説明

内部リボソーム結合部位を利用した遺伝子組換え全抗体の効率的生産法

【課題】動物培養細胞を用いて免疫グロブリン分子を生産するにあたって、免疫グロブリン分子の重鎖及び軽鎖という2種類のポリペプチドをバランス良く生産させることによって、免疫グロブリン分子の生産量を向上させることこと。
【解決手段】プロモーターの下流に、免疫グロブリン分子を構成する重鎖をコードする塩基配列(A)、及び、免疫グロブリン分子を構成する軽鎖をコードする塩基配列(B)を配置し、塩基配列(A)と塩基配列(B)のあいだに、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列を配置してなる組換えベクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫グロブリン分子を産生するための組換えベクター、及び、これを用いた免疫グロブリン分子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年上市され始めた抗体医薬品は、その抗原特異性および生体内での安定性のため、これまで治療が困難であった症例に対しても高い効能を示すものもあり、多くの関心が集められてきている。しかしその期待とは裏腹に、需要に対する供給量不足による高額な薬価が障害となり、抗体医薬の恩恵は十分に行き届いていない。例えば、抗体生産の宿主として通常用いられているChinese Hamster Ovary(CHO)に代表される動物培養細胞は、培地や、添加する血清、増殖因子等について高額な生産コストがかかる一方、それに見合うだけの生産量が得られない。
【0003】
抗原特異性を有する抗体は、生体内で機能を果たすために2種類のポリペプチドより4量体構造を形成するため、その異なる2種類の遺伝子をバランスよく発現させることが必須である。仮に1つの細胞で2種類の遺伝子を発現させる場合に、片方の発現のみ大きい場合には、4量体を構成した免疫グロブリン分子として細胞外に放出されず、細胞内に蓄積して毒性を示すことがあり、抗体生産の難しさが窺える。
【0004】
通常mRNAはリボソーム結合部位を1箇所保持するため、1つのmRNAで1つのポリペプチドが合成(翻訳)される。しかし、内部リボソーム結合配列(Internal Ribosome Entry Site:IRES)と呼ばれる特殊な配列をそのmRNA上にシスエレメントとして有する場合は、リボソーム結合部位が2箇所になるため、1本のmRNAから2種類のポリペプチドを合成することが可能となる。
【0005】
特許文献1には、レトロウイルスベクターでのIRES発現カセットの使用および遺伝子治療への応用方法が開示される。しかし、該IRESを用いてバイシストニックな発現系を抗体分子生産に応用することは開示も示唆もしない。
【0006】
特許文献2は、IRESを利用したバイシストニックおよびポリシストニック発現系による動物培養細胞での抗体分子を含む多量体機能性タンパク質の生産法を開示し、またIRESの反復による下流遺伝子発現量調節方法を開示するが、ホメオドメインタンパク質Gtx由来のIRESが非常に有効にIRESとして機能すること及び反復利用可能なことは開示も示唆もしない。
【0007】
非特許文献1は、GtxをコードするmRNAの5′UTRの196塩基中で、133−141の領域がIRES能を有し、該IRES領域の反復回数によるIRES下流遺伝子の発現量の増強を開示するが、該IRESの上流と下流に、免疫グロブリン分子を構成する重鎖と軽鎖をコードする配列を配置することによる免疫グロブリン分子の生産法は開示していない。
【特許文献1】特表2002−542834号公報
【特許文献2】特表平08−502644号公報
【非特許文献1】Stephan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,2000年2月15日,97(4),1536−41頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、動物培養細胞を用いて免疫グロブリン分子を生産するにあたって、免疫グロブリン分子の重鎖及び軽鎖という2種類のポリペプチドをバランス良く生産させることによって、免疫グロブリン分子の生産量を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ひとつのベクターに、免疫グロブリン分子を構成する重鎖及び軽鎖の遺伝子を導入し、重鎖の遺伝子と軽鎖の遺伝子のあいだに、内部リボソーム結合配列としてGtx IRESを配置することによって、両遺伝子がバランス良く発現し、免疫グロブリン分子の生産量が向上することを発見した。さらには、このGtx IRESを複数回繰り返し配置することによって免疫グロブリン分子をさらに効率的に生産できることを発見した。
【0010】
よって、本発明が提供するのは以下のとおりである。
(1)免疫グロブリン分子を産生するための組換えベクターであって、
プロモーターの下流に、前記免疫グロブリン分子を構成する重鎖をコードする塩基配列(A)、及び、前記免疫グロブリン分子を構成する軽鎖をコードする塩基配列(B)を配置し、前記塩基配列(A)と前記塩基配列(B)のあいだに、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列を配置してなることを特徴とする組換えベクター。
(2)ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列は、前記mRNA中の5′UTR又はその一部からなるものである上記(1)記載の組換えベクター。
(3)内部リボソーム結合配列は、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNA中の5′UTRにおいて転写開始点より133〜141番目の塩基配列である上記(1)又は(2)記載の組換えベクター。
【0011】
