説明

内部及び外部較正を兼ね備える分析物定量化マルチプレックス式マイクロアレイ

本発明は、分析物の定量化のためのマルチプレックス式マイクロアレイ及び方法に関する。特に、本発明は、既知の濃度の標的分析物について検証、承認及び認知された参照標準から得られた参照標準化曲線に対して、試験試料中の標的分析物濃度を標準化する改善された方法に関する。本発明はまた、正規化標準及び対照を確認する信頼度を同時測定するための方法及び点検にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析物の定量化のためのマルチプレックス式マイクロアレイ及び方法に関し、特に、本発明は、内部参照標準化曲線(internal reference standardization curve)及び既知の参照標準から得られた標準化曲線に対して、分析物濃度を標準化する改善された方法に関する。本発明はまた、正規化標準(normalization standard)及び対照を確認する信頼度を同時測定するための方法及び点検にも関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマーカーは、生物の生物学的状態の指標として測定及び評価できることが特徴である。医学では、バイオマーカーは、臓器機能などの生物学的プロセス、並びに生化学的機能及び経路を調べるために患者に導入される外因性物質であり得る。バイオマーカーはまた、特定の疾患状態又は薬物療法に対する反応を示す、患者から得られたタンパク質又は核酸などの生体分子であってもよい。このような生化学バイオマーカーは、新薬の発見及び開発においても特に有用である。このような薬剤の初期臨床研究中、適切なバイオマーカーの定量化は、最も有望な薬剤候補をより迅速に同定するうえで研究者を潜在的に支援することができ、故に、薬剤開発プロセスを効率化することができる。疾患関連バイオマーカーはまた、疾患の診断又は予後のため、及び治療有効性の尺度としても使用することができる。故に、患者の健康及び/又は治療介入に対する反応を評価するのに有用であり得る新規のバイオマーカーを同定及び検証し、さらには既知のバイオマーカーの正確且つ再現可能な判定のための方法を提供することは、極めて重要である。
【0003】
バイオマーカー分析は、抗体(生物学的起源にこれ自体が由来するが故に、品質管理及び安定性の問題の対象となり得る)などの試薬の完全性に高度に依存する。多くのバイオマーカーアッセイプロセスでは、検量線を得るために、組換えタンパク質及び代理マトリックスなどの認証されていない標準が使用されている。故に、代理マトリックスにおいて作製されたさまざまな較正標準濃度に対するアッセイの反応が、患者試料の一連の希釈の反応に相当する並行試験が行われる必要がある。抗体及びリガンド結合親和性は異なる培地で著しく異なる可能性があることから、希釈直線性も問題となり得る。バイオマーカーアッセイ開発及び認定(qualification)の目標は、臨床的有益性のためのアッセイを開発することである。
【0004】
標的抗原に対する抗体の結合特異性に基づく酵素結合免疫吸着アッセイ(「ELISA」)などの免疫アッセイは、当技術分野でよく知られている(例えば、Engvallら、Immunochem.1971年、8:871頁;Ljunggrenら、J.Immuno.Meth.1987年、88:104頁;Kemenyら、Immunol.Today 1986年、7:67頁参照)。免疫アッセイは、抗体が特定のバイオマーカーに対して生成され得ることから、タンパク質又は核酸などの新規の生化学バイオマーカーの同定、及び既知のバイオマーカーの定量化に高度に有用である。
【0005】
免疫アッセイによるバイオマーカーの定量的判定の方法の例は、当技術分野で知られている。例えば、Hawkesら、Anal.Biochem.1982年、119:142〜147頁、並びにTobin及びGordon、J.Immunol.methods 1984年、72:313〜340頁、並びにGordonら、タイトル「免疫学的分析のための装置及びキット(Device and kits for immunological analysis)」に対する米国特許第5,486,452号参照。
【0006】
以前に使用された免疫アッセイ方法は、単一の反応器内で1試験サイクル当たり1つの標的分析物を検出できるのみに限定される傾向があった。固体基質(例えばビーズ又はプレート上のウェル)にプローブ分子(例えば抗体)を接着させ、次いで、固体基質上で試験試料、緩衝液、及び試薬溶液を洗浄して、各試験サイクルの完了時間を減らし、且つ1サイクル当たりの実施される試験数を増やす試みが行われて来た。
【0007】
マイクロアレイは、DNA及びタンパク質などの生体分子が多数(例えば数百から数千)の試料が、プラスチック(例えばポリプロピレン、ポリスチレン、シクロオレフィン)、シリコーン、及びガラスなどの適切な非反応性基質表面に付着又は固定化される装置である。基質表面が比較的平たい場合、生体分子を表面に「印刷」することができ、印刷は、既知の濃度の生体分子を含有する既知の容量の「スポッティング」緩衝液の適用により実施される。既知の基質又は基質表面の既知の位置に生体分子が固定された状態で、基質表面は、次いで、検出、並びに定性的及び定量的分析を行うために生化学/化学試薬に曝露され得る。例えば、マイクロアレイは、ELISA型免疫アッセイを実施するのに使用することができる。該アッセイでは、基質に付着された生体分子は抗体であり、基質表面は次いで、抗体が結合できる抗原を含有する試験溶液に曝露される。基質表面は、次いで緩衝溶液で洗浄され、検出可能な標識(例えば放射標識又は蛍光色素)、又は反応生成物が着色され故に検出可能になる、反応を触媒する酵素のどちらかに結合される二次抗体に曝露され得る。マイクロアレイは故に、大量の試料のハイスループット分析を可能にする。同時に、コンピュータソフトウェアプログラムが、マイクロアレイから生成された大量のデータを分析するのに開発された。
【0008】
マイクロアレイ及びマイクロアレイにより提供されたデータを処理する方法の幾つかの例は、当技術分野で知られている。例えば、Ghandourら、タイトル「生体分子アレイからのデータを分析する方法及び装置(Method and apparatus for analysis of data from biomolecular arrays)」に対する米国特許第6,516,276号、Shahによる、タイトル「アレイベースの比較結合アッセイの方法(Methods for array−based comparative binding assays)」に対する米国特許第6,916,621号、及びMinor、タイトル「複数のプラットフォーム間でデータ値を比較する方法及びシステム(Methods and systems for comparing data values across multiple platforms)」に対する米国特許第7,072,806号参照。
【0009】
疾患を含む生物学的プロセスの検出及び診断に関連することは、幾つかの抗原性物質又はバイオマーカーに典型的である。複数のバイオマーカーの存在を確認するため、試験試料内の各マーカーは、別個の免疫アッセイを実施することが必要となろう。これは、任意の試験試料を分析する時間を大幅に増加させ、実施されなければならないアッセイごとに増加する費用の増加及び実験誤差の増加など、他の問題を引き起こす。故に、複数の抗原又はバイオマーカーの検出及び定量的測定を同時に可能にする、すなわち「マルチプレックス式の」検出及び判定を可能にするバイオマーカーの定量的判定方法を特定及び使用することが望ましい。
【0010】
マイクロアレイは同時、複数の生化学分析を可能にすることから、マイクロアレイはマルチプレックス式分析物検出を行うのに適合され得る。既存のマイクロアレイの能力を高めるため、複数の異なるプローブ生体分子が同じマイクロアレイに存在する「マルチプレックス式の」マイクロアレイが開発された。これは、利用者が試験試料中の複数の標的分析物を検出及び分析するのを可能にする。これは、病原性及び生理学的障害を含む生物学的プロセスの検出及び診断に使用され得る複数のバイオマーカーについての、組織/体液試料のハイスループットスクリーニングに特に有用である。
【0011】
