オーバーチューブ10の瓢箪形状の小円部11eの内部に突出する1つの回り止め部材35が設けられている。
【0088】
第2の変形例において、その他の部分の構成は、図1に示す内視鏡装置1と同一である。
【0089】
変形例2にかかる内視鏡装置1では、内視鏡Eの屈曲可能部Eaの基端側に回り止め部材35が設けられているため、回り止め部材35が第1オーバーチューブ10の小円部11eの内周面11cに当接することにより、内挿された内視鏡Eの回動を規制することができる。これにより、第1オーバーチューブ10の側口部13の位置と内視鏡Eの屈曲可能部Eaの屈曲方向との関係を一致させることができるので、内視鏡Eをファーター乳頭部40へ容易に挿入することができる。
【0090】
図3(c)に示すように、第3の変形例では、本実施形態の内視鏡装置1は、第1オーバーチューブ10が横断面視円形状をなす内周面11fを有する筒体からなり、長さ方向に対して側口部13の基端側の内周面11fに、長さ方向に沿って設けられた案内部材36を備えている以外は、図1に示す内視鏡装置1の第1オーバーチューブ10と同一の構成を備えている。
【0091】
そして、図3(c)に示すように、内視鏡Eの屈曲可能部Eaの基端側の外周面には、案内部材36に沿って摺動可能に係合した摺動部材37が装着されている。
【0092】
第3の変形例において、その他の部分の構成は、図1に示す内視鏡装置1と同一である。
【0093】
変形例3にかかる内視鏡装置1では、内視鏡Eの屈曲可能部Eaの基端側に設けられた摺動部材37を案内部材36に沿って摺動させることにより、内挿された内視鏡Eの回動が規制することができる。これにより、第1オーバーチューブ10の側口部13の位置と内視鏡Eの屈曲可能部Eaの屈曲方向との関係を確実に一致させることができるので、内視鏡Eをファーター乳頭部40へ容易に挿入することができる。
【符号の説明】
【0094】
1…内視鏡装置、 10…第1オーバーチューブ、 11…内周面、 12…第1開口部、 13…側口部、 14…第1バルーン、 20…第2オーバーチューブ、 22…第2開口部、 24…第2バルーン、 31…回り止め部材、 33…回り止め部材、 35…回り止め部材、 36…案内部材、 37…摺動部材、 E…内視鏡、 Ea…屈曲可能部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に屈曲可能部を有する内視鏡と、先端に開口部と先端部の側壁に開口する側口部とを有し該内視鏡を内挿した第1オーバーチューブと、先端に開口部を有し該第1オーバーチューブを内挿した第2オーバーチューブとを備えた内視鏡装置であって、
該第1オーバーチューブは、該第2オーバーチューブの開口部から該第1オーバーチューブの側口部が露出されるように突出でき、
該第1オーバーチューブは、該側口部より先端側の外周面に膨張及び収縮可能な第1のバルーンを有し、
該第2オーバーチューブは、先端部の外周面に膨張及び収縮可能な第2のバルーンを有し、
該内視鏡は、該第2オーバーチューブの開口部から該第1オーバーチューブの側口部が露出した状態で、前記屈曲可能部を屈曲させることで該側口部から突出できることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記第1のバルーンは、前記第1オーバーチューブの外周面の一部であって該側口部と同側に設けられることを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記第1オーバーチューブは、横断面視楕円形状をなす内周面を備え、
前記内視鏡は、該楕円形状の長軸方向に突出する少なくとも1つの回り止め部材を前記屈曲可能部の基端側に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記内視鏡は、1対の前記回り止め部材を備えることを特徴とする請求項3記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記第1オーバーチューブは、横断面が大円と小円とが結合してなる瓢箪形状をなす内周面を備え、
前記内視鏡は、該第1オーバーチューブの大円部の内部に位置し、小円部の内部に突出する回り止め部材を前記屈曲可能部の基端側に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記第1オーバーチューブは、前記側口部より基端側の内周面に案内部材を備え、
前記内視鏡は、該案内部材に沿って摺動可能に係合する摺動部材を前記屈曲可能部の基端側に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−224047(P2011−224047A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94408(P2010−94408)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(509186421)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】