説明

円環状ゴム部材の製造方法

【課題】帯状ゴムの端部同士を厚み方向に積層して貼り合わせた際にジョイント部の厚みが局部的に大きくならず、周方向において形状を均一化できる円環状ゴム部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】押出機30により口金20を介してゴムを帯状に押し出し、その帯状ゴムの端部同士を積層して貼り合わせることで円環状に成形する工程を備える円環状ゴム部材の製造方法において、前記帯状ゴムを押し出す始期と終期に、口金20の開口21の厚みを減少させて、前記帯状ゴムの始端部と終端部を薄肉化し、その薄肉化した始端部と終端部とを積層して貼り合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構成部材としてのビードフィラーなどに代表される円環状ゴム部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、タイヤは、サイドウォールゴム2やトレッドゴム3、カーカスプライ4、インナーライナーゴム5など種々のゴム部材を組み合わせて構成される。ビード部材10は、一対のビード部1の各々に配設され、これを挟み込むようにしてカーカスプライ4の幅方向端部が巻き返される。ビード部材10は、図8に示すように、断面三角形状の硬質ゴムからなる円環状のビードフィラー1bと、ゴム被覆された鋼線等の収束体からなるビードコア1aとを有する。
【0003】
この円環状のビードフィラー1bは、例えば下記特許文献1に開示されているように、所定の断面形状を有するビードフィラー1bを押出機により帯状に押し出し、ビードコア1aの周長に対応する長さで切断した後、その端部同士を貼り合わせることで成形される。しかし、端部同士を厚み方向に積層して貼り合わせると、ジョイント部の厚みが局部的に大きくなって形状が不均一となり、タイヤのユニフォミティが悪化するおそれがある。また、端部同士を積層せずに突き合わせることも考えられるが、端部の位置決めや圧着処理が難しくなる傾向にある。
【0004】
下記特許文献2には、回転自在に支持された成形板上にゴムを直接的に押し出して円環状に成形し、継ぎ目のないビードフィラーを成形する方法が記載されている。しかし、この方法は、押出機の口金に直交する向きに当接する成形板や、ビードフィラーの断面形状に対応した形状のガイド部材を使用するものであり、実施するには特殊な装置が必要となる。
【特許文献1】特開平6−297603号公報
【特許文献2】特開2005−335244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、帯状ゴムの端部同士を厚み方向に積層して貼り合わせた際にジョイント部の厚みが局部的に大きくならず、周方向において形状を均一化できる円環状ゴム部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る円環状ゴム部材の製造方法は、押出機により口金を介してゴムを帯状に押し出し、その帯状ゴムの端部同士を積層して貼り合わせることで円環状に成形する工程を備える円環状ゴム部材の製造方法において、前記帯状ゴムを押し出す始期と終期に、前記口金の開口の厚みを減少させて、前記帯状ゴムの始端部と終端部を薄肉化し、その薄肉化した始端部と終端部とを積層して貼り合わせるものである。
【0007】
本発明によれば、帯状ゴムの始端部と終端部を薄肉化し、その薄肉化した始端部と終端部とを積層して貼り合わせることにより、ジョイント部の厚みが局部的に大きくなることを防止して、円環状ゴム部材の形状を周方向において均一化することができる。
【0008】
上記において、前記帯状ゴムの始端部及び終端部の厚みが先端に向かって漸減するように、前記開口の厚みを減少させることが好ましい。かかる構成によれば、帯状ゴムの始端部と終端部の押し出しが比較的容易となり、両端部の成形精度を高めることができるため、円環状ゴム部材の形状をより均一化することができる。
【0009】
上記において、前記帯状ゴムを押し出す始期にて前記開口の厚みを減少する方向と、前記帯状ゴムを押し出す終期にて前記開口の厚みを減少する方向とを互いに異ならせることが好ましく、これにより帯状ゴムの端部同士を厚み方向に積層して貼り合わせ易くなる。また、始端部と終端部とを積層したジョイント部の断面を精度良く成形して、円環状ゴム部材の形状をより均一化することができる。
【0010】
本発明は、外周部分が先細りした断面三角形状のビードフィラーの製造に適用可能である。この場合、押出機により口金を介してビードフィラーを帯状に押し出し、その帯状ゴムとしてのビードフィラーの端部同士を積層して貼り合わせることで、円環状ゴム部材としてのビードフィラーを成形する。
【0011】
上記において、前記帯状ゴムとしてのビードフィラーを押し出す始期と終期に、前記ビードフィラーの側面を形成する側面形成部を、前記ビードフィラーの頂点位置を中心に回転させることで、前記開口の厚みを減少させることが好ましい。