正確な定量的分析及び再現性を得るうえでの困難を含めて、マイクロアッセイ中に生じ得る問題が幾つかある。このような問題は、多重検出を実施する試みにおいて拡大される傾向がある。クロスハイブリダイゼーションは、マイクロアレイの表面に固定された生体分子間で生じる可能性がある。さらに、生体分子の所望量の全てが、印刷プロセス中に基質表面に付着できるわけではない。例えば、比較的平たい基質表面の場合、基質表面に生体分子の量にむらのある印刷がある可能性があり、定量的分析の確度に影響することになる。さらに、アッセイのプロセスで、未知量の生体分子が、アッセイ試薬の適用及び除去中に洗い流される可能性がある。故に、アッセイのプロセスにおける基質表面の特定の位置内にある生体分子の実際量は、理論的印刷量、すなわちスポッティング緩衝液の既知の濃度、及び表面に適用されるスポッティング緩衝液の容量に基づき計算される量より少ない可能性がある。しかし、試験試料中の分析物量を定量化する従来技術方法は、マイクロアレイに固定化された生体分子の理論的量と実際量の間の相違を考慮に入れていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、コーティング/スポッティング緩衝液の濃度に基づくマイクロアレイ基質表面の生体分子の理論的濃度と、基質表面に存在する生体分子の実際の濃度の間の相違が原因であり得るようなマイクロアッセイ方法に固有の実験誤差を最小化するため、マイクロアレイから得られたデータを正規化する方法を開発する必要がある。さらに、マルチプレックス式マイクロアレイの単一試験サイクルは、複数のアッセイ又は標準のバッチからデータを得ることができることから、異なるアッセイ又は標準間の変換値を可能にし、このようなアッセイ全てにわたる参照標準を提供するために、複数のアッセイ又は標準のバッチを比較する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広範な態様により、試験試料中の1つ又は複数の分析物(単数又は複数)を定量化する方法であって、
(a)複数の別々の反応基質を提供するステップであって、各反応器にマイクロアレイが印刷されており、前記マイクロアレイが、
複数の較正スポットを含む較正マトリックスであって、各較正スポットが所定量の較正化合物を含み、各較正スポットが較正化合物の理論的濃度に対応する、上記較正マトリックスと、
複数の捕捉スポットを含む分析物捕捉マトリックスであって、各捕捉スポットが前記分析物に選択的に結合する所定量の作用剤を含む、上記分析物捕捉マトリックスと
を含む上記ステップと、
(b)所定容量の試験試料を前記別々の反応基質の1つに適用するステップと、
(c)複数の参照標準であって、各々が既知の濃度を有し、各々が所定量の各前記分析物を含む、上記参照標準を提供するステップと、
(d)所定容量の各参照標準を前記別々の反応基質の1つに適用するステップと、
(e)ステップ(b)及びステップ(d)からの各別々の反応基質に対して
(i)各スポットに結合された分析物又は較正化合物の量に正比例する測定可能なシグナル強度を提供する標識レポーター化合物を適用し、
(ii)マイクロアレイ内のスポットごとにシグナル強度値を測定し、
(iii)ステップ(b)の反応基質に対する第1検量線を生成し、ステップ(d)の反応基質に対する第2検量線を生成し、各ケースにおいて前記検量線を、較正化合物のシグナル強度値対理論的濃度のグラフに曲線を適合させることによって作成し、
(iv)第1検量線を用いて試験試料の第1分析物当量濃度を判定し、第2検量線を用いて各参照標準の第2分析物当量濃度を判定するステップと、
(f)第2分析物当量濃度対各参照標準の既知の濃度のグラフに曲線を適合させて参照標準化曲線を生成するステップと、
(g)補正された分析物濃度を得るために、参照標準化曲線を用いて試験試料の第1分析物当量濃度を正規化するステップと
を含む、上記方法が提供される。
【0014】
上記に提供された方法の実施形態では、ステップ(e(iii))において、第1及び第2検量線は、
(1)較正マトリックスにおいて、較正マトリックスが、較正化合物の一般的な理論的濃度に対応する複製物である2つ以上の較正スポットを含む場合に、各複製較正スポットの測定シグナル強度値を、各前記較正スポットの平均測定シグナル強度値に対して正規化すること、及び
(2)各前記較正スポットの平均測定シグナル強度値対較正標準の対応する各理論的濃度のグラフに曲線を適合させること
により生成される。
【0015】
上記に提供された方法のさらなる実施形態では、ステップ(e(iv))において、試験試料又は参照標準中の分析物の濃度は、
(3)ステップ(b)及びステップ(d)の各反応基質の分析物捕捉マトリックスにおいて、分析物捕捉マトリックスが、複製物である2つ以上の捕捉スポットを含む場合に、各複製捕捉スポットの測定シグナル強度値を平均測定シグナル強度値に対して正規化すること、及び各スポットの測定シグナル強度値を各前記捕捉スポットの平均測定シグナル強度値に対して正規化すること、並びに
(4)(i)ステップ(b)の反応基質の各前記捕捉スポットの平均測定シグナル強度値及び第1検量線を用いて、前記試験試料中の分析物の濃度を計算すること、並びに
(ii)ステップ(d)の反応基質の各前記捕捉スポットの平均測定シグナル強度値及び第2検量線を用いて、各前記参照標準中の分析物の濃度を計算すること
により判定される。
【0016】
較正マトリックス及び試料捕捉マトリックスの各スポットの測定シグナル強度値の正規化は、Tukey Biweightアルゴリズムを適用して行うことができる。
【0017】
本発明の方法の実施形態では、分析物捕捉マトリックスのスポットの総数は、較正マトリックスのスポットの総数に少なくとも等しい。方法のさらなる実施形態では、線形希釈系列に対応する分析物(単数又は複数)の3から20の間の異なる理論的濃度がある。方法のさらに別の実施形態では、較正標準の各理論的濃度に対する3から15の間のスポットがある。
【0018】
本発明の実施形態では、標識レポーター化合物は蛍光標識抗体である。
【0019】
本発明の別の実施形態では、複数の反応基質はマルチウェルアッセイプレートの形態にある。本発明のさらに別の実施形態では、複数の反応基質は複数のビーズの形態にある。
【0020】
本発明の別の実施形態では、試験試料は生体試料である。
【0021】
本発明の別の態様では、生体試料が患者から得られ、並びに使用に
(a)前記患者における疾患の進行をモニターするステップ
(b)前記疾患に対する治療の効果を測定するステップ、及び
(c)前記疾患の前記治療中に前記患者における薬剤の濃度を測定するステップ
のいずれか1つを含み、
定量化される1つ又は複数の分析物が、前記疾患を示すバイオマーカー(単数又は複数)である、上記実施形態のいずれかによる方法の使用が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の態様では、
(1)前記対象から得られた生体試料中の
リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、及びリウマチ因子IgMの各々、並びに
抗環状シトルリン化ペプチドIgG、抗環状シトルリン化ペプチドIgA、及び抗環状シトルリン化ペプチドIgMから成る群から選択される少なくとも1つの抗環状シトルリン化ペプチド抗体
の濃度レベルを測定するステップであって、
リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG及びリウマチIgMの各々、並びに少なくとも1つの選択された抗環状シトルリン化ペプチド抗体に対する既知の濃度の参照標準が提供される、上記ステップと、
(2)(i)リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、及びリウマチ因子IgMの各々の測定濃度レベルを、リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgMの対応する指標正常レベルと比較し、
(ii)選択された抗環状シトルリン化ペプチド抗体(単数又は複数)の測定濃度レベルを、選択された抗環状シトルリン化ペプチド抗体(単数又は複数)の対応する指標正常レベルと比較するステップであって、
上述のバイオマーカーの測定濃度レベルのいずれかが指標正常レベルを超えることが、関節リウマチの診断指標となる、上記ステップと
を含む、前記対象における関節リウマチを診断するための、上記実施形態による方法の使用が提供される。
【0023】
本発明のさらに別の態様では、リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgM、並びに抗環状シトルリン化ペプチドIgG、抗環状シトルリン化ペプチドIgA、及び抗環状シトルリン化ペプチドIgMから成る群から選択される少なくとも1つの抗環状シトルリン化抗体の濃度レベルを測定するステップを含む、関節リウマチを患う対象において関節リウマチ治療をモニターするための、上記実施形態による方法の使用が提供される。上記バイオマーカーの濃度レベルの測定は、治療中に複数回実施される。
【0024】
