説明

内視鏡装置

【課題】 圧電振動子へ数ワットから数十ワットの電力量を有する駆動信号を供給しながらも、モニタに映し出される画像にノイズ成分の出現を低減する内視鏡装置の提供。
【解決手段】 内視鏡装置1は、挿入部先端に撮像用光学系に対向して設けられた透明部材32と、透明部材32に設けられ、超音波振動fを発生する圧電振動子37と、操作信号を出力する操作回路61と、透明部材32に設けられ、圧電振動子37で発生した超音波振動fを透明部材32の外表面に伝播する表面弾性波Φに変換する回折格子40と、圧電振動子37を駆動する駆動信号を供給する駆動信号供給系55と、被験者の身体映像を撮像する撮像素子34と、撮像素子34の映像出力信号が出力されていない期間内のみに駆動信号供給系の駆動信号の立ち上げを行うように制御する制御部52と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察窓表面に付着する汚れを容易に除去するとともに、モニタ画面上のノイズ出現を減少させることで、より一層観察性を向上させた内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年低侵襲医療を目的として内視鏡を用いた外科手術が普及している。このような内視鏡下の手術においては、血液、脂などの汚れ飛散が起こりやすく、それらが、内視鏡の観察窓に付着することによって、視野が妨げられることが課題となっている。
【0003】
この課題に対する対策としては、例えば、特許文献1に開示された内視鏡装置の技術が知られている。この特許文献1には、内視鏡装置の観察窓に付着した汚れを、超音波振動またはそれを回折格子によって変換した表面弾性波によって、取り除く方法が提案されている。
【0004】
従来の内視鏡装置では、観察窓となるガラス板の外表面に偏向部として断面形状が矩形状の回折格子形状の溝が形成されており、この回折格子形状の溝の形成面(外表面)からガラス板の圧電振動子の貼着面(内表面)に向けて溝を投影した時に、圧電振動子の少なくとも一部の表面が溝の投影領域内に位置している。
【0005】
このガラス板では、圧電振動子により発生した超音波振動が、回折格子形状の溝により回折(偏向)されて、少なくとも一部がガラス板の前述の中心方向、つまり、撮像ユニット34の観察視野領域と対向する部分の中心方向に効率的に伝播するようになり、効率よく、ガラス板上の汚れを除去することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−254571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、体液などを除去するために、圧電振動子へ数ワットから数十ワットの電力量を有する駆動信号を供給する必要があるため、内視鏡装置内部において、ノイズの発生が起こり易いという問題があった。従来の内視鏡装置は、このようなノイズの発生を考慮しておらず、発生したノイズによって、モニタに映し出される画像にノイズ成分が現れてしまい、ユーザによる観察を妨げるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、圧電振動子へ数ワットから数十ワットの電力量を有する駆動信号を供給しながらも、モニタに映し出される画像にノイズ成分の出現を低減することのできる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における一態様の内視鏡装置は、挿入部先端に撮像用光学系に対向して設けられた透明部材と、前記透明部材に設けられ、超音波振動を発生する圧電振動子と、前記圧電振動子の駆動を指示操作する操作スイッチの操作に基づき操作信号を出力する操作回路と、前記透明部材に設けられ、前記圧電振動子で発生した前記超音波振動を前記透明部材の外表面に伝播する表面弾性波に変換する回折格子と、前記圧電振動子を駆動する駆動信号を供給する駆動信号供給系と、被験者の身体映像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の映像出力信号が出力されていない期間内のみに前記駆動信号供給系の駆動信号の立ち上げを行うように制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧電振動子へ数ワットから数十ワットの電力量を有する駆動信号を供給しながらも、モニタに映し出される画像にノイズ成分の出現を低減することのできる内視鏡装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡システムの全体構成図
【図2】同、内視鏡システムの内部構成を主に示すブロック図
【図3】同、硬性内視鏡の先端部分の構成を示す断面図
【図4】同、図3のIV−IV線断面図
【図5】同、送水シースの先端部分の構成を示す断面図
【図6】同、図5の矢視VI方向の送水シースの構成を示す平面図
【図7】同、硬性内視鏡の挿入部が送水シースに挿通配置された状態を示す先端部分の斜視図
【図8】同、硬性内視鏡の先端部分の構成を示す部分断面図
【図9】同、制御部が実行するメインルーチン制御のフローチャート
【図10】同、制御部が実行するサブルーチン制御のフローチャート
【図11】同、操作信号に基づいた、撮像装置の映像出力信号における垂直電荷転送に応じた圧電振動子への駆動信号の状態を示すタイミングチャート
【図12】同、操作信号に基づいた、撮像装置の映像出力信号における水平電荷転送に応じた圧電振動子への駆動信号の状態を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明である内視鏡装置について説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0013】
先ず、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、例えば、腹腔鏡下外科手術を行う硬性内視鏡を例示する。また、本発明は、硬性内視鏡に限らず、生体管腔内に挿通する各種内視鏡に適用可能な構成である。
【0014】
また、図1から図12は本発明の一実施の形態に係り、図1は内視鏡システムの全体構成図、図2は内視鏡システムの内部構成を主に示すブロック図、図3は硬性内視鏡の先端部分の構成を示す断面図、図4は図3のIV−IV線断面図、図5は送水シースの先端部分の構成を示す断面図、図6は図5の矢視VI方向の送水シースの構成を示す平面図、図7は硬性内視鏡の挿入部が送水シースに挿通配置された状態を示す先端部分の斜視図、図8は硬性内視鏡の先端部分の構成を示す部分断面図、図9は制御部が実行するメインルーチン制御のフローチャート、図10は制御部が実行するサブルーチン制御のフローチャート、図11は操作信号に基づいた、撮像装置の映像出力信号における垂直電荷転送に応じた圧電振動子への駆動信号の状態を示すタイミングチャート、図12は操作信号に基づいた、撮像装置の映像出力信号における水平電荷転送に応じた圧電振動子への駆動信号の状態を示すタイミングチャートである。
【0015】
図1および図2に示すように、本実施の形態の内視鏡装置である内視鏡システム1は、硬性内視鏡(以下、単に内視鏡という)2と、この内視鏡2の挿入部11が内部に挿通配置される洗浄液供給手段を構成する送水シース3と、カメラコントロールユニット(CCU)5と、光源装置4と、モニタ(装置)6と、によって、主に構成されている。なお、CCU5、光源装置4およびモニタ6は、体外装置を構成している。
【0016】
内視鏡2は、硬質な挿入部11に連設された操作部12と、この操作部12に設けられたスイッチ類13と、操作部12から延出する複合ケーブルであるユニバーサルケーブル14と、このユニバーサルケーブル14の延出端に配設された光源コネクタ15と、この光源コネクタ15の側部から延出する電気ケーブル16と、この電気ケーブル16の延出端に配設された電気コネクタ17と、を有して構成されている。なお、光源コネクタ15は、光源装置4に着脱自在に接続される。また、電気コネクタ17は、CCU5に着脱自在に接続されている。
【0017】
CCU5は、光源装置4およびモニタ6に電気的に接続されている。このCCU5は、内視鏡2が撮像した画像データを映像信号化して、モニタ6に表示させる。さらに、CCU5は、内視鏡2の操作部12に配設されたスイッチ類13の操作信号が入力され、これら信号に基づいて、光源装置4を制御したり、生理的食塩水などの洗浄水が貯留された送水装置である送水タンク24にCCU5からエアーを送り、この送水タンク24内の洗浄水を送水シース3に送液制御したりするための制御手段である制御装置を構成している。なお、送水タンク24は、CCU5に着脱自在な送気コネクタ26が端部に設けられた送気チューブ25が接続されている。
【0018】
次に、内視鏡システム1の主に内部構成について、図2に基づいて、以下に説明する。
CCU5は、各回路および各ユニットへ電源供給するための電源51と、各処理を行う処理回路(CPU)を備えた制御部52と、制御部52からの制御信号を受けて、電源51や回路などとの接続を切替えるスイッチ回路53と、処理アルゴリズムなどを格納するメモリ54と、圧電振動子37へ駆動信号を出力する電源供給系である駆動信号供給系55と、挿入部11の先端部分に配置される撮像ユニット34にクロック信号、制御信号などを送るタイミング発生回路56と、撮像ユニット34から画像信号が入力され、画像処理を行い、モニタ6へ画像処理を受けた画像信号を出力する画像処理回路57と、を備えている。