(4)塩基配列(A)と塩基配列(B)のあいだに、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列を2回以上反復させて配置してなる上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の組換えベクター。
(5)塩基配列(A)と塩基配列(B)のあいだに、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列を2回以上5回以下反復させて配置してなる上記(4)記載の組換えベクター。
(6)塩基配列(A)と塩基配列(B)のあいだに、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列を6回以上10回以下反復させて配置してなる上記(4)記載の組換えベクター。
(7)塩基配列(A)と塩基配列(B)のあいだに、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列を11回以上反復させて配置してなる上記(4)記載の組換えベクター。
【0012】
(8)免疫グリブリン分子は、哺乳類由来のものである上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の組換えベクター。
(9)免疫グロブリン分子は、ヒト免疫グロブリン分子である上記(8)記載の組換えベクター。
(10)免疫グロブリン分子は、マウス免疫グロブリン分子である上記(8)記載の組換えベクター。
(11)免疫グロブリン分子は、異種動物間でのキメラ、又は、ヒト化に属するものである上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の組換えベクター。
【0013】
(12)上記(1)〜(11)のいずれか1つに記載の組換えベクターで動物宿主細胞を形質転換してなることを特徴とする形質転換体。
(13)動物宿主細胞がChinese Hamster Ovary(CHO)由来細胞である上記(12)記載の形質転換体。
(14)上記(1)〜(11)のいずれか1つに記載の組換えベクターを動物培養細胞に導入した後、当該動物培養細胞を培養して免疫グロブリン分子を産生させることを特徴とする、免疫グロブリン分子の製造方法。
以下に本発明を詳述する。
【0014】
本発明は、免疫グロブリン分子を構成する重鎖と軽鎖を1つの組換えベクターに配置し、動物培養細胞において重鎖と軽鎖を同時またはバランス良く発現することを可能とさせる発現システムおよびそれによる免疫グロブリン分子の生産法に関する。
【0015】
本発明で用いられる免疫グロブリン分子としては特に限定されないが、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリに代表される脊椎動物(特に、哺乳類及び鳥類)が生体内で生合成可能な免疫グロブリン分子や、異なる動物間でのキメラ免疫グロブリン分子、及び、ヒト化に代表されるような人工的合成免疫グロブリン分子が含まれる。
【0016】
ここで言うキメラ免疫グロブリン分子は、ある動物内で生産される免疫グロブリン分子の一部を、異種の動物が産生する免疫グロブリン分子の相当領域に置き換えた免疫グロブリン分子を示す。置き換える領域としては特に限定されないが、血中半減期の観点から、キメラ免疫グロブリン分子の定常領域は、これを投与する対象動物個体が通常生産する免疫グロブリン分子の定常領域であることが好ましい。
【0017】
ここで言うヒト化免疫グロブリン分子とは、免疫グロブリン分子の抗原認識に機能するアミノ酸配列領域以外を、ヒトが通常産生する免疫グロブリン分子構成配列とした免疫グロブリン分子を指す。
【0018】
免疫グロブリン分子は重鎖及び軽鎖からなるが、この2種類のポリペプチドをひとつのベクターに導入し、かつ、両者をバランス良く発現させるために、本発明においては、免疫グロブリン分子を産生するための組換えベクターとして、上流にプロモーターを配置し、その下流に、重鎖をコードする塩基配列(A)又は軽鎖をコードする塩基配列(B)、少なくともIRESを含む塩基配列、軽鎖をコードする塩基配列(B)又は重鎖をコードする塩基配列(A)を、この順で配置してなる組換えベクターを用いる。
【0019】
この組換えベクターを動物培養細胞に導入して得られた形質転換体を培養すると、導入したベクターは細胞の転写機構を利用して上流プロモーターよりmRNAを転写する。このmRNAが細胞の翻訳機構を利用して、mRNA上流からの重鎖−軽鎖連結ポリペプチド、及び、IRESからの重鎖又は軽鎖ポリペプチドを合成する。
【0020】
上流に配置するプロモーター配列としては特に限定されないが、例えば、ウイルスLTRプロモーター、CMVプロモーター、PGKプロモーター、β−アクチンプロモーター等のユビキタスに発現するプロモーター、組織特異的プロモーター、時期特異的プロモーター、誘導可能なプロモーター等が挙げられる。
【0021】
ベクターに挿入するホメオドメインタンパク質GtxのIRES配列は、非特許文献1に記載されているように、GtxをコードするmRNA中の5′UTRを構成する196塩基中で転写開始点より133〜141番目の塩基配列に相当するものであり、9塩基と比較的短いために、反復回数を増減させるなどの遺伝子組換え操作が簡便なものである。
【0022】
比較的短いIRESは、複数回反復させて配置することでIRES下流のポリペプチドの発現量を調節することが可能であるため、IRES上流のポリペプチドの発現量とのバランスを最適化することが可能である。反復回数は、目的とする免疫グロブリン分子を効率的に発現生産できる限り特に限定されないが、2回以上が好ましく、具体的には、2回以上5回以下や、6回以上10回以下や、11回以上の場合が挙げられる。上限は特に限定されないが、例えば、30回以下、好ましくは20回以下である。
【0023】
本発明で用いられるベクターとしては特に限定されないが、複製能欠損型レトロウイルスベクターを用いることができる。複製能欠損型レトロウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルス、モロニーマウス肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス(ALV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)等が挙げられる。