関節リウマチを診断且つ/又は関節リウマチ治療をモニターするための、方法の上記使用の実施形態では、マイクロアレイは、所定量の較正化合物を含む複数のスポットを含む較正マトリックスであって、各スポットが較正化合物の理論的濃度に対応する上記マトリックスと、所定量のリウマチ因子を含む複数のスポットを含む第1分析物捕捉マトリックスと、所定量の環状シトルリン化ペプチドを含む複数のスポットを含む第2分析物捕捉マトリックスとを含む。
【0025】
関節リウマチを診断且つ/又は関節リウマチ治療をモニターするための、方法の上記使用のさらに別の実施形態では、マイクロアレイは、
(i)所定量のIgA又はこのフラグメントと、所定量のIgG又はこのフラグメントと、所定量のIgM又はこのフラグメントとを含む複数のスポットを含む陽性対照マトリックス、
(ii)標識レポーター化合物と相互作用するいずれかの化合物と、
リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgMから成る群から選択される上記のいずれか1つに選択的に結合するいずれかの化合物と、抗環状シトルリン化ペプチドIgG、抗環状シトルリン化ペプチドIgA、及び抗環状シトルリン化ペプチドIgMから成る群から選択される上記のいずれか1つに選択的に結合するいずれかの化合物と
がない複数のスポットを含む陰性対照マトリックス、並びに
(iii)生体試料に関連した分析物に選択的に結合する作用剤を含む複数のスポットを含み、前記分析物は、生体試料中に天然に存在する化合物又は生体試料に添加される外来化合物であり、ただし、前記分析物は、リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgM、抗環状シトルリン化ペプチドIgG、抗環状シトルリン化ペプチドIgA、又は抗環状シトルリン化ペプチドIgMではない、上記試料対照マトリックス
の1つ又は複数をさらに含む。
【0026】
関節リウマチを診断又は治療するための上記実施形態による本発明の方法を使用する場合、方法は、マルチウェルアッセイプレートで実施することができ、アッセイプレートの1ウェルは上記の1マイクロアレイを含み、マルチウェルアッセイプレートは1つ又は複数の信頼度確認正規化標準及び対照を含む。或いは、方法は、複数のビーズで行うことができ、個々のビーズは上記の1マイクロアレイを含み、複数のビーズは、1つ又は複数の信頼度確認正規化標準及び対照を含む。
【0027】
関節リウマチを診断且つ/又は関節リウマチ治療をモニターするための、方法の上記使用のさらなる実施形態では、複数の反応基質(上記マルチウェルアッセイプレースの1つ若しくは複数の個々のウェル、又は上記複数のビーズの1つ若しくは複数のビーズのどちらかであってもよい)は、以下の対照、すなわち、
・リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgMの各々に対する少なくとも1つの陽性対照、及び前記選択された抗環状シトルリン化ペプチド(単数又は複数)に対する少なくとも1つの陽性対照、
・リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgMの各々に対する少なくとも1つの陰性対照、及び前記選択された抗環状シトルリン化ペプチド(単数又は複数)に対する少なくとも1つの陰性対照、
・リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、及びリウマチ因子IgMの各参照標準に対する少なくとも1つの陽性対照、並びに前記選択された抗環状シトルリン化ペプチド(単数又は複数)の各参照標準に対する少なくとも1つの陽性対照、
マトリックス位置、マトリックスローテーション、マトリックスシフト、及び1アレイ当たりのスポット数を確認するための1つ又は複数の配置対照、
・複製シグナル強度を確認するための1つ又は複数の複製対照、
・血清確認、バックグラウンドシグナル及び液体容量移動確認のための1つ又は複数のプロセス対照、
・内部検量線を確認するための1つ又は複数の配置対照、及び
・標準化曲線を確認するための1つ又は複数の配置対照
の1つ又は複数をさらに含むことができる。
【0028】
本発明の利点は、試験試料中の標的分析物の量を定量化する改善されたマイクロアレイベースの方法であって、適用されるプローブ及び較正標準の量におけるこの固有の相違を補正する方法を提供することである。方法は、試験試料中の1つ又は複数の分析物を単一の反応器で測定するのに使用することができる。方法は、マルチプレックス式マイクロアレイを用いて、試験試料中の複数の標的分析物の量を正確に定量化するのに特に有用である。
【0029】
本発明のさらに別の利点は、診断又は予後目的のために生体試料中の臨床関連バイオマーカーをより正確に定量化する方法を提供することである。本明細書に開示された方法はまた、疾患の進行及び同様に疾患に対する治療の効果をより正確にモニターするのに使用することもできる。
【0030】
本発明の他の並びにさらなる利点及び特徴は、添付図面と合わせて、この実施形態の以下の詳細な記載から当業者には明白であろう。
【0031】
本発明は、図面を参照して、本発明の実施形態の以下の詳細な記載からさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】マルチプレックス式アッセイを行うための最初の較正及び参照標準化の各ステップを図示するフローチャートである。
【図2】A−較正マトリックス、B−第1分析物捕捉マトリックス、C−第2分析物捕捉マトリックス、D−患者試料に対する陽性対照マトリックス、E−第1分析物陽性対照マトリックス、F−陰性対照マトリックス、G−第2分析物陽性対照マトリックス、及びH−第3分析物陽性対照試験マトリックスを含む、複数のスポットマトリックスを含むマルチプレックス式マイクロアレイの略図である。
【図3】正規化された測定シグナル強度対12の異なる濃度レベルにおける一連の較正標準の理論的濃度をプロットして作成された最初の検量線を示す図である。
【図4】IU/ml又はU/mlで表された一連の較正標準の複製分析物当量濃度値の組(AEC2値)対既知の参照標準濃度をプロットする参照標準化曲線、及び参照標準化曲線を用いた、試験スポットのAEC1値((矢印で示された)からの補正された標的分析物濃度の判定を示す図である。
【図5】標識されたような一連のスポットマトリックスを含む、関節リウマチに関するマルチプレックス式マイクロアレイ診断アッセイの略図である。
【図6】測定されたリウマチ因子IgA(RF−IgA)、リウマチ因子IgG(RF−IgG)、リウマチ因子IgM(RF−IgM)及び抗環状シトルリン化ペプチドIgG(CCP−IgG)レベル並びにこれらのそれぞれの臨床カットオフ値を図示する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
患者から得られた生体試料などの試験試料中の標的分析物を検出及び定量化するためのマイクロアレイの使用は、よく知られている。試験試料中の標的分析物の量を定量化するプロセスは、典型的には、標的分析物に選択的に結合する作用剤(「プローブ」とも呼ばれる)を含むマイクロアレイを提供するステップを含み、プローブは、マイクロアレイの固体表面に最初に固定化される(「基質」とも呼ばれる)。マルチウェルアッセイプレート(「マイクロタイタープレート」又は「マイクロプレート」とも呼ばれる)のウェルの底など、基質が比較的平面である場合、プローブは、既知の濃度のプローブを含むスポッティング溶液を調製すること、及び試験試料中の標的分析物(もし存在すれば)に結合するであろう捕捉スポット(「試験ドット」とも呼ばれる)を提供するために所定容量のスポッティング緩衝液を表面に印刷することにより、マイクロアレイの表面に固定化することができる。同様に、生化学分析に一般に使用されるビーズ上で見出すことができるように、基質が球面である場合、プローブは、既知の濃度のプローブを含むコーティング溶液を調製すること、及びビーズ(単数又は複数)をコーティング溶液に浸漬することにより、ビーズの表面に固定化することができる。
【0034】
標的分析物の既知の濃度の較正標準は、検量線を構築する目的で使用することができる。較正標準は、標的分析物に類似した生化学特性を有する代理化合物であることもできる。基質表面が比較的平たい例では、較正標準は、「較正スポット」を形成するように、標的分析物に対するプローブを含有する捕捉スポットと同様にマイクロアレイに適用することができる。故に、マイクロアレイは、複数の較正スポットを含むことができ、各較正スポットは、マイクロアレイの基質表面に固定化された所定量の標的分析物又は代理化合物を含む。マイクロアレイに結合された分析物の量を検出するレポーティングシステムが提供される。例えば、一般に使用されるレポーティングシステムは、分析物に選択的に結合する蛍光標識抗体である。検量線は、較正スポットの標識レポーターの測定シグナル強度(y軸)対較正標準の理論的濃度(x軸)のグラフに曲線を適合させて生成される。グラフへの曲線の適合は、線形回帰などの周知の数学的及び統計的方法により行うことができる。検量線は次いで、捕捉スポットの測定シグナル強度に基づき試験試料中の分析物の濃度を判定するのに使用され、y値とする捕捉スポットの測定シグナル強度が検量線にプロットされ、対応するx値が試験試料中の分析物の濃度と見なされる。