【0012】
円環状ゴム部材が上記の如きビードフィラーである場合、口金の開口が三角形状となるため、開口の厚みを単純に減少させると開口の高さが維持されず、ビードフィラーの始端部や終端部の断面形状が歪になって積層が難しくなる傾向にある。これに対し、本発明の上記構成によれば、開口の高さを変えずに且つ開口が三角形状である状態を維持しつつ、その開口の厚みを減少させてビードフィラーの始端部と終端部を薄肉化できる。その結果、始端部と終端部とを容易に且つ精度良く積層して、両端部を適切に貼り合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、円環状ゴム部材が、図7,8で示したような、外周部分が先細りした断面三角形状のビードフィラー1bである例を示す。図1は、本発明で使用する製造装置の一例を示す概略構成図である。図2は、口金の正面図である。図3は、口金の開口を示す要部拡大図であり、口金20からカバープレート58,68を取り外した状態で示している。
【0014】
図1に示すように、この製造装置は、口金20と、口金20を介してゴムを帯状に押し出す押出機30と、それらの作動制御を行う制御装置40とを備える。押出機30は、ゴム材料が投入されるホッパー31と、ゴム材料に熱を与えながら前方に送り出すスクリュー32と、スクリュー32を内蔵する円筒状のバレル33と、スクリュー32を駆動する駆動装置34とを備える。
【0015】
口金20は、押出機30のバレル33の先端側に連結され、その前面に形成された開口21から帯状のビードフィラーが押し出される。口金20の内部には、押出機30から供給されたゴムが通るゴム流路が設けられており、開口21はゴム流路の下流側に形成されている。口金20は、詳しくは後述するように、開口21の厚みを減少可能に構成されている。なお、口金20の前方(図1左側)には、不図示のターンテーブルが水平に配置される。
【0016】
開口21は、図2,3に示すように、ビードフィラー1bの断面形状に対応した三角形状にて形成されている。ビードフィラーの側面は、一対の側面成形部50,60により成形され、符号Pがビードフィラーの頂点位置となる。本実施形態では、側面成形部50,60が正面視四辺形をなす板状部材により構成されている。
【0017】
側面成形部50は、支持プレート51の下面に固着支持されており、支持プレート51は、一対のガイドバー52,53の下端に回転自在に軸支されている。シリンダ54は、出力ロッド55を下方に向けた状態で固定されており、その出力ロッド55の先端にプレート56が取り付けられている。ガイドバー52の上端はプレート56に固定されているが、ガイドバー53の上端はプレート56に形成された孔を貫通している。
【0018】
出力ロッド55を進出させると、プレート56と共にガイドバー52が下降するが、ガイドバー53の高さは変化しない。したがって、図4に示すように、ビードフィラーの頂点位置Pを中心として、側面成形部50を反時計回りに回転させ、開口21の厚みを上方から減少することができる。この厚みを減少させる過程において、開口21の高さ(図6に示したビードフィラー1bの高さHに対応)は変わらず、そのうえ開口21が三角形状である状態が維持される。
【0019】
側面成形部60を作動する機構は、側面成形部50を作動する機構を上下反転させた構成であり、支持プレート61と、一対のガイドバー62,63と、出力ロッド65を有するシリンダ64と、プレート66とを備える。出力ロッド65を進出させると、図5に示すように、ビードフィラーの頂点位置Pを中心として、側面成形部60を時計回りに回転させ、開口21の厚みを下方から減少することができる。
【0020】
制御装置40は、スクリュー32の駆制動、出力ロッド55,65の出退作動、及びターンテーブルの回転作動を制御する機能を有する。
【0021】
以下、円環状ゴム部材としてのビードフィラー1bを製造する方法について説明する。まず、ゴム材料をホッパー31に投入し、スクリュー32によって混練しながら前方に送り出して口金20に供給する。口金20に供給されたゴムは、開口21から断面三角形状をなす帯状のビードフィラーとして押し出され、ターンテーブルに載せられる。該ビードフィラーは、ターンテーブルの回転に伴って湾曲し、所定の長さで切断された後、その端部同士を積層して貼り合わせることで円環状に成形される。なお、予め円環状に形成したビードコアをターンテーブル上に載置しておき、ビードフィラーをビードコアに貼り合わせながら、円環状に成形することもできる。
【0022】
このとき、本発明では、ビードフィラーを押し出す始期と終期に、口金20の開口21の厚みを減少させて、ビードフィラーの始端部及び終端部を薄肉化し、その薄肉化した始端部と終端部とを積層して貼り合わせる。これにより、ジョイント部の厚みが局部的に大きくなることを防止して、ビードフィラー1bの形状を周方向において均一化することができる。
【0023】
