説明

内視鏡

【課題】十分に径が細く、かつ前方から側方まで広範囲に渡って体内を観察できることで手術の作業性向上につながり、また簡便な光学系を有することで使い捨て可能である内視鏡を提供する。
【解決手段】光学系を内蔵した内視鏡1であって、体腔内に挿入される長尺体11と、前記長尺体11の先端側の端部に配置された撮像部12と、を有し、前記撮像部12は、前記内視鏡1の長手方向に沿って撮像面124が配置された撮像素子125と、前記内視鏡1の長手方向に対して光の入射する面126が斜めに配置されて、前記撮像面124に観察範囲A〜Dの画像を結像する光学レンズ127と、前記光学レンズ127の光の入射する面126に設けられ、前記撮像面124に光が入射する穴部131が形成された絞り部材128と、を有する内視鏡1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年医療分野にて、先端に光学系を内蔵する内視鏡を、観察対象の内部に挿入することによって、観察、処置及び治療を行っている。従来から、手術の簡素化のために、十分に径が細く、進行方向(前方部)が見えつつ、病巣部が存在する側方部を観察できるような内視鏡のニーズが高い。上記のような内視鏡として、例えば特許文献1には、内視鏡の先端部に前方・側方の画像情報を得るための超広角レンズを有し、得られた像を光ファイバーを介して、内視鏡の外に配置される撮像素子に伝送する内視鏡が記載されている。また、特許文献2には、超広角レンズの機能を発揮する複数枚のレンズから構成されたレンズシステムを備え、該レンズシステムは内視鏡の長手方向に対して光の入射する面が斜めになるように配置され、得られた像をそのままリレーレンズを介して、撮像素子に伝送する内視鏡が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−290777号公報
【特許文献2】特開2010−17552号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡は、従来から光学系が複雑であるために、サイズが大きくかつ高価である。特許文献1や特許文献2に記載の内視鏡についても、光学系として複数枚のレンズシステムを備えており、かつ光ファイバーやリレーレンズを介して像を撮像素子に送っているために、サイズが大きくかつ高価である。一般的に内視鏡などのような医療用デバイスは、使い捨て可能にして衛生上の安全を図るのが理想であるが、特許文献1や特許文献2に記載の内視鏡は高価であるために使い捨ては難しい。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、十分に径が細く、かつ前方から側方まで広範囲に渡って体内を観察できることで手術の作業性向上につながり、また簡便な光学系を有することで使い捨て可能である内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明に係る内視鏡は、光学系を内蔵した内視鏡であって、体腔内に挿入される長尺体と、前記長尺体の先端側の端部に配置された撮像部と、を有し、前記撮像部は、前記内視鏡の長手方向に沿って撮像面が配置された撮像素子と、前記内視鏡の長手方向に対して光の入射する面が斜めに配置されて、前記撮像面に観察範囲の画像を結像する光学レンズと、前記光学レンズの光の入射する面に設けられ、前記撮像面に光が入射する穴部が形成された絞り部材と、を有する内視鏡である。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成された内視鏡であれば、撮像素子の撮像面が内視鏡の長手方向に沿って配置されているために、内視鏡の径を小さくしつつ、内視鏡の長手方向に対して光の入射する面が斜めになるように光学レンズが配置されているため、内視鏡を挿入していく方向に対して、前方・側方の画像情報を得ることができる。よって、前方に注意しながら内視鏡を挿入していくことができ、また側方部に存在する病変部を観察することができるために、手術の作業性向上につながる。また、内視鏡の内部に撮像素子を備えていることから、像を外部に伝達するための光ファイバーやリレーレンズが不要となり、特許文献1や特許文献2に記載の内視鏡と比較してコストを抑えることができ、使い捨て可能な内視鏡の提供を行うことができる。
【0008】
前記光学レンズは、前記絞り部材の穴部の中心点が前記撮像面の中心点より前記内視鏡の先端側となるように配置されれば、より広角な範囲を撮像面に取り込むことができるため、より広角な範囲を観察することができ、手術の作業性向上につながる。
【0009】
前記光学レンズは球面レンズであれば、光学レンズの製造が容易で安価となることから、内視鏡としても安価となり、使い捨て可能である内視鏡を提供することができる。
【0010】
前記球面レンズのF値が3.2以上であれば、焦点深度が大きくなるために、大きくピントぼけすることなく、鮮明な画像を得ることができ、手術の作業性向上につながる。
【0011】
前記光学レンズは回転対称となる軸が存在する非球面レンズであれば、光学レンズの製造が容易で安価となることから、内視鏡としても安価となり、使い捨て可能である内視鏡を提供することができる。
【0012】