【0035】
典型的には、印刷プロセス中、プローブ及び較正標準の全てがマイクロアレイの基質表面に付着されることはないであろう。さらに、アッセイのプロセスで、少量及び未知量のプローブ及び較正標準が、アッセイ試薬の適用及び除去中に洗い流される可能性がある。故に、アッセイのプロセスで、表面に固定化されるプローブ又は較正標準の実際量は、理論的印刷量、すなわち、それぞれのスポッティング緩衝液中のプローブ又は較正標準の既知の濃度、及び表面に適用されるスポッティング緩衝液の容量に基づき計算される量より少ない。しかし、試験試料中の分析物量を定量化する従来技術方法は、マイクロアレイに固定化されたプローブ及び較正標準の理論的量と実際量の間の相違を考慮に入れていない。
【0036】
適用されるプローブ及び較正標準の量におけるこの固有の相違を補正する、試験試料中の標的分析物の量を定量化する改善されたマイクロアレイベースの方法がこれより提供される。方法はまた、試験試料中の複数の分析物を単一の反応器で測定するのに、マルチプレックス式マイクロアレイで使用することもできる。
【0037】
図1を参照して、本発明の方法の実施形態は以下の記載により理解され得る。
【0038】
方法は、図1(「図1」)に図示されるような2段階を含む。
【0039】
下記のような方法を実施するために、複数の別々の反応基質が提供され、各々にマイクロアレイが印刷されている。マイクロアレイは、当技術分野で周知の従来の方法を用いて各反応基質の表面に、印刷又はコーティングすることにより固定することができる。本実施形態では、反応基質は、マルチウェルアッセイプレートのウェルの底により提供されるような平面であることが想定される。しかし、ビーズなどの他のタイプの反応基質が使用され得ることが理解される。本明細書では、用語「マイクロアレイ」とは、固体基質に付着されたタンパク質又はヌクレオチド配列など特定の化合物の一連の別々の付着物(deposit)(「スポット」とも呼ばれる)を指す。
【0040】
各マイクロアレイは、以下のセットのスポットを含む:
(i)各捕捉スポットが試験試料中の標的分析物に特異的に結合するプローブを含有する、1つ又は複数の捕捉スポット(「分析物捕捉マトリックス」)、及び
(ii)各較正スポットが較正標準の既知の(理論的)濃度に対応するように各較正スポットが所定量の標的分析物を含有する、複数の較正スポット(「較正マトリックス」)。未知量の標的分析物が較正スポットの印刷中、及びアッセイ試薬の適用及び除去中に失われている可能性があることから、上記のように、任意の較正スポットに対する標的分析物の既知の濃度は、実際は理論的値である。本明細書で使用する場合、用語「所定量」とは、較正標準を含むスポッティング緩衝液の既知の濃度、及び反応器に印刷されるスポッティング緩衝液の既知の容量に基づき計算されるような較正標準の量を指す。較正標準の同定は、標的分析物の性質に依存するであろう。較正標準は、較正標準及び参照標準が同じになるケースでは標的分析物自体である可能性がある。このような実施形態では、マイクロアレイは、標的分析物ごとに別個の較正標準を含むであろう。或いは、マイクロアレイは、各標的分析物を含有する較正スポットを有する単一の較正マトリックスを含むことができる。別の実施形態では、較正標準は代理化合物である。例えば、標的分析物が抗体であるならば、較正標準に使用することができる適切な代理化合物は、異なる抗体だが標的抗体と同じクラスの免疫グロブリンの抗体であり得る。このような実施形態では、1つの較正マトリックスのみが必要とされ得る。
【0041】
図1による方法では、各マイクロアレイが別々の反応基質の表面に印刷された複数のマイクロアレイが提供される。別々の反応基質は、個々の各ウェルに1つ又は複数のマイクロアレイが印刷されているビーズ又はマルチウェルアッセイプレートの形態にあってもよい。好ましい実施形態では、方法は、表面へのマイクロアレイ印刷に適したマルチウェルアッセイプレートを用いて実施される。各マイクロアレイ内で、分析物捕捉マトリックス及び較正マトリックスの数は、標的分析物の数及び標的分析物の性質に依存するであろう。
【0042】
別個の反応基質が、アッセイされる試験試料ごと及び参照標準ごとに提供される。本明細書で使用する場合、用語「参照標準」とは、生体分子の市販の標準溶液など標的分析物の既知量を含む溶液を指す。可能であれば、参照標準は、本アッセイでの使用に適切な国際的に認知された標準物と同等であること及び追跡可能であることが立証され、その定められた有効期限前に安全であることが証明されている標準物である。任意の標的分析物に対して、異なる濃度での参照標準数は、3から16の間、より好ましくは5から8の間の範囲であってもよい。参照標準は、マイクロアレイを読み取るのに使用される検出システムのダイナミックレンジ内に濃度が入る線形希釈系列の形態にあってもよい。
【0043】
方法の第1段階(図1、段階1)では、未知の濃度の標的分析物を含有する試験試料が、上記のようなマイクロアレイを含む反応基質の1つに適用される(図1、(a1)及び(b1))。同様に、各々が既知の濃度の標的分析物を含有する2つ以上の参照標準(単数又は複数)が、残りの反応基質(単数又は複数)に各々適用され、各反応基質は、上記のような一連のスポット(i)及び(ii)を含む(図1、(a2)及び(b2))。試験試料及び各参照標準に対して、検出及び測定され得るシグナル強度(「測定シグナル強度」)を提供するレポーティングシステムも提供される。測定シグナル強度は、マイクロアレイ上の任意のスポットに存在する標的分析物又は較正標準の量に対し正比例して変化する。適切なレポーティングシステムの例は、蛍光の強度が測定され得、結合抗体の量に比例する、標的分析物に特異的に結合する蛍光標識抗体である。
【0044】
マイクロアレイの別々の基質表面への試験試料及び1つ又は複数の参照標準の適用後、各基質からの較正スポットのセットに対する測定シグナル強度(y軸)が、較正スポットのそれぞれの理論的濃度(x軸)に対してプロットされる。回帰分析及び/又は他の周知の数学的及び統計的方法が、データポイントに最も適合し、故に最初の検量線を形成する標準曲線を作成するのに使用される。故に、試験試料に曝露された較正スポットから得られた初回検量線(図1、(c1))、及び参照標準に曝露された較正スポットから得られた第2の最初の検量線(図1、(c2)がある。
【0045】
次に、各基質上の捕捉スポット(単数又は複数)の測定シグナル強度をそれぞれの最初の検量線にy値としてプロットし、対応するx値(濃度の単位であるx軸)を見出し、故に試験試料中(図1、(d1))、及び参照標準中(図1、(d2))の標的分析物の濃度を判定して、「分析物当量濃度」(「AEC」)が判定される。こうすることは、以下の値、すなわち、
(1)試験試料中の未知の濃度の標的分析物に対する第1分析物当量濃度(「AEC1」、図1、(e1))、及び
(2)既知の濃度の標的分析物の1つ又は複数の参照標準の各々に対する第2分析物当量濃度(「AEC2」、図1、(e2))
を提供する。
【0046】
方法のこの第1段階で得られるような分析物当量濃度値AEC1及びAEC2が、捕捉及び較正スポットの印刷中及びアッセイ試薬の適用及び除去中に生じ得るような、アッセイ動態における偏差及び変動も、又はマイクロアレイ間のわずかなロット間変動も考慮に入れていないことは注意されるべきである。
【0047】
方法の第2段階では(図1、段階2)、参照標準の分析物当量濃度、AEC2が、参照標準のそれぞれの既知の濃度(「参照濃度」)に対してプロットされる。回帰分析及び/又は他の周知の数学的及び統計的方法が、「参照標準化曲線」と呼ばれる、データポイントに最も適合する標準曲線を判定するのに次いで使用される(図1、(f))。
【0048】
次に、試験試料の分析物当量濃度、AEC1が参照標準化曲線にプロットされ、AEC1の対応するx値が補正された標的分析物濃度と見なされる(図1、それぞれ(g)及び(h))。
【0049】
図2は、2つの異なるプローブ化合物に結合する複数の分析物の定量化に有用なマイクロアレイが提供される実施形態を図示する。例えば、図示されるようなマイクロアレイは、2つの異なる抗原に結合する抗体の定量化に有用であることができる。
【0050】
