説明

内面樹脂被覆金属管

【課題】本発明の課題は、耐食性が優れ且つ微生物による目詰まりを完全に抑止できる内面樹脂被覆金属管を提供することにある。
【解決手段】本発明は、金属管の内周面に、熱溶融性フッ素樹脂とフッ素含有エラストマーと殺菌性化合物とから成る樹脂被覆を設けて成る内面樹脂被覆金属管にある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内面樹脂被覆金属管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】冷水や温水の配管に各種の金属管や樹脂管が多用されている。
【0003】金属管は機械的強度や耐熱性が優れているが、腐蝕し易いという難点がある。樹脂管は機械的強度や耐熱性が劣っているが、耐食性、水質汚染防止性、端末加工性等が優れている。
【0004】冷水や温水の配管部材として多用されている金属管としては鋼管と銅管とがある。
【0005】これらのうち鋼管は機械的強度が要求される配管箇所に使用され、また銅管は加工性を要求される配管箇所に使用されている。
【0006】一般に、金属は水と接触すると様々な腐蝕が発生する。
【0007】例えば、銅管では蟻の巣状腐蝕、孔食、潰食等が発生する。ここにおいて腐蝕速度が大きい巣状腐蝕では配管工事後1カ月位で漏水事故に至る場合がある。また、孔食、潰食では配管工事後数年で漏水事故に至る場合がある。
【0008】これらの腐蝕を抑止するために銅管の内周若しくは外周に有機防錆膜を形成させることが行われている。
【0009】このように銅管の内周若しくは外周に有機防錆膜を形成させた場合には当然ながら銅イオンの水中への溶解が完全に抑止でき、その結果銅管内を介して搬送される冷水や温水中に溶け込む銅イオンをゼロにできるというメリットがある。
【0010】しかし銅イオンをゼロにした場合には、銅管内では銅イオンによる殺菌作用がなくなるということを意味する。
【0011】さて、冷水や温水を銅管内を介して搬送する場合、冷水や温水の流速が小さい場合には微生物が銅管の内周面に固着し易い。この微生物の銅管内周面への固着程度は、冷水や温水の水温が10〜50℃のときに大きく、酷いときにはゼリー状のコロニーを形成し、銅管の目詰まりを発生させる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる点に立って為されたものであって、その目的とするところは前記した従来技術の欠点を解消し、耐食性が優れ且つ微生物による目詰まりを完全に抑止できる内面樹脂被覆金属管を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするところは、金属管の内周面に、熱溶融性フッ素樹脂とフッ素含有エラストマーと殺菌性化合物とから成る樹脂被覆を設けて成る内面樹脂被覆金属管にある。
【0014】本発明において金属管としては銅管、銅合金管、鋼管、アルミ管、アルミ合金管等が用いられる。
【0015】本発明において熱溶融性フッ素樹脂としては、四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル樹脂、三フッ化塩化エチレン・エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂等がある。
【0016】また、本発明においてフッ素含有エラストマーとしては、テトラフルオロエチレン・プロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン・クロロトリフルオロエチレン系共重合体、フッ化ビニリデン・ペンタフルオロプロピレン系共重合体、ポリフルオロアルキル基含有アクリレート系エラストマー、テトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン・プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン・ブテン系共重合体、テトラフルオロエチレン・エチルビニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン・フルオロビニルエーテル系共重合体、含フッ素フォスフォニトリル系エラストマー等がある。これらの内望ましいをフッ素含有エラストマーとしてはテトラフルオロエチレン・プロピレン系共重合体である。
【0017】本発明において殺菌性化合物としては殺菌作用があるものよく、例えばベンツイミダゾール系化合物、有機リン系化合物等がある。
【0018】ベンゾイミダゾール系化合物としては、2−(4−thiazdyl)benzimidazoleや2−(Carbometoxy amino)benzimidazoleなどがあげられる。
【0019】これらの樹脂は、金属管内面への被覆に当たっては、フッ素含有エラストマーを溶剤に溶解したものの中に、微粉末状の熱溶融性フッ素樹脂を分散させ、さらにベンズイミダゾル系化合物を添加する形で用いる。その塗膜を乾燥後、フッ素樹脂の融点以上の温度で所定の時間加熱すると、フッ素樹脂は空気接触面に浮き、耐食性を向上させ、フッ素含有エラストマーは金属との接触面に集まり、接着性を向上させる。ベンズイミダゾル系化合物は、比重差によって空気接触面に浮き、効果的に殺菌効果を示す。
【0020】
【発明の実施の形態】次に、本発明の内面樹脂被覆金属管の実施例を比較例と共に説明する。
【0021】(実施例1)実施例1に用いた金属管は外径φ12.7mm,内径φ0.7mmの銅管である。
【0022】また、金属管の内周面コーティング溶液は熱溶融性フッ素樹脂として四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂の微粉末を用い、フッ素含有エラストマーとしてはテトラフルオロエチレン・プロピレン系共重合体の微粉末を用い、そして殺菌性化合物として2−(4−thiazdyl)bezimidazoleを前記樹脂分に対して5%採取し、最後にこれらを酢酸エチルと酢酸ブチルとの混合溶剤に分散することにより内周面コーティング溶液とした。
【0023】次に、得られた内周面コーティング溶液を先に用意した銅管の内周面に塗装し、自然乾燥した。それから温度350℃の窒素ガス雰囲気中で熱処理し、内面樹脂被覆厚さ50umの内面樹脂被覆金属管を得た。
【0024】(実施例2)実施例2に用いた金属管は実施例1に用いた銅管と同じである。
【0025】また、金属管の内周面コーティング溶液は熱溶融性フッ素樹脂として四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂の微粉末を用い、フッ素含有エラストマーとしてはフッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン系共重合体の微粉末を用い、そして殺菌性化合物としてリン系化合物を前記樹脂分に対して5%採取し、最後にこれらを酢酸エチルと酢酸ブチルとの混合溶剤に分散することにより内周面コーティング溶液とした。
【0026】次に、得られた内周面コーティング溶液を先に用意した銅管の内周面に塗装し、自然乾燥した。それから温度350℃の窒素ガス雰囲気中で熱処理し、内面樹脂被覆厚さ50umの内面樹脂被覆金属管を得た。
【0027】図1はかくして得られた実施例1の内面樹脂被覆金属管の横断面図を示したものである。
【0028】図1において1は銅管、2は樹脂被覆層である。
【0029】(比較例)比較例に用いた金属管は実施例1に用いたものと同じ外径φ12.7mm,内径φ0.7mmの銅管である。
【0030】(特性試験)
■ 1%NaCL水溶液浸漬試験実施例1の内面樹脂被覆金属管及び比較例1の銅管を1%NaCL水溶液浸漬し、それらに発生する孔食の深さを測定した。
【0031】■ ドレイン配管試験実施例1の内面樹脂被覆金属管及び比較例1の銅管を室内除湿機のドレイン配管し、6ケ月後の目詰まり回数を調べた。
【0032】(特性試験結果)これらの特性試験を表1に示す。
【0033】
【表1】