前記光学レンズの回転対称となる軸に対して、前記絞り部材の穴部を基端側にオフセットして配置すれば、撮像面において、絞り部材の穴部の中心からの距離や方向が異なる観察範囲の画像を、前方、側方およびその間の3ヶ所以上で結像することができることから、鮮明な画像を得ることができ、手術の作業性向上につながる。
【0013】
前記光学レンズは、回転対称となる軸が存在しない回転非対称なレンズであって、前記絞り部材の穴部の中心から前記撮像面までの光路長が短いほど、当該光路上の前記光学レンズの光の出射する面の曲率半径が小さければ、撮像面において、絞り部材の穴部の中心からの距離や方向が異なる観察範囲の画像を同時に得ることができ、手術の作業性向上につながる。
【0014】
前記内視鏡の長手方向に沿って前記撮像面の長手方向が配置されれば、撮像面全体に観察範囲の画像が結像するような光学レンズを用いることで、より画素数の高い鮮明な画像を得ることができ、手術の作業性向上につながる。
【0015】
前記光学レンズは、1枚のレンズのみから構成されれば、内視鏡が安価となり、使い捨て可能である内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る内視鏡を用いたシステム全体の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡の光学レンズ、撮像素子及び絞り部材を示し、さらに観察範囲からの光が、光学レンズを通過して撮像面に到達するまでの光路を示した概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡を用いて得られる画像の一例を示した図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡の光学レンズ、撮像素子及び絞り部材を示し、さらに観察範囲からの光が、光学レンズを通過して撮像面に到達するまでの光路を示した概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡の絞り部材の他の配置例を示した概略図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る内視鏡の光学レンズ、撮像素子及び絞り部材を示し、さらに観察範囲からの光が、光学レンズを通過して撮像面に到達するまでの光路を示した概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係る内視鏡の撮像素子の他の配置例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る内視鏡の光学レンズを複数枚使用する場合の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、以下の説明において、内視鏡の手元操作部側を「基端側」、体腔内へ挿通される側を「先端側」と称する。
【0018】
<第1実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る内視鏡1は、図1に示すように、後述する制御部8及び表示部9とともに用いることで、体腔内の画像を得ることができる。
【0019】
以下、内視鏡1について説明する。
【0020】
本発明の第1の実施形態に係る内視鏡1は、図2及び3に示すように、体腔内に挿入される長尺な長尺体11と、長尺体11の先端側の端部に配置された撮像部12と、を有する。
【0021】
長尺体11は、内部を貫通する中空部111を有する、可撓性を備えた例えば樹脂製の管体である。長尺体11の外径は1mm以下が好ましいが、これに限定されない。
【0022】
撮像部12は、筒状のケース121と、ケース121の先端側に設けられる窓部122と、窓部122に併設され体腔内を照らすための光源123と、ケース121の内部に設けられ内視鏡1の長手方向に沿って撮像面124の長手方向が配置される撮像素子125と、ケース121の先端側に設けられ内視鏡1の長手方向に対して光の入射する面126(以下、入射面と称する場合がある)が斜めになるように配置された光学レンズ127と、光学レンズ127の入射面126側に設けられた絞り部材128と、を有している。
【0023】
絞り部材128は金属の薄板に穴を開けたもので良いが、印刷やレーザー加工でレンズに直接加工しても良く、穴以外の部分が遮光されれば良いので、蒸着やエッチング等を利用してもよい。
【0024】
撮像部12では、光源123から照射された光が、透明な窓部122を透過して体腔内を照らす。次に、図2に示す観察範囲A〜Dからの光が、光学レンズ127を介して撮像面124に導かれ、撮像素子125によって電気信号に変換される。撮像素子125によって変換された電気信号はケーブル129を介して、外部に伝送される。なお、観察範囲A〜Dのうち、A及びBは前方部を示し、C及びDは側方部を示している。
【0025】
ケース121の材質は樹脂や金属などが好ましいが、これに限定されない。
【0026】
窓部122の代わりに、光源からの光を拡散するための凹レンズのようなものであってもよい。
【0027】