宿主細胞への感染性を高めるため、複製能欠損型レトロウイルスベクターエンベロープを人為的にウシ水疱性口内炎ウイルス由来のVSV−Gエンベロープタンパク質に置換し、広範囲の哺乳類及び非哺乳類の細胞に対し感染可能にしているが、特にこれに限定はされない。
【0024】
本発明の組換えベクターは、遺伝子工学的手法を用いて、宿主細胞内で導入遺伝子タンパク質が発現するように、ベクター上に、プロモーター、免疫グロブリン分子の重鎖又は軽鎖をコードする塩基配列、IRES配列、免疫グロブリン分子の重鎖又は軽鎖をコードする塩基配列の順に配列した。
また、正しく遺伝子導入された細胞の同定及び単離の目印としてマーカー遺伝子を挿入することが好ましい。マーカー遺伝子としては特に限定されないが、例えば、グリーン・フルオレッセント・プロテイン(GFP)、エンハンスド・GFP(EGFP)、シアン・フルオレッセント・プロテイン(CFP)、ルシフェラーゼ等の蛍光タンパク質の遺伝子、ネオマイシン耐性(Neo)、ハイグロマイシン耐性(Hyg)、ピューロマイシン耐性(Puro)等の薬剤耐性遺伝子、他にチミジンキナーゼ、ジヒドロフォレート・レダクターゼ、アミノグルコシド・ホスホトランスフェラーゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ等の遺伝子が挙げられる。マーカー遺伝子はプロモーター遺伝子等の発現に必要な要素を伴っていることが好ましい。
【0025】
本発明の組換えベクターを動物培養細胞に導入する方法としては特に限定されることはなく、あらゆる公知の手法が可能である。例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、ウイルスベクターによる感染法等が挙げられるが、これに限定されない。
【0026】
本発明の組換えベクターを導入することができる動物培養細胞としては特に限定されず、ヒト由来、マウス由来、イヌ由来、ハムスター由来、マウス由来、ラット由来など、あらゆる動物由来の培養細胞を用いることができるが、生産した免疫グロブリン分子をヒトへの抗体医薬品とする場合、その安全性から、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が好まれる。
【0027】
得られた形質転換体の培養法としては特に限定されず、あらゆる公知の手法が可能であり、細胞種に応じて好ましい培地、培養法を用いることが好ましい。
【0028】
本発明で生産可能な免疫グロブリン分子は、細胞培養溶液中に分泌させることが回収効率の面から好ましく、そのため分泌の改善の観点からシグナル配列を変更、挿入、欠失変異導入することが可能であるが限定はしない。
細胞培養溶液中に分泌された免疫グロブリン分子は、細胞培養溶液を培養細胞と分離回収し、その後細胞残骸を取り除く等の前処理をし、分離精製することが好ましいが、これに限定されない。
【0029】
生産した免疫グロブリン分子の回収および精製方法としては特に限定されないが、プロテインAまたはプロテインGによるアフィニティー精製が可能である。この手法により生産させた免疫グロブリン分子をさらに精製または調整し抗体医薬または抗体医薬品原料として用いることが可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、上述の構成よりなるので、動物培養細胞を用いて極めて効率的に免疫グロブリン分子を生産することが可能となり、より高い治療効果が望める抗体医薬品の生産量が向上し、需要に見合った供給量の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
以下、断りがない限り、PCR反応にはKOD−Plus−DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)、ライゲーションにはLigaFast(登録商標) Rapid DNA Lagation System(プロメガ社製)、PCR反応液及び電気泳動により得たDNA断片精製にはMagExtractor−PCR&Gel Clean up−(東洋紡社製)を使用した。操作は特に記載のない限り説明書の指示に従った。
【0032】
(実施例1)免疫グロブリン分子発現用プラスミドベクターの構築(プロモーターはβ−アクチンプロモーターとした)
ニワトリβ−アクチンプロモーターを用いたプラスミドpMSCV/eGΔAを構築した。下記に構築方法を示す。
pMSCVneo(クローンテック社製)から一連のミューリン・ポスポグリセレート・キナーゼ(PGK)プロモーター及びNeo遺伝子を含む断片を制限酵素BglIIおよびBamHIによって除去し、残ったベクター断片のセルフライゲーションによりプラスミドpMSCVを構築した。
【0033】
また、EGFP遺伝子を、pIRESII−EGFP(クローンテック社製)を鋳型として、2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−ACCGAATTCACACGATGATAATATGGCCAC−3’(配列番号1、下線部はEcoRI制限酵素部位)および5’−ATTCTCGAGAGGCCGCTTTACTTGTACAG−3’(配列番号2、下線部はXhoI制限酵素部位)をプライマーとするPCR(94℃/15秒、55℃/30秒、68℃/1分;30サイクル)により増幅し、得られた断片を制限酵素EcoRIおよびXhoIで切断した。これをpBluescript KS(−)(東洋紡社製)のEcoRI−XhoIサイトに挿入し、pBlue/EGFPとした。
同様に、これをpMSCVのEcoRI−XhoIサイトに組み込み、pMSCV/eGとした。
【0034】