【0019】
なお、駆動信号供給系55は、基準信号を生成する信号発生回路58と、この信号発生回路58からの信号を挿入部11の先端部分に配置される圧電振動子37の駆動に必要な電力量を有する駆動信号へ増幅する増幅回路59と、を備えている。この駆動信号供給系55の信号発生回路58および増幅回路59は、それらの状態が検出回路60によってモニタされている。また、駆動信号供給系55は、制御部52により制御信号が入力され、信号発生回路58および増幅回路59が制御される。検出回路60は、信号発生回路58および増幅回路59のモニタ結果を検出信号として、制御部52に出力する。
【0020】
操作部12は、送水と共に表面弾性波Φ(図8参照)の発生/停止の指示を与えるスイッチ類13の操作に基づき入力信号が入力され、操作信号を制御部52へ出力する操作回路61を備えている。なお、CCU5は、ここでは不図示のポンプ制御回路と、コンプレッサであるポンプと、を有している。
【0021】
光源装置4は、ハロゲンランプなどの光源と、この光源を駆動する光源制御回路と、を有して構成されている(いずれも不図示)。なお、光源制御回路は、CCU5の制御部52と電気的に接続されて、この制御部52により制御される。
【0022】
次に、内視鏡2の挿入部11の先端部分の構成について、図3および図4に基づいて、以下に説明する。
内視鏡2の挿入部11は、図3および図4に示すように、挿入部外装を構成する金属製の管状部材31の先端に、観察窓であるここでは略円盤状のガラス板の透明部材32が接着剤を介して接合されている。
【0023】
管状部材31の内部には、撮像用光学系を含む上述した撮像ユニット34と、ここでは2本の照明用のライトガイド33が配置されている。撮像ユニット34の内部には、詳細には図示しないが、結像用光学系、固体撮像素子およびそのドライバチップが組み込まれており、通信ケーブル35が根元方向へ引き出されている。
【0024】
また、透明部材32の内表面(裏面)には、観察視野を妨げない位置、つまり対向配置された撮像ユニット34の外方(ここでは外周一部から所定距離だけ離間した方向)の一領域側に、例えば、PZTからなる矩形状の圧電振動子37が貼着されている。圧電振動子37には、配線36が接続され、電気的に駆動されるようになっている。つまり、圧電振動子37には、加振のための電圧を供給する配線36が内視鏡2の根元方向に引き出されている。また、圧電振動子37の透明部材32への固定は、接着剤による固定に限定することなく、半田などを用いてもよい。さらに、管状部材31と透明部材32とを、ビス留め固定しても良い。この圧電振動子37は、その共振周波数または共振周波数近傍で駆動され、超音波振動fを透明部材32内に発生させる(図8参照)。
【0025】
透明部材32は、図3(図8)に示すように、内表面(裏面)に貼着された圧電振動子37に対向した外表面の位置に、超音波振動fを回折して表面弾性波Φに変換(偏向)する偏向部の回折格子40が設けられている。ここでの回折格子40は、透明部材32の外表面に形成された断面矩形状の複数の凹凸、ここでは5つの溝部40aである(図8参照)。これら溝部40aは、透明部材32の外表面に等間隔で並列形成され、それぞれが平行な直線凹部状の溝である。
【0026】
上述の圧電振動子37から発生された超音波振動は、主として圧電振動子37の貼着面(透明部材32の内表面)に垂直な方向に伝播し、圧電振動子37に対向した透明部材32の回折格子40に入射する。この回折格子40に入射した超音波振動fは、回折格子40により透明部材32の外表面を伝播する表面弾性波Φに変換(偏向)される(図8参照)。
【0027】
また、内視鏡2の構成部品は、管状部材31と、接合された透明部材32によって封止されており、高圧蒸気による滅菌処理に耐え得る構造となっている。
さらに、本実施形態においては、透明部材32の撮像ユニット34の撮像光学系と対向する内表面は平面状としているが、撮像光学系に対向する面の一部が凸レンズ状もしくは凹レンズ形状として、撮像光学系の一部を構成しても良い。
【0028】
また、本実施の形態のライトガイド33は、ユニバーサルケーブル14へ延設され、ライトガイド33が光源コネクタ15で終端されている。そして、通信ケーブル35および配線36が電気ケーブル16を介して、電気コネクタ17に接続されている。
【0029】