図2に図示されているマイクロアレイは、較正マトリックスAを含む。較正マトリックスは、マイクロアレイを読み取るのに使用される検出システムのダイナミックレンジ内に入る較正標準の理論的濃度と比例する、線形希釈系列の形態で別々の反応基質の表面に印刷することができる。較正標準の異なる濃度レベル数は、3から20の間、より好ましくは5から12までの範囲であってもよい。較正マトリックスは、理論的濃度ごとに複製スポットを含むこともできる。複製スポット数は、濃度レベルごとに3から15スポットの間、より好ましくは5から8スポットの間の範囲であってもよい。図2に図示されている本実施形態では、単一の較正マトリックスのみが必要とされ得るが、複数の較正マトリックスがマイクロアレイに含まれてもよいことが理解されるであろう。図2に図示されている本例では、較正標準は標的抗体とは異なる抗体であってもよく、該抗体は、さらに特異的に標識された抗体により認識される。例えば、較正標準は、ヒトIgA及びヒトIgMなどの容易に入手可能で、安価な抗体であってもよい。
【0051】
マイクロアレイは、標的分析物に選択的に結合する作用剤(「プローブ」とも呼ばれる)を含むスポットのサブアレイである、分析物捕捉マトリックスも含む。標的分析物がタンパク質である実施形態では、プローブは、標的分析物に特異的に結合する抗体又はこのフラグメントであってもよい。反対に、標的分析物が抗体である実施形態では、プローブは、該抗体により特異的に結合される抗原であってもよい。マイクロアレイは、2つの異なる抗原に選択的に結合する抗体を検出及び捕捉するのに使用することができる。図2に図示されている本例では、図示されたマイクロアレイは、それぞれ第1及び第2抗原を含む分析物捕捉スポットから成る分析物捕捉マトリックスB及びCを含む。
【0052】
分析物捕捉マトリックスにおける複製スポットの総数は、典型的には較正マトリックス中の参照標準の各所定濃度に対する複製スポットの総数に少なくとも等しい。例えば、較正マトリックスが参照標準の所定濃度ごとに7つの複製スポットを含むならば、試料捕捉マトリックスは、標的分析物に対し少なくとも7つの複製スポットを含むであろう。
【0053】
マイクロアレイは、標的分析物ごとに陽性対照マトリックスをさらに含むことができる。本明細書で使用する場合、用語「陽性対照マトリックス」とは、標的分析物及び標的分析物に選択的に結合する作用剤の複合体を含むスポットのサブアレイを指す。使用中、各陽性対照マトリックスのシグナル強度読み取りは、レポーティングシステム(例えば、標的分析物に選択的に結合する蛍光標識抗体)及びマイクロアレイスキャナーが、任意のチャンネルで正しく機能していることを確認する。さらに、各陽性対照マトリックスでのシグナル強度読み取りは、SQiDworks(商標)Diagnostic Platform(SQI Diagnostics Systems, Inc.社)のものなどのスポット発見アルゴリズムが、自動分析のためのマイクロアレイの全スポットに対する強度値を特定できるようにする。
【0054】
図2に図示されたマイクロアレイは、定量化される抗体のタイプごとに陽性対照マトリックスを含む。IgA陽性対照マトリックスHは、レポーティングシステムのIgA特異的標識レポーター及びスキャナーチャンネルが正しく機能していることを検証するためのIgA抗体又はIgAフラグメントを含むスポットのサブアレイである。IgM陽性対照マトリックスEは、レポーティングシステムのIgM特異的標識レポーター及びスキャナーチャンネルが機能していることを検証するためのIgM抗体又はIgMフラグメントを含むスポットのサブアレイである。IgG陽性対照マトリックスGは、レポーティングシステムのIgG特異的標識レポーター及びスキャナーチャンネルが機能していることを検証するためのIgG抗体又はIgGフラグメントを含むスポットのサブアレイである。
【0055】
マイクロアレイは、陰性対照マトリックスFを含むこともできる。本明細書で使用する場合、用語「陰性対照マトリックス」とは、検出可能なレベルの任意のアッセイ分析物又は任意の標識レポーターと相互作用する任意の化合物がないスポットのサブアレイを指す。使用中、マイクロアレイのこの領域での陰性シグナル強度読み取りは、分別検出可能な標識とマイクロアレイの間に偽の相互作用がないことを確認する。
【0056】
マイクロアレイは、試料対照マトリックスDをさらに含むことができる。本明細書で使用する場合、用語「試料対照マトリックス」とは、生体試料に関連した化合物に選択的に結合する作用剤を含むスポットのサブアレイを指す。化合物は、化合物が標的分析物と同じではないという条件で、生体試料中に天然に存在する化合物であってもよい。或いは、化合物は、生体試料に添加される外来化合物であってもよい。
【0057】
マイクロアレイを構成する各マトリックスは、ビーズ又はアッセイプレートのウェルなどの反応基質の表面に印刷することができる。好ましい実施形態では、マトリックスは、アッセイプレートのウェルの底に所定のX−Y座標で印刷される。
【0058】
方法の第1段階では、上記及び図1に図示されているように、図2のマイクロアレイが、試験試料及び参照標準中の標的分析物の分析物当量濃度を判定するのに使用される。
【0059】
試験試料及び各参照標準の所定容量が、別々の反応基質に適用される。別個の反応基質が、試験試料ごと及び参照標準ごとに使用される。試験試料及び参照標準中の標的分析物は、分析物捕捉スポット中のプローブに結合されてもよい。結合分析物の量は、標的分析物に選択的に結合する標識レポーターを用いて測定される。ハイブリダイゼーション条件及び標識レポーターの選択は、標的分析物の性質に依存し、従来の方法を用いて判定することができる。好ましい実施形態では、レポーティングシステムは、複数の異なる標的分析物を特異的に認識する特異的標識抗体の使用を含んでもよい。
【0060】
マイクロアレイ内の各スポット中の結合標識レポーターの量に対応するシグナル強度値は、従来の方法を用いて測定される。例えば、複数の標的分析物の定量化を対象とする実施形態では、特異的標識レポーター、例えば各々が異なる固有波長で蛍光を発する蛍光標識抗体が使用されてもよい。このような実施形態では、電荷結合素子(CCD)アレイスキャナーが、各スポットにより放出される必須色素波長により生じる特異的蛍光シグナル強度について測定されるのに使用され得る。スキャナーは、各スポットの多色強度画像マップを生成する。生成されたシグナルの強度は、印刷された較正スポット内に含有されるレポーターの量、及び印刷された分析物捕捉スポットに結合された試験試料又は参照標準からの分析物の量に正比例する。反応基質ごとに、測定シグナル強度値が分析物捕捉スポットごと及び較正スポットごとに得られる。
【0061】
図1、(c1)及び(c2)で上述されているように、反応基質ごとに、測定シグナル強度値対較正標準の理論的濃度に曲線を適合させて検量線が生成される。試験試料(AEC1)又は参照標準(AEC2)の分析物当量濃度が、次いで、図3に示されているように試験試料又は参照標準の測定シグナル強度を検量線にプロットして、最初の検量線を用いて判定される(図1、(d1)及び(d2)、並びに同じことに関する上記の関連記載も参照)。
【0062】
図3は、較正標準の12の異なる濃度レベル(AGM−01からAGM−12として下の表1(a)に表されている)を使用するアッセイの結果から作成された最初の検量線を図示する。各較正標準の測定シグナル強度値(y軸)は、較正標準のそれぞれの理論的濃度レベル(x軸)に対してプロットされた。最初の検量線が、次いで、データポイントに曲線を適合させる回帰分析の周知の方法を用いて得られた。較正標準の濃度レベルごとに、測定強度値が、理論的濃度レベルごと(x値とする)に検量線の対応するy値を特定して正規化され、対応するy値は「適合シグナル強度」として表された。
【表1】

【0063】
試験試料(AEC1)又は参照標準(AEC2)の分析物当量濃度は、次いで以下のように判定することができる。y値とする、一連の捕捉スポットの測定シグナル強度の平均値が、検量線にプロットされると考えられる。対応するx値が、次いで分析物当量濃度となる。表1(b)に要約されているように、任意の捕捉スポットの平均測定シグナル強度7187に対し、図3に図示されている検量線から計算された対応するAEC1値は5.8となるであろう。
【表2】

【0064】
較正マトリックスが較正標準の濃度レベルごとに複製スポットを含む実施形態では、最初の検量線は以下のように生成することができる。較正化合物の任意の理論的濃度に対する各複製スポットの測定強度シグナルは、平均測定強度シグナル値に対して正規化することができ、回帰分析の周知の方法を用いて、較正標準の各理論的濃度に対する平均測定強度シグナル値に曲線を適合させる。同様に、分析物捕捉マトリックスが複製捕捉スポットを含むならば、試験試料又は参照標準中の標的分析物の濃度は、各複製スポットの測定シグナル強度値を平均測定シグナル強度値に対して正規化すること、及び平均測定シグナル強度値を検量線にプロットして標的分析物の濃度を計算することにより判定することができる。