pmiwZ(Suemori et al;Cell Differ.Dev.29:181−186)を鋳型として、ニワトリβ−アクチンプロモーターを、2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−ACGCGTCGACGTGCATGCACGCTCATTG−3’(配列番号3、下線部はSalI制限酵素部位)、5’−ACGCGTCGACAACGCAGCGACTCCCG−3’(配列番号4、下線部はSalI制限酵素部位)をプライマーとして、PCR(94℃/15秒、50℃/30秒、68℃/1分;10サイクル、94℃/15秒、62℃/30秒、68℃/1分;30サイクル)で増幅し、制限酵素SalIで処理の後、pMSCV/eGのXhoIサイトへ挿入し、EGFP遺伝子と同方向にニワトリβアクチンプロモーターが挿入された構造のプラスミドをpMSCV/eGΔAとした。
【0035】
(実施例2)免疫グロブリン分子発現用プラスミドベクターの構築(プロモーターはCMVプロモーターとした)
CMVプロモーターを用いたプラスミドpMSCV/eGPcmvを構築した。
CMVプロモーターは、pCEP4(インビトロジェン社製)から制限酵素SalIおよびPveIIで切り出し、pBluescript KS(−)(東洋紡社製)のSalI−SmaIサイトに挿入し、pBlue/Pcmvとした。
このpBlue/Pcmvから制限酵素SalIおよびBamHIでCMVプロモーターを切り出し、実施例1に記載のpBlue/EGFPから制限酵素EcoRIとXhoIでEGFP遺伝子を切り出し、pMSCVneo(クローンテック社製)から制限酵素EcoRIとBamHIでEcoRI−BamHIサイトを除き、これらの配列をつなぎ合わせてpMSCV/eGPcmvとした。
【0036】
(実施例3)抗ヒトCD2キメラ抗体遺伝子クローニング
ヒト抗体(IgM)産生ハイブリドーマ細胞D253−15−6(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション HB−8789)からQuick Prep Micro mRNA Purification Kit(ファルマシア社製)を用いてmRNAを取得し、得られたmRNAからFirst−Strand cDNA Synthesis Kit(ファルマシア社製)を用いてcDNAライブラリを調製した。2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−ATCCTCGAGAGGCCAAAGTACAGTG−3’(配列番号5、下線部はXhoI制限酵素部位)及び5’−CCCGGATCCCTAACACTCTCCCCTGTTGAAGCT−3’(配列番号6、下線部はBamHI制限酵素部位)をプライマーとするPCR(94℃/1分、50℃/1分、72℃/1分30秒;25サイクル)により上記cDNAライブラリからヒト抗体L鎖κ定常領域(hCκ)の遺伝子断片を増幅後、制限酵素XhoI、BamHIによって切り出し、プラスミドpBluescriptIIKS(−)の制限酵素XhoI−BamHIサイトへ挿入し、プラスミドpBlue/hCκを作製した。
【0037】
同様にして、2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−AGCGGCCGCTACAGGTGTCCACTCCGACATCGTGATGACCCAGTCTCC−3’(配列番号7、下線部はNotI制限酵素部位)及び5’−CCTCTCGAGGATAGAAGTTATTCAGCAGGCACAC−3’(配列番号8、下線部はXhoI制限酵素部位)をプライマーとするPCRにより上記cDNAライブラリからヒト抗体L鎖可変領域(hVL)の遺伝子断片を増幅後、制限酵素NotI及びXhoIによって切り出し、pBluescriptIIKS(−)の制限酵素NotI−XhoIサイトへ挿入し、プラスミドpBlue/hVLを作製した。
【0038】
同様にして、2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−ACCTCGAGCGTGGCCGTTGGCTGCCTCGCACA−3’(配列番号9、下線部はXhoI制限酵素部位)及び5’−ACTAAGCTTACGTTGTACAGGGTGGGTTTACC−3’(配列番号10、下線部はHindIII制限酵素部位)をプライマーとするPCRにより上記cDNAライブラリからヒト抗体H鎖μ定常領域(hCμ)の遺伝子断片を増幅後、制限酵素XhoI及びHindIIIによって切り出し、pBluescriptIIKS(−)の制限酵素XhoI−HindIIIサイトへ挿入し、プラスミドpBlue/hCμを作製した。
【0039】
同様にして、2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−AGCGGCCGCTACAGGTGTCCACTCCGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGG−3’(配列番号11、下線部はNotI制限酵素部位)及び5’−CACGCTCGAGGTATCCGACGGGGAATTCTCACAGGA−3’(配列番号12、下線部はXhoI制限酵素部位)をプライマーとするPCRにより上記cDNAライブラリからヒト抗体H鎖可変領域(hVH)の遺伝子断片を増幅後、制限酵素NotI及びXhoIによって切り出し、pBluescriptIIKS(−)の制限酵素NotI−XhoIサイトへ挿入し、プラスミドpBlue/hVHを作製した。
【0040】
pBlue/hCκからhCκ遺伝子断片を制限酵素XhoI及びBamHIによって切り出し、プラスミドpCEP4(インビトロジェン社製)の制限酵素XhoI、BamHIサイトへ挿入し、プラスミドpCEP4/hCκを作製した。
【0041】