つまり、内視鏡2は、ユニバーサルケーブル14および電気ケーブル16を介して、ライトガイド33が光源制御回路を含む光源装置4の光源に、撮像ユニット34から引き出された通信ケーブル35がCCU5の画像処理回路57に、圧電振動子37から引き出された配線36がCCU5の加振手段を構成する駆動信号供給系55に、夫々接続される構成となっている。
【0030】
次に、送水シース3について図1、図5および図6に基づいて、以下に説明する。
送水シース3は、先端部材を備えた被覆チューブ21と、この被覆チューブ21の基端に連設された接続部22と、この接続部22の側部から延出する送水チューブ23と、を有して構成されている。なお、送水チューブ23の延出端は、送水タンク24に接続されている。この送水タンク24には、CCU5の送気コネクタ26に一端が接続された送気チューブ25の他端が接続されている。
【0031】
送水シース3の被覆チューブ21は、チューブ本体41と、このチューブ本体41の先端に嵌着された略円筒形状の先端部材42と、を有して構成されている。チューブ本体41の肉厚部分の一部には、送水用の断面円形状の送水路43が1つ形成されている。この送水路43は、接続部22まで配設され、この接続部22を介して送水チューブ23と連通している。
【0032】
先端部材42は、チューブ本体41の送水路43に対向する位置の開口端面に沿った板体である、ひさし部44を有している。
【0033】
このように構成された送水シース3は、送水路43が送水タンク24と送水チューブ23を介して連通するように接続される。そして、送水タンク24内の洗浄水である生理食塩水などは、ポンプ制御回路によって制御されるポンプからのエアーにより送水タンク24内の圧力が上昇されることで、送水路43中に送液されて内視鏡先端部へ流れるようになっている。
【0034】
以上に説明した本実施の形態の内視鏡システム1は、図7に示すように、内視鏡2の挿入部11が送水シース3の被覆チューブ21に挿通配置され、例えば、腹腔鏡下外科手術に用いられる。
【0035】
ここで、内視鏡システム1の使用時において、圧電振動子37の駆動制御の一例について、図9および図10のフローチャートにおけるルーチン(ステップS)に従い実行され、さらに図11および図12を用いて、その制御例を以下に説明する。
【0036】
先ず、図9に示す、ステップS1において、制御部52は、操作回路61からの操作信号の状態、つまり信号入力があるか否かを判断する。ユーザにより表面弾性波の発生を意図するON操作がスイッチ類13を用いてなされると、操作回路61からの操作信号の電圧レベルがハイ(High)となり、ステップS2の処理(サブルーチン)のループ処理(繰り返し処理)を実行する。
【0037】
なお、スイッチ類13が非操作(OFF操作)の信号非入力の状態となる、操作回路61からの操作信号の電圧レベルがロー(Low)の場合、制御部52は、ステップS2のループ処理に移行しない、またはこのループ処理から抜ける。
【0038】
ステップS2において、制御部52は、図10に示すサブルーチンの制御を実行する。ステップS11において、検出回路60は、ここでのCCDである固体撮像素子(CMOSでも良い)のCCD駆動信号の出力における立ち下がりをモニタする。検出回路60がCCD駆動信号の立ち下がりの検出信号が入力された制御部52は、ステップS12〜ステップS17において、駆動信号供給系55が圧電振動子37へ圧電振動子37の駆動に必要な電力量を有する振動子駆動信号を出力するように制御する。
【0039】
詳述すると、先ず、ステップS12において、制御部52は、駆動信号供給系55を制御して、振動子駆動信号の立ち上がりをCCD駆動信号の立ち下がりよりも、所定の時間(微小時間)Δtだけ、遅れるように、ディレイ(時間遅れ)を設定する(図11または図12参照)。次に、カウントiをリセットする(ステップS13)。
【0040】
そして、制御部52は、駆動信号供給系55に圧電振動子37を駆動する振動子駆動信号を供給させる(ステップS14)。次いで、制御部52は、振動子駆動信号の立ち下がりが、CCD駆動信号の立ち上がりよりも、所定の時間(微小時間)Δt’だけ早くなるよう時間量THに応じた所定のカウント値Xをメモリ54に設定する(図11または図12参照)。
【0041】
制御部52は、メモリ54に設定したカウントiが所定のカウント値Xに応じた時間量TH(図11または図12参照)だけ、駆動信号供給系55から圧電振動子37への振動子駆動信号の供給を行うように制御する(ステップS14〜ステップS16)。そして、制御部52は、時間量THが経過したとき、駆動信号供給系55から圧電振動子37への振動子駆動信号の供給を停止するように制御する(ステップS17)。
【0042】