光源123は、ケーブル129から供給される電流により発光するLEDである。光源123は体腔内を照らすために適宜場所を変更してもよく、また長尺体11の中空部111内を貫通して配置される照射用の光ファイバーのような光源などを用いてもよい。
【0028】
撮像素子125は、光学レンズ127と対向する面に備えられた撮像面124と、撮像素子125で得られた画像信号を制御部8に伝送するためのケーブル129と、を有している。
【0029】
撮像素子125は、上記のように、内視鏡1の長手方向に沿って撮像面124の長手方向が配置されている。これは、光学レンズ127の形状を最適化することで、観察領域A〜Dのうち、前方の最端部であるA1を撮像面124の最も基端側に、領域A〜Dのうち側方の最端部であるD1を撮像面124の最も先端側に、それぞれ結像させることができ、撮像面124を内視鏡1の長手方向に沿ってより長く配置することで、画素数の高い鮮明な画像を得ることができるためである。なお、撮像素子125は必ずしも内視鏡1の長手方向に配置されなくてもよい。
【0030】
絞り部材128は、中央に光を通過させるための穴部131を有する。
【0031】
光学レンズ127は、内視鏡1の長手方向に対して光の入射面126が斜めになるように、ケース121に固定されている。また、光学レンズ127に配置された絞り部材128の穴部131の中心点が、撮像面124の中心点より内視鏡1の先端側となるように、ケース121に固定されている。
【0032】
ここで、光学レンズ127の具体的な設計方法について説明する。まず、観察範囲A〜Dとして観察したい範囲を設定する。なお、Aは前方で遠くを、Dは側方で近くをそれぞれ示している。次に、撮像素子125の位置と、内視鏡1の長手方向への撮像面124の長さとを設定する。次に、観察範囲の中のある1点(以下、物点位置と称する)と、この点に対応する撮像面124における点(以下、像面位置と称する)を決める。次に、物点位置からの光が、絞り部材128の穴部131を通過して、像面位置に結像するように、光学レンズ127の光が出射する面130(以下、出射面と称する場合がある)の曲率半径を設定する。これを観察範囲A〜Dの3次元範囲すべてに対して連続的に設定することで、観察範囲A〜Dにおける画像を撮像面124の全面に結像することのできる光学レンズ127を製作することができる。
【0033】
上記の設計方法によって製作された光学レンズ127は以下の特徴を有する。すなわち、回転対称となる軸が存在しない回転非対称なレンズであって、絞り部材128の穴部131の中心から撮像面124までの光路長が短いほど、当該光路上の光学レンズ127の外周面130の曲率半径が小さいレンズである。例えば曲率半径は、0.1mm〜0.3mmの範囲である。なお、光学レンズ127は、図2において示す断面図の切断している撮像面124の中心を通る面(以下、縦断面と称する場合がある)に対して、面対称であることが好ましい。
【0034】
次に、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡1の作用を説明する。
【0035】
まず、図2に示すように、内視鏡1を体腔内に挿入する。
【0036】
次に、光源123から照射された光が、透明な窓部122を透過して体腔内を照らす。そして、図3に示すように、観察範囲A〜Dからの光(L1〜L4)が、絞り部材128の穴部131及び光学レンズ127を通過して、撮像面124に到達する。上述したように、撮像面124において結像するように出射面130の曲率半径を設計した光学レンズ127を使用しているために、観察範囲A〜Dの画像が、撮像面124においてすべて結像する。そして、撮像素子125によって画像信号に変換される。
【0037】
撮像素子125によって変換された画像信号は、ケーブル129を介して、制御部8に伝送され、表示部9に観察範囲A〜Dの画像が表示される。
【0038】
本発明の第1の実施形態に係る内視鏡1を用いて得られた画像の一例を、図4に示す。図4に示すように、観察範囲A〜Dのうち、B及びCのように穴部131の中心を通って入射面126に垂直な線X(図2参照)に近い範囲においては、歪みの少ない実際の画像に近い画像が得られ、当該垂直線Xから遠くなるに従って歪んだ画像が得られる。これは光学レンズ127がいわゆる魚眼レンズの特徴を有することに起因するものである。本実施形態では記載していないが、得られた画像をコンピュータ処理によって歪みの少ない通常の画像に変換して、表示部9に表示する機能を制御部8に設けてもよい。
【0039】
以上のように、第1の実施形態によれば、撮像素子125の撮像面124が内視鏡1の長手方向に沿って配置されているために、内視鏡1の径を小さくしつつ、内視鏡1の長手方向に対して光の入射する面126が斜めになるように光学レンズ127が配置されているため、内視鏡1を挿入していく方向に対して、前方・側方の画像情報を得ることができることから、手術の作業性向上につながる。実際に使用する際は、前方部である観察範囲A、Bを観察しながら、側方部である観察範囲C、Dに病変部が観察できる場所まで内視鏡1を押し進めて留置し、側方部を精密に観察する。
また、撮像素子125からの画像信号をケーブル129を介して制御部8に伝送することから、従来の内視鏡に構成されていた光ファイバーやリレーレンズは不要となるために、使い捨て可能である安価な内視鏡1を提供できる。