【0065】
好ましい実施形態では、較正マトリックス及び試料捕捉マトリックスの各スポットの測定シグナル強度値の正規化は、アルゴリズムを適用して行われる。さらに別の好ましい実施形態では、アルゴリズムは好ましくは、全てを含めた複製物の中央値からかけ離れて存在するときに値をあまり重視しない、一般に受け入れられている統計的アルゴリズムである、Tukey Biweightアルゴリズムである(Mosteller,F.及びTukey,J.W.「データ分析及び回帰:統計学の第2課程(Data Analysis and Regression:A Second Course in Statistics)」Addison−Wesley: Reading、1977年;203〜209頁)。
【0066】
参照標準の分析物当量濃度(AEC2値)は、試験試料の分析物当量濃度(AEC1)を調節又は補正して試験試料中の標的分析物の量のより正確な測定を提供するのに、方法の第2段階で使用される(図1、段階2及び同じことに関する上記の関連記載も参照)。参照標準化曲線は、参照標準の分析物当量濃度(AEC2値;y軸)対参照標準の既知の濃度(x軸)のグラフに曲線を適合させて生成される。試験試料中の標的分析物の量が、次いで分析物当量濃度を補正して判定される。これは、試験試料の分析物当量濃度(AEC1)を参照標準化曲線にプロットし、対応するx値を得ることにより達成され、対応するx値が補正された標的分析物濃度と見なされる。そうすることにより、これは、アッセイ動態における小さなランダム偏差及び変動、並びに反応器間のわずかなロット間変動を統合する。故に、補正された標的分析物濃度値は、標的分析物のより正確な定量化である。
【0067】
図4は、参照標準の8つの異なる濃度レベルを使用するアッセイの結果を図示し、各濃度レベルは2つの複製物で提供される。参照標準(RAS0からRAS7として下の表2(a)に表す)ごとに、この分析物当量濃度(AEC2)が上述されたように判定された。各参照標準の分析物当量濃度、AEC2値(y軸)が、参照標準のそれぞれの既知の濃度(x軸)に対してプロットされた。曲線は、次いで回帰分析の周知の方法を用いてデータポイントに適合され、故に図4に示されている参照標準化曲線を形成する。正規化されたAEC2値を得るため、各既知の濃度レベル(x値)に対するAEC2値の各セットが、次いで参照標準化曲線の対応するy値に対して正規化された。上記の正規化されたAEC2値及び対応する既知の濃度値(x値)は、下の表2(a)に要約されている。
【表3】

【0068】
試験試料、AEC1の分析物当量濃度=5.8が、次いで参照標準化曲線にプロットされて補正された標的分析物濃度42.36を得た(下の表2(b)参照)。補正された標的分析物濃度は、濃度、すなわち容量当たりの量(例えば、μg/mL、単位/mL)で表すことができ、又は認知された追跡可能な国際的に認知されたリファレンスキャリブレーターに対して標準化される場合は、容量当たりの国際単位(IU)(例えば、IU/mL)で表すことができる。関連する測定単位は、アッセイされる標的分析物及び追跡可能な参照標準が使用されたかどうかに依存するであろうことが理解される。
【表4】

【0069】
本明細書に開示された方法は、診断又は予後目的のため生体試料中の臨床関連バイオマーカーをより正確に定量化するのに使用することができる。例えば、疾患関連バイオマーカーの補正された標的分析物濃度は、このバイオマーカーの確立された指標正常レベルと比較することができる。指標正常レベルを超える補正された標的分析物濃度レベルは、疾患の診断として同定することができる。本明細書に開示された方法はまた、疾患の進行及び同様に疾患に対する治療の効果をモニターするのに使用することもできる。臨床関連バイオマーカーのレベルは、開示された方法を用いて治療期間中に複数回定量化することができる。バイオマーカーレベルの低下傾向は、治療に対する陽性患者反応と相関している可能性がある。
【0070】
本明細書に開示されたような方法が臨床状況で使用される場合、アッセイ結果を評価する目的のため一連の内部品質管理規則が提供されることがある。これらの規則は、試験試料の紛失及び免疫化学反応における一般的な失敗などのリスクを軽減するために安全性及び危害分析により特定することができる。これらの規則は、較正及び標準化曲線の適合、並びにレポーター活性及び試料存在を測定する管理の閾値を点検するための品質管理規則を含んでもよい。必要とされる管理レベル又は規則に適合しないデータが見出された場合、データのさらなる処理は中止され、値「結果無し」が報告される可能性がある。内部品質管理規則、すなわち無効化規則は、データ処理の各レベルで存在し得る。例えば、規則は、複製捕捉スポットに対する高い変動係数がある単一の分析物結果を無効化することができる。不適切な検量線又は管理閾値がある場合、規則は、任意のマイクロアレイ又は任意の反応基質の結果を無効化することができる。規則は、不適切な標準化曲線による結果を無効化することができる。
【0071】
本発明の好ましい実施形態のさらなる詳細が、添付の特許請求の範囲に関して非限定的であると理解される以下の実施例に図示される。
【実施例】
【0072】
(例1)
関節リウマチバイオマーカーをアッセイするマルチプレックス式マイクロアレイ
図5は、関節リウマチを診断し、関節リウマチを患う患者における治療の効果をモニターするのに有用なマイクロアレイを図示する。マイクロアレイは、関節リウマチに関連したバイオマーカー、リウマチ因子IgA(RF−IgA)、リウマチ因子IgG(RF−IgG)、リウマチ因子IgM(RF−IgM)並びに抗環状シトルリン化ペプチドIgG(CCP−IgG)、抗環状シトルリン化ペプチドIgA(CCP−IgA)及び抗環状シトルリン化ペプチドIgM(CCP−IgM)を定量化するのに使用することができる。マイクロアレイは、IgA、IgG、及びIgM抗体を特異的に認識する特異的標識抗体を含むレポーティングシステムと共に使用できることが留意された。レポーター抗体は、特異的標識蛍光抗体であってもよい。
【0073】
マイクロアレイは、96ウェルアッセイプレートの各ウェル上に印刷した。マイクロアレイは2つの異なる試料捕捉マトリックスを含み、各捕捉マトリックスは21の捕捉スポットを含んだ。各捕捉スポットは、RF−IgA、RF−IgG、及びRF−IgMを捕捉するための所定の関連量のリウマチ因子を含み、第2分析物捕捉マトリックスは、CCP−IgG、CCP−IgA及び/又はCCP−IgMを捕捉するための所定の関連量の環状シトルリン化ペプチドを含んだ。マイクロアレイは、RF−IgA、RF−IgG及びRF−IgM並びに抗環状シトルリン化ペプチド抗体(CCP−IgG、CCP−IgA、及び/又はCCP−IgMの少なくとも1つを捕捉するための試料捕捉マトリックスを含むことができることが留意された。本例では、マイクロアレイは、上記のバイオマーカーの全てに対する捕捉スポットを含んだ。マイクロアレイは、較正マトリックスも含んだ。較正標準は、IgGレポーター抗体により認識されるIgG Fabであった。200倍を超える濃度範囲に及ぶ較正標準の12の異なる濃度が、マイクロアレイ上で提供された。さらに、較正マトリックスは、12の異なる濃度レベルごとに7つの複製スポットを含んだ。
【0074】
マイクロアレイは、定量化される抗体のタイプごとに陰性対照マトリックス及び陽性対照マトリックスをさらに含んだ。陰性対照マトリックス及び陽性対照マトリックスは各々、7つの複製スポットを含有した。
【0075】
陰性対照マトリックスは、アッセイ分析物のいずれか又はいずれかの標識レポーターの検出可能なレベルで相互作用する化合物が全くない複数のスポットを含んだ。
【0076】
IgA陽性対照マトリックスは、レポーティングシステムのIgA特異的標識レポーター及びスキャナーチャンネルが正しく機能していることを検証するためのIgA抗体又はこのフラグメントを含むスポットのサブアレイであった。IgM陽性対照マトリックスは、レポーティングシステムのIgM特異的標識レポーター及びスキャナーチャンネルが機能していることを検証するためのIgM抗体又はこのフラグメントを含むスポットのサブアレイであった。IgG陽性対照マトリックスは、レポーティングシステムのIgG特異的標識レポーター及びスキャナーチャンネルが機能していることを検証するためのIgG抗体又はこのフラグメントを含むスポットのサブアレイであった。
【0077】
マイクロアレイは、任意の血清IgM抗体に選択的に結合して試験試料がアッセイ中に反応器に添加されたことを確認する、ロバ抗ヒトIgM抗体を含むスポットのサブアレイを含む試験対照マトリックスを含んだ。
【0078】