2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−CCCAAGCTTGATCTCCACTGGGATGGTGGGGGCCCTCCTCTTGCTGCTG−3’(配列番号13、下線部はHindIII制限酵素部位)及び5’−CCCGGATCCTCAGTCAAGGCGCCTTCGCATGAAGAGGCCGATCCCCAGGGCCACCACCAGCAGCAAGAGGAGGGCCCC−3’(配列番号14、下線部はBamHI制限酵素部位)を21bpsにわたって相補的な末端でアニールさせ、T4 DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用いたDNA2重鎖合成反応によって上皮増殖因子受容体膜貫通領域(TM)の遺伝子断片を調製した。得られたTM遺伝子断片を制限酵素HindIII及びBamHIによって処理後、pBluescriptIIKS(−)の制限酵素HindIII−BamHIサイトに挿入し、プラスミドpBlue/TMを作製した。
【0042】
pBlue/hCμからhCμ遺伝子断片を制限酵素XhoI及びHindIIIによって切り出し、pBlue/TMの制限酵素XhoI−HindIIIサイトへ挿入し、プラスミドpBlue/hCμTMを作製した。
【0043】
pBlue/hCμTMから一連のhCμ遺伝子及びTM遺伝子を含む断片を制限酵素XhoI及びBamHIによって切り出し、pCEP4の制限酵素XhoI−BamHIサイトへ挿入し、プラスミドpCEP4/hCμTMを作製した。
【0044】
pCEP4/hCμTMを制限酵素BamHIによって切断し、末端をT4 DNAポリメラーゼによって平滑処理後、セルフライゲーションによりプラスミドpCEP4/hCμTMΔBを作製した。
【0045】
化学合成オリゴヌクレオチド5’−TGAAGACAGATGGCGCCGCCACAGTTCGTTT−3’(配列番号15、下線部はNarI制限酵素部位)を用いた部位特異的変異導入によりpBlue/hVLが保有するhVLの3’末端にアミノ酸の変更を伴わずに制限酵素NarIサイトを導入し、プラスミドpBlue/hVLNを作製した。
【0046】
化学合成オリゴヌクレオチド5’−TGGGGCGGATGCGGATCCTGAGGAGACGGT−3’(配列番号16、下線部はBamHI制限酵素部位)を用いた部位特異的変異導入によりpBlue/hVHが保有するhVHの3’末端にアミノ酸の変更を伴わずに制限酵素BamHIサイトを導入し、プラスミドpBlue/hVHBを作製した。
【0047】
抗ヒトCD2マウス抗体産生ハイブリドーマ細胞TS2/18.1.1(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション HB−195)からQuick Prep Micro mRNA Purification Kitを用いてmRNAを取得し、得られたmRNAからFirst−Strand cDNA Synthesis Kitを用いてcDNAライブラリを調製した。2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−CGCGGCCGCCTCAGGGAAAGTTTGAAGATG−3’(配列番号17、下線部はNotI制限酵素部位)及び5’−CGGCGCCGCCACAGTCCGTTTTATTTCCAGCTTGGT−3’(配列番号18、下線部はNarI制限酵素部位)をプライマーとするPCRにより上記cDNAライブラリからマウス抗体L鎖可変領域(mVL)の遺伝子断片を増幅後、制限酵素NotI及びNarIによって切り出し、pBlue/hVLNのNotI、NarIサイトへ挿入し、プラスミドpBlue/mVLを作製した。
【0048】
同様にして、2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−CGCGGCCGCGAACACGGAMCCCTCACCATG−3’(配列番号19、下線部はNotI制限酵素部位)及び5’−CGGATCCTGCAGAGACAGTGACCAGAGT−3’(配列番号20、下線部はBamHI制限酵素部位)をプライマーとするPCRにより上記cDNAライブラリからマウス抗体H鎖可変領域(mVH)の遺伝子断片を増幅後、制限酵素NotI及びBamHIによって切り出し、pBluescriptIIKS(−)の制限酵素NotI−BamHIサイトへ挿入し、プラスミドpBlue/mVHを作製した。
【0049】
pBlue/mVLからmVL遺伝子断片を制限酵素NotI及びXhoIによって切り出し、pCEP4/hCκのNotI、XhoIサイトへ挿入し、プラスミドpCEP4/IgLκを作製した。
【0050】
pBlue/hVHBからhVH遺伝子断片を制限酵素NotI及びXhoIによって切り出し、pCEP4/hCμTMΔBの制限酵素NotI−XhoIサイトへ挿入し、プラスミドpCEP4/hIgHμTMを作製した。
【0051】
pBlue/mVHからmVH遺伝子断片を制限酵素NotI及びBamHIによって切り出し、制限酵素NotI及びBamHIによって処理したpCEP4/hIgHμTMのベクター断片に連結し、プラスミドpCEP4/IgHμTMを作製した。
【0052】
ヒト抗体(IgG1)産生ミエローマ細胞IM−9(ジャパニーズ・コレクション・オブ・リサーチ・バイオリソーシズ 0024)からmRNA isolation Kit(ロッシュ社製)を用いてmRNAを取得し、得られたmRNAからReverTra Ace(東洋紡社製)を用いてcDNAライブラリを調製した。2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−CAAGCTTCAAGGGCCCAT−3’(配列番号21)及び5’−ATTTACCCGGAGACAGGGA−3’(配列番号22)をプライマーとするPCR(95℃/2分、52℃/30秒、74℃/3分;30サイクル)により上記cDNAライブラリからヒト抗体H鎖γ1定常領域(hCγ1)の遺伝子断片を増幅した。さらに、2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−ATAGGATCCGCTAGCTTCAAGGGCCCATCG−3’(配列番号23、下線部はBamHI制限酵素部位)及び5’−AGCAAGCTTTCATTTACCCGGAGACAGGGA−3’(配列番号24、下線部はHindIII制限酵素部位)をプライマーとするPCR(94℃/15秒、58℃/30秒、68℃/1分;30サイクル)により上記PCR産物からhCγ1遺伝子断片を増幅後、制限酵素BamHI及びHindIIIによって切り出し、pBluescriptIISK(+)の制限酵素BamHI−HindIIIサイトへ挿入し、プラスミドpBlue/hCγ1を作製した。
