説明

円形地下構造物用蓋

【課題】地下構造物につながる、地面に設けられた円形の開口を、地面と同じ高さ位置で塞ぐ円形地下構造物用蓋に関し、どの箇所にどの方向から車両が来ても均一なスリップ性能を発揮する。
【解決手段】この円形地下構造物用蓋の中心Oから周方向Rに間隔をあけて径方向に延びた複数本の放射直線RS1に沿って複数配置され、それぞれが上方へ向けて突出した多角形状の突出先端面を有する第1突出体10cを備え、第1突出体10cは、長手方向Wを径方向Rに直交する方向にして配置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物につながる、地面に設けられた円形の開口を、地面と同じ高さ位置で塞ぐ円形地下構造物用蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
車道に設けられた地下構造物用蓋の上を、車両が通過する際、特に地下構造物用蓋が濡れていると車両のタイヤが滑りやすい。そのため、従来より地下構造物用蓋に、上方へ向けて突出した正多角形の突出体を分散配置し、これら正多角形の突出体によってタイヤが滑ることを防止しようとした提案がなされている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
この特許文献1に記載された地下構造物用蓋では、正多角形の突出体の突出先端面が磨耗してもタイヤが滑ることを防止する耐スリップ性能を低下させない試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3094008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに、タイヤが滑ることを防止するスリップ性能を長期間にわたって一定の性能以上に維持することは重要なことであるが、地下構造物用蓋のどの箇所でも均一なスリップ性能を発揮することは耐スリップ性能を発揮する前提として非常に重要なことである。上記特許文献1によって提案された地下構造物用蓋では、複数種類の正多角形の突出体が設けられており、同じ種類の突出体であっても向きを変えて設けられている。しかしながら、正多角形の突出体では、向きを変えたとしても突出体の配置は単調になり、どの方向から車両が来ても一定のスリップ性能を発揮することは困難である。また、特許文献1に記載された地下構造物用蓋では突出体の形状については検討がされているが、その特許文献1には突出体の配置については検討された記載がなく、設計者の感覚的発想によって配置されていると見受けられる。しかしながら、地下構造物用蓋を設計する段階では、その地下構造物用蓋がどのような場所にどの向きに設置されるかを予想することは困難であり、特に、円形の地下構造物用蓋では、設置向きの自由度が高く、どの箇所にどの方向から車両が来ても均一なスリップ性能を発揮することができるようにするには、突出体の配置についての検討がことさら重要である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、どの箇所にどの方向から車両が来ても均一なスリップ性能を発揮することができる円形地下構造物用蓋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の円形地下構造物用蓋は、地下構造物につながる、地面に設けられた円形の開口を、地面と同じ高さ位置で塞ぐ円形地下構造物用蓋において、
この円形地下構造物用蓋の中心から周方向に間隔をあけて径方向に延びた複数本の放射直線に沿って複数配置され、それぞれが上方へ向けて突出した多角形状の突出先端面を有する第一突出体を備え、
前記第一突出体は、長手方向を前記径方向に直交する方向にして配置されたものであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の円形地下構造物用蓋において、中心がこの円形地下構造物用蓋の中心に一致した、直径2rの円形領域内に、中心が該円形領域の中心に一致し直径が前記直径2rの1/4より長く1/3以下の長さである内周円に沿って複数配置され、それぞれが上方へ向けて突出した多角形状の突出先端面を有する第二突出体を備え、
前記第二突出体は、長手方向を前記径方向にして配置されたものであってもよい。
【0009】
さらに、本発明の円形地下構造物用蓋において、前記第一突出体は、前記内周円と同じ大きさの小円を該内周円に外接した状態で互いに一部が重なるようにして周方向に並べた場合の該小円が重なり合った重複箇所に配置されたものであってもよい。
【0010】
また、第1の円形地下構造物用蓋は、地下構造物につながる、地面に設けられた円形の開口を、地面と同じ高さ位置で塞ぐ円形地下構造物用蓋において、
この円形地下構造物用蓋の径方向に直交する方向を長手方向にし上方へ向けて突出した、多角形状の突出先端面を有する第1突出体と、
上記径方向を長手方向にし上方へ向けて突出した、多角形状の突出先端面を有する第2突出体とを備えたことを特徴する。
【0011】
第1の円形地下構造物用蓋では、突出先端面が正多角形の突出体に比べ、上記第1突出体および上記第2突出体いずれにおいても、それぞれの長手方向に角部を多く有する。上記径方向に通過するタイヤには、主として上記第1突出体の角部が食い込み、その径方向に直交する方向に通過するタイヤには、上記第2突出体の角部が食い込む。したがって、第1の円形地下構造物用蓋によれば、どの方向から車両が来ても一定のスリップ性能を発揮することができる。
【0012】
また、第1の円形地下構造物用蓋において、前記径方向に前記第1突出体が複数個並んだ第1突出体列と、
この円形地下構造物用蓋の周方向に前記第2突出体が複数個並んだ第2突出体列とを有することが好ましい。
【0013】
上記径方向に通過するタイヤには、上記第1突出体列を構成する複数の上記第1突出体の角部が複数回にわたって食い込み、スリップ性能が飛躍的に向上する。また、上記径方向は360度にわたっていくつもの方向があり、上記第2突出体列は、複数の径方向それぞれにを長手方向とした複数の第2突出体によって構成されている。したがって、複数の径方向それぞれに直交する複数方向に通過するタイヤに、これら複数の第2突出体の角部が食い込み、より多くの方向から車両が来ても一定のスリップ性能を発揮することができる。
【0014】
さらに、第1の円形地下構造物用蓋において、前記第1突出体と前記第2突出体とが、この円形地下構造物用蓋の周方向に交互に並んだものである態様も好ましい。
【0015】