関節リウマチ血清の世界保健機関64/2英国一次標準物質(World Health Organization 64/2 British 1st reference preparation)を、12の異なる既知の濃度でアッセイ用の参照標準として使用した(Anderson,S.G.ら「関節リウマチ血清の国際標準物質(International reference preparation of rheumatoid arthritis serum)」Bull.World Health Org.1970年、第42版、311〜318頁)。
【0079】
アッセイは、患者の血清試料の所定容量(100マイクロリットル、μL)をマルチウェルアッセイプレートの個々の反応ウェルに適用して行った。反応ウェルに適用する前に、試験試料をIgA、IgG、及びIgM特異的レポーター抗体と結合させた。試験試料を約2分間レポーター抗体と反応させ、次いで反応ウェルに分注した。典型的には、患者試料ごとに少なくとも2つの複製ウェルがあった。各参照標準を、同様にレポーター抗体と反応させ、アッセイプレート中の個々の反応ウェルに適用した。典型的には、参照標準ごとに少なくとも2つの複製ウェルがあった。各反応ウェルについて、各反応ウェルに含有されたマイクロアレイのスポットごとに多色強度画像マップを生成した。
【0080】
マルチウェルアッセイプレートごとに、アッセイプレートは、
・RF−IgA、RF−IgG、及びRF−IgMの各々に対する少なくとも1つの陽性対照を含有する、1アッセイプレート当たり96アッセイウェル中72アッセイウェルの各々と、
・CCP−IgG、CCP−IgA及び/又はCCP−IgMに対する少なくとも1つの陽性対照を含有する、1アッセイプレート当たり96アッセイウェル中72アッセイウェルの各々と、
・RF−IgA、RF−IgG、RF−IgMの各々、並びにCCP−IgG、CCP−IgA及び/又はCCP−IgMの少なくとも1つに対する少なくとも1つの陰性対照を含有する、1アッセイプレート当たり96アッセイウェル中72アッセイウェルの各々と、
・RF−IgA、RF−IgG、RF−IgM、並びにCCP−IgG、CCP−IgA及び/又はCCP−IgMの少なくとも1つに対する追跡可能な参照標準の各々に対する少なくとも1つの陽性対照を含有する、1アッセイプレート当たり96アッセイウェル中72アッセイウェルの各々と、
・マトリックス位置、マトリックスローテーション、マトリックスシフト、及び1アレイ当たりのスポット数を確認するための1つ又は複数の配置対照を含有する、1アッセイプレート当たり96アッセイウェル中92アッセイウェルの各々と、
・複製シグナル強度を確認するための1つ又は複数の複製対照を含有する、1アッセイプレート当たり96アッセイウェル中92アッセイウェルの各々と、
・血清確認、バックグラウンドシグナル及び液体容量移動確認のための1つ又は複数のプロセス対照を含有する、1アッセイプレート当たり96アッセイウェル中92アッセイウェルの各々と、
・内部検量線を確認するための1つ又は複数の配置対照を含有する、1アッセイプレート当たり96アッセイウェル中92アッセイウェルの各々と、
・標準化曲線を確認するための1つ又は複数の配置対照を含有する、1アッセイプレート当たり96アッセイウェル中92アッセイウェルの各々と
を含む、1つ又は複数の信頼度確認正規化標準及び対照を含んだ。
【0081】
較正標準の濃度レベルごとに、各複製較正の測定シグナル強度を、Tukey Biweightアルゴリズムを適用して正規化し、各濃度レベルに対する平均測定シグナル強度値を得た。最初の検量線は、較正標準の各濃度に対する平均測定シグナル強度値に曲線を適合させて生成した。
【0082】
IgA、IgG、及びIgM検出チャンネルごとに、各分析物捕捉スポットに対する測定シグナル強度を、Tukey Biweightアルゴリズムを適用して正規化し、試験試料又は参照標準中に存在するIgA、IgG、又はIgMの量に比例する平均測定シグナル強度値を得た。平均測定シグナル強度値を、最初の検量線にプロットして試験試料中及び参照標準中のRF−IgA、RF−IgG、RF−IgMの各々、並びにCCP−IgG、CCP−IgA及びCCP−IgMの少なくとも1つに対する分析物当量濃度を得た。
【0083】
RF−IgA、RF−IgG、RF−IgMの各々、並びにCCP−IgG、CCP−IgA及びCCP−IgMの少なくとも1つについて、参照標準化曲線を生成した。各標準化曲線は、参照標準の各濃度に対する分析物当量濃度値(AEC2値)に曲線を適合させて生成した。試験試料中のRF−IgA、RF−IgG、RF−IgMの各々、並びにCCP−IgG、CCP−IgA及びCCP−IgMの少なくとも1つに対する分析物当量濃度(AEC1値)を、適切な分析物当量濃度値を参照標準化曲線にプロットして補正し、上記のバイオマーカーごとに補正された標的分析物濃度を得た。
【0084】
得られた補正濃度は、次いで各バイオマーカーの指標正常レベル、すなわち関節リウマチを診断するための臨床関連カットオフ値と比較することができるであろう。図6において、棒グラフは、測定されたリウマチ因子IgA(RF−IgA)、リウマチ因子IgG(RF−IgG)、リウマチ因子IgM(RF−IgM)及び抗環状シトルリン化ペプチドIgG(CCP−IgG)レベル、並びにこれらのそれぞれの臨床カットオフ値を図示する。各バイオマーカーの正常レベルを上回ることが見出されたバイオマーカーの測定レベルは、関節リウマチの診断指標となると特定された。
【0085】
得られた結果を考慮すると、関節リウマチバイオマーカーレベルの測定は、バイオマーカーレベルを治療期間中に複数回測定して治療の効果をモニターするのに使用できることが結論づけられた。
【0086】
本発明は、例示的な実施形態を参照して記載されたが、本発明はこれらの厳密な実施形態に限定されないことが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更、変形形態、及び適応が、上記の本発明の特定の実施形態に行われ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験試料中の1つ又は複数の分析物を定量化する方法であって、
(a)複数の別々の反応基質を提供するステップであって、各反応器にマイクロアレイが印刷されており、前記マイクロアレイが、
複数の較正スポットを含む較正マトリックスであって、各較正スポットが所定量の較正化合物を含み、各較正スポットが較正化合物の理論的濃度に対応する、上記較正マトリックスと、
複数の捕捉スポットを含む分析物捕捉マトリックスであって、各捕捉スポットが前記分析物に選択的に結合する所定量の作用剤を含む、上記分析物捕捉マトリックスと
を含む上記ステップと、
(b)所定容量の試験試料を前記別々の反応基質の1つに適用するステップと、
(c)各々が既知の濃度を有し、各々が所定量の各前記分析物を含む、複数の参照標準を提供するステップと、
(d)所定容量の各参照標準を前記別々の反応基質の1つに適用するステップと、
(e)ステップ(b)及びステップ(d)からの各別々の反応基質に対して
(i)各スポットに結合された分析物又は較正化合物の量に正比例する測定可能なシグナル強度を提供する標識レポーター化合物を適用し、
(ii)マイクロアレイ内のスポットごとにシグナル強度値を測定し、
(iii)ステップ(b)の反応基質に対する第1検量線を生成し、ステップ(d)の反応基質に対する第2検量線を生成し、各ケースにおいて前記検量線を、較正化合物のシグナル強度値対理論的濃度のグラフに曲線を適合させることによって作成し、
(iv)第1検量線を用いて試験試料の第1分析物当量濃度を判定し、第2検量線を用いて各参照標準の第2分析物当量濃度を判定するステップと、
(f)第2分析物当量濃度対各参照標準の既知の濃度のグラフに曲線を適合させて参照標準化曲線を生成するステップと、
(g)補正された分析物濃度を得るために、参照標準化曲線を用いて試験試料の第1分析物当量濃度を正規化するステップと
を含む、上記方法。
【請求項2】
ステップ(e(iii))において、第1及び第2検量線が、
(1)較正マトリックスにおいて、較正マトリックスが、較正化合物の一般的な理論的濃度に対応する複製物である2つ以上の較正スポットを含む場合に、各複製較正スポットのシグナル強度値を、各前記較正スポットの平均シグナル強度値に対して正規化すること、及び
(2)各前記較正スポットの平均シグナル強度値対対応する較正標準の対応する各理論的濃度のグラフに曲線を適合させること
により生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(e(iv))において、試験試料又は参照標準中の分析物の濃度が、
(3)ステップ(b)及びステップ(d)の各反応基質の分析物捕捉マトリックスにおいて、分析物捕捉マトリックスが、複製物である2つ以上の捕捉スポットを含む場合に、各複製捕捉スポットのシグナル強度値を平均シグナル強度値に対して正規化すること、及び各スポットのシグナル強度値を各前記捕捉スポットの平均シグナル強度値に対して正規化すること、並びに