【0053】
pCEP4/IgHμTMからmVH遺伝子断片を制限酵素HindIII及びBamHIによって切り出した。pBlue/hCγ1からhCγ1遺伝子断片を制限酵素BamHI及びHindIIIによって切り出した。制限酵素HindIIIによって処理したプラスミドpETBlue−2(ノバジェン社製)のベクター断片に上記切り出した2断片を連結し、プラスミドpETBlue/IgHγ1を作製した。
【0054】
(実施例4)IRESを利用したバイシストニック抗CD2キメラ抗体発現プラスミドベクターの構築
脳心筋炎ウイルス(encephalomyocarditis virus(EMCV))由来のIRES配列をpLXIN(クローンテック社製)を鋳型として、化学合成オリゴヌクレオチド5’−ACGCGTCGACCGCCCCTCTCCCTCCCCC−3’(配列番号25、下線部はSalI制限酵素部位)、5’−CCGCTCGAGATTATCATCGTGTTTTTCAAAGGAAAACCACGTC−3’(配列番号26、下線部はXhoI制限酵素部位)をプライマーとして、PCR(94℃/15秒、50℃/30秒、68℃/1分;10サイクル、94℃/15秒、62℃/30秒、68℃/1分;30サイクル)で増幅し、こうして得たIRESを、制限酵素SalI、XhoIで処理したpETBlue−2に挿入し、pETBlue−2/IRES(S−X)とした。
【0055】
実施例3に記載のpETBlue/IgHγ1を制限酵素HindIIIで処理し、H鎖を切り出し、実施例1記載のpMSCV/eGΔAの制限酵素HindIIIサイトに挿入し、pMSCV/eGΔAHとした。
【0056】
pETBlue−2/IRES(S−X)を制限酵素SalI、XhoIで処理し、IRESを切り取り、pMSCV/eGΔAHの制限酵素SalIサイトに挿入し、pMSCV/eGΔAIHとした。
【0057】
pCEP4/IgLκを鋳型にしてIgLκをPCR(95℃/30秒、50℃/30秒、74℃/2分;10サイクル、95℃/30秒、60℃/30秒、74℃/2分;30サイクル、74℃/5分)により増幅した。プライマーは5’−ACGCGTCGACAACGCAGCGACTCCCG−3’(配列番号27、下線部はSalI制限酵素部位)と5’−ACGCGTCGACAACGCAGCGACTCCCG−3’(配列番号28、下線部はSalI制限酵素部位)を用いた。こうして得たIgLκを、pETBlue−2の制限酵素SalIサイトに挿入し、pETBlue−2/IgLκ(S−S)とした。また、pMSCV/eGΔAの制限酵素SalIサイトに得たIgLκを挿入し、pMSCV/eGΔALとした。
【0058】
さらに、pETBlue−2/IgLκ(S−S)を制限酵素SalIで処理し、pMSCV/eGΔAIHの制限酵素SalIサイトに挿入し、これをpMSCV/eGΔALIH(EMCV IRES、CD2)とした。
【0059】
またGtx IRES配列はオリゴヌクレオチド5’−GTCGAC−(TTCTGACATCCGGCGGGT)−GACTCACAACCCCAGAAACAGACATCGCGGCCGC−3’(配列番号29(n=3)、配列番号30(n=5)、配列番号31(n=7)、下線部はSalI,NotI制限酵素部位)およびこの相補鎖を化学合成した。これをそれぞれ制限酵素SalIおよびNotIで切断した。これをpETBlue−2の制限酵素SalI−NotIサイトに挿入しpET/IRESGtxnとした。ここでnは繰り返し配列数を示し、本発明ではn=3,5,7であった。
【0060】
また、上記のpMSCV/eGΔALIH(EMCV IRES、CD2)より制限酵素NotI,ClaIでH鎖を切り出し、pBluescript KS(−)の制限酵素NotI−ClaIサイトに挿入し、pBlue/Hとした。これから制限酵素NotI,XhoIでH鎖を切り出し、上記のpET/IRESGtxn(n=3,5,7)の制限酵素NotI−XhoIサイトに挿入し、pET/IRESGtxnH(CD2;n=3,5,7)とした。これを制限酵素ClaIで処理し、IRESGtxnH(CD2;n=3,5,7)配列を切り出し、pMSCV/eGΔALの制限酵素ClaIサイトに挿入し、pMSCV/eGΔALIH(Gtx IRES、CD2;n=3,5,7)とした。
【0061】
また、オリゴヌクレオチド5’−GAATTCGTCGAC−(TTCTGACATCCGGCGGGT)CTCGAG−3’(配列番号32、下線部はEcoRI,XhoI制限酵素部位)および相補鎖を化学合成しそれぞれ制限酵素EcoRIおよびXhoIで処理し、pETBlue−2に挿入し、pET/IRESGtx5とした。
【0062】
一方、pET/IRESGtxnH(n=5)から制限酵素SalIおよびClaIでIRESGtxn(n=5)H配列を切り出し、pET/IRESGtx5から制限酵素XhaI,XhoIでIRESGtx5を切り出し、pETBlue−2の制限酵素XhaI−ClaIサイトに挿入することでpET/IRESGtx10Hを構築した。これを制限酵素ClaIで処理し、IRESGtx10H(CD2)配列を切り出し、pMSCV/eGΔALの制限酵素ClaIサイトに挿入し、pMSCV/eGΔALIH(Gtx10 IRES、CD2)とした。
【0063】
また、pET/IRESGtx10Hを制限酵素SalIおよびClaIでIRESGtxn(n=10)H配列を切り出し、pET/IRESGtx5から制限酵素XhaI,XhoIでIRESGtx5を切り出し、pETBlue−2の制限酵素XhaI−ClaIサイトに挿入することでpET/IRESGtx15Hを構築した。これを制限酵素ClaIで処理し、IRESGtx15H(CD2)配列を切り出し、pMSCV/eGΔALの制限酵素ClaIサイトに挿入し、pMSCV/eGΔALIH(Gtx15 IRES、CD2)とした。