以上のサブルーチンが実行されると、図9のメインルーチンに移行し、制御部52は、ステップS3を実行する。このステップS3においては、制御部52は、検出回路60の検出信号から駆動信号供給系55の振動子駆動信号の供給状態を把握するものである。
【0043】
このとき、制御部52は、駆動信号供給系55が振動子駆動信号の供給をしているようであれば、ステップS4において、駆動信号供給系55の振動子駆動信号の供給を停止させ、メインルーチンを終了する。ただし、通常の内視鏡システム1の使用状態において、図9に示したメインルーチンは繰り返し走らせておく。
【0044】
ここで、さらに詳しく、図11または図12に基づいて映像出力信号の垂直/水平ブランキング期間VBI/HBIに応じて振動子駆動信号を供給停止するそれぞれ3つの例を説明する。
先ず、図11に示す映像出力信号の垂直ブランキング期間VBIおよび垂直有効映像期間に応じて振動子駆動信号を供給停止する3つの例を説明する。
【0045】
(例1)
制御部52は、駆動信号供給系55からの振動子駆動信号を、映像出力信号の垂直ブランキング期間VBIにおいてのみ供給し、その立ち上がりおよび立ち下りを同一の垂直ブランキング期間VBI内で行なうように制御する。つまり、圧電振動子37を駆動する振動子駆動信号は、駆動信号供給系55から垂直ブランキング期間VBIよりも短い時間量THだけ圧電振動子37に出力され、映像出力信号の垂直有効映像期間内においては圧電振動子37に出力されないように制御される。
【0046】
(例2)
制御部52は、駆動信号供給系55からの振動子駆動信号を、映像出力信号の2つの垂直ブランキング期間VBIを跨いで供給し、その振動子駆動信号の立ち上がりおよび立ち下りを異なる垂直ブランキング期間VBIで行なうように制御する。ここでは、振動子駆動信号は、立ち上げられた垂直ブランキング期間VBIから1つの垂直有効映像期間を超えて、駆動信号供給系55から時間量THだけ圧電振動子37に出力され、1つの垂直有効映像期間の直後の垂直ブランキング期間VBIで立ちさげられるように制御される。
【0047】
(例3)
制御部52は、駆動信号供給系55からの振動子駆動信号を、映像出力信号の複数の垂直ブランキング期間VBIを跨いで供給し、その振動子駆動信号の立ち上がりおよび立ち下りを異なる垂直ブランキング期間VBIで行なうように制御する。ここでは、振動子駆動信号は、立ち上げられた垂直ブランキング期間VBIから複数、ここでは2つの垂直有効映像期間を超えて、駆動信号供給系55から時間量THだけ圧電振動子37に出力され、2つの垂直有効映像期間を経過した直後の垂直ブランキング期間VBI内で立ちさげられるように制御される。
【0048】
さらに、図11の垂直電荷転送におけるタイミングチャートと同様にして、図12に示すように、映像出力信号の水平ブランキング期間HBIおよび水平有効映像期間に応じて振動子駆動信号を供給停止する場合の3つの例を説明する。
【0049】
(例1´)
制御部52は、駆動信号供給系55からの振動子駆動信号を、映像出力信号の水平ブランキング期間HBIにおいてのみ供給し、その立ち上がりおよび立ち下りを同一の水平ブランキング期間HBI内で行なうように制御する。つまり、駆動信号供給系55から水平ブランキング期間HBIよりも短い時間量THだけ圧電振動子37に出力され、映像出力信号の水平有効映像期間内においては圧電振動子37に出力されないように制御される。(例2´)
制御部52は、駆動信号供給系55からの振動子駆動信号を、映像出力信号の2つの水平ブランキング期間HBIを跨いで供給し、その振動子駆動信号の立ち上がりおよび立ち下りを異なる水平ブランキング期間HBIで行なうように制御する。ここでも、振動子駆動信号は、立ち上げられた水平ブランキング期間HBIから1つの水平有効映像期間を超えて、駆動信号供給系55から時間量THだけ圧電振動子37に出力され、1つの水平有効映像期間の直後の水平ブランキング期間HBIで立ちさげられるように制御される。
【0050】
(例3´)
制御部52は、駆動信号供給系55からの振動子駆動信号を、映像出力信号の複数の水平ブランキング期間HBIを跨いで供給し、その振動子駆動信号の立ち上がりおよび立ち下りを異なる水平ブランキング期間HBIで行なうように制御する。ここでも、振動子駆動信号は、立ち上げられた水平ブランキング期間HBIから複数、ここでは2つの水平有効映像期間を超えて、駆動信号供給系55から時間量THだけ圧電振動子37に出力され、2つの水平有効映像期間を経過した直後の水平ブランキング期間HBI内で立ちさげられるように制御される。
【0051】