この態様によれば、複数の方向から来る車両に対して、前記第1突出体と前記第2突出体とが交互に並んだ環状の領域で対応することができ、この環状の領域を上記径方向に複数段設けておけば、より多くの方向から来る車両に対して対応することができる。
【0016】
また、第1の円形地下構造物用蓋において、前記第1突出体および前記第2突出体いずれの突出体も、長手方向に長さが異なる複数種類の突出体を含み、隣り合う突出体それぞれにおける中心点を最短で結ぶ距離が17mm以上35mm以下となるように配置されたものであることも好ましい。
【0017】
第2の円形地下構造物用蓋は、地下構造物につながる、地面に設けられた円形の開口を、地面と同じ高さ位置で塞ぐ円形地下構造物用蓋において、
中心がこの円形地下構造物用蓋の中心に一致し直径2rが650mmである円形領域内に、
中心が前記円形領域の中心に一致し直径が前記直径2rの1/4より長く1/3以下の長さである内周円の円弧にかかるように配置され、上方へ向けて突出し多角形状の突出先端面をそれぞれ有する複数の内側突出体と、
前記内周円と同じ大きさの小円を該内周円に外接した状態で互いに一部が重なるようにして周方向に均等に8個並べた場合の該小円の円弧にかかるように配置され、上方へ向けて突出し多角形状の突出先端面をそれぞれ有する複数の外側第1突出体と、
前記小円が重なり合った重複箇所に配置され、上方へ向けて突出し多角形状の突出先端面をそれぞれ有する複数の外側第2突出体とを設けたことを特徴する。
【0018】
ここにいう内周円の直径は162.5mmを越えた長さになる。したがって、第2の円形地下構造物用蓋は、その内周円の直径(162.5mm)+上記小円の直径(162.5mm)×2の長さ(487.5mm)以上の直径を有する円形地下構造物用蓋に適用することができ、例えば、口径600mm前後の開口を塞ぐ円形地下構造物用蓋や口径900mm前後の開口を塞ぐ円形地下構造物用蓋に適用することができる。なお、口径600mm前後の開口を塞ぐ円形地下構造物用蓋の直径φは、600mmを少し越えたものになり(例えば、625mm〜655mm)、口径900mm前後の開口を塞ぐ円形地下構造物用蓋の直径φは、900mmを少し越えたものになる。
【0019】
ここで、タイヤが円形地下構造物用蓋に接するタイヤ周方向の長さ(接地長)は150mm程度はある。したがって、車両が円形地下構造物用蓋の中心部分を通過する際、上記内側突出体の角部が、通過する車両のタイヤに、その車両の進行方向における少なくとも2箇所で同時に食い込むことが可能である。また、上記内周円より外側には、上記重複箇所が周方向に8箇所存在する。タイヤが円形地下構造物用蓋に接する幅(接地長に直交する接地幅)は100mm以上はあり、車両が円形地下構造物用蓋の径方向に通過する際には、周方向に8箇所存在する重複箇所のいずれかの重複箇所に設けられた上記外側第2突出体の角部が、通過する車両のタイヤに食い込むことが可能である。さらに、上記外側第1突出体の角部は、あらゆる方向から来る車両のタイヤに食い込むことが可能である。このように、第2の円形地下構造物用蓋によれば、どの箇所にどの方向から車両が来ても均一なスリップ性能を発揮することができる。
【0020】
また、地下構造物につながる、地面に設けられた口径600mm前後の開口を、地面と同じ高さ位置で塞ぐ直径φの円形地下構造物用蓋についていえば、
中心がこの円形地下構造物用蓋の中心に一致し直径が前記直径φの1/4より長く1/3以下の長さである内周円の円弧にかかるように配置され、上方へ向けて突出し多角形状の突出先端面をそれぞれ有する複数の内側突出体と、
上記内周円と同じ大きさの小円をその内周円に外接した状態で互いに一部が重なるようにして周方向に均等に8個並べた場合のその小円の円弧にかかるように配置され、上方へ向けて突出し多角形状の突出先端面をそれぞれ有する複数の外側第1突出体と、
上記小円が重なり合った重複箇所に配置され、上方へ向けて突出し多角形状の突出先端面をそれぞれ有する複数の外側第2突出体とを備えたことを特徴する。
【0021】
例えば、円形地下構造物用蓋の直径φを630mmにすると、ここでの内周円の直径は157.5mmを越え210mm未満の長さになる。
【0022】
第3の円形地下構造物用蓋は、地下構造物につながる、地面に設けられた円形の開口を、地面と同じ高さ位置で塞ぐ直径φ(mm)の円形地下構造物用蓋において、
この円形地下構造物用蓋の中心から周方向にθ(°)間隔で径方向に延びた複数本の放射直線上それぞれにおける内側ポイントと外側ポイントの間に該放射直線に沿って複数配置され、それぞれが上方へ向けて突出し多角形状の突出先端面を有する突出体を備え、
この円形地下構造物用蓋の上を通過する車両のタイヤの接地幅をTW(mm)と仮定した場合に、
前記内側ポイントは、前記中心からこの円形地下構造物用蓋の外縁側へ、
Xi=(TW/2)/sin(θ/2) 式1
上記式1で表されるXi(mm)寄った位置であり、
前記外側ポイントは、この円形地下構造物用蓋の外縁から前記中心側へ、
Xo=[TW−{φ/2−(φ/2)cos(θ/2)}]cos(θ/2) 式2
上記式2で表されるXo(mm)寄った位置であることを特徴とする。
【0023】
第3の円形地下構造物用蓋も、タイヤの接地幅TWを念頭において発明されたものである。すなわち、上記内側ポイントは、周方向に隣り合う上記放射直線の間隔がタイヤの最低接地幅に相当する間隔になる位置であり、タイヤが、上記放射直線より少しずれてこの円形地下構造物用蓋の径方向(直径φ方向)に通過する場合に、上記内側ポイントよりも外側に設けられた上記突出体が有効に機能し、良好なスリップ性能が発揮される。また、上記外側ポイントは、タイヤがこの円形地下構造物用蓋の外縁部分を直径φ方向に直交する方向に通過する場合に、そのタイヤの、上記中心側の縁がかかる位置である。このため、タイヤが外縁部分を通過する場合には、上記外側ポイント近傍の突出体の角部が、タイヤに、車両通過方向における少なくとも2箇所で同時あるいはわずかなタイミングの差で食い込むことが可能になり、ここでもまた良好なスリップ性能が発揮される。したがって、第3の円形地下構造物用蓋によっても、どの箇所にどの方向から車両が来ても均一なスリップ性能を発揮することができる。
【0024】
また、タイヤの接地幅を100mmに仮定すると、以下のようになる。
【0025】
地下構造物につながる、地面に設けられた円形の開口を、地面と同じ高さ位置で塞ぐ直径φ(mm)の円形地下構造物用蓋において、
この円形地下構造物用蓋の中心から周方向に45°間隔で径方向に延びた8本の放射直線上それぞれにおける内側ポイントと外側ポイントの間にその放射直線に沿って複数配置され、それぞれが上方へ向けて突出し多角形状の突出先端面を有する突出体を備え、