【0064】
(実施例5)抗ヒトTNFαキメラ抗体遺伝子クローニングおよびIRESを利用したバイシストニック抗ヒトTNFαキメラ抗体発現プラスミドベクターの構築
抗ヒトTNFαキメラ抗体のマウス由来可変領域であるmVHおよびmVL(一般名;Infliximab:商品名;Remicade(登録商標):Centocore社製)を公開配列情報に基づいて全塩基配列を化学合成した。
【0065】
mVHは末端に制限酵素NotI、NheIを加えてあるため、制限酵素NotI、NheIで処理し、実施例3に記載のpBlue/hCγ1の制限酵素NotI−NheIサイトに挿入し、pBlue/TNFHとした。
【0066】
mVLは末端に制限酵素NotI、BbeIを加えてあるため、制限酵素NotI、BbeIで処理し、実施例3に記載のpBlue/hCκの制限酵素NotI−BbeIサイトに挿入し、pBlue/TNFLとした。
【0067】
一方、EMCV由来のIRES配列は実施例4に記載のpMSCV/eGΔALIH(EMCV IRES、CD2)を鋳型として、化学合成オリゴヌクレオチド5’−ACGCGGATCCCGCCCCTCTCCCTCCCCC−3’(配列番号33、下線部はBamHI制限酵素部位)、5’−ACCGCTGCAGATTATCATCGTGTTTTTGAAAGGAAAACCACGTC−3’(配列番号34、下線部はPstI制限酵素部位)をプライマーとしてPCR(94℃15秒、60℃30秒、68℃1分;30サイクル)で増幅した。これを制限酵素BamHI、PstIで切り取り、pBluescript KS(−)の制限酵素BamHI−PstIサイトに挿入し、pBlue/IRESとした。
【0068】
pBlue/TNFLを制限酵素NotI、BamHIでL鎖を切り出し、pBlue/IRESの制限酵素NotI−BamHIサイトに挿入し、pBlue/LIとした。
【0069】
また、pBlue/TNFHから制限酵素PstI、ClaIでH鎖を切り出し、pBlue/LIの制限酵素PstI−ClaIサイトに挿入し、pBlue/TNFLIHとした。これを制限酵素SalI,ClaIで処理し、TNFLIHを切り出し、実施例1記載のpMSCV/eGΔAの制限酵素SalI−ClaIサイトに挿入し、pMSCV/eGΔALIH(EMCV IRES、TNFα)とした。
【0070】
実施例4に記載のpET/IRESGtxn(n=3,5,7)、pET/IRESGtx10H、pET/IRESGtx15Hを制限酵素BamHI,NotIで処理しIRESGtxn(n=3,5,7)、IRESGtx10、IRESGtx15を取り出し、一方、pMSCV/eGΔALIH(EMCV IRES、TNFα)の制限酵素BamHI−NotIサイトに挿入し、pMSCV/eGΔALIH(Gtx IRES、TNFα;n=3,5,7)、pMSCV/eGΔALIH(Gtx10 IRES、TNFα)、pMSCV/eGΔALIH(Gtx15 IRES、TNFα)とした。
【0071】
また、pMSCV/eGPcmvLIH(TNFα)に関しては、上記のpMSCV/eGΔALIH(Gtx IRES、TNFα;n=3,5,7)、pMSCV/eGΔALIH(Gtx10 IRES、TNFα)、pMSCV/eGΔALIH(Gtx15 IRES、TNFα)を制限酵素SalI,ClaIで処理し、LIH(TNFα)を切り取り、これを実施例2に記載のpMSCV/eGPcmvの制限酵素SalI−ClaIサイトに挿入し、pMSCV/eGPcmvLIH(Gtx IRES、TNFα;n=3,5,7)、pMSCV/eGPcmvLIH(Gtx10 IRES、TNFα)、pMSCV/eGPcmvLIH(Gtx15 IRES、TNFα)とした。
【0072】
(実施例6)動物培養細胞を用いた免疫グロブリン分子の産生
免疫グロブリン分子の産生をCHO−K1細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)で行った。培地は10%の牛胎児血清(Fetal Bovine Serum,FBS)と50units/mlのペニシリン、ストレプトマイシンを含むグルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s Modidied Eagle Medium,DMEM;ギブコ社製)を用いた。培養は37℃、CO5%で行った。
24wellプレート(底面積1.9cm)に細胞数1.2×10細胞/ウェルになるように細胞を播種した(翌日90%コンフルエントになるようにする)。翌日、培地を取り除き、新たに0.5mlの培地を加えた。2.5μlのLipofectamine.2000(インビトロジェ社製)を50μlのOpti−MEM(登録商標)I Reduced Medium(ギブコ社製)に懸濁し、室温で5分おいた(Lipofectamine.2000溶液)。0.8μgの実施例4および5で構築した免疫グロブリン分子発現プラスミドベクターを50μlのOpti−MEM(登録商標)I Reduced Mediumに懸濁した(プラスミドDNA溶液)。Lipofectamine.2000溶液とプラスミドDNA溶液を混合し、室温で20分おいた。これを培養ディッシュに全量加え、48時間培養した。
48時間培養後、培養上清を0.45μmセルロースアセテートフィルター(アドバンテック社製)に通し、1.5mlチューブに集めた。20000×gで10分間遠心し、細胞片を沈降させたのち、上清を回収し、測定用サンプルとした。それぞれの条件に対して3ウェルづつ行った。
【0073】
(実施例7)ELISAによる免疫グロブリン分子濃度の定量
実施例6で回収した上清中の免疫グロブリン分子の発現量を測定するために、enzyme−linked immunosorbent assay(ELISA)法を行った。抗体生産量は測定で用いた標準品より算出した。
測定方法は代表的な方法に従った(Immunochemistry、8、871−874(1971))。