【0034】表1から分かるように比較例1の銅管はNaCL水溶液浸漬試験で孔食が発生し、ドレイン配管試験では6ケ月間に4回の目詰まりが発生した。
【0035】これに対して実施例1及び実施例2の内面樹脂被覆金属管はNaCL水溶液浸漬試験で腐食がみられず、またドレイン配管試験でも6ケ月間に全く目詰まりを起こさなかった。
【0036】
【発明の効果】本発明の内面樹脂被覆金属管は耐蝕性が優れしかも実際の配管部材として使用したときには細菌付着等による目詰まりを完全に良くしできるものであり、工業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の内面樹脂被覆金属管の横断面図を示したものである。
【符号の説明】
1 銅管
2 樹脂被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】金属管の内周面に樹脂被覆を設けて成る内面樹脂被覆金属管において、前記樹脂被覆は熱溶融性フッ素樹脂とフッ素含有エラストマーと殺菌性化合物とから成るものであることを特徴とする内面樹脂被覆金属管。
【請求項2】熱溶融性フッ素樹脂が四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル樹脂、三フッ化塩化エチレン・エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂の中から選ばれた1種であることを特徴とする請求項1記載の内面樹脂被覆金属管。
【請求項3】フッ素含有エラストマーがテトラフルオロエチレン・プロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン・クロロトリフルオロエチレン系共重合体、フッ化ビニリデン・ペンタフルオロプロピレン系共重合体、ポリフルオロアルキル基含有アクリレート系エラストマー、テトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン・プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン・ブテン系共重合体、テトラフルオロエチレン・エチルビニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン・フルオロビニルエーテル系共重合体、含フッ素フォスフォニトリル系エラストマーの中から選ばれた1種であることを特徴とする請求項1記載の内面樹脂被覆金属管。
【請求項4】殺菌性化合物がベンツイミダゾール系化合物であることを特徴とする請求項1記載の内面樹脂被覆金属管。

【図1】
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