上記内側ポイントは、上記中心からこの円形地下構造物用蓋の外縁側へ、
Xi=50/sin22.5 式1
上記式1で表されるXi(mm)寄った位置であり、
上記外側ポイントは、この円形地下構造物用蓋の外縁から上記中心側へ、
Xo=[100−{φ/2−(φ/2)cos22.5}]cos22.5 式2
上記式2で表されるXo(mm)寄った位置であることを特徴とする。
【0026】
ここで、タイヤの接地長を150mmに仮定すると、周方向に隣り合う放射直線のちょうど真ん中を通過するタイヤに対しても、この円形地下構造物用蓋の上にタイヤが完全に入り込むとすぐに上記内側ポイント近傍の突出体の角部が食い込み、ここでも良好なスリップ性能が発揮される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、どの箇所にどの方向から車両が来ても均一なスリップ性能を発揮することができる円形地下構造物用蓋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の円形地下構造物用蓋の一実施形態である、マンホール用の鉄蓋の平面図である。
【図2】図1に示す鉄蓋に設けられた各第1突出体列をわかりやすいように示した図である。
【図3】図1に示す鉄蓋に設けられた各第2突出体列をわかりやすいように個別に示した図である。
【図4】第2の円形地下構造物用蓋を説明する図である。
【図5】本実施形態の鉄蓋の上を通過した車両のタイヤの軌跡を示す図である。
【図6】第3の円形地下構造物用蓋を説明する図である。
【図7】図1に示す突出体の斜視図である。
【図8】図1に示す突出体の平面図である。
【図9】図1に示す突出体の正面図である。
【図10】図10(a)は、新品の鉄蓋に設けられた図7に示す突出体が磨耗し始めた様子を示す図であり、図10(b)は、図7に示す突出体の突出先端面が2mm磨耗したときの突出体を示す図である。
【図11】図11(a)は、新品の鉄蓋に設けられた図7に示す突出体の突出先端面の平面図であり、図11(b)は、図10(b)に示す接触面の平面図である。
【図12】スリップサインを付加した突出体を示す図である。
【図13】図1に示す鉄蓋の中心に設けられた十文字状突出体を示す斜視図である。
【図14】図14(a)は、新品の鉄蓋に設けられた図13に示す十文字状突出体の突出先端面の平面図であり、図14(b)は、図13(a)に示す突出先端面が2mm磨耗した十文字状突出体における接触面の平面図である。
【図15】マンホール蓋の平面図である。
【図16】マンホール蓋の底面図である。
【図17】マンホール蓋の正面図である。
【図18】マンホール蓋の背面図である。
【図19】マンホール蓋の右側面図である。
【図20】図15のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
図1は、本発明の円形地下構造物用蓋の一実施形態である、マンホール用の鉄蓋の平面図である。
【0031】
図1に示す鉄蓋1は、地中に埋設された下水道等の地下構造物につながる、地面に設けられた口径600mmの開口を、地面と同じ高さ位置で塞ぐものである。ここにいう口径は、必ずしも600mmに限られることはなく、600mmから多少前後してもよい。このような口径の開口を塞ぐ円形地下構造物用蓋の直径φは、600mmを少し越え、例えば630mmや634mm、さらには650mmといった長さになる。図1に示す鉄蓋1の直径φは630mmである。上記開口の周縁には、不図示の受枠が設けられており、鉄蓋1は、その受枠に嵌合して上記開口を塞ぐ。
【0032】
図1に示すように、この鉄蓋1の表面1aには、複数の突出体10が配置されている。これらの突出体10は、上方(紙面手前側)に向けて突出した、多角形状の突出先端面を有するI状のものである。図1には、鉄蓋1の一つの径方向を矢印Xで示している。この図1に示す鉄蓋1には、鉄蓋1の径方向(矢印X参照)に直交する方向Yを長手方向にした第1突出体10cと、その径方向を長手方向にした第2突出体10rとが設けられている。これらの突出体10には、長手方向の長さを37.5mmにしたものと32.5mmにしたものとの2種類が含まれている。放射方向いずれの方向(径方向,周方向,斜めの方向)においても、隣り合う突出体の間隔は、タイヤが滑ることを防止するスリップ性能に影響する。そこで、図1に示す鉄蓋1では、このように長さが異なる2種類の突出体10を設けることによって、隣り合う突出体の間隔が良好なスリップ性能を発揮する間隔になっている。すなわち、隣り合う突出体10それぞれにおける中心点を最短で結ぶ距離は17mm以上35mm以下である。スリップ性能を向上させるには、タイヤを十分に変形させることも必要であり、上記距離が17mm未満であるとタイヤが十分に変形しない。反対に、上記距離が35mmを越えると、隣り合う突出体10の間となる鉄蓋表面1a(突出体10が設けられていない部分)にタイヤが接触(底当たり)し、タイヤの変形が小さくなるばかりか、突出体10の角部が十分にタイヤに食い込みことができなくなってしまう。なお、以下の説明では、必要な場合を除き、長さが異なる突出体を区別しないで説明する。さらに、長さが37.5mmの突出体10の中には、スリップサインを付加したものが存在するが、必要な場合を除き、スリップサインの有無は無視して説明する。
【0033】
図1に示す鉄蓋1では、突出先端面が正多角形の突出体に比べ、第1突出体10cおよび第2突出体10rいずれにおいても、それぞれの長手方向に角部を多く有する。鉄蓋1の径方向に通過するタイヤには、主として第1突出体10cの角部が食い込み、その径方向に直交する方向に通過するタイヤには、第2突出体10rの角部が食い込む。したがって、図1に示す鉄蓋1によれば、どの方向から車両が来ても一定のスリップ性能を発揮することができる。
【0034】
また、第1突出体10cは、径方向に複数個並んでおり、以下、この第1突出体10cが径方向に複数個並んだ列を第1突出体列と称する。また、第2突出体10rは、鉄蓋1の周方向Rに複数個並んでおり、以下、この第2突出体10rが周方向Rに複数個並んだ列を第2突出体列と称する。
図1に示す鉄蓋1には、16個の第1突出体列と、6個の第2突出体列が設けられている。
【0035】
図2は、図1に示す鉄蓋に設けられた各第1突出体列をわかりやすいように示した図である。
【0036】