【0040】
また、光学レンズ127は、絞り部材128の穴部131の中心点が撮像面124の中心点より内視鏡1の先端側となるように配置されているために、観察範囲A〜Dのうち前方の最端部であるA1の範囲にまで及んで撮像面124に結像させることができ、より広角な範囲を撮像面124に取り込むことができる。このため、より広角な範囲に渡って体腔内を観察することができ、手術の作業性向上につながる。
【0041】
また、光学レンズ127は、回転対称となる軸が存在しない回転非対称なレンズであって、絞り部材128の穴部131の中心から撮像面124までの光路長が短いほど、当該光路上の光学レンズ127の光の出射する面130の曲率半径が小さいために、撮像面124において、絞り部材128の穴部131の中心からの距離や方向が異なる観察範囲A〜Dの画像を同時に結像することができ、手術の作業性向上につながる。
【0042】
また、内視鏡1の長手方向に沿って撮像面124の長手方向が配置されているために、撮像面124全体に観察範囲A〜Dの画像が結像するような光学レンズ127を用いることで、より画素数の高い鮮明な画像を得ることができ、手術の作業性向上につながる。
【0043】
また、光学レンズ127は、1枚のレンズのみから構成されるために、内視鏡1が安価となり、使い捨て可能である内視鏡1を提供することができる。
【0044】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と共通する部分は説明を省略し、第2の実施形態のみに特徴のある箇所について説明する。
【0045】
本発明の第2の実施形態に係る内視鏡2は、図5に示すように、回転対称となる軸S(以下、回転対称軸と称する場合がある)が存在し、出射面230の曲率半径が一定でなく外周ほど曲率半径が大きい非球面レンズである光学レンズ227と、回転対称軸Sに対して基端側にオフセットして配置された絞り部材228の穴部231と、を有している。なお、その他の構成は第1の実施形態と同様である。オフセット量は例えば0.05mmであり、光学レンズの曲率半径は例えば0.1mm〜0.3mmの範囲にあるが、これに限られない。
【0046】
次に、第2の実施形態に係る内視鏡2の作用を説明する。
【0047】
第1の実施形態と同様に、まず内視鏡2を体腔内に挿入する。
【0048】
次に、光源123から照射された光が、透明な窓部122を透過して体腔内を照らす。そして、図5に示すように、観察範囲A〜Dからの光(L5〜L7)が、絞り部材228の穴部231及び光学レンズ227を通過して、撮像面124に到達する。ここで、絞り部材228の穴部231が回転対称軸Sに対して基端側にオフセットして配置されているために、第2の実施形態は撮像面124において、前方、側方およびその間の縦断面における3ヶ所以上で結像することができることから、前方から側方の全体にわたって鮮明な画像を得ることができ、手術の作業性向上につながる。
【0049】
以上のように、第2の実施形態によれば、光学レンズ227は回転対称となる軸Sが存在する非球面レンズであるために、光学レンズ227の製造が容易で安価となることから、内視鏡2としても安価となり、使い捨て可能である内視鏡2を提供することができる。
【0050】
また、光学レンズ227の回転対称となる軸Sに対して、絞り部材228の穴部231を基端側にオフセットして配置したために、撮像面124において、絞り部材228の穴部231の中心からの距離や方向が異なる観察範囲A〜Dの画像を、前方、側方およびその間の縦断面における3ヶ所以上で結像することができることから、鮮明な画像を得ることができ、手術の作業性向上につながる。
【0051】
なお、本実施形態の変形例として、図6に示すように、絞り部材228の穴部231の位置を光学レンズ227の回転対称軸Sからオフセットしなくてもよい。この場合側方部は結像しにくくなるが、観察範囲A〜Cの少なくとも2ヶ所で結像し、さらに光学設計が容易となる効果がある。
【0052】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。第1、第2の実施形態と共通する部分は説明を省略し、第3の実施形態のみに特徴のある箇所について説明する。
【0053】
本発明の第3の実施形態に係る内視鏡3は、図7に示すように、回転対称軸S1が存在し、出射面330の曲率半径が一定である球面レンズであり、かつF値が3.2以上である光学レンズ327を有する。なお、その他の構成は第1の実施形態と同様である。光学レンズ327の出射面330の曲率半径は例えば0.2mmであるが、これに限定されない。ここで、F値とは、光学レンズ327の焦点距離を光学レンズ327の直径で割った値であり、この値が大きいほど、焦点深度が大きくなり、つまりは焦点が多少ずれても観察できる程度にピントが合いやすいことを示す。
【0054】
次に、第3の実施形態に係る内視鏡3の作用を説明する。
【0055】
第1の実施形態と同様に、まず内視鏡3を体腔内に挿入する。
【0056】