図6は、本発明により円環状に成形したビードフィラーを示し、それぞれ(a)平面図、(b)b−b断面図、(c)c−c断面図、(d)d−d断面図、(e)e−e断面図である。符号Esは、ビードフィラーの始端部であり、符号Eeは、ビードフィラーの終端部である。
【0024】
本実施形態では、図6(b)に示すように、始端部Es及び終端部Eeの厚みを先端に向かって漸減させている。これにより、始端部Esと終端部Eeの押し出しが比較的容易となり、両端部Es,Eeの成形精度を高めることができるため、ビードフィラー1bの形状をより均一化することができる。このような始端部Es及び終端部Eeの形状は、押し出しの始期及び終期において、開口21の厚みの減少度合いを徐々に変化させることで得られる。
【0025】
また、本実施形態では、ビードフィラーを帯状に押し出すに際し、その始期にて開口21の厚みを減少する方向と、その終期にて開口21の厚みを減少する方向とを互いに異ならせている。具体的には、図6(b)〜(e)からも分かるように、押し出しの始期には開口21の厚みを上方から減少させ(図4参照)、押し出しの終期には開口21の厚みを下方から減少させており(図5参照)、始端部Esと終端部Eeの厚みを互いに異なる方向から減少させている。
【0026】
これにより、始端部Esと終端部Eeとを厚み方向に積層して貼り合わせ易くなる。また、始端部Esと終端部Eeとを積層したジョイント部の断面を精度良く成形できるため、ビードフィラー1bの形状をより均一化することができる。かかる始端部Es及び終端部Eeの成形は、制御装置40によりシリンダ54,64を介して側面成形部50,60の動作を制御することにより容易に行いうる。
【0027】
[別実施形態]
(1)前述の実施形態では、帯状ゴムとしてのビードフィラーを1周させて円環状に成形する例を示したが、本発明では2周以上させて円環状に成形しても構わない。かかる場合においても、帯状ゴムの始端部と終端部を薄肉化し、それらを積層して貼り合わせる。これにより、帯状ゴムの厚みのばらつきを抑えることができ、円環状ゴム部材の形状を周方向において好適に均一化できる。
【0028】
(2)前述の実施形態では、円環状ゴム部材としてビードフィラーを製造する例について説明したが、本発明はこれに限られず、例えばサイドウォールゴムなど他の円環状ゴム部材にも適用可能である。また、押出機の先端側にギアポンプを連設し、該ギアポンプの機能に基づいて口金にゴムを定量供給するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明で使用する製造装置の一例を示す概略構成図
【図2】口金の正面図
【図3】口金の開口を示す要部拡大図
【図4】口金の開口の厚みを減少した状態を示す要部拡大図
【図5】口金の開口の厚みを減少した状態を示す要部拡大図
【図6】本発明により円環状に成形したビードフィラーの図
【図7】空気入りタイヤの一例を示す断面図
【図8】ビード部材を一部破断させて示した斜視図
【符号の説明】
【0030】
1a ビードコア
1b ビードフィラー
10 ビード部材
20 口金
21 開口
30 押出機
40 制御装置
50 側面成形部
60 側面成形部
Es 始端部
Ee 終端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機により口金を介してゴムを帯状に押し出し、その帯状ゴムの端部同士を積層して貼り合わせることで円環状に成形する工程を備える円環状ゴム部材の製造方法において、
前記帯状ゴムを押し出す始期と終期に、前記口金の開口の厚みを減少させて、前記帯状ゴムの始端部と終端部を薄肉化し、その薄肉化した始端部と終端部とを積層して貼り合わせることを特徴とする円環状ゴム部材の製造方法。
【請求項2】
前記帯状ゴムの始端部及び終端部の厚みが先端に向かって漸減するように、前記開口の厚みを減少させる請求項1に記載の円環状ゴム部材の製造方法。
【請求項3】
前記帯状ゴムを押し出す始期にて前記開口の厚みを減少する方向と、前記帯状ゴムを押し出す終期にて前記開口の厚みを減少する方向とを互いに異ならせる請求項1又は2に記載の円環状ゴム部材の製造方法。
【請求項4】
前記円環状ゴム部材が、外周部分が先細りした断面三角形状のビードフィラーである請求項1〜3いずれか1項に記載の円環状ゴム部材の製造方法。
【請求項5】
前記帯状ゴムとしてのビードフィラーを押し出す始期と終期に、前記ビードフィラーの側面を形成する側面形成部を、前記ビードフィラーの頂点位置を中心に回転させることで、前記開口の厚みを減少させる請求項4に記載の円環状ゴム部材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−61690(P2009−61690A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231779(P2007−231779)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】