図2には、16個の第1突出体列20が太線で表されている。これら16個の第1突出体列20は、鉄蓋1の中心O(図1参照)から周方向Rに22.5°間隔で径方向に延びた16本の放射直線RS上それぞれに設けられた第1突出体10cの列である。
【0037】
図3は、図1に示す鉄蓋に設けられた各第2突出体列をわかりやすいように個別に示した図である。図3には、円C1〜円C6が示されているが、これらの円C1〜C6はいずれも、中心が鉄蓋1の中心O(図1参照)に一致したものである。
【0038】
図3(a)には、最内周に設けられた第2突出体列30が太線で示されている。この最内周の第2突出体列30を構成する各第2突出体10rは、直径が120mmの円C1の円弧にかかるように配置されたものである。これらの第2突出体10rのうち、鉄蓋1の周方向Rに45°間隔で位置する第2突出体10rが鉄蓋1の中心O(図1参照)に寄っている。鉄蓋1の中心O(図1参照)に寄っている第2突出体10rの長手方向の長さは37.5mmであり、円C1の円弧にかかるように配置されたそれら以外の第2突出体10rの長手方向の長さは32.5mmである。
【0039】
図3(b)には、図3(a)に示す第2突出体列30の外側に設けられた第2突出体列30が示されている。図3(b)に示す第2突出体列30を構成する各第2突出体10rは、直径が200mmの円C2の円弧にかかるように配置されたものである。ここでも、図3(b)に示す第2突出体列30を構成する第2突出体10rのうち、鉄蓋1の周方向Rに45°間隔で位置する第2突出体10rが鉄蓋1の中心O(図1参照)に寄っている。これら、中心Oに寄っている第2突出体10rのうち、6時の位置の第2突出体10rを除いた第2突出体10rは、長さが37.5mmであり、6時の位置の第2突出体10r等その他の第2突出体10rは、長さが32.5mmである。なお、6時の位置の第2突出体10rの外側には、高さ3mmの突起状のセンタマークCMが設けられている。このセンタマークCMは、地中に埋設された躯体の中心を表すものである。
【0040】
図3(c)には、図3(b)に示す第2突出体列30の外側に設けられた第2突出体列30が示されており、図3(d)には、図3(c)に示す第2突出体列30の外側に設けられた第2突出体列30が示されている。図3(c)に示す第2突出体列30rは、直径が314mmの円C3の円弧上に配置されたものであり、図3(d)に示す第2突出体列30を構成する各第2突出体10rは、直径が384mmの円C4の円弧上に配置されたものである。図3(c)および図3(d)それぞれに示された第2突出体列30を構成する第2突出体10rはいずれも、鉄蓋1の周方向Rに22.5°間隔で設けられた、長さが35mmのものであり、周方向Rに隣り合う第2突出体10rの間には、第1突出体10cが設けられている。すなわち、第1突出体10cと第2突出体10rとが、周方向Rに交互に並んでいる。図3(c)に示す円C3の円弧上に配置された第1突出体10cの長さは32.5mmである。また、図3(d)に示す円C4の円弧上に配置され周方向Rに隣り合う第2突出体10rの間に設けられた第1突出体10cは、中心Oに寄っており、その長さは37.5mmである。さらに、図3(d)に示す第1突出体10cのうち、周方向Rに45°間隔で設けられたそれぞれの第1突出体10cには、スリップサインが付加されている。このスリップサインについては後述する。
【0041】
図3(e)には、図3(d)に示す第2突出体列30の外側に設けられた第2突出体列30が示されている。図3(e)に示す第2突出体列30を構成する各第2突出体10rは、直径が456mmの円C5の円弧上に配置されたものである。この第2突出体列30を構成する第2突出体10rは、鉄蓋1の周方向Rに22.5°間隔で2個ずつ設けられた、長さが32.5mmのものである。これら2個ずつ設けられた第2突出体10rと、周方向Rに隣り合う2個ずつ設けられた第2突出体10rとの間には、鉄蓋1の外縁1dに寄った、長さが37.5mmの第1突出体10cが配置されている。
【0042】
図3(f)には、最外周に設けられた第2突出体列30が示されている。この最外周の第2突出体列30を構成する各第2突出体10rは、直径が542mmの円C6の円弧上に配置されたものである。なお、鉄蓋1の裏面には、不図示の受け枠に係合して鉄蓋1が閉まった状態を維持するロック部材が設けられており、図3(f)に示す鉄蓋1の外縁1dにおける6時の位置には、そのロック部材を操作する棒状の操作具を挿入する操作用開口1bが設けられている。最外周に設けられた第2突出体列30では、その6時の位置には第2突出体10rが設けられていない。また、図3(f)に示す鉄蓋1の外縁1dにおける2時と10時の位置それぞれには、鉄蓋開閉時に鉄蓋1をこじるためのこじり孔1cが設けられている。最外周に設けられた第2突出体列30では、2時と10時の位置にも第2突出体10rが設けられておらず、これらの位置には、代わりに、第1突出体10cが設けられている。さらに、12時の位置には、第2突出体10rとは少し形状が異なる突出体10r’が設けられているが、以下の説明では、必要な場合を除き、第2突出体10rと少し形状が異なる突出体10r’とを区別しないで説明する。
【0043】
径方向に通過するタイヤには、図2に示す第1突出体列20を構成する複数の第1突出体10cの角部が複数回にわたって食い込み、スリップ性能が飛躍的に向上する。また、径方向は360度にわたっていくつもの方向があり、図3に示す各第2突出体列30は、複数の径方向それぞれを長手方向とした複数の第2突出体10rによって構成されている。したがって、複数の径方向それぞれに直交する複数方向に通過するタイヤに、これら複数の第2突出体10rの角部が食い込み、より多くの方向から車両が来ても一定のスリップ性能を発揮することができる。さらに、図3(c)や図3(d)に示す第1突出体10cと第2突出体10rとが交互に並んだ環状の領域では、複数の方向から来る車両に対して対応することができ、より多くの方向から来る車両に対して対応することができる。
【0044】
図4は、第2の円形地下構造物用蓋を説明する図である。
【0045】
図4には、第2の円形地下構造物用蓋にいう直径2rが650mmの円形領域CSが示されている。本実施形態の鉄蓋1は、この円形領域CS内に総てが入り込むものであるが、直径φが650mmを超え円形領域CSからはみ出した部分を有する鉄蓋1であっても、第2の円形地下構造物用蓋を適用することができる。
【0046】