(4)(i)ステップ(b)の反応基質の各前記捕捉スポットの平均シグナル強度値及び第1検量線を用いて、前記試験試料中の分析物の濃度を計算すること、並びに
(ii)ステップ(d)の反応基質の各前記捕捉スポットの平均シグナル強度値及び第2検量線を用いて、各前記参照標準中の分析物の濃度を計算すること
により判定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
較正マトリックス及び試料捕捉マトリックスの各スポットの測定シグナル強度値の正規化が、Tukey Biweightアルゴリズムを適用して行われる、請求項2又は3の方法。
【請求項5】
分析物捕捉マトリックスのスポットの総数が、較正マトリックスのスポットの総数に少なくとも等しい、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
線形希釈系列に対応する前記分析物の3から20の間の異なる理論的濃度があり、較正標準の各理論的濃度に対する3から15の間のスポットがある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
標識レポーター化合物が蛍光標識抗体である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複数の反応基質がマルチウェルアッセイプレートの形態にある、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
複数の反応基質が複数のビーズの形態にある、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
試験試料が生体試料である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記生体試料が患者から得られ、
(a)前記患者における疾患の進行をモニターするステップ
(b)前記疾患に対する治療の効果を測定するステップ、及び
(c)前記疾患の前記治療中に前記患者における薬剤の濃度を測定するステップ
のいずれか1つを含み、
前記1つ又は複数の分析物が、前記疾患を示すバイオマーカー(単数又は複数)である、請求項10に記載の方法の使用。
【請求項12】
(1)対象から得られた生体試料中の
リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、及びリウマチ因子IgMの各々、並びに
抗環状シトルリン化ペプチドIgG、抗環状シトルリン化ペプチドIgA、及び抗環状シトルリン化ペプチドIgMから成る群から選択される少なくとも1つの抗環状シトルリン化ペプチド抗体
の濃度レベルを測定するステップであって、
リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG及びリウマチIgMの各々、並びに少なくとも1つの選択された抗環状シトルリン化ペプチド抗体に対する既知の濃度の参照標準が提供される、上記ステップと、
(2)リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、及びリウマチ因子IgMの各々の測定濃度レベルを、リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgMの対応する指標正常レベルと比較し、
選択された抗環状シトルリン化ペプチド抗体(単数又は複数)の測定濃度レベルを、選択された抗環状シトルリン化ペプチド抗体(単数又は複数)の対応する指標正常レベルと比較するステップであって、
測定濃度レベルのいずれかが対応する指標正常レベルを超えることが、関節リウマチの診断指標となる、上記ステップと
を含む、前記対象における関節リウマチを診断するための請求項1の方法の使用。
【請求項13】
治療中に複数回、
リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgM、並びに
抗環状シトルリン化ペプチドIgG、抗環状シトルリン化ペプチドIgA、及び抗環状シトルリン化ペプチドIgMから成る群から選択される少なくとも1つの抗環状シトルリン化抗体
の濃度レベルを測定するステップを含む、関節リウマチを患う対象において関節リウマチ治療をモニターするための請求項1の方法の使用。
【請求項14】
前記方法において、前記マイクロアレイが、
所定量の較正化合物を含む複数のスポットを含む較正マトリックスであって、各スポットが較正化合物の理論的濃度に対応する、上記マトリックスと、
所定量のリウマチ因子を含む複数のスポットを含む第1分析物捕捉マトリックスと、
所定量の環状シトルリン化ペプチドを含む複数のスポットを含む第2分析物捕捉マトリックスと
を含む、請求項12又は13に記載の使用。
【請求項15】
前記マイクロアレイが、
所定量のIgA又はこのフラグメントと、所定量のIgG又はこのフラグメントと、所定量のIgM又はこのフラグメントとを含む複数のスポットを含む陽性対照マトリックス、
標識レポーター化合物と相互作用するいずれかの化合物と、
リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgMから成る群から選択される上記のいずれか1つに選択的に結合するいずれかの化合物と、抗環状シトルリン化ペプチドIgG、抗環状シトルリン化ペプチドIgA、及び抗環状シトルリン化ペプチドIgMから成る群から選択される上記のいずれか1つに選択的に結合するいずれかの化合物と
がない複数のスポットを含む陰性対照マトリックス、並びに
生体試料に関連した分析物に選択的に結合する作用剤を含む複数のスポットを含む試料対照マトリックスであって、前記分析物は、生体試料中に天然に存在する化合物又は生体試料に添加される外来化合物であり、ただし、前記分析物は、リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgM、抗環状シトルリン化ペプチドIgG、抗環状シトルリン化ペプチドIgA、又は抗環状シトルリン化ペプチドIgMではない、上記試料対照マトリックス
の1つ又は複数をさらに含む、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記方法において、前記複数の別々の反応基質が、マルチウェルアッセイプレート及び複数のビーズから成る群から選択され、前記複数の別々の反応基質が、1つ又は複数の信頼度確認正規化標準及び対照を含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記マイクロアレイが、以下の対照、すなわち、
リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgMの各々に対する少なくとも1つの陽性対照、及び前記選択された抗環状シトルリン化ペプチド(単数又は複数)に対する少なくとも1つの陽性対照、
リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、リウマチ因子IgMの各々に対する少なくとも1つの陰性対照、及び前記選択された抗環状シトルリン化ペプチド(単数又は複数)に対する少なくとも1つの陰性対照、
リウマチ因子IgA、リウマチ因子IgG、及びリウマチ因子IgMの各参照標準に対する少なくとも1つの陽性対照、並びに前記選択された抗環状シトルリン化ペプチド(単数又は複数)の各参照標準に対する少なくとも1つの陽性対照、
マトリックス位置、マトリックスローテーション、マトリックスシフト、及び1アレイ当たりのスポット数を確認するための1つ又は複数の配置対照、
複製シグナル強度を確認するための1つ又は複数の複製対照、
血清確認、バックグラウンドシグナル及び液体容量移動確認のための1つ又は複数のプロセス対照、
内部検量線を確認するための1つ又は複数の配置対照、及び
標準化曲線を確認するための1つ又は複数の配置対照
の1つ又は複数を含む、請求項16に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−508732(P2013−508732A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535560(P2012−535560)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001698
【国際公開番号】WO2011/050463
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(511078875)エスキューアイ ディアグノスティクス システムズ インコーポレイテッド (4)