なお、上述の所定のカウント値Xは、CCD(CMOSでも良い)の垂直/水平ブランキング期間(垂直/水平帰線期間ともいう)VBI/HBIに応じた時間量より短いものとする。そして、所定の時間(微小時間)Δt、Δt’および時間量THは、図11または図12のもので、異なっていてもよい。
【0052】
以上に説明しように、本実施の形態の内視鏡システム1は、圧電振動子37へ数ワットから数十ワットの電力量を有する振動子駆動信号の供給開始停止時期(立ち上げおよび立ち下げ)を制御部52により、映像出力信号における垂直/水平ブランキング期間VBI/HBI内のみに行なうように制御している。これにより、振動子駆動信号によって映像出力信号へノイズの発生などの悪影響が起こり難くなる。そのため、モニタ装置6に映し出される画像にノイズが生じることを防止できる。
【0053】
以上から内視鏡システム1は、圧電振動子37へ数ワットから数十ワットの電力量を有する振動子駆動信号を供給しながらも、モニタ装置6に映し出される画像にノイズ成分の出現を低減することができる構成となっている。なお、振動子駆動信号は、立ち上げ時のほうが映像出力信号へノイズの発生などの悪影響を与え易いため、振動子駆動信号の供給開始時期(立ち上げ)のみを垂直/水平ブランキング期間VBI/HBI内で行なうように制御しても、十分に上述の効果を得ることができる。
【0054】
以上の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0055】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出される得るものである。
【符号の説明】
【0056】
1…内視鏡システム
2…内視鏡
3…送水シース
4…光源装置
6…モニタ装置
11…挿入部
12…操作部
13…スイッチ類
14…ユニバーサルケーブル
15…光源コネクタ
16…電気ケーブル
17…電気コネクタ
21…被覆チューブ
22…接続部
23…送水チューブ
24…送水タンク
25…送気チューブ
26…送気コネクタ
31…管状部材
32…透明部材
33…ライトガイド
34…撮像ユニット
35…通信ケーブル
36…配線
37…圧電振動子
40…回折格子
40a…溝部
41…チューブ本体
42…先端部材
43…送水路
44…ひさし部
51…電源
52…制御部
53…スイッチ回路
54…メモリ
55…駆動信号供給系
56…タイミング発生回路
57…画像処理回路
58…信号発生回路
59…増幅回路
60…検出回路
61…操作回路
f…超音波振動
HBI…水平ブランキング期間
i…カウント
TH…時間量
VBI…垂直ブランキング期間
HBI…水平ブランキング期間
X…カウント値
Φ…表面弾性波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部先端に撮像用光学系に対向して設けられた透明部材と、
前記透明部材に設けられ、超音波振動を発生する圧電振動子と、
前記圧電振動子の駆動を指示操作する操作スイッチの操作に基づき操作信号を出力する操作回路と、
前記透明部材に設けられ、前記圧電振動子で発生した前記超音波振動を前記透明部材の外表面に伝播する表面弾性波に変換する回折格子と、
前記圧電振動子を駆動する駆動信号を供給する駆動信号供給系と、
被験者の身体映像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子の映像出力信号が出力されていない期間内のみに前記駆動信号供給系の駆動信号の立ち上げを行うように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記撮像素子の前記映像出力信号が出力されていない期間のみに前記駆動信号供給系の前記駆動信号の立ち下げを行うように制御することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記撮像素子の前記映像出力信号が出力されている期間内では前記駆動信号供給系の前記駆動信号の供給を行わないように制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記撮像素子の前記映像出力信号が出力されていない期間は、少なくとも前記撮像素子の垂直ブランキング期間を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記撮像素子の前記映像出力信号が出力されていない期間は、少なくとも前記撮像素子の水平ブランキング期間を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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