図3(b)を用いて説明したように、本実施形態の鉄蓋1の表面1aには、直径が200mmの円C2の円弧にかかるように配置された複数の第2突出体10rが設けられている。図4に示すように、これら複数の第2突出体10rは、円C2よりも僅かに小さい直径が181mmの内周円Ciの円弧にかかるように配置されたものでもある。ここにいう内周円Ciは、第2の円形地下構造物用蓋にいう内周円の一例に相当するものである。この内周円Ciは、鉄蓋1の直径φ(630mm)の1/4より長く1/3以下の長さの直径(157.5mmより長く315mm以下)の円にも相当する。また、この内周円Ciの円弧にかかるように配置された複数の第2突出体10rは、第2の円形地下構造物用蓋にいう内側突出体の一例に相当するものであり、以下、内側突出体10rと称することにする。
【0047】
図4には、内周円Ciと同じ大きさの8個の小円Ci’〜Ci’が示されている。これら8個の小円Ci’〜Ci’は、内周円Ciに外接した状態で互いに一部が重なるようにして周方向Rに均等に並べたものである。また、これらの小円Ci’〜Ci’の中心は、鉄蓋1の中心O(図1参照)から周方向Rに22.5°間隔で径方向に延びた16本の放射直線RS(図2参照)のうちの、その中心Oから周方向Rに45°間隔で径方向に延びた8本の放射直線(以下、この放射直線を第1の放射直線RS1と称する)上にある。本実施形態の鉄蓋1では、それらの小円Ci’〜Ci’の円弧にかかるように複数の第2突出体10rが配置されている。すなわち、鉄蓋1の中心O側では、上記内周円Ciの円弧にかかるように配置された複数の第2突出体10rのうちの3つの第2突出体10r11〜10r13が、小円Ci’〜Ci’の円弧にもかかっている。また、鉄蓋1の外縁1d側の、操作用開口1b近傍では、図3(f)を用いて説明した直径が542mmの円C6の円弧上に配置された複数の第2突出体10rのうちの4つの第2突出体10r21〜10r24が、小円Ci’の円弧にかかっている。こじり孔1c近傍では、5つの第2突出体10r21〜10r25が、小円Ci’、Ci’の円弧にかかっている。また、残り5つの小円Ci’、Ci’3〜4、Ci’6〜7それぞれでは、7つの第2突出体10r21〜10r27が、それぞれの小円Ci’、Ci’3〜4、Ci’6〜7の円弧にかっかっている。これらの第2突出体10r11〜10r13、10r21〜10r27は、第2の円形地下構造物用蓋にいう外側第1突出体の一例に相当するものであり、以下、外側第1突出体10rと称することにする。
【0048】
さらに、上記小円Ci’〜Ci’が重なり合った重複箇所Ci’は、周方向Rに45°間隔で8箇所存在する。これら8つの重複箇所Ci’は、周方向Rに隣り合う第1の放射直線RS1の間を通る放射直線上に存在する。すなわち、重複箇所Ci’は、図2に示す、鉄蓋1の中心O(図1参照)から周方向Rに22.5°間隔で径方向に延びた16本の放射直線RSのうちの、第1の放射直線RS1を除く放射直線(以下、この放射直線を第2の放射直線RS2と称する)上に存在する。これらの重複箇所Ci’には、第1突出体10cが、この鉄蓋の径方向に26.35mmの等間隔で5個並んでいる。これら5つの第1突出体10cの並びは、図2を用いて説明した16個の第1突出体列20のうちの8個の第1突出体列20に相当する。重複箇所Ci’に設けられた第1突出体10cは、第2の円形地下構造物用蓋にいう外側第2突出体の一例に相当するものであり、以下、外側第2突出体10cと称することにする。
【0049】
図5は、本実施形態の鉄蓋の上を通過した車両のタイヤの軌跡を示す図である。
【0050】
図5には、タイヤの軌跡TM1〜3が二点鎖線で示されている。また、図5中にハッチングで示した領域は、タイヤの接地面積を表す領域である。
【0051】
タイヤが鉄蓋1に接するタイヤ周方向の長さ(接地長TL)は150mm程度はある。したがって、タイヤの軌跡TM1を参照すると、車両が鉄蓋1の中心部分を通過する際、内側突出体10rの角部が、通過する車両のタイヤに、その車両の進行方向における少なくとも2箇所で同時に食い込むことが可能であることがわかる。また、タイヤが鉄蓋1に接する幅(接地長に直交する接地幅TW)は100mm以上はあり、タイヤの軌跡TM2を参照すると、車両が鉄蓋1の径方向に通過する際には、周方向Rに8箇所存在する重複箇所Ci’のいずれかの重複箇所Ci’に設けられた外側第2突出体10cの角部が、通過する車両のタイヤに食い込むことが可能であることもわかる。さらに、外側第1突出体体10rの角部は、あらゆる方向から来る車両のタイヤに食い込むことが可能である(タイヤの軌跡TM3参照)。このように、内側突出体10r、外側第1突出体10r、および外側第2突出体10cによって、どの箇所にどの方向から車両が来ても均一なスリップ性能が発揮される。
【0052】
図6は、第3の円形地下構造物用蓋を説明する図である。
【0053】
ここでは、上述のごとく、タイヤの接地幅TWを100mmに仮定するとともに、タイヤの接地長TLを150mmに仮定して説明する。
【0054】
この図6にも、タイヤの軌跡TM4〜6が二点鎖線で示されているとともに、タイヤの接地面積を表す領域がハッチングで示されている。また、この図6にも、図4に示す8本の第2の放射直線RS2が示されている。第2の放射直線RS2は、鉄蓋1の中心O(図1参照)から周方向Rに45°間隔で径方向に延びたものであり、第3の円形地下構造物用蓋にいう放射直線に相当し、θ(°)は、ここでは45°になる。上述したように、この第2の放射直線RS2上に存在する重複箇所Ci’(図4参照)には、第1突出体10cが、この鉄蓋の径方向に26.35mmの等間隔で5個並んでいる。すなわち、8本の第2の放射直線RS2それぞれにおける内側ポイントPiと外側ポイントPoの間にその第2の放射直線RS2に沿って第1突出体10cが複数配置されている。
【0055】
ここにいう内側ポイントPiは、鉄部1の中心Oから外縁1d側へ、
Xi=(TW/2)/sin(θ/2)=50/sin22.5 式1
上記式1で表されるXi(mm)寄った位置である。
この式1は、図5に示す直角三角形trに関する式である。この内側ポイントPiは、周方向Rに隣り合う第2の放射直線RS2の間隔Swがタイヤの最低接地幅に相当する100mmになる位置である。タイヤが、タイヤの軌跡TM4で示すように、第2の放射直線RS2より少しずれてこの鉄蓋1の径方向に通過する場合に、内側ポイントPiよりも外側に設けられた第1突出体10cが有効に機能し、良好なスリップ性能が発揮される。また、タイヤの軌跡TM5で示すように、周方向Rに隣り合う第2の放射直線RS2のちょうど真ん中を通過するタイヤに対しては、タイヤの接地長が150mm程度はあることから、この鉄蓋1の上にタイヤが完全に入り込むとすぐに内側ポイントPi近傍の第1突出体10cの角部が食い込み(ハッチングの領域参照)ここでも良好なスリップ性能が発揮される。