ウサギ抗ヒトIgG(Fc特異的)抗体(Organon Teknika,Durham,NC,USA)を一次抗体として、ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ヒトIgG抗体(Organon Teknika,Durham,NC,USA)を二次抗体として用いた。検出基質としてo‐phenylenediamineを用いて発色させ、吸光度をプレートリーダーで測定した。定量時のスタンダードとしてhuman IgG1(Athens Research and Technology,Athens,GA,USA)を用いた。得られた結果を図1〜3に示す。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】β−アクチンプロモーターを含む抗ヒトCD2抗体発現ベクターpMSCV/eGΔALIH(CD2)をCHO−K1細胞に導入した際の免疫グロブリン分子生産分泌量を示すグラフ。縦軸はFc濃度(ng/mL)を示す。横軸において、「E」はIRES配列としてEMCVのIRESを用いたベクターを示す。「3」、「5」、「7」、「10」又は「15」はそれぞれIRES配列としてGtx IRESを導入したベクターで、そのGtx IRESの反復回数がそれぞれ3、5、7、10又は15回のものを指す。「Empty」はベクターを導入しない細胞(コントロール)での測定結果を示す。
【図2】β−アクチンプロモーターを含む抗ヒトTNFα抗体発現ベクターpMSCV/eGΔALIH(TNFα)をCHO−K1細胞に導入した際の免疫グロブリン分子生産分泌量を示すグラフ。縦軸及び横軸の表記は図1に同じ。
【図3】CMVプロモーターを含む抗ヒトTNFα抗体発現ベクターpMSCV/eGPcmvLIH(TNFα)をCHO−K1細胞に導入した際の免疫グロブリン分子生産分泌量を示すグラフ。縦軸及び横軸の表記は図1に同じ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリン分子を産生するための組換えベクターであって、
プロモーターの下流に、前記免疫グロブリン分子を構成する重鎖をコードする塩基配列(A)、及び、前記免疫グロブリン分子を構成する軽鎖をコードする塩基配列(B)を配置し、前記塩基配列(A)と前記塩基配列(B)のあいだに、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列を配置してなることを特徴とする組換えベクター。
【請求項2】
ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列は、前記mRNA中の5′UTR又はその一部からなるものである請求項1記載の組換えベクター。
【請求項3】
内部リボソーム結合配列は、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNA中の5′UTRにおいて転写開始点より133〜141番目の塩基配列である請求項1又は2記載の組換えベクター。
【請求項4】
塩基配列(A)と塩基配列(B)のあいだに、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列を2回以上反復させて配置してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の組換えベクター。
【請求項5】
塩基配列(A)と塩基配列(B)のあいだに、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列を2回以上5回以下反復させて配置してなる請求項4記載の組換えベクター。
【請求項6】
塩基配列(A)と塩基配列(B)のあいだに、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列を6回以上10回以下反復させて配置してなる請求項4記載の組換えベクター。
【請求項7】
塩基配列(A)と塩基配列(B)のあいだに、ホメオドメインタンパク質GtxをコードするmRNAに由来する内部リボソーム結合配列を11回以上反復させて配置してなる請求項4記載の組換えベクター。
【請求項8】
免疫グリブリン分子は、哺乳類由来のものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の組換えベクター。
【請求項9】
免疫グロブリン分子は、ヒト免疫グロブリン分子である請求項8記載の組換えベクター。
【請求項10】
免疫グロブリン分子は、マウス免疫グロブリン分子である請求項8記載の組換えベクター。
【請求項11】
免疫グロブリン分子は、異種動物間でのキメラ、又は、ヒト化に属するものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の組換えベクター。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組換えベクターで動物宿主細胞を形質転換してなることを特徴とする形質転換体。
【請求項13】
動物宿主細胞がChinese Hamster Ovary(CHO)由来細胞である請求項12記載の形質転換体。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組換えベクターを動物培養細胞に導入した後、当該動物培養細胞を培養して免疫グロブリン分子を産生させることを特徴とする、免疫グロブリン分子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−295846(P2007−295846A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126673(P2006−126673)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月28日 社団法人化学工学会主催の「化学工学会第71年会(平成18年度)」において文書をもって発表
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】