次に、光源123から照射された光が、透明な窓部122を透過して体腔内を照らす。そして、図7に示すように、観察範囲A〜Dからの光(L8〜L10)が、絞り部材128の穴部131及び光学レンズ327を通過して、撮像面124に到達する。ここで、第3の実施形態では結像する箇所が1ヶ所であるが、F値が3.2以上であるために得られる画像が大きくピントぼけすることはなく、鮮明な画像が得られ、手術の作業性向上につながる。
【0057】
なお、本実施形態の変形例として、第2の実施形態と同様に、絞り部材128の穴部131の位置を基端側にオフセットしてもよい。この場合、縦断面における2ヶ所で結像することができ、絞り部材128の穴部131をオフセットしない場合と比較して、より鮮明な画像を得られる。
【0058】
以上のように、第3の実施形態によれば、光学レンズ327は球面レンズであるために、光学レンズ327の製造がさらに容易で安価となることから、内視鏡3としてもさらに安価となり、使い捨て可能である内視鏡3を提供することができる。
【0059】
また、球面レンズのF値が3.2以上であるために、大きくピントぼけすることなく、鮮明な画像を得ることができ、手術の作業性向上につながる。
【0060】
(改変例)
本発明に係る第1〜3の実施形態では、内視鏡の長手方向に対して、撮像面が水平方向となるように配置した撮像素子を示しているが、図8に示すように、内視鏡の長手方向に対して撮像素子425の撮像面424が傾いて配置してもよい。
【0061】
本発明に係る第1〜3の実施形態では、光学レンズが1枚である場合を示しているが、図9に示すように、複数枚のレンズ群527から構成されていてもよい。
【0062】
本発明に係る第1〜3の実施形態では、光学レンズの入射面は曲率を有さない平らな面を示しているが、入射面に曲率を有していてもよい。
【0063】
本発明にかかる第2、第3の実施形態では、縦断面において結像する形態を示しているが、縦断面から側方へずれた断面において結像する形態でもよい。
【0064】
本発明にかかる内視鏡は、生体に限られず、例えば震災時のがれき内の探索等にも応用可能である。
【0065】
F値は小さい方が明るく、少ない光で観察することが出来て有利であるが、ピントの合う範囲が狭くなるので、F値が3.2以上の大きいものを使うと共に、光軸を傾ける‘‘あおり’’と球面収差や像面湾曲などを積極的に利用することで、1枚のレンズで広角で解像度の良いものを構成可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1、2、3 内視鏡、
11 長尺体、
12 撮像部、
124 撮像面、
125 撮像素子、
126 光の入射する面、
127、227、327、527 光学レンズ、
128、228 絞り部材、
130、230、330 光の出射する面、
131、231 穴部、
S、S1 回転対称となる軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を内蔵した内視鏡であって、
体腔内に挿入される長尺体と、
前記長尺体の先端側の端部に配置された撮像部と、
を有し、前記撮像部は、
前記内視鏡の長手方向に沿って撮像面が配置された撮像素子と、
前記内視鏡の長手方向に対して光の入射する面が斜めに配置されて、前記撮像面に観察範囲の画像を結像する光学レンズと、
前記光学レンズの光の入射する面に設けられ、前記撮像面に光が入射する穴部が形成された絞り部材と、
を有する内視鏡。
【請求項2】
前記光学レンズは、前記絞り部材の穴部の中心点が前記撮像面の中心点より前記内視鏡の先端側となるように配置された、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記光学レンズは球面レンズである、請求項1または請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記球面レンズのF値が3.2以上である、請求項3に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記光学レンズは回転対称となる軸が存在する非球面レンズである、請求項1または請求項2に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記光学レンズの回転対称となる軸に対して、前記絞り部材の穴部を基端側にオフセットして配置した請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記光学レンズは、回転対称となる軸が存在しない回転非対称なレンズであって、前記絞り部材の穴部の中心から前記撮像面までの光路長が短いほど、当該光路上の前記光学レンズの光の出射する面の曲率半径が小さい、請求項1または請求項2に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記内視鏡の長手方向に沿って前記撮像面の長手方向が配置されている、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記光学レンズは、1枚のレンズのみから構成される、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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