【0056】
外側ポイントPoは、この鉄蓋1の、外縁1dから中心O側へ、
Xo=[TW−{φ/2−(φ/2)cos(θ/2)}]cos(θ/2)=[100−{φ/2−(φ/2)cos22.5}]cos22.5 式2
上記式2で表されるXo(mm)寄った位置である。
φ/2はこの鉄蓋1の半径の長さであり、式2における(φ/2)cos22.5は、図5に示す直角三角形trに関する式であって、以下の式2−1〜式2−4が成り立つ。(φ/2)cos22.5=A1 式2−1
φ/2−(φ/2)cos22.5=φ/2−A1=A2 式2−2
100−{φ/2−(φ/2)cos22.5}=100−A2=A3 式2−3
Xo=A3cos22.5 式2−4
ここで、式2−4によって表されるA3cos22.5は、図5に示す直角三角形trに関する式である。
【0057】
この外側ポイントPoは、タイヤがこの鉄蓋1の外縁1d部分を、径方向に直交する方向Y(図1参照)に通過する場合に、そのタイヤの、鉄蓋中心O側の縁がかかる位置である。このため、タイヤが、タイヤの軌跡TM6で示すように、外縁1d部分を通過する場合には、外側ポイントPo近傍の第1突出体10cの角部が、タイヤに、そのタイヤの進行方向における少なくとも2箇所で同時あるいはわずかなタイミングの差で食い込むことが可能になり、ここでもまた良好なスリップ性能が発揮される。したがって、8本の第2の放射直線RS2それぞれにおける内側ポイントPiと外側ポイントPoの間にその第2の放射直線RS2に沿って複数設けられた第1突出体10cによっても、どの箇所にどの方向から車両が来ても均一なスリップ性能が発揮される。
【0058】
続いて、長さが37.5mmの突出体10について詳述する。
【0059】
図7は、図1に示す長さが37.5mmの突出体の斜視図である。また、図8は、その突出体の平面図であり、図9は、その突出体の正面図である。
【0060】
図7に示す突出体10の突出長は6mmである。すなわち、図9に示すように、この突出体10の突出先端面12の高さ位置は、突出体10の底面Bの高さ位置よりも6mm高い。また、図7に特にわかりやすく示されるように、このI状の突出体10の長手方向Wに延びる一つの側面11に対して、突出先端面12につながる3つの切欠部111,112,113が長手方向Wに間隔をあけて設けられている。これら3つの切欠部111,112,113を設けることで、突出先端面12の面積が小さく抑えられている。
【0061】
また、上述のごとく、突出体10には長さが37.5mmと32.5mmの2種類がある。ここにいう長さは、図8に示す、突出体10の底面B(図9参照)における長手方向Wの長さWLが相当する。突出体10の底面Bにおける、その長手方向Wに直交する短手方向Sの長さSLは、37.5mmの突出体10であっても32.5mmの突出体であっても17mmである。なお、32.5mmの突出体10は、37.5mmの突出体を全体的に長手方向Wに短くした以外は、37.5mmの突出体と同じようなものである。
【0062】
さらに、図8に示す長さが37.5mmの突出体10では、長手方向Wの側面11と突出先端面12とが交わる縁14の長さL1が30mmであり、32.5mmの突出体では、その長さL1が25mmである。また、37.5mmの突出体10であっても32.5mmの突出体であっても、短手方向Sの側面13と突出先端面12とが交わる縁15の長さL2は5mmである。
【0063】
長手方向の側面11の、両端の切欠部111,113それぞれには側方(短手方向S)に向かって張出した第1大張出体16が設けられている。また、短手方向Sの側面13には、長手方向Lに向かって張出した第2大張出体17が設けられている。このI状の突出体10には、第1大張出体16が4個、第2大張出体17が2個設けられている。図8に示すように、第1大張出体16および第2大張出体17それぞれの上面161,171は、突出先端面12の高さ位置から2mm下がった位置にある。図8に示すように、第1大張出体上面16における張出方向先端縁1611の長さL3は、上記縁14の長さL1よりも短く、第2大張出体上面171における張出方向先端縁1711の長さL4は、上記縁15の長さL2よりも短い。
【0064】
また、図7や図8に示すように、これらの上面161,171は、突出体側面11,13から張出方向先端縁1611,1711に向かうにつれて先細になる多角形状の面である。さらに、これらの上面161,171は水平方向に拡がる面であるが、第2大張出体上面171を例にあげて説明すれば、図9下方の左側の丸の中に示すように、その上面を、突出体側面13から張出方向先端縁1711に向かうにつれて漸次上方へ傾斜した面171’にすることで、張出方向先端縁1711におけるエッジ角度が90°になり、タイヤが滑ることを長期にわたって防止する耐スリップ性能がより向上する。一方、図9下方の右側の丸の中に示すように、その上面を、突出体側面13から張出方向先端縁1711に向かうにつれて漸次下方へ傾斜した面171’’にすることで、鉄蓋表面1aにおける排水性が向上する。なお、第1大張出体上面16においてもこれらと同じことが言える。
【0065】
また、同じく図9に示すように、第1大張出体16の、長手方向W両端それぞれの側面162,163における長手方向Wへの傾斜角度θ1は、突出体10の、短手方向Sの側面13における長手方向Wへの傾斜角度θ2よりも大きい。こうすることで、突出先端面12の上記縁15におけるエッジ角度よりも、第1大張出体上面161の張出方向に延びる縁164におけるエッジ角度の方が90°に近くなる。
【0066】
さらに、4個あるいずれの第1大張出体16の長手方向の側面165には、側方(短手方向S)に向かって張出した小張出体18が設けられている。図9に示すように、この小張出体18の上面181は、突出先端面12の高さ位置から4mm下がった位置にある。また図8に示すように、小張出体上面181における張出方向先端縁1811の長さL5は、第1大張出体上面161における張出方向先端縁1611の長さL3よりも短く、この上面181も張出方向先端に向かうにつれて先細になる多角形状の面である。なお、図9に示すこの上面181も水平方向に拡がる面であるが、漸次上方へ傾斜した面にして耐スリップ性能をさらに高めてもよいし、あるいは漸次下方へ傾斜した面にして排水性を高めてもよい。
【0067】
なお、図3(f)に示す円C6の円弧上における12時の位置に配置された、第2突出体10rと少し形状が異なる突出体10r’は、図7〜図9に示す突出体10から第2大張出体17および小張出体18を省略したものである。
【0068】
以上説明した突出体10は、鉄蓋1の上を通過する車両のタイヤと擦れて、次第に磨耗していく。
【0069】
図10(a)は、新品の鉄蓋に設けられた図7に示す突出体が磨耗し始めた様子を示す図であり、図10(b)は、図7に示す突出体の突出先端面が2mm磨耗したときの突出体を示す図である。
【0070】
突出体10の突出先端面12が磨耗してもタイヤが滑ることを防止する耐スリップ性能は、タイヤ等が接触する突出体上面(接触面)の面積とその突出体上面の角部の数によって決まる。図1に示す鉄蓋1は、ダクタイル鋳鉄等の鋳造品であり、突出体10も鋳造によって形成されたものである。このため、突出体10には、鋳造時の脱型のために必要な傾斜が設けられている。すなわち、突出体10には、突出方向先端に向かうほど先細となる傾斜が設けられており、突出体10の磨耗が進行すると、突出体上面の面積はどうしても増大してくる。また、図10(a)に示すように、突出体10は、突出先端面12の角部121が優先的に磨耗する。やがて突出先端面が2mm磨耗すると、図10(b)に示すように、突出先端面12と、2mm下がった位置にある、第1大張出体16の上面161および第2大張出体17の上面171とが同じ高さ位置になり、突出先端面12とそれらの上面161,171とからなる接触面Tにタイヤが接触するようになる。
【0071】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、鉄蓋の耐スリップ性能を向上させるには、タイヤ等と接触する突出体上面の面積を小さくして、タイヤ等の食い込み量を多くすることと、タイヤ等が優先的に引っ掛かる角部の数を多くすることが重要であるという結論を得た。そこで、本発明者は、鋳造品である鉄蓋においては、磨耗の進行による突出体接触面の面積の増大は避けられないことから、角部の数に着目した。
【0072】
図11(a)は、新品の鉄蓋に設けられた図7に示す突出体の突出先端面の平面図であり、図11(b)は、図10(b)に示す接触面の平面図である。
【0073】
図11(a)に示すように、新品の鉄蓋に設けられた突出体の突出先端面12は多角形状であり、この突出先端面12における角部の数は全部で28個である。これに対して、図11(b)に示すように、磨耗が進行した結果の接触面Tにおける角部の数は全部で36個である。したがって、磨耗が進行し、突出体の突出先端面12と、第1大張出体の上面161および第2大張出体の上面171とが同じ高さ位置になると、角部の数が8個も増加する。これは、角部の数が2割以上も増加したことになり、突出体の接触面の面積が増大することによって低下した耐スリップ性能が、接触面の角部の数が多くなった分補われ、結果的には、耐スリップ性能の低下が効果的に抑えられる。このように、角部の数の増加割合は2割以上であることが好ましい。図1に示す鉄蓋1では、突出体10の突出先端面12と、第1大張出体16の上面161および第2大張出体17の上面171とが同じ高さ位置になるまでの間における耐スリップ性能は、新品の状態における突出体10の突出先端面12の面積を予め小さくしておくことで、ある程度面積が増大しても所望の性能が確保され、面積の増大によって所望の性能の確保が難しくなるタイミングで、突出先端面12と、第1大張出体16の上面161および第2大張出体17の上面171とが同じ高さ位置になるように設計されている。なお、新品の状態における突出体10の突出先端面12の面積を小さくするために、その突出先端面12に、長手方向Wに延びる溝を設けておいてもよい。
【0074】
また、図8に示すように、張出方向先端縁1611の長さL3<上記縁14の長さL1、および張出方向先端縁1711の長さL4<上記縁15の長さL2の関係が成立していることから、第1大張出体上面16および第2大張出体上面171いずれの面積も小さくなり、接触面Tの面積の増大が抑えられる。そのため、耐スリップ性能の低下もより効果的に抑えられる。
【0075】
さらに、図9に示すように、第1大張出体16の傾斜角度θ1>突出体10の傾斜角度θ2の関係が成立していることによって、第1大張出体上面161の縁164におけるエッジ角度が、突出先端面12の縁15におけるエッジ角度よりも大きくなり、突出体の接触面の面積が増大することによって低下した耐スリップ性能が、大きくなったエッジ角度によっても補われ、耐スリップ性能の低下がより一段と効果的に抑えられる。
【0076】
図1に示す鉄蓋1では、突出体10の突出先端面12が3mm磨耗すると新品の鉄蓋への交換時期になる。ここで、鉄蓋1の上を通過する車両のタイヤは、突出体10に真上から接触する場合がある他、斜めから接触する場合もある。図10(b)に示す状態になった突出体10では特に、斜めから接触するタイヤが、4mm下がった位置に上面181が設けられた小張出体18に引っ掛かり、耐スリップ性能がさらに向上する。
【0077】
なお、図9に示す第1大張出体16の上面161を1mm下げ、新品の鉄蓋に設けられた突出体10の突出先端面12から3mm下がった位置にその上面161がくるようにしてもよい。こうすることによっても、突出先端面12が2mm磨耗すると、突出先端面12と、2mm下がった位置にある第2大張出体17の上面171とが同じ高さ位置になり、接触面の角部の数が増加して耐スリップ性能の低下が補われ、さらには、斜めから接触するタイヤに対しては、1mm下げた第1大張出体16の上面161が有効に機能する。また、図9に示す第2大張出体17の上面171を1mm下げた鉄蓋であってもよい。すなわち、新品の鉄蓋に設けられた突出体10の突出先端面12から3mm下がった位置に第2大張出体17の上面171がくる鉄蓋では、突出先端面が2mm磨耗すると、突出先端面12と、2mm下がった位置にある第1大張出体16の上面161とが同じ高さ位置になり、この段階では接触面の角部の数は変化しない。しかし、この段階における接触面の面積でも所望の耐スリップ性能を確保できるようにすることは可能であり、突出先端面がさらに1mm(合計で3mm)磨耗すると、図10(b)に示す接触面に似たような接触面になる。さすがにここまで接触面の面積が増大すると所望の耐スリップ性能を確保することが難しくなるが、こうなると接触面の角部の数が増加するため、耐スリップ性能の低下が補われ、新品の鉄蓋への交換時期ギリギリにおいても、所望の耐スリップ性能をしっかりと確保することができる。
【0078】
図12は、スリップサインを付加した突出体を示す図である。
【0079】
上述のごとく、スリップサインは、図3(d)に示す円C4の円弧上に配置され周方向Rに隣り合う第2突出体10rの間に配置された長さが37.5mmの第1突出体10cのうち、周方向Rに45°間隔で設けられたそれぞれの第1突出体10cに付加されている。すなわち、スリップサインが付加された第1突出体10cは、図4に示す第1の放射直線RS1上に設けられている。図12(a)は、スリップサインを付加した突出体の平面図であり、図12(b)は、その突出体の正面図である。
【0080】
図12(b)に示すように、スリップサインSMは、新品の鉄蓋に設けられた突出体10の突出先端面12から3mm下がった位置に付加されている。このスリップサインSMは、鉄蓋1の径方向に延びるものである。また、図12に示す突出体10では、第2大張出体17の上面171も、新品の鉄蓋に設けられた突出体10の突出先端面12から3mm下がった高さに位置する。本実施形態1の鉄蓋1では、図12に示すスリップサインSMや第2大張出体17の上面171が摩耗し始めると、新品の鉄蓋への交換時期が到来したことがわかり、鉄蓋交換の点検が容易になる。
【0081】
さらに、図1に示す鉄蓋1の中心Oには、I状の突出体を十文字に交差させた十文字状突出体50が配置されている。
【0082】
図13は、図1に示す鉄蓋の中心に設けられた十文字状突出体を示す斜視図である。
【0083】
図13に示す十文字状突出体50は、図7に示すI状の突出体10と長さは異なるものの同じ形状の突出体を直交させたものであり、以下、I状の突出体10の説明と重複する説明については省略することがある。図13に示す十文字状突出体50の突出先端面52は、その面積が小さく抑えられ、直径41mmの円に内接する大きさである。四方向それぞれに延びる側面51には側方に向かって張出した第1大張出体53が設けられ、四方向それぞれの先端になる側面54にも、さらに前方になる側方に向かって張出した第2大張出体55が設けられている。この十文字状突出体50には、第1大張出体53が8個、第2大張出体55が4個設けられている。これらの第1大張出体53および第2大張出体55それぞれの上面531,551も、突出先端面52の高さ位置から2mm下がった位置にある多角形状の面である。また、これらの上面531,551における張出方向先端縁5311,5511の長さは、短く抑えられている。さらに、8個ある第1大張出体53はいずれも、突出先端面52から4mm下がった位置に上面581が設けられた小張出体58を有する。
【0084】
図14(a)は、新品の鉄蓋に設けられた図13に示す十文字状突出体の突出先端面の平面図であり、図14(b)は、図14(a)に示す突出先端面が2mm磨耗した十文字状突出体における接触面の平面図である。
【0085】
図14(a)に示すように、新品の鉄蓋に設けられた十文字状突出体の突出先端面52における角部の数は全部で76個である。これに対して、図14(b)に示すように、突出先端面52と、第1大張出体の上面531および第2大張出体の上面551とからなる接触面Tにおける角部の数は全部で92個である。したがって、この十文字状突出体50では、突出先端面が2mm磨耗すると角部の数が16個も増加し、この十文字状突出体50でも、耐スリップ性能が補われる。
【0086】
最後に、図1に示す鉄蓋1は、マンホール蓋という物品において意匠的にも優れたものなので六面図および断面図を用いて説明する。ただし、左側面図は、右側面図と同一に表れるので省略する。
【0087】
図15は平面図、図16は底面図、図17は正面図、図18は背面図、図19は右側面図であり、図20は図15のA−A線断面図である。
【0088】
これらの図15〜図20において、実線で表した部分が、部分意匠として優れている部分である。すなわち、図3(b)に示す第2突出体列30を構成する太線で表した各第2突出体10rと、図5に示す8本の第2の放射直線RS2それぞれにおける内側ポイントPiと外側ポイントPoの間にその第2の放射直線RS2に沿って5つ配置された第1突出体10cとの組み合わせが、部分意匠として優れている。
【符号の説明】
【0089】
1 鉄蓋
O 中心
1d 外縁
R 周方向
10 突出体
10c 第1突出体
10r 第2突出体
10ri 内側突出体
10r 外側第1突出体
10c 外側第2突出体
12 突出先端面
W 長手方向
20 第1突出体列
30 第2突出体列
Ci 内周円
Ci’〜Ci’ 小円
RS2 第2の放射直線
Ci’ 重複箇所
Pi 内側ポイント
Po 外側ポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物につながる、地面に設けられた円形の開口を、地面と同じ高さ位置で塞ぐ円形地下構造物用蓋において、
この円形地下構造物用蓋の中心から周方向に間隔をあけて径方向に延びた複数本の放射直線に沿って複数配置され、それぞれが上方へ向けて突出した多角形状の突出先端面を有する第1突出体を備え、
前記第1突出体は、長手方向を前記径方向に直交する方向にして配置されたものであることを特徴とする円形地下構造物用蓋。
【請求項2】
中心がこの円形地下構造物用蓋の中心に一致した、直径2rの円形領域内に、中心が前記円形領域の中心に一致し直径が前記直径2rの1/4より長く1/3以下の長さである内周円に沿って複数配置され、それぞれが上方へ向けて突出した多角形状の突出先端面を有する第2突出体を備え、
前記第2突出体は、長手方向を前記径方向にして配置されたものであることを特徴とする請求項1記載の円形地下構造物用蓋。
【請求項3】
前記第1突出体は、前記内周円と同じ大きさの小円を該内周円に外接した状態で互いに一部が重なるようにして周方向に並べた場合の該小円が重なり合った重複箇所に配置されたものであることを特徴とする請求項2記載の円形地下構造物用蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−32698(P2013−32698A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225805(P2012−225805)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2008−145185(P2008−145185)の分割
【原出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(508165490)アクアインテック株式会社 (51)
【Fターム(参考)】